JP2971684B2 - 軟弱地盤における建物施工方法 - Google Patents

軟弱地盤における建物施工方法

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鎮夫 北浜
彰 角
博行 橋本
邦雄 寺田
芳雄 平井
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、埋め立て地などのよう
な軟弱地盤に建物を構築する軟弱地盤における建物施工
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】上述した埋め立て地などのような軟弱地
盤では、例えば、地盤条件や土質や埋め立ての順番など
によって不同沈下を生じる問題があり、そのような軟弱
地盤に建物を構築する場合に、従来では、建屋の柱脚の
根元側に予めジャッキサポートを取り付けておき、不同
沈下が生じた箇所のジャッキサポートにジャッキを設置
し、沈下量分だけジャッキアップして建屋の傾斜を修正
していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、不同沈
下量の多い地盤の場合、建物施工後における修正回数が
多くなって不同沈下に伴う傾斜の修正に手間を要すると
ともに高価になり、そのうえ、ジャッキアップの期間中
は建物の機能を停止させなければならず、実用上極めて
不便で不経済になる欠点があった。
【0004】本発明は、このような事情に鑑みてなされ
たものであって、建物の施工を良好に行いながら、不同
沈下に対する建物施工後における修正の回数が少なくて
済むようにすることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の軟弱地盤におけ
る建物施工方法は、上述のような目的を達成するため
に、敷地内で地盤沈下量が相対的に大きいと予測される
側ほど高くなるように傾斜させて基礎躯体を構築した
後、その基礎躯体の支持面の低い側にレベル調整材を介
装して建屋の柱脚を立設し、それらの柱脚に水平に梁を
架設して地上構造体を構築し、しかる後に、レベル調整
材を除去し、地盤沈下量が相対的に大きいと予測される
側ほど高くなるように建屋を傾斜させることを特徴とし
ている。
【0006】
【作用】本発明の軟弱地盤における建物施工方法の構成
によれば、建物の施工時には、地盤条件や土質や埋め立
ての順番などに基づいて予め予測される不同沈下に伴う
建物の傾斜を考慮し、基礎躯体を将来的に傾斜するであ
ろう方向とは逆方向に傾斜させて構築するものの、その
基礎躯体と建屋の柱脚との間にレベル調整材を介装する
ことにより、地上構造体を水平姿勢で構築することがで
き、そして、地上構造体の構築後において、レベル調整
材を除去することにより、建屋を基礎躯体と同様に将来
的に傾斜すると予測される方向とは逆方向に傾斜させた
状態で構築することができる。
【0007】
【実施例】次に、本発明の実施例を図面に基づいて詳述
する。
【0008】図1は、本発明に係る軟弱地盤における建
物施工方法の実施例を示す全体概略縦断側面図であり、
建物を施工する敷地の地盤沈下量を、地盤条件や土質や
埋め立ての順番などによって予測し、図1の(a)に示
すように、地盤沈下量が相対的に大きいと予測される側
ほど高くなるように傾斜させて基礎躯体1を構築する。
【0009】このとき、上述傾斜に合うように掘削し、
予測される地盤沈下量が最も少ない箇所の天端が地表面
になるように設定するとともに、基礎梁1aを鉛直に構
築する。
【0010】次いで、図2の要部の一部切欠側面図、お
よび、図3の断面図(図2の要部の拡大断面図)に示す
ように、縦横のアンカーフレーム2,2とレベル調整用
ナット3とナット4とを介して基礎躯体1の1階の床ス
ラブ1bを貫通してアンカーボルト5を取り付け、その
アンカーボルト5のレベル調整用ナット3の上部に敷き
プレート6を取り付け、基礎躯体1の上面と敷きプレー
ト6との間に無収縮モルタル7を打設し、更に、建屋8
の柱脚9の下端のベースプレート10との間に、それぞ
れの箇所に応じて所定の厚みになるように、所定枚数の
レベル調整材としての鋼製のフィラープレート11…を
介装するとともに、ダブルナット12と平座金13とに
