JP2950522B2 - 混合吸収液及びそれを用いた吸収式熱変換装置 - Google Patents

混合吸収液及びそれを用いた吸収式熱変換装置

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JP2950522B2
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    • Y02B30/62Absorption based systems

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  • Sorption Type Refrigeration Machines (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、吸収式熱変換器用混合
吸収液とそれを用いた吸収式熱変換装置に関し、詳しく
は、吸収液の結晶化防止に有効な混合吸収液とそれを用
いた吸収式熱変換装置に関する。吸収式熱変換装置は特
に限定されるものではないが、吸収式空調装置、給湯装
置、ヒートポンプあるいは蓄熱装置等が好ましい利用分
野である。なお、本発明において、「吸収液」とは蓄熱
装置に用いる「蓄熱液」をも当然に含んでいる。
【0002】
【従来の技術】従来、吸収式熱変換装置において、その
熱媒体(熱媒又は冷媒)には水、吸収液には臭化リチウ
ム水溶液が利用されている。この吸収液は温度10℃の溶
解度が60重量%程度と比較的低いために、その濃度が通
常運転時は62重量%以上、停止時は60重量%以上になる
と、結晶化が生じる。このため、それ以上に濃度を上げ
られない。その結果、吸収器と蒸発器の温度差を実用的
には40℃程度以上にはできなかった。従って、冷房時に
は、吸収器を十分低い温度まで冷すために、冷却塔から
の水を用いる水冷式にする必要があった。そのため、冷
却塔設備、配管の費用がかかると共に、設備の設置場所
に制約を受け、かつ、水消費の点で問題が有り、特に家
庭用空調には実用上不適であった。また、暖房時には、
特に寒冷地では、外気を熱源とするヒ−トポンプの蒸発
器が極端に低温になり、吸収液の濃度が上げられないた
め、吸収器から得られる温水の温度が暖房に必要な温度
まで上げられず、十分暖房できない欠点があった。
【0003】さらに、従来は吸収液の濃度が溶解度近傍
で運転しているため、負荷変化又は停止時に局部的に吸
収液の結晶化が起こり、運転不能になるトラブルや、そ
れによる吸収液の局部濃縮等により、濃度差による局部
腐食が起こる危険が有った。吸収液の溶解度を上げるた
めに、例えば特開昭57-190634 号公報のごとく塩化亜鉛
等の亜鉛化合物を添加する方法が提案されているが、溶
解度の増大と共に水蒸気吸収性が低下し、より高濃度で
使用する必要が有り、粘性や材料腐食性の増大と毒性等
の課題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、吸収
液の水蒸気吸収性の低下が少なくかつ溶解度を増大させ
ることにより、運転時の吸収液の濃度を上げ、吸収器と
蒸発器の温度差を大きくできるようにすることにある。
これにより例えば空冷方式の冷房及び外気熱源とするヒ
−トポンプ暖房を実用的に可能とし、かつ結晶化による
運転不能や局部腐食を防止することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明は、吸収剤の主成分が臭化リチウムである
吸収式熱変換装置に用いる吸収液において、該臭化リチ
ウムにカリウム塩を添加することを特徴とする。
【0006】該カリウム塩が塩化カリウムで、その添加
量が水溶液に対し重量で0.1 から2%の範囲であるこ
と、またカリウム塩が臭化カリウムで、その添加量が水
溶液に対し0.1 から3%の範囲であることは特に好まし
い態様である。さらに、溶解度の増大を促進させるため
に、該臭化リチウムに、カリウム塩とそれ以外の結晶化
防止剤として硝酸塩を添加したこと、該硝酸塩が硝酸リ
