JP2984710B2 - 構造物の免震・除振装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本発明は、特に軌道又は道路上の建物や精密機械等を
設置した構築物等のような構造物の免震・除振装置に関
するものである。

［従来の技術］ 一般に、地上の構造物は地震により崩壊することのな
いように設計施工されなければならないことは言うまで
もない。

一方、軌道や道路等のような交通振動の発生源上の空
間に構築された住宅・マンション・ホテル・劇場・病院
等の建物や、精密機械工場・コンピュータ施設等の構築
物は、上記地震対策に加えて交通振動による被害を被る
ことのないように、対策を講ずる必要がある。

従来、建物を地震から守る免震装置としては、第５図
に示すように、地盤と建物との間に積層ゴムを介在させ
て、地盤から建物へ振動が伝わらないように制御するも
のがあった。

しかしながら、上記積層ゴムは、上下（鉛直）方向に
は非常に硬い構造となっているため、交通振動のような
上下方向の微小振動に対しては除振の効果は殆ど期待で
きなかった。特に、鋼材や鉛等を減衰装置として付加し
た場合には、水平および上下方向の微少振動に対しては
全く効果がなかった。

また、近年は上記交通振動のような上下方向の微小振
動に対する除振を目的とした積層ゴムも開発されてい
る。

［発明が解決しようとする課題］ しかしながら、上記従来の積層ゴムは、第６図に示す
ように、天然ゴムと高減衰積層ゴムとを一組の装置に納
めているために、地震のような水平方向の振動に対して
は十分な減衰性能が得られないばかりでなく、クリープ
等が問題となるために上下方向の微少振動を除振するた
めの十分な柔らかい装置が作れない等の問題点があつ
た。

本発明は、上記従来の問題点を解決するためになされ
たもので、その目的とするところは、上下および水平の
両方向の大きな振動から微小な振動に至るまで、すなわ
ち地震や交通振動などに対して十分な免震および除振効
果を発揮することができるばかりでなく、長期間にわた
って安定して機能が低下することのない構造物の免震・
除振装置を提供することにある。

［課題を解決するための手段］ 本発明の構造物の免震・除振装置は、地盤や軌道等の
交通振動源の構造物と一体となった下部構造物上に高減
衰積層ゴムを設置し、該高減衰積層ゴム上に架台を載
せ、該架台上に天然ゴム系の標準積層ゴム或いは高減衰
積層ゴム等の減衰積層ゴムを設置し、該積層ゴム上に住
宅・マンション・ホテル等の建物や、精密機械等を設置
した建造物などの上部構造物を載せ、上記高減衰積層ゴ
ムには主として水平動に対して免震・除振機能を持た
せ、上記減衰積層ゴムには主として上下動に対して免震
・除振機能を持たせるようにしたことを特徴とする。ま
た、上記装置において、架台の側面と上部構造物に形成
したブラケット部との間に水平方向の振動を止め、上下
方向の振動に対して十分な減衰性能を与える高減衰積層
ゴムや粘弾性体あるいは水平方向の振動を止めるストッ
パーおよび上下方向の振動に対しては振動を止めるスト
ッパー等で構成された積層ゴムを介在せしめるように構
成したことも特徴とする。さらに、上記装置において、
上記架台の側面を上面方向に対して傾斜せしめると共
に、ブラケットに下面方向に傾斜する面を形成して、そ
れらの面の間に上記積層ゴムを介在せしめるように構成
したことも特徴とする。

［実施例］ 以下、本発明の一実施例について図面を参照しながら
説明する。

第１図において、１は高減衰積層ゴムであって、ゴム
素材中にカーボンを混入させて積層ゴム自体に減衰性能
を持たせており、地盤や軌道等の交通振動源の構造物と
一体となつた下部構造物２上に設置されている。該高減
衰積層ゴム１上には架台３が載置されている。

また、上記架台３上には積層ゴム４が設置されてい
る。該積層ゴム４はクリープ等の問題が生じない天然ゴ
ム系の標準積層ゴム或いは高減衰積層ゴム等の減衰積層
ゴムであって、積層方向すなわち上下方向に柔らかい構
造となっている。該積層ゴム４は、大きな振動に対して
は大きな減衰を与える粘弾性体を付加するか、又は上下
方向の剛性を付加することにより共振を避けるようにな
っている。

