JP2008261618A - 吸収溶液組成物および吸収式冷温水機の運転方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】臭化リチウムを含む吸収溶液組成物であって、この組成物と接触する鉄材の表面電位を安定的に再不動態化電位より低く保つことが可能であり、酸素等の混入により影響を受け難い吸収溶液組成物を得る。
【解決手段】臭化リチウムを含み、吸収式冷温水機用吸収液として用いられる吸収溶液組成物において、前記吸収溶液組成物が、酸素元素を有するアルミニウム化合物を含有させる。
【選択図】図4
【解決手段】臭化リチウムを含み、吸収式冷温水機用吸収液として用いられる吸収溶液組成物において、前記吸収溶液組成物が、酸素元素を有するアルミニウム化合物を含有させる。
【選択図】図4
Description
本発明は、臭化リチウムを含み、吸収式冷温水機用吸収液として用いられる吸収溶液組成物に関するとともに、このような吸収溶液組成物を吸収液として作動する吸収式冷温水機の運転方法に関する。
この種の吸収式冷温水機の吸収液に含まれる臭化リチウム(LiBr)は腐食性を有し、例えば、鉄材の装置材料と高温で接触する場合、特にこれを腐食しやすく、そのため装置を破損する恐れがある。又、水素ガスの発生を伴いやすいので、真空に近い減圧下の密閉空間で機能する吸収式冷温水機本来の熱交換機能を損なう恐れがある。装置材料をこのような腐食から守るために、インヒビター(腐食抑制剤)を添加した吸収式冷温水機の吸収溶液組成物が用いられている。このようなインヒビターとしては、例えば、水酸化リチウム(LiOH)とモリブデン酸リチウム(Li2MoO4)から成るインヒビターが用いられ(特許文献1)、装置材料である鉄材の表面に不動態皮膜を形成して、腐食や水素ガスの発生を抑制する試みがなされている。
さらに、この種のインヒビターとして、酸化剤系および還元剤系の酸化アンチモン(Sb2O5及びSb2O3)を使用することも提案されている(特許文献2)。
さらに、この種のインヒビターとして、酸化剤系および還元剤系の酸化アンチモン(Sb2O5及びSb2O3)を使用することも提案されている(特許文献2)。
ところが、特許文献1に開示の技術では、インヒビターであるモリブデン酸リチウム等が不足すると鉄材の表面の電位が上昇し、再不動態化電位(局部腐食発生の下限電位)を越え、局部腐食発生の可能性が増大する問題がある。このため、特許文献1に示すように還元剤(亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)等)を添加することが提案されているが、酸素等の混入によりこれらも消費されてしまい、徐々に効果が得られなくなる場合もある。
一方、特許文献2に開示の技術では、その用途が比較的限定されるとともに、酸化剤系インヒビターおよび還元剤系インヒビターの双方の濃度を適切に調整しなくては効果が得られないため、濃度管理に非常に手間がかかる、という問題がある。
一方、特許文献2に開示の技術では、その用途が比較的限定されるとともに、酸化剤系インヒビターおよび還元剤系インヒビターの双方の濃度を適切に調整しなくては効果が得られないため、濃度管理に非常に手間がかかる、という問題がある。
本願の目的は、臭化リチウムを含む吸収溶液組成物であって、この組成物と接触する鉄材の表面電位を安定的に再不動態化電位より低く保つことが可能であり、酸素等の混入により影響を受け難い吸収溶液組成物を得ることにある。
また、このような吸収溶液組成物を得て、吸収式冷温水機の運転状態を長期に亘って良好に保つことができる吸収器冷温水機の運転方法を得ることにある。
また、このような吸収溶液組成物を得て、吸収式冷温水機の運転状態を長期に亘って良好に保つことができる吸収器冷温水機の運転方法を得ることにある。
