JP2985772B2 - 加工後耐食性に優れた表面処理鋼板 - Google Patents

加工後耐食性に優れた表面処理鋼板

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JP2985772B2
JP2985772B2 JP8144510A JP14451096A JP2985772B2 JP 2985772 B2 JP2985772 B2 JP 2985772B2 JP 8144510 A JP8144510 A JP 8144510A JP 14451096 A JP14451096 A JP 14451096A JP 2985772 B2 JP2985772 B2 JP 2985772B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、加工後耐食性に優
れた表面処理鋼板、特にガソリン、ガソホールなどの燃
料に対して高い耐食性を示す、自動車や二輪車の燃料タ
ンク、さらにはストーブ、ボイラー等の灯油タンク、非
常に厳しい加工性と加工後の高耐食性が要求されるオイ
ルフィルター等の用途に適した表面処理鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車や二輪車などの燃料タンク用材料
には、溶接性ばかりでなく、外面側は一般の耐食性( 以
下、外面耐食性という) が、内面側はガソリンなどの燃
料に対する耐燃料腐食性が要求される。これらを総称し
て耐食性、または加工後耐食性という。燃料タンク用材
料として、従来はターンシート(10〜25%Sn−Pb合金め
っき鋼板)が広く使用されてきた。しかし、めっき皮
膜中のPbが人体に有害である、アルコール含有燃料を
使用した場合にアルコール酸化物にめっき皮膜が溶解さ
れ易い、めっき皮膜のピンホールが不可避であって、
めっき皮膜より電気的に卑なFeがこのピンホールから優
先的に腐食される結果、耐孔あき腐食性が不十分にな
る、といった問題点があり、代替材料が求められてき
た。
【0003】特に、近年は環境問題を配慮した排ガス規
制により、ガソホールと呼ばれるガソリン/アルコール
混合燃料(約15%のメタノールを含有するM15 、約85重
量%のメタノールを含有するM85 などがある) を代表例
とするアルコール含有燃料の使用が一部の国々で推進さ
れている。しかし、従来のターンシートは上述のように
アルコール含有燃料により腐食され易いため、アルコー
ル含有燃料に対する耐燃料腐食性に優れた燃料タンク用
材料の開発が急務となっている。
【0004】この観点から、加工後の耐食性とコストを
考慮して、Zn−Ni合金電気めっき鋼板を燃料タンクに適
用することが従来より検討されてきた。従来技術として
は次の公報を挙げることができる。
【0005】特開昭58−45396 号公報には、Ni含有量5
〜50wt%、厚さ0.5 〜20μmのZn−Ni合金電気めっきの
上にクロメート処理を施した燃料タンク用の表面処理鋼
板が示されている。
【0006】特開平5−106058号公報には、Ni含有量8
〜20wt%のZn−Ni合金めっきを10〜60g/m2の付着量で設
けた上にクロメート処理を施した燃料タンク用の表面処
理鋼板が示されている。
【0007】これらの表面処理鋼板は、外面耐食性は非
常に良好であるが、耐燃料腐食性、特に加工後の耐燃料
腐食性はまだ十分とは言えず、例えばアルコール含有燃
料に塩水が混入した場合などの非常に厳しい環境下では
腐食が起こり易かった。また、これを改善するため、ク
ロメート皮膜またはめっき皮膜を厚くすると、燃料タン
ク用材料として重要な性能である溶接性が劣化するとい
う問題があった。
【0008】この他、特開昭62−27587 号公報に開示さ
れているように、Zn−Ni合金めっきの上にNiめっきを重
ねた2層めっき鋼板などについても検討が行われてきた
が、製造工程が増え、コスト高になるという問題があっ
た。
【0009】序いでながら、めっき層にクラックを設け
