JP2950675B2 - 熱間加工性が優れた高力高導電性銅合金 - Google Patents

熱間加工性が優れた高力高導電性銅合金

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JP2950675B2
JP2950675B2 JP5842492A JP5842492A JP2950675B2 JP 2950675 B2 JP2950675 B2 JP 2950675B2 JP 5842492 A JP5842492 A JP 5842492A JP 5842492 A JP5842492 A JP 5842492A JP 2950675 B2 JP2950675 B2 JP 2950675B2
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は熱間加工性が優れた高力
高導電性銅合金に関し、更に詳述すると、Cu−Fe系
合金において熱間加工性を向上させた高力高導電性銅合
金に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、Cu−2.3重量%Fe−0.03
重量%Pからなる鉄含有銅合金は、導電性が優れている
と共に、耐熱性が良好な電気・電子部品用の高力銅合金
材料として知られている。鉄含有銅合金は、常温におい
て、Cu中におけるFeの固溶限以上の含有量でFeを
含有するため、連続鋳造又は半連続鋳造にて製造した鋳
塊中には未固溶鉄が存在する。この未固溶鉄を固溶させ
るためには、熱間加工前の熱処理において、930〜1000
℃の温度で2〜3時間の均質化処理を必要とする。ま
た、この合金には500〜700℃に脆性域があるため、この
温度域でのシャルピー衝撃値が低く、6kgfm/cm2以下
である。従って、熱間加工において、均質化処理を行わ
ない場合で、10kgfm/cm2以上の残留応力が存在する鋳
塊を脆性域内で30分以上保持すると、熱間割れを発生し
やすいという問題があった。
【0003】更に、近年、電気・電子部品は軽薄短小化
のニーズに伴い、例えば集積回路及び抵抗器等は電極数
の増加傾向及びプリント基盤への高密度実装の必要か
ら、従来の電極間ピッチが1/10インチ(2.54mm)から1/
20インチ(1.27mm)又は1/30インチ(0.847mm)へと小
さくなり、これに対応して端子及びコネクタの極間ピッ
チも全く同じように狭くなってきている。電気・電子部
品の電極間ピッチが小さくなると、湿気の結露又は水分
の侵入によって、極間の水分が付着した部分に銅イオン
が溶出し、電極間電位で還元される等の現象の繰り返し
により、Cuのマイグレーション現像が生じ、電極間を
短絡するという不具合が生ずる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】Cu−2.3重量%Fe
−0.03重量%P系の鉄含有銅合金は、鋳塊の状態では60
0℃付近の中高温域において、シャルピー衝撃値が大略5
kgfm/cm2と低いため、鋳塊を熱間圧延する前に均質化
処理するために、930〜1000℃の温度で数時間加熱する
必要がある。また、電気・電子部品の一部では高密度化
に伴う端子間距離の近接により、マイグレーション現像
が生じやすくなっている。
【0005】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたも
のであって、熱間加工工程における加熱中又は熱間加工
中に発生しやすい粒界割れを防止し、電気・電子部品の
高密度化に伴うマイグレーション現像の発生を抑制する
ことができる熱間加工性が優れた高力高導電性銅合金を
提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明に係る第1の熱間
加工性が優れた高力高導電性銅合金は、Fe;1.5〜3.0
重量%、P;0.001〜0.1重量%、及びAl;0.001〜0.2
重量%を含有し、残部がCu及び不可避的不純物からな
ることを特徴とする。
【0007】また、本発明に係る第2の熱間加工性が優
れた高力高導電性銅合金は、更に、この組成に加えて、
Zn;0.05〜1.0重量%(1.0重量%を含まず)を含有す
る。
【0008】更に、本発明に係る第3の熱間加工性が優
れた高力高導電性銅合金は、更に、前記第1の銅合金の
組成に加えて、Zn;1.0〜5.0重量%を含有する。
【0009】
【作用】本発明は、Cu−2.3重量%Fe−0.03重量%
P等の鉄含有銅合金が熱間加工工程における加熱中又は
熱間加工中に粒界割れを生じやすいという問題点及び電
気・電子部品の高密度化に伴いマイグレーション現像が
発生するという問題点を解決すべくなされたものであ
る。この目的を達成すべく、本発明者等の鋭意研究の結
果、従来の鉄含有銅合金より熱間加工性が良好で、930
〜1000℃での均質化処理を必要としないと共に、マイグ
レーション現像の発生を抑制した銅合金を開発したもの
である。
【0010】次に、本発明に係る高力高導電性銅合金の
成分含有理由及び組成限定理由について説明する。
【0011】Fe;1.5〜3.0重量% FeはCu合金中に微細に析出し、Cu合金の強度と耐
熱性を向上する効果がある。Fe含有量が1.5重量%未
満では、その効果は十分ではない。また、Fe含有量が
3.0重量%を超えると、導電率の低下が大きい。従っ
て、Fe含有量は1.5〜3.0重量%とする。
【0012】P;0.001〜0.1重量% Pは銅合金の溶解及び鋳造の過程において、大気中又は
原料中から溶湯中に混入する酸素を脱酸すると共に、鋳
造中の溶湯の湯流れを良くするために添加する。P含有
量が0.001重量%未満ではその効果は十分ではない。ま
た、P含有量が0.1重量%を超えると、導電率の低下が
大きく、加工性も劣化する。従って、P含有量は0.001
〜0.1重量%とする。
【0013】Al;0.001〜0.2重量% Alは原料中に含まれるか、又は炉材若しくは雰囲気か
ら混入するSを安定なAl化合物Al23の形で溶解時
に溶滓中に固着させ、Sを溶湯から分離除去する作用が
