JP2956629B2 - プラスチックレンズ用プライマー組成物 - Google Patents

プラスチックレンズ用プライマー組成物

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JP2956629B2
JP2956629B2 JP9003243A JP324397A JP2956629B2 JP 2956629 B2 JP2956629 B2 JP 2956629B2 JP 9003243 A JP9003243 A JP 9003243A JP 324397 A JP324397 A JP 324397A JP 2956629 B2 JP2956629 B2 JP 2956629B2
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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、プラスチックレン
ズ用プライマー組成物に関し、詳しくは、硬化層及び反
射防止膜を有するプラスチックレンズの製造に際し、プ
ラスチックレンズの耐衝撃性、およびプラスチックレン
ズ基材と硬化層との密着性を改善するために設けられる
プライマー層として好適なプライマー組成物に関する。 【0002】 【従来の技術】プラスチックレンズは軽量、耐衝撃性、
易加工性、染色性などの長所があり、光学材料、とりわ
け眼鏡レンズの分野で近年急速に普及しつつある。さら
に、表面硬度が不十分なために傷がつきやすいといった
欠点の改良あるいは像や物体のチラツキの原因となる表
面反射を押えることでレンズに高付加価値を付与するこ
とを目的とした表面改質が既に数多く提案され、それに
よってますますプラスチックレンズの市場は拡大しつつ
ある。例えば、前者の表面硬度の改善についてはシリコ
ン系硬化膜を設けることにより、また後者の表面反射の
改善では無機物質をレンズ表面に蒸着し反射防止膜を設
けることにより、高硬度または反射防止能を有するプラ
スチックレンズも提供されている。しかし、シリコン系
硬化層や無機反射防止膜を設ける場合にはプラスチック
レンズの耐衝撃性を低下させる難点があり、とりわけ、
この2者の膜を同時に施したプラスチックレンズにおい
ては耐衝撃性の低下はいっそう顕著になり、改善が望ま
れている。 【0003】また、プラスチックレンズ基材にシリコン
系硬化層を施す場合にシリコン系硬化層とプラスチック
レンズ基材との密着性を改善することが従来大きな課題
となっており、このためプラスチックレンズ基材にプラ
ズマ照射などのエッチング処理を施したり、プラスチッ
クレンズ基材とシリコン系硬化層との間にプライマー層
を設けるなどの方法によりプラスチックレンズ基材の表
面改質が行なわれており、後者のプライマーコートによ
る表面改質の従来技術としては、例えば、プライマー組
成物としてエポキシ化合物を用いる方法(特開昭60−
214301号公報)、アクリルおよび/またはメタク
リル系化合物と芳香族ビニル化合物を主成分とするプラ
イマー組成物を用いる方法(特開昭60−214302
号公報)、アクリルポリオールと多官能有機イソシアネ
ート化合物からなるプライマー組成物を用いる方法(特
開昭61−114203号公報)などがある。 【0004】 【発明の解決しようとする問題点】上述の如く、シリコ
ン系硬化層のコーティングによる表面硬度向上や無機反
射防止膜のコーテイングによる表面反射の改善に伴なう
問題点の一つにプラスチックレンズの長所である耐衝撃
性の低下があり、この問題は、前述の従来技術の如くプ
ライマー層を設けた後にシリコン系硬化膜を施し、さら
に無機反射防止膜を施したプラスチックレンズにおいて
も解決されない。この点を更に詳説すると、特開昭60
−214302号公報に開示されている、アクリル系お
よび/またはメタクリル系化合物と芳香族ビニル化合物
を主成分とするプライマー組成物を用いる方法ではプラ
イマー層形成のためにエマルジョンを用いており、この
エマルジョン配合には水を使用するため、プライマーの
乾燥時に水の残留や乾燥時間に長時間を要する等の問題
がある。また、プラスチックレンズ基材にシリコン系硬
化層さらに無機反射防止膜を施した場合、密着性は良好
であるが、レンズの中心厚が2.0mm未満で耐衝撃性に