チウムで、その添加量が水溶液に対し重量で0.1 から8
%の範囲であることも特に好ましい態様である。
【0007】また、混合液を用いた吸収式熱変換装置と
しては、吸収式空調装置、給湯装置、ヒートポンプある
いは蓄熱装置等をあげることができる。
【0008】
【作用】本発明者等は各種実験の結果、上述のように臭
化リチウムに塩化カリウムや臭化カリウム等のカリウム
塩の1種以上を添加すると水蒸気吸収性を低下させずに
溶解度のみが増大することを見出した。さらに硝酸リチ
ウム等の硝酸塩の添加では溶解度の大幅増大と共に、水
蒸気吸収性が低下するが、さらに上記カリウム塩を添加
すると、水蒸気吸収性の低下を防止できることを見出し
た。そのことにより、吸収器と蒸発器の温度差を、結晶
化させることなく、従来より10℃程度増大できる。その
結果、冷房時の空冷方式が可能となり、設備を安価で小
型にできると共に、水供給が不用になるため、設置場所
の限定が無く、特に家庭用空調の実用化に好適である。
また、暖房時の外気熱源ヒ−トポンプ暖房が実用的に可
能となり、従来の燃焼暖房に比べ、50%の省エネルギ−
が図れる。さらに、吸収液の結晶化による運転不能や局
所腐食が防止でき、装置の信頼性が大幅に向上できる。
【0009】
【実施例】以下、本発明である混合吸収液およびそれを
用いた吸収式熱変換装置を実施例を用いて詳細に説明す
る。臭化リチウムに各種塩類を添加したときの、溶解度
特性、水蒸気吸収性、そして粘性を測定評価した結果を
表1に示す。溶解度特性は、温度10℃における溶解度S
10(重量%)で表し、この値が高いほど吸収液としては
優れている。水蒸気吸収性は、実機の吸収器条件を模擬
し、圧力 6.7mmHgで温度 45 ℃で水蒸気を吸収できる吸
収液濃度C(重量%)で表しており、この条件での上記
濃度は実機の冷房運転に必要な吸収液の運転濃度に対応
しており、この値が低いほど吸収液としては優れている
といえる。
【0010】また一般に吸収液は溶解度が増大すると、
水蒸気吸収性が低下するものが多く、例え溶解度が増大
しても、水蒸気吸収性が低下した場合には、その分濃い
吸収液を使う必要が有り、結果として結晶化防止効果は
低下する。従って結晶化防止効果を表すには溶解度S10
と運転濃度Cの差ΔS(重量%)を用いるのが実情に則
したものであり、その値が大きいほど結晶しにくいこと
を表すこととなる。
【0011】また、粘性μ(cP)は温度40℃での濃度Cの
値で評価し、低いほど吸収伝熱や液輸送の面で有利であ
る。
【0012】
【表1】
【0013】
【実施例1】 カリウム塩添加の効果(No.1,2,3) No.2は塩化カリウム、No.3は臭化カリウムを添加した結
果であり、臭化リチウムのみの場合(No.1)に比べ、両者
とも溶解度が高く運転濃度は逆に低く結晶防止効果は大
きい。また、粘性も低く優れている。この効果は添加量
が増すほど増大するが、ある量を超えると部分沈殿現象
が生じる。それが起きない添加量の有効範囲は、吸収液
全量に対し塩化カリウムで0.1から2重量%、臭化カリウ
ムで0.1から3重量%である。
【0014】
【実施例2】 カリウム塩、硝酸塩混合添加の効果 (N
o.1,4,5,6) 比較のためNo.4に、硝酸リチウムを添加したときの結果
を示すが、溶解度は大幅に増大するが、逆に水蒸気吸収
性は低下するため、結晶防止効果はあまり増大せず、粘
性も増大する。それに塩化カリウム(No.5)、臭化カリウ
ム(No.6)を混合添加すると、溶解度は変わらず、水蒸気
吸収性が向上し、運転濃度が低下するため、結晶防止効
果が増大する。また粘性も低下する傾向にある。
【0015】溶解度の増大は、混合(No.5,6)系では、硝
酸リチウムの添加量が多いほど大きいが、多すぎると部
分結晶沈殿があり、それが起きない有効添加量は、吸収
液全量に対し0.1 から8 重量%である。また水蒸気吸収
性と粘性の改善効果は、カリウム塩が多いほど大きい
が、硝酸リチウムと同様の部分沈殿現象が有り、それが
