JP2950263B2 - 内燃機関のバルブタイミング制御装置 - Google Patents

内燃機関のバルブタイミング制御装置

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JP2950263B2
JP2950263B2 JP31982696A JP31982696A JP2950263B2 JP 2950263 B2 JP2950263 B2 JP 2950263B2 JP 31982696 A JP31982696 A JP 31982696A JP 31982696 A JP31982696 A JP 31982696A JP 2950263 B2 JP2950263 B2 JP 2950263B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、内燃機関の運転中
に同機関の気筒に設けられた吸気・排気バルブの開閉タ
イミングを変更制御するためのバルブタイミング制御装
置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、内燃機関の気筒に設けられた吸気
・排気バルブの開閉タイミングを変更するバルブタイミ
ング制御装置としては種々提案されており、ベーン式の
同装置として例えば、実開平2−50105号公報に開
示された装置が知られている。
【0003】この公報記載の装置は、同ベーン式のバル
ブタイミング制御装置として、始動位置においてタイミ
ングプーリに対するベーンの相対回転を規制するための
ロックピンを備える。プーリの径方向に形成されたガイ
ド溝に収容されたロックピンは、スプリングの付勢力に
よりベーンの中心へ向かって付勢される。ベーンに形成
された穴にロックピンが係合することにより、ベーンの
相対回転が規制される。機関の始動時には油圧によりロ
ックピンが解除され、プーリに対するベーンの相対回転
が許容される。
【0004】一方、ベーンの相対回転を規制するための
構成としては上述したような装置の他にも、図10〜図
12に示すような構成を有するバルブタイミング制御装
置が考えられる。
【0005】図10に示すように、このバルブタイミン
グ制御装置では、バルブを開閉駆動するためのカムシャ
フト212の外周に、タイミングプーリ222が回転可
能に外嵌されており、同プーリ222には図示しないエ
ンジンのクランクシャフトから回転駆動力が伝達され
る。又、タイミングプーリ222にはハウジング228
が一体回転可能に固定されている。更に、カムシャフト
212の先端部にはベーン体231が一体回転可能に固
定されている。又、カムシャフト212の最先端部に
は、前記ベーン体231及びハウジング228を覆うよ
うにしてカバー238が取り付けられている。
【0006】図11は図10のXI−XI線に沿った断面図
である(尚、図10は図11のX−X線に沿った断面図
に相当する)。同図に示すように、前記ベーン体231
には、カムシャフト212の軸心回りにおいて略90°
毎の位置に、放射状に延びる複数のベーン232が形成
されており、各ベーン232は前記ハウジング228の
内周部に形成された溝部(凹部)234内に配設されて
いる。
【0007】前記溝部234内において前記ベーン23
2の両側には、所定圧の油が供給されてベーン体231
の回転位相を制御をするための進角側油圧室213、及
び遅角側油圧室214が形成されている。そして同装置
にあっては、各油圧室213,214内に供給する油の
圧力を変更することにより、ベーン体231をハウジン
グ228に対し相対的に回転させてカムシャフト212
の回転位相を変更し、バルブの開閉タイミングを変更す
る。
【0008】更に、このバルブタイミング制御装置で
は、図12に示すように、ベーン232の一つにカムシ
ャフト212の軸方向に延びる貫通孔242が形成され
ている。この貫通孔242内には、ロックピン243が
同軸方向に摺動可能に配設されている。タイミングプー
リ222には前記ロックピン243が嵌入可能な係止穴
249が形成されている。ロックピン243とカバー2
38との間には、同ピン243を前記係止穴249の方
向へと付勢するスプリング248が配設されている。
【0009】また、ロックピン243の係止穴249へ
の係止状態を解除するために、係止穴249の内部、及
び、貫通孔242とロックピン243との間に形成され
る油圧室244の内部には、所定圧力の油が供給される
ようになっている。
【0010】その油の供給のために、係止穴249は、
前記ベーン232の側部に形成された油路250(図1
1)によって遅角側油圧室214の一つと連通されてい
る。また、油圧室244は、べーン体231の内部に形
成された油路245を介して、環状油通路246と連通