る技術としては特開平5−25679 号公報、および特開平
4−337099号公報に開示されているが、これらはクラッ
クを設けた下地めっき層のうえにさらにめっき層を設け
そのアンカー効果により上層めっき層の密着性を改善し
ようとするものである。これは自動車の外板に用いたと
きの耐衝撃密着性を改善しようとするものである。
【0010】さらに特開昭62−297490号公報にはNi合金
めっき層にクラックを設けることが開示されているが、
これにより表面に微細凹凸模様を形成し黒色化を実現す
るためのものである。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】ここに、本発明の目的
は、このようなZn−Ni合金めっき+クロメートの表面処
理鋼板の従来技術の問題点を解消すべく、アルコール含
有燃料を含む燃料に対する加工後の耐燃料腐食性を、溶
接性を損なわず、かつコストを実質的に増大させずに改
善できる技術を開発することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、かかる課
題を解決すべく種々検討を重ねた結果、酸性浴を用いた
連続Zn−X(X=Ni, Co, Mn, Crのうち1種又は2種以
上。以下Xという)合金電気めっき工程の最終段階で通
電を停止し、めっき液中に短時間の浸漬を行うと、加工
後の耐食性、特に、耐燃料腐食性が著しく改善されるこ
とに気付いた。その原因を究明した結果、この酸性めっ
き液中での浸漬により、Zn−X合金めっき層にクラック
が発生し、こうして発生しためっき皮膜表面のクラック
密度、クラックの最大幅、およびクラックの深さが特定
の範囲内にある場合に、このクラックを潤滑性を付与し
たクロメート皮膜で被覆したときに、加工後の耐燃料腐
食性が著しく向上することを見出し、本発明を完成し
た。
【0013】ここに、本発明は、鋼板上に、片面付着量
が5〜50g/m2のZn−X合金電気めっき皮膜を設け、その
合金組成は、Xが、Ni:3〜18wt%、Co:0.02〜3wt
%、Mn:25〜45wt%、Cr:8〜20wt%から成る群から選
んだ少なくとも1種を含み、さらにこのZn−X合金めっ
き皮膜の上に金属Cr換算付着量で10〜200mg/m2のクロメ
ート皮膜を設けた表面処理鋼板からなり、クロメート皮
膜の下層のZn−X合金めっき皮膜がクラックを有し、こ
のクラックの密度がめっき表面の1mm×1mmの視野中で
のクラックに囲まれた領域の個数で表して1000〜150000
個の範囲であり、かつこのクラックの最大幅0.5 μm以
下のものが90%以上存在し、クラックの深さがめっき皮
膜厚さの80%以上のものが80%以上存在し、クロメート
皮膜が潤滑材を含有していることを特徴とする加工後耐
食性に優れた表面処理鋼板である。
【0014】
【発明の実施の形態】添付図面の図1は、本発明にかか
る表面処理鋼板のめっき皮膜の断面構成を示す模式的説
明図であり、図中、鋼板1の上にはZn−X合金めっき皮
膜2が、そしてその上にはクロメート皮膜3が設けられ
ており、めっき皮膜2にはクラック4が形成されてい
る。
【0015】本発明において使用するめっき鋼板のZn−
X合金めっき皮膜の合成組成は、Xは、Ni:3〜18wt
%、Co:0.02〜3wt%、Mn:25〜45wt%、Cr:8〜20wt
%から成る群から選んだ少なくとも1種を含む。ただ
し、Xが2種以上の合金元素を包含する場合、好ましく
は、2番目以降の元素は、1番目の元素と同様に、Ni:
3〜18wt%、Co:0.02〜3wt%、Mn:25〜45wt%、Cr:
8〜20wt%から成る群から選んでもよく、あるいは2番
目以降の元素をNi、Co、Mn、Crの中から選んでその合計
量を5%以下に制限してもよい。
【0016】このめっき皮膜のX含有量とは、Zn−X合
金電気めっき直後のX含有量ではなく、クラック発生後
のめっき皮膜のX含有量の平均値を意味する。本明細書
ではこれを単にX含有量という。