よってアンカーボルト5をベースプレート10に固定す
る。
【0011】各フィラープレート11…それぞれは、図
4の横断面図(図2のA−A線断面図)に示すように、
1辺部分において凸部14,14が備えられ、所定の方
向から挿脱できるように構成されている。
【0012】上述作業を行うことにより、図1の(b)
に示すように、各柱脚9…のベースプレート10が同一
レベルになるようにして柱脚9…を立設する。
【0013】また、図5の側面図および図6の横断面図
それぞれに示すように、各柱脚9…の下端側所定箇所に
ジャッキサポート15を一体連接するとともに、柱脚9
…に水平に梁16を架設して地上構造体17を構築す
る。ジャッキサポート15の形状は、図7の概略平面図
に示すように、柱脚9を挟んで対向する位置に油圧ジャ
ッキ18を取り付けられるようにするとか、あるいは、
柱脚9の隣合う辺部分に油圧ジャッキ18を取り付けら
れるようにするなど、建屋8のコーナー部など、その柱
脚9…の位置に応じて適宜設定される。
【0014】地上構造体17を構築した後において、図
8のブロック図に示すように、第1の台車19に搭載さ
れた可搬式の油圧ジャッキ18を所定のジャッキサポー
ト15と基礎躯体1との間に設置し、各油圧ジャッキ1
8…と、第2の台車20に搭載された可搬式の油圧ポン
プユニット21とを高圧ゴムホース22、分岐金具23
および開閉弁24を介して接続し、フィラープレート1
1…それぞれを除去し、地盤沈下量が相対的に大きいと
予測される側ほど高くなるように建屋8を傾斜させてお
く。
【0015】すなわち、図9の要部の側面図に示すよう
に、ジャッキサポート15と基礎躯体1との間に油圧ジ
ャッキ18を設置し[図9の(a)]、アンカーボルト
5のダブルナット12を緩めて[図9の(b)]から油
圧ジャッキ18を作動して微小量柱脚9を持ち上げ[図
9の(c)]、フィラープレート11を除去した[図9
の(d)]後に、油圧ジャッキ18を作動して微小量柱
脚9を下降させ[図9の(e)]、かつ、ダブルナット
12を締め付ける[図9の(f)]。
【0016】これらの動作を各柱脚9…に対して順次繰
り返し、設定量づつフィラープレート11を除去し、地
上側構造体17に局部的に偏荷重がかからないようにし
て地盤沈下量が相対的に大きいと予測される側ほど高く
なるように建屋8を傾斜させるのである。
【0017】図示していないが、地上構造体17内に対
する配管などは、不同沈下の小さい側において外部から
導入しておき、建屋8の傾斜による影響を受けないよう
にしておくものである。
【0018】上記施工手順を簡単に説明すれば、図10
の概略側面図(この図では、傾斜状態を誇張して示して
いる)に示すように、敷地内で地盤沈下量が相対的に大
きいと予測される側ほど高くなるように傾斜させて基礎
躯体1を構築した[図10の(a)]後、その基礎躯体
1の支持面の低い側に所定厚みづつのフィラープレート
11…を介装して建屋8の柱脚9…を立設し、それらの
柱脚9…に水平に梁16…を架設して地上構造体17を
構築し[図10の(b)および(c)]、しかる後に、
油圧ジャッキ18…によりフィラープレート11…を除
去し、地盤沈下量が相対的に大きいと予測される側ほど
高くなるように建屋8を傾斜させる[図10の(d)]
ことになる。
【0019】これにより、基礎躯体1の着工初期から建
屋8の竣工に至る間でも不同沈下による傾斜が進行し、
例えば、建屋8の竣工後で建屋8の着工から2年経過し
た後[図10の(e)]でも地盤沈下量が相対的に大き
いと予測される側ほど高くなっていて、建屋8の着工か
ら、例えば、5年程度経過した時点で建屋8がほぼ水平
になり[図10の(f)]、その後、地盤が締まってく
るために、建屋8の着工から7年[図10の(g)]、
12年[図10の(h)]と徐々に傾斜が進行し、52
年程度経過した後にも、地盤沈下量が相対的に大きいと
予測される側ほど高くなるように傾斜させた傾斜量より
も小さい傾斜量しか逆方向に傾斜せず[図10の
(i)]、不同沈下に起因する傾斜の修正を長期にわた
ってせずに済むと推定される。
【0020】局部的に不同沈下が発生したような場合に
は、それに対応するジャッキサポート15に油圧ジャッ
