JP2969785B2 - クロロスルホン化ポリオレフィンの製造方法 - Google Patents

クロロスルホン化ポリオレフィンの製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明はクロロスルホン化ポリオレフィンの製造法に
関するものである。さらに詳しくは、ポリオレフィンを
溶媒に溶解又は懸濁させ、光或いはラジカル発生剤を触
媒とし、塩素と亜硫酸ガス、塩素と塩化スルフリル、塩
素と亜硫酸ガスと塩化スルフリルの三試薬、或いは塩化
スルフリルを用いて塩素化及びクロロスルホン化反応を
行うことからクロロスルホン化ポリオレフィンを製造す
る方法に関するものである。
[従来の技術] ポリオレフィンを溶媒に溶解又は懸濁させてクロロス
ルホン化ポリオレフィンを製造することが知られてい
る。又この溶媒として、四塩化炭素、クロロホルム、塩
化メチレン、トリクロロフルオロメタン(フロン11)、
1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタン(フロ
ン113)、フルオロベンゼンなどのハロゲン化溶媒を用
いることも知られている。
この中で四塩化炭素は最も適切な溶媒であり工業的に
使用される例も多い。しかし、最近になり四塩化炭素が
地球の成層圏に存在するオゾンを破壊する物質として疑
いが提起されたことから、この使用は好ましいものとは
言えない。
一方、クロロホルムを溶媒に用いてもクロロスルホン
化ポリオレフィンを得ることは可能であるが、溶媒自身
が塩素化を受け、四塩化炭素が副生してしまう。
1,1,2−トリクロル−1,2,2−トリフルオロエタン(フ
ロン113)などのフッ素化合物の場合は、クロロスルホ
ン化ポリオレフィンの製造溶媒として、その塩素化反応
に対する安定性や溶媒自身の無毒性から好ましい溶媒と
考えられる。しかし、四塩化炭素と同様に地球の成層圏
に存在するオゾンを破壊する物質として疑いが提起され
ており、この使用は好ましいものとは言えない。
従って、クロロスルホン化ポリエチレンを製造する際
の溶媒として、塩素化反応に対して安定でかつオゾンを
破壊する物質としての疑いのない溶媒が強く望まれてい
た。
[発明が解決しようとする課題] 本発明は、工業的クロロスルホン化ポリオレフィンの
製造において、塩素化反応に対して安定でかつオゾンを
破壊する物質としての疑いのない溶媒を提供することを
目的とする。
[課題を解決するための手段] 本発明者らが鋭意検討した結果、ポリオレフィンを溶
媒に溶解又は懸濁させ、光或いはラジカル発生剤を触媒
とし、塩素と亜硫酸ガス、塩素と塩化スルフリル、塩素
と亜硫酸ガスと塩化スルフリルの三試薬、或或いは塩化
スルフリルを用いて塩素化及びクロロスルホン化反応を
行うに際し、炭素数1〜4個かつその分子内に1個の水
素原子を含むフッ素化炭化水素を溶媒に用いることがか
かる問題を解決するクロロスルホン化ポリオレフィンの
製造方法であることを見出し本発明をなすに至ったもの
である。
以下その詳細について説明する。
[作用] フッ素化炭化水素は、一般に、クロロフルオロカーボ
ン(CFC:水素原子を含まず、塩素原子、フッ素原子及び
炭素原子のみからなる化合物)、ハイドロフルオロカー
ボン(HFC:塩素原子を含まず、水素原子、フッ素原子、
炭素原子のみからなる化合物)、およびハイドロクロロ
フルオロカーボン(HCFC:水素原子、塩素原子、フッ素
原子、炭素原子のみからなる化合物)の3タイプに分類
することができる。
CFCは、オゾン破壊係数(ODP)が高く、今世紀中にも
全廃しようとする動きがある。
一方、HCFCやHFCは、その分子中に水素原子を含むた
め分解されやすく、それがオゾン層に到達する前に大部
分分解してしまう事が知られている。従って、HCFCやHF
Cは、オゾン破壊係数(ODP)がCFCの値に比べ1/10以下
と低く、CFCの代替品と考えられている。
本発明において用いるフッ素化炭化水素は、その分子
内に1個の水素原子を含む。水素原子を全く含まないフ
ッ素化炭化水素は、CFCに分類され、オゾンを破壊する
物質として疑いがありその使用は好ましくない。一方、
分子内に水素原子を2個以上含むフッ素化炭化水素は、
