JP2981174B2 - 防湿機能を備えた建築物および当該建築物の防湿方法 - Google Patents

防湿機能を備えた建築物および当該建築物の防湿方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、防湿機能を備えた
建築物および建築物の防湿方法に関するものであり、詳
しくは、屋内と屋外を仕切る壁、天井、床などの構造部
分の湿潤化を季節変動や地域条件などに拘わらず防止す
ることが出来、耐久性を一層向上し得る特定の防湿機能
を備えた建築物および当該建築物の防湿方法に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】木造または鉄骨木造の建築物において
は、空調設備によって快適な居住空間を構成し且つ省エ
ネルギー化を図るため、図6及び図7に示す様な躯体構
造によって気密性および断熱性を高めている。図6は従
来の建築物の縦断面図であり、図7は図6における断熱
壁部分の拡大図である。
【0003】図6に示す建築物は、断熱された壁
(8)、天井(9)、床(10)などから構成されてお
り、例えば、躯体の一部である壁(8)は、図7に示す
様に、室内側に配置された石膏ボードなどの内装材(8
1)と、内装材(81)の室外側(壁内側)の表面に張
設された防湿・気密層としての防湿フィルム(82)
と、防湿フィルム(82)の室外側表面に張設された断
熱層としての断熱材(83)と、断熱材(83)の室外
側に配置された外装材(85)とから構成されている。
そして、断熱材(83)と外装材(85)の間には、壁
(8)内部の湿潤化を防止する目的から、外気に通じる
通気層(84)が設けられている。なお、断熱材(8
3)の屋外側表面には、低温の空気が断熱材(83)に
侵入するのを防止するため、透湿性の防風シート又はボ
ード類が貼設される場合もある。
【0004】図7に例示した壁(8)においては、例え
ば、冬季の暖房によって室温が外気温よりも高く、室内
の空気中の水蒸気分圧が室外のそれに比べて高い場合、
室内側から壁(8)内部への水蒸気の移動を防湿フィル
ム(82)によって概ね遮断し、また、室内側から壁
(8)内部に漏出する水蒸気を通気層(84)を通じて
室外へ排出することにより、壁(8)内部における湿潤
化の防止を企図している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、図7に
示した壁(8)においては、例えば、夏季の冷房によっ
て室温が外気温よりも低く、室内の空気中の水蒸気分圧
が室外のそれに比べて低い場合、断熱材(83)におけ
る温度勾配の関係から、断熱材(83)中の室外と同等
の空気に含まれる水蒸気が防湿フィルム(82)の室外
側の表面や、断熱材(83)内部で結露する怖れがあ
る。その結果、断熱材(83)の湿潤化による性能劣化
や、柱、間柱などの木材の腐朽を惹起する。
【0006】夏季の冷房などによる上記の様な壁(8)
内部の湿潤化を考慮し、図7の構造において、仮に、防
湿フィルム(82)に代えて同様の防湿フィルムを断熱
材(83)の室外側の表面に張設した場合には、勿論、
冬季の暖房などによって絶対湿度が高められた室内の空
気が断熱材(83)へ通気し、斯かる空気に含まれる水
蒸気が断熱材(83)内部にて結露するので好ましくな
い。
【0007】昨今の建築物における高気密・高断熱化技
術は、本来、寒冷地を中心に勘案された技術であり、上
記の様な通気層構造によっては、冬季、夏季を通じて建
築物の湿潤化を十分に防止し得るものではない。特に、
18℃以上の温度、80%以上の湿度(木材腐朽の条
件)では腐朽菌の繁殖が活発化し、腐朽菌から分泌され
る酵素によって木材組織が破壊されるいわゆる腐朽現象
が進行する。木材の腐朽は建築物の耐久性に大きな影響
を与える要因である。
【0008】主要構造部が鉄骨で構成されたいわゆる鉄
骨木造の建築物においても、壁用パネル、床材などに使
用される木材に関し、上記と同様の木材腐朽の問題があ
り、更には、金属の腐食による鉄骨部分の強度劣化によ
って耐久年数が短縮されるという問題がある。また、上
記の腐朽菌が白蟻の誘因物質を分泌すると言う問題もあ
る。
【0009】従って、木造または鉄骨木造の建築物にお
いては、冬季、夏季を通じた季節変動や気象条件、また
は地域性に拘わらず、屋内と屋外を仕切る壁、天井、床
などの構造部分の湿潤化を防止することが出来、断熱材
