JP2974546B2 - 疲労特性に優れた極細鋼線 - Google Patents
疲労特性に優れた極細鋼線Info
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えばタイヤ補強用の
ビードワイヤ、スチールコードに代表される伸線加工さ
れる極細鋼線などに応用でき、更に詳しくは疲労特性が
優れた極細鋼線に関する。
ビードワイヤ、スチールコードに代表される伸線加工さ
れる極細鋼線などに応用でき、更に詳しくは疲労特性が
優れた極細鋼線に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、スチールコードの代表的な製造方
法は0.8%C共析炭素鋼を線径0.8〜1.6mmで最
終パテンティングして、伸線加工歪(以下、真歪と呼
称)3以上の強加工を行うことによって300〜340
kgf/mm2 程度の引張強さを得ている。スチールコードは
高強度化の要求とともに、一方で疲労特性改善の要求も
大きい。これまで疲労特性改善については、ゴム浸透性
の改善(特開昭60−42028号)、フィラメントの
型付け率適正化(特開昭59−124404号)などコ
ード構成面から検討が主に進められている。本発明はス
チールコードなど極細鋼線の素線自体の疲労特性改善に
より、コードの疲労特性をも改善するものである。
法は0.8%C共析炭素鋼を線径0.8〜1.6mmで最
終パテンティングして、伸線加工歪(以下、真歪と呼
称)3以上の強加工を行うことによって300〜340
kgf/mm2 程度の引張強さを得ている。スチールコードは
高強度化の要求とともに、一方で疲労特性改善の要求も
大きい。これまで疲労特性改善については、ゴム浸透性
の改善(特開昭60−42028号)、フィラメントの
型付け率適正化(特開昭59−124404号)などコ
ード構成面から検討が主に進められている。本発明はス
チールコードなど極細鋼線の素線自体の疲労特性改善に
より、コードの疲労特性をも改善するものである。
【0003】合金元素添加によるコード特性の改善例と
して、特公平2−10220号は過共析鋼に特定量のC
oを添加することで、デラミネーション発生限界の改善
を、特公平3−23674号は0.75〜0.90%C
鋼に特定量のNi,Cu,Vを添加することで腐食環境
下の疲労特性改善を図るものがある。しかしながら、前
者は撚り加工性の改善に限られており疲労特性改善の思
想はなく、後者は耐食性改善による腐食環境下での疲労
特性の改善であり、大気疲労特性は評価されていない。
両者とも高価な合金元素を含有するために、コストが高
くなる問題がある。
して、特公平2−10220号は過共析鋼に特定量のC
oを添加することで、デラミネーション発生限界の改善
を、特公平3−23674号は0.75〜0.90%C
鋼に特定量のNi,Cu,Vを添加することで腐食環境
下の疲労特性改善を図るものがある。しかしながら、前
者は撚り加工性の改善に限られており疲労特性改善の思
想はなく、後者は耐食性改善による腐食環境下での疲労
特性の改善であり、大気疲労特性は評価されていない。
両者とも高価な合金元素を含有するために、コストが高
くなる問題がある。
【0004】パテンティング方法での改善例として、特
開平4−289148号では0.7〜0.9%C鋼のパ
ーライト組織を長手方向へ45°以内の角度に調整して
極細線の強度、延性を改善するとしているが、延性改善
は絞りに限られている。
開平4−289148号では0.7〜0.9%C鋼のパ
ーライト組織を長手方向へ45°以内の角度に調整して
極細線の強度、延性を改善するとしているが、延性改善
は絞りに限られている。
【0005】組織と伸線条件での改善例として、特開平
4−131323号ではVなどの合金元素を含む0.2
0〜0.50%C鋼を微細なフェライト−パーライト組
織とし減面率10〜40%の引抜加工を行って耐疲労性
及び耐摩耗性を改善するとしているが、C量が低く熱処
理が連続冷却であるために伸線材の引張強さが90kgf/
mm2 程度と低い問題がある。
