JP2946903B2 - 電子制御エアサスペンション車用車高調整装置 - Google Patents

電子制御エアサスペンション車用車高調整装置

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JP2946903B2
JP2946903B2 JP4005215A JP521592A JP2946903B2 JP 2946903 B2 JP2946903 B2 JP 2946903B2 JP 4005215 A JP4005215 A JP 4005215A JP 521592 A JP521592 A JP 521592A JP 2946903 B2 JP2946903 B2 JP 2946903B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電子制御エアサスペン
ションをそなえた自動車において、そのエアサスペンシ
ョンを用いて車高を調整するための装置に関し、特にハ
イデッカータイプのバス等に用いて好適の電子制御エア
サスペンション車用車高調整装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、高速走行の頻度が高い大型の観光
バス等では、その車体の懸架装置にエアスプリングを用
いたエアサスペンション車が主流になっている。エアサ
スペンション車は、エアスプリングに圧縮性流体である
空気(エア)を用いているため、リーフスプリングを用
いた通常のものに比べて優れた乗り心地が得られる他、
レベリングバルブを用いることによって積載状態に拘ら
ず一定車高を保てるなどの特徴を有している。
【0003】レベリングバルブは、通常、エアスプリン
グとこのエアスプリングにエアを供給するエア供給源と
の間に介装され、そのバルブ本体が車体のシャシフレー
ム側に固定されるとともに、レベリングバルブを駆動し
うる揺動レバーがセンシングロッドを介して車軸側に固
定されている。このレベリングバルブは、シャシフレー
ムの下面と各車軸との間の距離に応じ、エアスプリング
にエアを供給したり、エアスプリングからエアを排出し
たりして、車高を一定に保つように動作する。
【0004】そして、このようなレベリングバルブのセ
ンシングロッドに、給気に伴って短縮するエアシリンダ
を介装することにより、車体の車高調整が行なわれるよ
うになっている。つまり、エアシリンダに給気を行なっ
てセンシングロッドを短縮することで、シャシフレーム
の下面と車軸との間の距離が擬似的に大きくなり、レベ
リングバルブからエアスプリングのエアが排出されて車
高の低下調整が行なわれる。これに対して、エアシリン
ダから排気を行なってセンシングロッドを伸長すること
で、シャシフレームの下面と車軸との間の距離が小さく
なり、レベリングバルブを介してエア供給源からのエア
がエアスプリングに供給されて車高の復帰調整が行なわ
れる。
【0005】一方、従来、エアスプリングに、電磁弁を
介して補助エアタンクを連通接続し、電磁弁の開閉状態
を車体の運動状態に応じて制御することにより、エアス
プリングのばね定数を調整できる電子制御エアサスペン
ションも提案されている。このような電子制御エアサス
ペンションでは、電磁弁を開状態とすることで、エアス
プリングと補助エアタンクとが連通しエア室の容積が大
となってばね定数が小となる一方、電磁弁を閉状態とす
ることで、エアスプリングと補助エアタンクとの連通状
態が断たれエア室の容積が小となってばね定数が大とな
る。
【0006】そして、例えば、上述の電子制御エアサス
ペンションをそなえた車両が急旋回する際などのよう
に、その車体が大きく横揺れ(ローリング)しようとす
る時には、電磁弁を閉状態に切り換えエアスプリングの
ばね定数を大きくすることにより、車体のローリングを
抑えることができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、レベリ
ングバルブのセンシングロッドにエアシリンダを介装し
て前述のごとく車高調整を行なう場合、エアスプリング
に対するエアの供給や排出がレベリングバルブを介して
のみ行なわれているため、車高の低下/復帰調整に時間
が長く(3〜5分程度)かかるという課題があった。
【0008】また、上述した車高調整機能を、エアスプ
リングに補助エアタンクおよび電磁弁を付加して構成さ
れる電子制御エアサスペンションに適用し、電磁弁が開
