JP2958440B2 - 薄片状酸化チタンおよびその集合多孔体とそれらの製造方法 - Google Patents

薄片状酸化チタンおよびその集合多孔体とそれらの製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、薄片状酸化チタ
ンおよびその集合多孔体とその製造方法に関するもので
ある。さらに詳しくは、この発明は、顔料、塗料、化粧
品、またナイロン等の樹脂や白色紙等への添加材、さら
に触媒等の光機能性材料として有用な、薄片状酸化チタ
ンおよびその集合である多孔体とその製造方法に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】従来より、酸化チタンの製造
方法としては、塩化チタンを気相で高温酸化するか、ま
たは硫酸チタン、チタンアルコキシド等を加水分解して
得られるゲルを加熱することによって酸化チタンを製造
する方法等が知られている。しかしながら、これら従来
の方法で製造されたものは、球形微粒子の集合体であ
り、細孔を有するものは少ない。細孔を有するものであ
っても、その平均細孔径は最大20nm程度である。
【0003】また、酸化チタンはその白色性、紫外線遮
断能という特徴を生かし、塗料、化粧品、さらには樹脂
または紙への添加材等として広く用いられているが、こ
れらは従来の方法で製造された等方性球状の微粒子を利
用しているため、塗布性、密着性、分散性等に問題があ
った。この発明は、以上通りの事情を鑑みてなされたも
のであり、酸化チタンを塗料、化粧品、さらには樹脂ま
たは紙への添加材等に用いた場合、塗布性、密着性、分
散性等を改善することが可能であり、さらに、光触媒等
としても応用可能な、非球形の新しい酸化チタンとその
製造方法等を提供することを目的としている。
【0004】
【課題を解決するための手段】この発明は、上記の課題
を解決するために、液媒体中において層状四チタン酸の
粉末の結晶をナノメーターレベルの厚さまで剥離分散さ
せ、得られたチタニアゾルを乾燥後に加熱して薄片状ま
たは短冊薄片状の形態を有する酸化チタンを製造するこ
とを特徴とする薄片状酸化チタンの製造方法と、その態
様としての、層状四チタン酸は、HTi・nH
O(n=0〜2)の組成を有し、KTi型層
状構造化合物から導かれたものであることや、層状四チ
タン酸粉末を生成させ、次にこの粉末をアミン等の塩基
水溶液等と混合して撹拌し、結晶をナノメーターレベル
の厚さまで剥離分散させ、得られたチタニアゾルを乾燥
した後、さらに加熱すること等をも提供する。
【0005】そしてこの発明は、一方向に長く延びた薄
片状または短冊薄片状の形態を有する薄片状酸化チタン
の集合体からなることを特徴とする酸化チタン集合多孔
体と、前記のチタニアゾルを、薄片粒子の再凝集を抑制
するための乾燥処理した後、さらに加熱して酸化チタン
多孔体を製造することを特徴とする酸化チタン集合多孔
体の製造方法をも提供する。
【0006】
【発明の実施の形態】この発明は、上記の通りの構成か
らなるものであるが、一方向に長く延びた薄片状または
短冊薄片状の形態を有する酸化チタン、並びにその集合
体としての酸化チタン多孔体は、これまでの技術として
は全く知られていないものであって、酸化チタンの新し
い応用を拓くものである。
【0007】このような薄片状または短冊薄片状の形態
を持つ酸化チタンは、より詳しくは、たとえばナノメー
ターレベルの厚みを持ち、具体的には、厚さが20nm
前後のアスペクト比の高い薄片状の形態を有するもの等
として提供される。そして、さらに、この発明では、こ
れらの薄片状または短冊薄片状の酸化チタンはその集合
体としての多孔体に変換され、非常に特異的な形状とし
ての、たとえば、メソ孔〜マクロ孔が発達した大きな比
表面積を有する酸化チタンの多孔体が提供される。<A>薄片状酸化チタン 特徴 この発明の酸化チタンは一方向に長く延びた薄片状また