4−131323号ではVなどの合金元素を含む0.2
0〜0.50%C鋼を微細なフェライト−パーライト組
織とし減面率10〜40%の引抜加工を行って耐疲労性
及び耐摩耗性を改善するとしているが、C量が低く熱処
理が連続冷却であるために伸線材の引張強さが90kgf/
mm2 程度と低い問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】真歪3以上の加工を行
うことによって、極細鋼線の引張強さは増加するが、一
方で疲労強度は逆に低下する傾向にある。疲労強度の支
配因子は明確になっていないが、表面引張残留応力の増
加、パーライトの微視組織中の欠陥の増加、表面疵感受
性の増加などによって疲労強度が低下すると考えられて
いる。
うことによって、極細鋼線の引張強さは増加するが、一
方で疲労強度は逆に低下する傾向にある。疲労強度の支
配因子は明確になっていないが、表面引張残留応力の増
加、パーライトの微視組織中の欠陥の増加、表面疵感受
性の増加などによって疲労強度が低下すると考えられて
いる。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、特定の真
歪範囲で伸線加工方法を改善すれば、パーライト組織中
の微細欠陥が発生しない領域が存在すること、その真歪
範囲はC量に依存すること、伸線加工後の組織はパーラ
イトコロニーの方向性、パーライトラメラー間隔、セメ
ンタイトの分断率で特徴付けられ、その条件範囲にあれ
ば、疲労特性が極めて優れること、また表面引張残留応
力も併せて小さくなることを見出し本発明に到達した。
すなわち、炭素含有量0.6〜1.0%の中〜高炭素鋼
線材を最終パテンティングして微細なパーライト組織と
し、伸線加工歪を−1.82〔%C〕+3≦真歪≦−
1.82〔%C〕+4.1の範囲で受け、パーライトコ
ロニーの90%以上が伸線方向と平行であり、かつ伸線
後のパーライトラメラー間隔が0.02〜0.06μm
の範囲であり、パーライトコロニーを構成するセメンタ
イトの分断率が20%以下である組織的特徴を有する引
張強さ180〜250kgf/mm2 の疲労特性に優れた極細
鋼線である。
歪範囲で伸線加工方法を改善すれば、パーライト組織中
の微細欠陥が発生しない領域が存在すること、その真歪
範囲はC量に依存すること、伸線加工後の組織はパーラ
イトコロニーの方向性、パーライトラメラー間隔、セメ
ンタイトの分断率で特徴付けられ、その条件範囲にあれ
ば、疲労特性が極めて優れること、また表面引張残留応
力も併せて小さくなることを見出し本発明に到達した。
すなわち、炭素含有量0.6〜1.0%の中〜高炭素鋼
線材を最終パテンティングして微細なパーライト組織と
し、伸線加工歪を−1.82〔%C〕+3≦真歪≦−
1.82〔%C〕+4.1の範囲で受け、パーライトコ
ロニーの90%以上が伸線方向と平行であり、かつ伸線
後のパーライトラメラー間隔が0.02〜0.06μm
の範囲であり、パーライトコロニーを構成するセメンタ
イトの分断率が20%以下である組織的特徴を有する引
張強さ180〜250kgf/mm2 の疲労特性に優れた極細
鋼線である。
【0008】ここで、本発明の限定理由は下記の通りで
ある。炭素含有量が0.6%未満になると、所定の真歪
を付与しても180kgf/mm2以上の高強度が得られなく
なること、一方炭素含有量が1.0%を超えるとパーラ
イト組織中に初析セメンタイトが析出して、伸線加工時
にパーライトコロニーの回転性が阻害されることから、
炭素含有量は0.6〜1.0%の範囲に限定した。
ある。炭素含有量が0.6%未満になると、所定の真歪
を付与しても180kgf/mm2以上の高強度が得られなく
なること、一方炭素含有量が1.0%を超えるとパーラ
イト組織中に初析セメンタイトが析出して、伸線加工時
にパーライトコロニーの回転性が阻害されることから、
炭素含有量は0.6〜1.0%の範囲に限定した。
【0009】炭素以外の組成は特に限定を要するもので
はなく、通常この種の線材と同様の組成であれば良い。
例えば、Si:0.3〜0.6%、Mn:0.4〜0.