状態でエアスプリングと補助エアタンクとが連通状態に
ある時に車高の低下/復帰調整を行なうと、エア室の容
積が大きいため、そのエア室に対する排気や給気にも時
間がかかり、その車高の低下/復帰調整の時間がさらに
長くなってしまう。また、車高の復帰調整時には、補助
エアタンクにもエアを供給しなければならずエアの充填
消費が多くなり、エアを圧縮供給するためのエアコンプ
レッサの寿命が短くなるなどの課題もあった。
【0009】本発明は、このような課題に鑑み創案され
たもので、電子制御エアサスペンション車における車高
の低下/復帰調整を短時間で行なえるようにした電子制
御エアサスペンション車用車高調整装置を提供すること
を目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】このため、本発明の電子
制御エアサスペンション車用車高調整装置は、車体と前
後左右の各車軸との間に少なくとも1個ずつ設けられ該
車体を支持するエアスプリングと、前記の各エアスプリ
ングに連通接続される補助エアタンクと、前記のエアス
プリングと補助エアタンクとの間に介装されるエアサス
ペンション用電磁弁と、前記車体の状態に応じて前記エ
アサスペンション用電磁弁の開閉状態を制御するエアサ
スペンション用制御手段とをそなえ、前記エアサスペン
ション用電磁弁を前記エアサスペンション用制御手段に
て開閉制御し前記のエアスプリングと補助エアタンクと
の間を接断することにより前記エアスプリングのばね定
数を調整するものであって、前記エアスプリングと該エ
アスプリングにエアを供給するエア供給源との間にレベ
リングバルブをそなえ、該レベリングバルブのセンシン
グロッドにエアシリンダを介装し、前記エアシリンダに
対して給気あるいは排気を行なうことにより前記車体の
車高の低下/復帰調整を行なうものにおいて、前記エア
供給源に接続される主供給管路から分岐され前記レベリ
ングバルブを経由して前記エアスプリングに至る第1分
岐供給管路と、前記主供給管路から分岐され前記第1分
岐供給管路とは独立した経路で前記エアスプリングに至
る第2分岐供給管路と、前記のレベリングバルブとエア
スプリングとの間の前記第1分岐供給管路に介設され、
前記車体の車高低下調整時には前記のレベリングバルブ
とエアスプリングとの間を遮断するとともに前記エアス
プリングと大気とを連通して前記レベリングバルブを通
さずに前記エアスプリングからエアを排出する三方電磁
弁からなる排気用電磁弁と、前記第2分岐供給管路に介
設され、車高非調整時には前記のエア供給源とエアスプ
リングとの間を遮断する一方で前記車体の車高復帰調整
時には前記のエア供給源とエアスプリングとの間を連通
して前記エア供給源からのエアを前記第2分岐供給管路
を通じて前記エアスプリングへ直接的に供給する給気用
電磁弁と、前記車体の車高調整時に、走行状態で前記エ
アスプリングに適当量のエアを残しながら前記車体全体
の車高を低下させる車高ダウンモードと停車状態で前記
車体の扉位置に応じた位置の前記エアスプリングについ
て該エアスプリングから適当量のエアを排出し前記扉位
置に応じた前記車体の 位置の車高を低下させるニーリン
グモードとフェリー乗船時に前記エアスプリングから全
てのエアを排出し前記車体全体の車高を最低位置まで低
下させるフェリー乗船モードとのいずれかを選択して前
記の排気用電磁弁および給気用電磁弁を駆動制御する車
高調整用制御手段と、前記の車高ダウンモード,ニーリ
ングモードおよびフェリー乗船モードのいずれかの選択
に伴う前記車高調整用制御手段による前記の排気用電磁
弁および給気用電磁弁の駆動制御時間を規定するタイマ
ーとをそなえ、前記車高調整用制御手段による前記車体
の車高調整時には、前記エアサスペンション用制御手段
により前記エアサスペンション用電磁弁を強制的に閉状
態に駆動制御することを特徴としている。
【0011】
【0012】
【0013】
【作用】上述の本発明の電子制御エアサスペンション車
用車高調整装置では、排気用電磁弁と給気用電磁弁とが
車高調整用制御手段により駆動制御され、レベリングバ
ルブを介さずにエアスプリングへのエアの給排気が行な
われるため、車高の低下/復帰調整が迅速に行なわれ
る。また、車高調整用制御手段による車高調整時には、
エアサスペンション用制御手段によりエアサスペンショ
ン用電磁弁が強制的に閉状態に駆動制御されるため、エ
アスプリングが補助エアタンクから遮断され、車高調整
