JP2989521B2 - 転動体を組込んだチェーン - Google Patents

転動体を組込んだチェーン

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Description

【発明の詳細な説明】
【０００１】
【発明の属する技術分野】本発明は、グリース等の潤滑
油の供給が不要な無給油タイプの転動体を組込んだチェ
ーンに関する。
【０００２】
【従来の技術】従来、転動体を組込んだチェーンとし
て、チェーンのローラとブシュ間またはブシュとピン間
に複数の金属製の転動体を組込んだチェーンが提案され
ている。そして、前記チェーンは、前記金属製の転動体
間の直接の接触を防止するため、グリース等の潤滑油を
必要としていた。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記従
来のチェーンは、鋼球や鋼製コロ等の金属製の転動体が
用いられているから、潤滑油が劣化したり、潤滑油が流
出すると、転動体どうしが直接接触して焼き付き等の回
転不良を生じるため、常時潤滑油の補給を行うメンテナ
ンスが必要であるという問題があった。
【０００４】そこで、本発明は、前述したような従来の
チェーンの問題を解消し、潤滑油の補給等の保守が不要
で、大きな負荷を支持することができ、しかも高い耐久
性が得られる無給油タイプの転動体を組込んだチェーン
を提供することを目的とする。
【０００５】
【課題を解決するための手段】前記の目的のため、第１
に、本発明の転動体を組込んだチェーンは、チェーンの
ローラとブシュ間に複数の転動体を組込んだチェーンに
おいて、前記複数の転動体を金属製転動体とポリエチレ
ン樹脂製転動体で構成し、前記金属製転動体とポリエチ
レン樹脂製転動体とを交互に配置したものである。
【０００６】また、第２に、本発明の転動体を組込んだ
チェーンは、チェーンのブシュとピン間に複数の転動体
を組込んだチェーンにおいて、前記複数の転動体を金属
製転動体とポリエチレン樹脂製転動体で構成し、前記金
属製転動体とポリエチレン樹脂製転動体とを交互に配置
したものである。
【０００７】
【作用】金属製転動体間に介在されたポリエチレン樹脂
製転動体が、金属製転動体相互の直接接触を防止する。
また、ポリエチレン樹脂は、分子構造に分岐が少なく、
分子間力の小さい樹脂であるため、ポリエチレン樹脂製
転動体の摩耗形態としては、凝着部分が摩擦によって流
動し、薄片状の摩耗粉を生じさせて、分子配向した滑り
易い薄層を形成し、それが金属製転動体表面に付着して
優れた潤滑効果をもたらす。
【０００８】さらに、金属製転動体が無給油でローラと
ブシュ間またはブシュとピン間を転動する際に発生する
摩擦粉や外部から侵入する砂塵等のような、ローラまた
はブシュの回転不良の原因となる異物は、前記ポリエチ
レン樹脂製転動体の表面や金属製転動体の表面に付着し
たポリエチレン樹脂の薄層の表面に埋没されて除去され
る。
【０００９】
【実施例】以下、図面に基づいて本発明を詳細に説明す
る。図１は、本発明の転動体を組込んだチェーンの実施
例１を示す要部分解斜視図である。同図において、チェ
ーン５は、一対の内プレート６，６がブシュ１１によっ
て連結され、前記一対の内プレート６，６の両外側に外
プレート７，７を重ねた状態で、ピン８を前記ブシュ１
１内に貫通させて内プレート６と外プレート７とが連結
されている。ブシュ１１には、両側にリング状の側板
９，９が配置され、前記側板９，９間に、複数の金属製
転動体としての鋼製円筒コロ１２とポリエチレン樹脂製
転動体としてのポリエチレン樹脂製円筒コロ１３とが交
互に配置され、これらのコロの外側に鋼製のローラ１０
が被嵌される。そして、前記構成のチェーン５において
は、ローラ１０の内面がころがり軸受の外レースとして
の役割を果たし、また、ブシュ１１の外面がころがり軸
受の内レースとしての役割を果たしている。
【００１０】前記構成のチェーン５においては、ローラ
１０が回転すると、鋼製円筒コロ１２が転がり、その
際、ポリエチレン樹脂製円筒コロ１３は鋼製円筒コロ１