7%、P:0.005〜0.015%、S:0.005
〜0.015%、残部Fe及び不可避不純物で例示でき
る。必要に応じてCr,Mo,Ni,Vなどの合金元素
を含有しても良い。パテンティング熱処理は、通常の鉛
浴炉、流動層などが利用でき、微細なパーライト組織が
得られれば特に限定するものではない。
はなく、通常この種の線材と同様の組成であれば良い。
例えば、Si:0.3〜0.6%、Mn:0.4〜0.
7%、P:0.005〜0.015%、S:0.005
〜0.015%、残部Fe及び不可避不純物で例示でき
る。必要に応じてCr,Mo,Ni,Vなどの合金元素
を含有しても良い。パテンティング熱処理は、通常の鉛
浴炉、流動層などが利用でき、微細なパーライト組織が
得られれば特に限定するものではない。
【0010】伸線加工歪(真歪)は炭素含有量に応じて
−1.82〔%C〕+3以上、−1.82〔%C〕+
4.1以下の範囲に規定した。パーライト鋼の伸線時の
結晶粒組織の変化挙動を模式的に図1,図2に示すが、
伸線初期はパーライトコロニーの回転で伸線長手方向に
パーライト組織が整列する過程、伸線中期では整列した
パーライトコロニー自体が引き延ばされる過程、伸線終
期ではセメンタイトの分断を伴いながら加工される過程
が存在する。図3にC量が異なる鋼種のハンター疲労強
度に及ぼす真歪の影響を示す。C量が高いほどパーライ
トコロニーの伸線方向への整列は速く、セメンタイトの
分断も早期に生じたためと考えられるが、C量によって
疲労強度が最大となるピークが異なることを見出し上記
範囲を規定した。
−1.82〔%C〕+3以上、−1.82〔%C〕+
4.1以下の範囲に規定した。パーライト鋼の伸線時の
結晶粒組織の変化挙動を模式的に図1,図2に示すが、
伸線初期はパーライトコロニーの回転で伸線長手方向に
パーライト組織が整列する過程、伸線中期では整列した
パーライトコロニー自体が引き延ばされる過程、伸線終
期ではセメンタイトの分断を伴いながら加工される過程
が存在する。図3にC量が異なる鋼種のハンター疲労強
度に及ぼす真歪の影響を示す。C量が高いほどパーライ
トコロニーの伸線方向への整列は速く、セメンタイトの
分断も早期に生じたためと考えられるが、C量によって
疲労強度が最大となるピークが異なることを見出し上記
範囲を規定した。
【0011】すなわち、−1.82〔%C〕+3未満の
真歪ではパーライトコロニーが伸線長手方向に整列する
のが不十分となり、一方−1.82〔%C〕+4.1超
の真歪ではパーライト中のセメンタイトの分断率が20
%を超えるために、各々疲労強度は低下すると考えられ
る。ここで、セメンタイトの分断率はパーライトコロニ
ー中で分断箇所のあるセメンタイト本数/コロニー中の
全セメンタイト本数で定義した。
真歪ではパーライトコロニーが伸線長手方向に整列する
のが不十分となり、一方−1.82〔%C〕+4.1超
の真歪ではパーライト中のセメンタイトの分断率が20
%を超えるために、各々疲労強度は低下すると考えられ
る。ここで、セメンタイトの分断率はパーライトコロニ
ー中で分断箇所のあるセメンタイト本数/コロニー中の
全セメンタイト本数で定義した。
【0012】伸線加工後の組織として、パーライトコロ
ニーの90%以上が伸線方向と平行であることを規定し
た。パーライトコロニーはパテンティング直後はランダ
ムな方向に配向している。フェライトとセメンタイトが
層状組織で伸線方向に配列される割合が高いほど、伸線
方向と直角方向へのクラック伝播阻止の効果が大きくな
り、疲労特性は改善されるものと考えられる。ただし、
パーライトコロニーの10%程度が伸線方向と平行(こ
こで伸線方向と平行とは伸線方向±10°以内を指す)
でなくともその効果は確保できるので、90%以上を規
定した。
ニーの90%以上が伸線方向と平行であることを規定し
た。パーライトコロニーはパテンティング直後はランダ
ムな方向に配向している。フェライトとセメンタイトが
層状組織で伸線方向に配列される割合が高いほど、伸線
方向と直角方向へのクラック伝播阻止の効果が大きくな