は短冊薄片状の形態を有することが特徴であって、図1
にその代表例を示したように非常に薄い(厚さ:10〜
30nm)薄片が明瞭に認められる。これは、従来より
工業的に生産されている酸化チタンはその大部分が球状
粒子であることを考えると、極めて特徴的な点である。
このようなこの発明の酸化チタンは、より代表的には、
2 Ti4 9 型層状構造化合物を出発物質に用いて層
状四チタン酸H2 Ti4 9 ・nH2 Oを経由して得ら
れる。ただ、K2 Ti4 9 等の四チタン酸塩はしばし
ば針状形態の粉末として得られることがあり、その場合
には最終生成物である酸化チタンは図1の電子顕微鏡写
真から明瞭に読み取れるように短冊薄片状の特徴的な形
態になる。薄片の横方向サイズは、出発物質の四チタン
酸カリウムの微結晶の大きさに依存することになる。ち
なみに針状結晶の大きさは合成温度、時間、手法により
制御することが可能で、通常の固相合成法では長さ10
μm程度、フラックス法では100μm以上のものが得
られる。最終生成物はこれら微結晶の剥片よりなる短冊
状の形態を有するものが主体となるが、合成プロセスの
途中で破断されたと考えられる明瞭な短冊状形態を示さ
ない薄片状酸化チタンも一部混入、存在する。この発明
の酸化チタンにはこれらのものも含まれることは言うま
でもない。
【0008】この発明の発明者らは先に別種の層状チタ
ン酸化物(チタン酸セシウム:Cst Ti2 t/44
から水素型物質Hx Ti2 x/44 ・nH2 Oを導き、
この発明と同様な剥離−乾燥−加熱するという手順に従
って薄片状酸化チタンを製造することを提案している
が、この場合の薄片状チタンはほぼ正方形に近い形状を
有している。これに対し、この発明のものは一方向に長
く延びた短冊状である点が本質的に異っており、さらに
この発明では剥離用層状物質として四チタン酸カリウム
(K2 Ti4 9 )型化合物を用いることが可能なた
め、その原料(炭酸カリウム等)が先の発明(炭酸セシ
ウム等)に比べて非常に手に入りやすいこと、安価であ
ることが工業的製造プロセスを想定した場合の大きな利
点である。
【0009】酸化チタンはその白色性、紫外線遮断能と
いう特徴を生かして塗料、化粧品、さらには樹脂や紙へ
の添加材等として広く用いられている。しかし従来では
球状粒子からなる粉末を利用しているため、塗布性、密
着性、分散性に問題があった。これに対してこの発明の
酸化チタンは前記のとおりの特有の薄片状の形態を有し
ているためこれまでの問題点が改善される。特にナノメ
ーターオーダーの非常に薄い厚みを有しているため、紫
外線カット効果、展延性に優れた化粧品原料として期待
される。
【0010】製造方法 この発明の酸化チタンの合成には、K2 Ti4 9 型層
状構造を有する化合物を出発物質として好適に利用す
る。これを酸水溶液に接触させることにより水素型H2
Ti4 9 ・nH2 Oを導く。この化合物を適当な塩
基、たとえばアミン水溶液(テトラブチルアンモニウム
水酸化物:(C4 9 4 NOH、テトラメチルアンモ
ニウム水酸化物:(CH3 4 NOH、テトラエチルア
ンモニウム水酸化物:(C2 5 4 NOH、テトラプ
ロピルアンモニウム水酸化物:(C37 4 NOH、
n−エチルアミン:C2 5 NH2 、n−プロピルアミ
ン:C3 9 NH2 、1−アミノ2−エタノール:CH
2 NH2 −CH2 OH、1−アミノ3−プロパノール:
CH2 NH2 −CH2 −CH2 OH等)に加えて激しく
攪拌すると乳白色に懸濁したゾル溶液が得られる。この
チタニアゾルを乾燥すると白色のゲル状固体が残る。こ
のゲル状物質はアミン、水を含んでいるので400℃以
上に加熱して目的の酸化チタンに変換する。加熱処理温
度が400℃付近ではほぼ無定形、500〜1000℃
ではアナターゼ型、1100℃以上ではルチル型が主体