２とともに転がりながら、ポリエチレン樹脂製円筒コロ
１３が鋼製円筒コロ１２どうしの直接の接触を防ぐ役割
をする。その結果、鋼製円筒コロ１２どうしの接触によ
る鋼製円筒コロ１２表面の金属剥離が発生せず、また、
ポリエチレン樹脂のもつ優れた自己潤滑性によって、回
転が円滑に行われるので、無給油状態での使用が可能と
なる。さらに、ポリエチレン樹脂製円筒コロ１３は、鋼
製円筒コロ１２が無給油でローラ１０とブシュ１１間を
転動する際に発生する摩擦粉や外部から侵入する砂塵等
のような、ローラ１０の回転不良の原因となる異物を、
その表面に埋没させて除去するクリーナとしての役割を
果たしている。また、回転中にポリエチレン樹脂製円筒
コロ１３から生じた薄片状の摩耗粉が鋼製円筒コロ１２
の表面に付着してポリエチレン樹脂の薄層が形成され、
前記薄層の表面にも前記異物が埋没されて除去される。
ポリエチレン樹脂製円筒コロ１３の材料としては、耐摩
耗性の面から高密度ポリエチレン樹脂が好ましい。
【００１１】このように、前記チェーン５は、ローラ１
０の回転が、ポリエチレン樹脂製円筒コロ１３の自己潤
滑性によって無給油で円滑に行われるため保守が不要で
あり、グリース等の潤滑油を使用する必要がないので、
食品等の潤滑油を使用できない分野で使用するコンベヤ
チェーンとして有用となる。
【００１２】次に、図２は、本発明の転動体を組込んだ
チェーンの実施例２を示す要部斜視図である。同図にお
いて、チェーン１４は、一対の内プレート１７，１７が
中空円筒状のブシュ１５によって連結され、その外側に
はローラ１８が回転自在に嵌挿されている。一方、前記
一対の内プレート１７，１７の両外側には、一対の外プ
レート１９，１９がピン１６によって相互に連結されて
配置されている。また、前記ブシュ１５と前記ピン１６
との間には、複数の金属製転動体としての鋼製ニードル
ローラ２０とポリエチレン樹脂製転動体としてのポリエ
チレン樹脂製ニードルローラ２１とが交互に配置されて
いる。そして、前記構成のチェーン１４においては、ブ
シュ１５の内面がころがり軸受の外レースとしての役割
を果たし、また、ピン１６の外面がころがり軸受の内レ
ースとしての役割を果たしている。
【００１３】前記構成のチェーン１４においては、ブシ
ュ１５とピン１６との間に鋼製ニードルローラ２０とポ
リエチレン樹脂製ニードルローラ２１を組み込んだこと
によって、内外プレート間の屈曲運動が円滑に行われる
とともに、ポリエチレン樹脂製ニードルローラ２１の自
己潤滑作用及びクリーニング作用によって、給油の必要
がなく保守が容易となる。ポリエチレン樹脂製ニードル
ローラ２１の材料としては、耐摩耗性の面から高密度ポ
リエチレン樹脂が好ましい。
【００１４】前述した、それぞれの実施例において、鋼
製の転動体及びポリエチレン樹脂製の転動体としては、
それぞれ、円筒コロとニードルローラを用いた例を示し
たが、ボールベアリングのような球形のものや、テーパ
ローラベアリングのように円錐台形状のもの等様々な回
転対称形状のものを用いることもできる。また、それぞ
れの転動体は、用途に応じて、例えば ローラとブシュ
間またはブシュとピン間に複数列に配置することもでき
る。
【００１５】次に、転動体を組込んだコンベヤ用のチェ
ーンについて、本発明の転動体を組込んだチェーンと、
従来構造の転動体を組込んだチェーンとの比較テストを
行った結果について説明する。テストに用いたものは、
ＲＦ１０トンサイズのコンベヤチェーンであり、前述し
た図１に示す構造のものが用いられた。前記の構造にお
いて、内面がころがり軸受の外レースとしての役割を果
たすローラは、熱処理を行った強靭鋼で形成された外径
が５０．８ｍｍのものであり、また、外面がころがり軸
受の内レースとしての役割を果たすブシュは、熱処理を
行った浸炭焼入鋼で形成された外径が２０．１ｍｍのも
のを用いた。金属製の転動体としては、外径７．８ｍｍ
の熱処理を行った強靭鋼のコロを用いた。また、側板は
ポリアミド樹脂製のものを用いた。ポリエチレン樹脂製
転動体としては、外径７．８ｍｍの高密度ポリエチレン
