JP2979166B2 - 色変化ベシクル含有系を内包するマイクロカプセル分散体を被着した光記録シートおよびそれを用いた光記録方法 - Google Patents

色変化ベシクル含有系を内包するマイクロカプセル分散体を被着した光記録シートおよびそれを用いた光記録方法

Info

Publication number
JP2979166B2
JP2979166B2 JP4313730A JP31373092A JP2979166B2 JP 2979166 B2 JP2979166 B2 JP 2979166B2 JP 4313730 A JP4313730 A JP 4313730A JP 31373092 A JP31373092 A JP 31373092A JP 2979166 B2 JP2979166 B2 JP 2979166B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
vesicle
optical recording
substance
electron
state
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP4313730A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH06155899A (ja
Inventor
雅治 塩谷
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
KASHIO KEISANKI KK
Original Assignee
KASHIO KEISANKI KK
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by KASHIO KEISANKI KK filed Critical KASHIO KEISANKI KK
Priority to JP4313730A priority Critical patent/JP2979166B2/ja
Publication of JPH06155899A publication Critical patent/JPH06155899A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP2979166B2 publication Critical patent/JP2979166B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Photometry And Measurement Of Optical Pulse Characteristics (AREA)
  • Color Printing (AREA)
  • Non-Silver Salt Photosensitive Materials And Non-Silver Salt Photography (AREA)
  • Manufacturing Of Micro-Capsules (AREA)
  • Investigating Or Analysing Materials By The Use Of Chemical Reactions (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、光刺激によって物質拡
散透過性を制御可能な光応答性ベシクル含有系を内包す
るマイクロカプセル分散体を被着した光記録シートおよ
びそれを用いた光記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、フルカラー記録が可能な記録方式
として、電子写真方式、熱転写方式、インクジェット方
式、光応答性マイクロカプセル方式、熱現像銀塩方式等
種々の方式が提案され、また実用に供されている。
【0003】ところで、フルカラー記録画像に要求され
る主な品質としては、解像度、濃度階調性、色純度、色
重ね度等が挙げられる。また、記録装置の性能として、
記録速度が早いこと、音が静かであること、ランニング
コストが安いこと、小型で軽量なこと、普通紙および再
生紙を使用できること、メンテナンスフリーであること
等が要求されている。
【0004】しかしながら、上記要求をほぼ満たすよう
なフルカラー記録装置は、未だ実現されていない。例え
ば、熱転写方式では、記録紙のほかにトナーやインク等
の現像剤を担持するフィルムを別に用意する必要がある
ため、装置が大型化し、またメンテナンス作業性および
ランニングコストの点で劣る。また、圧力定着カプセル
トナーを使用する様式では、きわめて大きな圧力を加え
る必要があるため、装置が大型化するという問題があ
る。さらに、カプセルトナー方式の場合、カプセルの微
粒子化が困難であることから、解像度や階調性の点で問
題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明は、マ
イクロカプセル単位で発色濃度を制御でき、簡単な装置
により高解像度で階調性の良好な画像を形成でき、高品
質のフルカラー画像をも形成可能な光記録シートおよび
それを用いた光記録方法を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段および作用】上記課題を解
決するために、本発明では、(1)アニオン性両親媒性
化合物によって二分子膜ベシクルを形成し、(2)二分
子膜のアニオン性界面に、特定波長の光を吸収して電子
を放出する電子供与性物質(ドナー)と、シス−トラン
ス光異性化する電子受容性物質(アクセプター)を吸着
させ、(3)ベシクルの内外相に、相互拡散し互いに発
色反応可能な物質を隔離して配し、(4)このように構
成されるベシクル含有系をマイクロカプセルに内包さ
せ、(5)これらマイクロカプセルを結着樹脂中に分散
させて支持シート上に層形成するという基本構成をとっ
ている。
【0007】すなわち、本発明の光記録シートは、
(1)(a)アニオン性二分子膜で形成されたベシクル
本体と、(b)前記二分子膜のアニオン性界面にこれを
実質的に覆うように吸着されたシス−トランス異性化す
る電子受容性物質からなる光応答性バルブ膜と、(3)
該光応答性バルブ膜内に共存して前記アニオン性界面に
吸着され、特定波長の励起光の照射によって電子を放出
する電子供与性物質とを包含するベシクルを含有しかつ
(2)前記ベシクルの内相と外相に互いに発色反応し得
る第1および第2の反応性物質を含有するところのベシ
クル含有系を内包するマイクロカプセルを(3)結着樹
脂中に分散させたマイクロカプセル分散体を(4)支持
シートに被着して形成したものである。
【0008】前記電子受容性物質は、前記励起光の波長
とは異なる波長の光照射によりトランス体からシス体へ
異性化し、これにより該光応答性バルブ膜を密な分子集
合状態にある閉状態から乱れた分子集合状態にある開状
態へ切り換える。またこの電子受容性物質は、少なくと
も前記励起光の照射による前記電子供与性物質と前記電
子受容性物質間での連鎖的な電子リレーによってシス体
からトランス体へ異性化し、これにより該光応答性バル
ブ膜を前記開状態から前記閉状態へ切り換える。
【0009】このような電子受容性物質のシス−トラン
ス異性化に基づく前記光応答性バルブ膜の前記開閉状態
の切り替えにより前記二分子膜を通る前記第1および第
2の反応性物質の透過を増減させて前記ベシクルの内外
相の反応性物質の相互拡散を制御するとともに前記拡散
により発色反応を生起させて前記マイクロカプセルを色
変化させる。
【0010】ベシクルを構成する二分子膜は、非重合性
および/または重合性両親媒性化合物によって構成され
る。
【0011】二分子膜全体を重合性両親媒性化合物で形
成し、これを重合させることによって、非重合性両親媒
性化合物を用いたベシクルよりも力学的強度がさらに向
上したベシクルが得られる。
【0012】また、二分子膜を非重合性両親媒性化合物
と重合性両親媒性化合物とで形成すると、両者が膜内で
相分離し、これを重合処理に供することによって重合性
両親媒性化合物が重合した高分子化領域とこれに囲まれ
た非重合性両親媒性化合物からなる低分子領域とからな
る相分離二分子膜ベシクル構造が得られる。
【0013】
【実施例】以下、本発明を図面を参照しながら、実施例
に基づき具体的に説明する。なお、全図を通して、同じ
符号は同じ物を示す。
【0014】<第1の実施例>図1には、第1の実施例
によるモノカラーの光記録シート40が模式的に示され
ている。図1に示されるように、この光記録シート40
は、支持シート41を含む。支持シート41上には、マ
イクロカプセル31を結着樹脂42中に分散させたマイ
クロカプセル分散体43が層として形成されている。マ
イクロカプセル31は、所定のベシクル11を含有しか
つその内相に第1の反応性物質22を、外相に第1の反
応性物質22と発色反応する第2の反応性物質24を含
有するところのベシクル含有系を内包する。
【0015】マイクロカプセル31は、数十ミクロンか
ら数ミクロンの直径を有し、その膜厚は、数ミクロンか
ら数十ナノメートルの範囲にある。マイクロカプセル
は、後に詳述する光に対して透明なポリマー材料で形成
することができ、そのようなポリマー材料として、例え
ばポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリメチ
ルメタクリレート、ポリウレア、ポリスチレン、ポリビ
ニルアルコールを挙げることができるが、本発明は、そ
れらに限定されるものではない。
【0016】マイクロカプセル31内に封入されている
ベシクル含有系は、ベシクル11とマイクロカプセル内
でベシクル11を分散させている分散媒21(ベシクル
外層)を含み、ベシクル11の内相の第1の反応性物質
22は溶媒23中に存在する。ベシクル外相を構成する
分散媒21に、第2の反応性物質24が存在する。
【0017】図2に最もよく示されているように、ベシ
クル11は、両親媒性化合物12で形成された閉じた二
分子膜からなるベシクル本体13を包含する。一般に、
二分子膜は、相転移特性を有しており、相転移温度Tc
を越える温度では流動性を示す液晶状態にあるが、Tc
未満の温度では、ゲル状態(結晶状態)となるので物質
透過に対してより高いバリアー性を示す。そのような二
分子膜を構成する化合物12として、種々の両親媒性化
合物が知られているが、本発明では、アニオン性の両親
媒性化合物を用いる。アニオン性両親媒性化合物12と
して、各種のカルボン酸塩(RCOOM)、スルホン酸
塩(RSO3 M)、スルホン酸エステル塩(RSO2 O
R’)、リン酸エステル塩(ROPO3 M2 )(これら
の式において、Rは、直鎖または分岐鎖の飽和または不
飽和脂肪族炭化水素基、アルキル置換芳香族基(例え
ば、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン)等を表わ
し、Mは、Na、Ca、Mg等を示し、R’はアルコー
ル残基を示す)等を使用することができる。また、生体
材料であるリン脂質も使用できる。本発明で使用できる
アニオン性両親媒性化合物の具体例を下記化1〜化5に
示すが、これらに限定されるものではない。