時における排気/給気の対象となるエア室の容積を小さ
くでき、車高の低下/復帰調整をより迅速に行なえる。
【0014】また、車高調整用制御手段により、車高ダ
ウンモード,ニーリングモード,フェリー乗船モードの
3種類のうちのいずれかを選択して、排気用電磁弁およ
び給気用電磁弁が駆動制御され、車高ダウンモード選択
時には、エアスプリング内にエアを残した状態で車体全
体の車高が低下され、車高制限のあるトンネルを通過す
る際などに適している。ニーリングモード選択時には、
停車状態で車体の扉位置に応じた位置のエアスプリング
について適当量のエアが排出され、扉位置に応じた車体
の位置の車高が低下され、乗員や乗客の乗降が容易にな
る。フェリー乗船モード選択時には、エアスプリングか
ら全てのエアが排出され車体全体の車高が最低位置まで
低下される。
【0015】そして、各モードの選択に伴う車高調整用
制御手段による排気用電磁弁および給気用電磁弁の駆動
制御時間をタイマーにより規定することにより、排気用
電磁弁,給気用電磁弁による急速な車高調整は、各モー
ドに応じた所定の位置で停止され、その後はレベリング
バルブによる車高調整が行なわれる。各モードでの車高
低下調整時には、タイマーにより所定時間だけエアスプ
リングと大気とを連通するように排気用電磁弁を切り換
えることによりエアスプリングから第1分岐供給管路お
よび排気用電磁弁を通じて大気中へエアを排出して車高
を急速に低下させることができる。タイマーにより規定
される所定時間を経過した後は、レベリングバルブとエ
アスプリングとの間を連通するように排気用電磁弁を切
り換えることにより、レベリングバルブを用いて設定車
高まで正確に車体が低下調整される。また、車高復帰調
整時には、タイマーにより所定時間だけエアスプリング
とエア供給源とを連通するように給気用電磁弁を切り換
えることにより、第2分岐供給管路からエアスプリング
にエアが直接的に供給されるので、車高を急速に上昇さ
せることができる。タイマーにより規定される所定時間
を経過した後は、レベリングバルブを用いて設定車高ま
で正確に車体が復帰調整される。このように、主供給管
路からエアスプリングに異なる経路で至る2種類の分岐
供給管路をそなえ、一方にレベリングバルブおよび排気
用電磁弁を介設し、他方に給気用電磁弁を介設すること
により、車高低下調整時および車高復帰調整時に目標車
高への到達時間を短縮することができる。
【0016】
【実施例】以下、図面により、本発明の一実施例として
の電子制御エアサスペンション車用車高調整装置につい
て説明すると、図1はその構成を示すブロック図、図2
はそのエアサスペンションの空圧回路を示す構成図、図
3は本実施例の装置をそなえたバス(電子制御エアサス
ペンション車)を示す斜視図、図4はECS用制御手段
による制御処理動作を説明するためのフローチャート、
図5は車高調整用制御手段によるメインプログラムを示
すフローチャート、図6〜図11はそれぞれ車高調整用
制御手段によるニーリング処理動作,ニーリング復帰処
理動作,車高ダウン処理動作,車高復帰処理動作,エア
シリンダ給排気用電磁弁の監視処理動作,フェリー乗船
モード選択時の処理動作を説明するためのフローチャー
ト、図12はブザー鳴動/ランプ表示用制御手段による
ブザー鳴動処理動作を説明するためのフローチャートで
ある。
【0017】本実施例では、本発明の車高調整装置を、
電子制御エアサスペンション(ECS)を有する図3に
示すような大型自動車(ハイデッカータイプの観光バス
等)に適用した場合について説明する。また、本実施例
の電子制御エアサスペンションは、図2に示すように、
前車軸側サスペンション部1と後車軸側サスペンション
部2とをそなえており、前車軸側サスペンション部1
は、左右の前車軸に対応して一対のエアスプリング3
L,3Rを有しており、これらのエアスプリング3L,
3Rは、各前車軸と車体20(図3参照)との間に配設
されて、車体20を支持するものである。後車軸側サス
ペンション部2も前車軸側サスペンション部1とほぼ同
様に構成されているが、この後車軸側サスペンション部
2は、左右の後車軸にそれぞれ一対のエアスプリング3
L,3L;3R,3Rを有して、車体20を支持するも
のである。
【0018】各エアスプリング3L,3Rには、接続管
路4を介して補助エアタンク5,5がそれぞれ連通接続
され、各接続管路4には、常閉型のオン/オフ制御弁か