樹脂製コロを用いた。
【００１６】比較例としては、前記と同一サイズのコン
ベヤチェーンで、全て同一サイズの鋼製コロを用いたも
のと、鋼製コロとポリアミド樹脂製コロとを交互に配置
したものとを用いた。テスト条件としては、全てローラ
周速２４ｍ／ｍｉｎ、荷重７０ｋｇｆ／ｃｍ2とし、無
給油状態のもとでローラの回転試験を行った。
【００１７】テストの結果、本発明のものは、ローラが
約７００，０００回転した時点で、なお、ローラの回転
が良好に保たれ、発熱や鋼の摩耗粉の発生は確認されな
かった。また、鋼製コロにポリエチレン樹脂の被膜が付
着されており、無潤滑状態での使用が可能となってい
た。
【００１８】一方、全てのコロに鋼製コロを用いている
ものでは、約９，０００回転した時点でローラの回転が
ロックし、発熱するとともに鋼の摩耗粉が多量に発生し
ていた。また、鋼製コロとポリアミド樹脂製コロとを交
互に配置しているものでは、約４０，０００回転した時
点でローラの回転不良が発生し、発熱するとともに鋼の
摩耗粉の発生が確認され、潤滑を行う必要があることが
判明した。
【００１９】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の転動体を
組込んだチェーンによれば、金属製転動体間にポリエチ
レン樹脂製転動体を介在させているため、無給油状態で
の金属製転動体相互の直接接触による表面の金属剥離を
発生することがなく、また、ポリエチレン樹脂製転動体
の自己潤滑性によって、給油を必要とすることなくロー
ラまたはブシュの円滑な回転を行うことができる。
【００２０】また、金属製転動体が無給油状態でチェー
ンのローラとブシュ間またはブシュとピン間を転動する
際に発生する摩擦粉や、外部から侵入する砂塵等のよう
な、ローラまたはブシュの回転不良の原因となる異物
は、ポリエチレン樹脂製転動体の表面や、前記ポリエチ
レン樹脂製転動体から薄片状の摩耗物として剥離して金
属製転動体表面に薄い層として付着したポリエチレン樹
脂の表面に埋没されて除去されるため、チェーンの保守
が不要となる。
【００２１】さらに、強度の大きい金属製転動体によっ
て負荷を受けることができるので、大きな負荷を支持す
ることができ、しかも、従来の転動体を組込んだチェー
ンのように潤滑油の欠乏による焼き付き等を起こす恐れ
がないため、高い耐久性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図１】 本発明の転動体を組込んだチェーンの実施例
１を示す要部分解斜視図である。
【図２】 本発明の転動体を組込んだチェーンの実施例
２を示す要部斜視図である。
【符号の説明】
５，１４ チェーン ６，１７ 内プレー
ト ７，１９ 外プレート ８，１６ ピン ９ 側板 １０，１８ ローラ １１，１５ ブシュ １２ 鋼製円筒
コロ １３ ポリエチレン樹脂製円筒コロ ２０ 鋼製ニードルローラ ２１ ポリエチレン樹脂製ニードルローラ
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6，ＤＢ名) F16C 33/66 F16C 33/34 F16G 13/06

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項１】 チェーンのローラとブシュ間に複数の転
    動体を組込んだチェーンにおいて、前記複数の転動体を
    金属製転動体とポリエチレン樹脂製転動体で構成し、前
    記金属製転動体とポリエチレン樹脂製転動体とを交互に
    配置したことを特徴とする転動体を組込んだチェーン。
  2. 【請求項２】 チェーンのブシュとピン間に複数の転動
    体を組込んだチェーンにおいて、前記複数の転動体を金
    属製転動体とポリエチレン樹脂製転動体で構成し、前記
    金属製転動体とポリエチレン樹脂製転動体とを交互に配
    置したことを特徴とする転動体を組込んだチェーン。
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