【0018】
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】 アニオン性両親媒性化合物は、溶媒中でイオン解離し、
そのアニオン部が自己集合して二分子膜を形成する。こ
のアニオン性の二分子膜の界面には、厚さが数百オング
ストロームに及ぶ電気二重層が形成されており、大きな
電位勾配を有する静電場となっている。
【0019】ベシクル本体(二分子膜)13の外表面
(アニオン性界面)には、シス−トランス光異性化物質
14が吸着されている。シス−トランス光異性化物質1
4は、特定の波長の光を吸収して分子内の結合様式ある
いは電子状態に変化を生じ、最終的に分子の立体構造が
変化する物質である。例えば、σ結合とπ結合から構成
された二重結合を有する分子は、紫外光を吸収してππ
* 遷移し、反結合状態に転じた2つの電子の反発により
分子平面がねじれ、エネルギーの高いシス状態になり、
可視光の照射または暗所での加熱によりエネルギーの低
いトランス状態に戻ることが知られている。
【0020】このようなシス−トランス光異性化物質と
して、アゾベンゼンやスチルベンの各種誘導体が知られ
ているが、本発明においてシス−トランス光異性化物質
14はアニオン性二分子膜界面において電子リレーを行
なうアクセプター及びメディエーターとしても機能する
ものであるから、カチオン性のものを用いることが有用
であり、特にピリジニウムイオン部位を含むものが好ま
しい。そのようなシス−トランス光異性化物質14の具
体例を下記化6〜化8に示すが、本発明はこれらに限定
されるものではない。
【0021】
【化6】
【化7】
【化8】 カチオン性のシス−トランス光異性化物質14は、ベシ
クル本体13を構成する両親媒性化合物12のカチオン
部と1対1で交換され、いわゆる単分子膜となってベシ
クル本体13の界面にこれを全面的に覆って吸着され
る。
【0022】ベシクル本体13の界面には、さらに、ド
ナー分子15が吸着されている。ドナー15は、特定波
長の吸収によって電子放出する物質であり、可視光照射
によって励起され電子供与性となる色素を好ましく用い
ることができる。そのような色素としては、例えば、下
記化9に示すルテニウムトリスビピリジル錯体、下記化
10に示すポルフィリン誘導体、下記化11に示す各種
金属ポルフィリン錯体を挙げることができるが、本発明
はこれらに限定されるものではない。
【0023】
【化9】
【化10】
【化11】 ベシクル本体13の界面に吸着されているドナー分子1
5は、可能な限り少ない方が望ましく、ベシクル1個当
り1分子吸着していれば十分である。
【0024】さて、以上のように構成されたベシクル1
1の内相には、上にも述べたように、第1の反応性物質
22が溶媒23とともに封入されている。本例では、第
1の反応性物質22として顕色剤が用いられている。こ
の顕色剤22は、後に詳述する第2の反応性物質24で
ある染料前駆体と化学反応してこれを発色させる物質で
あり、例えばロイコ染料の顕色剤として、α−ナフトー
ル、β−ナフトール、ビスフェノールA等のフェノール
類、サリチル酸亜鉛誘導体、芳香族カルボン酸金属塩、
酢酸等の酸性物質を用いることができる。ベシクル内相
中の溶媒23としては、通常、水が用いられる。
【0025】マイクロカプセル31内においてベシクル
11を分散させている分散媒21(第2の反応性物質2
4の溶媒であってもよい)には、第2の反応性物質24
が配されている。本例では、この第2の反応性物質24
は、通常無色であるが、第1の反応性物質22である顕
色剤(酸性物質)と反応して発色する染料前駆体が用い
られ、例えばロイコ染料が好適に使用できる。ロイコ染
料としては、フタリド系、フルオラン系、トリフェニル
メタン系、フェノチアジン系、スピロピラン系の各染料
を例示することができる。より具体的には、一般的な感
圧紙や感熱紙等に広く用いられているクリスタルバイオ
レットラクトン、カルバゾールブルー、インドリルレッ
ド、ピリジンブルー、ローダミンBラクタム、マラカイ
トグリーン、3−ジアルキルアミノ−7−ジアルキルア
ミノフルオラン、ベンゾイルロイコメチレンブルーを挙
げることができるが、これらに限定されるものではな
い。ベシクル外相21を構成する分散媒は、第2の反応
性物質(染料前駆体)24の溶媒でもあり得、通常、水
が用いられる。
【0026】かくして、マイクロカプセル31内におい
て、第1および第2のターゲット物質22、24は、ベ
シクル本体13の二分子膜によって隔離され、またマイ
クロカプセル31内のベシクル含有系は、マイクロカプ
セル壁によって相互に充分に隔離されることとなる。
【0027】再び図1を参照すると、以上のように構成
されたマイクロカプセル31を分散させている結着樹脂
(バインダー)42は、後に詳述する光に対して透明な
ものであり、例えばポリビニルアルコール、ポリメチル
スチレン、ポリエステル、カルボキシメチルセルロー
ス、スチレン−ブタジエンラテックスを使用することが
できる。
【0028】また、支持シート41は、紙や各種フィル
ムで形成できる。
【0029】次に、上記モノカラーの記録シート40の
製造方法の一例を図3〜図5を参照して詳しく説明す
る。
【0030】(1)溶液の加熱(図3のST1) 適当な容器10内において、ベシクル内相に封入すべき
第1の反応性物質22を溶媒23に溶かす。この溶液を
アニオン性両親媒性化合物の相転移温度Tc以上の温度
に熱する。
【0031】(2)両親媒性化合物の投入(図3のST
2) 両親媒性化合物12を上記工程(1)で調製した溶液に
溶かし、十分に撹拌する。
【0032】(3)ベシクル本体の形成(超音波照射)
(図3のST3) 上記工程(2)で得られた溶液をTc以上の温度に保ち
ながら、超音波を照射し、第1の反応性物質22と溶媒
23を内蔵するベシクル本体13を形成する。
【0033】(4)光異性化物質とドナーの吸着(図4
のST4) 工程(3)で得られたベシクル本体13含有溶液をしば
らくの間放置して自然冷却させた後、カチオン性の光異
性化物質14とドナー15を溶かした溶液を添加し、し
ばらく放置する。これにより光異性化物質14とドナー
15がベシクル本体13の膜表面に吸着し、本発明のベ
シクル11を形成する。
【0034】(5)分離(図4のST5) 工程(4)に続いて、ベシクル11の外相に存在する第
1の反応性物質22を透析、ゲル濾過、遠心分離等の手
段により除去する。
【0035】(6)ベシクル外相系の形成(図5のST
6) ベシクル外相に配すべき第2の反応性物質24を溶媒2
1に溶かした溶液を工程(5)までの処理が終わった溶
液に添加する。かくしてベシクル含有系が完成する。
【0036】(7)マイクロカプセル化(ST7:図示
せず) 例えば界面重合法、in−situ重合法、コアセルベ
ーション法等公知のマイクロカプセル化技術により、上
記ベシクル含有系を内包するマイクロカプセルを製造す
る。一具体例を挙げると、まず、上記ベシクル含有系に
界面重合性の第1のモノマーを溶かし、第1の溶液を得
る。他方、ベシクル含有系の溶媒とは非混和性の溶媒に
第1のモノマーと重合する第2のモノマーを架橋剤とと
もに溶解し、第2の溶液を得る。第2の溶液を撹拌しな
がら、これに第1の溶液を徐々に加えると、相互に非混
和性の溶媒の界面で第1および第2のモノマーの重合と
架橋反応が生じ、これがベシクル含有系を取り込んでマ
イクロカプセル壁が形成される。反応後、濾過、乾燥す
る。
【0037】(8)マイクロカプセル分散体の支持シー
トへの被着(ST9:図示せず) ST7で得られたマイクロカプセルを結着樹脂に分散混
合し、マイクロカプセル分散体とし、これを支持シート
上に層形成する。
【0038】以上により、本例のモノカラーの光記録シ
ートが完成する。
【0039】次に、上記第1の実施例によるモノカラー
の光記録シートの作製例を記載する。
【0040】先ず、第1の反応性物質である顕色剤とし
ての酢酸を溶媒である水に溶かし、0.3Mの溶液10
ccを調製する。これを約80℃に保ちながら、アニオ
ン性両親媒性化合物であるジドデシルリン酸ナトリウム
15マイクロモルを加え、十分に撹拌し、あるいは振盪
する。これにより溶液は乳白色の状態になり、比較的大
きなサイズの多重相ベシクルが形成される。その後、温
度を約80℃に保ちながら、超音波ホモジナイザーによ
って10分〜20分間超音波処理すると、溶液は半透明
の状態になり、単一層(二分子膜)のベシクル本体が形
成される。
【0041】次に、カチオン性光異性化物質としてのN
−メチル−4−(β−スチリル)ピリジニウムクロリド
15マイクロモル及びドナーとしてのトリス(2,2−
ビピリジン)ルテニウムジクロリド0.1マイクロモル
を水に溶かし、これを上記ベシクル本体含有溶液中に投
入する。これにより、光異性化物質とドナーとがベシク
ル本体の膜表面に吸着され、ベシクルが形成される。
【0042】ついで、得られたベシクル含有溶液系をゲ
ル濾過してベシクル外相に残存する酢酸等を除去する。
【0043】しかる後、ベシクル外相に配すべき第2の
反応性物質である染料前駆体としてのクリスタルバイオ
レットをこの溶液中に添加する。こうして、ベシクル含
有系が得られる。
【0044】ついで、得られたベシクル含有系にエチレ
ンジアミンを0.4M濃度に溶かす。これをA液とす
る。他方、クロロホルムとシクロヘキサンの体積比1:
4の混合有機溶媒に1,8−オクタンジカルボニルクロ
リドを50mM、架橋剤としてのトリメソイルクロリド
を1.5mMの濃度となるように溶かす。これをB液と
する。
【0045】上記B液を高速撹拌しながら、これに当量
のA液を徐々に加える。すると、水/有機溶媒の界面
で、エチレンジアミンと1,8−オクタンジカルボニル
クロリドとの重合反応と、架橋剤による架橋反応が生
じ、ベシクル含有系を取り込んでマイクロカプセル壁が
形成される。反応終了後、得られたマイクロカプセルを
濾過し、乾燥する。
【0046】次に、結着樹脂としてのポリエステル樹脂
をアセトンとトルエンとの混合溶媒に溶解し、これに上
で得たマイクロカプセルを加えて均一に分散させる。
【0047】最後に、この分散液を支持シートとしての
ポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布し、乾燥し
て、本例のモノカラーの光記録シートを得る。
【0048】さて、次に、以上のように構成された本発
明の光記録シートを用いた光記録方法を図面を参照して
説明するが、まず初めに、マイクロカプセル内における
1つのベシクル含有系の発色作用について述べる。。
【0049】(I)ベシクル含有系の発色作用について
(図6ないし図9参照。なお、これらの図において、マ
イクロカプセル壁は、図示されていない): (a)初期状態(図6) 熱的に安定な初期状態では、スチルベン誘導体等の光異
性化物質14は、平面的分子形態のトランス状態で安定
しており、密に分子凝集しているため、光異性化物質1
4は緻密な集合状態となっている。それ故、この光異性
化物質14からなる単分子膜の物質透過性は低い。すな
わち、光異性化物質14の単分子膜は、ベシクルの物質
透過に関していわば閉状態にある。
【0050】また、ベシクル本体13を構成する二分子