されている。
【0011】このためロックピン243は、前記油圧力
と前記スプリング248の付勢力との大小関係に応じて
貫通孔242内を移動するようになり、これが前記係止
穴249にて係止された状態では、前記ベーン体231
とハウジング228との相対回転が規制され、バルブの
開閉タイミングが所定のタイミング(通常、最遅角され
たタイミング近傍)に保持される。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】前述した従来のバルブ
タイミング制御装置においては、油圧室213,214
に油圧が十分かかっていないエンジン始動時のベーン2
32とハウジング228とによる打音を防止するため
に、上記ロックピン243が設けられている。従って同
装置にあっては、エンジン始動開始後の所定状態に達し
た後(油圧室に十分な油圧がかけられた後)は、同ロッ
クピン242による上記ベーン体231とハウジング2
28との係止を解除し続けて所望のバルブタイミングが
得られるようにする必要がある。
【0013】ところが、このロックピン243の解除状
態を維持するために、ロックピン243に常に油圧を印
加し続けていると、油圧室244の油が貫通孔242等
を通じて外部に漏出することがあり、その結果、進角側
油圧室213の油圧が低下あるいは変動するなど、バル
ブタイミング変更時の応答性あるいは制御性(中間保持
制御性)が低下するという問題があった。
【0014】本発明は上記実情に鑑みてなされたもので
あり、その目的とするところは、上記ロックピンを設け
る場合であっても、バルブタイミング変更時の応答性及
び制御性を好適に維持することのできる内燃機関バルブ
タイミング制御装置を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1記載の発明は、同一の回転軸心を有して内
燃機関の出力軸及び同機関のバルブを開閉駆動するカム
シャフトの一方及び他方に連結された第1及び第2の回
転体を備えるとともに、前記第1の回転体に形成された
凹部を前記第2の回転体に形成されたベーンにて区画す
ることによりベーンの両側に第1及び第2の液室を形成
し、該形成した液室に対する液圧制御に基づき前記第1
及び第2の回転体を相対回転させて前記機関出力軸と前
記カムシャフトとの相対回転位相を変更し、前記バルブ
の開閉タイミングを可変制御する内燃機関のバルブタイ
ミング制御装置において、前記第1及び第2の回転体の
一方に形成された挿通孔を移動する移動体がそれら回転
体の他方に形成された係止穴に嵌入されることによって
同第1及び第2の回転体を所定の回転位相に係止するロ
ック手段と、前記移動体を前記係止穴の形成された回転
体側に付勢する付勢手段と、機関運転時、前記付勢手段
による付勢力に抗して前記ロック手段による係止を解除
するための液圧を前記移動体に対し付与する第1及び第
2の液圧供給通路とを備え、前記第1及び第2の液圧供
給通路のうち前記カムシャフトの回転位相を進角せしめ
る側の液室に対応した液圧供給通路は、前記第1及び第
2の回転体が係止される前記所定の回転位相以外で遮断
されることをその要旨とする。
【0016】上記構成によれば、機関始動開始後、その
運転に伴って所定状態に達したとき前記ロック手段の移
動体が前記係止穴より離脱し、これにより前記第1及び
第2の回転体の係止が解除される。しかもこのとき、前
記第1及び第2の液圧供給通路のうち前記カムシャフト
の回転位相を進角せしめる側の液室に対応した液圧供給
通路は、遮断される。そのため、位相変更時にロック手
段近傍から進角側圧力液が漏れることを防止することが
できる。
【0017】また、上記目的を達成するために、請求項
2記載の発明は、請求項1記載のバルブタイミング制御
装置において、前記第1及び第2の液圧供給通路のうち
前記カムシャフトの回転位相を進角せしめる側の液室に
対応した液圧供給通路は、前記第1及び第2の回転体の
双方にわたって形成され、同第1及び第2の回転体が係
止される前記所定の回転位相のみにて連通されることを
その要旨とする。
【0018】上記構成によれば、カムシャフトの回転位
相を進角せしめる側の液室に対応した液圧供給通路は、
前記第1及び第2の回転体の双方にわたって形成される
ため、同第1及び第2の回転体が相対回転を開始するに
伴って、同液圧供給通路は自動的に遮断される。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明を内燃機関としての
多気筒ガソリンエンジンに設けられたバルブタイミング
制御装置として具体化した実施形態について説明する。
【0020】図1は、バルブタイミング変更機構(以
下、「VVT機構」という)11が設けられた吸気側カ
ムシャフト12等を示す断面図である。吸気側カムシャ
