JP2965736B2 - 輪転印刷機のためのインキ装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、輪転印刷機のための、
アニロックス・ローラを有するインキ装置であって、ド
クタ・ホルダによって保持された２つのドクタ・ブレー
ドが設けられており、これらのドクタ・ブレードが、周
方向で互いにずらされて配置されかつインキによって負
荷されるインキ室を制限しており、該インキ室内にアニ
ロックス・ローラが侵入するようになっている形式のも
のに関する。

【０００２】

【従来の技術】前述の形式のインキ装置はドイツ連邦共
和国特許出願公開第３８００４１１号明細書によって公
知である。このようなインキ装置には閉鎖ドクタが設け
られており、該閉鎖ドクタは、少なくとも１つの溢流開
口を有している。この溢流開口によってインキ室が付加
的な前室と接続されている。このような構成によって、
インキ室内で生じる過剰圧が減少される。溢流するイン
キはポンプへ戻し案内され、従ってインキの循環路が形
成される。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、イン
キ装置のアニロックス・ローラに、インキ室内の圧力変
動を補償するようなインキ室ドクタ装置を設けることで
ある。

【０００４】

【課題を解決するための手段】この課題を解決するため
に本発明の構成では、アニロックス・ローラとインキ室
ドクタ装置とを有する輪転印刷機のためのインキ装置で
あって、前記インキ室ドクタ装置が、ドクタ・ホルダに
取り付けられた、それぞれ負の当接角度を有する作業ド
クタ・ブレードと閉鎖ドクタ・ブレードとを備えてお
り、両ドクタ・ブレードの自由曲げ長さ対厚さの比がそ
れぞれ大きな値を有していて、過剰圧下にあるインキ室
が、溢流横断面を備えている形式のものにおいて、圧力
に関連して形成されるギャップの形の溢流弁が閉鎖ドク
タ・ブレードに設けられていることにより、前記溢流横
断面が過剰圧に自動的に適合するようにした。

【０００５】

【発明の効果】本発明の構成によって、ドクタ・ブレー
ドはインキ室内の小さなインキ圧差に敏感に反応できか
つインキ過剰圧の際に閉鎖ドクタ側でインキ室長さのギ
ャップを形成することができる。さらに、アニロックス
・ローラのセルは均一にインキを充填される。インキ室
内の圧力変動が減少され、セルにインキを良好に充填す
ることを妨害する不都合な気泡形成が減少される。

【０００６】本発明によれば、溢流開口が設けられてお
り、該溢流開口は、インキ室内で例えばインキの粘性変
化又はアニロックス・ローラの回転数変化によって惹起
されるその都度の過剰圧に自動的に適合して、かつこの
過剰圧を比例的に減少させるようになっているので有利
である。この場合、同時に、圧力減少がインキ室全長さ
にわたって均一に行われることが保証され、従って、例
えば印刷物において目に見える条痕の形の不均一なイン
キ着けが避けられる。

【０００７】本発明の有利な構成では、インキ室へのイ
ンキ供給部がインキ供給スリットの形で設けられてお
り、該インキ供給スリットはインキ室全幅にわたって一
貫して延びている。このような構成によって、アニロッ
クス・ローラの縁範囲に配置されたセルにも新しいイン
キが均一に良好に供給される。

【０００８】インキ室ドクタケーシングが長手方向で２
つの部分に分割されていると有利で ある。これによりイ
ンキ供給スリットは構造的に簡単に形成される。

【０００９】

【実施例】輪転印刷機のインキ装置は、下側からアニロ
ックス・ローラ２に当接するインキ室ドクタ装置３を有
している。インキ室ドクタ装置３は軸方向で分割された
ドクタ・ホルダ４，６とアニロックス・ローラ２の周方
向でずらして配置された２つのドクタ・ブレード７，８
とから成っている。ドクタ・ホルダ４，６とドクタ・ブ
レード７，８とが、図示しない側方遮蔽板と一緒にイン
キ室９を形成しており、該インキ室内にアニロックス・
ローラ２が侵入する。アニロックス・ローラ２の長さに
わたって、互いに並んで配置された複数のインキ室ドク
タ装置３が設けられている。互いに並んで配置された複
数のインキ室ドクタ装置の使用によって、操作が簡単に
なり、かつアニロックス・ローラ２のインキ供給の区域
毎の遮断が可能になる。

