JP3004813B2 - インクジェット記録ヘッド、その製造方法及びインクジェット記録ヘッドを備えた記録装置 - Google Patents

インクジェット記録ヘッド、その製造方法及びインクジェット記録ヘッドを備えた記録装置

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JP3004813B2
JP3004813B2 JP17119592A JP17119592A JP3004813B2 JP 3004813 B2 JP3004813 B2 JP 3004813B2 JP 17119592 A JP17119592 A JP 17119592A JP 17119592 A JP17119592 A JP 17119592A JP 3004813 B2 JP3004813 B2 JP 3004813B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、インクジェット記録方
式に用いる記録液小滴を発生するためのインクジェット
記録ヘッド、その製造方法、及びインクジェット記録ヘ
ッドを備えた記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】インクジェット記録方式に適用されるイ
ンクジェット記録ヘッド(以下、「記録ヘッド」とい
う)には、一般に、インクが吐出されるための吐出口
と、前記吐出口に供給するためのインクを貯える液室
と、前記吐出口と前記液室とを連通する液路と、前記液
路の一部に設けられたインクを吐出するためのエネルギ
ーを発生するエネルギー発生素子と、前記液室に外部か
らインクを供給するための供給口が設けられている。
【0003】従来の記録ヘッドの製造方法としては次の
ようなものが知られている。
【0004】(1)エネルギー発生素子が設けられてい
た第1の基板を備え、ガラスや金属等からなる第2の基
板に切削やエッチング等の加工手段により吐出口、液路
及び液室を形成するための凹部ならびに前記液室と外部
とを連通するための供給口を設けた後、前記第1の基板
に前記第2の基板をエネルギー発生素子と液路との位置
を合わせて接着剤により貼り合わせる方法。
【0005】(2)エネルギー発生素子が設けられたガ
ラス等からなる第1の基板にポジ型もしくはネガ型の感
光性ドライフィルムを貼り、前記感光性ドライフィルム
のうち吐出口、液路及び液室に相当するパターンをマス
クもしくは露出させて露光し、現像して前記吐出口、液
路及び液室に相当するパターンの固体層を第1の基板上
に設ける。前記固体層及び第1の基板の上に硬化剤が混
合されて液状の硬化性材料を適宜厚さに塗布し、所定の
温度で長時間放置して前記硬化性材料を硬化させる。次
いで、前記硬化性材料が硬化した第1の基板の吐出口を
形成する位置で切断して前記固体層の端面を露出させた
後前記固体層を溶解する溶剤中に浸漬し、前記硬化性材
料が硬化した第1の基板から前記固体層を溶解除去して
内部に液路及び液室を形成する空間を設ける方法(特開
昭61−15497号公報参照)。
【0006】(3)エネルギー発生素子が設けられた第
1の基板にポジ型もしくはネガ型の感光性ドライフィル
ムを貼り、前記感光性ドライフィルムのうち吐出口、液
路及び液室に相当するパターンをマスクもしくは露出さ
せて露光し、現像して前記吐出口、液路及び液室に相当
するパターンの固体層を第1の基板上に設ける。前記固
体層及び第1の基板の上に活性エネルギー線により硬化
する活性エネルギー線硬化性材料を適宜厚さに塗布し、
液室の一部を形成するための凹部及び供給口が設けられ
た活性エネルギー線透過性の第2の基板を前記活性エネ
ルギー線硬化性材料の上に前記凹部を液室が形成される
予定位置に合わせて貼り付け積層体を作る。次に、前記
活性エネルギー線硬化性材料のうち液室が形成される予
定部分を隠すように第2の基板をマスクして活性エネル
ギー線をその第2の基板を通して活性エネルギー線硬化
性材料に照射し硬化させる。次いで、前記活性エネルギ
ー線硬化性材料が硬化された積層体を吐出口を形成する
位置で切断して前記固体層の端面を露出させた後前記固
体層と未硬化の活性エネルギー線硬化性材料とを溶解す
る溶剤中に浸漬し、前記積層体から前記固体層及び未硬
化の活性エネルギー線硬化性材料を溶解除去して内部に
液路及び液室を形成する空間を設ける方法(特開昭62