フト12のジャーナル12aは、シリンダヘッド18の
上端面とベアリングキャップ19によって回転可能に支
持されている。吸気側カムシャフト12の基端側(図1
の右側)には、図3に示すように、その外周部にカム2
0が複数組(同実施形態では4組)形成されている。各
カム20には、気筒毎に設けられた吸気バルブ(図示し
ない)の上端部が当接されており、同カム20の回転に
より吸気バルブが開閉駆動される。
【0021】吸気側カムシャフト12において、前記シ
リンダヘッド18及びベアリングキャップ19によって
支持された部分より先端側(図1の左側)の部分には拡
径部21が形成されている。この拡径部21の外周には
円環状をなすドリブンギヤ22が回転可能に被嵌されて
いる。ドリブンギヤ22の外周部には複数の外歯22a
が形成されており、この外歯22aは図3に示すよう
に、排気側カムシャフト23に設けられたドライブギヤ
24の外歯24aに噛合されている(図1ではドライブ
ギヤ24の図示を省略している)。
【0022】排気側カムシャフト23には吸気側カムシ
ャフト12と同様に、カム25が複数組(同実施形態で
は4組)形成されている。これらカム25によって図示
しない排気バルブが開閉駆動されるようになっている。
又、排気側カムシャフト23の端部には、カムプーリ2
6が固定されており、同プーリ26にはタイミングベル
ト27が掛装されている。タイミングベルト27は、エ
ンジンのクランクシャフト(図示しない)に取り付けら
れたクランクプーリ(図示しない)に掛装されている。
【0023】エンジンの運転が開始されると、排気側カ
ムシャフト23には前記カムプーリ26を介してクラン
クシャフトの回転駆動力が伝達されるとともに、その回
転駆動力は前記ドライブギヤ24及びドリブンギヤ22
を介して吸気側カムシャフト12に伝達されるようにな
っている。
【0024】図4は図1のIV−IV断面図である(尚、図
1は図4のI−I断面図に相当する)。図4に示すよう
に、VVT機構11は、ハウジング28と、同ハウジン
グ28内に配置されたベーン体31と、吸気側カムシャ
フト12の軸心回り方向における回転力を付与して同ベ
ーン体31を回動させるための進角側油圧室13及び遅
角側油圧室14等を備えている。
【0025】ハウジング28は、全体がほぼ中空円板状
を呈しており、その側面が前記ドリブンギヤ22の先端
側側面(図1の左側面)に当接されるとともに、複数の
ボルト30によって、後述するカバー38とともに同ギ
ヤ22に固定されている。従って、ハウジング28、ド
リブンギヤ22、及びカバー38は吸気側カムシャフト
12を回転軸心として一体回転可能となっている。
【0026】ベーン体31は、その中心に位置した円環
状をなす中心部31aと、同中心部31aの外周部に形
成された4つのベーン32とを備えている。各ベーン3
2は、吸気側カムシャフト12の径方向に放射状に延び
て全体がほぼ十字状を呈している。又、各ベーン32は
吸気側カムシャフト12の軸心に対して対称的に配置さ
れている。
【0027】ハウジング28の内部には、吸気側カムシ
ャフト12の周方向において所定間隔を隔てた位置に、
同シャフト12の軸心に向けて突出した4つの凸部33
が形成されている。これら各凸部33の内周面は前記中
心部31aの外周面に摺接されている。
【0028】ハウジング28において各凸部33の間に
は溝部(凹部)34がそれぞれ形成されている。前記各
ベーン32はこの溝部34内に配設されるとともに、そ
の両側面は図1に示すようにカバー38と、ドリブンギ
ヤ22及び拡径部21とにそれぞれ摺接されている。
又、各ベーン32の外周面はハウジング28の内周面に
摺接されている。
【0029】各ベーン32の外周部には断面矩形状をな
す外周溝35が形成されている。この外周溝35内には
図7に示すようにシール部材36がそれぞれ配設され、
更に、各シール部材36は板バネ37により外周側に向
けて付勢されている。その結果、シール部材36によっ
てベーン32の外周面とハウジング28の内周面との間
がシールされ、進角側油圧室13及び遅角側油圧室14
間での油の移動が規制されるようになっている。
【0030】又、図1に示すように、吸気側カムシャフ
ト12の最先端部には、ハウジング28及びベーン体3
1の先端側側面を覆うようにして、円板状をなすカバー
38が設けられている。同カバー38の中央部にはベー
ン体31を同カムシャフト12に取り付けるための取付
用孔39が形成されている。
【0031】一方、前記ベーン体31の中央部には中心
孔40が形成されている。その中心孔40内に挿通され
た取付ボルト29が、吸気側カムシャフト12のボルト
孔41にて螺着されることにより、ベーン体31は吸気
側カムシャフト12の先端部に固定されている。更に、