クロロスルホン化ポリオレフィン製造時の塩素化反応に
対して不安定で、その塩素化物が副生してしまう。
本発明において用いるフッ素化炭化水素の沸点は、30
〜150℃であることが好ましい。
炭素数1〜4個かつその分子内に1個の水素原子を含
むフッ素化炭化水素には、例えば、ジブロモフルオロメ
タン、1,2,2−トリクロロ−1,1−ジフルオロエタン、1,
1,1,2,2−ペンタフルオロ−3,3−ジクロロプロパン、1,
1,2,2,3−ペンタフルオロ−1,3−ジクロロプロパン等が
ある。
炭素数1〜4個かつその分子内に1個の水素原子を含
むフッ素化炭化水素を、クロロスルホン化ポリオレフィ
ンの製造溶媒として使用する場合の使用量は、ポリオレ
フィン100重量部に対して、100〜10000重量部である。
フッ素化炭化水素の使用量が100重量部未満の場合、
塩素化やクロロスルホン化反応系の粘度が著しく高くな
り、工業的なクロロスルホン化ポリオレフィンの製造が
困難となってしまう。一方、フッ素化炭化水素を10000
重量部を越えて使用した場合、反応終了後、クロロスル
ホン化ポリオレフィンとフッ素化炭化水素を分離する
際、その溶媒回収に多量のエネルギーを必要とし、経済
的な製造法とは言えない。
本発明での、塩素化およびクロロスルホン化を行う反
応は光或いはラジカル発生剤を触媒として、塩素と亜硫
酸ガス、塩素と塩化スルフリル、塩素と亜硫酸ガスと塩
化スルフリルの三試薬あるいは塩化スルフリルを、フッ
素化炭化水素溶媒に溶解或いは懸濁したポリオレフィン
と反応させる。塩化スルフリルを添加する場合には必要
に応じて助触媒としてのピリジン、キノリン等のアミン
化合物が添加される。反応温度は40〜150℃、、好まし
くは60〜110℃であり、反応圧力は0〜10kg/cm2、好ま
しくは2〜7kg/cm2である。
ラジカル発生剤にはたとえばα,α′−アゾビスイソ
ブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリ
ル、過酸化ベンゾイルまたは過酸化アセチルがある。好
ましくは、アゾ化合物である。
原料となるポリオレフィンには、たとえば高密度ポリ
エチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状
低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン
(VLDPE)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エ
チレン・プロピレン共重合体(EPM)などのエチレン系
ホモポリマー、コポリマーがあげられる。
反応の終了後、生成物ポリマーを溶媒と分離する方法
には、水蒸気蒸留、ドラムドライヤー、ベント付き押出
機による方法が知られており、これらの方法により両者
が分離される。
本発明で言うクロロスルホン化ポリオレフィンには例
えば、先に述べたような原料に従いクロロスルホン化ポ
リエチレン、クロロスルホン化エチレン・プロピレン共
重合体、クロロスルホン化エチレン・ブテン共重合体、
クロロスルホン化エチレン・ヘキセン共重合体、クロロ
スルホン化エチレン・酢酸ビニル共重合体が挙げられ
る。
得られた生成物は従来のゴムあるいは樹脂と同様に配
合と混練を行い、加硫物或いは未加硫物で使用される。
配合剤としては、マグネシアや水酸化カルシウムなどの
加硫剤、カーボンブラックやホワイトカーボンなどの補
強剤、炭酸カルシウムやタルクなどの充填剤、可塑剤、
加工助剤、老化防止剤あるいは加硫促進剤などのゴムあ
るいは樹脂用配合剤が挙げられる。加硫は蒸気加硫、UH
F加硫、熱空気加硫、インジェクション、モールドある
いはロートキュアーなどが挙げられる。
最終用途には既存のクロロスルホン化ポリオレフィン
と同様、自動車用ホース、ガスホース、産業用ホース、
エスカレーター手摺、電線、レジャーボート、ルーフィ
ング、ポンドライナー、ロール、ベルト、ブーツ、パッ
キン、シート、引き布、接着剤、塗料およびシーラント
が挙げられる。
[発明の効果] 本発明のクロロスルホン化ポリオレフィンの製造方法
は、地球の成層圏に存在するオゾンを破壊する疑いが無
く、しかも塩素化反応に対して安定である物質を溶媒に