ついて米国FDA規格を満足させるのは難しい。また特
開昭60−214301号公報に開示されている方法で
は、プライマー層形成材料としてエポキシ化合物を用い
ており、このエポキシ化合物はエポキシ硬化触媒の存在
下に加熱することによりはじめてプライマー層となるも
のであるので、硬化時間に長時間を要する。また、この
プライマー層を設けた後にシリコン系硬化層を設け、さ
らに無機反射防止膜を設けたプラスチックレンズは耐薬
品性、シリコン系硬化層とレンズ基材との密着性向上な
ど優れた特性をもつものの、耐衝撃性は向上されていな
い。 【0005】さらに特開昭61−114203号公報に
開示されている方法では、プライマー層を施した後、シ
リコン系硬化層を施し、さらに無機反射防止膜を施した
プラスチックレンズが耐摩耗性、耐薬品性、耐熱水性、
耐擦傷性等の向上は認められるものの、耐衝撃性はあま
り向上されない。 【0006】以上詳述したように従来のプライマーコー
トによる表面改質方法では、密着性、耐薬品性、耐摩耗
性において効果が認められるものの、耐衝撃性は依然と
して解決せず、このためシリコン系硬化層と無機反射防
止膜を有するプラスチックレンズはプライマー層を設け
た場合にも米国FDA規格によるメガネレンズの耐衝撃
性テストに合格させるためにマイナスレンズの場合、レ
ンズの中心厚を2.0mm以上にする必要があり、このこ
とはレンズのコバ厚を増大させ、レンズが重くなるなど
の原因となり、外観が損なわれ、実用上も好ましくな
い。 【0007】従つて本発明の目的は、シリコン系硬化層
及び反射防止膜を有するプラスチックレンズの製造に際
し、この硬化層及び無機反射防止膜を設ける前にプラス
チックレンズ基材表面に塗布、硬化することにより、プ
ラスチックレンズの耐衝撃性、およびプラスチックレン
ズ基材と硬化層との密着性を改善することができるプラ
スチックレンズ用プライマー組成物を提供することにあ
る。 【0008】 【問題点を解決するための手段】本発明者らは、前記の
目的を達成するために検討を重ねた結果、アルキレング
リコール類、ポリアルキレングリコール類、ポリ(アル
キレンアジペート)類、ポリ−ε−カプロラクトン、ポ
リブタジエングリコール類、ポリ(アルキレンカーボネ
ート)類又はシリコーンポリオールから選ばれる活性水
素含有化合物とポリイソシアネートとのウレタン樹脂
液を含む組成物を、プラスチックレンズ基材表面に塗
布、硬化してプライマー層を形成した後、シリコン系硬
化層及び無機反射防止膜を設けると、プラスチックレン
ズの耐衝撃性、およびプラスチックレンズ基材と硬化層
との密着性を改善することができることを見い出した。 【0009】従って本発明は、シリコン系樹脂よりなる
硬化層及びこの硬化層の表面に無機反射防止膜を設ける
に先立ち、プラスチックレンズ基材表面上にプライマー
層を設けるために用いられる、プラスチックレンズ用プ
ライマー組成物であって、アルキレングリコール類、ポ
リアルキレングリコール類、ポリ(アルキレンアジペー
ト)類、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリブタジエング
リコール類、ポリ(アルキレンカーボネート)類又はシ
リコーンポリオールから選ばれる活性水素含有化合物と
ポリイソシアネートとのウレタン樹脂溶液からなること
を特徴とするプラスチックレンズ用プライマー組成物を
要旨とするものである。 【0010】以下、本発明を更に詳細に説明する。本発
明のプライマー組成物が塗布されるプラスッチクレンズ
基材としては、公知の任意のプラスチックレンズが用い
られるが、 【化1】 によって示されるジエチレングリコールビスアリルカー
ボネートを重合することによって得られたものが好まし
く用いられる。式(I)の単量体の重合に際して必要に
応じて光安定剤、酸化防止剤等の公知の添加剤や共重合
可能な他の単量体を添加しても良い。式(I)の単量体
の重合方法は特開昭57−44686号公報に詳細に開
示されている。 【0011】本発明のプライマー組成物は活性水素含有
化合物とポリイソチアネートとのウレタン樹脂溶液を含
む。ここで活性水素含有化合物としては、エチレングリ
コール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブタ
ンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサ
ンジオール、ネオペンチルグリコール、ジプロピレング
リコール、ジエチレングリコールなどのアルキレングリ
コール類;ポリプロピレングリコール、ポリエチレング
リコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリア
ルキレングリコール類;ポリ(ジエチレンアジペー
ト)、ポリ(テトラメチレンアジペート)、ポリ(ヘキ
サメチレンアジペート)、ポリ(ネオペンチレンアジペ
ート)などのポリ(アルキレンアジペート)類;ポリ−
ε−カプロラクトン;ポリ(1,4−ブタンジエン)グ
リコール、ポリ(1,2−ブタンジエン)グリコールな
どのポリブタジエングリコール類;ポリ(ヘキサメチレ
ンカーボネート)などのポリ(アルキレンカーボネー
ト)類;シリコーンポリオール等が挙げられるが、その
他の公知の活性水素含有化合物の使用も可能である。 【0012】ポリイソシアネートの例としては、トリレ
ンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、
4,4′−ジフエニルメタンジイソシアネート、1,5
−ナフタレンジイソシアネート、3,3′−ジメチル−
4,4′−ジフエニルジイソシアネートなどの芳香族系
ジイソイシアネート、;1,6−ヘキサメチレンジイソ
シアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4′−
ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3−ビ
ス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、トリメチル
ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族系ジイソ
シアネートが挙げられる。さらにポリイソシアネートと
して、前記特開昭61−114203号公報に記載され
た水添キシリレンジイソシアネート;ヘキサメチレンジ
イソシアネートのビウレツト結合体、あるいはイソシア
ヌレート結合体;ヘキサメチレンジイソシアネートとト
リメチールプロパンとの反応アダクト体;2−イソシア
ネートエチル−2,6−ジイソシアネートヘキサノエー
ト;1,6,11−ウンデカントリイソシアネート;イ
ソホロンジイソシアネートとトリメチロールプロパンと
の反応アダクト体;キシリレンジイソシアネートとトリ
メチロールプロパンとの反応アダクト体;ビス(イソシ
アネートメチル)シクロヘキサンとトリメチロールプロ
パンとの反応アダクト体などのいわゆるブロック型ポリ
イソシアネートを用いることもできる。 【0013】本発明のプライマー組成物は、活性水素含
有化合物とポリイソシアネートとのウレタン樹脂溶液か
らなる。 【0014】本発明のプライマー組成物をプラスチック
レンズ基材表面上に塗布して得られたプライマー層の膜
厚は0.01〜30μmであるのが好ましい。0.01
μm未満では耐衝撃性向上の効果があまり大きくなく、
30μmを超えるとレンズに塗布した時の面精度が低下
する。特に好ましくは1〜20μmである。 【0015】本発明のプライマー組成物は活性水素含有
化合物とポリイソシアネートとのウレタン樹脂溶液を塗
布に適した濃度に希釈して使用されるが、希釈に用いら
れる溶媒としては炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、
アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類が挙
げられ、その他の公知の溶剤の使用も可能である。特に
好ましいものは、トルエン、酢酸エチル、メチルエチル
ケトン、テトラヒドロフランであるが、これらは単独で
用いてもよいし、2種以上の混合溶剤として用いても良
い。溶剤としては、ウレタン樹脂と反応しない溶剤を用
いるのが好ましい。また、塗布性の改善を目的とした各
種レベリング剤あるいは耐候性の向上を目的とした紫外
線吸収剤や酸化防止剤さらに染料や顔料、その他膜の性
能や機能を高める公知の添加剤を併用することができ
る。プライマー組成物の塗布方法はスピナー法、デイツ
ピング法、その他公知の方法の中から適宜選択すればよ