となる結晶構造をとるものが得られる。
【0011】以上のプロセスでは次に述べるような組
成、結晶構造および微細組織の変化が起こる。まずアミ
ン水溶液等の中で攪拌することにより、図2に示したよ
うに層状四チタン酸H2 Ti4 9 ・nH2 Oはその結
晶構造の基本単位である層Ti4 9 2-(厚み:約1n
m)一枚一枚もしくはそれに近いレベルまで剥離し、水
中に分散する。これを乾燥するとその過程である程度層
が再凝集して(10〜20枚)ゲルを生成する。このゲ
ルは層状四チタン酸を剥離させる試薬として用いたアミ
ンおよび水が層と層の間にはさまった一種の層間化合物
である。このような積層再凝集の結果、生成したゲルは
短冊状の薄片が絡まりあった複雑な微細組織を有してい
る。
【0012】次にこれらのゲルを加熱すると100〜5
00℃で水、アミンが層間より脱離する。それに伴って
層状構造は完全につぶれ、組成的にはTiO2 に移行す
る。この加熱処理工程後も、処理前のゲルの微細組織を
基本的には保持しており、図1に示したように、厚み2
0nm内外の非常に薄い短冊状の形態を有している。 <B>多孔体 特徴 この発明の酸化チタン集合多孔体は数十〜百m2 -1
いう大きな比表面積を有するうえに、細孔径にして2〜
100nmの広い範囲に及ぶメソ孔−マクロ孔が発達し
た特異な表面特性を有している。これまでの工業プロセ
スによっても高比表面積を有する酸化チタンが製造され
ているが、これらは球状微粒子の集合体であり、細孔を
有するものは少ない。一部細孔を有するものでもその平
均細孔径は最大20nm程度のものである。一方、この
発明の酸化チタン集合多孔体の上記のような特徴は薄片
が複雑に絡み合った微細組織によるところが大きい。す
なわち薄片が無秩序に積み重なった間隙が細孔として働
いていると推測される。
【0013】このような特徴を持った多孔体に関しては
多様な用途が期待されるが、そのひとつが光触媒として
の応用である。酸化チタンはバンドギャップ3eVの半
導体であるため、400nm以下の波長の光を吸収して
正孔と伝導電子を生じ強力な酸化・還元力を発揮する。
最近は特にクリーンエネルギー、環境浄化といった観点
から水から水素、酸素ガスを発生させたり、有害物質や
悪臭の分解さらには殺菌に利用することを目指した研究
が活発に進められている。一般に触媒反応活性は比表面
積/細孔分布に密接に関連していることが知られている
が、発明による酸化チタン多孔体はこれまで研究されて
きた酸化チタンとはその表面特性が全く異なることか
ら、特異な触媒能を発揮する期待が高い。
【0014】製造方法 この発明の多孔体は基本的には前記のとおりの手順で製
造することができる。ただ、より良質の多孔体を得るた
めには乾燥、加熱の両工程については、まず乾燥では酸
化チタン薄片の集合状態が影響を受け、たとえばゾルを
一旦凍らせたのち、いわゆる真空凍結乾燥して得たゲル
は単純乾燥させたものに比べて綿状で軽く、多孔質的な
外見を呈する。実際それらを加熱して酸化チタンに変換
したものでもその品質は保たれ前者の方が比表面積、細
孔特性も優れている。一方加熱処理工程によっても多孔
体としての性能を制御することができる。すなわち処理
温度が高くなるにつれて比表面積は減少する。またその
際小さな細孔はつぶれてより大きな孔が発達する傾向が
見られる。
【0015】
【実施例】
次に実施例によりさらに詳しくこの発明について説明す
る。実施例 炭酸カリウム(K2 CO3 )と二酸化チタン(Ti
2 )を1:4のモル比に混合し、900℃で24時間
焼成することにより四チタン酸カリウム(K2 Ti4
9 )を合成した。この粉末を1規定の塩酸水溶液中で3
日間攪拌した後、濾過、風乾して層状構造四チタン酸
(H2 Ti4 9 ・nH2 O)を得た。
【0016】このチタン酸粉末0.5gをテトラブチル
アンモニウム水酸化物水溶液100cm4 (濃度:0.