−253457号公報参照)。
【0007】(4)インク吐出エネルギー発生素子が設
けられたガラス等からなる第1の基板上に除去可能な材
料からなる固体層により吐出口、液路及び液室に相当す
る部分を形成する。前記固体層及び第1の基板上にトラ
ンスファーモールド成形により、前記固体層の表面のう
ち、少なくともインク液室の一部に相当する部分の表面
を除く他の部分をモールド樹脂により被覆する。次い
で、第1の基板を吐出口を形成する位置で切断して前記
固体層の端面を露出させた後、前記固体層を溶解する溶
剤中に浸漬し、モールド樹脂で被覆された第1の基板か
ら前記固体層を溶解除去して、内部に液路及び液室を形
成する空間を設ける方法が提案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上記従来の各記録ヘッ
ドの製造方法において、(1)の記録ヘッド製造方法で
は、第2の基板に設けられる液室を形成するための凹部
を大きくすることにより、高速記録に好適な大きな液室
を有する記録ヘッドを製造することができるという利点
はあるが、第1の基板と第2の基板とを接着剤により貼
り合わせる際、第1の基板の微細なエネルギー発生素子
と第2の基板の微細な液路とを精密に位置合わせする必
要があり、また接着剤で貼り合わせる際、微細な液路に
接着剤が流れ込まない工夫が必要であり、そのための装
置が複雑、高価なのものとなり、また多量生産性に欠
け、製品のコストアップを引き起こすという問題点があ
る。
【0009】(2)の記録ヘッドの製造方法では、
(1)の記録ヘッドの製造方法にみられるような第1の
基板と第2の基板との貼り合わせに起因する問題点を解
決できる利点はあるが、液室と容積は第1の基板上に設
けられるパターン状の固体層の厚さと同じ高さに制限さ
れてしまうのであまり大きくすることができず、また、
工程が複雑で時間がかかり、工程数も多いのでやはり多
量生産性に欠け、製品のコストアップを引き起こすとい
う問題点がある。
【0010】(3)の記録ヘッドの製造方法では、第2
の基板に設ける液室の他の一部を形成するための凹部を
大きくすることにより、大きな液室を有する記録ヘッド
を製造することができるという利点と、(1)の記録ヘ
ッドの製造方法にみられるような第1の基板と第2の基
板との貼り合わせに起因する問題点を解決できる利点と
があるが、(2)の記録ヘッドの製造方法と同様に工程
が複雑で時間がかかり、工程数はさらに多いのでやはり
多量生産性に欠け、製品のコストアップを引き起こすと
いう問題点がある。
【0011】(4)の記録ヘッドの製造方法では、
(1),(2),(3)の問題点を解決し、多量生産性
に優れた、安価なインクジェット記録ヘッドを提供でき
るが、基板とモールド樹脂の応力緩和、密着力向上とし
て、基板全体をモールド樹脂で包む、所謂パーケージン
グ構造をとると、基板からの発熱に対し、放熱性が悪く
なる。前記することは、インク吐出エネルギー発生素子
の配設が多くなるほど顕著な傾向となる。
【0012】本発明は、上記従来の技術の有する問題点
に鑑みてなされたものであり、2つの基板を精密に位置
合わせして貼り合わせるという工程を必要とせずに簡単
で、少ない工程により精密、信頼性の高い、多量生産に
適した安価なインクジェット記録ヘッドと、前記インク
ジェット記録ヘッドを備えたインクジェット記録装置
と、前記インクジェット記録ヘッドの製造方法を提供す
ることを目的とするものである。
【0013】また、液路が精度よく正確に、かつ歩留ま
りよく微細加工された構成を有するインクジェット記録
ヘッドを提供することが可能なインクジェット記録ヘッ
ドの製造方法、及び記録装置を提供することも目的とす
る。
【0014】また、基板の支持体と、記録装置への取付
け部材とを兼ねた金属部材を用いることで、放熱性が向
上し安定な吐出がが得られるインクジェット記録ヘッド
を提供することが可能な製造方法、及び記録装置を提供
することも目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
の本発明は、インク吐出口と、インク供給口を含むイン
ク液室と、インク吐出口とインク液室とを連通するイン
ク液路と、インク液路内に配設されたインク吐出エネル
ギー発生素子とを有するインクジェット記録ヘッドの製
造方法であって、基板上にインク吐出エネルギー発生素
