JP2981023B2 - 多孔性炭素繊維、その製造方法、多孔性黒鉛繊維の製造方法および多孔性炭素繊維の処理方法 - Google Patents

多孔性炭素繊維、その製造方法、多孔性黒鉛繊維の製造方法および多孔性炭素繊維の処理方法

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JP2981023B2
JP2981023B2 JP3164785A JP16478591A JP2981023B2 JP 2981023 B2 JP2981023 B2 JP 2981023B2 JP 3164785 A JP3164785 A JP 3164785A JP 16478591 A JP16478591 A JP 16478591A JP 2981023 B2 JP2981023 B2 JP 2981023B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、多孔性炭素繊維、そ
の製造方法、多孔性黒鉛繊維の製造方法および多孔性炭
素繊維の処理方法に関し、さらに詳しくは、各種複合材
料の補強用充填材料として、またその層間化合物形成能
力を利用して層間化合物のホスト材料として有用な多孔
性炭素繊維、その簡単な製造方法、その多孔性炭素繊維
から多孔性黒鉛繊維を製造する方法および多孔性の繊維
の処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする技術的課
題】気相成長炭素繊維は、縮合環状の炭素面が繊維軸に
平行に、しかも繊維軸を中心とする年輪状に発達した構
造を有するので、高い機械的強度、高い弾性を有する。
したがって、この気相成長炭素繊維は、プラスチック、
セラミックス、ゴム、金属等と複合することにより、そ
れら各種のマトリックス材料の機械的性質を大きく改善
することができるものと期待され、これまで様々の検討
がなされてきた。
【0003】しかしながら、気相成長炭素繊維のマトリ
ックス材料に対する改善効果は、その有する高い機械的
特性から予測される程、大きくなかった。その理由とし
ては、マトリックス材料と気相成長炭素繊維との間での
応力伝達(あるいは伝播)が悪いことが挙げられる。す
なわち、気相成長炭素繊維を種々のマトリックス材料に
分散した複合材料を電子顕微鏡で観察すると、マトリッ
クス中の気相成長炭素繊維とマトリックス材料との間に
微小の間隙が生じ、あるいはそのような間隙がなくても
単に接触しているに過ぎない状態が見られたことから、
上記理由が推定されるのである。その結果、マトリクス
中には気相成長炭素繊維を分散してマトリックス材料を
強化するといいながら、マトリックス中には気相成長炭
素繊維を収容した多数の空隙が、かえってマトリックス
の強度を低下させることにもなった。
【0004】気相成長炭素繊維とマトリックス材料との
間での応力の伝達を良好に改善することを目的として、
酸化反応その他により気相成長炭素繊維の表面に官能基
を導入したり、グラフト重合を行ったりすることによ
り、気相成長炭素繊維のマトリックス材料に対する親和
性を向上させることが試みられた。しかしながら、PA
N系繊維、セルロース系繊維あるいはピッチ系繊維等を
炭化して得られる従来の炭素繊維に比べて、気相成長炭
素繊維の表面は欠陥が少なく、その表面は化学的に安定
であるから、上記のような試みは工業的であるといえる
程の成功を見ていない。
【0005】また、擦過その他により気相成長炭素繊維
の表面の部分的除去や腐蝕を行わせる試みもなされた
が、一般の炭素繊維と異なり、気相成長炭素繊維の表面
の内側にも欠陥の少ない結晶が配向しているので、気相
成長炭素繊維のマトリックス材料中での良好な応力の伝
達が達成されるようにする改善は十分ではなかった。
【0006】この発明は前記事情に基づいてなされたも
のである。すなわち、この発明の目的は、マトリックス
材料中に分散することにより複合材料の機械的強度等の
物性向上を達成することのできる新規な物理的構造を有
する多孔性炭素繊維を提供し、前記多孔性炭素繊維の簡
単な製造方法を提供し、前記多孔性炭素繊維をさらに改
良した多孔性黒鉛繊維の製造方法および前記多孔性繊維