1moldm-3)に加えシェーカーで150rpm程度
の振盪を行なうことによりチタニアゾルを導いた。この
ゾルを冷凍庫中(−30℃)で凍結せしめ、真空凍結乾
燥を行なったところ綿状のゲルが生成した。そのX線回
折図形を調べた結果、図3(a)に示したように、層間
距離が1.86nmの相の生成が確認され、これはテト
ラブチルアンモニウムイオンおよび水がチタン酸の層と
層の間に取り込まれた一種の層間化合物であると同定さ
れた。
【0017】次に得られたゲルを加熱したところ、図4
にも示したが、50〜500℃の間で水、続いてアミン
の脱離に伴う約35%の重量減少が起こりそれ以上の温
度では一定となった。組成的には重量減少が終了した時
点で酸化チタンに移行したと考えられる。図3(b)
(c)のX線回折図形から明らかなように、この加熱処
理によって層状構造が崩壊しいったんほぼ無定形になっ
た後、温度を高くするにつれて、アナターゼとして結晶
化する(700℃以下ではトレースレベルのTiO
2 (B)を含む)ことが判明した。
【0018】合成した酸化チタンは綿状の多孔体的な外
見を呈し、その微細組織を走査型電子顕微鏡で観察した
ところ図1に示すようにナノメーターオーダーの厚みの
短冊状薄片が絡まりあっていることが確認された。
【0019】
【発明の効果】この発明により、以上詳しく説明したと
おり、薄片状の形態を有する酸化チタンと、さらに、大
きな比面積を有する多孔体が提供される。薄片状酸化チ
タンは、従来の酸化チタンを塗料、化粧品、さらには樹
脂または紙への添加材等として利用する場合に問題とな
っていた塗布性、密着性、分散性を改善するものと期待
される。さらに、酸化チタン多孔体は、光触媒等として
の応用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】薄片状酸化チタンの走査型電子顕微鏡像を示し
た図面に代わる写真である。なお、加熱処理温度:60
0℃である。
【図2】層状四チタン酸H2 Ti4 9 ・nH2 Oの結
晶構造を示した模式図である。Ti6 八面体が連鎖して
できたホスト層Ti4 9 2-の間に水分子およびオキソ
ニウムイオン(○)、水酸基(矢印)を含む。
【図3】チタニアゾルの凍結乾燥体の加熱処理によるX
線回折図形の変化を示した図である。(a)凍結乾燥体
(b)400℃(c)700℃を示し、BはTiO
2 (B)、Aはアナターゼを示す。
【図4】チタニアゾルの凍結乾燥体の重量示差熱分析曲
線図である。昇温速度:10℃/分である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−30399(JP,A) 特開 平6−135719(JP,A) 特開 平7−224235(JP,A) 特公 平5−24862(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C01G 23/04 C04B 38/00 304

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 液媒体中において層状四チタン酸の粉末
    の結晶をナノメーターレベルの厚さまで剥離分散させ、
    得られたチタニアゾルを乾燥後に加熱して薄片状または
    短冊薄片状の形態を有する酸化チタンを製造することを
    特徴とする薄片状酸化チタンの製造方法。
  2. 【請求項2】 層状四チタン酸は、HTi・n
    O(n=O〜2)の組成を有し、KTi
    層状構造化合物から導かれたものである請求項1の製造
    方法。
  3. 【請求項3】 KTi型層状構造化合物を酸処
    理して層状四チタン酸粉末を生成させ、次にこの粉末を
    塩基と混合して撹拌し、結晶をナノメーターレベルの厚
    さまで剥離分散させる請求項1または2の製造方法。
  4. 【請求項4】 一方向に長く延びた薄片状または短冊薄
    片状の形態を有する薄片状酸化チタンの集合体からなる
    ことを特徴とする酸化チタン集合多孔体。
  5. 【請求項5】 比表面積が40〜110m/gであ
    り、細孔径が2〜100nmのメソ孔からマクロ孔が発
    達した表面特性を持つ請求項の酸化チタン集合多孔
    体。
  6. 【請求項6】 請求項のチタニアゾルを、薄片粒子の
    再凝集を抑制する乾燥処理した後、さらに加熱して酸化
    チタン集合多孔体を製造することを特徴とする酸化チタ
    ン集合多孔体の製造方法。
  7. 【請求項7】 再凝集を抑制する乾燥処理として、真空
    凍結乾燥を行う請求項の酸化チタン集合多孔体の製造
    方法。
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