らなるエアサスペンション用電磁弁(以下、ECS用電
磁弁という)6が介装されている。この電磁弁6によ
り、互いに組をなすエアスプリング3L,3Rと各補助
エアタンク5,5との間の連通を接断することにより、
各エアスプリング3L,3Rのばね定数が調整されるよ
うになっている。
【0019】ここで、ECS用電磁弁6のオン/オフ状
態(開閉状態)は、車体20の走行状態等に応じて、図
1にて後述する電子コントローラ30におけるエアサス
ペンション用制御手段(以下、ECS用制御手段とい
う)30aにより制御されるようになっている。また、
本実施例では、ECS用電磁弁6としては三方電磁弁が
用いられており、その第1接続口6aおよび第2接続口
6bには、接続管路4を介してそれぞれ補助エアタンク
5および各エアスプリング3L,3Rが接続されるとと
もに、第3接続口6cはプラグ6dにより閉塞されてい
る。
【0020】そして、電磁弁6のオフ時には、第1〜第
3接続口6a〜6cが全て連通された状態になり、エア
スプリング3L,3Rと各補助エアタンク5,5とが連
通され各エアスプリング3L,3Rのばね定数が小さい
状態となる一方、電磁弁6のオン時には、第2接続口6
bと第3接続口6cとが接続された状態になり、エアス
プリング3L,3Rと各補助エアタンク5,5との間の
連通が断たれ各エアスプリング3L,3Rのばね定数が
大きい状態になる。
【0021】ECS用電磁弁6と各エアスプリング3
L,3Rとの間の接続管路4には、分岐供給管路(第1
分岐供給管路)7を介して主供給管路8が接続され、こ
の主供給管路8は、エア供給源9に接続されている。こ
のエア供給源9は、バスのエンジンにより駆動されるエ
アコンプレッサ(図示せず)からエアを供給されるもの
で、所定圧力のエアをエアスプリング3L,3Rに向け
て供給可能になっている。なお、主供給管路8にはサプ
ライバルブ8aが介装されており、このサプライバルブ
8aを開放することによりエア供給源9からのエア供給
が行なわれるようになっている。
【0022】さらに、各分岐供給管路7には、レベリン
グバルブ10が介装されている。各レベリングバルブ1
0は、車体20の上下動(車体20のシャシフレーム下
面と車軸との間の距離)に応じて開閉動作し、エアスプ
リング3L,3Rにエア(圧縮空気)を供給したり各エ
アスプリング3L,3Rからエアを排出したりすること
により、車体20の車高を一定の高さに調整する機能を
有するものである。
【0023】なお、各レベリングバルブ10には、この
レベリングバルブ10からエアを排出すべく外気に開放
された排気管10aが設けられている。また、本実施例
では、分岐供給管路7およびレベリングバルブ10は、
前車軸側サスペンション部1において、左右のエアスプ
リング3L,3Rに対応して左右一対そなえられるのに
対し、後車軸側サスペンション部2において、左右のエ
アスプリング3L,3Rについて1組のみそなえられて
いる。
【0024】各レベリングバルブ10は車体20側に固
定されるとともに、各レベリングバルブ10毎に、この
バルブ10を直接開閉駆動するための揺動レバー11
と、一端を揺動レバー11の先端に枢着され他端を各車
軸側に枢着されるセンシングロッド12と、このセンシ
ングロッド12に介装され給気に伴って短縮するエアシ
リンダ13とがそなえられている。
【0025】各エアシリンダ13には分岐供給管路15
を介して主供給管路8,エア供給源9が接続され、分岐
供給管路15には、エアシリンダ13に対する給気/排
気の切換を行ないエアシリンダ13を伸縮駆動するエア
シリンダ給排気用電磁弁14が介装されている。この電
磁弁14は三方電磁弁であり、その第1接続口14aお
よび第2接続口14bには、分岐供給管路15を介して
それぞれ主供給管路8およびエアシリンダ13が接続さ
れるとともに、第3接続口14cは外気へ開放され排気
口として機能している。
【0026】そして、電磁弁14のオフ時には、第2接
続口14bと第3接続口14cとが接続された状態にな
り、エアシリンダ13内のエアが排出されてエアシリン
ダ13は伸長しきった状態に保持される一方、電磁弁1
4のオン時には、第1接続口14aと第2接続口14b
とが接続された状態になり、エア供給源9から主供給管
路8および分岐供給管路15を介してエアが供給されて
エアシリンダ13は短縮するようになっている。
【0027】一方、各エアスプリング3L,3Rと各レ
