JP2953063B2 - プリント基板洗浄液および洗浄方法 - Google Patents

プリント基板洗浄液および洗浄方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、プリント基板の洗浄
液、特にロジンフラックスの洗浄液および該洗浄液を用
いた洗浄方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、プリント基板の半田付け工程で
は、半田のぬれを良くする目的で、ロジンフラックスを
プリント基板の半田付け部分に塗布している。このロジ
ンフラックスには活性剤として有機ハロゲンなどが添加
されているが、これらは空中の水分を含むことでイオン
化し、腐蝕性を有する他、電気絶縁を悪くしたりマイグ
レ−ションなど不具合を発生させる。このため、米国軍
事規格のMIL−P−28809Aでは、プリント配線
板上に残留するイオン性物質量を単位面積当たりのNa
Cl量として測定し、例えばオメガメ−タ( The Kenco
Alloy and Chemical Company, Incorporated “ Omeg
a Meter TM")で測定したときに、14μg−NaCl
/inch2以下になるよう指定されており、半田付け工程
後に不要となったロジンフラックスは、クロロフルオロ
カ−ボンまたはクロロカ−ボンを主成分とする洗浄液で
洗浄を行っていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、クロロフルオ
ロカ−ボン、いわゆるフロンを主成分とする洗浄液は、
洗浄槽より蒸発しやすく、非常に安定であるため、地球
のオゾン層にまで達し、ここでオゾンを破壊する可能性
がある。このため、例えば1987年の「オゾン層を破
壊する物質に関するモントリオ−ル議定書」に示される
ように、段階的にフロンの使用量を削減することとなっ
た。一方、クロロカ−ボン、例えばトリクロロエチレン
やテトラクロロエチレンは、発ガン性物質の疑いがあ
り、1989年水質汚濁防止法施行令の有害物質に新た
に指定され、これらクロロカ−ボンの使用も望ましくな
い。本発明はこのような従来の事情に対処してなされた
もので、燃焼や生物分解によって処理可能なプリント基
板洗浄液を提供するとともに、この洗浄液を用いた洗浄
方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、構造式:
【化2】 で示される溶媒に、HLB( Hydrophile- Lipophile-
Balance )が8〜14の範囲であって、添加量が40重
量%以下の非イオン界面活性剤を添加したことを特徴と
するプリント基板洗浄液である。さらに、この洗浄液を
用いたプリント基板洗浄方法は、上記のプリント基板洗
浄液を用いて30〜60℃の温度範囲で洗浄する工程
と、水でリンスする工程とからなることを特徴とする。
【0005】
【作用】本発明のプリント基板洗浄液の主成分の化1で
示される環状エステル化合物(以下、「RE」と称
す。)は、これ自身はロジンフラックスの主成分である
アビエチン酸を溶解する速度は非常に遅いが、非イオン
界面活性剤とよく混合する、比較的粘度の小さい溶剤で
ある。
【0006】一方、非イオン界面活性剤それ自身では、
フラックスの主成分であるアビエチン酸を溶解するもの
の、この溶解速度も遅い。これは非イオン界面活性剤の
粘度が比較的大きいことに起因する。即ち、数1で示さ
れるように、固体の溶解速度Rsは、物質移動係数Kd
比例するが、この物質移動係数Kdもまた数2で示され
るように、粘度μに逆比例するからである。
【数1】Rs=S・Kd(Cs−C)
【数2】Kd ∞ D/d ∞ T/μ ここで、 Rsは固体の溶解速度、 Sは固体と液体界面の面積、 Kdは物質移動係数、 Csは溶解物の液体中の飽和濃度、 Cは溶解物の液体中の濃度、 Dは拡散係数、 dは拡散境膜の厚さ、 Tは溶液の温度、 μは溶液の粘度 である。
【0007】しかしながら、永年の研究の結果、これら
ロジンフラックスの溶解速度の遅いREと、特定の性質
を有した、即ちHLBが8〜14の非イオン界面活性剤
を混合すると、両者の欠点を補いながら飛躍的にロジン
フラックスの溶解速度が増加することを見い出したので
ある。このHLBとは、界面活性剤の親水性の度合を示
す指標で、0〜20の間の数値をとり、
【数3】 HLB=(親水基部分の分子量 × 20)/界面活性剤の分子量 で計算される。例えば、C1225O(CH2CH2O)n
Hで示される非イオン界面活性剤の場合、親水基は(C
2CH2O)nで、分子量は44×nで、全分子量は
186+(44×n)であるから、
【数4】 で求められる。
【0008】
【実施例】以下、本発明のプリント基板洗浄液および洗
浄方法の実施例について詳述する。実施例1 表1、表2および表3に示す界面活性剤(同表に数3か
ら求めたHLBも記載した。)を用いて、次の手順でプ
リント基板の洗浄を行った。 手順11)濃度20wt%になるようREに各界面活性
剤を添加調整し、洗浄液を作製する。 手順12)手順11で得られた洗浄液500mlをトレ