ベーン体31及び吸気側カムシャフト12は図示しない
ノックピンにより係合されており、両者31,12は一
体回転するようになっている。前記各溝部34の内周壁
及びカバー38、ドリブンギヤ22によって囲まれた空
間は、各ベーン32によって2つの圧力室に区画形成さ
れている。そして、吸気側カムシャフト12の回転方向
(図4にて示す)と同方向側に形成された圧力室は遅角
側油圧室14となっており、又、前記回転方向と逆方向
側に形成された圧力室は進角側油圧室13となってい
る。
【0032】前記各油圧室13,14の内部には、後述
する進角側、遅角側油圧通路P1,P2を通じて油が供
給されるようになっており、ベーン体31はベーン32
に作用する各油圧室13,14内の油圧の大きさに応じ
て、吸気側カムシャフト12の回転方向と同方向(以
下、この回転方向を「進角回転方向」とする)、或い
は、同シャフト12の回転方向と逆方向(以下、この回
転方向を「遅角回転方向」とする)に回転可能である。
【0033】又一方、図6に拡大して示すように、ベー
ン32の一つには吸気側カムシャフト12の軸方向に延
びる断面円形状の貫通孔42が形成されており、同孔4
2内にはロックピン43が配設されている。より詳細に
説明すると、貫通孔42は、その途中に段部42aを有
しており、同段部42aより先端側(図6の左側)の部
分が拡径された形状となっている。
【0034】前記ロックピン43は有底円筒状を呈して
おり、その先端側の部分には拡径部43aが形成されて
いる。ロックピン43は、その外周側面が貫通孔42の
内周側面に摺接した状態で、吸気側カムシャフト12の
軸方向に移動するようになっている。
【0035】又、前記貫通孔42の内周側面と、前記ロ
ックピン43の外周側面とによって囲まれた環状の空間
により、ロックピン43の係止状態を解除するための油
圧室44が区画形成されている。この油圧室44は、ベ
ーン体31の内部に形成された第1圧力油路45、及び
ドリブンギヤ22の内部に形成された油供給孔93,9
4を介して、拡径部21の外周部の周方向に延びる周溝
91と連通されている。ただし、この第1圧力油路45
と油供給孔94は、図4及び図5に示すように、ロック
ピン43が係止穴49から解除されベーン体31とドリ
ブンギヤ22との相対回転が開始されると、その連通が
解除(遮断)されるように設けられている。又、前記周
溝91は、図1に示すように、拡径部21の内部に形成
された連通油路92により、進角側シャフト油路64と
連通されている。このため、油圧室44は、ベーン体3
1とドリブンギヤ22とが係止状態となる回転位相にの
み、進角側シャフト油路64と連通されるようになる。
【0036】一方、ロックピン43の内部には軸方向に
延びる収容孔47が形成されており、同孔47内には付
勢手段となるスプリング48が配設されている。このス
プリング48により、前記ロックピン43は吸気側カム
シャフト12の基端側、即ちドリブンギヤ22側に向け
て付勢されている。
【0037】ドリブンギヤ22の先端側側面において、
ロックピン43の基端面に対向する位置には、同ピン4
3の基端側部分が嵌入可能な係止部としての係止穴49
が形成されている。スプリング48により付勢されたロ
ックピン43が前記係止穴49内に嵌入すると、ベーン
体31とドリブンギヤ22との相対回転が規制される。
その結果、吸気側カムシャフト12、ベーン体31、ド
リブンギヤ22、及びハウジング28は一体的に回転す
るようになる。又、係止穴49は、図8及び図9に示す
ように、前記ベーン32の側部に形成された第2圧力油
路50によって遅角側油圧室14の一つと連通されてい
る。
【0038】前記係止穴49にてロックピン43が係止
されると、ベーン体31は、図4に示す吸気側カムシャ
フト12の回転位相がハウジング28に対して最も遅れ
た状態となる位置(以下、このベーン体31の位置を
「最遅角位置」という)から図8に示すように2°CA
(クランクアングル)程進んだ位置に固定される。
【0039】次に、前記進角側油圧室13に及び遅角側
油圧室14に油を供給するための圧力通路を構成する進
角側、遅角側油圧通路P1,P2、及びオイルコントロ
ールバルブ(以下、「OCV」と記す)16等の構成に
ついて説明する。
【0040】図1に示すように、シリンダヘッド18の
内部には進角側ヘッド油路53及び遅角側ヘッド油路5
4が形成されている。各ヘッド油路53,54は前記O
CV16、オイルフィルタ55、オイルポンプ15、及
びオイルストレーナ56を介してオイルパン57に接続
可能となっている。エンジンの運転に伴ってオイルポン
プ15が駆動されると、オイルパン57に貯留されてい
る油は同ポンプ15によって吸引される。そして、油は
前記オイルストレーナ56を介してオイルポンプ15内