ベリングバルブ10との間の分岐供給管路7にはエアス
プリング排気用電磁弁16が介装されるとともに、この
電磁弁16と各エアスプリング3L,3Rとの間の分岐
供給管路7には、分岐供給管路(第2分岐供給管路)
7,主供給管路8を介してエア供給源9が接続されてい
る。そして、分岐供給管路17にはエアスプリング給気
用電磁弁18が介装されている。
【0028】排気用電磁弁16は、車体20の車高低下
調整時にオン状態となってレベリングバルブ10を通さ
ずに各エアスプリング3L,3R内のエアを排出する三
方電磁弁であり、この電磁弁16の第1接続口16aに
は、分岐供給管路7,レベリングバルブ10を介して主
供給管路8が接続され、第2接続口16bには分岐供給
管路7を介して各エアスプリング3L,3Rが接続さ
れ、第3接続口16cには、外気に開放される排気管1
6dが接続されている。
【0029】そして、電磁弁16のオフ時には、第1接
続口16aと第2接続口16bとが接続された状態にな
り、分岐供給管路7を介して各エアスプリング3L,3
Rと各レベリングバルブ10とが接続され、レベリング
バルブ10による通常の車高一定保持調整が行なわれる
一方、電磁弁16のオン時には、第2接続口16bと第
3接続口16cとが接続された状態になり、レベリング
バルブ10を通さずに各エアスプリング3L,3R内の
エアが排出されるようになっている。
【0030】給気用電磁弁18は、車体20の車高復帰
調整時にオン状態となってレベリングバルブ10を通さ
ずに各エアスプリング3L,3Rへエア供給源9からの
エアを供給するもので、オフ時には閉状態になる一方、
オン時には開状態になって、分岐供給管路17および主
供給管路8を介してエア供給源9が接続され、エアが供
給されるようになっている。
【0031】上述した電磁弁14,排気用電磁弁16お
よび給気用電磁弁18は、図1にて後述する電子コント
ローラ30における車高調整用制御手段30bにより駆
動制御されるようになっている。なお、図2には、前後
左右の各車軸にそれぞれ1個ずつ取り付けられたショッ
クアブソーバ19が概略的に示されており、これらのシ
ョックアブソーバ19は、公知の手段により、図1に示
す電子コントローラ30から与えられる制御信号にて、
その減衰力をハードまたはソフトに変更できるように構
成されている。また、各補助エアタンク5には、その内
部エア圧を検出する圧力センサ21が設けられている。
【0032】次に、図1〜図3により本実施例の車高調
整装置の詳細な構成について説明する。なお、図3にお
いては、各種センサ類やスイッチ類の配設位置を明確に
するためにタイヤ等が透視して示されている。まず、図
1,図3により本実施例におけるセンサ類およびスイッ
チ類について説明すると、これらの図1および図3にお
いて、21は前述した通り補助エアタンク5内のエア圧
を検出する圧力センサ、22は車体20の速度を検出す
る車速センサ、23はステアリング23aが回された際
の角速度を検出するステアリング角速度センサ、24は
車体20の横揺れ即ちローリングを検出するローリング
センサである。
【0033】また、25はフットブレーキ(図示せず)
が踏み込まれた際(ブレーキング時)にオン信号を出力
するフットブレーキスイッチ、26は車体20の前後進
を検出すべくトランスミッション(図示せず)が後退位
置に切り換えられた時にオン信号を出力するバックアッ
プランプスイッチ、27は車体20が駐車状態になった
場合(パーキングレバーを操作した場合)にオン信号を
出力するパーキングスイッチ、28は前後左右の各エア
スプリング3L,3Rの近傍位置にそなえられて該位置
における車体20の高さ(車高)を検出する車高セン
サ、29は本実施例のバスの運転席に設けられ各種セン
サによる検出結果等を表示するインジケータである。
【0034】さらに、31はECS用制御手段30aに
よるECS用電磁弁6の開閉制御を自動または手動制御
に切り換えるオート/ハード選択スイッチ、32は車体
20の車高調整として後述する車高ダウンモードを選択
する場合にオン操作される車高ダウンスイッチ、33は
車体20の車高調整として後述するニーリングモードを
選択する場合にオン操作されるニーリングスイッチ、3
4は車体20の車高調整として後述するフェリー乗船モ
ードを選択する場合にオン操作されるフェリー乗船スイ
ッチで、これらのスイッチ31〜34は、バスの運転席
にそなえられている。
