JP3000346B2 - フライホィールの製造方法 - Google Patents

フライホィールの製造方法

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JP3000346B2
JP3000346B2 JP9707797A JP9707797A JP3000346B2 JP 3000346 B2 JP3000346 B2 JP 3000346B2 JP 9707797 A JP9707797 A JP 9707797A JP 9707797 A JP9707797 A JP 9707797A JP 3000346 B2 JP3000346 B2 JP 3000346B2
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成昭 山中
卓司 北山
美奈夫 立道
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株式会社久保田鉄工所
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エンジンの回転軸
に取り付けるフライホィールで、特に外周部にスタータ
用の歯車を有し、軸心部周囲の円板部にクラッチ板当接
面を有するフライホィールの製造方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】この種のフライホィールは、断面形状が
角状になっている棒状の鋼材(S48C相当)を、リン
グ状に成形して、その両端をフラッシュパット溶接等に
て結合してからこれの外周に歯車を切削加工して図1
(a),(b)に示すような環状素材aを作り、この環
状素材aを、図2に示すように、鋳物(FC25相当)
にて構成すると共に、これの必要部分に機械加工して形
成してなるプレート素材bに焼ばめにて嵌合結合し、あ
るいは嵌合後溶接結合して製造されている。また、歯車
部分は局部的に強度を必要とするので高周波焼入れを行
っている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記従来のフライホィ
ールの製造方法では、鋼材からなる環状素材aと鋳物か
らなるプレート素材bからなるため、機械加工が多く、
製造コストが高くなり、また、焼ばめや溶接加工により
変形するため、全面振れ検知歪修正を行う必要があっ
た。
【0004】本発明は上記のことにかんがみなされたも
ので、複数工程のプレス加工と複数工程の増肉変形成形
加工を行い、ボス部と外周部が他の部分と同等か同等以
上の肉厚になり、この外周部に歯車を設けてなるフライ
ホィールを、薄板鋼板にて一体状に成形でき、溶接工程
等の後加工を必要とすることなく、安価で、かつ優れた
品質で製造できるフライホィールの製造方法を提供する
ことを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明に係るフライホィールの製造方法は、円板状
の素材の中心部に塑性加工により、断面形状が環状で、
かつ半径方向の肉厚を素材の板厚より厚くしたボス部を
増肉成形し、次に、このボス付きの円板状の素材で、か
つ、この素材の半径方向外側部を所定の幅で残した内側
部分を、円筒状の内側型と、この内側型の外側に摺動可
能に嵌合する外側型との2重型とした上型と下型とで板
厚方向に挟持し、上型と下型との挟持部分から外れた外
側部分を、成型ローラにて増肉変形し、ついで上下の外
側型を開き、上下の内側型の外側に突出している部分を
さらに他の成形ローラにて増肉変形してこの部分に歯車
用のブランク部を成形し、この部分に歯車を成形する。
【0006】
【0007】また、上記フライホィールの製造方法にお
いて、歯車用ブランク部を、素材の円板部の厚み方向
に、スタータ歯車の挿入方向上流側部分が他側に比べて
少なくなるように偏肉させた。
【0008】さらに、上記各フライホィールの製造方法
において、円板状素材に、重量%で、C:0.2〜0.
6%、Si:0.01〜0.1%、Mn:0.05〜
0.5%、Ti:0.001〜0.01%、B:0.0
01〜0.01%、残りFeの鋼板を用いた。
【0009】
【作 用】1枚の円板状の素材からボス部と歯車用ブ
ランク部が塑性変形により増肉成形される。そして、歯
車用ブランク部は2段階に増肉成形される。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図3以下に
基づいて説明する。まず、板厚が2〜4mmの鋼板を円
形に打抜き成形した円板素材1の中心にピアッシング工
程にて小孔2を設ける。ついで、この円板素材1を図5
