JP2976413B2 - ホットランナー金型装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、熱可塑性樹脂の射出成
形に用いられるホットランナー金型装置に係わり、特
に、マニホールドに関する。

【０００２】

【従来の技術】熱可塑性樹脂の射出成形に用いられるホ
ットランナー金型装置は、成形能率を高めるために、ス
プルー、ランナーからゲート近傍までの樹脂を常時溶融
状態に保つものである。ここで、従来のホットランナー
金型装置の一例を図３に基づいて説明する。なお、図示
のホットランナー金型装置は、バルブゲート式のもので
ある。図３において、１は固定型、２は可動型で、これ
ら固定型１および可動型２は、互いに図示上下方向に移
動して開閉するものであり、型締時に複数の製品形状の
キャビティ３を内部に形成するものである。前記固定型
１は、製品の外面を形成する固定側型板４と、この固定
側型板４におけるキャビティ３と反対側の背面（図示上
面）に取付けられた固定側受け板５と、この固定側受け
板５の上面にスペーサブロック６を介して取付けられ射
出成形機の固定側プラテンにクランプにより取付けられ
る固定側取付け板７と、この固定側取付け板７および前
記固定側受け板５間に設けられたマニホールド８となど
からなっている。前記固定側型板４、固定側受け板５、
スペーサブロック６および固定側取付け板７は、図示し
ていないボルトなどにより相互に固定されている。ま
た、前記マニホールド８は、その図示下面および上面に
ボルト11，12によりそれぞれ固定された複数のディスタ
ンスピース（台金）13，14を介して、前記固定側受け板
５と固定側取付け板７とにより挟まれている。前記ディ
スタンスピース13，14は、例えば熱伝導率の小さいステ
ンレスからなっている。こうして、マニホールド８の必
要最小限の支えである前記ディスタンスピース13，14部
R>分を除いて、マニホールド８と固定側受け板５および
固定側取付け板７との間には、断熱のための間隙が保持
されている。なお、図示していないが、必要に応じて、
マニホールド８と固定側受け板５および固定側取付け板
７とは、ピンにより位置決めされたり、ボルトにより固
定されたりする。また、冷間状態においては、ディスタ
ンスピース13，14と固定側受け板５および固定側取付け
板７との間に若干の隙間が生じ、マニホールド８などが
加熱により膨脹すると、ディスタンスピース13，14と固
定側受け板５および固定側取付け板７とが若干の締め代
をもって圧接するように、ディスタンスピース13，14な
どの寸法が設定されている。

【０００３】また、前記固定側取付け板７には、ローケ
ートリング16が外面に固定されているとともに、このロ
ーケートリング16の内周側に位置して、射出成形機のノ
ズルが接続されるスプルーブッシュ17が貫通固定されて
おり、このスプルーブッシュ17の内部がスプルー18にな
っている。そして、前記スプルーブッシュ17の図示下側
先端部がマニホールド８に接続されている。このマニホ
ールド８内には、前記スプルー18に連通するランナー19
が形成されている。なお、マニホールド９は、ヒーター
20を内蔵している。また、前記固定側受け板５，６に
は、複数の筒状のバルブケーシング21が貫通状態で固定
されている。一方、前記固定側型板４には、各キャビテ
ィ３へ開口するゲート22を有する複数のゲートブッシュ
23がそれぞれ埋め込み固定されているが、これらゲート
ブッシュ23内に前記各バルブケーシング21の図示下側先
端部が嵌合している。また、これらバルブケーシング21
の図示上端面が前記マニホールド８の下面に接合してお
り、各バルブケーシング21内にマニホールド８のランナ
ー19の最終分岐路がそれぞれ連通している。そして、前
記各バルブケーシング21内には、前記ゲートブッシュ23
のゲート22を開閉するピン状のバルブ24が図示上下方向
へ移動可能に支持されている。これらバルブ24は、バル
ブケーシング21内の図示上部においては、ここに嵌合状
態で固定されたガイドブッシュ25を摺動自在に貫通して
いる。また、各バルブ24は、マニホールド８に図示上下
方向に形成された貫通孔26を貫通して、固定側取付け板
７に設けられた複数の油圧シリンダー装置27にそれぞれ
連結されており、このシリンダー装置27により駆動され
るものである。