子を配設した後、該基板上に前記素子に対応して少なく
とも液路パターンを有する固体層を形成し、さらに、固
体層を形成した面とは反対の基板面に、金属からなる支
持体を接合し、次いで、該固体層を形成した基板及び支
持体の上下面に、トランスファーモールド成形によりモ
ールド樹脂層を一括成形し、その後前記固体層を除去し
てインク吐出口、インク液路、インク液室及びインク供
給口を形成するインクジェット記録ヘッドの製造方法で
ある。
【0016】また、本発明は、上記製造方法で製造した
インクジェット記録ヘッドであり、インク吐出エネルギ
ー発生素子が、電気エネルギーを与えることによって発
熱し、インクに状態変化を生ぜしめて吐出を行わせるた
めの電気熱変換体であり、記録媒体の記録領域の全幅に
わたって吐出口が複数設けられているフルラインタイプ
のものを含むものである。
【0017】さらに、本発明は、記録媒体の被記録面に
対してインクを吐出する吐出口が設けられている上記記
録ヘッドと、該ヘッドを載置するための部材とを少なく
とも具備する記録装置である。
【0018】以下、図面を参照して本発明を詳細に説明
する。
【0019】図1は、本発明に係るインクジェット記録
ヘッドの構成の一例を示す模式的斜視図である。
【0020】図2から図5は、本発明の基本的な態様を
示すための模式図であり、図1から図5のそれぞれに
は、本発明の方法に係るインクジェット記録ヘッドの構
成とその製作手順の一例が示されている。なお、本例で
は、3つの吐出口を有するインクジェット記録ヘッドが
示されているが、勿論これ以上の吐出口を有する高密度
マルチアレイインクジェット記録ヘッドの場合でも同様
にして製造できることは言うまでもない。
【0021】まず、本態様においては、例えば図2に示
されるような、ガラス、セラミックス、プラスチックあ
るいは金属等からなる基板1が用いられる。
【0022】このような基板1は、インク液路構成部材
の一部として機能し、また、後述するレジスト層の支持
体として機能し得るものであれば、その形状、材質等、
特に限定されることなく使用できる。上記基板1上に
は、電気熱変換素子あるいは圧電素子等のインク吐出エ
ネルギー発生素子2が所望の個数配置される。このよう
な、インク吐出エネルギー発生素子2によってインク小
滴を吐出させるための吐出エネルギーがインク液に与え
られ、記録が行われる。因に、例えば、上記インク吐出
エネルギー発生素子2として電気熱変換素子が用いられ
るときには、この素子が近傍のインクを加熱することに
より、吐出エネルギーを発生する。また、例えば、圧電
素子が用いられるときは、この素子の機械的振動によっ
て、吐出エネルギーが発生される。
【0023】なお、これらの素子2には、これら素子を
動作させるための制御信号入力用電極が接続されてい
る。また、一般にこれら吐出エネルギー発生素子と前記
電極の一部の耐久性を向上させる目的で、保護膜層等の
各種機能層が設けられる場合があるが、勿論本発明にお
いてもこのような各種機能層を設けることには一向に差
し支えない。
【0024】次いで、上記インク吐出エネルギー発生素
子2を含む基板1上に、除去可能な、例えばレジストか
らなる固体層4を形成する。
【0025】固体層4の形成方法としては、レジストを
基板1上に積層し、次いで、固体層のパターンを有する
マスクを介して光照射した後、現像する等の公知の方法
が採用できる。レジストとしてはポジ型、ネガ型等の公
知のものが利用できる。上記固体層4は後述するよう
に、後の工程で溶解除去するものであるので、除去可能
なものであれば、特にレジストに限らず種々のものが使
用可能である。
【0026】次に、図3に示すように基板と金属部材5
を接合する。金属部材5としては、アルミニウム、Si
C、SUS等の放熱性のよい金属が使用できる。また、
金属部材5上に、IC、フリップチップ等のヘッドを駆
動するための電気的な必要部材を実装してもよい。
【0027】該金属部材は基板の支持体及び記録装置へ
の取付け部材として機能するものであり、基板への接合
は、ダイボンディング材料、銀ペースト、シリコンコン
パウンダー、UV接着剤等各種接着剤により行う。
【0028】次に図4に示すように、インクジェット記
録ヘッドの外形とインク供給口を形成できる上金型7及
び下金型8を用いて、モールド樹脂層6をトランスファ