【0017】このめっき皮膜のX含有量は、Xが単独添
加される場合、それぞれについて上述の範囲より低すぎ
ると、加工後の外面耐食性および耐燃料腐食性ともに十
分でなく、一方X含有量は、Xが2種以上添加される場
合も含めて、それぞれ上述の範囲より高すぎると、加工
性または外面耐食性が不十分となる。
【0018】特に合計5%以下加えられる2番目以降の
元素は外面耐食性のさらなる改良のために添加され、そ
の合計量が5%を越えると加工性の劣化がわずかにみら
れる。Ni単独の場合、その含有量は、好ましくは3〜14
%または9〜18%、より好ましくは10〜14%、さらに好
ましくは11〜13%である。
【0019】また、めっき付着量 (片面当たりの量、以
下同じ) が5g/m2より少ないと、加工後の耐食性が不十
分であり、一方50g/m2より多いと、実現される性能が飽
和して不経済である上、溶接性が劣化する。めっき付着
量は好ましくは7〜30g/m2、より好ましくは10〜25g/m2
である。
【0020】本発明によれば、Zn−X合金めっき皮膜に
前述のように1000〜150,000 個/mm2 の範囲の密度でク
ラックを発生させ、その上にクロメート処理を施すと、
加工後の耐燃料腐食性が飛躍的に向上する。その理由は
必ずしも明らかではないが、このようなクラック中にク
ロメートが入り込むことにより、クロメート皮膜が強固
に固定されるアンカー効果と、クラックを耐食性に優れ
たクロメート皮膜が覆う表面積が大きくなること、また
非クラック型のZn−X合金めっき鋼板ではプレス加工時
にめっき皮膜にクラックが発生し、下地の鋼板が露出す
ることにより耐食性が劣化するのに対し、めっき皮膜に
予めクラックを発生させ、そのクラックをクロメート皮
膜で覆うことにより、プレス加工時に新たに発生するク
ラックが少なく、全体として耐食性が向上すること、な
どが考えられる。
【0021】本発明では、クラックの密度は、めっき皮
膜表面の1mm×1mmの視野中でのクラックに囲まれた領
域の個数で表す。このクラック密度の測定は、サンプル
のめっき皮膜表面の倍率1000倍のSEM(走査式電子顕微
鏡) 写真をランダムに30枚撮影し、各写真についてラン
ダムに設定した0.1 mm×0.1 mmの視野中にあるクラック
に囲まれた領域の個数 (クラック個数) を画像解析によ
り計数することにより行う。30枚の写真で求めたこのク
ラック個数の平均値を算出し、100 倍した値をクラック
密度とする。「クラックに囲まれた領域」とは、図2に
模式的に示すように、SEM 写真において見られる、クラ
ック4により島状に区画された領域のことである。
【0022】本発明によれば、このようにして求めたク
ラック密度が1000個以上、150,000個以下となるようにZ
n−X合金めっき皮膜にクラックを発生させることによ
り、例えば、ガソリンやガソホールによる腐食に対する
耐食性、つまり加工後の耐燃料耐食性が飛躍的に改善さ
れる。このクラック密度が150,000 個より大きくなる
と、クラックが多すぎ、めっきの被覆率が小さくなりす
ぎて加工後の耐燃料腐食性が劣化する。また、このクラ
ック密度が1000個より少ないと、加工後の耐燃料腐食性
の改善効果が劣化する。好ましくは、クラック密度が10
00〜50,000個である。
【0023】また、クラックの最大幅は、0.5 μm以下
のものが90%以上存在することとする。クラックの最大
幅は、上記の30枚のSEM 写真の0.1 mm×0.1 mmの視野中
に存在するクラックの中で最大のクラック幅を測定する
ことにより求めた値である。すなわち、各写真について
1個ずつの視野を選び各視野の最大幅をもってその領域
の最大幅とし、これが0.5 μm以下のものの割合を決定
するのである。このクラック最大幅が0.5 μm以下のも
のが90%以上という範囲を外れると、めっき皮膜の環境
遮断効果が阻害され、加工後の耐食性および耐燃料腐食
性がともに劣化する。好ましくは、クラックの最大幅0.