あり、鋳塊の熱間加工性を向上させるために必須の添加
元素である。Al含有量が0.001重量%未満ではSの分
離除去効果は十分でなく、Sが鋳塊中に残留する。この
Sの鋳塊中残留により、熱間加工に際して、加熱中又は
熱間加工中にSが粒界を移動して粒界割れを生じる。ま
た、Sが0.2重量%を超えて含有されると、半田濡れ性
の劣化及び導電率の低下が大きい。従って、Al含有量
は0.001〜0.2重量%とする。
【0014】Zn;0.05〜1.0重量%(1.0重量%を含ま
ず)(請求項2) 1.0〜5.0重量%(請求項3) 請求項2に記載の第2の銅合金においては、Znは錫及
び半田の剥離を抑制するために必須の元素である。Zn
含有量が0.05重量%未満では、このような効果は十分で
なく、逆にZnが1.0重量%以上含有されると、半田付
け性が低下する。従って、第2の銅合金においては、Z
n含有量は0.05〜1.0重量%(1.0重量%を含まず)とす
る。
【0015】請求項3に記載の第3の銅合金において
は、Znは、電圧が印加された電気・電子部品の極間に
水の侵入及び結露等が生じた場合にCuのマイグレーシ
ョン形成を抑制し、電流の漏洩を抑制するために必須元
素である。Zn含有量が1.0重量%未満では、黄銅と同
等の特性が得られず、逆にZnが5.0重量%を超えて含
有された場合は、耐マイグレーション性は向上するもの
の、導電率の低下が大きくなると共に、応力腐食割れを
起こしやすくなる等、好ましくない。従って、第3の銅
合金においては、Zn含有量は1.0〜5.0重量%とする。
【0016】なお、不可避的不純物としては、原料又は
溶解炉等から混入するPb,Ni,Sn,Si,As,
Cr,Ti,Zr,Mn,Co,Ag,Cd及びMg等
がある。これらの不純物は、総量で0.5重量%以下であ
れば、熱間加工性及びその他の製品に必要な特性を阻害
することはないので、その含有は許容される。
【0017】
【実施例】次に、本発明に係る熱間加工性が優れた高力
高導電性銅合金の実施例について説明する。下記表1に
示す組成の銅合金を小型電気炉を使用して、大気中にお
いて、木炭被覆化で溶解し、厚さ50mm、幅85mm、長さ18
0mmの鋳塊を溶製した。鋳塊の一部を高温シャルピー試
験に供し、残部は熱間圧延した後、冷間圧延と焼鈍の組
み合わせで枝材に調整する試験に供した。なお、表1に
おいて、Sのみは、添加配合量を示す。Cu原料中に存
在していたSの量は15ppmである。
【0018】
【表1】
【0019】高温シャルピー試験は、JISZ2242に準
じて、400〜900℃の100℃毎で、15℃/minの速度で昇温
し、15分間及び120分間保持した後、衝撃試験を実施し
た。そして、シャルピー衝撃値と、試験片の破面から熱
間加工性を評価した。
【0020】残部の鋳塊は表面を2mmの深さで面削した
後、熱間圧延に供した。圧延は温度950℃に15℃/分の
速度で昇温し、15分間及び120分間保持した後、実施し
た。1パスの圧下率は20%とし、厚さが46mmから15mmに
なるまで圧延した。
【0021】下記表2は、加熱後15分間保持した場合、
また表3は加熱後120分間保持した場合の鋳塊のシャル
ピー衝撃値、熱間圧延性及び残留Sの分析結果を示す。
【0022】表1のNo.1〜7に示す組成の本実施例合金
は、表2及び表3に示すように、Alの添加によって鋳
塊中の残留Sが少なく、シャルピー衝撃値が高い。ま
た、その破面は600℃及び900℃のいずれも延性破面であ
る。更に、熱間圧延性も良好で、表面割れ等は認められ
ない。一方、表1のNo.8〜13に示す比較例合金は、表2
及び表3に示すように、本実施例合金に比してシャルピ
ー衝撃値が低く、その破面も脆性破面を呈している。更
に、均質化処理を120分間実施した後では、シャルピー
衝撃値の向上及び熱間圧延性の改善は少し認められる
が、本質的には改善されていない。また、残留Sが多い
No.9の比較例合金は熱間圧延割れ性は改善されていな
い。
【0023】
【表2】
【0024】
【表3】
【0025】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、鋳
塊の均質化処理を行うことなく、熱間加工等が可能とな
り、中高温における脆性が改善された熱間加工性が優れ
た高力高導電性銅合金を提供することができる。従っ
て、本発明合金は品質が向上すると共に、歩留まりが向
上し、製造コストを低減することができる等の効果を奏
すると共に、更に耐マイグレーション性も改善すること
ができる。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C22C 9/00 - 9/10

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Fe;1.5〜3.0重量%、P;0.001〜0.1
    重量%、及びAl;0.001〜0.2重量%を含有し、残部が
    Cu及び不可避的不純物からなることを特徴とする熱間
    加工性が優れた高力高導電性銅合金。
  2. 【請求項2】 Fe;1.5〜3.0重量%、P;0.001〜0.1
    重量%、Al;0.001〜0.2重量%、及びZn;0.05〜1.
    0重量%(1.0重量%を含まず)を含有し、残部がCu及
    び不可避不純物からなることを特徴とする熱間加工性が
    優れた高力高導電性銅合金。
  3. 【請求項3】 Fe;1.5〜3.0重量%、P;0.001〜0.1
    重量%、Al;0.001〜0.2重量%、及びZn;1.0〜5.0
    重量%を含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる
    ことを特徴とする熱間加工性と耐マイグレーション性が
    優れた高力高導電性銅合金。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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