の処理方法を提供することにある。
【0007】この発明の他の目的は、層間化合物のホス
ト材料として好適な、新規な構造を有する多孔性炭素繊
維を提供することにある。さらにこの発明のその他の目
的は、塗料の充填材として膜強度、剥離性の改善された
好適な多孔性炭素繊維を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】この発明者らは、物理的
方法により気相成長炭素繊維のマトリックス材料に対す
る良好な応力伝達性の改善について研究した。その研究
途中において、新素材関連技術あるいは複合材料関連技
術とは全く関係の無い技術分野に属するところの、活性
炭製造技術において炭素の水蒸気処理に着目した。炭素
を賦活化して活性炭を製造するためには、比表面積が2
00〜400m2/gもある炭素を酸化し、500Å以
下の孔を開けて、比表面を約1,000m2 /gとする
ものである。この酸化反応により炭素の微結晶の端や格
子欠陥が酸化されて孔を形成すると考えられている。
【0009】結晶端や格子欠陥の少ない気相成長炭素繊
維では、容易に孔が形成されるとは考えられず、事実こ
れまで行なわれた酸化反応によっては、気相成長炭素繊
維のマトリックス補強効果の改善はほとんどできなかっ
た。しかしながら、本発明者らは、種々の実験を行なっ
ているうちに、特定の酸化条件、すなわち水蒸気処理に
より、気相成長炭素繊維にも量は少ないが孔を開けるこ
とができてその比表面積を増加させ、マトリックスに対
する補強効果を大きく改善することを見いだした。この
方法により、気相成長炭素繊維ならびに多くの孔が形成
されてしまうと、逆に繊維自身の強度が低下してしま
い、補強効果はなくなってしまうと推定される。この発
明はかかる事情の下に完成した。
【0010】すなわち、前記課題を解決するための請求
項1に記載の発明は、縮合環状の炭素面が繊維軸を中心
にして年輪状に積層し、繊維軸の中心が中空になり、式
B/A(ただし、BはBET法による比表面積を表し、
Aは平均直径および平均長さにより算出することのでき
る比表面積を表す。)で示される比表面積比Cが1.5
〜20であると共に多孔性であることを特徴とする多孔
性炭素繊維であり、請求項2に記載の発明は、水銀圧入
法で測定される孔径600Å以下の細孔容積が2×10
-2cc/g以上である前記請求項1に記載の多孔性炭素
繊維であり、請求項3に記載の発明は、気相成長炭素繊
維を、水蒸気または水蒸気と空気もしくは酸素とを含ん
だ不活性ガス中で、前記請求項1に記載の比表面積比が
1.5〜20になるまで、加熱することを特徴とする多
孔性炭素繊維の製造方法であり、請求項4に記載の発明
は、前記不活性ガス中の水蒸気の含有量が10〜90容
量%であり、加熱温度が500〜1,500℃である前
記請求項3に記載の多孔性炭素繊維の製造方法であり、
請求項5に記載の発明は、前記請求項3または請求項4
に記載の方法により得られた多孔性炭素繊維を、1,5
00℃以上に加熱して黒鉛化することを特徴とする多孔
性黒鉛繊維の製造方法であり、請求項6に記載の発明
は、前記請求項3または請求項4に記載の方法により得
られた多孔性炭素繊維を、不活性気体中500〜1,5
00℃に加熱することを特徴とする多孔性炭素繊維の処
理方法である。
【0011】以下、この発明の多孔性気相成長繊維、そ
の製造方法および多孔性炭素繊維から製造される黒鉛繊
維について更に詳述する。この発明の多孔性炭素繊維
は、縮合環状の炭素面が、繊維軸を中心にして年輪状に
積層し、繊維軸の中心は中空になっている形態すなわち
両端が閉塞しあるいは解放されたチューブ状の形態を有
すると共に特定の比表面積比を有し、しかも多孔性であ
る。
【0012】前記比表面積比Cは、式B/A(ただし、
BはBET法による比表面積を表し、Aは平均直径およ
び平均長さにより算出することのできる比表面積を表
す。)で示すことができ、本願発明においては、1.5
〜20である。一方の比表面積Aは細孔の存在を無視し
た外形から求められる。すなわち、多孔性炭素繊維の直
径、長さを顕微鏡観察により求め、それらと比重とから
単位重量当たりの表面積を計算する。直径、長さには測