に導入されるとともに、同ポンプ15から加圧されて吐
出される。そして、吐出された油はオイルフィルタ55
を介してOCV16に供給され、該OCV16によって
前記各ヘッド油路53,54へと選択的に圧送されるよ
うになる。
【0041】シリンダヘッド18の上端部及びベアリン
グキャップ19には、前記ジャーナル12aの外周を囲
むように油溝58,59がそれぞれ形成されており、前
記各ヘッド油路53,54は各油溝58,59に開口さ
れている。
【0042】吸気側カムシャフト12の内部には、その
軸心方向に延びる遅角側シャフト油路60が形成されて
おり、その先端側は前記ボルト孔41に通じている。
又、前記拡径部21の外周部には周方向に延びる周溝6
1が形成されており、同溝61と前記遅角側シャフト油
路60の先端側とは連通油路62により連通されてい
る。
【0043】ジャーナル12aの内部には、吸気側カム
シャフト12の径方向に延びる遅角側油孔63が形成さ
れている。遅角側シャフト油路60は、この遅角側油孔
63によって前記一方の油溝59に通じている。
【0044】又、吸気側カムシャフト12の内部には、
軸心方向に対して傾斜した方向に延びる進角側シャフト
油路64が形成されている。ジャーナル12aの内部に
は吸気側カムシャフト12の径方向に延びる進角側油孔
65が形成されている。前記進角側シャフト油路64の
基端側は、この進角側油孔65を介して前記他方の油溝
58に通じている。
【0045】ドリブンギヤ22には、図1に示すよう
に、断面扇形状をなす切溝66が4つ形成されている。
各切溝66によって前記周溝61と各遅角側油圧室14
とが連通されている。
【0046】又、前記拡径部21の先端側側面には、図
1に示すように先端側に突出した円筒状の突出部67が
形成されている。ベーン体31の基端側部分には前記突
出部67を囲むようにして段部68が形成されている。
そして、この段部68の内周壁と、前記突出部67及び
拡径部21によって囲まれた空間によって円環状をなす
進角側環状通路46が形成されている。前記進角側シャ
フト油路64の先端側はこの進角側環状通路46に開口
している。
【0047】更に、ベーン体31の内部には、図4、図
5に示すように、放射状に延びる4つの進角側供給油孔
69が形成されており、同油孔69の内周側は前記進角
側環状通路46に通じている。又、各進角側供給油孔6
9の外周側は前述した各進角側油圧室13に開口してい
る。
【0048】前述した、進角側ヘッド油路53、油溝5
8、進角側油孔65、進角側シャフト油路64、進角側
環状通路46、及び各進角側供給油孔69によって進角
側油圧通路P1が構成され、又、遅角側ヘッド油路5
4、油溝59、遅角側油孔63、遅角側シャフト油路6
0、連通油路62、周溝61、及び各切溝66によって
遅角側油圧通路P2が構成されている。
【0049】本実施形態では、OCV16によって各油
圧通路P1,P2と、オイルポンプ15及びオイルパン
57との連通状態を切り換えることによってオイルポン
プ15から各油圧室13,14内へ油を供給し、或いは
各油圧室13,14内から油を排出してオイルパン57
に戻すようにしている。
【0050】前記OCV16は、その開度がデューティ
制御されることにより、各進角側、遅角側油圧室13,
14に供給される油圧を制御するものである。以下、こ
のOCV16の構成について説明する。
【0051】図1に示すように、OCV16を構成する
ケーシング70は、第1〜第5のポート71〜75を有
している。第1のポート71は進角側ヘッド油路53に
連通され、第2のポート72は遅角側ヘッド油路54に
連通されている。又、第3及び第4のポート73,74
はオイルパン57に連通され、第5のポート75はオイ
ルフィルタ55を介してオイルポンプ15の吐出側に連
通されている。
【0052】ケーシング70の内部には串形のスプール
76が設けられている。このスプール76は円柱状をな
す4つの弁体77を有しており、その軸方向に往復動可
能となっている。ケーシング70には、スプール76を
図1に示す第1の作動位置と、図2に示す第2の作動位
置との間で移動させるための電磁ソレノイド78が設け
られている。ケーシング70内にはスプリング79が設
けられており、このスプリング79によりスプール76
は第1の作動位置側へ向けて付勢されている。
【0053】OCV16は図1に示す電子制御装置(以
下、「ECU」という)17によって制御される。この
ECU17にはエンジンの運転状態を検出するための回
転数センサ80及び吸気圧センサ81、更に、吸気側カ
ムシャフト12の回転位相を検出するためのクランク角
センサ82及びカム角センサ83が接続されており、E
CU17は各センサ80〜83の検出信号に基づいて、