4 μm 以下のものが90%以上存在することである。
【0024】クラックの深さは、長さ1mmの範囲で断面
の倍率2000倍のSEM 写真を撮影し、この範囲に存在する
クラックの深さを測定し、これとめっき厚みとを比較し
たものである。めっき厚みの80%以上の深さのクラック
の数が、クラック全体の数の80%以上存在することとす
る。この範囲で加工後の外面耐食性および耐燃料腐食性
がすぐれている。クラックの深さがめっき厚みの80%未
満というように浅かったり、めっき厚みの80%以上のク
ラックの割合が80%未満と少ないと、加工した際に新た
にクラックが生じ、加工後の外面耐食性および耐燃料腐
食性が損なわれる。
【0025】好ましくは、クラック密度が1000〜50,000
個であり、クラックの最大幅0.4 μm以下のものが、90
%以上存在し、めっき厚みの80%以上のものが、95%以
上存在していることである。
【0026】Zn−X合金めっき皮膜の表面に上記のクラ
ックを発生させる方法は特に制限されず、めっき処理後
に曲げ戻しや引張などの塑性加工を行うことによる機械
的な方法も可能であるが、酸またはアルカリ水溶液によ
りエッチングすることによる化学的処理の方がクラック
密度の制御やクラックの均一性の面で優れているので好
ましい。クラック密度等を上述のような範囲に制御する
には例えば、浸漬条件、特に時間を調整すればよい。
【0027】Zn−X合金電気めっきを酸性浴 (例、硫酸
塩浴) で行う場合には、この酸性のめっき液をエッチン
グにも使用することができる。すなわち、酸性浴中で鋼
板に通電してZn−X合金めっきを施す電気めっき処理に
おいて、先に説明したように、めっきの最終段階で通電
を停止し、鋼板を無通電状態でめっき液に浸漬すること
によりめっき表面をエッチングし、クラックを発生させ
ることができる。これにより、エッチング用に用意した
別の処理槽や酸またはアルカリ水溶液を使用せず、従来
のめっき装置とめっき液をそのまま使用して、めっき後
のエッチングを行い、必要なクラックをめっき表面に発
生させることができ、コストを抑え、工程数を増大させ
ずに効率よく、本発明の表面処理鋼板が製造される。も
ちろん、めっき液の浸漬処理は、めっき浴とは別に付設
した浸漬槽で実施することもできる。
【0028】本発明にかかる表面処理めっき鋼板を例え
ば、燃料タンクの材料として使用する場合、タンク内面
側に相当するめっき皮膜は、好ましくは上記のように酸
性めっき液中に浸漬することにより本発明に規定するよ
うにクラックを発生させるが、タンク外面側のめっき皮
膜も同様に処理して、内面側と同様にクラックを発生さ
せることが好ましい。それにより、タンク内面の耐燃料
腐食性の向上に加えて、タンク外面の腐食性も著しく向
上する。また、実際問題として、酸性めっき液などへの
浸漬によるエッチング処理をめっき鋼板の片面のみに行
うには、シールなどの工程が必要となり操作が煩雑とな
るので、両面に等しくエッチングを行う方が工程上から
も有利である。
【0029】本発明において規定するZn−X合金めっき
皮膜を形成した後、少なくとも未塗装で使用される加工
後の耐食性が必要な面にはクロメート処理を施して、め
っき皮膜の上にクロメート皮膜を形成し、めっき皮膜の
クラックをクロメート皮膜で被覆する。塗装して用いる
場合でも、めっき皮膜のクラックをクロメート皮膜で被
覆し、その上を塗装皮膜で被覆すれば、外面耐食性も飛
躍的に向上するので、外面側にもクロメート処理を施し
てもよい。
【0030】本発明におけるクロメート皮膜は、金属Cr
換算の付着量が10〜200mg/m2となるように形成する。こ
の付着量が10mg/m2 未満では、加工後の耐食性が十分に
発揮されず、一方200mg/m2を越えるとシーム溶接性など
の溶接性が劣化する。クロメート皮膜の好ましい付着量
は金属Cr換算で50〜180mg/m2である。
【0031】本発明によれば、加工性ならびに加工後の
耐食性をさらに向上させるために、クロメート皮膜に潤
滑材を付与する。この潤滑材の種類は特に限定されず、
クロム酸と均一に混合しやすい水溶性樹脂であればよ