定による変動があるので、100本以上の多孔性炭素繊
維の顕微鏡観察により求めた値の平均値を使用する。
【0013】また、比重は、アルコールを使用したアル
キメデス法により求めることができる。なお、多孔性炭
素繊維をアルコールに浸漬する際には、雰囲気を減圧に
することにより多孔性炭素繊維の孔中にもアルコールを
十分に浸透させることが必要である。他方の比表面積B
は、多孔性炭素繊維における細孔の存在を考慮した比表
面積であり、BET法による窒素吸着量から求めること
ができる。
【0014】比表面積比Cが1のときには細孔が存在し
ないことを意味する。また、細孔の量が増加すると比表
面積比Cは増加する。この発明においては、この比表面
積比Cが1.5未満であると、多孔性炭素繊維のマトリ
ックス材料に対する応力伝達性の改善効果が小さく、2
0を越えると多孔性炭素繊維の機械的強度が低下して補
強材としての機能を発揮することができない。
【0015】この比表面積比Cは、多孔性炭素繊維をど
のような用途に用いるかによりその好適な範囲が相違す
る。たとえば、この多孔性炭素繊維を強化材として使用
するのであると、比表面積比Cの好ましい範囲は2〜1
5、特に3〜12であり、層間化合物として使用するの
であると、比表面積比Cの好ましい範囲は3〜18、特
に5〜15である。
【0016】この発明の多孔性炭素繊維は、前記比表面
積比Cと多孔性であることとによって特徴付けられる。
さらに前記多孔性に関し、この発明の多孔性繊維におい
ては、孔径600Å以下の細孔容積が2×10-2cc/
g以上、さらには3×10-2cc/g以上であるのが好
ましい。
【0017】各孔径毎の細孔容積は低温ガス吸脱着法
(例えばオミクロン社製、全自動精密ガス吸着装置 オ
ムニソープ100)や、水銀圧入法によって測定するこ
とができる。細孔容積の値が、前記以下では複合材料の
強度は充分改善されず、また層間化合物の生成速度、ゲ
スト物質との反応量が低い。
【0018】この発明の多孔性炭素繊維は、上述のよう
な比表面積比Cを有することと多孔性であることとの二
つの要素によって、この多孔性炭素繊維を補強材として
複合材を形成したときに、優れた応力伝達機能を発揮す
る。さらに述べると、単に比表面積だけに注目した場
合、例えば直径0.2μmおよび長さ4μmの繊維と、
直径2μmおよび長さ40μmの繊維との計算上の比表
面積は、共に密度を2g/cm2 とするとそれぞれ10
2 /gと1m2 /gとなり、大きく異なるが、いずれ
も複合材料における補強材としたときには、両者に実質
的な差異がない。後者を本願発明の処理、すなわち水蒸
気または水蒸気と空気もしくは酸素とを含んだ不活性ガ
ス中で加熱するという処理をして比表面積を10m2
gにしたときに、大きな差異を生じる。さらに、気相成
長炭素繊維を輪切りにしてアスペクト比L/Dをほぼ1
にすると、繊維の両端の断面積により表面積が増加し、
両端の年輪構造が露出することと相俟って、比表面積比
Cが1よりも大きくなってしまうことがあるが、多孔性
でないことにより、応力の伝達効果がなく、マトリック
ス樹脂に対する補強効果もない。
【0019】この多孔性炭素繊維は、プラスチック、セ
ラミックス、ゴム、金属等と複合することのできる強化
材として好適に使用される。これらのマトリクス材料の
中でも、この発明の多孔性炭素繊維と組み合わせるのに
好適なマトリックス材料は、プラスチックであり、熱硬
化性樹脂および熱可塑性樹脂を使用することができる。
この多孔性炭素繊維は、その表面状態が改善され、マト
リックス材料に対して濡れ性が著しく改善されているの
で、マトリックス材料の機械的強度を大きく向上させる
ことができる。
【0020】この多孔性炭素繊維は、多孔性であるの
で、種々の物質をインターカーレートすることができ、
インターカーレートする物質の種類に応じてさまざまの
新たな物性を付与することができる。たとえば、インタ
ーカーレートする物質として、NaH、AsF5 、K、
KHg、FeCl3 、CuCl3 、Br2 、HNO3
を挙げることができる。これらインターカーレートする
物質を適正に選択して、この多孔性炭素繊維にインター
カーレートすることにより、高導電性、超伝導性、水素