【0035】なお、各センサ21〜24,28および各
スイッチ25,26,31からの信号は電子コントロー
ラ30のECS用制御手段30aに入力され、車速セン
サ22および各スイッチ27,32〜34からの信号は
電子コントローラ30の車高調整用制御手段30bに入
力されるほか、車高センサ28およびスイッチ32〜3
4からの信号は電子コントローラ30のブザー鳴動/ラ
ンプ表示用制御手段30cに入力されるようになってい
る。
【0036】さて、これらのセンサ類やスイッチ類から
の信号を受けて制御動作を行なう本実施例の電子コント
ローラ30は、図1に示すように、ECS用制御手段3
0a,車高調整用制御手段30bおよびブザー鳴動/ラ
ンプ表示用制御手段30cから構成されている。ECS
用制御手段30aは、図4にて後述するフローチャート
に従って動作し、ECS用電磁弁6およびショックアブ
ソーバ19を制御するもので、基本的には、オート/ハ
ード選択スイッチ31,車速センサ22,ステアリング
角速度センサ23,ローリングセンサ24,フットブレ
ーキスイッチ25,車高センサ28などからの信号に応
じて電磁弁6の開閉切換,ショックアブソーバ19のソ
フト/ハード切換を行ない、サスペンションの状態をソ
フトもしくはハードに切り換える機能を有している。
【0037】そして、本発明を適用された装置では、こ
のECS用制御手段30aが、後述の車高調整用制御手
段30bによる車体20の車高調整期間中(車高調整開
始時から車高復帰完了までの間)には、ECS用電磁弁
6を強制的に閉状態(オン状態)に駆動制御する機能
(図4のステップS3,S4参照)を有している点が大
きな特徴である。
【0038】車高調整用制御手段30bは、図5〜図1
1にて後述する各フローチャートに従って動作し、エア
シリンダ給排気用電磁弁14,エアスプリング排気用電
磁弁16およびエアスプリング給気用電磁弁18を制御
するもので、基本的には、エアシリンダ給排気用電磁弁
14のオン/オフ操作によりエアシリンダ13に対して
給気あるいは排気を行なうことにより車体20の車高の
低下/復帰調整を行なうとともに、その車高調整時にエ
アスプリング排気用電磁弁16およびエアスプリング給
気用電磁弁18をオン/オフ制御することにより、レベ
リングバルブ10を通さずに各エアスプリング3L,3
R内のエア排出もしくは各エアスプリング3L,3Rへ
のエア供給を行なう機能を有している。
【0039】そして、本実施例の車高調整用制御手段3
0bは、車高ダウンスイッチ32,ニーリングスイッチ
33,フェリー乗船スイッチ34のいずれかをオン操作
することにより車高ダウンモード,ニーリングモード,
フェリー乗船モードのいずれかを選択し、選択したモー
ドに応じた車高調整を電磁弁14,16,18の制御に
より行なうものである。
【0040】なお、車高ダウンモードでの車高調整制御
動作の詳細については図8,図9により、ニーリングモ
ードでの車高調整制御動作の詳細については図6,図7
により、フェリー乗船モードでの車高調整制御動作の詳
細については図11により後述する。また、本実施例の
車高調整用制御手段30bには、図10にて後述するよ
うなエアシリンダ給排気用電磁弁14の監視機能もそな
えられ、該電磁弁14のフェール時に車体20が車高低
下状態にあればその車高を自動的に復帰させるようにな
っている。
【0041】ここで、車高ダウンモードは、各エアスプ
リング3L,3R内に適当量のエアを残しながら車体2
0全体の車高を低下させるものであり、ニーリングモー
ドは、停車状態で車体20の扉位置(本実施例では図3
に示すように車体20の前側位置)に応じた位置つまり
前車軸側のエアスプリング3L,3Rについて、これら
のエアスプリング3L,3Rから適当量のエアを排出
し、車体20前側の車高を低下させるものであり、フェ
リー乗船モードは、車体20のフェリー乗船時に全ての
エアスプリング3L,3Rから全エアを排出し、車体2
0全体の車高を最低位置まで低下(タイダウン)させる
ものである。
【0042】ところで、図1に示すように、車高調整用
制御手段30bから各電磁弁16,18に対するオン指
令信号は、それぞれタイマー35,36を介して電磁弁
16,18へ出力されるようになっており、各タイマー
35,36は、前述した車高ダウンモード,ニーリング
モードおよびフェリー乗船モードのいずれかの選択に伴
う車高調整用制御手段30bによる電磁弁16,18の