膜は、常温において結晶状態にあるので、この二分子膜
の物質透過性も低い。
【0051】従って、初期状態では、ベシクル内相物質
(顕色剤)22とベシクル外相物質(染料前駆体)24
とは、ベシクル膜によって充分に隔離される。
【0052】(b)第1の光(hν1 )の照射(シス異
性化)(図7) 適当な第1の光源から、波長ν1 のスペクトル成分光を
含む光hν1 をベシクル11に照射する。これにより、
光異性化物質14が波長ν1 の成分光を1分子吸収する
と、励起されて分子の立体構造が変化する、すなわちシ
ス状態に異性化する。なお、例えばスチルベン誘導体の
場合、波長ν1 に相当する光は、紫外領域にある。この
シス状態では、スチルベンは、トランス状態で2つのベ
ンゼン環が存在していた平面に対して2つのベンゼン環
部分が、立ち上がった構造をとる。この相互の立体障害
のためにスチルベン誘導体の分子凝集は、ゆるくなって
乱れた膜構造となり、物質がその乱れた膜構造部分を通
過し易くなるので、スチルベン誘導体の膜の物質透過性
が高くなる。すなわち、光異性化物質14の単分子膜は
物質透過に関し開状態に切り替わる。
【0053】しかしながら、この状態でも、二分子膜は
なお結晶状態にあるので、ベシクル膜全体としては、物
質透過性は低い。
【0054】なお、この過程において、ドナー分子15
は関与しない。
【0055】(c)発色反応の開始・進行(加熱)(図
8) 次に、ベシクル含有系を二分子膜の相転移温度Tc以上
の温度に加熱して、ベシクル本体13を構成するアニオ
ン性両親媒性化合物12の二分子膜を液晶状態に相転移
させる。この場合、Tcは、光異性化物質14が元の立
体状態(トランス状態)に戻る臨界温度よりも充分に低
い必要があり、この点を考慮して両親媒性化合物12を
選定する。
【0056】こうして液晶状態に相転移した二分子膜
は、その物質透過性が高くなり、また、光異性化物質1
4の単分子膜の物質透過性も上記光照射により既に高く
(すなわち、開状態に)なっているので、ベシクル内相
物質(顕色剤)22とベシクル外相物質(染料前駆体)
24が、ベシクル膜を通して互いに拡散し始めるように
なる。
【0057】時間の経過とともに、ベシクル外相物質で
ある染料前駆体24は、ベシクル内相中へ拡散してゆ
く。また、ベシクル内相物質である顕色剤22も、ベシ
クル外相中へ拡散してゆく。その結果、染料前駆体24
と顕色剤22とが化学反応して色素25を形成し、発色
する。なお、ベシクル内相物質22とベシクル外相物質
24それぞれの拡散量、従って発色量は、それぞれの分
子のサイズやベシクル内外相の浸透圧差等によって異な
るが、両物質の総拡散量(発色濃度)は、拡散時間tに
より制御できる。
【0058】(d)第2の光(hν2 )の照射(電子リ
レーによるトランス異性化:発色反応の停止)(図9) 本発明において、上記物質拡散、従って発色反応を停止
するためには、適当な第2の光源から、波長ν2 のスペ
クトル成分光を含む第2の光hν2 を照射する。
【0059】一般に、光異性化物質を元の立体分子構造
に戻すためには、上記波長ν1 とは異なる波長の光を吸
収させるか、あるいは特定の温度以上に加熱する必要が
ある。本発明においては、ドナー分子15を励起する波
長の光(hν2 )を照射するものである。上記作製例で
用いたルテニウム錯体の場合、hν2 に相当する光は可
視光領域にある。
【0060】この第2の光の照射によってドナー分子1
5が1光子吸収して励起状態になると、このドナー分子
15から、アクセプターであるシス−トランス異性化分
子14へ1電子移動が行なわれる。そして、さらに、ア
ニオン性静電場の効果によりアクセプター14からドナ
ー15への逆電子移動が抑制される結果、一群のシス状
態の光異性化分子14の間で電子の受渡しが順次リレー
的に行なわれる。このとき、シス状態の光異性化物質1
4は、電子を一旦受け取るが、次に、隣接するシス状態
の同物質14に電子を渡す(酸化)過程においてトラン
ス状態に立体異性化する。これは、シス体よりもトラン
ス体の方がエネルギー的により安定なためである。最終
的に、ベシクル本体13の界面に吸着された全てのシス
状態の光異性化物質14がトランス状態に異性化する。
【0061】スチルベン誘導体等の光異性化物質14
は、トランス状態で密に分子凝集するので、光異性化物
質14の単分子膜は、緻密な膜構造に戻り、閉状態に切
り替わる。このため、物質透過性は低くなり、顕色剤2
2および染料前駆体24はベシクル膜を透過しにくくな
り、物質拡散(発色の進行)が停止する。
【0062】すなわち、1光子のみの吸収によって、ベ
シクル本体13の界面に吸着された多数のシス状態の光
異性化分子14が連鎖的にトランス状態へ異性化し、ベ
シクル膜の物質透過性が減少して物質拡散が停止するこ
とになる。従って、きわめて高感度の光応答性が得られ
るものである。この場合のシス−トランス光異性化の量
子効率は、ベシクル上の光異性化分子14の吸着数で与
えられるから、ベシクル本体13を構成する両親媒性分
子12の凝集数と比例関係にあり、ある程度大きなベシ
クル本体13を形成すれば、より高い量子効率が得られ
ることとなる。このように、光異性化物質14の分子膜
は、照射された光に応答して開閉状態が切り替わり、物
質透過に対するバルブの役割をなす。
【0063】なお、本発明において、シス−トランス異
性化は、ドナー色素分子により分光増感されているの
で、励起波長が異なるドナー色素分子を用いることによ
り光応答波長を容易に変えることができるという利点も
ある。
【0064】(II)複数のベシクルを内包するマイク
ロカプセルの発色反応による記録方法について(図1
0): (a)初期状態(図10のST1) 上記(I)(a)に述べたように、熱的に安定な初期状
態では、ベシクル11の物質透過性は低い。従って、ベ
シクル内相物質(顕色剤)22はベシクル外相へ拡散せ
ず、また、ベシクル外相物質(染料前駆体)24もベシ
クル内相へ拡散しない。従って、マイクロカプセル(従
って記録シート)に色変化は生じない。
【0065】(b)第1の光(hν1 )の照射(シス異
性化)(図10のST2) 適切な光源から、記録情報に応じて波長ν1 のスペクト
ル成分光を含む光hν1 をマイクロカプセル31内に照
射することにより、マイクロカプセル31内の全てのベ
シクル11の全ての光異性化物質を励起してシス状態に
異性化させ、光異性化物質の単分子膜を開状態に切り換
える。しかしながら、上記(I)(b)に述べたよう
に、ベシクル11全体としては、物質透過性は低いの
で、ベシクル内相物質(顕色剤)22はベシクル外相へ
拡散せず、また、ベシクル外相物質(染料前駆体)24
もベシクル内相へ拡散しない。従って、この状態でもマ
イクロカプセル(従って、記録シート)に色変化は生じ
ない。
【0066】(c)第2の光(hν2 )の照射(電子リ
レーによるトランス異性化)(図10のST3) 適切な光源から、波長ν2 のスペクトル成分光を含む第
2の光hν2 をその強度を制御しながらマイクロカプセ
ル31に照射する。図10には、照射強度の異なる2つ
の例を示してある(図中、系統a(上段)は光の照射強
度の高い場合を、系統b(下段)は光の照射強度の低い
場合を示す)。
【0067】ドナー分子は、その固有の吸光率で光を吸
収し、光励起されるので、充分に短い光照射時間では全
てのベシクル11におけるドナー分子が励起状態になる
ものではない。ドナー分子が励起されたベシクル11で
は、シス状態の光異性化分子全てが電子リレー反応によ
ってトランス異性化し、光異性化物質の単分子膜は閉状
態に切り替わる。ドナー分子が励起されなかったベシク
ル11では、光異性化分子は、シス状態のままであり、
光異性化物質の単分子膜は開状態のままである。トラン
ス異性化するベシクル11の量は、照射強度の高い(系
統a)方が、照射強度の低い場合(系統b)よりも多
い。
【0068】このように、光の照射強度を制御すること
によりベシクル含有系のトランス異性化するベシクルの
量を制御できる。
【0069】なお、この過程は、電子リレー反応に基づ
くものであるので、きわめて高感度の光応答性が得られ
る。
【0070】(d)発色反応の開始・進行(記録)(図
10のST4) 次に、上記I(c)に述べたように、ベシクル系を相転
移温度Tc以上の温度に加熱して、ベシクル膜を構成す
るアニオン性両親媒性化合物の二分子膜を液晶状態に相
転移させる。
【0071】このとき、光異性化分子がトランス状態に
異性化しているベシクルにあっては、ベシクル全体とし
ては物質の透過性が低い状態にあるので、物質の膜透過
拡散を生じさせず、従って、マイクロカプセル(記録シ
ート)の色変化には関与しない。他方、光異性化分子が
シス状態のままにあるベシクルでは、ベシクル膜の物質
透過性が高くなるので、顕色剤22と染料前駆体24が
ベシクル膜を透過して相互に拡散し始める。その結果、
顕色剤22と染料前駆体24が化学反応して色素25を
生成し、マイクロカプセル31内で発色する。
【0072】かくして、II(c)の段階でトランス異
性化しなかったベシクル11の量に従って色素の生成量
が定まることとなる。また、色素25の生成量は、時間
の経過とともに増加し、発色濃度も高まるので、マクロ
カプセル31(記録シート)の発色濃度は、拡散時間t
によっても制御することができる。なお、色素は、マイ
クロカプセル31内部のベシクル含有系内で生成するの
で、記録シート全体としてみれば、第2の光hν2 の未
照射部分が最も濃く発色することとなる。すなわち、光
hν2 の照射・未照射、照射強度、または照射時間を制
御することにより、発色濃度を精密に制御でき、それに
より精細な濃度階調性を有する記録画像を得ることがで
きる。
【0073】(e)発色反応の停止(図10のST5) 加熱を停止し、ベシクル系の温度が相転移温度Tc未満
になると、ベシクル本体を構成する二分子膜が結晶状態
に相転移する。
【0074】その結果、ベシクルの物質透過性が低下
し、マイクロカプセル31(記録シート)の色変化は停
止する。
【0075】(f)潜在的記録情報の消去(図10のS
T6) 適切な光源から、波長ν2 のスペクトル成分光を含む第
2の光hν2 を充分な強度で、または充分な時間マイク
ロカプセル31内に照射する。
【0076】すると、全てのドナー分子が励起して、全
てのベシクル11の全ての光異性化分子が電子リレー反
応によりトランス異性化し、光異性化物質の単分子膜は
閉状態に切り替わる。その後は、再びマイクロカプセル
31(記録シート)をTc以上の温度に加熱してもベシ
クルの物質透過性が低くなっているため、拡散による発
色反応は生じない。すなわち、各々のベシクル11に潜
在的に記録された発色に関する情報が消去されることと
なる。
【0077】以上述べたように、第1の実施例によれ
ば、ベシクル本体13上に吸着された光異性化物質14
を異性化させる励起光を記録情報に応じて照射するとと
もに、照射量等を調節することによりマイクロカプセル
31内に内包した色変化ベシクル含有系の色変化、すな
わちベシクル内外相に分離配剤させた顕色剤22と染料
前駆体24との相互拡散に基づく発色反応を精密に制御
でき、精細な濃度階調性を有する高解像度のモノカラー