ーモールド成形により成形する。
【0029】ここで、トランスファーモールド成形方法
について説明すると、本実施例のトランスファーモール
ド成形を用いる工法として、固体層4が形成された基板
1を適切なランナー、ゲート、エア抜き構造を備えたキ
ャビティーからなる上型、下型のいずれかへ挿入した後
型締めを行う。モールド樹脂層6の材料として熱硬化性
のエポキシ樹脂を用い、樹脂の予備加熱温度60〜90
℃、注入圧力20〜140kgf/cm2 、成形型温度
100〜180℃、保圧硬化時間1〜10分及び成形後
のポストキュアという一般的な成形条件、工法にしたが
って行うことができる。前記する条件は、成形性(形
状、樹脂内の気泡、バリ、フラッシュ等)を確認し、そ
れぞれ適切なポイントを設定すればよい。一般に成形温
度を高くすれば、硬化時間は短くて済む。また注入圧力
が高いほど、形状の安定性、気泡の発生がなくなるが、
過剰な圧力は製品へのダメージ、樹脂のバリ、フラッシ
ュの問題を起こす。ここで、ポストキュアを行う時期と
しては、必ずしも成形と連続して行う必要はなく、製品
が完成するまでのどの時点で行ってもよい。したがっ
て、工程の都合のよい段階で行うことができる。勿論製
品の使用状態によっては、前記工程を除くことも可能で
ある。
【0030】また、成形後に型から製品を離型する場合
の離型性をよくする目的で、成形型等に離型剤を用いる
ことがある。
【0031】モールド樹脂層6の材料としては、前記エ
ポキシ樹脂の他にアリル系樹脂、ジアリルフタレート系
樹脂、シリコン系樹脂、ポリエステル、フェノール、メ
ラミン、成形手段によっては、液状であって、常温硬
化、熱硬化、紫外線硬化等の材料を用いることができ、
例えば、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリ
ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、尿素樹脂等が挙げられ
る。
【0032】モールド樹脂層6の成形手段としては、量
産性、精度、タクトを考えると、トランスファーモール
ド成形法が本発明に最も適している。勿論、他の方法例
えば、射出成形、ボッティング、液状の樹脂を用いた注
型法、及び紫外線硬化型の樹脂を用いた選択的露光によ
る成形法等を用いることも可能である。
【0033】次に、図5に示すように、固体層4を除去
して、本発明のインクジェット記録ヘッドを完成する。
【0034】固体層の除去手段としては、適当な溶剤中
に記録ヘッドを浸漬し、溶解除去する方法が好ましい。
適当な溶剤としては、固体層がポジ型レジストの場合に
は、苛性ソーダ等のアルカリ性水溶液が好ましく、その
他、アセトン等の有機溶剤も使用できる。
【0035】また、前記する溶剤以外であってもモール
ド樹脂との選択性(耐溶剤性)のあるものであれば、使
用可能である。さらに、除去手段においては、溶剤の攪
拌、超音波等の促進手段を併用することで、より効果的
に除去できることは言うまでももない。
【0036】ここで、インクの吐出特性はインク液路の
長さにより変化することから、必要とあれば、液路の長
さを調整し、インクの吐出性能を向上させるために、ウ
ェハー切断法として公知のダイシング法等により、吐出
口部を所望の液路長に切断してもよい。
【0037】本発明においては、吐出口部の切断を行っ
てから固体層を除去することも可能である。この方法
は、インクジェット記録ヘッドの重要な役割を占めるイ
ンク液路内が、吐出口部切断時、固体層で充填されてい
ることから、切断粉、ゴミ等によるインク液路内の詰ま
りを防止できる上、液路長を短くした後、固体層を除去
するので、固体層の除去性が向上する利点がある。
【0038】本発明は、特にインクジェット記録方式の
中でも、熱エネルギーを利用して飛翔液滴を形成し、記
録を行うインクジェット記録方式の記録ヘッド、記録装
置に於いて、優れた効果をもたらすものである。
【0039】その代表的な構成や原理については、例え
ば、米国特許第4723129号明細書、同第4740
796号明細書に開示されており、本発明はこれらの基
本的な原理を用いて行うものが好ましい。この記録方式
は所謂オンデマンド型、コンティニュアス型のいずれに
も適用可能である。
【0040】この記録方式を簡単に説明すると、液体
(インク)が保持されているシートや液路に対応して配