【００１０】一方のドクタ・ブレード７（以下において
「作業ドクタ・ブレード」とも呼ぶ）と、他方のドクタ
・ブレード８（以下において「閉鎖ドクタ・ブレード」
とも呼ぶ）とが、それぞれ負の当接角度α，β（α；β
＞９０°）を成して軽度に押圧されてアニロックス・ロ
ーラ２に当接している。例えばスチールまたはポリアミ
ドから製造されたドクタ・ブレード７，８は、ほぼイン
キ室長さにわたって延びていて、かつ幅Ｂ（例えばＢ＝
５０ｍｍ）と厚さＤ（例えばＤ＝０．１ｍｍ）を有して
いる。ドクタ・ブレード７，８は、ドクタ・ホルダ４，
６における軸方向に延びる溝１１；１２内にそれぞれ遊
びを持って配置されている。溝１１；１２はそれぞれ、
深さＴ（例えばＴ＝１０ｍｍ）を有している。このよう
な配置形式に基づき、それぞれのドクタ・ブレードのた
めに自由曲げ長さＬ（例えばＬ＝４０ｍｍ）が得られ
る。自由曲げ長さＬ対厚さＤの比（Ｌ／Ｄ〜４００）に
よって特徴付けられたドクタ・ブレード７，８は、それ
故に著しくフレキシブルに構成されている。

【００１１】このように著しくフレキシブルに構成され
たドクタ・ブレード７，８は、圧力を受けて種々の程度
に曲げられるので、インキ室９内の圧力変動に極めて敏
感に反応する。

【００１２】インキ室９内の圧力上昇は、例えばインキ
の粘性の変化によって、あるいはアニロックス・ローラ
２の回転数の増加によって、あるいはインキ室９内での
気泡の形成によって惹起される。しかしあらゆる場合
に、このような圧力変動は、アニロックス・ローラ２の
セル２３の充填妨害を引き起こし、従ってインキ分配精
度の損失を招く。

【００１３】インキ室９内のこのような圧力上昇に基づ
き、作業ドクタ・ブレード７は圧力上昇に比例してます
ます強くアニロックス・ローラ２に圧着されるようにな
る。このような反作用によって、アニロックス・ローラ
２のセル２３内に存在するインキのみをインキ室９から
取り出すことが保証される。インキ室９内の圧力が減少
する際には、作業ドクタ・ブレード７のアニロックス・
ローラ２への当接力は再び減少し、従ってドクタ・ブレ
ード７及びアニロックス・ローラ２のウエブ２４を保護
し、このことによってドクタ・ブレード７およびアニロ
ックス・ローラ２の耐用寿命が高められる。

【００１４】閉鎖ドクタ・ブレード８は、インキ室９内
の圧力が上昇する際に、ドクタ・ブレード縁とアニロッ
クス・ローラ２との間に小さなギャップｓ（例えば０≦
ｓ≦０．５ｍｍ）が生じるようにアニロックス・ローラ
２から離れて曲げられる。このような構成によって、イ
ンキ室９に一部がインキ供給部１３によって、かつ一部
がアニロックス・ローラ２のセル２３内に残っている残
余インキによってそれぞれ供給される印刷インキより多
いか、もしくは少なくとも等量のインキがギャップｓを
通ってインキ室９から流出し得ることが達成される。

【００１５】このことによって、閉鎖ドクタ・ブレード
８は一種の逃し弁としてインキ室９の全長さにわたって
均一に作用する。

【００１６】過剰インキは、ドクタ・ホルダ４，６の下
側に配置されたインキつぼ１４によって受け止められ、
次いで図示しないポンプを介してインキ室９に再び供給
され、従ってインキの循環路が形成される。

【００１７】インキ室９内のインキ圧が減少する際に
は、閉鎖ドクタ・ブレード８がインキ圧に相応して戻さ
れて、軽いプレロードをかけられてアニロックス・ロー
ラ２に当接される。ドクタ・ブレード７，８のプレロー
ドは、ドクタ・ホルダ４，６が適当な（例えば機械的
に、電気機械的に、空気力式に、又は液圧式に作用す
る）調節手段を介して、フレームに配置された調節可能
なストッパ１６に対して移動されることによって得られ
る。この目的のために、ドクタ・ホルダ４，６が側方に
突出する基板１７を有しており、該基板がストッパ１６
と接触させられるようになっている。

【００１８】さらに、インキ室９内でインキ室９の全長
さにわたって均一な圧力を形成するためには、インキ室
９へのインキ供給が、インキ室長さにわたって延びるイ
ンキ供給スリット１８を介して行われるようになってい
る。このためには、インキ溜め室として形成された分配
室１９が設けられており、該分配室は少なくとも１つの
インキ供給部１３と接続されている。