上記目的を達成するための、臭化リチウムを含み、吸収式冷温水機用吸収液として用いられる吸収溶液組成物の特徴構成は、前記吸収溶液組成物が、酸素元素を有するアルミニウム化合物を含有してなることにある。
この吸収溶液組成物を吸収式冷温水機に使用する場合、臭化リチウムを含む吸収溶液組成物を吸収液として働く吸収式冷温水機の運転方法の特徴手段として、前記吸収溶液組成物に酸素元素を有するアルミニウム化合物を添加して、吸収式冷温水機を働かせることとなる。
この吸収溶液組成物を吸収式冷温水機に使用する場合、臭化リチウムを含む吸収溶液組成物を吸収液として働く吸収式冷温水機の運転方法の特徴手段として、前記吸収溶液組成物に酸素元素を有するアルミニウム化合物を添加して、吸収式冷温水機を働かせることとなる。
このように、酸素元素を有するアルミニウム化合物を添加することで、鉄材の電位を再不動態化電位より低く保つことが可能となり、局部腐食(すき間腐食)を抑えることができる。この事象は、今般発明者らが鋭意研究の末に見出した新規な事項である。また、この化合物は、先に説明した亜硫酸ナトリウムのように酸素により消費されてしまうことがないため、たとえ、酸素の侵入が発生しても安定的に良好な運転状態を保つことができる。
この腐食防止メカニズムの詳細は明確でないが、発明者らは、下記する検証により、吸収溶液組成物に含有される酸素元素を有するアルミニウム化合物中のAlが濃厚臭化リチウム水溶液中に一旦溶解し、鉄材表面において結晶性の低いγ−アルミナの形で酸化皮膜内のFe3O4の結晶の隙間を埋める形で再析出して、被膜を緻密化させて防食効果(具体的には、カソード反応の抑制による表面電位の低下)を発揮しているものと推定している。
従って、腐食によるトラブルを減少させることが可能となり、従来より長期に亘って良好な運転状態を維持できる。また、従来の還元剤を用いた場合と比較して、溶存酸素との反応による消費がないため、補充が不要となりメンテナンスコストの削減が可能となる。
この腐食防止メカニズムの詳細は明確でないが、発明者らは、下記する検証により、吸収溶液組成物に含有される酸素元素を有するアルミニウム化合物中のAlが濃厚臭化リチウム水溶液中に一旦溶解し、鉄材表面において結晶性の低いγ−アルミナの形で酸化皮膜内のFe3O4の結晶の隙間を埋める形で再析出して、被膜を緻密化させて防食効果(具体的には、カソード反応の抑制による表面電位の低下)を発揮しているものと推定している。
従って、腐食によるトラブルを減少させることが可能となり、従来より長期に亘って良好な運転状態を維持できる。また、従来の還元剤を用いた場合と比較して、溶存酸素との反応による消費がないため、補充が不要となりメンテナンスコストの削減が可能となる。
前記酸素元素を有するアルミニウム化合物としては、アルミナ、アルミン酸塩、水酸化アルミニウムから選択される一種以上の化合物とすることができる。ここで、アルミン酸塩としては、アルミン酸リチウム、アルミン酸ナトリウム等を挙げることができる。
これら比較的安定した物質を臭化リチウムを含む吸収溶液組成物に添加するだけで本願の目的である腐食防止の効果を得ることができる。特にアルミナは、安定且つ入手容易な物質であり、これを添加するだけで本願の目的を達成できることから従来技術に対して大きな技術的進歩を奏するといえる。
これら比較的安定した物質を臭化リチウムを含む吸収溶液組成物に添加するだけで本願の目的である腐食防止の効果を得ることができる。特にアルミナは、安定且つ入手容易な物質であり、これを添加するだけで本願の目的を達成できることから従来技術に対して大きな技術的進歩を奏するといえる。
酸素元素を有するアルミニウム化合物としてのアルミナを添加する場合、300ppm以上、添加することが好ましい。