【０００４】一方、前記可動型２は、製品の内面を形成
する可動側型板31と、この可動側型板31の背面（図示下
面）に取付けられた可動側受け板32と、この可動側受け
板32の下面にスペーサブロック33を介して取付けられ射
出成形機の可動側プラテンにクランプにより取付けられ
る可動側取付け板34となどからなっている。これととも
に、この可動側取付け板34と前記可動側受け板32との間
には、これらに対して相対的に図示上下動する突き出し
板35が設けられており、この突き出し板35に突き出しピ
ン36が固定されている。これら突き出しピン36は、前記
可動側受け板32および可動側型板31を摺動自在に貫通し
て先端がキャビティ３に臨んで位置するものである。

【０００５】そして、成形時には、固定型１と可動型２
とを型締し、シリンダー装置27によりバルブ24を図示上
昇させてゲート22を開放した状態で、射出成形機のノズ
ルから溶融樹脂を射出させる。この樹脂は、スプルー18
からマニホールド８のランナー19およびバルブケーシン
グ21内を通って、開放されたゲート22からキャビティ３
内に流入する。その後、シリンダー装置27によりバルブ
24を図示下降させて、これらバルブ24をゲート22に嵌合
することにより、これらゲート22を閉塞する。そして、
キャビティ３内に充填された樹脂が固化した後、固定型
１と可動型２とを型開して、キャビティ３内で固化した
樹脂である製品を取り出すが、このとき、突き出しピン
36が製品を突き出して離型させる。ところで、ヒーター
20などの加熱によりマニホールド８は熱膨脹し、また、
特に前記溶融樹脂の射出時には、マニホールド８内で高
い樹指圧がかかる。前記マニホールド８の熱膨脹により
生じる力は、固定側受け板５および固定側取付け板７を
それぞれ押す方向に作用し、また、樹指圧によって、マ
ニホールド８は固定側取付け板７へ押される方向の力を
受けるが、これらの力は、ディスタンスピース13，14に
より受けられる。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】しかし、前記従来のホ
ットランナー金型装置では、マニホールド８をディスタ
ンスピース13，14を介して固定側受け板５と固定側取付
け板７とにより挟んでいたため、熱膨張や樹脂圧による
マニホールド８の変位に伴い、隣接する固定側取付け板
７および固定側受け板５が撓みやすい。すなわち、マニ
ホールド８から押すように加わる力により、固定側取付
け板７および固定側受け板５は、特にスペーサブロック
６に直接固定されていない中央部がマニホールド８から
離れる方向へ膨らむようにして撓みやすい。そして、固
定側受け板５およびこれに固定されている固定側型板４
が撓むと、キャビティ３が正規の形状から変形して、成
形される製品に悪影響が及ぶ。また、特にバルブゲート
式のホットランナー金型では、固定側取付け板７に設け
られたシリンダー装置27にバルブ24が連結されているの
に対して、固定側受け板５や固定側型板４に設けられた
バルブケーシング21やゲートブッシュ23が傾くと、バル
ブ24とゲート22などとの間に芯ずれが生じ、ゲート22の
磨耗やバルブ24の作動不良などの問題が生ずる。

【０００７】本発明は、このような問題点を解決しよう
とするもので、マニホールドが熱や樹脂圧により変形、
変位しても、固定側受け板および固定側型板や固定側取
付け板が撓むことを防止できるホットランナー金型装置
を提供することを目的とする。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明は、前記目的を達
成するために、開閉自在で型締時に複数のキャビティを
内部に形成する固定型および可動型からなり、前記固定
型は、前記キャビティを形成する固定側型板と、この固
定側型板のキャビティと反対側の背面に固定された固定
側受け板と、この固定側受け板の背面にスペーサブロッ
クを介して固定された固定側取付け板と、これら固定側
受け板および固定側取付け板間に間隙を保持して設けら
れたマニホールドとを有し、前記固定側取付け板にスプ
ルーを設けるとともに、前記マニホールドに前記スプル
ーを各キャビティへ分岐させるランナーを設けたホット
ランナー金型装置において、前記マニホールドと固定側
受け板との間にディスタンスピースを設けるとともに、
前記固定側受け板に固定されたガイドを前記マニホール
ドに固定側受け板ないし固定側取付け板の配列方向へ移
動可能に貫通し、前記ガイドの先端部に前記マニホール
ドの固定側取付け板側への変位を規制するストッパー部
を設けたものである。