い。例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、アミン
系樹脂、などが挙げられる。この樹脂と金属Crの比率
は、樹脂/Crが0.5 〜1.5 が望ましい。
【0032】このクロメート皮膜は、潤滑材樹脂が混入
されていても、塗布できるように、塗布型が望ましい。
吸湿性のあるCr6+がクロメート皮膜中に多く含まれる
と、燃料中の水分がクロメート皮膜の表面に吸着して固
定されるため、その箇所が部分的に腐食されることがあ
る。従って、クロメート皮膜中にCr6+の割合はできるだ
け少ない方が好ましく、その意味ではCr6+量を全Cr量の
5%以下とすることが望ましい。
【0033】本発明の別の好適態様にあっては、クロメ
ート皮膜の耐食性をさらに高めるため、皮膜中にシリカ
をSiO2/Cr 重量比で1.0 〜10.0となるように含有させ
る。この重量比が1.0 より小さいと、クロメート皮膜の
耐食性の向上効果が不十分であり、10.0を越えると、ク
ロメート液の安定性が劣化して操業に悪影響を及ぼすこ
とがあり、皮膜の加工性も劣化することがある。好まし
くは、このSiO2/Cr 重量比は1.5 〜9.5 である。
【0034】本発明において使用するシリカ種に関して
は、吸水性の少ない乾式法シリカ (気相シリカまたはヒ
ュームドシリカ) の方が、湿式法シリカ (コロイダルシ
リカまたはシリカゾル) よりも良好である。クロメート
皮膜がシリカを含有する場合も、クロメート皮膜の金属
Cr換算の付着量は上記と同様でよい。
【0035】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
る。表面処理鋼板サンプルの作成 板厚0.8 mmのJIS SPCE相当の冷延鋼板に、下記条件にて
硫酸塩浴によるZn−X合金電気めっきを両面に施し、こ
のめっき浴をそのまま利用して、生成しためっき鋼板を
無通電で酸性のめっき液中に浸漬することにより両面の
めっき皮膜のエッチングを行い、Zn−X合金めっき皮膜
にクラックを導入した。クラック密度、クラック最大
幅、そしてクラック深さは、めっき液への浸漬時間を変
化させることにより調整した。エッチング処理しためっ
き表面のクラック密度、クラックの最大幅、クラック深
さは、前述したようにSEM 写真から求めた。
【0036】 [Zn−X合金電気めっき条件] めっき浴組成:X( 硫酸塩)0.02 〜1.1 mol/L Zn(ZnSO4) 0.4 〜0.8 mol/L Na(Na2SO4) 1 mol/L pH 1.5〜2.0(硫酸にて調整) めっき条件 :浴温 45 〜50℃ 電流密度 50 〜100 A/dm2 液流速 0.06 〜1.40 m/s 両面ともエッチング処理してめっき皮膜にクラックを発
生させたZn−X合金めっき鋼板の両面に、下記組成の塗
布型クロメート液をロールコーターで塗布し、150 〜30
0 ℃で焼付けてクロメート皮膜を形成し、本発明の表面
処理鋼板のサンプルを作製した。
【0037】シリカとしては、平均一次粒子径が7nmの
乾式法シリカ (商品名アエロジル200)を用いた。一部の
試験では平均一次粒子径が10nmの湿式法シリカ (商品名
スノーテックスO) も使用した。潤滑材としては、アミ
ン系、アクリル系、エポキシ系の各樹脂を用い、アクリ
ル樹脂としては日本ペイント製P304M2を、エポキシ樹脂
としてはナガセ化成製デナキャストを用いた。
【0038】[クロメート処理液の組成] Cr3+ : 50 g/L Cr6+ : 2 g/L SiO2 : 140 g/L 潤滑材:樹脂/Cr=1.0 こうして作製した表面処理鋼板のガソリンおよびアルコ
ール含有燃料に対する耐燃料腐食性、外面耐食性、およ
び溶接性を下記の方法で試験した。試験結果は表1にま
とめて示す。
【0039】ガソリンに対する加工後の耐燃料腐食性に
関しては、従来技術との比較を図3にグラフで示す。図
中、本発明例としては表1の例No.1を用い、このときク
ラックを設けなかった従来例をクラックなしとして示す
が、クラックの有無によってほゞ3倍以上の耐燃料腐食
性の改善がみられる。
【0040】なお、グラフ中、ターンシート(Sn/Pb:0.