の劣化や木材の腐朽などを防止することが出来、そし
て、耐久性を一層向上させ得る新規な手段が望まれる。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記の問
題を解決すべく種々検討を重ねた結果、例えば、上記の
様な壁構造において断熱材の室内側と屋外側の両方に防
湿フィルムを張設することにより、室内と室外との絶対
湿度の差異に起因する壁体内部への水蒸気の透過を一時
的に防止し得るが、その反面、長期に渡っては双方の防
湿フィルムの間に形成された壁体内部の謂わば半密閉空
間(断熱材の部分)に水分が一層蓄積されるとの知見を
得た。本発明者等は、斯かる知見に基づいて更に検討し
た結果、断熱材の室内側と屋外側の両方に張設された防
湿フィルムを環境の変化に応じて使い分け且つ上記の半
密閉空間を適度に除湿するならば、季節変動や気象変化
または地域差に対応して建築物の躯体における湿潤化を
有効に防止し得ることを知得し、本発明の完成に至っ
た。
【0011】すなわち、本発明は次の2つの要旨から成
り、その第1の要旨は、壁、床および天井が気密断熱構
造を備えた木造または鉄骨木造の建築物において、前記
気密断熱構造は、内装材の室外側表面から室外側に向け
て順次に配置された第1の防湿材、断熱材および第2の
防湿材と、前記断熱材と前記第2の防湿材の間に形成さ
れた通気空間とから成り、前記壁、床および天井の各通
気空間は、当該建築物の外周側を包囲する一体的な構造
体通気層として連続させられ且つ外気を通気または遮蔽
可能に構成され、しかも、外気を遮蔽した際に前記第1
の防湿材および第2の防湿材によって気密状態を保持可
能になされ且つ除湿装置によって除湿可能になされてい
ることを特徴とする防湿機能を備えた建築物に存する。
【0012】上記の建築物においては、構造体通気層の
空気の循環を一層促進して効率的に除湿するため、天井
の通気空間と床の通気空間とを接続する空気循環路が設
けられ、かつ、当該空気循環路に送風機が設置されてい
るのが好ましい。
【0013】また、本発明の第2の要旨は、上記の第1
の要旨に係る建築物において、室外の絶対湿度が7〜9
g/kg’の範囲内の所定値以上の場合は、外気に対し
て構造体通気層を遮蔽し、しかも、前記構造体通気層の
相対湿度が70〜80%の範囲内の所定値以上の場合
は、除湿装置を作動させることにより、前記相対湿度を
前記所定値未満に維持し、また、室外の絶対湿度が前記
所定値未満の場合は、外気に対して前記構造体通気層を
開放することを特徴とする建築物の防湿方法に存する。
【0014】更に、本発明の第2の要旨は、第1の要旨
に係る建築物の中、空気循環路および送風機が設けられ
た建築物において、室外の絶対湿度が7〜9g/kg’
の範囲内の所定値以上の場合は、外気に対して構造体通
気層を遮蔽し且つ空気循環路の送風機を作動させ、しか
も、前記構造体通気層の相対湿度が70〜80%の範囲
内の所定値以上の場合は、除湿装置を作動させることに
より、前記構造体通気層の空気を循環させつつ当該構造
体通気層の前記相対湿度を前記所定値未満に維持し、ま
た、室外の絶対湿度が前記所定値未満の場合は、外気に
対して前記構造体通気層を開放することを特徴とする建
築物の防湿方法を含む。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図面に基づ
いて説明する。図1は、本発明に係る建築物の一実施形
態を示す縦断面図である。図2は、図1における建築物
の要部拡大図であり、壁構造の一実施形態を示す縦断面
図ある。図3は、本発明に係る建築物の他の実施形態を
示す縦断面図である。図4は、本発明に係る建築物の更
に他の実施形態を示す縦断面図である。図5は、本発明
に係る建築物の防湿方法を示すフローチャートである。
【0016】先ず、本発明に係る防湿機能を備えた建築
物について説明する。本発明の建築物は、図1に示す様
に、壁(1)、床(2)及び天井(3)が気密断熱構造
を備えた木造または鉄骨木造の建築物であり、上記の気
密断熱構造は、内装材(11),(21),(31)の
室外側表面から室外側に向けて順次に配置された第1の
防湿材(12),(22),(32)、断熱材(1
3),(23),(33)及び第2の防湿材(15),
(25),(35)と、断熱材(13),(23),
(33)と第2の防湿材(15),(25),(35)
の間に形成された通気空間(14),(24),(3