吸蔵効果、触媒効果を有する新規な素材を提供すること
ができる。
【0021】上記特性を有する多孔性炭素繊維は、この
発明の方法により製造することができる。すなわち、気
相成長炭素繊維を、水蒸気または水蒸気と空気もしくは
酸素とを含んだ不活性ガス中で、前記比表面積比Cが
1.5〜20になるまで、加熱することによって、この
発明の多孔性炭素繊維を製造することができる。もっと
も、多孔性炭素繊維は、縮合環状の炭素面が繊維軸を中
心にして年輪状に積層し、繊維軸の中心が中空になって
いる限り、原料は前記気相成長炭素繊維に限定されるこ
とはない。前記本願発明の多孔性繊維の製造方法では、
縮合環状の炭素面が繊維軸を中心にして年輪状に積層
し、繊維軸の中心が中空になった構造を有する気相成長
炭素繊維のこのような構造を損なうことなく、その表面
に微細孔を開穿することができるので、好適な製造方法
である。
【0022】ここで、気相成長炭素繊維は、気相成長法
により製造することができる。気相成長法により気相成
長炭素繊維を製造する方法としては、いわゆる基板法と
流動気相法とがある。基板法は、基板に触媒金属例えば
遷移金属もしくは遷移金属化合物を担持させ、高温度に
加熱しながら、その基板上に炭素源ガスである炭化水素
ガスを流通させることにより、基板表面に炭素繊維を生
成させる方法であり、流動気相法は、基板を使用せず、
触媒金属になり得る金属化合物と炭素源である炭素化合
物とを気化して高温の反応管中に流通させることによ
り、空間中に炭素繊維を生成させる方法である。
【0023】具体的には、特開昭52−107320
号、特開昭57−117622号、特開昭58−156
512号、特開昭58−180615号、特開昭60−
185818号、特開昭60−224815号、特開昭
60−231821号、特開昭61−132630号、
特開昭61−132600号、特開昭61−13266
3号、特開昭61−225319号、特開昭61−22
5322号、特開昭61−225325号、特開昭61
−225327号、特開昭61−225328号、特開
昭61−2275425号、特開昭61−282427
号の各公報に記載の方法により製造される気相成長炭素
繊維をこの発明の方法における原料として使用すること
ができる。
【0024】これらの中でも、直径が0.1〜5μmで
あり、製造方法により相違するものの長さが通常0.5
μm〜1,000μmに及ぶ寸法であり、X線回折法に
より測定されるd002 が3.45〜3.6Åであり、d
002 面が重なった結晶の厚みLcが50Å以下であり、
002面の長さLaが140Å以下であるところの、気
相成長炭素繊維が好ましい。特に流動法によって得られ
た気相成長炭素繊維が好ましい。
【0025】かかる気相成長炭素繊維を加熱処理すると
きの前記不活性ガスとしては、窒素およびアルゴンやヘ
リウム等の希ガス等を使用することができる。不活性ガ
ス中の水蒸気濃度は、10〜95容量%、好ましくは5
0〜90容量%である。また酸素の濃度は10容量%以
下であるのが好ましい。加熱温度は通常、500〜1,
500℃であり、好ましくは800〜1,200℃であ
る。
【0026】処理操作としては、たとえば、反応管中に
所定量の気相成長炭素繊維を収容し、次いでこの反応管
を前記加熱温度に加熱しつつ、前記不活性ガスと水蒸気
または水蒸気と空気もしくは酸素とを反応管中に流通さ
せる。このような操作によって多孔性炭素繊維が生成す
る。これ以外の処理操作として、前記加熱温度に加熱さ
れた反応管中に気相成長炭素繊維を連続的に一定の割合
で供給すると共に、前記不活性ガスと水蒸気または水蒸
気と空気もしくは酸素とを反応管中に一定の割合で連続
的に供給し、所定時間反応管中に滞留した気相成長炭素
繊維を反応管から連続的に取り出す、所謂連続法を採用
することもできる。なお、この連続法を採用する場合、
原料である気相成長炭素繊維と、水蒸気または水蒸気と
空気もしくは酸素とを含有する不活性ガスとは向流接触
であっても並流接触であっても良い。
【0027】この操作において興味深いことは、上記操
作過程において、反応の進行に伴って電子顕微鏡で観察