い。プライマー層を形成するのには、本発明のプライマ
ー組成物を、プラスチックレンズ基材表面に塗布したの
ち、30℃〜200℃、好ましくは60℃〜150℃の
範囲の任意の温度で加熱すればよい。用いる溶剤により
異なるが、1〜60分の加熱で所望のプライマー層が形
成される。 【0016】プライマー組成物として、活性水素含有化
合物とポリイソシアネートとの重合物(ポリウレタン樹
脂)を含む組成物を用いた場合には、加熱により溶剤が
揮散してポリウレタン樹脂からなるプライマー層が形成
される。 【0017】本発明のプライマー組成物を用いてプライ
マー層を形成した後、このプライマー層上に、これに限
定されるものではないが、例えば一般式 【化2】 (ここでR1、R2は各々アルキル基、アルケニル基、ア
リル基、またはハロゲン基、エポキシ基、アミノ基、メ
ルカプト基、メタクリルオキシ基あるいはシアノ基を有
する炭化水素基であり;R3は炭素数が1〜8のアルキ
ル基、アルコキシアルキル基、アシル基、フェニル基で
あり;mおよびnは0または1である)で表わされる有機
ケイ素化合物および/またはその加水分解物、及びコロ
イダルシリカ(粒径1〜100mμ)からなるコーティ
ング組成物を被覆硬化せしめてシリコン系硬化層を設け
る。 【0018】これら有機ケイ素化合物の具体的な代表例
としては、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエト
キシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメ
トキシシラン、フエニルトリメトキシシラン、ジメチル
ジメトキシシラン、フエニルメチルジメトキシシラン、
ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキ
シエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ
−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−
グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカ
プトプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシメチル
トリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシ
シラン、グリシドキシメチルトリプロポキシシラン、グ
リシドキシメチルトリブトキシシランまたはその加水分
解物が挙げられるが、その他の公知の化合物の使用も可
能である。これらの有機ケイ素化合物は単独または2種
以上併用して用いることが可能である。 【0019】コロイダルシリカは、粒径1〜100mμ
のシリカ微粒子、さらに好ましくは、粒径5〜40mμ
のシリカ微粒子を、メタノール、エタノール、n−ブタ
ノール等のアルコール、水等の溶剤に分散させたもので
ある(特開昭60−214302号公報参照)。このケ
イ素系組成物の硬化は、組成物のみの加熱および/また
は乾燥、紫外線照射あるいは電子線照射などによつて達
成しうるが、硬化促進、低温硬化などを目的とした、各
種の硬化剤を併用してもよい。硬化剤の具体的な代表例
としては、各種の有機酸およびそれらの酸無水物、窒素
含有有機化合物、各種金属錯化合物あるいは金属アルコ
キシド、炭酸塩などの各種塩が挙げられる。特に好まし
くは金属錯塩であり、これらは単独で用いてもよいし、
2種以上併用することも可能である。 【0020】これをコーティングする方法はプライマー
組成物のコーティング方式と同様にスプレー法、ディッ
ピング法、スピナー法などの公知の方法から適宜選択す
れば良い。この硬化反応は加熱により進行し硬化膜を形
成するが、80℃〜150℃熱風中30分〜240分硬
化すると良い。 【0021】本発明のプライマー組成物をプラスチック
レンズ基板上に塗布、硬化して得られたプライマー層上
に硬化層を設けて得られたプラスチックレンズは、耐衝
撃性およびプラスチックレンズ基材と硬化層との密着性
に優れている。 【0022】有機ケイ素系組成物を被覆硬化させた後、
単層または多層の反射防止膜を設ける。反射防止膜形成
に用いる物質としては、無機物質であり、金属、金属あ