キ18を設置し、適宜修正を加えれば良い。このような
局部的な修正時には、建物の機能を停止させる必要は無
い。
【0021】図11は、フィラープレートの変形例を示
す平面図であり、アンカーボルト5,5を通す長い切欠
25を形成した第1のフィラープレート11aと、アン
カーボルト5,5を通す短い切欠26を形成した第2の
フィラープレート11bとに分割構成され、その除去に
際して、第1のフィラープレート11aを除去した後
に、第2のフィラープレート11bを第1のフィラープ
レート11aの除去方向と同方向に抜き出した後、やや
傾斜させてから抜き出すことができるように構成されて
いる。
【0022】
【発明の効果】本発明の軟弱地盤における建物施工方法
によれば、基礎躯体は傾斜させて構築するものの、基礎
躯体と建屋の柱脚との間にレベル調整材を介装して地上
構造体を水平姿勢で構築するから、墨出しなどの施工を
従来同様に容易に行うことができる。
【0023】しかも、地上構造体の構築後にレベル調整
材を除去して建屋全体を将来的に傾斜すると予測される
方向とは逆方向に予め傾斜させておくから、不同沈下に
よって建物が傾斜しても初期には水平方向に近づく状態
になり、たとえ、当初に傾斜させた方向とは逆方向に傾
斜する状態になったとしても、建物機能に影響を及ぼさ
ない所定範囲まで傾斜する間は、傾斜を大幅に修正せず
に済み、従来に比べて、不同沈下に対する建物施工後に
おける修正の回数を減少でき、また、修正に伴う建物機
能の停止も少なくなり、極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る軟弱地盤における建物施工方法の
実施例を示す全体概略縦断側面図である。
【図2】要部の一部切欠側面図である。
【図3】図2の要部の拡大断面図である。
【図4】図2のA−A線断面図である。
【図5】柱脚の根元部を示す側面図である。
【図6】図5の横断面図である。
【図7】ジャッキサポートの取り付け形態を示す全体概
略平面図である。
【図8】ブロック図である。
【図9】フィラープレートの除去手順を説明する要部の
側面図である。
【図10】施工手順ならびに傾斜状況を示す概略側面図
である。
【図11】フィラープレートの変形例を示す平面図であ
る。
【符号の説明】
1…基礎躯体 8…建屋 9…柱脚 11…レベル調整材としてのフィラープレート 11a…レベル調整材としての第1のフィラープレート 11b…レベル調整材としての第2のフィラープレート 16…梁 17…地上構造体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 北浜 鎮夫 大阪市中央区本町四丁目1番13号 株式 会社 竹中工務店 大阪本店内 (72)発明者 角 彰 大阪市中央区本町四丁目1番13号 株式 会社 竹中工務店 大阪本店内 (72)発明者 橋本 博行 大阪市中央区本町四丁目1番13号 株式 会社 竹中工務店 大阪本店内 (72)発明者 寺田 邦雄 大阪府南河内郡美原町木材通3丁目1番 8号 株式会社 竹中工務店 技術研究 所大阪支所内 (72)発明者 平井 芳雄 大阪府南河内郡美原町木材通3丁目1番 8号 株式会社 竹中工務店 技術研究 所大阪支所内 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) E04G 21/14 E02D 27/34 E04B 1/35 E04H 9/02 E04H 9/02 301

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 敷地内で地盤沈下量が相対的に大きいと
    予測される側ほど高くなるように傾斜させて基礎躯体を
    構築した後、その基礎躯体の支持面の低い側にレベル調
    整材を介装して建屋の柱脚を立設し、それらの柱脚に水
    平に梁を架設して地上構造体を構築し、しかる後に、前
    記レベル調整材を除去し、地盤沈下量が相対的に大きい
    と予測される側ほど高くなるように前記建屋を傾斜させ
    ることを特徴とする軟弱地盤における建物施工方法。
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