(a)に示すように上下の押え金型3a,3bにて挾持
して上記小孔2にバーリング工程にて小孔2より大径の
バー4を押し込んで図5(b)に示すように小孔2の縁
部を軸方向の一方側へ折り曲げ突出して環状部5を設け
る。
【0011】その後、図6(a)に示すように、上下の
成形金型6a,6bにて上記環状部5を座屈させて増肉
して図6(b)に示すように上記小孔2を設けた位置に
ボス部7を成形する。以後の成形工程では、このボス部
7が基準となる。
【0012】ついで、このボス部7を設けた円板素材1
を図7に示すプレス工程にて上下の成形金型8a,8b
及びボス部7に嵌合する位置決めピン9を用い、ボス部
7の周囲の裏側にクラッチ板当接面10を皿状に形成し
て、図8に示すような皿状素材1′を得る。なお、この
クラッチ板当接面10を形成するための皿状部の深さは
必要に応じて適宜とられるもので、最も浅い場合には、
他の部分を同一平面状にしたものもある。
【0013】この皿状素材1′の外周部を図9から図1
3に示したスピニング工程にて増肉する。まず、図9に
示すように、上型11と下型12及び位置決めピン9に
て皿状素材1′を調心した状態で挾持する。このときの
上下の各型11,12は2重金型になっていて、増肉し
ない円板部分を挾持する円柱状の内側上型11a、内側
下型12aと、この各型の外側に摺動可能に嵌合した円
筒状の外側上型11b、外側下型12bとからなってい
る。この外側上型11bと外側下型12bの肉厚tは、
皿状素材1′の外周部の増肉変形範囲Lの1/2〜1/
3の寸法になっている。従って、上型11と下型12に
て挾持された皿状素材1′の外周部は増肉変形範囲Lの
うち、L/2〜2L/3だけ半径方向に突出されてい
る。
【0014】ついで、図10に示すように、外周にV字
状の成形型13aを設けた第1成形ローラ13にて上記
突出部を外側から半径方向に押圧してこの部分を断面形
状がV字山形状になように増肉成形する。このときの第
1成形ローラ13の成形型13aの大きさは、上記第2
の上,下の型11b,12bより突出している部分の容
積に相当する大きさになっている。このときの増肉成形
は、第2の上,下の型11b,12bの外側、すなわ
ち、増肉変形範囲Lの1/2〜2/3の範囲で行われ
る。
【0015】ついで、図11に示すように、第2上型1
1bと第2下型12bを開動作して離間させ、増肉変形
範囲の残りの部分(L/2〜L/3)をも第1上型11
aと第1下型12aの外側に突出させる。この状態で、
外周にV字状の成形型14aを設けた第2成形ローラ1
4にて上記突出部を外側から半径方向に押圧してこの部
分を断面形状がV字山形状になるように増肉成形する。
このときの第2成形ローラ14の成形型14aの大きさ
は、上記第1の上,下の型11a,12aより突出して
いる部分の容積に相当する大きさになっている。このと
きの増肉成形は増肉変形範囲L全体の部分で行われる。
【0016】さらに、図12に示すように、上記第2の
上,下の型11b,12bが開いている状態で外周に半
円弧状の成形型15aを設けた第3成形ローラ15を用
いて増肉変形部分を断面形状が半円形になるように成形
し、図13に示すように、さらに、外周に略四角状の成
形型16aを設けた第4成形ローラ16を用いて増肉変
形部分を断面形状が略四角状になるように成形して歯車
用ブランク部17を得る。
【0017】このときの図14に示すように、歯車用ブ
ランク部17は皿状素材1′の円板部に対して厚さ方向
に偏心されていて、これの幅をWとしたときに、皿状素
材1′の円板部の中心に対してW1 ,W2 でW1
2 、すなわち、W1 =2W/3、W2=W/3となっ
ている。そしてこの偏心配分は、フライホィールに対し
てスタート時にスタータ歯車が入り込む側が少なくなっ
ている。
【0018】次に、図15に示すように、この皿状素材
1′を第1の上,下の型11a,12aにて挾着した状
態で上記歯車ブランク部17の外周側から歯形成形ロー
ラ18を押圧してこれの外周面に歯車19を冷間、成形
または温間塑性加工により転造成形にて成形する。
【0019】このときの歯形成形ローラ18は荒成形用
と仕上げ成形用と分けて用いる。図16(a)は荒成形
用の歯形成形ローラ18aを、また図16(b)はこれ
によって成形された荒成形歯車19aを示す。そして図
17(a)は仕上げ用の歯形成形ローラ18bを、また
図17(b)はこれによって成形された仕上げ成形歯車
19bを示す。
【0020】上記歯車用ブランク部17への歯形成形
は、上記した転造成形によることなく、通常の歯切り盤
を用いた機械加工にて行ってもよい。
【0021】また、上記実施の形態における素材となる
鋼板は、重量%で、C:0.2〜0.6%、Si:0.