エンジンの運転状態、及び吸気側カムシャフト12の回
転位相を検出するようになっている。そして、ECU1
7は、吸気側カムシャフト12における実際の回転位相
と、エンジンの運転状態に適合する目標回転位相との偏
差を判断し、同偏差が所定値以下となるように前記OC
V16を制御する。
【0054】次に、上記のように構成された本実施形態
における作用について説明する。エンジンの運転が開始
されると、オイルポンプ15が駆動されて同ポンプ15
から油が吐出される。吐出された油は、前記OCV16
によって選択された前記各油圧通路P1,P2の一方か
ら、進角側油圧室13或いは遅角側油圧室14のいずれ
かの油圧室13,14内に供給される。この際、前記油
圧室44或いは係止穴49の内部には、第1圧力油路4
5、或いは第2圧力油路50を通じて油が供給される。
【0055】そして、油圧室44或いは係止穴49の内
部における油圧が所定値以上に増加すると、当初、図7
に示される状態にあったロックピン43は、その油圧力
によりスプリング48の付勢力に抗して吸気側カムシャ
フト12の先端側に移動する。この移動により、図6に
示すようにベーン体31の係止が解除され、ハウジング
28に対するベーン体31の相対回転が可能となる。
【0056】そして、図2に示すように、スプリング7
9の付勢力に抗してスプール76が第2の作動位置に配
置されると、オイルポンプ15の吐出側と進角側ヘッド
油路53とが連通され、遅角側ヘッド油路54とオイル
パン57とが連通される。従って、各進角側油圧室13
には進角側油圧通路P1を介して油が供給される一方
で、各遅角側油圧室14内の油は遅角側油圧通路P2を
介してオイルパン57に戻される。
【0057】その結果、前記ベーン32は、各遅角側油
圧室14の油圧よりも相対的に増加した各進角側油圧室
13内の油圧により付勢されるため、ベーン体31はハ
ウジング28に対して、図5に矢印Aにて示す進角回転
方向に回転する。このようにベーン体31がハウジング
28に対して回転することにより、吸気側カムシャフト
12の回転位相がドリブンギヤ22よりも進む結果、吸
気バルブの開閉タイミングが早められる。このとき、第
1圧力油路45と油供給孔94の連通は解除され、油圧
室44への進角側圧力油供給は停止される。
【0058】一方、図1に示すように、スプリング79
の付勢力によりスプール76が第1の作動位置に配置さ
れると、オイルポンプ15の吐出側と遅角側ヘッド油路
54とが連通され、進角側ヘッド油路53とオイルパン
57とが連通される。従って、各遅角側油圧室14には
遅角側油圧通路P2を通じて油が供給される一方で、各
進角側油圧室13の油は進角側油圧通路P1を介してオ
イルパン57に戻される。
【0059】その結果、前記ベーン32は各進角側油圧
室13の油圧よりも相対的に増加した各遅角側油圧室1
4内の油圧により付勢されるため、ベーン体31はハウ
ジング28に対して、図4に矢印Bにて示す遅角回転方
向に回転する。このようにベーン体31がハウジング2
8に対して回転することにより、吸気側カムシャフト1
2の回転位相がドリブンギヤ22よりも遅れる結果、吸
気バルブの開閉タイミングが遅れるようになる。
【0060】以上のようにして、吸気側カムシャフト1
2の回転位相が変更され、その回転位相とエンジンの運
転状態に適応する目標回転位相との偏差が所定値以下と
なると、ECU17はOCV16の第1のポート71及
び第2のポート72の両ポート71,72が、前記弁体
77によって閉塞された状態となるように、スプール7
6の位置を制御する(以下、このスプール76の位置を
「中間保持位置」という)。このように、スプール76
の位置が「中間保持位置」となると、各油圧室13,1
4への油の供給、或いは各油圧室13,14からの油の
排出は行われなくなる。そして、各ベーン32は各油圧
室13,14における油圧によって両側から保持される
ため、同ベーン体31の回転が規制され、ハウジング2
8に対するベーン体31の回転方向における位置が固定
される。その結果、吸気バルブの開閉タイミングが所定
のタイミングに保持される。
【0061】以上説明した実施形態によって得られる効
果について、以下に記載する。本実施形態では、油圧室
44への進角側圧力油供給は、ベーン体31とドリブン
ギヤ22が係止状態にある回転位相でのみ可能とした。
そのため、位相変更時に油圧室44から進角側圧力油が
漏れることを防止することができ、VVT機構11の位
相変更時の応答性及び制御性(中間保持制御性)を向上
させることができる。
【0062】又、ロックピン43には遅角側油圧室14
の油圧が第2圧力油路50を通じて付与され得る(ただ
し、常時とは限らない)ため、スプリング48の付勢力
によるロックピン43のドリブンギヤ22先端面への引