−に入れ、洗浄液温度を40℃に保持しておく。 手順13)上記トレ−内に5.5×5.0(inch)の大
きさの半田付け後のプリント基板を完全に浸漬する。 手順14)プリント基板を振動させて10分間の洗浄を
行う。 手順15)プリント基板を洗浄液より引き上げ、40℃
に保持した500mlの水の入った別のトレ−に完全に
浸漬する。 手順16)プリント基板を振動させ、5分間の水洗浄を
行う。 手順17)プリント基板を水より引き上げ、さらに別の
トレ−の500mlの水に完全に浸漬する。 手順18)プリント基板を振動させ、5分間の水洗浄を
行う。 手順19)この後、プリント基板をトレ−より取り出
し、プリント基板に残留しているイオン性物質を、オメ
ガメ−タ600SMD(α−メタルズ社)にて、15分
間測定する。
【0009】以上の手順で得られたイオン残渣値を表
1,表2および表3に記載した。なお、比較のため半田
付け後のプリント基板を洗浄液で洗浄しないで、そのま
まイオン残渣を測定したところ、80NaCl−μg/
inch2以上の値であった。また界面活性剤を添加しない
RE溶液で同様の条件で洗浄を行ったところ、18Na
Cl−μg/inch2であった。
【0010】
【表1】 ──────────────────────────────────── 試料 界面活性剤 HLB イオン残渣 番号 (NaCl−μg/inch2) ──────────────────────────────────── 11 C12H25O(CH2CH2O)4H 9.7 3.3 12 C12H25O(CH2CH2O)7H 12.5 4.0 13 C12H25O(CH2CH2O)9H 13.6 3.7 14 C12H25O(CH2CH2O)12H 14.8 7.8 15 C12H25O(CH2CH2O)17H 16.0 11.3 ──────────────────────────────────── (以下余白)
【0011】
【表2】 ──────────────────────────────────── 試料 界面活性剤 HLB イオン残渣 番号 (NaCl−μg/inch2) ──────────────────────────────────── 21 C18H35O(CH2CH2O)4H 7.9 6.9 22 C18H35O(CH2CH2O)9H 11.9 4.1 23 C18H35O(CH2CH2O)15H 14.2 10.3 ────────────────────────────────────
【0012】
【表3】
【0013】実施例2 表1記載の試料番号12と15の界面活性剤と、表2記
載の試料番号21,22および23の界面活性剤と、表
3記載の試料番号31,32,34および35の界面活
性剤を用いて、 手順21)濃度0〜60wt%になるようにREに各界
面活性剤を添加調整し、洗浄液を作製する。 手順22)手順21で得られた洗浄液500mlをトレ
−に入れ、洗浄液温度を40℃に保持しておく。 手順23)上記トレ−内に5.5×5.0(inch)の大
きさの半田付け後のプリント基板を完全に浸漬する。 手順24)プリント基板を振動させて10分間の洗浄を
行う。 手順25)プリント基板を洗浄液より引き上げ、40℃
に保持した500mlの水の入った別のトレ−に完全に
浸漬する。 手順26)プリント基板を振動させ、5分間の水洗浄を
行う。 手順27)プリント基板を水より引き上げ、さらに別の
トレ−の500mlの水に完全に浸漬する。 手順28)プリント基板を振動させ、5分間の水洗浄を
行う。 手順29)この後、プリント基板をトレ−より取り出
し、プリント基板に残留しているイオン性物質を、オメ
ガメ−タ600SMD(α−メタルズ社)にて、15分
間測定する。以上の手順で得られたイオン残渣値と界面
活性剤の濃度の関係を図1,図2および図3に記載す
る。なお、図1から図3の各番号は界面活性剤の種類を
示すもので、表1から表3の各試料番号の界面活性剤を
示すものである。
【0014】実施例3 表4に示す界面活性剤を用いて、 手順31)濃度20wt%になるように、REに各界面
活性剤を添加調整し、洗浄液を作製する。 手順32)手順31で得られた洗浄液500mlをトレ
−に入れ、洗浄液温度を10〜60℃の所定の温度に保
持しておく。 手順33)上記トレ−内に5.5×5.0(inch)の大
きさの半田付け後のプリント基板を完全に浸漬する。 手順34)プリント基板を振動させて10分間の洗浄を
行う。 手順35)プリント基板を洗浄液より引き上げ、40℃
に保持した500mlの水の入った別のトレ−に完全に
浸漬する。 手順36)プリント基板を振動させ、5分間の水洗浄を
行う。 手順37)プリント基板を水より引き上げ、さらに別の
トレ−の500mlの水に完全に浸漬する。 手順38)プリント基板を振動させ、5分間の水洗浄を
行う。 手順39)この後プリント基板をトレ−より取り出し、
プリント基板に残留しているイオン性物質を、オメガメ
−タ600SMDにて、15分間の測定により測 定する。以上の手順で得られたイオン残渣値を表4に記
載した。
【0015】