10、付着量45g/m2) では耐食性がかなり悪いが、ターン
シートはポンチ肩から壁部の腐食が大きく、加工を受け
めっき皮膜が損傷を受けた部分は腐食が進み易かった。
【0041】試験法 [耐燃料腐食性]表面処理鋼板のブランク( プレス打ち抜
き試験片) を下記条件で円筒絞り成形してカップを作製
し、このカップの中に下記組成のガソリン (ガソホー
ル)30mlを封入し、容器を密閉して180 日目の内面の最
大侵食深さ(Pm)により耐燃料腐食性を次の基準にて評価
した。
【0042】 ◎:Pm ≦0.1 mm ○:0.1 mm≦Pm <0.2 mm △:0.2 mm≦Pm <0.5 mm ×:0.5 mm<Pm 円筒絞り成形条件 ブランク径 : 100mm( 直径) ボンチ径 : 50mm( 直径、肩r =5mm) ダイス径 : 51mm( 直径、肩r =5mm) ブランクホルダー圧 : 10KN 絞り高さ : 30mm 面粗さ : #1200 毎回研磨 潤滑剤なしで成形( 成形前に脱脂) 脱脂条件 2%リドソール浸漬( 液温度53℃) 3分間→純水浸漬(
常温)1.5分間→乾燥(165℃) 8分間→常温放置20分間→
乾燥(165℃)15 分間 (注) アグレッシブメタノール (aggressive methanol)
は、無水メタノール95%と、0.1 %NaCl+0.08%Na2SO4
+10%蟻酸を含む水溶液5%との混合液。
【0043】[外面耐食性]表面処理鋼板のブランクを、
張出し高さを25mmに変更した以外は上記の耐燃料腐食性
試験と同じ条件下で円筒絞り成形した後、エッジ部をシ
ールして、外面に対してJIS Z2371 に従ったSST(塩水噴
霧試験) を2000時間行った。加工後の耐食性はSST 2000
時間後の最大侵食深さ(Pm)により評価した。
【0044】 ◎:Pm ≦0.1 mm ○:0.1 mm≦Pm <0.4 mm △:0.4 mm≦Pm <0.8 mm ×:0.8 mm≦Pm [溶接性]下記条件で連続シーム溶接試験を100 m行った
後、溶接部の断面ミクロ観察を行い、下記基準で評価し
た。
【0045】シーム溶接条件 加圧力 : 300 kgf 通電時間: 3 cycles 休止時間: 2 cycles 電流 : 13,000A 速度 : 2.5 m/min 溶接性評価基準 ○:溶着良好 △:ブローホール存在 ×:未溶着部あり
【0046】
【表1】
【0047】
【発明の効果】本発明にかかる表面処理鋼板は、加工性
に優れ、かつ燃料タンクの製造に用いた場合には、ガソ
リンのみならず、ガソホールなどのアルコール含有燃料
に対しても高い耐燃料腐食性を示し、従来のZn−X合金
電気めっき装置をそのまま使用して効率よく安価に製造
でき、かつ人体に有害なPbを含有しないため安全性にも
優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる表面処理鋼板のめっき皮膜の断
面構成図である。
【図2】めっき皮膜表面のクラックの模式図である。
【図3】本発明にかかる表面処理鋼板と従来の表面処理
鋼板との加工後の耐燃料腐食性に関する実施例の結果を
示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 梶山 栄二 茨城県鹿嶋市大字光3番地 住友金属工 業株式会社鹿島製鉄所内 (72)発明者 川西 義博 茨城県鹿嶋市大字光3番地 住友金属工 業株式会社鹿島製鉄所内 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C23C 28/00

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼板上に、片面付着量が5〜50g/m2のZn
    −X合金電気めっき皮膜を設け、その合金組成は、X
    が、Ni:3〜18wt%、Co:0.02〜3wt%、Mn:25〜45wt
    %、Cr:8〜20wt%から成る群から選んだ少なくとも1
    種を含み、さらにこのZn−X合金めっき皮膜の上に金属
    Cr換算付着量で10〜200mg/m2のクロメート皮膜を設けた
    表面処理鋼板からなり、クロメート皮膜の下層のZn−X
    合金めっき皮膜がクラックを有し、このクラックの密度
    がめっき表面の1mm×1mmの視野中でのクラックに囲ま
    れた領域の個数で表して1000〜150000個の範囲であり、
    かつこのクラックの最大幅0.5 μm以下のものが90%以
    上存在し、クラックの深さがめっき皮膜厚さの80%以上
    のものが80%以上存在し、クロメート皮膜が潤滑材を含
    有していることを特徴とする加工後耐食性に優れた表面
    処理鋼板。
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