01〜0.1%、Mn:0.05〜0.5%、Ti:
0.001〜0.01%、B:0.001〜0.01
%、残りFeの組成の材料を用いた。このような材質で
あることにより、この鋼板は塑性加工性がよく、また、
焼入れ深度及び焼入れ硬度において優れた焼入れ性を有
している。そして、この組成において、Siが極端に低
いことにより、マトリックス(基地)の強度が低くな
り、伸び、靭性が向上されている。Mnは通常の鉄鋼の
添加量である。TiはCを固定すると共に、脱酸を促進
し、結果的に伸びのよい特性をもたらす。BはCの低い
鋼で塑性加工を良くし、後工程の焼入れ性を確保するた
め少量添加している。
【0022】
【発明の効果】上記構成において、請求項1記載の発明
によれば、1枚の円板状の素材から、溶接工程等の後加
工を必要とすることなく、安価で、かつ優れた品質でフ
ライホィールを製造することができる。そしてさらに、
円板の外周部を外側から成形ローラにて押圧しての増肉
変形成形による歯車用ブランク部の成形が2段階に行わ
れ、この部分の増肉変形が冷間、または温間塑性変形に
より割れが生じることなく成形することができる。
【0023】
【0024】そして、請求項記載の発明によれば、上
記歯車用ブランク部が素材の円板部の厚み方向にスター
タ歯車の挿入方向上流側部分が他側に比べて少なくなる
ように偏肉されていることにより、スタータ歯車の挿入
方向の強度が大きくなり、この部分に歯車を成形してフ
ライホィールとしたときに、スタータ歯車が挿入する始
動時におけるフライホィールの歯車の振動の発生を防ぐ
ことができる。
【0025】さらに、請求項記載のフライホィールの
製造方法では、Siの含有が極端に少ないことより、伸
び及び靱性が向上され、Tiの含有はCを固定すると共
に、脱酸が促進されて、伸びのよい特性がもたらせられ
る。Bの含有によりCの低い鋼で塑性加工性がよくな
り、後工程の焼入れ性が確保される。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)従来のフライホィールの製造方法におけ
る構成部材の1つである環状素材を一部部破して断面形
状を示した平面図、(b)はその断面図である。
【図2】従来のフライホィールの製造方法により製造さ
れたフライホィールを示す断面図である。
【図3】本発明に係るフライホィールの製造方法に用い
る円板素材を示す平面図である。
【図4】円板素材に小孔を設けた状態の断面図である。
【図5】(a)はバーリング工程を示す作用説明図であ
る。(b)はバーリングされた状態の断面図である。
【図6】(a)はボス部の増肉加工状態を示す作用説明
図である。(b)は増肉成形したボス部を示す断面図で
ある。
【図7】クラッチ板当接面をプレス成形する状態の作用
説明図である。
【図8】クラッチ板当接面をプレス成形する状態の素材
を示す斜視図である。
【図9】歯車用ブランク部を成形する状態の作用説明図
である。
【図10】歯車用ブランク部を成形する状態の作用説明
図である。
【図11】歯車用ブランク部を成形する状態の作用説明
図である。
【図12】歯車用ブランク部を成形する状態の作用説明
図である。
【図13】歯車用ブランク部を成形する状態の作用説明
図である。
【図14】歯車用ブランク部の形状を示す断面図であ
る。
【図15】歯車用ブランク部に歯車を塑性成形する状態
を示す作用説明図である。
【図16】(a)は荒成形用の歯形成形ローラを示す斜
視図である。(b)は荒成形された歯車を示す平面図で
ある。
【図17】(a)は仕上げ用の歯形成形ローラを示す斜
視図である。(b)は仕上げ成形された歯車を示す平面
図である。
【符号の説明】
a…環状素材、b…プレート素材、1…円板素材、1′
…皿状素材、2…小孔、3a,3b…押え金型、4…バ
ー、5…環状部、6a,6b…成形金型、7…ボス部、
8a,8b…成形金型、9…位置決めピン、10…クラ
ッチ板当接面、11…上型、11a…内側上型、11b
…外側上型、12…下型、12a…内側下型、12b…
外側下型、13,14,15,16…成形ローラ、13
a,14a,15a,16a…成形型、17…歯車用ブ
ランク部、18,18a,18b…歯形成形ローラ、1
9,19a,19b…歯車。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭52−101660(JP,A) 特開 昭62−279047(JP,A) 特開 平9−10885(JP,A) 特開 昭58−342(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B21H 1/00 B21H 5/00 B21D 53/28

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】円板状の素材の中心部に塑性加工により、
    断面形状が環状で、かつ半径方向の肉厚を素材の板厚よ
    り厚くしたボス部を増肉成形し、次に、このボス付きの円板状の素材で、かつ、この素材
    の半径方向外側部を所定の幅で残した内側部分を、円筒
    状の内側型と、この内側型の外側に摺動可能に嵌合する
    外側型との2重型とした上型と下型とで板厚方向に挟持
    し、 上型と下型との挟持部分から外れた外側部分を、成型ロ
    ーラにて増肉変形し、 ついで上下の外側型を開き、 上下の内側型の外側に突出している部分をさらに他の成
    形ローラにて増肉変形してこの部分に歯車用のブランク
    部を成形し、 この部分 に歯車を成形することを特徴とするフライホィ
    ールの製造方法。
  2. 【請求項2】 請求項1記載のフライホィールの製造方
    法において、歯車用ブランク部を、素材の円板部の厚み
    方向に、スタータ歯車の挿入方向上流側部分が他側に比
    べて少なくなるように偏肉させたことを特徴とするフラ
    イホィールの製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1記載のフライホィールの製造方
    法において、円板状素材に、重量%で、C:0.2〜
    0.6%、Si:0.01〜0.1%、Mn:0.05
    〜0.5%、Ti:0.001〜0.01%、B:0.
    001〜0.01%、残りFeの鋼板を用いたことを特
    徴とするフライホィールの製造方法。
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