置されている電気熱変換体に、記録情報に対応して液体
(インク)に核沸騰現象を越え、膜沸騰現象を生じる様
な急速な温度上昇を与えるための少なくとも一つの駆動
信号を印加することによって、熱エネルギーを発生せし
め、記録ヘッドの熱作用面に膜沸騰を生じさせる。この
様に液体(インク)から電気熱変換体に付与する駆動信
号に一対一対応した気泡を形成できるため、特にオンデ
マンド型の記録法には有効である。この気泡の成長、収
縮により吐出口を介して液体(インク)を吐出させて、
少なくとも一つの滴を形成する。この駆動信号をパルス
形状とすると、即時適切に気泡の成長収縮が行なわれる
ので、特に応答性に優れた液体(インク)の吐出が達成
でき、より好ましい。このパルス形状の駆動信号として
は、米国特許第4463359号明細書、同第4345
262号明細書に記載されているようなものが適してい
る。尚、上記熱作用面の温度上昇率に関する発明の米国
特許第4313124号明細書に記載されている条件を
採用すると、更に優れた記録を行なうことができる。
【0041】記録ヘッドの構成としては、上述の各明細
書に開示されているような吐出口、液流路、電気熱変換
体を組み合わせた構成(直線状液流路又は直角液流路)
の他に、米国特許第4558333号明細書、米国特許
第4459600号明細書に開示されている様に、熱作
用部が屈曲する領域に配置された構成を持つものも本発
明に含まれる。
【0042】加えて、複数の電気熱変換体に対して、共
通するスリットを電気熱変換体の吐出口とする構成を開
示する特開昭59年第123670号公報や熱エネルギ
ーの圧力波を吸収する開孔を吐出部に対応させる構成を
開示する特開昭59年第138461号公報に基づいた
構成においても本発明は有効である。
【0043】さらに、本発明が有効に利用される記録ヘ
ッドとしては、記録装置が記録できる記録媒体の最大幅
に対応した長さのフルラインタイプの記録ヘッドがあ
る。このフルラインヘッドは、上述した明細書に開示さ
れているような記録ヘッドを複数組み合わせることによ
ってフルライン構成にしたものや、一体的に形成された
一個のフルライン記録ヘッドであっても良い。
【0044】加えて、装置本体に装着されることで、装
置本体との電気的な接続や装置本体からのインクの供給
が可能になる交換自在のチップタイプの記録ヘッド、あ
るいは記録ヘッド自体に一体的に設けられたカートリッ
ジタイプの記録ヘッドを用いた場合にも本発明は有効で
ある。
【0045】又、本発明の記録装置に、記録ヘッドに対
する回復手段や、予備的な補助手段等を付加すること
は、本発明の記録装置を一層安定にすることができるの
で好ましいものである。これらを具体的に挙げれば、記
録ヘッドに対しての、キャッピング手段、クリーニング
手段、加圧或は吸引手段、電気熱変換体或はこれとは別
の加熱素子、或はこれらの組み合わせによる予備加熱手
段、記録とは別の吐出を行なう予備吐出モードを行なう
手段を付加することも安定した記録を行なうために有効
である。
【0046】更に、記録装置の記録モードとしては黒色
等の主流色のみを記録するモードだけではなく、記録ヘ
ッドを一体的に構成したものか、複数個の組み合わせて
構成したものかのいずれでも良いが、異なる色の複色カ
ラー又は、混色によるフルカラーの少なくとも一つを備
えた装置にも本発明は極めて有効である。
【0047】以上説明した本発明実施例においては、液
体インクを用いて説明しているが、本発明では室温で固
体状であるインクであっても、室温で軟化状態となるイ
ンクであっても用いることができる。上述のインクジェ
ット装置ではインク自体を30℃以上70℃以下の範囲
内で温度調整を行ってインクの粘性を安定吐出範囲にあ
るように温度制御するものが一般的であるから、使用記
録信号付与時にインクが液状をなすものであれば良い。
【0048】加えて、熱エネルギーによるヘッドやイン
クの過剰な昇温をインクの固形状態から液体状態への状
態変化のエネルギーとして使用せしめることで積極的に
防止するか又は、インクの蒸発防止を目的として放置状
態で固化するインクを用いることも出来る。いずれにし
ても熱エネルギーの記録信号に応じた付与によってイン
クが液化してインク液状として吐出するものや記録媒体
に到達する時点ではすでに固化し始めるもの等のよう
な、熱エネルギーの付与によって初めて液化する性質を