この濃度以下でもある程度の効果を得ることができるが、後に図2を用いて説明するように、300ppm以上添加しておくと、再不動態化電位より低く、亜硫酸ナトリウムを添加した場合の電位よりさらに低い電位に、鉄材の表面電位を保つことが可能となる。添加量の上限に関しては特に制限はないが、溶液中に固体として残留するだけである。
この濃度以下でもある程度の効果を得ることができるが、後に図2を用いて説明するように、300ppm以上添加しておくと、再不動態化電位より低く、亜硫酸ナトリウムを添加した場合の電位よりさらに低い電位に、鉄材の表面電位を保つことが可能となる。添加量の上限に関しては特に制限はないが、溶液中に固体として残留するだけである。
ここで、インヒビターとしてのモリブデン酸塩(代表的にはモリブデン酸リチウム)が含有されていると、このインヒビターにより腐食防止能を有効に得ながら、さらに安定な系を得ることができる。
本願の吸収溶液組成物の有用性について、吸収液溶液組成物内に試験片を浸漬する浸漬試験を行い、その検証をおこなった。
検証にあたっては、電位測定および、浸漬試験を行い、以下の項目についてそれぞれ検証した。
1:酸素元素を有するアルミニウム化合物の添加の効果
a:添加後の経時的な表面電位の変化
b:添加濃度の影響
c:カソード分極特性
d:化合物種による影響
2:検証後における金属表面状態の分析
1:酸素元素を有するアルミニウム化合物の添加の効果
a:添加後の経時的な表面電位の変化
b:添加濃度の影響
c:カソード分極特性
d:化合物種による影響
2:検証後における金属表面状態の分析
以下検証条件を箇条書する。
1:検証対象とした吸収溶液組成物
主組成物 61%臭化リチウム水溶液
添加物
インヒビター:モリブデン酸リチウム(300ppm)
インヒビター(塩基度調整用):水酸化リチウム(0.12N)
不純物:マグネタイト(5700ppm)
温度 157℃
脱気条件 アルゴンガス雰囲気
2:検証対象とした試験片
黒皮付き炭素鋼(SS400)
組成(黒皮部を除く):
C:0.11,Si:0.05,Mn:0.31,P:0.018,S:0.009(質量%)
サイズ:幅30mm×長さ30mm×厚み2t(電位測定時)
幅50mm×長さ80mm×厚み2t(浸漬試験時)
この黒皮付き炭素鋼は、吸収式冷温水機を構成する機器の材料である炭素鋼の代表例である。
1:検証対象とした吸収溶液組成物
主組成物 61%臭化リチウム水溶液
添加物
インヒビター:モリブデン酸リチウム(300ppm)
インヒビター(塩基度調整用):水酸化リチウム(0.12N)
不純物:マグネタイト(5700ppm)
温度 157℃
脱気条件 アルゴンガス雰囲気
2:検証対象とした試験片
黒皮付き炭素鋼(SS400)
組成(黒皮部を除く):
C:0.11,Si:0.05,Mn:0.31,P:0.018,S:0.009(質量%)
サイズ:幅30mm×長さ30mm×厚み2t(電位測定時)
幅50mm×長さ80mm×厚み2t(浸漬試験時)
この黒皮付き炭素鋼は、吸収式冷温水機を構成する機器の材料である炭素鋼の代表例である。
以下、検証結果について、図1〜6を参照しながら説明する。
1:酸素元素を有するアルミニウム化合物の添加の効果
a:添加後の経時的な表面電位の変化
この検証にあたっては、試験面(黒皮面)以外を絶縁した試験片を溶液中に浸漬し157℃に昇温後24時間の電位変化を測定し、24時間後の電位を自然電位とした。また、再不動態化電位を求める際には、試験面を#800にて研磨した研磨鋼を用いて20mV/minの分極速度でアノード分極を行い、アノード電流が10mA/cm2に達し、端面(絶縁コーティング処理部)にてすきま腐食が発生したところで電位走査を反転し0.3mV/minの分極速度で電位を降下させ、アノード電流がゼロとなった電位を腐食すき間再不動態化電位とした。