るいは半金属の酸化物、フツ化物、ケイ化物、ホウ化
物、炭化物、窒化物、硫化物等があげられる。具体的に
は、SiO2、SiO、ZrO2、Al23、TiO2
Sb23、Sb25、酸化タンタルなどの金属酸化物、
MgF2などのフツ化物等である。 【0023】前記物質から構成される単層または多層の
無機反射防止膜を形成させる方法としては、真空蒸着
法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオ
ンビームアシスト法などがあげられる。上で得られた反
射防止膜付きプラスチックレンズは、反射防止性の他に
耐久性のある高硬度表面を有し、プライマー層による耐
衝撃性の向上がなされたことから眼鏡用レンズその他の
光学物品として好ましく用いられる。 【0024】 【実施例】本発明をより明確にするため以下に実施例を
掲げるが、本発明はこれらの実施例に限定されるもので
はない。なお例中の部数及び%は重量による。 【0025】[実施例1] (1) プラスチックレンズ基材の製造 ジエチレングリコールビスアリルカーボネート150
部、パーロイルIPP(日本油脂(株)製ジイソプロピ
ルパーオキシジカルボネート)5部を混合撹拌し、次に
この混合液の不溶物をフイルターで除去し、濾液をエチ
レン/エチルアクリレート共重合樹脂の成型されたガス
ケツトと二枚のガラスモールドで作られる鋳型中に注入
した。次に40℃で4時間、40℃から65℃まで直線
的に10時間、65℃から85℃まで直線的に5時間、
85℃で2時間加熱を行なつた後ガスケツトとガラスモ
ールドを分離した。更に得られたレンズを130℃で2
時間アニーリング処理し、レンズ内部の歪を取り除い
た。このようにして得られたレンズは内部歪のない光学
用のプラスチックレンズとして良好なものであつた。以
下において、これをプラスチックレンズ基材として用い
た。 【0026】 (2) 本発明のプライマー用組成物の調製および塗布硬化 市販のポリウレタンLQ3510[三洋化成(株)製、
固形分濃度30%(ポリアルキレンアジペート使用)]
をトルエン/IPA(イソプロピルアルコール)(混合
比 2/1 )混合溶剤で固形分濃度10%に希釈する。次
に、この溶液50部に撹拌下ゆつくり、シリコン系界面
活性剤(日本ユニカー(株)製L−7002)0.03
部を加えてプライマー組成物とした。このプライマー組
成物を、(1)で得られたプラスチックレンズ基材上に浸
漬法(引き上げ速度10cm/min )にて塗布した。塗布
した基材レンズは120℃で30分間加熱硬化処理して
基材上に膜厚8.0μm のプライマー層を形成させた。 【0027】 (3) シリコン系コーテイング用組成物の調製および塗布
硬化 γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン15
0部を10℃に冷却、撹拌しながら、これに0.05規
定塩酸18部を30分間かけて滴下した。つづいてメタ
ノール分散コロイダルシリカ(平均粒子径12±1 m
μ、固形分30%)350部を撹拌しつつ液に滴下し、
滴下終了後、10℃にてさらに一晩撹拌した。この液に
メチルセロソルブ52部、イソプロピルアルコール20
8部、n−ブタノール104部、シリコン系界面活性剤
(日本ユニカー(株)製L−7002)2部を添加混合
し、充分撹拌した後、シリコン系コーテイング用組成物
とした。前記(2)で得た、プライマー層を有するプラス
チックレンズ基材のプライマー層上に前記コーテイング
用組成物をプライマー組成物の場合と同様にして塗布し
た。塗布後、120℃で3時間加熱硬化させてシリコン
系樹脂よりなる硬化層を形成させて、プライマー層およ
び硬化層を有するプラスチックレンズを得た。 【0028】 (4) 反射防止膜の形成 前記(3)によつて得られたプライマー層および硬化層を
有するプラスチックレンズの硬化層上に無機物質である
ZrO2/SiO2の混合物(光学的膜厚nd=λ/2)、
ZrO2(nd=λ/2)、SiO2(nd=λ/4)を順次真
空蒸着法で多層被覆させて、プライマー層、硬化層およ
び反射防止膜を有するプラスチックレンズを得た。 【0029】 (5) 試験および評価結果 前記(3) および(4) でそれぞれ得られたプライマー層、
硬化層付きプラスチックレンズおよびプライマー層、硬
化層、反射防止膜付きプラスチックレンズの性能評価