り、疲労特性は改善されるものと考えられる。ただし、
パーライトコロニーの10%程度が伸線方向と平行(こ
こで伸線方向と平行とは伸線方向±10°以内を指す)
でなくともその効果は確保できるので、90%以上を規
定した。
【0013】伸線加工後のラメラー間隔は0.02〜
0.06μmを規定した。0.02μm未満のラメラー
間隔ではフェライトの厚みが薄く、かつフェライト内部
にすべり帯が発生してクラックが伝播し易くなる他、セ
メンタイトの分断も起こり易くなるので、0.02μm
以上を規定した。一方、0.06μm超のラメラー間隔
では180kgf/mm2 以上の所望の高強度が得られなくな
るため0.06μm以下を規定した。
0.06μmを規定した。0.02μm未満のラメラー
間隔ではフェライトの厚みが薄く、かつフェライト内部
にすべり帯が発生してクラックが伝播し易くなる他、セ
メンタイトの分断も起こり易くなるので、0.02μm
以上を規定した。一方、0.06μm超のラメラー間隔
では180kgf/mm2 以上の所望の高強度が得られなくな
るため0.06μm以下を規定した。
【0014】次に、パーライトコロニーを構成するセメ
ンタイトの分断率は20%以下を規定した。ここで、分
断率はパーライトコロニーを構成する全セメンタイト本
数に対する1箇所でも分断箇所のあるセメンタイト本数
の割合を指す。セメンタイトが分断した箇所は必ずしも
ボイドが形成されるわけではなく、周囲のフェライトで
充満されるが、伸線方向と直角方向へのクラック伝播経
路となり、特にセメンタイト分断率が20%超となると
その傾向が顕著となることから、20%以下を規定し
た。なお、このようなパーライト組織に調整するには、
通常の湿式伸線方法が利用できるが、鋼線断面の表層〜
中間〜中心間の変形度がなるべく一定となるような伸線
用ダイスの配置、潤滑剤の適正化、伸線中の鋼線発熱防
止などの改善によって可能となる。
ンタイトの分断率は20%以下を規定した。ここで、分
断率はパーライトコロニーを構成する全セメンタイト本
数に対する1箇所でも分断箇所のあるセメンタイト本数
の割合を指す。セメンタイトが分断した箇所は必ずしも
ボイドが形成されるわけではなく、周囲のフェライトで
充満されるが、伸線方向と直角方向へのクラック伝播経
路となり、特にセメンタイト分断率が20%超となると
その傾向が顕著となることから、20%以下を規定し
た。なお、このようなパーライト組織に調整するには、
通常の湿式伸線方法が利用できるが、鋼線断面の表層〜
中間〜中心間の変形度がなるべく一定となるような伸線
用ダイスの配置、潤滑剤の適正化、伸線中の鋼線発熱防
止などの改善によって可能となる。
【0015】以上の条件を組み合わせることにより、例
えば0.82%C−0.20%Si−0.50Mn−
0.008%P−0.009%Sの成分を有する高炭素
鋼成分系で、最終パテンティング1.0mm、仕上げ線径
0.30mm(真歪2.4)とすることで、パーライトコ
ロニーの平行度92%、ラメラー間隔0.041μm、
セメンタイト分断率8%、引張強さ245kgf/mm2 の極
細鋼線でハンター疲労強度120kgf/mm2 の高い疲労特
性を有する極細鋼線が得られた。
えば0.82%C−0.20%Si−0.50Mn−
0.008%P−0.009%Sの成分を有する高炭素
鋼成分系で、最終パテンティング1.0mm、仕上げ線径
0.30mm(真歪2.4)とすることで、パーライトコ
ロニーの平行度92%、ラメラー間隔0.041μm、
セメンタイト分断率8%、引張強さ245kgf/mm2 の極
細鋼線でハンター疲労強度120kgf/mm2 の高い疲労特
性を有する極細鋼線が得られた。
【0016】
【実施例】本発明に基づき、表1に示す5種類の成分の
鋼を用いて0.30〜0.60mmの極細鋼線を試作し
た。最終パテンティング処理は鉛浴炉で行い、その後極
細伸線を行った。極細伸線方法としては種々の方法が考
えられるが、例えば伸線初期を減面率14%として、仕
上げ線に向かって9%程度まで徐々に低減させる方法が