【０００９】

【作用】本発明のホットランナー金型装置においては、
成形時、固定型と可動型とを型締した状態で、固定側取
付け板のスプルーへ溶融樹脂を射出するが、この樹脂
は、スプルーからマニホールド内の分岐したランナーを
通って、固定型と可動型との間に形成された複数のキャ
ビティにそれぞれ流れ込む。そして、これらキャビティ
内に充填された樹脂が固化した後、固定型と可動型とを
型開して、キャビティ内で固化した樹脂である製品を取
り出す。ところで、マニホールドは、加熱や樹脂圧によ
り変形、変位する。ところが、マニホールドと固定側受
け板との間にディスタンスピースが設けられているのに
対して、固定側受け板に固定されたガイドがマニホール
ドを固定側受け板ないし固定側取付け板の配列方向へ移
動可能に貫通していることにより、マニホールドは、加
熱により膨脹するとともに、樹脂圧により固定側受け板
から離れる方向への力を受けるのに伴い、ガイドの先端
部のストッパー部に当たるまでは、固定側取付け板側へ
変位する。これにより、マニホールドの変形、変位が吸
収され、マニホールドが変形、変位しても、固定側受け
板および固定側型板や固定側取付け板は撓まない。した
がって、固定側型板により形成されるキャビティの形状
がくずれないとともに、固定側取付け板に設けられたシ
リンダー装置によって駆動されるバルブによりキャビテ
ィへのゲートを開閉する場合であっても、バルブとゲー
トとが芯ずれを生じない。

【００１０】

【実施例】以下、本発明のホットランナー金型装置の一
実施例について、図１および図２を参照しながら説明す
る。なお、本実施例のホットランナー金型装置は、先に
説明した図３に示すホットランナー金型装置と、マニホ
ールド部分の構成のみが異なっているので、マニホール
ド以外の部分には同一符号を付して、その説明を省略す
る。41はマニホールドで、このマニホールド41は、スプ
ルー18を各キャビティ３へ分岐させるランナー42が内部
に形成されており、ヒーター43を内蔵しているととも
に、各バルブ24が挿通するバルブ貫通孔44が図示上下方
向すなわち固定側型板４、固定側受け板５、マニホール
ド41および固定側取付け板７の配列方向に貫通形成され
ている。そして、前記マニホールド41の固定側受け板５
側の面（図示下面）には、この固定側受け板５に当接す
る複数のディスタンスピース45がボルト46により固定さ
れている。これに対して、前記マニホールド41と固定側
取付け板７との間には、ディスタンスピースは設けられ
ていない。また、特に図１に示すように、前記マニホー
ルド41の複数箇所には、スリーブ貫通孔47が図示上下方
向に貫通形成されている。そして、これらスリーブ貫通
孔47内には、それぞれ、図示上下方向を軸方向とするガ
イドとしてのスリーブ48が挿通されていている。これら
スリーブ48の図示上側先端部には、マニホールド41の固
定側取付け板７側への変位を規制するストッパー部とし
てのフランジ49がそれぞれ形成されている。そして、こ
のフランジ49側からスリーブ48内に挿通されたボルト50
が固定側受け板５に螺着されており、このボルト50の頭
部51がフランジ49に当接してスリーブ48を締め付けてい
る。こうして、各スリーブ48が固定側受け板５に対して
固定されている。そして、冷間状態にあって、ディスタ
ンスピース45が固定側受け板５に当接したマニホールド
41の図示上面とスリーブ48のフランジ49との間には、隙
間ａが生じるようになっている。こうして、各スリーブ
48に対してマニホールド41は、図示上下方向に変位可能
になっている。

【００１１】つぎに、前記の構成について、その作用を
説明する。成形に際しては、可動型２の可動側取付け板
34を射出成形機の可動側プラテンにクランプにより取付
け、固定型１の固定側取付け板７を射出成形機の固定側
プラテンにクランプにより取付けるとともに、固定型１
のスプルーブッシュ17に射出成形機のノズルを接続して
おく。そして、固定型１と可動型２とを型締し、シリン
ダー装置27の駆動によりバルブ24を図示上昇させてゲー
ト22を開放した状態で、射出成形機のノズルから溶融樹
脂を射出させる。この樹脂は、スプルー18からマニホー
ルド41内の分岐したランナー42およびバルブケーシング
21内を通って、開放されたゲート22から固定側型板４お
よび可動側型板31間に形成された複数のキャビティ３内
にそれぞれ流入する。その後、シリンダー装置27の駆動
によりバルブ24を図示下降させて、これらバルブ24をゲ
ート22に嵌合することにより、これらゲート22を閉塞す
る。そして、キャビティ３内に充填された樹脂が固化し
た後、固定型１と可動型２とを型開して、キャビティ３
内で固化した樹脂である製品を取り出す。以上の成形動
作が繰り返されるが、その間、ヒーター43によりマニホ
ールド41が加熱されて、そのランナー42内の樹脂が常時
溶融状態に保たれる。