は、次に述べる方法で行なつた。 【0030】(A) 外観 肉眼観察でレンズの透明度、面精度が良好でかつ塗膜に
欠陥のないものを合格(○)とし、そうでないものを不
合格(×)とした。 (B) スチールウール硬度 #0000のスチールウールで塗面をこすり、傷つき具
合を評価した。判定基準は、 a:強く摩擦しても傷がつかない。 b:強く摩擦すると少し傷がつく。 c:弱く摩擦しても傷がつく。 d:爪で簡単に傷がつく。 【0031】(C) 密着性:硬化膜とレンズ基材或いは反
射防止膜と硬化膜の密着性は、JISD−0202に準
じてクロスカツトテープ試験法によつて行つた。即ち、
鋼ナイフを用い、基材の塗布面に1mmのマス目を100
個形成する。次に、その上にセロハン粘着テープ(商品
名セロテープ、ニチバン(株)製)を強くおしつけた後
に、90度方向に急速にはがし、塗膜の剥離の有無を調
べた。 (D) 耐衝撃性:FDA規格に基づき、鋼球落下試験を行
つた。即ち、約16.4gの鋼球を127cmの高さか
ら、レンズ中心部へ向かつて自然落下させ、割れないも
のを合格とした。尚、本試験に用いたレンズの中心厚は
すべて1.2mmのものとした。 【0032】本実施例で得られたプライマー層、硬化層
付きプラスチックレンズおよびプライマー層、硬化層、
反射防止膜付きプラスチックレンズの評価結果を表1に
示す。2種の複合膜付きプラスチックレンズは同一の評
価結果であり、外観、耐擦傷性、耐衝撃性、密着性に優
れていた。耐衝撃性、密着性に優れた結果が得られたの
は、本発明のプライマー組成物を用いて、プラスチック
レンズ基材表面上に予め特定のポリウレタン樹脂からな
るプライマー層を形成した後、硬化層を形成したからで
ある。 【0033】[実施例2] プライマー組成物として、固形分濃度5%のポリウレタ
ン樹脂溶液を用いた以外はすべて実施例1と同様にして
プライマー層、硬化膜付きプラスチックレンズおよびプ
ライマー層、硬化層、反射防止膜付きプラスチックレン
ズを得、実施例1と同様に試験した。試験結果は表1に
示す。 【0034】[実施例3] 実施例1で用いたLQ3510のかわりに市販ポリウレ
タンLQ3505[三洋化成(株)製、固形分濃度30
%(ポリアルキレンアジペート使用)]を用い、トルエ
ン/IPA(混合比 2/1)混合溶剤で固形分5%にな
るように希釈して得たポリウレタン樹脂溶液をプライマ
ー組成物として用いた以外はすべて実施例1と同様にし
てプライマー層、硬化膜付きプラスチックレンズおよび
プライマー層、硬化層、反射防止膜付きプラスチックレ
ンズを得、実施例1と同様に試験した。試験結果は表1
に示す。 【0035】[実施例4] 市販のポリウレタンE380[日本エラストラン(株)
製(ポリ(アルキレンカーボネート)使用)]を用いテ
トラヒドロフランを加えてプライマー濃度を3%に調整
して得たポリウレタン樹脂溶液をプライマー組成物とし
て用いた以外はすべて実施例1と同様にしてプライマー
層、硬化膜付きプラスチックレンズおよびプライマー
層、硬化層、反射防止膜付きプラスチックレンズを得、
実施例1と同様に試験した。試験結果は表1に示す。 【0036】[実施例5] 市販のポリウレタンE580[日本エラストラン(株)
製(ポリε−カプロラクトン使用)]を用いテトラヒド
ロフランを加えてプライマー濃度を3%に調整して得た
ポリウレタン樹脂溶液をプライマー組成物として用いた
以外はすべて実施例1と同様にしてプライマー層、硬化
層付きプラスチックレンズおよびプライマー層、硬化
層、反射防止膜付きプラスチックレンズを得、実施例1
と同様に試験した。試験結果は表1に示す。 【0037】[実施例6] 市販のポリウレタンSP−25[三洋化成(株)製、固
形分濃度30%(ポリ−ε−カプロラクトン使用)]を
用い、メチルエチルケトンを加えてプライマー濃度を5
%に調整して得たポリウレタン樹脂溶液をプライマー組
成物として用いた以外はすべて実施例1と同様にしてプ
ライマー層、硬化層付きプラスチックレンズおよびプラ
イマー層、硬化層、反射防止膜付きプラスチックレンズ
を得、実施例1と同様に試験した。試験結果は表1に示
す。 【0038】[実施例7] プライマー組成物の濃度を7%に調整し、プライマー組
成物を塗布するのにあたり、一回のみでなく、乾燥後同
様に浸漬法で塗布し、また乾燥するこの一連の操作を繰