考えられ、最終段から2段以内はダイスアプローチ角度
10°として鋼線中心部の引張応力を緩和し、水溶性潤
滑液中に全没として伸線時の鋼線発熱を防止した。
鋼を用いて0.30〜0.60mmの極細鋼線を試作し
た。最終パテンティング処理は鉛浴炉で行い、その後極
細伸線を行った。極細伸線方法としては種々の方法が考
えられるが、例えば伸線初期を減面率14%として、仕
上げ線に向かって9%程度まで徐々に低減させる方法が
考えられ、最終段から2段以内はダイスアプローチ角度
10°として鋼線中心部の引張応力を緩和し、水溶性潤
滑液中に全没として伸線時の鋼線発熱を防止した。
【0017】表2に最終LP材の機械的性質と仕上げ線
の機械的性質、組織的特徴、疲労強度、表面残留応力の
測定結果を併せて示す。ここで、組織的特徴を示すパー
ライトコロニーの平行度、ラメラー間隔、セメンタイト
の分断率は最終伸線材の透過電子顕微鏡観察によって測
定した。また、疲労強度は湿度50%の大気環境中のハ
ンター式回転曲げ疲労試験機で繰り返し数107 回以上
の疲労強度を測定し、仕上げ線の表面残留応力はX線回
折によった。
の機械的性質、組織的特徴、疲労強度、表面残留応力の
測定結果を併せて示す。ここで、組織的特徴を示すパー
ライトコロニーの平行度、ラメラー間隔、セメンタイト
の分断率は最終伸線材の透過電子顕微鏡観察によって測
定した。また、疲労強度は湿度50%の大気環境中のハ
ンター式回転曲げ疲労試験機で繰り返し数107 回以上
の疲労強度を測定し、仕上げ線の表面残留応力はX線回
折によった。
【0018】
【表1】
【0019】
【表2】
【0020】記号A〜Dは本発明例であり、記号E〜L
は比較例である。本発明例では素線のハンター疲労強度
が100kgf/mm2 以上と優れており、表面の引張残留応
力は20kgf/mm2 以下と低かった。比較例Eは真歪が
1.5と小さかったために、仕上げ線の引張強さが15
2.7kgf/mm2 と低くかつパーライトコロニーの平行度
が90%以下であったため、疲労強度が低かった例であ
る。逆に比較例Fは真歪が3.0と大きかったために、
仕上げ線の引張強さが250kgf/mm2 を超え、セメンタ
イト分断率も30%と大きかったために、疲労強度が低
下した例である。この場合表面引張残留応力も60kgf/
mm2 と極めて大きかった。
は比較例である。本発明例では素線のハンター疲労強度
が100kgf/mm2 以上と優れており、表面の引張残留応
力は20kgf/mm2 以下と低かった。比較例Eは真歪が
1.5と小さかったために、仕上げ線の引張強さが15
2.7kgf/mm2 と低くかつパーライトコロニーの平行度
が90%以下であったため、疲労強度が低かった例であ
る。逆に比較例Fは真歪が3.0と大きかったために、
仕上げ線の引張強さが250kgf/mm2 を超え、セメンタ
イト分断率も30%と大きかったために、疲労強度が低
下した例である。この場合表面引張残留応力も60kgf/
mm2 と極めて大きかった。
【0021】比較例Gは所定の真歪を受けたものの、伸
線加工条件の不良でパーライトコロニーの平行度が90
%以下であったために疲労強度が低下した例である。比
較例Hは所定の真歪を受けたものの、ラメラー間隔が
0.015μmと薄すぎたために、逆に比較例Iはラメ
ラー間隔が0.080μmと厚すぎたためにいずれも疲
労強度が低下した例である。比較例Jは所定の真歪を受
けたものの、伸線加工条件の不良でセメンタイトの分断
率が20%を超え同時に引張強さも250kgf/mm2 を超
えたために疲労強度が低下した例である。比較例Kは鋼
種のC量が0.48%と低かったためにパテンティング
後の初析フェライトが、また比較例Lは鋼種のC量が
1.05%と高かったためにパテンティング後に初析セ
メンタイトが各々析出してパーライトコロニーの回転が
阻害され、規定範囲のパーライトコロニー平行度、セメ
ンタイト分断率などが得られず、疲労強度が低下した例
である。
線加工条件の不良でパーライトコロニーの平行度が90
%以下であったために疲労強度が低下した例である。比