持つインクの使用も本発明には適用可能である。
【0049】このようなインクは、特開昭54−568
47号公報あるいは特開昭60−71260号公報に記
載されるような、多孔質シートの凹部又は貫通孔に液状
又は固形物として保持された状態で、電気熱変換体に対
して対向するような形態としても良い。
【0050】本発明において、上述した各インクにたい
して最も有効なものは、上述した膜沸騰方式を実行する
ものである。
【0051】図6は本発明により得られた記録ヘッドを
インクジェットヘッドカートリッジ(IJC)として装
着したインクジェット記録装置(IJRA)の一例を示
す外観斜視図である。
【0052】図において、20はプラテン24上に送紙
されてきた記録紙の記録面に対向してインク吐出を行な
うノズル群を具えたインクジェットヘッドカートリッジ
(IJC)である。16はIJC20を保持するキャリ
ッジHCであり、駆動モータ17の駆動力を伝達する駆
動ベルト18の一部と連結し、互いに平行に配設された
2本のガイドシャフト19Aおよび19Bと摺動可能と
することにより、IJC20の記録紙の全幅にわたる往
復移動が可能となる。
【0053】26はヘッド回復装置であり、IJC20
の移動経路の一端、例えばホームポジションと対向する
位置に配設される。伝動機構23を介したモータ22の
駆動力によって、ヘッド回復装置26を動作せしめ、I
JC20のキャッピングを行なう。このヘッド回復装置
26のキャップ部26AによるIJC20へのキャッピ
ングに関連させて、ヘッド回復装置26内に設けた適宜
の吸引手段によるインク吸引もしくはIJC20へのイ
ンク供給経路に設けた適宜の加圧手段によるインク圧送
を行い、インクを吐出口より強制的に排出させることに
よりノズル内の増粘インクを除去する等の吐出回復処理
を行なう。また、記録終了時等にキャッピングを施すこ
とによりIJCが保護される。
【0054】30はヘッド回復装置26の側面に配設さ
れ、シリコンゴムで形成されるワイピング部材としての
ブレードである。ブレード31はブレード保持部材31
Aにカンチレバー形態で保持され、ヘッド回復装置26
と同様、モータ22および伝動機構23によって動作
し、IJC20の吐出面との係合が可能となる。これに
より、IJC20の記録動作における適切なタイミング
で、あるいはヘッド回復装置26を用いた吐出回復処理
後に、ブレード31をIJC20の移動経路中に突出さ
せ、IJC20の移動動作に伴なってIJC20の吐出
面における結露、濡れあるいは塵埃等をふきとるもので
ある。
【0055】
【実施例】以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的
に説明する。
【0056】図2において使用する基板1にシリコンウ
ェハーを用い、基板1上には、電気熱変換体2(材質H
fB2 からなるヒーター)と前記電気熱変換体に対応す
る電極3(材質Al)を蒸着、スパッタリング、エッチ
ング等の半導体製造プロセスにより成膜形成し所定の間
隔をおいて並べ、該一面を素子面とした。
【0057】また、図示されていないが、耐久性の向上
等を目的として、各電極、各電気熱変換体を含めて素子
面に保護膜等の各種の機能層を設けた。
【0058】次に、前記基板1上にポジレジストを所定
の厚さにスピンナーコーティングし、各電気熱変換体2
に相対するインク液路と、液室となるパターンマスクを
用いて、露光、現像工程を経て、固体層4を形成した。
【0059】次に、固体層4が形成された基板1と金属
部材5(本実施例ではアルミニウムを使用した)を所定
の位置で接着した。
【0060】次に、前記金属部材5と接着された基板1
をトランスファーモールド成形機に挿入しモールド樹脂
を形成した。
【0061】成形条件は、予備加熱温度80℃、注入圧
力70kgf/cm2 、成形型温度150℃、保圧硬化
時間4分とした。
【0062】次に、モールド樹脂6の硬化が完了した
後、固体層4を除去した。本実施例では、固体層とし
て、ポジレジストを使用したので、苛性ソーダ5wt%
水溶液により溶解除去した。
【0063】
【発明の効果】以上説明した本発明によってもたらされ
る効果としては、下記に列挙する項目が挙げられる。
【0064】1)ヘッド作製のための主要工程が、フォ
トレジスト及びドライフィルム等を用いたフォトリソグ
ラフィー技術によるため、ヘッドの細密部を所望のパタ