4)とから構成される。
【0017】壁(1)、床(2)及び天井(3)の気密
断熱構造を層構造とした場合、第1の防湿材(12),
(22),(32)が内方防湿気密層(室内側の防湿気
密層)、断熱材(13),(23),(33)が断熱
層、通気空間(14),(24),(34)が通気層、
第2の防湿材(15),(25),(35)が外方防湿
気密層(室外側の防湿気密層)をそれぞれ構成してい
る。なお、図中、符号(4)は屋根、符号(5)は基
礎、符号(51)は断熱材、符号(52)は床下換気口
をそれぞれ示す。
【0018】壁(1)を一例として上記の気密断熱構造
を説明すると、図2に示す様に、内装材(11)は、石
膏ボードなどの下地材であり、柱や間柱(図示せず)の
室内側に配置される。第1の防湿材(12)は、柱や間
柱の室内側、すなわち、内装材(11)の室外側(壁内
側)の表面に配置される。第1の防湿材(12)として
は、空気中の水蒸気を実質的に透過しない限り、非透湿
性の各種のフィルムやシート等を使用することが出来、
具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフ
ィンの他、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂から成る約
0.1〜1.0mmの厚さのフィルムやシートが使用さ
れる。なお、シートとは、防湿層を形成し得る各種の面
状体を意味し、フィルムの他、防湿シートやフィルムを
貼合した所謂防湿パネルを含む。
【0019】断熱材(12)は、第1の防湿材(12)
の室外側の表面に密着させて設けられる。断熱材(1
2)としては、発泡樹脂などの各種の素材にて形成され
た断熱材を使用することも出来るが、通常は、見かけの
厚さが50〜150mm程度のグラスウールが使用され
る。断熱材(12)は、内装材(11)に対して密着す
る状態で配置される。断熱材(12)の固定には、接着
剤などを使用してもよいが、施工性を向上し且つ確実に
上記の通気空間(14)を確保するため、適宜の構造の
支持材が使用される。
【0020】第2の防湿材(15)は、第1の防湿材
(12)と同様の材料から成り、通常は、柱や間柱の室
外側の側面の取り付けられた胴縁(図示せず)を介して
これら柱や間柱の室外側に張り付けられる。上記の胴縁
は、本来、壁の内部に通気空間を形成し且つ壁の最外層
である外装材を固定するために設けられる部材である。
本発明の建築物においては、胴縁の外側に第2の防湿材
(15)を介して外装材(16)が取り付けられ、断熱
材(13)と第2の防湿材(15)の間に構造体通気層
としての通気空間(14)が形成される。通気空間(1
4)の隙間距離、すなわち、断熱材(13)と第2の防
湿材(15)の離間距離は、通常、10〜50mm程度
とされる。なお、第2の防湿材(15)は、柱や間柱の
室外側に貼設された合板などの面材を介して配置されて
もよい。
【0021】また、図1に示す床(2)の気密断熱構造
において、内装材(21)は、仕上板または床下地板な
どの床材であり、根太(図示せず)の上面に配置され
る。第1の防湿材(22)は、上記の根太の室内側、す
なわち、内装材(25)の裏面(床下側の表面)に配置
される。断熱材(23)は、各根太の間に挿入されるこ
とにより、第1の防湿材(22)の床下側の表面に密着
させて設けられる。そして、第2の防湿材(25)は基
礎(5)の内側に施工された土間の表面に配置され、断
熱材(23)の下方の床下空間を通気空間(24)とさ
れている。上記の様に通気空間(24)を構成した場合
は、床下空間の略全体の湿潤化を防止し得る。なお、防
湿材(22)及び(25)は、上記の防湿材(12)と
同様の材料にて構成される。更に、第2の防湿材(2
5)の内方(上方)には、当該防湿材を保護するための
セメントモルタル等の保護材が敷設されていてもよく、
また、第2の防湿材(25)の下方には、断熱材が敷設
されていてもよい。
【0022】図1に示す天井(3)の気密断熱構造にお
いて、内装材(31)は、石膏ボードなどの天井材であ
り、天井根太(図示せず)の下面に配置される。第1の
防湿材(32)は、上記の天井根太の室内側、すなわ
ち、内装材(31)の裏面(小屋裏側の表面)に配置さ
れる。断熱材(33)は、天井根太の間に挿入されるこ
とにより、第1の防湿材(32)の小屋裏側の表面に密
着させて設けられる。そして、第2の防湿材(35)