される細孔が増加し、その孔径も大きくなっていくので
あるが、BET法により測定した比表面積は一旦増加は
するものの、やがては低下し始める。この比表面積の増
加と減少との傾向は、炭素粉を水蒸気処理することによ
り活性炭を製造する場合とは大きく異なる。すなわち、
炭素粉を水蒸気処理すると、BET法により測定される
比表面積は、水蒸気処理の進行と共に、一方的に増加の
一途をたどる。かかる点から、炭素粉の水蒸気処理と、
この発明の気相成長炭素繊維の処理とはその作用効果が
全く相違する。
【0028】本願発明における前記水蒸気または水蒸気
と空気もしくは酸素とを含んだ不活性ガスによる処理
は、気相成長炭素繊維の機械的物性を損なうことなく、
気相成長炭素繊維に細孔を開穿する。したがって、この
発明における水蒸気処理は、各種の酸化剤を使用した
り、電解反応を利用したりして繊維の表面を酸化する単
なる酸化処理とは、以下に述べるように全く異なるもの
である。
【0029】たとえば、各種の酸化剤を使用したり、電
解反応を利用したりして繊維の表面を酸化することによ
り、繊維の表面に酸素含有官能基を導入し、マトリック
ス材料との親和性を向上させることは従来から行われて
いる。その場合、導入した官能基を分解させないよう
に、酸化反応は通常、800℃未満の低温で行われてい
る。そして、そのような酸化反応による処理は、一般的
な炭素繊維については有効であった。しかしながら、こ
の酸化処理においては、官能基の導入量を多くするため
に、過激な条件で炭素繊維の酸化処理を行うと、確かに
官能基の導入量は増大するが、炭素繊維自体が酸化崩壊
してその機械的物性が低下し、かえって複合材の強度が
低下していた。
【0030】気相成長炭素繊維に対しても一般的な炭素
繊維に対するのと同様の酸化処理が検討されたが、その
炭素環平面の配向が良好で、表面欠陥が少ないためか、
官能基の導入量が増加せず、反応条件により導入量を増
加させても炭素繊維による補強効果は期待するほどのも
のではなかった。しかも、酸化条件を過激にすると、気
相成長炭素繊維が本質的に有する繊維軸の中空部内壁が
腐食されて中空の直径が大きくなり、最後には表面層の
みが残存する薄皮状繊維になってしまうことすらあっ
た。
【0031】このように、炭素繊維や気相成長炭素繊維
についての従来の酸化処理と、本願発明における処理方
法とは大きく相違する。層間化合物とするときには、ゲ
スト物質やその溶剤と反応し得る官能基の存在は好まし
くない。本願で得られる多孔性炭素繊維は、濡れ性等が
さほど改善されていないことから判断すると、官能基の
形成は少ないと見られるが、必要により水蒸気処理後5
00〜1,500℃で不活性雰囲気中で再加熱しておく
ことが好ましい。
【0032】この多孔性繊維は、アルゴンやヘリウムそ
の他の希ガス、窒素ガス、場合によっては水素ガス等の
不活性雰囲気中で更に1,500℃以上、好ましくは
2,000℃以上に加熱することにより、多孔性の黒鉛
繊維とすることができる。この多孔性の黒鉛繊維は、直
径が0.1〜5μm、長さが0.5〜1,000μmで
あり、X線回折法により測定されるd002 が3.35〜
3.40Åであり、d002 面が重なった結晶の厚みLc
が550Å以上であり、d002 面の長さLaが140〜
1,200Åである。しかも、式B’/A’(ただし、
B’はBET法による比表面積を表し、A’は平均直径
および平均長さにより算出することのできる比表面積を
表す。)で示される比表面積比C’が1.5〜20であ
り、水銀圧入法で測定される孔径600Å以下の細孔容
積が2×10-2cc/g以上である。
【0033】この多孔性の黒鉛繊維もまた、プラスチッ
ク、セラミックス、ゴム、金属等と複合することのでき
る強化材として好適に使用される。特にこの多孔性の黒
鉛繊維の表面状態が改善され、マトリックス材料に対す
る応力伝達性が著しく改善されているので、マトリック
ス材料の機械的強度を大きく向上させることができる。
【0034】
【実施例】次にこの発明の実施例を示す。この発明は以
下の実施例に限定されるものではない。この発明の要旨
の範囲内で適宜に変形して実施することができるのは言
うまでもない。
【0035】(実施例1)直径が0.8μmで、アスペ