駆動制御時間を規定するものである。
【0043】これらのタイマー35,36により、例え
ば、車高ダウンモードの選択時には前後全ての電磁弁1
6が所定時間だけオン駆動され、車高復帰時には前後全
ての電磁弁18が所定時間だけオン駆動され、ニーリン
グモードの選択時には車体20前側の電磁弁16のみが
所定時間だけオン駆動され、ニーリング復帰時には車体
20前側の電磁弁18のみが所定時間だけオン駆動さ
れ、フェリー乗船モードの選択時には、前後全ての電磁
弁16が無限時間オン駆動され、車高復帰時には前後全
ての電磁弁18が所定時間だけオン駆動されるようにな
っている。
【0044】ブザー鳴動/ランプ表示用制御手段30c
は、図12にて後述するフローチャートに従うブザー鳴
動処理動作と、ランプ表示処理動作とを行ない、ブザー
37の鳴動状態と、車高ダウンモード用ランプ38a,
ニーリングモード用ランプ38b,フェリー乗船モード
用ランプ38cおよびダイアグノシスランプ39の点灯
状態とを制御するものである。
【0045】このブザー鳴動/ランプ表示用制御手段3
0cは、車高調整動作開始前に車高調整用制御手段30
bから出力されるブザー吹鳴指令を受けると所定時間だ
けブザー37を連続鳴動させる予吹鳴機能と、車高調整
動作中つまり電磁弁16もしくは18がオン状態にある
場合にブザー37を断続的に鳴動させる車高調整鳴動告
知機能と、電磁弁14,16,18のフェール検出に伴
い車高調整用制御手段30bから出力されるダイアグノ
シスランプ点灯指令を受けるとダイアグノシスランプ3
9を点灯させるフェール表示機能と、車高調整開始時か
ら車高復帰完了までの間にわたりいずれのモードによる
車高調整中であるかをランプ38a〜38cにて表示す
るモード表示機能とを有している。なお、予吹鳴機能も
しくは車高調整鳴動告知機能によりブザー37を連続的
もしくは断続的に鳴動させる代わりに、スピーカをそな
えこのスピーカから音声等により車高調整を開始する旨
もしくは車高調整動作中である旨を告知するようにして
もよい。
【0046】次に、上述のごとく構成された本実施例の
車高調整装置による制御動作を、図4〜図12により説
明する。まず、図4により、ECS用制御手段30aに
よる基本的な電子制御エアサスペンションの制御動作に
ついて説明する。エンジンが始動されて電子コントロー
ラ30(ECS用制御手段30a)の作動が開始される
と、ステップS1において、ECS用制御手段30a
は、各圧力センサ21からの圧力信号を受け取り、各補
助エアタンク5内のエア圧が所定レベルにあるか否かを
検出し、もし、いずれかの補助エアタンク5内のエア圧
が所定レベル以下の場合には、対応するECS用電磁弁
6をオフ状態として開作動させたままに放置し、当該補
助エアタンク5内のエア圧が所定レベルに達するまで待
機する。
【0047】このとき、エア圧が所定レベル以下の補助
エアタンク5を有するサスペンションによって支持され
る車体位置の車高が低くなるため、当該サスペンション
のエアスプリング3Lもしくは3Rに接続されたレベリ
ングバルブ10が作動し、エア供給源9からレベリング
バルブ10,電磁弁6を介して補助エアタンク5にエア
が充填される。
【0048】このように、ECS用制御手段30aは、
補助エアタンク5のエア圧が所定レベルに達するまで待
機してから、以下の制御動作を実行する。すべての補助
エアタンク5のエア圧が所定レベルにあれば、ECS用
制御手段30aの初期化、いわゆるイニシャライズが実
施される(ステップS2)。なお、特に言及しない限
り、ショックアブソーバ19は、全てハードに切り換え
られているものとする。
【0049】この後、車体20がいずれかのモードによ
る車高調整期間中(車高調整動作開始時から車高復帰を
完了するまでの間)にあるか否かを判断し(ステップS
3)、車高調整期間中には、ステップS4へ進む。な
お、車体20が車高調整期間中であるか否かは、車高調
整用制御手段30bのエアスプリング排気用電磁弁16
に対するオン指令(もしくはエアシリンダ給排気用電磁
弁14に対するオン指令)およびエアスプリング給気用
電磁弁18に対するオン/オフ指令(もしくは車高セン
サ28の出力)に応じて判断することができる。つま
り、本実施例では、車高調整の開始を電磁弁16のオン
駆動(もしくは電磁弁14のオン駆動)により検知し、
車高復帰の完了を、電磁弁18のオン状態からオフ状態