は、例えば、屋根(4)の内側(小屋裏側)に張り付け
られ、断熱材(33)の上方の小屋裏空間を通気空間
(34)とされている。上記の様に通気空間(34)を
構成した場合は、小屋裏空間の略全体の湿潤化を防止し
得る。なお、防湿材(32)及び(35)は、上記の防
湿材(12)と同様の材料にて構成される。
【0023】本発明の建築物においては、壁(1)、床
(2)及び天井(3)の各通気空間(14),(2
4),(34)が連続した空間として構成される。すな
わち、通気空間(14),(24),(34)は、建築
物の外周側を包囲する一体的な構造体通気層として連続
させられている。具体的には、壁(1)の室内側の第1
の防湿材(12)の上下端部は、各々、天井(3)の第
1の防湿材(32)の各端部と床(2)の第1の防湿材
(22)の各端部に接続されており、また、壁(1)の
室外側の第2の防湿材(15)の上下端部は、各々、天
井(3)の第2の防湿材(35)の各端部と床(2)の
第2の防湿材(25)の各端部に接続されている。
【0024】更に、連続する通気空間(14),(2
4),(34)は、外気を通気または遮蔽可能に構成さ
れている。すなわち、床下には、開閉弁としての蓋部材
(26)が床下換気口を利用して付設され、軒裏には、
開閉弁としての蓋部材(36)が天井根太を利用して付
設されている。また、棟には、開閉弁としての蓋部材
(41)が付設されている。従って、床下の通気空間
(24)、天井裏、すなわち小屋裏の通気空間(34)
及びこれらの空間に連続する通気空間(14)は、各蓋
部材(26),(36),(41)の開閉操作により、
必要に応じて気密状態を保持し、または、気密状態を解
除し得る様になされている。
【0025】蓋部材(26),(36),(41)の開
閉機構は、例えば、躯体に対して扉状に枢支された蓋部
材(26),(36),(41)を常時開放する方向へ
付勢するバネと、蓋部材(26),(36),(41)
を閉じる方向へ押圧(伸長または収縮)するエアシリン
ダーと、圧空供給用のコンプレッサーとから構成され
る。斯かる開閉機構においては、エアシリンダーから圧
空を排気して当該エアシリンダーの押圧力を解除するこ
とにより、バネの弾性力によって蓋部材(26),(3
6),(41)を開放し、また、エアシリンダーに圧空
を供給して当該エアシリンダーに押圧力を発生させるこ
とにより、バネに対抗して蓋部材(26),(36),
(41)を閉じる。なお、開閉機構としては、ギヤード
モータ等の電動機器を用いることも出来る。
【0026】更に、本発明においては、壁(1)、床
(2)及び天井(3)の乾燥状態を維持するため、通気
空間(14),(24),(34)によって構成される
上記の構造体通気層が、外気を遮蔽した際に除湿可能に
なされていることが重要である。上記の空間の除湿は、
例えば、床下空間(床下の通気空間(24))に配置さ
れた除湿装置(6)によって行われる。除湿装置(6)
としては、構造体通気層(通気空間(14),(2
4),(34)の全体)を形成する各防湿材(12),
(15),(22),(25)…の表面積に応じて選択
する必要があるが、例えば、100m2 程度の延床面積
を有する建築物の場合は、50〜500cc/hr.程
度の除湿能力を備えた適宜の型式の装置が使用される。
除湿装置(6)の排水路は床下の通気空間(24)から
屋外に至る様に設置される。
【0027】また、本発明の建築物においては、上記の
構造体通気層における除湿効率を一層高めるため、天井
(3)の通気空間(34)と床(2)の通気空間(2
4)とを接続する空気循環路(7)が設けられ、かつ、
空気循環路(7)に送風機(72)が設置されているの
が好ましい。空気循環路(7)は、居室を仕切る間仕切
り壁(図示せず)等を利用して構成され、その上下端
は、各々、通気空間(34)及び通気空間(24)で開
口している。空気循環路(7)の下端開口部には、開閉
弁としての蓋部材(71)が取り付けられ、斯かる蓋部
材(71)は、送風機(72)の作動時に開となり、停
止時に閉となる様に構成される。蓋部材(71)の開閉
機構としては、蓋部材(26),(36),(41)の
開閉機構と同様の機構を使用し得る。なお、蓋部材(7
1)は、空気循環路(7)の適宜の位置に設けることが
出来る。
【0028】図示しないが、本発明の建築物において、
通常、上記の蓋部材(26),(36),(41)及び