クト比が46であり、真比重が1.96であり、これに
より算出した比表面積が2.58m2 /gである気相成
長炭素繊維を用意した。この気相成長炭素繊維を1,0
00℃に加熱しながら、水蒸気濃度が80容量%である
窒素と水蒸気との混合ガスを前記気相成長炭素繊維に、
全流量5リットル/分で3分間接触させた。
【0036】接触処理の後に、得られた繊維の比表面積
をBET法により測定したところ、20.6m2 /gで
あり、比表面積比Cは7.98であった。また、得られ
た繊維につき、オムニソープで測定された孔径600Å
以下の細孔容積は表1に示す通りであった。その結果、
この繊維は、この発明で規定する多孔性炭素繊維であっ
た。
【0037】
【表1】
【0038】エポキシ樹脂(チバガイギー社製、「LY
−556」)100重量部と硬化剤(チバガイギー社
製、「HY−917J」)90重量部と促進剤(チバガ
イギー社製、「DY−062」)1重量部とからなる樹
脂組成物をマトリックスとし、このマトリックス中で前
記多孔性炭素繊維の占める体積割合が20%になるよう
に、前記マトリックスにこの多孔性炭素繊維を配合し、
100℃にて1時間その後に150℃にて2時間の条件
で硬化させることにより、硬化複合材料を得た。この硬
化複合材料につき、JIS K7203に準じて曲げ試
験をした。その結果、曲げ強度が20.4kg/mm
2 、曲げ弾性率が631kg/mm2 であった。
【0039】(比較例1)前記実施例1で使用した気相
成長炭素繊維を用いて、実施例1におけるのと同様の樹
脂組成物をマトリックスとして、実施例1と同様の条件
にて硬化複合材料を得た。この硬化複合材料につき、前
記実施例1と同様にして曲げ強度および曲げ弾性率を測
定した。その結果、曲げ強度は14.2kg/mm2
曲げ弾性率が513kg/mm2 であった。
【0040】(実施例2〜7)直径が0.8μmで、比
重が1.96g/m2 で、アスペクト比が46で、これ
により算出した比表面積が2.58m2 /gである気相
成長炭素繊維を用意した。この気相成長炭素繊維を1,
100℃に加熱しながら水蒸気濃度が70容量%、酸素
が5容量%である窒素と水蒸気と酸素とからなる混合ガ
スを前記気相成長炭素繊維に、全流量5リットル/分で
接触させた。このとき、接触時間を変えることにより比
表面積比が異なる多孔性炭素繊維を得た。
【0041】その後、前記実施例1と同様にエポキシ樹
脂をマトリックスとして、前記多孔性炭素繊維の占める
体積割合が20%になるような複合材料を形成し、JI
SK7203に準じて曲げ試験を行った。その結果を表
2に示した。
【0042】
【表2】
【0043】(実施例8)前記実施例7で用意したのと
同じ気相成長炭素繊維を1,000℃に加熱しながら水
蒸気濃度が80容量%である窒素と水蒸気とからなる混
合ガスを前記気相成長炭素繊維に、全流量5リットル/
分で10分間接触させ、多孔性炭素繊維を得た。この多
孔性気相性成長炭素繊維をアルゴンガス雰囲気中で2,
900℃で30分間処理し、多孔性黒鉛繊維を得た。ア
ルキメデス法により測定したこの多孔性黒鉛繊維の比重
は2.25g/cm2 であり、BET法により測定した
比表面積は25.1m2 /gであった。また計算により
求めた比表面積は2.52m2 /gであり、その比表面
積比Cは0.96であった。この多孔性黒鉛繊維を実施
例1と同様にして、複合材料を形成し、JIS K72
03に準じて曲げ試験を行った。その結果、曲げ強度は
23.1kg/mm2 であり、曲げ弾性率は661kg
/mm2 であった。
【0044】(比較例2)水蒸気を用いた処理を行わな
い外は前記実施例8と同様に実施して複合材料を得た。
この複合材料につき、JIS K7203に準じて曲げ
試験を行った。その結果、曲げ強度は13.5kg/m
2 であり、曲げ弾性率は551kg/mm2であっ
た。
【0045】(実施例9)中央部がくびれたパイレック
スガラス管のその一方の空間内に、実施例1で得られた
気相成長炭素繊維を窒素雰囲気中で2850℃で10分
間かけて黒鉛化処理をして得られた黒鉛繊維0.05g
を収容すると共に、他方の空間内には精製カリウム0.