記録画像を容易に得ることができる。また、光異性化物
質14は、ベシクル本体13を構成する二分子膜内には
存在せず、このベシクル本体13の界面を単分子膜状に
覆って存在し、これが物質拡散の透過に対するバルブの
役割をするため、記録のための光照射による従来のベシ
クルのように光異性化物質が多量に二分子膜内に存在す
ることによるベシクルの機械的強度の低下はなく、しか
もトランス異性化に電子リレーを利用しているのでベシ
クルの感度も非常に高い。
【0078】図11は、上記光記録方法を実施するため
の光記録装置の一具体例を概略的に示す模式図である。
同図に示されるように、ベシクル含有系が初期状態にあ
る光記録シート40が、記録シート搬送経路51に沿っ
て給送されてくる。この記録シート40に対し、まずシ
ス異性化用光源装置52により波長ν1 の成分光を含む
第1の光hν1 を照射する(図10のST2に対応)。
本例の波長ν1 の成分光に相当する光hν1 は、紫外領
域光である。従って、光源装置52として、レーザー光
源、光変調機、スキャニング装置および集光光学系等か
らなるレーザー照射装置を用いる場合、紫外線レーザー
を光hν1 として照射すればよい。
【0079】ついで、第1の光照射を受けた光記録シー
ト40に、記録情報に応じて光記録ヘッド53により波
長ν2 の第2の光hν2 を照射する(図10のST3に
対応)。本例の波長ν2 の成分光に相当する光hν
2 は、可視領域光である。従って、光記録ヘッド53と
して、レーザー光源、光変調機、スキャニング装置およ
び集光光学系等からなるレーザー記録ヘッドを用いる場
合、可視レーザーを光hν1 として照射すればよい。
【0080】第2の光照射を受けた光記録シート40
は、その後、下流側に配設された一対のヒートロール5
4aおよび54bを有する加熱手段54で加熱され、こ
れによりモノカラー記録画像が光記録シート上に形成さ
れる(図10のST4に対応)。その後、記録シートは
冷却され、これにより、発色反応が停止し、モノカラー
記録画像の発色濃度が確定する(この作用を定着作用と
いう)(図10のST5に対応)。モノカラー記録画像
が形成された光記録シート40は、第2の光hν2 を照
射する光源を備えた記録情報消去手段55により再び第
2の光hν2 の照射を受け手、潜在的記録情報が消去さ
れる(図10のST6に対応)。
【0081】定着を終え記録画像が完成したモノカラー
の光記録シート40は、その後機外に排出される。
【0082】このように、本例の光記録方法によれば、
主な画像形成プロセス装置が光源、光記録ヘッドおよび
加熱手段によって構成されるきわめて簡単な構造である
光記録装置により、高解像度で精細な濃度階調を有する
モノカラー記録画像を得ることができる。
【0083】なお、加熱手段54による加熱時間によっ
ても物質分子の総拡散量が決まるから、この加熱時間、
すなわちモノカラーの光記録シートの搬送速度を調節す
ることによってもマイクロカプセル(色変化ベシクル含
有系)の発色濃度を制御することができる。
【0084】なお、以上述べた第1の実施例では、ベシ
クル内相物質を顕色剤とし、ベシクル外相物質を染料前
駆体とする構成を取ったが、ベシクル内相物質を染料前
駆体とし、ベシクル外相物質を顕色剤とする構成でも全
く同様の効果が得られる。
【0085】<第2の実施例>この実施例の光記録シー
トは、マイクロカプセルに内包されるベシクル膜構造の
破裂や、ベシクル膜同士の融合をさらに抑制し、長期安
定性により優れたベシクル膜(従って記録シート)を得
るために、ベシクル本体膜を高分子化したものであり、
それ以外の構成は、第1の実施例と同じである。
【0086】この実施例において、マイクロカプセルに
内包されるベシクル本体を構成するアニオン性二分子膜
を形成する両親媒性化合物として、重合性の両親媒性界
面活性剤を用いている。
【0087】図12に、本実施例の光記録シートに使用
されるマイクロカプセルに内包させるベシクル含有系を
示すが、このベシクル含有系は、ベシクル本体13を構
成する二分子膜が重合性のアニオン性両親媒性化合物1
6で作られ、これらが重合して高分子化していること以
外は、第1の実施例の光記録シートに使用されるマイク
ロカプセルに内包されたベシクル含有系と同様の構造を
有する。この実施例における二分子膜を構成する重合性
のアニオン性両親媒性化合物16の例を下記化12〜化
14に示すが、本発明はこれらに限定されるものではな
い。
【0088】
【化12】
【化13】
【化14】 このようなベシクル含有系を内包するマイクロカプセル
は、第1の実施例におけるベシクル含有系を内包するマ
イクロカプセルを製造する手順に準じて製造できる。す
なわち、まず、ベシクル内相に封入すべき顕色剤22を
溶媒23に溶かし、この溶液を、使用する重合性のアニ
オン性両親媒性界面活性剤16の相転移温度Tc以上の
温度に加熱する。
【0089】この加熱溶液に重合性のアニオン性両親媒
性界面活性剤16を加えて溶解し、充分に撹拌する。
【0090】次に、Tc以上の温度に保ちながら、この
溶液に超音波を照射することによりベシクル体を形成す
る。
【0091】しかる後、キセノンランプ等を用いて紫外
線を照射して、ベシクル体を形成した重合性のアニオン
性両親媒性界面活性剤16を光重合させ、高分子化した
ベシクル本体13を形成する。。
【0092】以後の処理すなわち、光異性化物質14と
ドナー15の吸着、分離、外相系の形成(染料前駆体2
4の導入)、マイクロカプセル化、支持シート上への塗
布等の各処理は、第1の実施例の場合と同じである。
【0093】次に、第2の実施例の光記録シートの作製
例を示す。
【0094】まず、顕色剤としての酢酸を溶媒である水
に溶かし、0.3Mの溶液100ccを調製する。これ
を約80℃に保ちながら、重合性のアニオン性両親媒性
界面活性剤であるリン酸ジウンデセニル・ナトリウム1
5マイクロモルを加えて溶解し、充分に撹拌するか、容
器を充分に振盪する。すると、溶液は乳白色状態とな
り、このとき比較的大きなサイズの多重層ベシクルが形
成される。同温度を保ちながら、超音波ホモジナイザー
により約10分〜20分超音波処理すると、溶液は半透
明の状態となり、単一層のベシクルが形成される。
【0095】次に25℃の温度で、キセノンランプから
紫外線を6〜8時間上記溶液に照射すると、重合性アニ
オン性両親媒性界面活性剤は重合して高分子化されたベ
シクル本体膜が形成される。
【0096】以後の光異性化物質とドナーの吸着、マイ
クロカプセル化、支持シート上への塗布を含むその他の
処理は、第1の実施例と同様に行なう。
【0097】この第2の実施例の光応答性ベシクル含有
物を内包するマイクロカプセル(従ってこのマイクロカ
プセルの分散体を被着してなる光記録シート)は、第1
の実施例と同様に作用し、その光記録方法も第1の実施
例の場合と同様である。この第2の実施例によれば、第
1の実施例で得られる利点に加えて、ベシクル本体膜が
高分子化されているため、ベシクル膜の機械的強度がさ
らに向上し、またベシクル11同士の融合もさらに抑制
され、長期的安定性に優れた光記録シートが得られると
いう利点をも有する。
【0098】なお、以上述べた第2の実施例では、ベシ
クル内相物質を顕色剤とし、ベシクル外相物質を染料前
駆体とする構成を取ったが、ベシクル内相物質を染料前
駆体とし、ベシクル外相物質を顕色剤とする構成でも全
く同様の効果が得られる。
【0099】<第3の実施例>上記第2の実施例では、
ベシクル本体を構成する両親媒性化合物を重合すること
によりベシクル膜全体を高分子化し、力学的に強いベシ
クル膜を形成し、ベシクル同士の融合も抑制している。
しかしながら、重合によりベシクル膜すなわち2分子膜
構造が固定化されるため、液晶状態における二分子膜構
造の乱れ(揺らぎ)が起こりにくくなり、二分子膜を介
する物質透過性が低下するきらいがある。
【0100】この第3の実施例では、ベシクル膜の機械
的強度を向上させながら、しかも物質透過性の低下を抑
制するために、ベシクル膜を、高分子化した骨格構造
(高分子領域)と非重合化ドメイン(低分子領域)とか
らなる相分離構造としている。そのために、ベシクル膜
構成物質として、重合性のアニオン性両親媒性化合物と
非重合性のアニオン性両親媒性化合物を併用する。
【0101】一般に複数種の両親媒性化合物から構成さ
れたベシクルでは、異なる両親媒性化合物間の親和性が
その集合状態に大きく影響する。例えば、同じ分子種同
士の親和性(自己集合性)が充分に高い両親媒性化合物
は、互いに集合し易く、ベシクル膜中で相分離し、自己
集合性の弱い両親媒性化合物によって囲まれた孤立した
ドメインを形成する。
【0102】そこで、自己集合性の比較的弱い両親媒性
化合物として重合性のアニオン性界面活性剤を用い、自
己集合性の比較的強い両親媒性化合物として非重合性の
アニオン性界面活性剤を用い、両者を併用してベシクル
膜を作り、集合して相分離して孤立ドメインを形成した
非重合性のアニオン性界面活性剤を囲む重合性のアニオ
ン性界面活性剤を重合させて高分子化した骨格構造を形
成することにより、機械的強度と、適度な物質透過性を
有するベシクル膜(相分離高分子化ハイブリッドベシク
ル)が作成できる。
【0103】このようなハイブリッドベシクル含有系を
図13に示す。このベシクル含有系は、ハイブリッドベ
シクル11を含有し、そのベシクル本体13の膜厚は、
数十オングストローム程度である。サイズは、様々なも
のが作成できるが、単一ラメラ相のベシクルでは、数十
ナノメートルから数ミクロン程度のものが作成できる。
【0104】このハイブリッドベシクル本体13につい
て図14および図15を参照して詳しく説明する。な
お、図14は、ハイブリッドベシクル本体13を一部切
り欠いて示す立体図、図15は、図14における部分A
の拡大詳細図である。これら図に示されているように、
ハイブリッドベシクル本体13は、非重合性のアニオン
性低分子両親媒性化合物12の二分子膜からなる孤立し
た低分子領域17と、重合性のアニオン性両親媒性化合
物16を重合して高分子化され、低分子領域17を囲む
(連続した)高分子領域18とからなる。
【0105】低分子領域17を構成する二分子膜は、常
温において結晶状態にある。この二分子膜の相転移温度
をTc1 とする。そのような二分子膜を形成する非重合
性のアニオン性低分子両親媒性化合物12としては、先
に第1の実施例に関して記載した両親媒性化合物を用い
ることができる。
【0106】高分子領域18は、重合性のアニオン性両
親媒性化合物16からなる二分子膜を熱処理や光照射な
どによって高分子化して形成されたものであり、ベシク
ル本体13の骨格をなす。この高分子化された骨格を形
成する二分子膜も常温において結晶状態にある。なお、
この二分子膜は、第1の実施例に関して説明した物質拡
散の開始・進行の段階で上記相転移温度Tc1 以上の温
度に系を加熱したときに、液晶状態または結晶状態のい
ずれの状態にあってもよいが、ベシクルの骨格として
は、結晶状態にある方がより望ましい。このような重合
性のアニオン性両親媒性化合物16としては、先に第2
の実施例に関して記載した重合性の両親媒性化合物を用
いることができる。