図1は、上記の吸収溶液組成物に試験片を浸漬した場合と、上記の吸収溶液組成物に10g/リットル(この濃度は、ほぼ6000ppmに相当する)の割合でアルミナ(粒径30μmの粉末)を混合した組成物に試験片を浸漬した場合とにおける表面電位の変化を示したものである。同図において、横軸は試験開始からの経過時間(Hr単位)を、縦軸は電位(V.vs.Ag/AgCl)を示している。さらに、実線でアルミナを添加した場合の結果(図上、線種に関して『アルミナあり』と記載するとともに、線に対応して「アルミナあり」と付記)を、一点破線で、アルミナを添加していない場合の結果(図上、線種に関して『アルミナなし』と記載するとともに、線に対応して「アルミナなし」と付記)を示した。また同図の縦方向中間位置に破線で、再不動態化電位を示している。
1:酸素元素を有するアルミニウム化合物の添加の効果
a:添加後の経時的な表面電位の変化
この検証にあたっては、試験面(黒皮面)以外を絶縁した試験片を溶液中に浸漬し157℃に昇温後24時間の電位変化を測定し、24時間後の電位を自然電位とした。また、再不動態化電位を求める際には、試験面を#800にて研磨した研磨鋼を用いて20mV/minの分極速度でアノード分極を行い、アノード電流が10mA/cm2に達し、端面(絶縁コーティング処理部)にてすきま腐食が発生したところで電位走査を反転し0.3mV/minの分極速度で電位を降下させ、アノード電流がゼロとなった電位を腐食すき間再不動態化電位とした。
図1は、上記の吸収溶液組成物に試験片を浸漬した場合と、上記の吸収溶液組成物に10g/リットル(この濃度は、ほぼ6000ppmに相当する)の割合でアルミナ(粒径30μmの粉末)を混合した組成物に試験片を浸漬した場合とにおける表面電位の変化を示したものである。同図において、横軸は試験開始からの経過時間(Hr単位)を、縦軸は電位(V.vs.Ag/AgCl)を示している。さらに、実線でアルミナを添加した場合の結果(図上、線種に関して『アルミナあり』と記載するとともに、線に対応して「アルミナあり」と付記)を、一点破線で、アルミナを添加していない場合の結果(図上、線種に関して『アルミナなし』と記載するとともに、線に対応して「アルミナなし」と付記)を示した。また同図の縦方向中間位置に破線で、再不動態化電位を示している。
図から判明するように、試験の開始に伴って、表面電位は再不動態化電位を超えて低い側に落ち着く。即ち、試験開始後、7時間程度で、事象の収束安定が認められる。そして、アルミナを添加した場合(実線)と、添加しない場合(一点鎖線)とを比較すると、後者の場合が、再不動態化電位より僅かに低い側に落ち着いているのに対して、前者の場合は、0.15V程度さらに低い側に落ち着いている。従って、アルミナを添加することにより、従来にもまして、局部腐食(すき間腐食)に有効であることが判る。
b:添加濃度の影響
図1と同様な浸漬試験に関し、添加するアルミナ濃度を変更した結果を図2に示した。この図にあっても、横軸は試験開始後の経過時間(Hr)を、縦軸は表面電位(V.vsAg/AgCl)を示している。横軸を試験開始後6時間以降としているのは、この時間以降において系が安定するためである。
この図には、先の再不動態化電位(この電位は局部腐食発生の下限電位でもある)を破線で示すとともに、インヒビターとしてのモリブデン酸リチウムに加えて亜硫酸ナトリウムを300ppm添加した場合(アルミナは添加していないため、従来技術の課題として説明した場合に相当する)の表面電位を二点鎖線で示した。
図1と同様な浸漬試験に関し、添加するアルミナ濃度を変更した結果を図2に示した。この図にあっても、横軸は試験開始後の経過時間(Hr)を、縦軸は表面電位(V.vsAg/AgCl)を示している。横軸を試験開始後6時間以降としているのは、この時間以降において系が安定するためである。