用いるため、環境問題に対しても、また工業的な面から
も優れた製造プロセスであると言える。
[実施例] 次に実施例にもとづき本発明をさらに詳しく説明する
が、これらは本発明を助けるための例であって本発明は
これらの実施例より何等の制限を受けるものではない。
なおこれらの実施例で用いた値は以下の測定法に準拠
して得られたものである。
塩素、イオウ量:燃焼フラスコ法 未加硫ゴム物性:JIS K 6300 加硫ゴム物性:JIS K 6301 生成物の色相:目視 溶媒中の副生成物の定量:ガスクロマトグラフィー 実施例1 10リッターのハステロイ−C製オートクレーブに、1,
2,2−トリクロロ−1,1−ジフルオロエタン:7000gとメル
トインデックス5.2g/10分、密度0.964g/cm3の高密度ポ
リエチレン:700gを仕込んだ。
クロロスルホン化反応の助触媒としてピリジンを0.28
g添加した後、反応器のジャケットに蒸気を通し、110℃
で60分保持することでポリエチレンを均一に溶解した。
又この間、反応器に15リッター/分の流速で窒素ガスを
導入し、混入した空気を排除した。
ラジカル開始剤として0.95gのα,α′−アゾビスイ
ソブチロニトリルを反応器に添加した。反応は、1500g
の塩化スルフリルを別の投入口より反応器へ添加するこ
とで行った。この間反応器の温度を110℃、圧力を3.5kg
/cm2に保った。
反応の終了後、圧力を常圧に戻し反応器の温度を70℃
に保ちながら、窒素を導入して反応液に残存する塩素ガ
スと塩化水素ガスを除いた。
安定剤として12gのビス(4−グリシジルオキシフェ
ニル)プロパンを添加した。
その後、この溶液を140℃に加熱したドラムドライヤ
ーにフィードして、生成物としてのクロロスルホン化ポ
リエチレンを溶媒から分離した。
生成物は純白の色相を有しており、分析の結果このク
ロロスルホン化ポリエチレンは34.6wt%の塩素と1.0wt
%のイオウを含むことが判った。生ゴムのムーニー粘度
(ML1+4,100℃)は56であった。
さらに生成物は表−1に示す配合により混練され、ス
コーチタイムに代表される未加硫物の物性と引っ張り強
さなどの加硫物性を測定した。
得られた値はこれをまとめて表−2に示す。
一方、ドラムドライヤーにて分離回収された1,2,2−
トリクロロ−1,1−ジフルオロエタン溶媒は、ガスクロ
マトグラフィー分析の結果、全く塩素化を受けていなか
った。
実施例2 10リッターのハステロイ−C製オートクレーブに、ジ
ブロモフルオロメタン:7000gとメルトインデックス5.2g
/10分、密度0.964g/cm3の高密度ポリエチレン:700gを仕
込んだ。以下実施例1と同様の方法で反応を行い、続い
て生成物を分離した。
生成物は純白の色相を有しており、分析の結果このク
ロロスルホン化ポリエチレンは35.1wt%の塩素と1.0wt
%のイオウを含むことが判った。生ゴムのムーニー粘度
(ML1+4,100℃)は58であった。
生成物は表−1に示す配合により混練され、未加硫物
の物性と加硫物性を測定した。
これをまとめて表−2に示す。
一方、ドラムドライヤーにて分離回収されたジブロモ
フルオロメタン溶媒は、ガスクロマトグラフィー分析の
結果、全く塩素化を受けていなかった。
実施例3 10リッターのハステロイ−C製オートクレーブに、1,
2,2−トリクロロ−1,1−ジフルオロエタン:7000gとメル
トインデックス0.85g/10分、密度0.964g/cm3の高密度ポ
リエチレン:490gを仕込んだ。以下、塩化スルフリルを1
050gに替えた以外は、実施例1と同様の方法で反応を行
い、続いて生成物を分離した。
生成物は純白の色相を有しており、分析の結果このク
ロロスルホン化ポリエチレンは35.4wt%の塩素と1.0wt
%のイオウを含むことが判った。生ゴムのムーニー粘度
(ML1+4,100℃)は102であった。
生成物は表−1に示す配合により混練され、未加硫物
の物性と加硫物性を測定した。
これをまとめて表−2に示す。
一方、ドラムドライヤーにて分離回収された1,2,2−
トリクロロ−1,1−ジフルオロエタン溶媒は、ガスクロ
マトグラフィー分析の結果、全く塩素化を受けていなか
った。
実施例4 10リッターのハステロイ−C製オートクレーブに、ジ