蓋部材(71)の開閉操作を行うコンプレッサーを含む
エアシリンダー(又はギヤードモータ)、除湿装置
(6)等の駆動は、外気の絶対湿度および構造体通気層
の相対湿度に基づき、タイマーシステムや演算手段を含
むプログラムコントローラー等の制御装置(図示せず)
によって制御される。
【0029】外気の絶対湿度のデータは、室外または室
外に相当する場所に設けられた1組の温度センサー及び
湿度センサーの検出信号として上記の制御装置に送られ
て演算処理され、蓋部材(26),(36),(41)
及び蓋部材(71)の開閉、送風機(72)の発停、お
よび、除湿装置(6)の発停に利用される。構造体通気
層の相対湿度のデータは、通気空間(14),(24)
又は(34)に設けられた少なくとも1つの湿度センサ
ーの検出信号として上記の制御装置に送られ、除湿装置
(6)の発停に利用される。なお、除湿装置(6)の制
御には、当該除湿装置に内蔵された温度センサー及び湿
度センサーを利用することも出来る。
【0030】次に、本発明の建築物の防湿機能と共に、
本発明の防湿方法を説明する。本発明の防湿方法では、
上記の建築物において、室外の絶対湿度が7〜9g/k
g’の範囲内の所定値以上の場合は、外気に対して構造
体通気層を遮蔽し、しかも、前記構造体通気層の相対湿
度が70〜80%の範囲内の所定値以上の場合は、除湿
装置(6)を作動させることにより、前記相対湿度を前
記所定値未満に維持し、また、室外の絶対湿度が前記所
定値未満の場合は、外気に対して前記構造体通気層を開
放する。
【0031】通常、室外の絶対湿度が7〜9g/kg’
の範囲内の所定値以上の場合とは、梅雨季や夏季などの
高温多湿期に見られる状況であり、一方、室外の絶対湿
度が前記所定値未満の場合とは、秋季から春季に至る低
温乾燥期に見られる状況である。一般的に、高温多湿期
においては、空調(冷房)を使用して室内の温度が低く
設定され、実質的に室内が除湿されるため、室外に比べ
て室内の絶対湿度が低湿度に維持される。また、低温乾
燥期においては、空調(暖房)を使用して室内の温度が
高く設定されるため、室外に比べて結果的に室内の絶対
湿度が高湿度に維持される。
【0032】上記の建築物における具体的な操作として
は、図5に示す様に、先ず、室外に取り付けられたセン
サー(温度計および湿度計)から得られたデータによ
り、制御装置において室外の絶対湿度を演算する。そし
て、例えば、室外の絶対湿度が9g/kg’以上に増加
した場合は、開閉機構を作動させて蓋部材(26),
(36)及び(41)を閉止し、各通気空間(14),
(24)及び(34)から成る構造体通気層を外気に対
して遮蔽する。そして、この場合、通気空間(14),
(24)又は(34)に取り付けられたセンサー(湿度
計)から得られた相対湿度のデータにより、例えば、構
造体通気層の相対湿度が80%以上の場合は、除湿装置
(6)を作動させる。なお、機器の測定誤差や作動誤差
を考慮すると、室外の絶対湿度の基準値としては、7〜
8g/kg’の範囲内の値を設定するのが好ましく、ま
た、構造体通気層の相対湿度の基準値としては、約70
%の値を設定するのが好ましい。
【0033】蓋部材(26),(36)及び(41)に
よって閉止された通気空間(14),(24),(3
4)において、各外側の第2の防湿材(15),(2
5),(35)は、通気空間(14),(24),(3
4)への外気中の水分の透過を防止し、また、除湿装置
(6)は、通気空間(14),(24),(34)の相
対湿度が一定のとなる様に水分を除去する。すなわち、
除湿装置(6)の作動および停止は、構造体通気層(通
気空間)に取り付けられたセンサー(湿度計)からのデ
ータに基づいて制御され、除湿装置(6)は、通気空間
の相対湿度を80%以下に維持する。なお、空間内の誤
差および木材の腐朽条件を考慮すると、通気空間の相対
湿度は70%以下に維持するのが好ましい。
【0034】その結果、通気空間(14),(24),
(34)の絶対湿度が低減されるため、室外よりも室
内、すなわち、壁(1)、床(2)及び天井(3)の各
通気空間(14),(24),(34)よりも室内が低
温であっても、室内側の第1の防湿材(12),(2
2),(32)や断熱材(13),(23),(33)
の内部で結露することがなく、壁(1)、床(2)及び
天井(3)の湿潤化を防止することが出来る。
【0035】また、特に、夏季などの室外が高湿度の場
合は、上記の様に通気空間(14),(24)及び(3