この図には、先の再不動態化電位(この電位は局部腐食発生の下限電位でもある)を破線で示すとともに、インヒビターとしてのモリブデン酸リチウムに加えて亜硫酸ナトリウムを300ppm添加した場合(アルミナは添加していないため、従来技術の課題として説明した場合に相当する)の表面電位を二点鎖線で示した。
同図、実線でアルミナの添加量を変えた場合の結果を示した。各線の右端近傍に、アルミナの添加量(下側から6000ppm、600ppm、300ppm)を示した。結果、少なくともアルミナを300ppm程度添加することにより、従来技術であるとともに、現在実用に供されているモリブデン酸リチウム−亜硫酸ナトリウムを添加した溶液組成物相当、あるいは、それ以上に、電位を低下させることができ局部腐食(すき間腐食)を抑えることができることが判る。
c:カソード分極特性
試験片として、研磨鋼(上記黒皮付き炭素鋼の表面を研磨して、黒皮を除いたもの)と、黒皮付き炭素鋼を対象として、そのカソード分極曲線を求めた。
図3(a)が研磨鋼の結果であり、図3(b)が黒皮付き炭素鋼の結果である。これらの図において、アルミナ6000ppmを添加した場合を実線(アルミナ添加(6000ppm)と付記)で、添加しない場合を一点鎖線(添加なしと付記)で示している。これらの図で、横軸は電流密度(μA/cm2)を、縦軸は電位(V.vs.Ag/AgCl)を示している。
これらの図から判明するように、研磨鋼及び黒皮付き炭素鋼の両方において、アルミナの添加により、カソード電流が全電位域に渡って大幅に抑制されており、カソード反応が抑制されることが判る。
試験片として、研磨鋼(上記黒皮付き炭素鋼の表面を研磨して、黒皮を除いたもの)と、黒皮付き炭素鋼を対象として、そのカソード分極曲線を求めた。
図3(a)が研磨鋼の結果であり、図3(b)が黒皮付き炭素鋼の結果である。これらの図において、アルミナ6000ppmを添加した場合を実線(アルミナ添加(6000ppm)と付記)で、添加しない場合を一点鎖線(添加なしと付記)で示している。これらの図で、横軸は電流密度(μA/cm2)を、縦軸は電位(V.vs.Ag/AgCl)を示している。
これらの図から判明するように、研磨鋼及び黒皮付き炭素鋼の両方において、アルミナの添加により、カソード電流が全電位域に渡って大幅に抑制されており、カソード反応が抑制されることが判る。
d:化合物種による影響
これまで説明してきた例にあっては、本願独特の酸素元素を有するアルミニウム化合物としてアルミナを採用する例を示したが、アルミナとアルミナ以外の例について検証した結果を示したのが、図4である。
この検証にあたっては、黒皮試験片表面の一部を研磨後、研磨部にすき間を作製した状態で溶液中に浸漬し、157℃において30日間維持し、取り出し後のすき間部での最大腐食深さを測定した(各サンプル数:10)。
検証対象の化合物は、アルミナ、アルミン酸塩(アルミン酸リチウム)、水酸化アルミニウムとし、アルミナについて、その濃度を変えた結果を示している。図4において、横軸方向に化合物種及びその濃度を示し、縦軸に最大局部腐食深さ(μm)を示した。図に示される各点が、単一の局部腐食部位に対応している。ここで、「なし」と記載しているのは、酸素元素を有するアルミニウム化合物を添加していない先に説明した吸収溶液組成物(インヒビターとしてモリブデン酸リチウムを含む)のものである。
これまで説明してきた例にあっては、本願独特の酸素元素を有するアルミニウム化合物としてアルミナを採用する例を示したが、アルミナとアルミナ以外の例について検証した結果を示したのが、図4である。