きずりが軽減でき、双方の傷つき等が軽減できる。
【0063】なお、この発明は、次のように構成を変更
して具体化することもできる。 (a)上記実施形態において、ベーン体31とドリブン
ギヤ22が係止状態にある回転位相以外での油圧室44
への進角側圧力油の供給解除を、第1圧力油路45と油
供給孔94の連通を解除することにより行ったが、これ
に限定されるものではない。例えば、進角側環状通路4
6から油圧室44へ連通する油圧供給路を設け、同油圧
室44への進角側圧力油の供給解除を、この油圧供給路
に設けた閉鎖手段の閉鎖により行ってもよい。また、こ
の閉鎖手段を前記第1圧力油路45、油供給孔93,9
4、周溝91及び連通油路92間の適宜の位置に設ける
ようにしてもよい。
【0064】(b)上記実施形態において、係止穴49
にてロックピン43が係止されるときのベーン体31の
固定位置は、吸気側カムシャフト12の回転位相がハウ
ジング28に対して最遅角位置から2°CA(クランクア
ングル)程進んだ位置としたが、同固定位置を2°CA以
下の位置、或いは同2°CA以上進んだ位置とした構成と
することもできる。例えば最遅角位置から0°CAの位置
(最遅角位置)、同1°CAの位置或いは同3°CAの位置
をその固定位置としてもよい。
【0065】(c)上記実施形態において、ドリブンギ
ヤ22をカムプーリに変更するとともに、同プーリにタ
イミングベルトが掛装された構成にVVT機構11を変
更し、同プーリをクランクシャフトの回転駆動力によっ
て直接回転駆動するようにしてもよい。
【0066】(d)上記実施形態では、ベーン体31に
4つのベーン32が形成される構成を採用したが、同ベ
ーン32を3つ以下、或いは5つ以上有した構成とする
こともできる。ベーン32の数を上記各実施形態より少
なくした場合には、前記各油圧通路P1,P2の構成を
簡略化することができ、上記実施形態より多くした場合
には、ベーン体31に対してより大きな回転トルクを付
与することができる。
【0067】(e)上記実施形態において、ハウジング
28とドリブンギヤ22とは別部材によって構成されて
いるが、例えば、これらを一体に構成することも可能で
ある。同様に、吸気側カムシャフト12と、ベーン体3
1とを一体に構成するようにしてもよい。
【0068】(f)上記実施形態では、ベーン体31を
吸気側カムシャフト12に固定し、更に、ハウジング2
8をドリブンギヤ22に固定する構成としたが、以下の
ような構成とすることもできる。即ち、ベーン体31を
ドリブンギヤ22に一体回転可能に固定する一方で、ハ
ウジング28を吸気側カムシャフト12に一体回転可能
に固定する。そして、ハウジング28に前記貫通孔42
に相当する孔を形成して、同孔内にロックピンを設ける
とともに、同ロックピンを係止穴49にて係止する構成
としてもよい。
【0069】(g)上記実施形態において、カムプーリ
26をタイミングスプロケットに変更し、タイミングベ
ルト27をタイミングチェーンに変更した構成を有する
VVT機構11を採用するようにしてもよい。
【0070】(h)上記実施形態では、吸気バルブの開
閉タイミングを変更制御するものであったが、排気バル
ブの開閉タイミングを変更制御するようにしてもよい。
又、VVT機構11を吸気側カムシャフト12及び排気
側カムシャフト23の双方に設け、吸気バルブ及び排気
バルブの双方のバルブ開閉タイミングを変更制御するよ
うにしてもよい。
【0071】(i)上記実施形態では、VVT機構11
を吸気側カムシャフト12側に設けてクランクシャフト
に対する吸気側カムシャフト12の回転位相を変更制御
する構成を示したが、これに限定されるものではない。
【0072】例えば、VVT機構11を同様に吸気側カ
ムシャフト12側に設けるとともに、同吸気側カムシャ
フト12をクランクシャフトに駆動連結し、クランクシ
ャフトに対する排気側カムシャフト23(VVT機構1
1が設けられていない側のカムシャフト)の回転位相を
変更制御するようにしてもよい。
【0073】或いは、VVT機構11を排気側カムシャ
フト23側に設けるとともに、吸気側カムシャフト12
をクランクシャフトに駆動連結し、クランクシャフトに
対する排気側カムシャフト23の回転位相を変更制御す
るようにしてもよい。
【0074】また、同様にVVT機構11を排気側カム
シャフト23側に設けるとともに、同排気側カムシャフ
ト23をクランクシャフトに駆動連結し、クランクシャ
フトに対する吸気側カムシャフト12(VVT機構11
が設けられていない側のカムシャフト)の回転位相を変
更制御するようにしてもよい。
【0075】
【発明の効果】以上詳述したように、請求項1及び2記
載の発明では、カムシャフトの回転位相を進角せしめる
側の液室に対応したロック手段への液圧供給通路は、第