ーンで、しかも極めて容易に形成できるばかりか、同構
成の多数のヘッドを同時に加工することも可能である。
【0065】2)基板、金属部材を一括モールド成形す
るため各部材の接着力、気密性が向上し、信頼性の高い
ヘッドが提供できる。
【0066】3)インク吐出エネルギー発生素子数が多
く配設された場合にも放熱性に優れ、安定吐出が得られ
る。
【0067】4)基板と金属部材を一括モールド成形す
ることで、デリケートな基板の機械的強度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のヘッド構成の一例を示す模式的斜視図
である。
【図2】本発明の実施例において、固体層、電極、イン
ク吐出エネルギー発生素子を配設した基板の一例を示す
模式的断面図である。
【図3】本発明の実施例において、金属部材と基板を接
合したところを示す模式的断面図である。
【図4】本発明の実施例において、モールド樹脂をトラ
ンスファー成形し、成形型より離型したところを示す模
式的断面図である。
【図5】本発明の実施例において、固体層を除去したと
ころを示すインクジェット記録ヘッドの模式的断面図で
ある。
【図6】本発明に係るインクジェット記録ヘッドを備え
た記録装置の一例を示す模式的斜視図である。
【符号の説明】
1 基板 2 インク吐出エネルギー発生素子 3 制御信号入力用電極 4 固体層 5 金属部材 6 モールド樹脂層 7 トランスファーモールド成形用上金型 8 トランスファーモールド成形用下金型 9 インク吐出口 10 インク液路 11 インク供給口 16 キャリッジ 17 駆動モータ 18 駆動ベルト 19A.19B ガイドシャフト 20 インクジェットヘッドカートリッジ 22 クリーニング用モータ 23 伝導機構 24 プラテン 26 キャップ部材 30 ブレード 30A ブレード保持部材
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−90355(JP,A) 特開 平4−90356(JP,A) 特開 平4−90357(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B41J 2/16 B29C 45/02 B41J 2/05

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 インク吐出口と、インク供給口を含むイ
    ンク液室と、インク吐出口とインク液室とを連通するイ
    ンク液路と、インク液路内に配設されたインク吐出エネ
    ルギー発生素子とを有するインクジェット記録ヘッドの
    製造方法であって、基板上にインク吐出エネルギー発生
    素子を配設した後、該基板上に前記素子に対応して少な
    くとも液路パターンを有する固体層を形成し、さらに、
    固体層を形成した面とは反対の基板面に、金属からなる
    支持体を接合し、次いで、固体層を形成した基板及び支
    持体の上下面に、トランスファーモールド成形によりモ
    ールド樹脂層を一括成形し、その後前記固体層を除去し
    てインク吐出口、インク液路、インク液室及びインク供
    給口を形成することを特徴とするインクジェット記録ヘ
    ッドの製造方法。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の製造方法で製造したイン
    クジェット記録ヘッド。
  3. 【請求項3】 インク吐出エネルギー発生素子が、電気
    エネルギーを与えることによって発熱したインクに状態
    変化を生ぜしめて吐出を行わせるための電気熱変換体で
    ある請求項2記載のインクジェット記録ヘッド。
  4. 【請求項4】 記録媒体の記録領域の全幅にわたって吐
    出口が複数設けられているフルラインタイプのものであ
    ることを特徴とする請求項2記載のインクジェット記録
    ヘッド。
  5. 【請求項5】 記録媒体の被記録面に対してインクを吐
    出する吐出口が設けられている請求項2記載の記録ヘッ
    ドと、該記録ヘッドを載置するための部材とを少なくと
    も具備することを特徴とする記録装置。
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