この検証にあたっては、黒皮試験片表面の一部を研磨後、研磨部にすき間を作製した状態で溶液中に浸漬し、157℃において30日間維持し、取り出し後のすき間部での最大腐食深さを測定した(各サンプル数:10)。
検証対象の化合物は、アルミナ、アルミン酸塩(アルミン酸リチウム)、水酸化アルミニウムとし、アルミナについて、その濃度を変えた結果を示している。図4において、横軸方向に化合物種及びその濃度を示し、縦軸に最大局部腐食深さ(μm)を示した。図に示される各点が、単一の局部腐食部位に対応している。ここで、「なし」と記載しているのは、酸素元素を有するアルミニウム化合物を添加していない先に説明した吸収溶液組成物(インヒビターとしてモリブデン酸リチウムを含む)のものである。
さて、図4に示す結果からも判明するように、酸素元素を有するアルミニウム化合物を添加しない場合は、局部的に比較的深い腐食が発生することが判る。さらに、今回検証の対象とした全ての化合物について、局部腐食の発生が抑制されていることが判る。その程度は、アルミナ、アルミン酸塩(アルミン酸リチウム)、水酸化アルミニウムの順に劣る(記載順に抑制効果が低下する)が、充分、実用的である。
2:検証後における金属表面状態の分析
a:EPMA分析(X線光電子分光分析)
上記の浸漬試験を行った後、試験片に設けられた研磨部についてEPMAで、その半定量分析を行った。結果、該当部位にFe,Mo,Alが検出された。
ここで、Feの濃度は29.4at%、Moの濃度は2.0at%、Alの濃度は2.4at%であった。さらに、Oの濃度は55.1at%であった。Moはインヒビター起因のものと、Alは、本願発明に係る添加されたアルミナ起因のものと考えられる。
a:EPMA分析(X線光電子分光分析)
上記の浸漬試験を行った後、試験片に設けられた研磨部についてEPMAで、その半定量分析を行った。結果、該当部位にFe,Mo,Alが検出された。
ここで、Feの濃度は29.4at%、Moの濃度は2.0at%、Alの濃度は2.4at%であった。さらに、Oの濃度は55.1at%であった。Moはインヒビター起因のものと、Alは、本願発明に係る添加されたアルミナ起因のものと考えられる。
b:ESCA分析(電子線エネルギー損失分光法による分析)及び反射EELS分析(電子線マイクロアナライザーによる分析)
Alの取込形態を確認するために、ESCAによる分析及び反射EELSによる分析を行った。
ESCAによる分析結果を示したのが図5であり、反射EELSによる分析結果を示したのが、図6である。
図5に関して、図5(a)は広域スペクトルを、図5(b)はAlに関連する74eV付近のスペクトルを示している。図5における横軸は、2p結合エネルギー(eV)であり、縦軸はスペクトル強度である。これらの結果から、Alは酸化物として存在していることが判った。ここで、ESCA分析における金属Al(Al単体)及びAlの酸化物であるアルミナの2p結合エネルギー(eV)は、Alについて72.5〜73eV,アルミナについて73.5〜74.5である。
図6は、AlK損失端近傍のスペクトルを示している。横軸は損失を、縦軸はスペクトル強度を示している。さて、この図には、試験片の測定結果を実線(本サンプルと添記)で示し、取込形態の比較指標とした、金属Al、α−アルミナ、γ−アルミナ及びアルミナとモリブデンとの複合物のスペクトルを同図上側に示している。同図では、これらをそれぞれ、破線(Alと添記)、一点鎖線(α−Al2O3と添記)、二点鎖線(γ−Al2O3と添記)及び長破線(Al2O3−Moと添記)で示した。
スペクトル形状の類似性から、吸収溶液組成物に添加したアルミナ(添加時はα−アルミナ)が濃厚臭化リチウム溶液中に一旦溶解し、炭素鋼表面において、結晶性の低いγ−アルミナの形で酸化皮膜内にFe3O4の結晶の隙間を埋める形で析出して、被膜を緻密化させて防食効果を発揮しているものと考えられる。