4)の除湿を行うと共に、空気循環路(7)の蓋部材
(71)を開け、送風機(72)を作動させる。送風機
(72)は、空気循環路(7)を通じ、天井(3)の通
気空間(34)と床(2)の通気空間(24)の間で強
制的に空気を移動させ、その結果、更には、壁(1)の
通気空間(14)における空気の流れを向上させる。従
って、空気循環路(7)及び送風機(72)が設けられ
た建築物においては、構造体通気層の空気の循環を一層
促進して効率的に除湿することが出来る。
【0036】一方、例えば、室外の絶対湿度が9g/k
g’未満、好ましくは7〜8g/kg’の範囲内の所定
値未満の場合は、開閉機構を作動させて蓋部材(2
6),(36)及び(41)を開放し、各通気空間(1
4),(24)及び(34)から成る構造体通気層に外
気を導入する。勿論、除湿装置(6)の運転を行う必要
はない。開放された通気空間(14),(24),(3
4)において、室内側の第1の防湿材(12),(2
2),(32)は、室内の気密を保持すると共に、水蒸
気圧の高い室内から当該通気空間への水蒸気の透過を防
止しするため、通気空間(14),(24),(34)
及び断熱材(13),(23),(33)内部は外気と
同等の湿度に保持される。その結果、壁(1)、床
(2)及び天井(3)の各構造体内部における湿潤化が
防止される。
【0037】なお、上記の様な制御は、制御装置に組み
込まれたカレンダータイマーを利用し、一定期間に限っ
て開閉機構や除湿装置(6)の運転モードを所定のパタ
ーンに設定することにより、一層簡便に行うことも出来
る。すなわち、室外の絶対湿度が所定値(例えば9g/
kg’)以上に増加する夏季の様な場合には、斯かる時
期的条件に基づき、最初から開閉機構を作動させて蓋部
材(26),(36)及び(41)を閉止し、また、空
気循環路(7)を開けて送風機(72)を作動させる。
そして、通気空間(14),(24)又は(34)に取
り付けられたセンサー(湿度計)から得られた相対湿度
のデータに基づき、例えば、構造体通気層の相対湿度が
80%以上の場合に除湿装置(6)を作動させる。一
方、室外の絶対湿度が所定値(例えば9g/kg’)未
満に減少する冬季の様な場合には上述の一般的な制御を
行う。上記の様な運転モードのパターンは、地域別の気
象データに基づいて設定することも出来る。
【0038】因に、本発明の上記の機能は、躯体の乾燥
状態を示す表1及び表2によって更に具体的に説明する
ことが出来る。各表中の数値は、一例として、九州北部
における冬季および夏季の平均気温、平均湿度を参照し
た数値である。
【0039】
【表1】 [構造体通気層を開放した冬季の運転モードにおける壁内部の状態] A D C B 気 温(℃) −0.5 −0.5 20.7 22 相対湿度(%) 55 55 13.3 50 水蒸気分圧(mmHg) 2.4 2.4 2.4 9.9 絶対湿度(g/Kg′) 2 2 2 8.2 露点温度(℃) −7.5 −7.5 −7.5 11.2 A:屋外の空気状態,B:室内の空気状態,C:第1の防湿材(12)の室外 側表面の空気状態,D:第2の防湿材(15)の室内側表面の空気状態
【0040】冬季において、例えば、外気温が−0.5
℃、室内温度が22℃という状況では、室内の空気中の
絶対湿度が8.2g/kg’、室外の絶対湿度が2g/
kg’となるが、第1の防湿材(12)は、室内の水蒸
気が壁内部へ透過するのを防止する。また、施工上生じ
る隙間などから壁内部に室内側の水蒸気が僅かに漏出す
るが、通気空間(14)は、室外に開放されて2.4mm
Hgの水蒸気分圧となっているため、断熱材(13)中
の水蒸気をその分圧差により当該通気空間を通じて室外
側へ排出させる。従って、壁内部の相対湿度が常に約1
3〜55%と低く維持される。その結果、壁内部の湿潤
化および結露が防止され、木材の腐朽が防止される。
【0041】
【表2】 [構造体通気層を遮蔽して除湿する夏季の運転モードにおける壁内部の状態] A D C B 気 温(℃) 33.5 33.1 25.5 25 相対湿度(%) 61 45 70 50 水蒸気分圧(mmHg) 23.5 17.2 17.2 12 絶対湿度(g/Kg′) 20 14.4 14.4 9.9 露点温度(℃) 24.9 19.6 19.6 9 A:屋外の空気状態,B:室内の空気状態,C:第1の防湿材(12)の室外側 表面の空気状態,D:第2の防湿材(15)の室内側表面の空気状態