り返して行い、2回の重ね塗りをした以外は実施例4と
全く同様にしてプライマー層、硬化層付きプラスチック
レンズおよびプライマー層、硬化層、反射防止膜付きプ
ラスチックレンズを得、実施例1と同様に試験した。試
験結果は表1に示す。 【0039】[実施例8] 実施例1で用いた市販のポリウレタンのかわりに下記の
製法によつて得られたポリウレタンを用い、このポリウ
レタンを固形分濃度10%になるように、テトラヒドロ
ランで希釈して得たポリウレタン溶液をプライマー組成
物として用いた以外はすべて実施例1と同様にしてプラ
イマー層、硬化層付きプラスチックレンズおよびプライ
マー層、硬化層、反射防止膜付きプラスチックレンズを
得た。 【0040】ポリウレタンの製法 「ポリオ―ルとしてテラタン3000(デュポン社製ポ
リエ―テルグリコ―ル)108部及びジエチレングリコ
―ル38部を、またイソシアネ―トとしてヘキサメチレ
ンジイソシアネ―トを用い、これらをNCO/OH比
1.0となるように混合した。その後、混合物をトルエ
ン溶剤で固形分30%となるように希釈した後、90℃
で一晩撹拌し反応を完結させ、常法により後処理して目
的とするポリウレタンを得た。」得られたプライマー
層、硬化層付きプラスチックレンズおよびプライマー
層、硬化層、反射防止膜付きプラスチックレンズを実施
例1と同様に試験し、表1に示す結果を得た。 【0041】[実施例9] プライマー組成物の固形分濃度を1%とし、塗布するの
にあたり、浸漬法でなくスピナー法を用いた。まずプラ
スチックレンズ凸面にプライマー組成物0.5μlを滴
下し、回転数3000rpmにて30秒間回転させた。塗
布したレンズ基材は50℃で5分間加熱処理して乾燥さ
せた。乾燥したこのプライマー層に同様にプライマー組
成物を塗布し、乾燥を施すこの一連の操作を繰り返し行
い、5回の重ね塗りをし、最後の乾燥は120℃で10
分間行つた。それ以外は実施例1と全く同様にしてプラ
イマー層、硬化層付きプラスチックレンズおよびプライ
マー層、硬化層、反射防止膜付きプラスチックレンズを
得、実施例1と同様に試験した。試験結果は表1に示
す。 【0042】[比較例1] スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタ
クリレート/アクリル酸(100/100/2/5混合比)の4
元共重合体(この4元共重合体は、アクリルポリオール
であり、本発明で用いられる活性水素含有化合物に含ま
れない。)とヘキサメチレンジイソシアネートをNCO
/OH比 2/1で混合し、メチルイソブチルケトン/酢
酸エチル(50/50混合比)で希釈して得た固形分10%
の溶液をプライマー組成物として用い、これをプラスチ
ックレンズ基材表面上に塗布し、加熱処理を行なってポ
リウレタン硬化膜を形成せしめた以外はすべて実施例1
と同様にしてプライマー層、硬化層付きプラスチックレ
ンズおよびプライマー層、硬化層、反射防止膜付きプラ
スチックレンズを得、実施例1と同様に試験した。試験
結果は表1に示す。 【0043】[比較例2] 実施例1の(2)で述べたプライマー層を施さない以外
は、実施例1と同様にして硬化層付きプラスチックレン
ズおよび硬化層、反射防止膜付きプラスチックレンズを
得、実施例1と同様に試験した。試験結果は表1に示
す。 【0044】[実施例10] (1) プラスチックレンズの製造 ジエチレングリコールビスアリルカーボネート150
部、メチルメタクリレート15部、パーロイルIPP
(日本油脂(株)製ジイソプロピルパーオキシカルボネ
ート)5.5部を混合撹拌し、次にこの混合液の不溶物
をフイルターで除去し、濾液をエチレン/エチルアクリ
レート共重合樹脂の成型されたガスケツトと二枚のガラ
スモールドで作られる鋳型中に注入した。次に30℃か
ら40℃まで直線的に6時間、40℃から50℃まで直
線的に4時間、50℃から70℃まで直線的に5時間、
70℃から85℃まで直線的に2時間、85℃で1時間
の加熱を行なつた後ガスケツトとガラスモールドを分離
した。更に得られたレンズを120℃で2時間アニーリ
ング処理しレンズ内部の歪を取り除いた。このようにし
て得られたレンズは内部歪のない光学用のプラスチック
レンズとして良好なものであつた。 【0045】得られたプラスチックレンズ基材上に実施