較例Hは所定の真歪を受けたものの、ラメラー間隔が
0.015μmと薄すぎたために、逆に比較例Iはラメ
ラー間隔が0.080μmと厚すぎたためにいずれも疲
労強度が低下した例である。比較例Jは所定の真歪を受
けたものの、伸線加工条件の不良でセメンタイトの分断
率が20%を超え同時に引張強さも250kgf/mm2 を超
えたために疲労強度が低下した例である。比較例Kは鋼
種のC量が0.48%と低かったためにパテンティング
後の初析フェライトが、また比較例Lは鋼種のC量が
1.05%と高かったためにパテンティング後に初析セ
メンタイトが各々析出してパーライトコロニーの回転が
阻害され、規定範囲のパーライトコロニー平行度、セメ
ンタイト分断率などが得られず、疲労強度が低下した例
である。
【0022】
【発明の効果】本発明は、引張強さ180〜250kgf/
mm2 の極細鋼線の疲労強度が飛躍的に向上できるため、
タイヤ補強用のビードワイヤ、スチールコードなど、特
に疲労強度が要求される用途への応用が可能である。ま
た、真歪が比較的少ないので、表層引張残留応力が低く
内部の微細組織上の欠陥も低いので、伸線加工時や撚り
加工時の断線が極めて低く抑えられる他、ダイス原単位
などの製造コストも改善できる。
mm2 の極細鋼線の疲労強度が飛躍的に向上できるため、
タイヤ補強用のビードワイヤ、スチールコードなど、特
に疲労強度が要求される用途への応用が可能である。ま
た、真歪が比較的少ないので、表層引張残留応力が低く
内部の微細組織上の欠陥も低いので、伸線加工時や撚り
加工時の断線が極めて低く抑えられる他、ダイス原単位
などの製造コストも改善できる。
【図1】A,B及びCは本発明にかかる極細鋼線を得る
ための伸線加工に伴う極細鋼線の機械的性質の変化とパ
ーライトコロニーの関係を示す模式図である。
ための伸線加工に伴う極細鋼線の機械的性質の変化とパ
ーライトコロニーの関係を示す模式図である。
【図2】真歪と引張強さ、絞りの関係を示す図表であ
る。
る。
【図3】C量が異なる鋼種別の真歪とハンター疲労強度
の関係を示す図表である。
の関係を示す図表である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C22C 38/00 C21D 8/00 - 9/52
Claims (1)
- 【請求項1】 重量比で炭素含有量0.6〜1.0%の
中〜高炭素鋼線材を最終パテンティングして微細なパー
ライト組織とし、伸線加工歪を−1.82〔%C〕+3
≦真歪≦−1.82〔%C〕+4.1の範囲で受け、パ
ーライトコロニーの90%以上が伸線方向と平行であ
り、かつ伸線後のパーライトラメラー間隔が0.02〜
0.06μmの範囲であり、パーライトコロニーを構成
するセメンタイトの分断率が20%以下である組織的特
徴を有する引張強さ180〜250kgf/mm2 の疲労特性
に優れた極細鋼線。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP5134770A JP2974546B2 (ja) | 1993-06-04 | 1993-06-04 | 疲労特性に優れた極細鋼線 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP5134770A JP2974546B2 (ja) | 1993-06-04 | 1993-06-04 | 疲労特性に優れた極細鋼線 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH06346190A JPH06346190A (ja) | 1994-12-20 |
JP2974546B2 true JP2974546B2 (ja) | 1999-11-10 |
Family
ID=15136161
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
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