【表4】 ──────────────────────────────────── 試料 界面活性剤 HLB 洗浄液温度 イオン残渣 番号 (℃) (μg/inch2) ──────────────────────────────────── 41 C12H25O(CH2CH2O)7H 12.5 10 35 42 C12H25O(CH2CH2O)7H 12.5 20 23 43 C12H25O(CH2CH2O)7H 12.5 30 8.3 44 C12H25O(CH2CH2O)7H 12.5 40 4.0 45 C12H25O(CH2CH2O)7H 12.5 50 13.5 46 C12H25O(CH2CH2O)7H 12.5 60 12.3 47 C18H35O(CH2CH2O)9H 11.9 10 58 48 C18H35O(CH2CH2O)9H 11.9 40 4.1 49 C18H35O(CH2CH2O)9H 11.9 70 23 ────────────────────────────────────
【0016】実施例4 表5に示す界面活性剤を用いて、 手順41)濃度20wt%になるように、REに各界面
活性剤を添加調整し、洗浄液を作製する。 手順42)手順41で得られた洗浄液500mlをトレ
−に入れ、洗浄液温度を40℃に保持しておく。 手順43)上記トレ−内に5.5×5.0(inch)の大
きさの半田付け後のプリント基板を完全に浸漬する。 手順44)プリント基板を振動させて10分間の洗浄を
行う。 手順45)プリント基板を洗浄液より引き上げ、手順4
1で得られた液500mlの入った(この液も40℃に
保温されている。)別のトレ−に完全に浸漬する。 手順46)プリント基板を振動させ、5分間のREによ
る洗浄を行う。 手順47)プリント基板を洗浄液より引き上げ、さらに
別のトレ−の500mlの洗浄液(手順41で作製した
もの)に完全に浸漬する。 手順48)プリント基板を振動させ、5分間のREによ
る洗浄を行う。 手順49)この後、プリント基板をトレ−より取り出
し、プリント基板に残留しているイオン性物質を、オメ
ガメ−タ600SMDにて、15分間測定する。 以上の手順で得られたイオン残渣値を表5に記載した。
【0017】
【表5】
【0018】表1から表3に示したように、界面活性剤
20%を添加した洗浄液は、界面活性剤を添加していな
いRE溶液で洗浄したときのイオン残渣値18NaCl
−μg/inch2より小さい値をとっており、界面活性剤
の添加効果がうかがえる。また表1から表3で、イオン
残渣が例えば6NaCl−μg/inch2以下のものは、
試料番号11,12,13,22,32,33,34の
添加する界面活性剤のHLBが8から14の範囲のもの
であり、界面活性剤の親油基、即ち −O(CH2CH2
O)nH 以外の部分の種類依存性が少ないこともわか
る。またこれらの界面活性剤の濃度を変えた場合、図1
の12、図2の22、図3の32や34は濃度範囲が1
0〜20wt%近傍で最もイオン残渣が小さくなり洗浄
効果があがっており、40%を超えると急激に洗浄効果
が衰えている。
【0019】洗浄液の温度の効果は表4から明らかなよ
うに、また水洗効果は、表5の結果と表2や表3を比較
すると明らかなように、30〜60℃の範囲でMIL−
P−28809Aの規程値14μg−NaCl/inch2
以下であり、特に40℃近辺が望ましい。水洗の効果
は、表5で明らかなように、水洗を行わない場合、イオ
ン残渣は何れも30μg−NaCl/inch2以上となっ
ており、本発明の洗浄液で洗浄したのち、充分な水洗浄
を行わないと、イオン残渣は落ちきれないことがわか
る。従って、本発明の洗浄液、即ち非イオン界面活性剤
を望ましくは40重量%以下含有するREで、洗浄液温
度30〜60℃の範囲で洗浄した後、水を用いてプリン
ト基板の表面に残った洗浄液とイオン性物質をすすぎと
ることにより、良好な洗浄性が生じる。
【0020】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によればプ
リント基板上に残留するロジンフラックスをはじめとす
る不要物を、フロンやクロロカ−ボン等の有害物質を使
用することなく効果的に洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】界面活性剤濃度とイオン残渣との関係を示した
図である。
【図2】界面活性剤濃度とイオン残渣との関係を示した
図である。
【図3】界面活性剤濃度とイオン残渣との関係を示した
図である。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 構造式: 【化1】 で示される溶媒に、HLB( Hydrophile- Lipophile-
    Balance )が8〜14の範囲であって、添加量が40重
    量%以下の非イオン界面活性剤を添加したことを特徴と
    するプリント基板洗浄液。
  2. 【請求項2】 請求項に記載のプリント基板洗浄液を
    用いて30〜60℃の温度範囲で洗浄する工程と、水で
    リンスする工程とからなることを特徴とするプリント基
    板洗浄方法。
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