【００１２】ところで、マニホールド41は、ヒーター43
による加熱や樹脂圧により変形、変位する。すなわち、
マニホールド41は、加熱により膨脹し、樹脂圧により固
定側受け板５側から反作用を受ける。ところが、マニホ
ールド41と固定側受け板５との間にディスタンスピース
45が介在しているのに対して、固定側受け板５に固定さ
れたスリーブ48がマニホールド41を図示上下方向に移動
可能に貫通しているので、マニホールド41は、加熱によ
り膨脹するとともに、樹脂圧により固定側受け板５から
離れる方向への力を受けるのに伴い、固定側取付け板７
側へ変位する。このとき、マニホールド41は、スリーブ
48のフランジ49に当たるまでは変位できる。これによ
り、マニホールド41の変形、変位が吸収され、このマニ
ホールド41が変形、変位しても、固定側受け板５や固定
側取付け板７に影響は出ず、これら固定側受け板５およ
び固定側型板４や固定側取付け板７は撓まない。したが
って、固定側型板４および可動側型板31により形成され
るキャビティ３の形状がくずれず、成形される製品に悪
影響が出ることが防止される。これとともに、固定側取
付け板７に設けられたシリンダー装置27に連結されたバ
ルブ24とゲート22などとの芯ずれが生じない。したがっ
て、ゲート22の磨耗やバルブ24の作動不良などを防止で
きる。

【００１３】なお、本発明は、前記実施例に限定される
ものではなく、種々の変形実施が可能である。例えば、
前記実施例のホットランナー金型装置は、バルブゲート
式のものであったが、スピアー式のホットランナー金型
装置などにも本発明を適用できる。

【００１４】

【発明の効果】本発明によれば、ホットランナー金型装
置において、マニホールドと固定側受け板との間にディ
スタンスピースを設け、一方、固定側受け板に固定され
たガイドをマニホールドに固定側受け板ないし固定側取
付け板の配列方向へ移動可能に貫通し、ガイドの先端部
にマニホールドの固定側取付け板側への変位を規制する
ストッパー部を設けたので、マニホールドが熱や樹脂圧
により変形、変位しても、固定側受け板および固定側型
板や固定側取付け板が撓むことを防止でき、したがっ
て、固定側型板により形成されるキャビティの形状がく
ずれず、成形される製品に悪影響が出ることを防止で
き、また、固定側取付け板に設けられたシリンダー装置
によって駆動されるバルブによりキャビティへのゲート
を開閉する場合であっても、バルブとゲートとが芯ずれ
を生ぜず、ゲートの磨耗やバルブの作動不良などを防止
できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のホットランナー金型装置の一実施例を
示す一部の断面図である。

【図２】同上全体の断面図である。

【図３】従来のホットランナー金型装置の一例を示す断
面図である。

【符号の説明】

１ 固定型 ２ 可動型 ３ キャビティ ４ 固定側型板 ５ 固定側受け板 ６ スペーサブロック ７ 固定側取付け板 18 スプルー 41 マニホールド 42 ランナー 45 ディスタンスピース 48 スリーブ（ガイド） 49 フランジ（ストッパー部）

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) B29C 45/26 - 45/44

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 開閉自在で型締時に複数のキャビティを
   内部に形成する固定型および可動型からなり、前記固定
   型は、前記キャビティを形成する固定側型板と、この固
   定側型板のキャビティと反対側の背面に固定された固定
   側受け板と、この固定側受け板の背面にスペーサブロッ
   クを介して固定された固定側取付け板と、これら固定側
   受け板および固定側取付け板間に間隙を保持して設けら
   れたマニホールドとを有し、前記固定側取付け板にスプ
   ルーを設けるとともに、前記マニホールドに前記スプル
   ーを各キャビティへ分岐させるランナーを設けたホット
   ランナー金型装置において、前記マニホールドと固定側
   受け板との間にディスタンスピースを設けるとともに、
   前記固定側受け板に固定されたガイドを前記マニホール
   ドに固定側受け板ないし固定側取付け板の配列方向へ移
   動可能に貫通し、前記ガイドの先端部に前記マニホール
   ドの固定側取付け板側への変位を規制するストッパー部
   を設けたことを特徴とするホットランナー金型装置。