例7と同一のプライマー組成物を実施例7と同様に塗
布、硬化させてプライマー層を形成させた。次いで実施
例7と同様に実施してプライマー層、硬化層付きプラス
チックレンズおよびプライマー層、硬化層、反射防止膜
付きプラスチックレンズを得、実施例1と同様に試験し
た。試験結果は表1に示す。 【0046】[実施例11] ジエチレングリコールビスアリルカーボネート150
部、メチルメタアクリレート40部、パーロイルIPP
(日本油脂(株)製ジイソプロピルパーオキシカルボネ
ート)6部を混合撹拌し、次にこの混合液の不溶物をフ
ィルターで除去し、濾液をエチレン/エチルアクリレー
ト共重合樹脂の成型されたガスケットと二枚のガラスモ
ールドで作られる鋳型中に注入てプラスチックレンズ基
材を得た。得られたプラスチックレンズ基材表面に実施
例10と同一のプライマー組成物を塗布、硬化させてプ
ライマー層を形成させた。その後、実施例10と同様に
実施してプライマー層、硬化層付きプラスチックレンズ
およびプライマー層、硬化層、反射防止膜付きプラスチ
ックレンズを得、実施例1と同様に試験した。結果は表
1に示す。 【0047】[実施例12] ジエチレングリコールビスアリルカーボネート150
部、メチルメタアクリレート15部、ジエチレングリコ
ールジアクリレート3部、パーロイルIPP(日本油脂
(株)製ジイソプロピルパーオキシカルボネート)6部
を混合撹拌し、次にこの混合液の不溶物をフイルターで
除去し、濾液をエチレン/エチルアクリレート共重合樹
脂の成型されたガスケツトと二枚のガラスモールドで作
られる鋳型中に注入してプラスチックレンズ基材を得
た。得られたプラスチックレンズ基材表面に実施例10
と同一のプライマー組成物を塗布、硬化させてプライマ
ー層を形成させた。その後、実施例10と同様に実施し
てプライマー層、硬化層付きプラスチックレンズおよび
プライマー層、硬化層、反射防止膜付きプラスチックレ
ンズを得、実施例1と同様に試験した。結果は表1に示
す。 【0048】 【表1】【0049】表1より、実施例1〜12で得られたプラ
イマー層、硬化層付きプラスチックレンズおよびプライ
マー層、硬化層および反射防止膜付きプラスチックレン
ズは、いずれも外観、耐擦傷性、耐衝撃性、密着性に優
れていた。特に耐衝撃性、密着性に優れた結果が得られ
たのは、本発明のプライマー組成物を用いて、プラスチ
ックレンズ基材表面上に予め特定のポリウレタン樹脂か
らなるプライマー層を形成した後、硬化層を形成したか
らである。 【0050】 【発明の効果】本発明のプラスチックレンズ用プライマ
ー組成物は、シリコン系樹脂よりなる硬化層及び無機反
射防止膜を有するプラスチックレンズの製造に際し、こ
の硬化層及び反射防止膜を設けるに先立ち、プラスッチ
クレンズ基材表面に塗布、硬化することにより、プラス
チックレンズの耐衝撃性、およびプラスチックレンズ基
材と硬化層との密着性を改善することができる。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI // B29K 75:00 (72)発明者 杉村 光男 東京都新宿区中落合2丁目7番5号 ホ ーヤ株式会社内 (56)参考文献 特開 昭63−141001(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G02B 1/00 - 1/12

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 1.シリコン系樹脂よりなる硬化層及びこの硬化層の表
    面に無機反射防止層を設けるに先立ち、プラスチックレ
    ンズ基材表面上にプライマー層を設けるために用いられ
    る、プラスチックレンズ用プライマー組成物であって、 アルキレングリコール類、ポリアルキレングリコール
    類、ポリ(アルキレンアジペート)類、ポリ−ε−カプ
    ロラクトン、ポリブタジエングリコール類、ポリ(アル
    キレンカーボネート)類又はシリコーンポリオールから
    選ばれる活性水素含有化合物とポリイソシアネートとの
    ウレタン樹脂溶液からなることを特徴とするプラスチッ
    クレンズ用プライマー組成物。
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