【0042】夏季において、例えば、外気温が33.5
℃、室内温度が25℃という状況では、室内の空気中の
絶対湿度が9.9g/kg’、室外の絶対湿度が20g
/kg’となるが、第2の防湿材(15)は、遮蔽され
た構造体通気層に対し、室外の水蒸気の透過を防止す
る。また、施工上生じる隙間などを通じて室外から壁内
部へ僅かな水蒸気が侵入するが、除湿装置(6)は、構
造体通気層の水分を除去して室外へ排出する。従って、
壁内部の相対湿度が45〜70%と低く維持される。そ
の結果、壁内部の湿潤化および結露が防止され、木材の
腐朽が防止される。
【0043】上述の様に、本発明の建築物およびその防
湿方法によれば、屋内と屋外を仕切る壁(1)、床
(2)、天井(3)等の構造体内部の通気空間(1
4),(24),(34)の絶対湿度を常に低く維持す
るため、冬季、夏季を通じた季節変動や気象条件、また
は地域性に拘わらず、上記の構造体内部の湿潤化を確実
に防止することが出来、断熱材(13),(23),
(33)の性能劣化や脱落、木材の腐朽、鉄骨の腐食な
どを防止することが出来る。従って、木造または鉄骨木
造の建築物における耐久性を一層向上させることが出来
る。
【0044】また、本発明によれば、木材腐朽、金属腐
食などを防止し得るため、設計時の構造強度(耐震強
度)を確実に維持することが出来、しかも、断熱材(1
3),(23),(33)の性能劣化を防止し得るた
め、耐用年数同様に、設計時の省エネルギー性能を大幅
に延長することが出来る。更に、構造体内部にける乾燥
度を高めることが出来るため、カビ、ダニ等の繁殖を低
減することが出来、居住環境の向上に寄与し得る。斯か
る効用を備えた本発明は、従来より湿潤化が大きな課題
とされていた高気密・高断熱化住宅などにおいて好適に
実施し得る。
【0045】本発明の建築物は、上記の実施形態の他、
種々の形態で実施し得る。例えば、図3に示す様に、床
(2)においては、床根太の下面を利用して第2の防湿
材(25)を張り付けてもよい。また、土台、大引き等
の構造体の下側に捨て張りを敷設することにより、通気
空間(24)を設けて第2の防湿材(25)を張設する
ことも出来る。この場合、第2の防湿材(25)と地盤
の間の空間に対して蓋部材(26)を開放する様に構成
してもよい。
【0046】更に、天井(3)においては、天井根太の
上面を利用して第2の防湿材(35)を張り付けてもよ
い。この場合、天井根太の上面に蓋部材(36)を設
け、外気の導入を小屋裏換気口(42)を介して行うこ
とも出来る。床(2)の通気空間(24)及び天井
(3)の通気空間(34)を図3の様に構成した場合、
除湿すべき構造体通気層を小さくすることが出来るた
め、防湿材(12)、(15)の表面積を小さくするこ
とが出来、その結果、除湿装置(6)の運転コストも一
層低減し得る。
【0047】また、図4に示す様に、壁(1)において
は、室外側の第2の防湿材(15)と外装材(16)の
間に基礎側から小屋裏へ通じる通気層(17)を設ける
ことにより、小屋裏空間の通気性を高めることが出来
る。
【0048】更に、本発明の建築物において、除湿装置
(6)は、構造体通気層(14),(24),(34)
の内部を除湿し得る配置である限り、図3に示す配置の
他、建築物の外部を含む何れの場所に設置されていても
よい。また、図示しないが、壁(1)においては、裏側
に第2の防湿材を予め貼着した外装材を使用することに
より、施工性を一層高めることが出来る。
【0049】更には、図示しないが、室内側の第1の防
湿材(12),(22),(32)は,内装下地材の室
内側の表面または内装仕上げ材の裏面(室外側の表面)
に予め貼設して施工してもよい。また、第1の防湿材
(12),(22),(32)として、外側の防湿材に
比べて水蒸気透湿率の若干大きなシートを採用すること
により、室内に設置された空調機器などを使用し、通気
空間(14),(24),(34)側から透過する水蒸
気を除去する様に構成することも出来る。なお、上述の
制御条件は、室外の絶対湿度の基準を7g/kg’以下
の所定値に、構造体通気層の相対湿度の基準を70%以
下の所定値にそれぞれ設定してもよいのは勿論であり、
建材の種類やそれに発生する腐朽菌の種類などによって
適宜に設定し得る。
【0050】
【発明の効果】以上説明した様に、本発明の建築物およ
びその防湿方法によれば、屋内と屋外を仕切る壁、天