上記積層ゴム４上には、住宅・マンション・ホテル等
の建物や、精密機械等を設置した構造物などの上部構造
物５が載っている。

上記架台３の側面3aはやや上面方向に傾斜していて、
該傾斜側面3aに平行な傾斜面5a′を形成した上部構造物
５のブラケット部5aとの間に積層ゴム６が介在されてい
る。該積層ゴム６は、水平方向の振動を止め、上下方向
の振動に対して十分な減衰性能を与える高減衰積層ゴム
や粘弾性体から構成されている。

本実施例の免震・除振装置は以上のように構成されて
いるので、上記下部構造物２に地震による水平方向の大
きな振動が働いた場合には、第２図に示すように、上記
高減衰積層ゴム１により地震による水平方向の振動が免
震されて、架台３より上の構造体は一体となって挙動す
る。

また、上記下部構造物２に交通振動による上下方向の
微少振動が働いた場合には、第３図に示すように、該上
下方向の微少振動は、上記高減衰積層ゴム１を通して架
台３にまで及ぶが、積層ゴム４により上部構造物５への
伝達は阻止する。また、架台３の側面に取り付けられて
いる積層ゴム６も水平方向の振動を止め、上下方向の振
動に対して十分な減衰性能を発揮し、上部構造物５には
伝わらない。交通振動による水平方向の微少振動は高減
衰積層ゴム１により上部への伝達は阻止される。

尚、上記傾斜側面3aおよび傾斜面5a′の傾斜角度を変
化させたり、積層ゴム６の大きさ・厚さ等の寸法や、減
衰特性等を変化させることにより、必要な減衰性能を得
ることができる。

また、第４図に示すように、架台３に鋼棒７を固着
し、該鋼棒７をブラケット部5aに取り付けた制御部材８
の長穴8a内に挿設せしめて、上下方向の大きな振動に対
して減衰性能を付加せしめるようにしてもよい。

［発明の効果］ （１）交通振動などの微少から地震などの大振動に対し
て十分な免震・除振性能を発揮することができる。

（２）軌道や道路等のような交通振動の発生源上の空間
に構築された住宅・マンション・ホテル・劇場・病院等
の建物や、精密機械工場・コンピュータ施設等の構造物
等の構築物に対して、地震対策に加えて交通振動による
被害を被ることのないように、対策を講ずることができ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の免震・除振装置の一実施例を示す断面
図、第２図は水平方向の振動に対する挙動の説明図、第
３図は上下方向の振動に対する挙動の説明図、第４図は
別の実施例を示す要部説明図、第５図は従来の免震構造
を有する建物の概略図、第６図は水平及び上下方向の振
動に対処した従来の積層ゴム構造の断面図である。 １……高減衰積層ゴム、２……下部構造物、３……架
台、3a……傾斜側面、４……積層ゴム、５……上部構造
物、5a……ブラケット部、5a′……傾斜面、６……積層
ゴム、７……鋼棒、８……制御部材、8a……長穴。

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】地盤や軌道等の交通振動源の構造物と一体
   となった下部構造物上に高減衰積層ゴムを設置し、該高
   減衰積層ゴム上に架台を載せ、該架台上に天然ゴム系の
   標準積層ゴム或いは高減衰積層ゴム等の減衰積層ゴムを
   設置し、該積層ゴム上に住宅・マンション・ホテル等の
   建物や、精密機械等を設置した建造物などの上部構造物
   を載せ、上記高減衰積層ゴムには主として水平動に対し
   て免震・除振機能を持たせ、上記減衰積層ゴムには主と
   して上下動に対して免震・除振機能を持たせるようにし
   たことを特徴とする構造物の免震・除振装置。
2. 【請求項２】上記架台の側面と上部構造物に形成したブ
   ラケット部との間に水平方向の振動を止め、上下方向の
   振動に対して十分な減衰性能を与える高減衰積層ゴムや
   粘弾性体あるいは水平方向の振動を止めるストッパーお
   よび上下方向の振動に対しては振動を止めるストッパー
   等で構成された積層ゴムを介在せしめるように構成した
   ことを特徴とする請求項１に記載の構造物の免震・除振
   装置。
3. 【請求項３】上記架台の側面を上面方向に対して傾斜せ
   しめると共に、ブラケット部に下面方向に傾斜する面を
   形成して、それらの面の間に上記積層ゴムを介在せしめ
   るように構成したことを特徴とする請求項２に記載の構
   造物の免震・除振装置。