Alの取込形態を確認するために、ESCAによる分析及び反射EELSによる分析を行った。
ESCAによる分析結果を示したのが図5であり、反射EELSによる分析結果を示したのが、図6である。
図5に関して、図5(a)は広域スペクトルを、図5(b)はAlに関連する74eV付近のスペクトルを示している。図5における横軸は、2p結合エネルギー(eV)であり、縦軸はスペクトル強度である。これらの結果から、Alは酸化物として存在していることが判った。ここで、ESCA分析における金属Al(Al単体)及びAlの酸化物であるアルミナの2p結合エネルギー(eV)は、Alについて72.5〜73eV,アルミナについて73.5〜74.5である。
図6は、AlK損失端近傍のスペクトルを示している。横軸は損失を、縦軸はスペクトル強度を示している。さて、この図には、試験片の測定結果を実線(本サンプルと添記)で示し、取込形態の比較指標とした、金属Al、α−アルミナ、γ−アルミナ及びアルミナとモリブデンとの複合物のスペクトルを同図上側に示している。同図では、これらをそれぞれ、破線(Alと添記)、一点鎖線(α−Al2O3と添記)、二点鎖線(γ−Al2O3と添記)及び長破線(Al2O3−Moと添記)で示した。
スペクトル形状の類似性から、吸収溶液組成物に添加したアルミナ(添加時はα−アルミナ)が濃厚臭化リチウム溶液中に一旦溶解し、炭素鋼表面において、結晶性の低いγ−アルミナの形で酸化皮膜内にFe3O4の結晶の隙間を埋める形で析出して、被膜を緻密化させて防食効果を発揮しているものと考えられる。
臭化リチウムを含む吸収溶液組成物であって、この組成物と接触する鉄材の表面電位を安定的に再不動態化電位より低く保つことが可能であり、酸素等の混入により影響を受け難い吸収溶液組成物を得ることができた。
また、このような吸収溶液組成物を得て、吸収式冷温水機の運転状態を長期に亘って良好に保つことができる吸収器冷温水機の運転方法を得ることができた。
また、このような吸収溶液組成物を得て、吸収式冷温水機の運転状態を長期に亘って良好に保つことができる吸収器冷温水機の運転方法を得ることができた。
Claims (8)
- 臭化リチウムを含み、吸収式冷温水機用吸収液として用いられる吸収溶液組成物において、前記吸収溶液組成物が、酸素元素を有するアルミニウム化合物を含有してなる吸収溶液組成物。
- 前記酸素元素を有するアルミニウム化合物が、アルミナ、アルミン酸塩、水酸化アルミニウムから選択される一種以上の化合物である請求項1記載の吸収溶液組成物。
- 前記酸素元素を有するアルミニウム化合物としてのアルミナが、300ppm以上含有されている請求項2記載の吸収溶液組成物。
- インヒビターとしてのモリブデン酸塩が含有されている請求項1から3の何れか一項記載の吸収溶液組成物。
- 臭化リチウムを含む吸収溶液組成物を吸収液として働く吸収式冷温水機の運転方法であって、前記吸収溶液組成物に酸素元素を有するアルミニウム化合物を添加して、吸収式冷温水機を働かせる吸収式冷温水機の運転方法。
- 前記酸素元素を有するアルミニウム化合物が、アルミナ、アルミン酸塩、水酸化アルミニウムから選択される一種以上の化合物である請求項5記載の吸収式冷温水機の運転方法。
- 前記酸素元素を有するアルミニウム化合物としてのアルミナが、300ppm以上含有されている請求項6記載の吸収式冷温水機の運転方法。
- インヒビターとしてのモリブデン酸塩が含有されている請求項5から7の何れか一項記載の吸収式冷温水機の運転方法。
Priority Applications (1)
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