1及び第2の回転体が係止される所定の回転位相以外で
遮断されるものである。そのため、位相変更時にロック
手段近傍から進角側圧力液が漏れることを防止すること
ができ、内燃機関のバルブタイミング制御装置の位相変
更時の応答性及び制御性(中間保持制御性)を向上させ
ることができる。
【0076】また、特に請求項2記載の発明では、上記
効果に加えて、カムシャフトの回転位相を進角せしめる
側の液室に対応したロック手段への液圧供給通路は、前
記第1及び第2の回転体の双方にわたって形成されるた
め、同第1及び第2の回転体が相対回転を開始するに伴
って、同液圧供給通路は自動的に遮断される。そのた
め、同液圧供給路に閉鎖手段等を設ける必要もなく、同
液圧供給通路の遮断が容易に可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のバルブタイミング制御装置の一実施形
態を示す断面図。
【図2】OCVの作動状態の一例を示す部分断面図。
【図3】同実施形態の動弁構造を示す平面図。
【図4】図1のIV−IV線に沿った断面図。
【図5】VVTの作動状態の一例を示す断面図。
【図6】ロックピンの周辺構造を示す拡大断面図。
【図7】ロックピンの周辺構造を示す拡大断面図。
【図8】ロックピンの周辺構造を示す拡大断面図。
【図9】図8のIX−IX線に沿った断面図。
【図10】バルブタイミング制御装置の一例を示す断面
図。
【図11】図10のXI−XI線に沿った断面図。
【図12】同装置におけるロックピンの周辺構造を示す
拡大断面図。
【符号の説明】
11…VVT機構(バルブタイミング変更機構)、12
…吸気側カムシャフト、13…進角側油圧室、14…遅
角側油圧室、18…シリンダヘッド、22…ドリブンギ
ヤ、28…ハウジング、31…ベーン体、32…ベー
ン、42…貫通孔、43…ロックピン、45…第1圧力
油路、48…スプリング、49…係止穴、50…第2圧
力油路、91…周溝、92…連通油路、93,94油供
給孔。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】同一の回転軸心を有して内燃機関の出力軸
    及び同機関のバルブを開閉駆動するカムシャフトの一方
    及び他方に連結された第1及び第2の回転体を備えると
    ともに、前記第1の回転体に形成された凹部を前記第2
    の回転体に形成されたベーンにて区画することによりベ
    ーンの両側に第1及び第2の液室を形成し、該形成した
    液室に対する液圧制御に基づき前記第1及び第2の回転
    体を相対回転させて前記機関出力軸と前記カムシャフト
    との相対回転位相を変更し、前記バルブの開閉タイミン
    グを可変制御する内燃機関のバルブタイミング制御装置
    において、 前記第1及び第2の回転体の一方に形成された挿通孔を
    移動する移動体がそれら回転体の他方に形成された係止
    穴に嵌入されることによって同第1及び第2の回転体を
    所定の回転位相に係止するロック手段と、 前記移動体を前記係止穴の形成された回転体側に付勢す
    る付勢手段と、 機関運転時、前記付勢手段による付勢力に抗して前記ロ
    ック手段による係止を解除するための液圧を前記移動体
    に対し付与する第1及び第2の液圧供給通路とを備え、
    前記第1及び第2の液圧供給通路のうち前記カムシャフ
    トの回転位相を進角せしめる側の液室に対応した液圧供
    給通路は、前記第1及び第2の回転体が係止される前記
    所定の回転位相以外で遮断されることを特徴とする内燃
    機関のバルブタイミング制御装置。
  2. 【請求項2】請求項1記載のバルブタイミング制御装置
    において、 前記第1及び第2の液圧供給通路のうち前記カムシャフ
    トの回転位相を進角せしめる側の液室に対応した液圧供
    給通路は、前記第1及び第2の回転体の双方にわたって
    形成され、同第1及び第2の回転体が係止される前記所
    定の回転位相のみにて連通されることを特徴とする内燃
    機関のバルブタイミング制御装置。
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DE102004024221A1 (de) * 2003-08-15 2005-03-10 Ina Schaeffler Kg Brennkraftmaschine mit einer hydraulischen Vorrichtung zur Drehwinkelverstellung ihrer Nockenwelle gegenüber ihrer Kurbelwelle

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