【0107】このように構成されるベシクル本体13の
界面には、図13に示されるように、第1の実施例およ
び第2の実施例におけるベシクル本体と同様にシス−ト
ランス光異性化物質14と、ドナー分子15が吸着され
ている。
【0108】以上述べたハイブリッドベシクル膜は、相
転移温度Tc1 以上の温度においては、液晶状態の非重
合性のアニオン性両親媒性化合物からなる低分子領域1
7が、高分子領域18の骨格により支持されることとな
るので、ベシクルは、全体として安定となり、しかも液
晶状態において非重合性両親媒性化合物12からなる低
分子領域17の有する良好な物質透過性を確保できる。
【0109】なお、ベシクル内相物質22およびベシク
ル外相物質24およびベシクル内相の溶媒23およびベ
シクル外相の溶媒21は、第1の実施例と同様であるの
で詳しい説明を省略する。また、このベシクル含有系を
内包するマイクロカプセル、結着樹脂、支持シートも第
1の実施例と同じである。
【0110】以上述べたハイブリッドベシクル含有系
は、基本的に第1の実施例のベシクル含有系を製造する
手順に準じて製造できる。その一例を以下説明する。
【0111】(1)溶液の加熱 ベシクル内相に封入すべき第1のターゲット物質22を
溶媒23に溶かす。この溶液を非重合性のアニオン性両
親媒性化合物12の相転移温度Tc1 および重合性のア
ニオン性両親媒性化合物16の相転移温度Tc2 のいず
れよりも高い温度Tcに熱する。
【0112】(2)両親媒性化合物の投入 非重合性のアニオン性両親媒性化合物12および重合性
のアニオン性両親媒性化合物16を上記工程(1)で調
製した溶液に溶かし、十分に撹拌する。
【0113】(3)ベシクル本体の形成 上記工程(2)で得られた溶液をTc以上の温度に保ち
ながら、超音波を照射し、ベシクルを形成する。
【0114】(4)相分離 上記工程(3)で得られたベシクル含有溶液をしばらく
放置して自然冷却する。これによりベシクルの二分子膜
内で両親媒性化合物分子の相分離が生じ、非重合性アニ
オン性両親媒性化合物12のドメイン(低分子領域1
7)およびこれを囲む重合性アニオン性両親媒性化合物
16のドメインが形成される。
【0115】(5)重合(ドメイン構造の固定) 次に、工程(4)で得られた相分離ベシクル含有溶液に
キセノンランプ等を用いて紫外線を照射して、重合性の
アニオン性両親媒性化合物16を光重合させて高分子領
域18を形成する。これにより、相分離構造が固定され
る。
【0116】なお、この重合反応は、モノマーの共有結
合を介する集合と解釈できるため、重合反応前には均一
に混合された二分子膜状態であっても、重合反応の進行
に伴い自然に相分離が誘起される。従って、上記相分離
工程(4)を省略することができる。
【0117】以後の処理は、第1の実施例と同様であ
る。
【0118】上記相分離ハイブリッドベシクル含有系を
内包するマイクロカプセルを用いた光記録シートの作製
例を以下説明する。
【0119】まず、顕色剤としての酢酸を溶媒である水
に溶かし、0.3Mの溶液100ccを調製する。これ
を約80℃に保ちながら、非重合性のアニオン性両親媒
性化合物であるリン酸ジドデシル・ナトリウム5マイク
ロモルと重合性のアニオン性両親媒性界面活性剤である
リン酸ジウンデセニル・ナトリウム10マイクロモルを
加えて溶解し、充分に撹拌するか、容器を充分に振盪す
る。すると、溶液は乳白色状態となり、このとき比較的
大きなサイズの多重層ベシクルが形成される。同温度を
保ちながら、超音波ホモジナイザーにより約10分〜2
0分超音波処理すると、溶液は半透明の状態となり、単
一層のベシクルが形成される。
【0120】次に、25℃の温度で、キセノンランプか
ら紫外線を6〜8時間上記溶液に照射すると、重合性ア
ニオン性両親媒性化合物が光重合し、それに伴ってベシ
クルの二分子膜構造が相分離し、固定化されたドメイン
構造を有するハイブリッドベシクル膜が形成される。
【0121】しかる後、カチオン性光異性化物質として
のN−メチル−4−(β−スチリル)ピリジニウムクロ
リド15マクロモルとドナー分子としてのトリス(2,
2−ビピリジン)ルテニウムジクロリド0.1マイクロ
モルを溶媒に溶かし、これを上記ハイブリッドベシクル
含有溶液に加え、それぞれベシクル膜の表面に吸着させ
る。
【0122】ついで、得られた溶液系をゲル濾過して、
ハイブリッドベシクル膜外に残存する酢酸等を取り除
く。
【0123】次に、ベシクル外相物質である染料前駆体
としてのクリスタルバイオレットをこの溶液に添加す
る。
【0124】以後のマイクロカプセル化、支持シート上
への塗布などの処理は、実施例1と同じである。
【0125】本実施例の相分離ハイブリッドベシクル含
有系を内包したマイクロカプセルを用いた光記録シート
の光記録方法は、第1の実施例の光記録シートの場合と
同様であるが、物質拡散は、主として、高分子化された
骨格構造(高分子領域18)に支持された液晶状態の非
重合性の両親媒性化合物のドメイン(低分子領域17)
の膜を通して行なわれる。
【0126】この第3の実施例によれば、マイクロカプ
セルに内包されたベシクルの高い機械的強度は高分子領
域18により確保され、他方良好な物質透過性は、低分
子領域17によって確保されるので、ベシクルの閉じた
構造の破裂やベシクル同士の融合がきわめて起こり難
く、しかも膜透過性も良好な電子リレーによる高感度の
膜透過制御ベシクル系が得られ、長期的安定性と光記録
性のさらに優れた光記録シートが達成できる。
【0127】なお、以上述べた第3の実施例では、ベシ
クル内相物質を顕色剤とし、ベシクル外相物質を染料前
駆体とする構成を取ったが、ベシクル内相物質を染料前
駆体とし、ベシクル外相物質を顕色剤とする構成でも全
く同様の効果が得られる。
【0128】<第4の実施例>この実施例は、フルカラ
ーに色変化可能なマイクロカプセル分散体を被着したフ
ルカラーの光記録シートを用いた光記録方法に関するも
のである。
【0129】図16に示すように、本例の光記録シート
40は、3原色に対応させて3種類のマイクロカプセル
を結着樹脂42中に分散させ、これを支持シート41上
に塗布したものである。これら3種類のマイクロカプセ
ルは、それぞれ応答波長(励起光)が異なるベシクル含
有系をそれぞれ内包する。図16では、3種類のベシク
ル11a、11b、11cを、これを内包するマイクロ
カプセル壁を省略した状態で示してある。ベシクルの構
造としては、第1ないし第3の実施例で示したベシクル
のいずれをも使用できる。なお、この実施例では、染料
前駆体をベシクル内相に、顕色剤をベシクル外相に配し
た構成としてある。
【0130】このような応答波長の異なるベシクルは、
それぞれ励起波長が異なるドナー分子を用いることによ
って作製できる。各ベシクル11a、11b、11cの
内相には、それぞれ異なる発色性物質すなわちイエロ
ー、マゼンタ、シアンに発色する染料前駆体24a、2
4bおよび24cが溶媒(図示せず)に溶解されて存在
する。ベシクル外相には顕色剤(図示せず)が、溶媒
(図示せず)に溶解されて存在する。このように構成さ
れる3種類のベシクル含有系がそれぞれマイクロカプセ
ル(図示せず)に内包されている。なお、各マイクロカ
プセル内のベシクル外相の顕色剤は、同一物質であり得
る。
【0131】以上の構成のフルカラーの光記録シートを
用い、例えば図17に示す光記録装置によりフルカラー
記録画像を得ることができる。このフルカラー記録装置
は、図11に示す記録装置と同様、光記録シート40を
給送する記録シート搬送経路51、シス異性化用光源
(紫外光源)装置52と、記録ヘッド53を有し、記録
ヘッド53の下流側には、加熱手段54と、さらに下流
側に記録情報消去手段55を備える。但し、記録ヘッド
53は、ベシクル11a、11bおよび11cのドナー
のそれぞれの励起波長に対応した波長ν2a、ν2bおよび
ν2cの光hν2a、hν2bおよびhν2cをそれそれ照射す
る3基の単色光源53a、53bおよび53c(可視光
源)を有し、記録情報消去手段55もベシクル11a〜
11cの各ドナーそれぞれの励起波長に対応した波長ν
2a、ν2bおよびν2cの光hν2a、hν2bおよびhν2c
照射する3基の単色光源を備える。
【0132】さて、次に、以上の構成の光記録シート4
0の光記録方法を図16〜図17を参照して説明する。
【0133】(a)初期状態 まず、図17に示す搬送経路51に沿って初期状態のフ
ルカラーの光記録シート40が給送されてくる。先に説
明した通り、熱的に安定な初期状態では、ベシクル膜の
物質透過性は低く、ベシクル内相の染料前駆体24a〜
24cとベシクル外相の顕色剤は各ベシクル膜11a、
11bおよび11cにより隔離されているので、光記録
シート40に色変化は生じず、光記録シート40は、支
持シート41の色に見える。
【0134】(b)第1の光(hν1 )の照射(シス異
性化) 図17に示すシス異性化用光源装置52から、波長ν1
のスペクトル成分光を含む光hν1 を光記録シート40
中のベシクル11a〜11c全体に照射して、全てのベ
シクル11a〜11cの全ての光異性化物質を励起しシ
ス状態に異性化させる(すなわち、光異性化物質からな
る光応答性バルブ膜をすべて開状態に切り換える)。し
かしながら、ベシクル11a〜11c全体としては、先
に説明した通り、なお物質透過性は低いので、ベシクル
内相の染料前駆体24a〜24cはベシクル外相へ拡散
せず、またベシクル外相の顕色剤もベシクル内相へ拡散
しない。従って、光記録シートに色変化は依然生じな
い。なお、この過程においては、ドナー分子は関与しな
い。
【0135】(c)第2の光(hν2a、hν2b、h
ν2c)の選択照射(電子リレーによるトランス異性化)
(図16の(A)) 図17に示す記録ヘッド53を構成する光源53a〜5
3cから、記録情報に応じて、発色させるべきベシクル
の励起波長の光を除き、波長ν2a〜ν2cの光hν2a〜h
ν2cの内の2種類の光を重ねてそれぞれドット単位でベ
シクル11a〜11cに照射する。各ドナー分子は、そ
の固有の波長依存性のある吸光率で光を吸収し、光励起
され、その結果光異性化物質をトランス異性化させるの
で、光hν2bおよび光ν2cを重ねて照射した1ドット領
域Raでは、ベシクル11bおよび11cがトランス異
性化し、ベシクル11aはシス状態のまま残る。同様
に、光hν2cおよび光hν2aを重ねて照射した1ドット
領域Rbでは、ベシクル11cおよび11aがトランス
異性化し、ベシクル11bはシス状態のまま残り、また
光hν2aおよび光hν2bを重ねて照射した1ドット領域
Rcでは、ベシクル11aおよび11bがトランス異性
化し、ベシクル11cはシス状態のまま残る。このよう
に、トランス異性化するベシクルの種類を照射する励起
光の選択により制御し、特定のベシクルのみをシス状態
のまま残すことができる。
【0136】なお、この過程は、電子リレー反応に基づ
くものであるので、きわめて高感度の光応答性が得られ
る。
【0137】(d)物質拡散の開始・進行(図16の
(B)) 次に、光記録シート40を図17に示す加熱手段54に
よりベシクルの相転移温度Tc以上の温度に加熱して、
ベシクル11a〜11cを構成するアニオン性両親媒性