起きない添加量の有効範囲は、吸収液全量に対し塩化カ
リウムで0.1 から2 重量%、臭化カリウムで0.1 から3
重量%で、実施例−1と同じ範囲である。
【0016】
【実施例3】 複数カリウム塩添加の効果 (No.1,7) No.7は塩化カリウムと臭化カリウムを混合添加したとき
の結果を示すが、結晶防止効果及び粘性低減効果は実施
例−1と同様で有り、特に溶解度増大効果が大きい。
【0017】
【実施例4】 複数カリウム塩と硝酸塩の混合添加の効
果(No.1,8)No.8は塩化カリウムと臭化カリウムと硝酸
リチウムを混合添加したときの結果を示すが、粘性低減
効果は実施例−1より低下するが、溶解度増大効果が特
に大きく、結晶防止効果が大きい。なお、本発明で使用
する硝酸塩は、硝酸リチウムに限定されず、硝酸ナトリ
ウム、硝酸亜鉛、硝酸アルミニウム、硝酸カリウム、硝
酸カルシウム、硝酸マグネシウム等の硝酸塩であっても
よい。
【0018】次に、本発明の混合吸収液を用いた吸収式
熱変換装置について、実施例に基づき説明する。図1
は、吸収式熱変換装置の一例としての吸収式空調装置を
示している。装置自体は従来公知のものと同様であり、
蒸発器1 、吸収器2 、高温再生器4 、低温再生器5 、蒸
発器6 、熱交換器3 より構成される。基本的な相違は本
発明では吸収液20、21、22として上記実施例の混合吸収
液を用いた点である。
【0019】冷房を例にとりその作動を説明する。蒸発
器1 の伝熱管100 の表面に冷媒である水26が冷媒ポンプ
7 により散布され、水が蒸発しその蒸発潜熱により伝熱
管100 内の冷水10が冷却され、その冷水10が冷房に利用
される。発生した水蒸気25は吸収器2 へ入り、そこの伝
熱管101 に散布されている混合吸収液20に吸収される。
吸収液は水蒸気の吸収により発熱するが、伝熱管101 内
を流れる冷却水11により冷却される。水蒸気を吸収して
希釈された吸収液20は吸収液ポンプ8 により熱交換器3
へ送られ予熱されて、一部は低温再生器5 へ、残りは高
温再生器4 送られる。高温再生器4 では燃料12の燃焼
により加熱され、吸収液の水分が蒸発し濃縮される。発
生した水蒸気23は低温再生器5 の伝熱管103 内に送ら
れ、吸収液20の加熱源として利用されて凝縮した後、水
26となって蒸発器1 へ送られる。低温再生器5 では、吸
収液が加熱濃縮され、発生した水蒸気24は凝縮器6 で伝
熱管104 内を流れる冷却水11で冷却されて凝縮した後、
水26となって蒸発器1 へ送られる。低温再生器5 と高温
再生器4 で濃縮された吸収液21、22は熱交換器3 で熱回
収冷却された後、再び吸収器2 へ戻される。
【0020】この装置は高温再生器4を加熱することに
より、蒸発器1より冷水10を得るものであり、その熱効
率は熱交換器3 における熱回収量に大きく依存し、熱効
率の向上には、熱交換器性能の向上と吸収液の流量の低
減があるが、前者は大型化やコスト増大が起こる。例え
ば実施例-4の混合吸収液を用いることにより、吸収液の
濃度を4.5%増大できるため、吸収器2 での濃度低下幅を
従来の3%から7.5 %へ2.5 倍にできるため、吸収液の
流量を従来より60%低減でき、大幅に熱効率を向上でき
る。
【0021】なお、図1に示した吸収式空調装置は二重
効用パラレルフロー(吸収液が吸収器から高温再生器と
低温再生器へ並行して流れる) 型であるが、他にいわゆ
る一重効用、三重効用またはシリーズフロー(吸収液が
高温再生器から低温再生器へ直列に流れる) でも、さら
には加熱源が水蒸気または温水等でも、同様の効果があ
ることは明らかであり、本発明の混合吸収液を用いる吸
収式熱変換装置は図1に示す装置の方式等に限定される
ものではない。
【0022】さらに装置の吸収器と凝縮器の冷却源に空
気を用いたとき(空冷) は冷却温度が水に比べ5 ℃以上
増大するため、より高濃度(従来より2ないし5%程
度) で吸収液を運転する必要があり、従来の吸収液では
溶解度が低いため、結晶化の恐れがあり、困難であっ