井、床などの構造体内部の通気空間の絶対湿度を常に低
く維持するため、冬季、夏季を通じた季節変動や気象条
件、または地域性に拘わらず、上記の構造体内部の湿潤
化を確実に防止することが出来、断熱材の劣化や木材の
腐朽、鉄骨の腐食などを防止することが出来る。従っ
て、木造または鉄骨木造の建築物における耐久性を一層
向上させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る建築物の一実施形態を示す縦断面
図である。
【図2】図1における建築物の要部拡大図であり、壁構
造の一実施形態を示す縦断面図ある。
【図3】本発明に係る建築物の他の実施形態を示す縦断
面図である。
【図4】本発明に係る建築物の更に他の実施形態を示す
縦断面図である。
【図5】本発明に係る建築物の防湿方法を示すフローチ
ャートである。
【図6】従来の建築物の縦断面図である。
【図7】図6における断熱壁部分の拡大図である。
【符号の説明】
1 :壁 12:第1の防湿材 13:断熱材 14:通気空間 15:第2の防湿材 16:外装材 2 :床 22:第1の防湿材 23:断熱材 24:通気空間 25:第2の防湿材 26:蓋部材 3 :天井 32:第1の防湿材 33:断熱材 34:通気空間 35:第2の防湿材 36:蓋部材 4 :屋根 6 :除湿装置 7 :空気循環路 72:送風機
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 上谷地 朋之 北海道札幌市白石区本通14丁目北1番26 号 江本工業株式会社内 (56)参考文献 特開 平5−311768(JP,A) 実開 昭63−197121(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) E04B 1/62 - 1/72 F24F 7/007

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 壁、床および天井が気密断熱構造を備え
    た木造または鉄骨木造の建築物において、前記気密断熱
    構造は、内装材の室外側表面から室外側に向けて順次に
    配置された第1の防湿材、断熱材および第2の防湿材
    と、前記断熱材と前記第2の防湿材の間に形成された通
    気空間とから成り、前記壁、床および天井の各通気空間
    は、当該建築物の外周側を包囲する一体的な構造体通気
    層として連続させられ且つ外気を通気または遮蔽可能に
    構成され、しかも、外気を遮蔽した際に前記第1の防湿
    材および第2の防湿材によって気密状態を保持可能にな
    され且つ除湿装置によって除湿可能になされていること
    を特徴とする防湿機能を備えた建築物。
  2. 【請求項2】 天井の通気空間と床の通気空間とを接続
    する空気循環路が設けられ、かつ、当該空気循環路に送
    風機が設置されている請求項1に記載の建築物。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2に記載の建築物におい
    て、室外の絶対湿度が7〜9g/kg’の範囲内の所定
    値以上の場合は、外気に対して構造体通気層を遮蔽し、
    しかも、前記構造体通気層の相対湿度が70〜80%の
    範囲内の所定値以上の場合は、除湿装置を作動させるこ
    とにより、前記相対湿度を前記所定値未満に維持し、ま
    た、室外の絶対湿度が前記所定値未満の場合は、外気に
    対して前記構造体通気層を開放することを特徴とする建
    築物の防湿方法。
  4. 【請求項4】 請求項2に記載の建築物において、室外
    の絶対湿度が7〜9g/kg’の範囲内の所定値以上の
    場合は、外気に対して構造体通気層を遮蔽し且つ空気循
    環路の送風機を作動させ、しかも、前記構造体通気層の
    相対湿度が70〜80%の範囲内の所定値以上の場合
    は、除湿装置を作動させることにより、前記構造体通気
    層の空気を循環させつつ当該構造体通気層の前記相対湿
    度を前記所定値未満に維持し、また、室外の絶対湿度が
    前記所定値未満の場合は、外気に対して前記構造体通気
    層を開放することを特徴とする建築物の防湿方法。
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