物質の二分子膜を液晶状態に相転移させる。
【0138】このとき、各ドット領域において光異性化
物質がトランス異性化しているベシクル11a〜11c
にあっては、ベシクル膜全体としては物質の透過性が低
い状態にあるので、光記録シート40の色変化には関与
しない。他方、各ドット領域において光異性化物質がシ
ス状態のままにあるベシクル11a〜11cでは、ベシ
クル膜の物質透過性が高くなるので、顕色剤と染料前駆
体24a〜24cがベシクル膜を透過して相互に拡散し
始め、両者が反応して色素25a〜25cを生成し、発
色する。すなわち、ドット領域Raでは、染料前駆体2
4aと顕色剤のみが相互拡散し反応してイエロー色素2
5aを生成し、ドット領域Rbでは、染料前駆体24b
と顕色剤のみが相互拡散し反応してマゼンタ色素25b
を生成し、ドット領域Rcでは、染料前駆体24cと顕
色剤のみが相互拡散し反応してシアン色素25cを生成
する。
【0139】従って、上記第2の光照射の段階で定まっ
たトランス異性化したベシクルの種類に支配されて、染
料前駆体24a〜24cと顕色剤との反応が進行し、そ
れぞれに固有の色を有する色素25a〜25cを生成す
ることとなる。
【0140】すなわち、上記第2の光照射の段階でトラ
ンス異性化しなかったベシクル11a〜11cの種類と
量に支配されて、染料前駆体による色素の生成量が決ま
ることとなる。また、色素25a〜25cの生成量は、
時間の経過とともに増加し、発色濃度も高まるので、光
記録シート40の発色濃度は、拡散時間によっても制御
することができる。
【0141】(e)物質拡散の停止 加熱を停止し、ベシクル系の温度が相転移温度Tc未満
になると、ベシクル膜を構成する二分子膜が結晶状態に
相転移する。
【0142】その結果、ベシクル膜の物質透過性が低下
し、光記録シート40の発色反応は停止する。
【0143】(f)第2の光(ν2a、ν2b、ν2c)の充
分な照射(潜在的膜透過情報の消去) 図17に示す記録情報消去手段55から、波長ν2a、ν
2b、ν2cの光を充分な強度でまたは充分な時間重ねて照
射することによって全てのベシクル11a〜11cのド
ナー分子を励起し、それにより全てのベシクル11a〜
11cの全ての光異性化物質を電子リレー反応によりト
ランス異性化させる(すなわち、光応答性バルブ膜が閉
状態に切り替わる)。この後は、再びベシクル溶液をT
c以上の温度に加熱してもベシクル膜の物質透過性が低
くなっているため、拡散による発色反応は生じない。す
なわち、各々のベシクル11a〜11cに潜在的に記録
された発色に関する情報が消去されることとなる。
【0144】以上述べた第4の実施例の構成によれば、
波長ν2a、ν2b、ν2cの光の選択照射により電子リレー
ベシクルによる発色反応のスイッチングをそれぞれ独立
に制御できる。
【0145】なお、上記第4の実施例において、工程
(c)では、各ドット領域には2種類の励起光を重ねて
照射して1種類の染料前駆体と顕色剤とを反応させて1
種類の色素を得るようにしたが、工程(c)で各ドット
領域に1種類のみの励起光を照射することにより、2種
類のベシクルの染料前駆体と顕色剤とを反応させて2色
を同時に発色させることができる。また、工程(c)で
励起光を全く照射しない場合は、加熱器54における加
熱により3種類全てのベシクルの染料前駆体と顕色剤が
反応して3色を同時に発色させることができる(図16
の(C))。さらに、黒色色素を生成するベシクル含有
系を内包するマイクロカプセルを共存させてもよい。ま
た、ベシクル内相物質として顕色剤を配し、ベシクル外
相物質として顕色剤を配してもよい。
【0146】以上のようにして、例えば上述の3種の染
料前駆体を3原色としてそれぞれ拡散制御することによ
り、各種の色変化を制御することができる。
【0147】<第5の実施例>この実施例は、フルカラ
ーに色変化可能なマイクロカプセル分散体を被着した他
のフルカラーの光記録シートを用いた光記録方法に関す
るものである。
【0148】図18は、第5の実施例によるフルカラー
の光記録シートを示す模式図である。同図に示すよう
に、このフルカラーの光記録シート40において、各マ
イクロカプセル31は、それぞれ応答波長(ドナー励起
光)が異なる3数種の光応答性電子リレーベシクル含有
系を同一マイクロカプセル内に内包する。すなわち、図
18では、3種類のベシクル11a、11bおよび11
cが各マイクロカプセル31内に内包された状態で示し
てあり、簡便のため、各種ベシクルを1個ずつ示してい
る。ベシクルの構造としては、第1ないし第3の実施例
で示したベシクルのいずれをも使用できる。
【0149】このような応答波長の異なる電子リレーベ
シクルは、それぞれ励起波長が異なるドナー分子を用い
ることによって作製できる。図19に詳細を拡大して示
すように、各電子リレーベシクル11a、11b、11
cの内相には、それぞれ異なる発色能を有する染料前駆
体すなわちイエロー、マゼンタ、シアンに発色する染料
前駆体24a、24bおよび24cが溶媒23に溶解さ
れている。ベシクル外相には、顕色剤22が、溶媒21
に溶解されて存在する。
【0150】このように構成される3種類のベシクル含
有系が各マイクロカプセル31に共存して内包され、こ
れらマイクロカプセルが結着樹脂42に分散されて支持
シート41上に層形成されている。なお、各マイクロカ
プセル内のベシクル外相の顕色剤22は、同一物質であ
り得る。
【0151】以上の構成のフルカラーの光記録シート4
0を用い、上に説明した図17に示す光記録装置により
フルカラー記録画像を得ることができる。
【0152】さて、次に、以上の構成のフルカラーの光
記録シート40の記録方法について、マイクロカプセル
31内での発色反応により図20を参照して説明する。
【0153】(a)初期状態(図20のST1) 熱的に安定な初期状態では、ベシクル膜の物質透過性は
低く、ベシクル内相の染料前駆体24a〜24cとベシ
クル外相の顕色剤22は各ベシクル膜11a、11bお
よび11cにより隔離されているので、マイクロカプセ
ル内での色変化は生じない。
【0154】(b)第1の光(hν1 )の照射(シス異
性化)(図20のST2) 図17に示すシス異性化用光源装置52から、波長ν1
のスペクトル成分光を含む光hν1 をベシクル11a〜
11c全体に照射して、全てのベシクル11a〜11c
の全ての光異性化物質を励起しシス状態に異性化させる
(すなわち、光異性化物質からなる光応答性バルブ膜を
すべて開状態に切り換える)。しかしながら、ベシクル
11a〜11c全体としては、なお物質透過性は低いの
で、ベシクル内相の染料前駆体22a〜22cはベシク
ル外相へ拡散せず、またベシクル外相の顕色剤24もベ
シクル内相へ拡散しない。従って、溶液系の色変化は依
然生じない。なお、この過程においては、ドナー分子は
関与しない。
【0155】(c)第2の光(hν2a、hν2b、h
ν2c)の照射(電子リレーによるトランス異性化)(図
20のST3) 図17に示す記録ヘッド53の光源53a〜53cか
ら、波長ν2a〜ν2cの光hν2a〜hν2cをその強度を制
御しながらそれぞれ独立にベシクル11a〜11cに照
射する。各ドナー分子は、その固有の波長依存性のある
吸光率で光を吸収し、光励起されるので、溶液中のトラ
ンス異性化するベシクルの種類と量を照射する励起光の
強度により制御することができる。
【0156】簡便のため、光hν2aのみを照射する場合
を例にとって説明すると、充分に短い光照射時間では全
てのベシクル11aのドナー分子が励起状態になるもの
ではない。すなわち、固有の吸光率に支配され、ドナー
分子が光hν2aを吸収して励起されたベシクル11aで
は、シス状態の光異性化物質の分子全てが電子リレーに
よってトランス異性化する(すなわち、光応答性バルブ
膜が閉状態に切り替わる)が、ドナー分子が励起されな
かったベシクル11aでは、光異性化物質はシス状態
(光応答性バルブ膜が開状態)のままである。いうまで
もなく、励起波長の異なるドナーを有するベシクル11
bおよび11cでは、光異性化物質はシス状態(光応答
性バルブ膜が開状態)のままである。
【0157】このように、照射する励起光の波長の選択
と光の照射強度の制御により溶液中のトランス異性化す
るベシクルの種類と量を制御できる。
【0158】このことは、波長ν2bの光hν2bのみ、お
よび波長ν2cの光hν2cのみを照射した場合でも同じで
ある。
【0159】すなわち、波長ν2a〜ν2cの光の選択と照
射強度により、溶液中のトランス異性化するベシクルの
種類と量をそれぞれ独立に制御することができるのであ
る。なお、この過程は、電子リレー反応に基づくもので
あるので、きわめて高感度の光応答性が得られる。
【0160】(d)物質拡散の開始・進行(記録)(図
20のST4) 次に、図17に示す加熱手段54によりベシクル系を相
転移温度Tc以上の温度に加熱して、ベシクル11a〜
11cを構成するアニオン性両親媒性物質の二分子膜を
液晶状態に相転移させる。
【0161】このとき、光異性化物質がトランス異性化
しているベシクル11a〜11cにあっては、ベシクル
膜全体としては物質の透過性が低い状態にあるので、溶
液系の色変化には関与しない。他方、光異性化物質がシ
ス状態のままにあるベシクル11a〜11cでは、ベシ
クル膜の物質透過性が高くなるので、顕色剤22と染料
前駆体24a〜24cがベシクル膜を透過して相互に拡
散し始め、両者が反応して色素25a〜25c(イエロ
ー、マゼンタ、シアン)を生成し、発色する。従って、
上記第2の光照射の段階で定まったトランス異性化した
ベシクルの種類と量に支配されて、染料前駆体24a〜
24cと顕色剤22との反応が進行し、それぞれに固有
の色を有する色素25a〜25cを生成することとな
る。
【0162】すなわち、上記第2の光照射の段階でトラ
ンス異性化しなかったベシクル11a〜11cの種類と
量に支配されて、染料前駆体による色素の生成量が決ま
ることとなるのである。また、色素25a〜25cの生
成量は、時間の経過とともに増加し、発色濃度も高まる
ので、溶液系の発色濃度は、拡散時間によっても制御す
ることができる。
【0163】(e)物質拡散の停止(図20のST5) 加熱を停止し、ベシクル系の温度が相転移温度Tc未満
になると、ベシクル膜を構成する二分子膜が結晶状態に
相転移する。
【0164】その結果、ベシクル膜の物質透過性が低下
し、溶液系の色変化は停止する。
【0165】(f)第2の光(ν2a、ν2b、ν2c)の充
分な照射(潜在的記録情報の消去)(図20のST6) 図17に示す記録情報消去手段55から、波長ν2a、ν
2b、ν2cの光を充分な強度でまたは充分な時間照射する
ことによって全てのベシクル11a〜11cのドナー分
子を励起し、それにより全てのベシクル11a〜11c
の全ての光異性化物質を電子リレー反応によりトランス
異性化させる(すなわち、光応答性バルブ膜が閉状態に
切り替わる)。この後は、再びベシクル溶液をTc以上
の温度に加熱してもベシクル膜の物質透過性が低くなっ
ているため、拡散による発色反応は生じない。すなわ
ち、各々のベシクル11a〜11cに潜在的に記録され
た発色に関する情報が消去されることとなる。