た。本発明の高溶解性混合吸収液を用いれば、その問題
を解消でき、空冷吸収式空調装置が実現できる。
【0023】また本発明の高溶解性混合吸収液を用いた
吸収式ヒートポンプでは、吸収器と蒸発器の温度差が高
くとれるために、寒冷地で用いても吸収器から得られる
出熱温度が高くとれ、暖房効果が確保できる。図2は本
発明の混合吸収液を蓄熱液として用いた蓄熱装置を示し
ている。この装置自体も従来公知のものと同様であり、
凝縮蒸発器31、再生吸収器32、冷媒タンク33、蓄熱剤タ
ンク34より構成される。蓄熱剤タンク34内の混合蓄熱液
はポンプにより再生吸収器32に送られ加熱水35により水
分が蒸発し、そこで濃縮され蓄熱剤タンク34に還流す
る。一方水蒸気は凝縮蒸発器31に移動し、冷却水36によ
り冷却され冷媒タンク33に流入する。このような蓄熱装
置に本発明の混合蓄熱液を用いることにより、前記した
吸収式空調装置におけると同様にその熱効率を大幅に向
上させることができる。
【0024】
【発明の効果】本発明により、冷房時の空冷方式が可能
となり、設備を安価で小型にできると共に、水供給が不
用になるため、設置場所の限定が無く、特に家庭用空調
の実用化に好適である。また、暖房時の外気熱源ヒ−ト
ポンプ暖房が実用的に可能となり、従来の燃焼暖房に比
べ、50%の省エネルギ−が図れる。さらに、吸収液の結
晶化による運転不能や局所腐食が防止でき、装置の信頼
性が大幅に向上できる。また、蓄熱装置の蓄熱液として
用いた場合にもその熱効率を大幅に向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による混合吸収液を用いた二重効用パラ
レルフロー型吸収式空調装置の概念図。
【図2】本発明による混合吸収液を蓄熱液として用いた
蓄熱装置の概念図。
【符号の説明】
1…蒸発器、 2…吸収器、3…熱交換器、4…高温
再生器 5…低温再生器、6…凝縮器、26…水 20、21…
混合吸収液
フロントページの続き (72)発明者 山田 章 茨城県日立市久慈町4026番地 株式会社 日立製作所 日立研究所内 (56)参考文献 特開 平2−169967(JP,A) 特開 平2−298767(JP,A) 特表 昭59−501750(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) F25B 15/00 C09K 5/04

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 吸収剤の主成分が臭化リチウムである吸
    収式熱変換装置に用いる吸収液に、水溶液に対し0.1か
    ら2重量%の塩化カリウム及び/又は水溶液に対し0.1か
    ら3重量%の臭化カリウムを添加したことを特徴とする
    混合吸収液。
  2. 【請求項2】 さらに硝酸塩を添加したことを特徴とす
    る請求項1記載の混合吸収液。
  3. 【請求項3】 硝酸塩が硝酸リチウムで、その添加量が
    水溶液に対し重量で0.1から8%の範囲であることを特徴
    とする請求項2に記載の混合吸収液。
  4. 【請求項4】 吸収剤と熱媒体よりなる吸収液から熱媒
    体の一部を分離する吸収液濃縮手段と、該吸収液濃縮手
    段で分離された熱媒体から蒸気を発生させる蒸発室と該
    蒸発室で得られた蒸気を前記吸収液濃縮手段で濃縮され
    た吸収液に吸収させる希釈室とを備えた吸収液希釈手段
    とを有し、前記吸収液に請求項1〜3のいずれか1項に
    記載の混合吸収液を用いたことを特徴とする吸収式熱変
    換装置。
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JP2008261618A (ja) * 2007-03-16 2008-10-30 Osaka Gas Co Ltd 吸収溶液組成物および吸収式冷温水機の運転方法
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