ブロモフルオロエタン:7000gとメルトインデックス5.0g
/10分、密度0.922g/cm3の線状低密度ポリエチレン(エ
チレン・ブテン1共重合体):700gを仕込んだ。以下、
塩化スルフリルを970gに替えた以外は、実施例1と同様
の方法で反応を行い、続いて生成物を分離した。
生成物は純白の色相を有しており、分析の結果このク
ロロスルホン化ポリエチレンは27wt%の塩素と1.0wt%
のイオウを含むことが判った。生ゴムのムーニー粘度
(ML1+4,100℃)は43であった。
生成物は表−1に示す配合により混練され、未加硫物
の物性と加硫物性を測定した。
これをまとめて表−2に示す。
一方、ドラムドライヤーにて分離回収されたジブロモ
フルオロメタン溶媒は、ガスクロマトグラフィー分析の
結果、全く塩素化を受けていなかった。
比較例1 10リッターのハステロイ−C製オートクレーブに、1,
1,2−トリクロロ−1−フルオロエタン:7000gとメルト
インデックス5.2g/10分、密度0.964g/cm3の高密度ポリ
エチレン:700gを仕込んだ。
以下実施例1と同様の方法で反応を行い、続いて生成
物を分離した。
生成物は純白の色相を有しており、分析の結果このク
ロロスルホン化ポリエチレンは34.8wt%の塩素と1.0wt
%のイオウを含むことが判った。生ゴムのムーニー粘度
(ML1+4,100℃)は56であった。
生成物は表−1に示す配合により混練され、未加硫物
の物性と加硫物性を測定した。
これをまとめて表−2に示す。
一方、ドラムドライヤーにて分離回収された1,1,2−
トリクロロ−1−フルオロエタン溶媒は、ガスクロマト
グラフィー分析の結果、1,1,2−トリクロロ−1−フル
オロエタン100重量部に対して12重量部の副生物(1,1,2
−トリクロロ−1−フルオロエタンの塩素化物)が生成
しており、該溶媒は、塩素化に対して安定でなかった。
比較例2 10リッターのハステロイ−C製オートクレーブに、ク
ロロホルム:7000gとメルトインデックス5.2g/10分、密
度0.964g/cm3の高密度ポリエチレン:700gを仕込んだ。
以下実施例1と同様の方法で反応を行い、続いて生成物
を分離した。
生成物は黄色く変色しており、分析の結果このクロロ
スルホン化ポリエチレンは344.9wt%の塩素と1.0wt%の
イオウを含むことが判った。生ゴムのムーニー粘度(ML
1+4,100℃)は57であった。
生成物は表−1に示す配合により混練され、未加硫物
の物性と加硫物性を測定した。
これをまとめて表−2に示す。
一方、ドラムドライヤーにて分離回収されたクロロホ
ルム溶媒は、ガスクロマトグラフィー分析の結果、クロ
ロホルム100重量部に対して3重量部の副生物(クロロ
ホルムの塩素化物:四塩化炭素)が生成しており、クロ
ロホルム溶媒は、塩素化に対して安定でなかった。さら
に四塩化炭素は、地球の成層けんい存在するオゾンを破
壊する物質としての疑いがあり、反応中に副生すること
は、環境的要求から好ましくない。
以上の実施例と比較例を参照すれば明らかなように、
本発明のクロロスルホン化ポリオレフィンの製造方法
は、地球の成層圏に存在するオゾンを破壊する疑いが無
く、しかも塩素化反応に対して安定である物質を溶媒に
用いるため、環境問題に対しても、また工業的な面から
も優れた製造プロセスであると言える。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C08F 8/38 C08F 10/02

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ポリオレフィンを溶媒に溶解又は懸濁さ
    せ、光或いはラジカル発生剤を触媒とし、塩素と亜硫酸
    ガス、塩素と塩化スルフリル、塩素と亜硫酸ガスと塩化
    スルフリルの三試薬あるいは塩化スルフリルを用いて塩
    素化及びクロロスルホン化反応を行うに際し、炭素数1
    〜4個かつその分子内に1個の水素原子を含むフッ素化
    炭化水素を溶媒に用いることを特徴とするクロロスルホ
    ン化ポリオレフィンの製造方法。
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