【0166】以上述べた第5の実施例の構成によれば、
波長ν2a、ν2b、ν2cの光により電子リレーベシクルに
よる発色反応のスイッチングをそれぞれ独立に制御でき
るので、波長ν2a、ν2b、ν2cの光を同時に照射しても
よい。
【0167】以上のようにして、上述の3種の染料前駆
体を3原色としてそれぞれ拡散制御することにより、各
種の色変化を制御することができる。
【0168】
【発明の効果】本発明によれば、二分子膜のイオン性界
面の静電場においてドナー分子からの一電子移動がトリ
ガーとなって隣接する一群のアクセプター分子の間で電
子リレーによる連鎖的トランス異性化が生じることを利
用し、特定波長の光照射によって、ベシクル界面に吸着
された光異性化物質の分子薄膜の膜透過性の変化(開閉
状態の切り換え)を生起させてマイクロカプセル内にお
いてベシクル内外相の発色反応性物質の相互拡散を制御
するようにしたので、ベシクル膜を透過する発色反応性
物質の拡散量を特定波長の光照射により精密に制御で
き、もって簡単な装置により高解像度で階調性の良好な
画像を形成でき、高品質のフルカラー画像をも形成可能
な光記録シートが得られる。そしてそのような光記録シ
ートを用い、記録情報に応じて光を制御して照射するこ
とにより、精細な階調性を有する高解像度のフルカラー
記録画像も簡単な装置で安価に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例による光記録シートを示
す模式図。
【図2】上記第1の実施例による光記録シートに使用さ
れるマイクロカプセルに内包されるベシクルの拡大詳細
図。
【図3】本発明の第1の実施例による光記録シートの製
造方法を説明する工程部分図。
【図4】本発明の第1の実施例による光記録シートの製
造方法を説明する工程部分図。
【図5】本発明の第1の実施例による光記録シートの製
造方法を説明する工程部分図。
【図6】本発明の第1の実施例による光記録シートにお
けるマイクロカプセルに内包されたベシクル含有系の発
色作用を説明する段階説明図。
【図7】本発明の第1の実施例による光記録シートにお
けるマイクロカプセルに内包されたベシクル含有系の発
色作用を説明する段階説明図。
【図8】本発明の第1の実施例によるモノカラーの光記
録シートにおけるマイクロカプセルに内包されたベシク
ル含有系の発色作用を説明する段階説明図。
【図9】本発明の第1の実施例によるモノカラーの光記
録シートにおけるマイクロカプセルに内包されたベシク
ル含有系の発色作用を説明する段階説明図。
【図10】本発明の第1の実施例によるモノカラーの光
記録シートの光記録方法を工程順に示す説明図。
【図11】本発明のモノカラーの光記録シートを用いた
光記録方法を実施するための光記録装置の一具体例を示
す模式図。
【図12】本発明の第2の実施例によるモノカラーの光
記録シートのベシクル含有系を示す模式図。
【図13】本発明の第3の実施例によるモノカラーの光
記録シートのベシクル含有系を示す模式図。
【図14】図13に示すベシクルの模式的一部切欠立体
図。
【図15】図14の部分Aの拡大詳細図。
【図16】本発明の第4の実施例によるフルカラーの光
記録シートの構成と動作を説明するための模式図。
【図17】本発明のフルカラーの光記録シートを用いた
光記録方法を実施するための光記録装置の一具体例を示
す模式図。
【図18】本発明の第5の実施例によるフルカラーの光
記録シートを示す模式図。
【図19】図18に示すフルカラーの光記録シートに含
まれるマイクロカプセルの拡大詳細図。
【図20】本発明の第5の実施例によるフルカラーの光
記録シートを用いた光記録方法を工程順に示す説明図。
【符号の説明】
11,11a,11b,11c…ベシクル、12…非重
合性両親媒性化合物、13…ベシクル本体、14…光異
性化物質、15…ドナー、16…重合性両親媒性化合
物、22,24…反応性物質、31…マイクロカプセ
ル、40…光記録シート、41…支持シート、42…結
着樹脂、43…マイクロカプセル分散体、52…シス異
性化用光源装置、53…記録ヘッド、54…加熱手段、
55…記録情報消去手段。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G03C 1/73 G03C 1/73 503 G01J 1/00 G01J 1/50 G01N 21/78

Claims (24)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 マイクロカプセルを結着樹脂中に分散さ
    せたマイクロカプセル分散体を支持シートに被着して形
    成した光記録シートであって、 前記マイクロカプセルは、アニオン性二分子膜で形成さ
    れたベシクル本体と、前記二分子膜のアニオン性界面に
    これを実質的に覆うように吸着されたシス−トランス異
    性化する電子受容性物質からなる光応答性バルブ膜と、
    該光応答性バルブ膜内に共存して前記アニオン性界面に
    吸着され、特定波長の励起光の照射によって電子を放出
    する電子供与性物質とを包含するベシクルを含有しかつ
    前記ベシクルの内相と外相に互いに発色反応し得る第1
    および第2の反応性物質をそれぞれ含有するところのベ
    シクル含有系を内包し、 前記電子受容性物質は、前記励起光の波長とは異なる波
    長の光照射によりトランス体からシス体へ異性化し、こ
    れにより該光応答性バルブ膜を密な分子集合状態にある
    閉状態から乱れた分子集合状態にある開状態へ切り換
    え、かつ少なくとも前記励起光の照射による前記電子供
    与性物質と前記電子受容性物質間での連鎖的な電子リレ
    ーによってシス体からトランス体へ異性化し、これによ
    り該光応答性バルブ膜を前記開状態から前記閉状態へ切
    り換え、 前記電子受容性物質のシス−トランス異性化に基づく前
    記光応答性バルブ膜の前記開閉状態の切り替えにより前
    記二分子膜を通る前記第1および第2の反応性物質の透
    過を増減させて前記ベシクルの内外相の反応性物質の相
    互拡散を制御するとともに前記拡散により発色反応を生
    起させて前記マイクロカプセルを色変化させることを特
    徴とする光記録シート。
  2. 【請求項2】 前記ベシクルのアニオン性二分子膜が重
    合性の両親媒性化合物を重合した高分子膜からなる請求
    項1記載の光応答性ベシクル含有物。
  3. 【請求項3】 前記ベシクル内外相の反応性物質の一方
    が顕色剤であり、他方が染料前駆体である請求項1記載
    の光記録シート。
  4. 【請求項4】 それぞれ前記励起光の波長が互いに異な
    るとともに、発色反応により生成する色素が互いに異な
    る複数種類のマイクロカプセルを前記結着樹脂中に分散
    させた請求項1ないし3のいずれか1項記載の光記録シ
    ート。
  5. 【請求項5】 前記マイクロカプセルのそれぞれが、前
    記励起光の波長が互いに異なる電子供与性物質を吸着さ
    せた複数種類のベシクルを内包する請求項1ないし3の
    いずれか1項記載の光記録シート。
  6. 【請求項6】 前記アニオン性二分子膜が、常温で結晶
    状態となるような相転移温度を有し、該相転移温度以上
    の温度で液晶状態に変化する請求項1ないし5のいずれ
    か1項記載の光記録シート。
  7. 【請求項7】 マイクロカプセルを結着樹脂中に分散さ
    せたマイクロカプセル分散体を支持シートに被着して形
    成した光記録シートであって、 前記マイクロカプセルは、重合性の両親媒性化合物から
    なる高分子領域と非重合性両親媒性化合物からなる低分
    子領域とに相分離した状態で重合処理により固定され、
    少なくとも前記低分子領域がアニオン性の二分子膜で形
    成されたベシクル本体と、前記二分子膜のアニオン性界
    面にこれを実質的に覆うように吸着されたシス−トラン
    ス異性化する電子受容性物質からなる光応答性バルブ膜
    と、該光応答性バルブ膜内に共存して前記アニオン性界
    面に吸着され、特定波長の励起光の照射によって電子を
    放出する電子供与性物質とを包含するベシクルを含有し
    かつ前記ベシクルの内相と外相に互いに発色反応し得る
    第1および第2の反応性物質をそれぞれ含有するところ
    のベシクル含有系を内包し、 前記電子受容性物質は、前記励起光の波長とは異なる波
    長の光照射によりトランス体からシス体へ異性化し、こ
    れにより該光応答性バルブ膜を密な分子集合状態にある
    閉状態から乱れた分子集合状態にある開状態へ切り換
    え、かつ少なくとも前記励起光の照射による前記電子供
    与性物質と前記電子受容性物質間での連鎖的な電子リレ
    ーによってシス体からトランス体へ異性化し、これによ
    り該光応答性バルブ膜を前記開状態から前記閉状態へ切
    り換え、 前記電子受容性物質のシス−トランス異性化に基づく前
    記光応答性バルブ膜の前記開閉状態の切り替えにより前
    記二分子膜を通る前記第1および第2の反応性物質の透
    過を増減させて前記ベシクルの内外相の反応性物質の相
    互拡散を制御するとともに前記拡散により発色反応を生
    起させて前記マイクロカプセルを色変化させることを特
    徴とする光記録シート。
  8. 【請求項8】 前記ベシクル内外相の反応性物質の一方
    が顕色剤であり、他方が染料前駆体である請求項7記載
    の光記録シート。
  9. 【請求項9】 それぞれ前記励起光の波長が互いに異な
    るとともに、発色反応により生成する色素が互いに異な
    る複数種類のマイクロカプセルを前記結着樹脂中に分散
    させた請求項7または8記載の光記録シート。
  10. 【請求項10】 前記マイクロカプセルのそれぞれが、
    前記励起光の波長が互いに異なる電子供与性物質を吸着
    させた複数種類のベシクルを内包する請求項7または8
    記載の光記録シート。
  11. 【請求項11】 前記低分子領域を形成するアニオン性
    二分子膜が、常温で結晶状態となるような相転移温度を
    有し、該相転移温度以上の温度で液晶状態に変化する請
    求項7ないし10のいずれか1項記載の光記録シート。
  12. 【請求項12】 前記低分子領域を形成するアニオン性
    二分子膜が常温で液晶状態に相転移したときも前記高分
    子領域は結晶状態であるように、前記高分子領域を形成
    する二分子膜が前記低分子領域を形成するアニオン性二
    分子膜の相転移温度より高い相転移温度を有する請求項
    7ないし11のいずれか1項記載の光記録シート。
  13. 【請求項13】 アニオン性二分子膜で形成されたベシ
    クル本体と、前記二分子膜のアニオン性界面にこれを実
    質的に覆うように吸着されたシス−トランス異性化する
    電子受容性物質からなる光応答性バルブ膜と、該光応答
    性バルブ膜内に共存して前記アニオン性界面に吸着さ