【００１９】図示の構造的に単純な実施例では、ドクタ
・ホルダ４，６が、長手方向で２つの部分に分割された
ドクタ・ホルダ４，６として形成されている。これらの
ドクタ・ホルダ４，６は互いに解離可能に結合されてお
り、かつアングル状に折り曲げられたドクタ・ホルダ４
の傾斜して延びる下面２１とドクタ・ホルダ６の傾斜し
て延びる上面２２とによって、横断面が三角形の分配室
１９を形成している。しかし、下面２１と上面２２とは
互いに接触しておらず、従ってインキ供給スリット１８
が生じる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明によるインキ室ドクタを断面して示す概
略図である。

【符号の説明】

２ アニロックス・ローラ、 ３ インキ室ドクタ装
置、 ４，６ ドクタ・ホルダ、 ７，８ ドクタ・ブ
レード、 ９ インキ室、 １１，１２ 溝、１３ イ
ンキ供給部、 １４ インキつぼ、 １６ ストッパ、
１７ 基板、１８ インキ供給スリット、 １９ 分
配室、 ２１ 下面、 ２２ 上面、２３ セル、 ２
４ ウエブ

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 ゲオルク シュナイダー ドイツ連邦共和国 ヴュルツブルグ フ リッツ−ハーバー−シュトラーセ 13 (56)参考文献 特開 平２−274542（ＪＰ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) B41F 31/08 B41F 31/20

Claims (10)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 アニロックス・ローラ（２）とインキ室
   ドクタ装置（３）とを有する輪転印刷機のためのインキ
   装置であって、前記インキ室ドクタ装置が、ドクタ・ホ
   ルダ（４，６）に取り付けられた、それぞれ負の当接角
   度を有する作業ドクタ・ブレード（７）と閉鎖ドクタ・
   ブレード（８）とを備えており、両ドクタ・ブレード
   （７，８）の自由曲げ長さ（Ｌ）対厚さ（Ｄ）の比がそ
   れぞれ大きな値を有していて、過剰圧下にあるインキ室
   （９）が、溢流横断面を備えている形式のものにおい
   て、圧力に関連して形成されるギャップ（ｓ）の形の溢
   流弁が閉鎖ドクタ・ブレード（８）に設けられているこ
   とにより、前記溢流横断面が過剰圧に自動的に適合する
   ようになっていることを特徴とする、輪転印刷機のため
   のインキ装置。
2. 【請求項２】 前記ギャップ（ｓ）が閉鎖ドクタ・ブレ
   ード（８）のドクタ・ブレード縁とアニロックス・ロー
   ラ（２）との間に設けられている、請求項１記載のイン
   キ装置。
3. 【請求項３】 インキ室（９）が、インキ室幅にわたっ
   て延びるインキ供給スリット（１８）を有している、請
   求項１又は２記載のインキ装置。
4. 【請求項４】 インキ室（９）の手前に、インキ室幅に
   わたって延びる分配室（１９）が接続されている、請求
   項１から３までのいずれか１項記載のインキ装置。
5. 【請求項５】 インキ室ドクタ装置（３）が、長手方向
   で分割されたドクタ・ホルダ（４，６）を有している、
   請求項１から４までのいずれか１項記載のインキ装置。
6. 【請求項６】 インキ室ドクタ装置（３）が、基板（１
   ７）を有しており、該基板（１７）が、フレーム固定さ
   れた調節可能なストッパ（１６）と接触するように配置
   されている、請求項１から５までのいずれか１項記載の
   インキ装置。
7. 【請求項７】 インキつぼ（１４）がドクタ・ホルダ
   （４，６）の下側に配置されており、さらにインキつぼ
   （１４）がインキ供給装置を介して分配室（１９）と接
   続されている、請求項１から６までのいずれか１項記載
   のインキ装置。
8. 【請求項８】 両ドクタ・ブレード（７，８）の厚さ
   （Ｄ）が、それぞれ０．１ｍｍに等しい、請求項１記載
   のインキ装置。
9. 【請求項９】 両ドクタ・ブレード（７，８）の自由曲
   げ長さ（Ｌ）が、それぞれ４０ｍｍに等しい、請求項１
   記載のインキ装置。
10. 【請求項１０】 ドクタ・ブレード（７，８）の自由曲
    げ長さ（Ｌ）対厚さ（Ｄ）の比が、Ｌ／Ｄ〜４００であ
    る、請求項２記載のインキ装置。