5gを収容した。次いで、真空下で前記ガラス管におけ
る両空間を熔封して、全長12cm、内径10mm、く
びれ部内径4mmの寸法を有するパイレックス管を得
た。このパイレックス管を電気炉に装填し、250℃で
1日かけて加熱処理をした。
【0046】その結果、黒鉛繊維は黒色から黄褐色に変
化し、第1ステージの黒鉛−カリウム層間化合物KC8
になったことが示された。この黄褐色に変化した繊維
を、水素を充満した200ccのガラス容器内にいれ、
水素ガス吸収の様子を観察したところ、約8時間で平衡
達した。また、酸化処理前の気相成長炭素繊維を用い
て同様の実験を行ったところ、全体が黄褐色になるのに
2日を要し、更に水素ガス吸収が平衡に達するのに24
時間以上を必要とした。
【0047】
【発明の効果】この発明の多孔性炭素繊維は、比表面積
比が特定の範囲内にあると共に多孔性であるので、各種
複合材料の補強用充填材料として、また、その層間化合
物形成能力を利用して層間化合物のホスト材料として有
用である。特にこの多孔性炭素繊維をマトリックス材料
中に分散すると、多孔性炭素繊維とマトリックス材料と
の応力の伝達性が良好になり、複合材料の機械的強度の
向上を図ることができる。また、この発明の方法による
と、上記の優れた特性を有する多孔性炭素繊維を簡単な
処理工程により製造することができる。また、この発明
によると、このような優れた多孔性炭素繊維から多孔性
黒鉛繊維を容易に製造することができる。

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 縮合環状の炭素面が繊維軸を中心にして
    年輪状に積層し、繊維軸の中心が中空になり、式B/A
    (ただし、BはBET法による比表面積を表し、Aは平
    均直径および平均長さにより算出することのできる比表
    面積を表す。)で示される比表面積比Cが1.5〜20
    であると共に多孔性であることを特徴とする多孔性炭素
    繊維。
  2. 【請求項2】 水銀圧入法で測定される孔径600Å以
    下の細孔容積が2×10-2cc/g以上である前記請求
    項1に記載の多孔性炭素繊維。
  3. 【請求項3】 気相成長炭素繊維を、水蒸気または水蒸
    気と空気もしくは酸素とを含んだ不活性ガス中で、前記
    請求項1に記載の比表面積比Cが1.5〜20になるま
    で、加熱することを特徴とする多孔性炭素繊維の製造方
    法。
  4. 【請求項4】 前記不活性ガス中の水蒸気の含有量が1
    0〜90容量%であり、加熱温度が500〜1,500
    ℃である前記請求項3に記載の多孔性炭素繊維の製造方
    法。
  5. 【請求項5】 前記請求項3または請求項4に記載の方
    法により得られた多孔性炭素繊維を、1,500℃以上
    に加熱して黒鉛化することを特徴とする多孔性黒鉛繊維
    の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記請求項3または請求項4に記載の方
    法により得られた多孔性炭素繊維を、不活性気体中50
    0〜1,500℃に加熱することを特徴とする多孔性炭
    素繊維の処理方法。
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