    れ、特定波長の励起光の照射によって電子を放出する電
    子供与性物質とを包含するベシクルを含有しかつ前記ベ
    シクルの内相と外相に互いに発色反応し得る第1および
    第2の反応性物質がそれぞれ配されたベシクル含有系を
    内包したマイクロカプセルを結着樹脂中に分散してなる
    マイクロカプセル分散体を支持シートに被着して形成し
    た光記録シートを用いた光記録方法であって、 前記ベシクル含有系に前記励起光の波長とは異なる波長
    の光を照射することによって、前記電子受容性物質をト
    ランス体からシス体へ異性化させ、これにより、前記光
    応答性バルブ膜を密な分子集合状態にある閉状態から乱
    れた分子集合状態にある開状態へ切り換え、 前記ベシクル含有系に少なくとも前記励起光を照射する
    ことによって、前記電子供与性物質と前記電子受容性物
    質間で連鎖的な電子リレーを生起させて前記電子受容性
    物質をシス体からトランス体へ異性化させ、これにより
    前記光応答性バルブ膜を開状態から閉状態へ切り換え、 前記電子受容性物質のシス−トランス異性化に基づく前
    記光応答性バルブ膜の開閉の切り替えにより前記二分子
    膜を通る前記第1および第2の反応性物質の透過を増減
    させて前記ベシクルの内外相の反応性物質の相互拡散を
    制御するとともに前記拡散により発色反応を生起させて
    前記マイクロカプセルを色変化させることを特徴とする
    光記録方法。
  14. 【請求項14】 前記アニオン性二分子膜が重合性両親
    媒性化合物を重合した高分子膜からなる請求項13記載
    の光記録方法。
  15. 【請求項15】 前記ベシクル内外相の反応性物質の一
    方が顕色剤であり、他方が染料前駆体である請求項13
    または14記載の光記録方法。
  16. 【請求項16】 光記録シートが、それぞれ前記励起光
    の波長が互いに異なるとともに、発色反応により生成す
    る色素が互いに異なる複数種類のマイクロカプセルを前
    記結着樹脂中に分散させたものである請求項13ないし
    15のいずれか1項記載の光記録方法。
  17. 【請求項17】 前記マイクロカプセルのそれぞれが、
    前記励起光の波長が互いに異なる電子供与性物質を吸着
    させた複数種類のベシクルを内包する請求項13ないし
    15のいずれか1項記載の光記録方法。
  18. 【請求項18】 前記アニオン性二分子膜が、常温で結
    晶状態にあるような相転移温度を有し、前記励起光の照
    射時に該相転移温度以上に加熱してこれを液晶状態に変
    化させる請求項13ないし17のいずれか1項記載の光
    記録方法。
  19. 【請求項19】 重合性の両親媒性化合物からなる高分
    子領域と非重合性両親媒性化合物からなる低分子領域と
    に相分離した状態で重合処理により固定され、少なくと
    も前記低分子領域がアニオン性の二分子膜で形成された
    ベシクル本体と、前記二分子膜のアニオン性界面にこれ
    を実質的に覆うように吸着されたシス−トランス異性化
    する電子受容性物質からなる光応答性バルブ膜と、該光
    応答性バルブ膜内に共存して前記アニオン性界面に吸着
    され、特定波長の励起光の照射によって電子を放出する
    電子供与性物質とを包含するベシクルを含有し、その内
    相と外相に互いに発色反応し得る第1および第2の反応
    性物質がそれぞれ配されたベシクル含有系を内包したマ
    イクロカプセルを結着樹脂中に分散してなるマイクロカ
    プセル分散体を支持シートに被着して形成した光記録シ
    ートを用いた光記録方法であって、 前記ベシクル含有系に前記励起光の波長とは異なる波長
    の光を照射することによって、前記電子受容性物質をト
    ランス体からシス体へ異性化させ、これにより、前記光
    応答性バルブ膜を密な分子集合状態にある閉状態から乱
    れた分子集合状態にある開状態へ切り換え、 前記ベシクル含有系に少なくとも前記励起光を照射する
    ことによって、前記電子供与性物質と前記電子受容性物
    質間で連鎖的な電子リレーを生起させて前記電子受容性
    物質をシス体からトランス体へ異性化させ、これにより
    前記光応答性バルブ膜を開状態から閉状態へ切り換え、 前記電子受容性物質のシス−トランス異性化に基づく前
    記光応答性バルブ膜の開閉の切り替えにより前記二分子
    膜を通る前記第1および第2の反応性物質の透過を増減
    させて前記ベシクルの内外相の反応性物質の相互拡散を
    制御するとともに前記拡散により発色反応を生起させて
    前記マイクロカプセルを色変化させることを特徴とする
    光記録方法。
  20. 【請求項20】 前記ベシクル内外相の反応性物質の一
    方が顕色剤であり、他方が染料前駆体である請求項19
    記載の光記録方法。
  21. 【請求項21】 前記光記録シートが、それぞれ前記励
    起光の波長が互いに異なるとともに、発色反応により生
    成する色素が互いに異なる複数種類のマイクロカプセル
    を前記結着樹脂中に分散させたものである請求項19ま
    たは20記載の光記録方法。
  22. 【請求項22】 前記マイクロカプセルのそれぞれが、
    前記励起光の波長が互いに異なる電子供与性物質を吸着
    させた複数種類のベシクルを内包する請求項19または
    20記載の光記録方法。
  23. 【請求項23】 前記ベシクルの低分子領域を形成する
    アニオン性二分子膜が、常温で結晶状態となるような相
    転移温度を有し、前記励起光の照射時に該相転移温度以
    上に加熱してこれを液晶状態へ変化させる請求項19な
    いし22のいずれか1項記載の光記録方法。
  24. 【請求項24】 前記ベシクルの低分子領域を形成する
    アニオン性二分子膜が常温で液晶状態に相転移したとき
    も前記高分子領域は結晶状態であるように、前記高分子
    領域を形成する二分子膜が前記低分子領域を形成するア
    ニオン性二分子膜の相転移温度より高い相転移温度を有
    する請求項19ないし23のいずれか1項記載の光記録
    方法。
JP4313730A 1992-11-24 1992-11-24 色変化ベシクル含有系を内包するマイクロカプセル分散体を被着した光記録シートおよびそれを用いた光記録方法 Expired - Lifetime JP2979166B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP4313730A JP2979166B2 (ja) 1992-11-24 1992-11-24 色変化ベシクル含有系を内包するマイクロカプセル分散体を被着した光記録シートおよびそれを用いた光記録方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP4313730A JP2979166B2 (ja) 1992-11-24 1992-11-24 色変化ベシクル含有系を内包するマイクロカプセル分散体を被着した光記録シートおよびそれを用いた光記録方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH06155899A JPH06155899A (ja) 1994-06-03
JP2979166B2 true JP2979166B2 (ja) 1999-11-15

Family

ID=18044835

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP4313730A Expired - Lifetime JP2979166B2 (ja) 1992-11-24 1992-11-24 色変化ベシクル含有系を内包するマイクロカプセル分散体を被着した光記録シートおよびそれを用いた光記録方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2979166B2 (ja)

Also Published As

Publication number Publication date
JPH06155899A (ja) 1994-06-03

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2003330228A (ja) マイクロカプセル含有トナー粒子とそれを用いたカラー画像形成方法及び装置
JPH0293459A (ja) 多色記録材料
JP2979166B2 (ja) 色変化ベシクル含有系を内包するマイクロカプセル分散体を被着した光記録シートおよびそれを用いた光記録方法
JPH02143252A (ja) 多色記録材料
JPH05158010A (ja) 光応答性膜を備えた色変化ハイブリッドベシクル含有物とその色変化光制御方法
JPH0426096B2 (ja)
JP2996032B2 (ja) 色変化マイクロカプセル分散体を被着した光記録シートおよびそれを用いた光記録方法
JP2979167B2 (ja) 色変化マイクロカプセル分散体を被着した光記録シートおよびそれを用いた光記録方法
JP2979165B2 (ja) 光応答性マイクロカプセル含有物およびその物質拡散光制御方法
JP2995243B2 (ja) 色変化ハイブリッドベシクル含有物を内包するマイクロカプセル含有剤を被着した光記録シートとそれを用いる光記録方法
JP2979164B2 (ja) 光応答性マイクロカプセル含有物およびその物質拡散光制御方法
JPH01226391A (ja) 多色転写記録材料
JPH06134291A (ja) 光応答性ベシクル含有物およびその物質拡散光制御方法
JP2979158B2 (ja) 色変化マイクロカプセル含有剤を被着した光記録シートとそれを用いる光記録方法
JP2995911B2 (ja) 色変化マイクロカプセル含有剤を被着した光記録シートとそれを用いる光記録方法
KR100624687B1 (ko) 다색 기록매체, 이를 이용한 기록방법 및 기록장치
JP4230271B2 (ja) 画像表示媒体および画像形成方法
JP2979160B2 (ja) 色変化マイクロカプセル含有剤を被着した光記録シートとそれを用いる光記録方法
JP2004348110A (ja) 画像表示媒体および画像形成方法
JP3084782B2 (ja) 光応答性膜を備えたマイクロカプセル含有物とその光制御方法
JP2979159B2 (ja) 光応答性膜を備えたマイクロカプセル含有物とその物質拡散光制御方法
JP3027833B2 (ja) 色変化マイクロカプセル含有剤を被着した光記録シートとそれを用いる光記録方法
JPH04334540A (ja) 光応答性膜を備えた色変化マイクロカプセル含有物とその色変化制御方法
JPH04344638A (ja) 光応答性膜を備えた色変化マイクロカプセル含有物とその色変化制御方法
JPH04358147A (ja) 光応答性膜を備えた色変化マイクロカプセル含有物とその色変化制御方法