への切換(もしくは車高センサ22による車体20の標
準車高への復帰検出)により検知し、これらの車高調整
開始から車高復帰完了までの期間を車高調整期間と判断
している。
【0050】ステップS4では、全てのECS用電磁弁
6が閉位置に切換駆動され、エアスプリング3L,3R
と各補助エアタンク5との連通が断たれる。このように
電磁弁16,18のオン動作に伴う車高調整期間中にE
CS用電磁弁6を閉状態とすることは、本発明(請求項
1)の特徴とする動作であるが、この動作に伴う作用効
果については、図5〜図11により車高調整用制御手段
30bの制御動作を説明する際に合わせて説明する。
【0051】一方、ステップS3において、電磁弁1
6,18がどちらもオン状態でないと判断された場合に
は、ステップS5に進み、オート/ハード選択スイッチ
31がハードに切り換えられているか否かを判断し、ハ
ードに切り換えられている場合には、ステップS4に進
む。このステップS4で、前述の通り、全てのECS用
電磁弁6が閉位置(オン状態)に切換駆動されることに
より、エアスプリング3L,3Rと各補助エアタンク5
との連通が断たれ、エア室の容積が小となり、全てのエ
アスプリング3L,3Rのばね定数が大となる。
【0052】ステップS5において、オート/ハード選
択スイッチ31がオートに切り換えられていると判断さ
れた場合には、ステップS6に進み、バックアップラン
プスイッチ26がオン状態になっているか否かが判断さ
れる。ここで、バックアップランプスイッチ26がオン
状態であると判断された場合、車体20が後進しようと
している状態にあるので、ステップS7へ進み、前車軸
側の左右の電磁弁6を開位置(オフ状態)にする一方、
後車軸側の左右の電磁弁6を閉位(オン状態)に切換駆
動する。これにより、後車軸側のすべてのエアスプリン
グ3L,3Rのばね定数が大となるので、この後、ブレ
ーキングによりその後退が停止されても、車体20のノ
ーズアップを抑制することができる。
【0053】ステップS6において、バックアップラン
プスイッチ26がオン状態ではない、つまり車体20が
前進しようとしていると判断された場合には、車速が計
算される(ステップS8)。この車速は、本実施例で
は、車速センサ22からの検出信号に基づいて計算され
る。そして、ステップS9においては、ステップS8に
て求めた車速に基づいてエアサスペンションをハードに
すべきか否かを判断する。即ち、車速が例えば0〜30
km/h,80km/h以上の範囲にあるか、または、
これ以外の範囲(30〜80km/h)にあるかを判断
し、0〜30km/hもしくは80km/h以上の範囲
にあると判断された場合には、前述したステップS4に
進み、すべてのエアスプリング3L,3Rのばね定数を
大とする。これにより、低速時での車体20のローリン
グを防止できる一方、高速時での直進性を向上させるこ
とができる。
【0054】ステップS9において、その車速が30〜
80km/hの範囲にあると判断された場合には、ブレ
ーキング時か否かが判断される(ステップS10)。こ
の判断は、フットブレーキスイッチ25からの検出信号
に基づいてなされる。ここで、フットブレーキ(図示せ
ず)が踏み込まれているとすると、フットブレーキスイ
ッチ25がオン状態になり、ブレーキング時であると判
断してステップS11に進む。
【0055】このステップS11においては、前車軸側
の電磁弁6のすべてが閉位置(オン状態)に切換駆動さ
れる一方、後車軸側の電磁弁6はすべて開位置(オフ状
態)にある。これにより、前車軸側のエアスプリング3
L,3Rのばね定数が大に切り換えられることから、こ
の後の前進停止時での車体20のノーズダイブを抑制す
ることが可能になる。
【0056】ステップS10において、フットブレーキ
スイッチ25がオフ状態でブレーキング時ではないと判
断された場合には、ステアリングがどのような角速度で
回せれているか、その角速度の大きさが判断される(ス
テップS12)。この判断は、ステアリング角速度セン
サ23からの検出信号に基づいて、ステアリング角速度
が所定判別値よりも大、即ち、車体20が急旋回しよう
としていると判断された場合には、前述したステップS
4へ進む。このステップS4では、全てのエアスプリン
グ3L,3Rのばね定数が大に切り換えられるので、急
旋回時の車体20のローリングを抑制できる。なお、前
記所定判別値は車速に応じ、車速の増大に伴って小さい
値に設定するようにしてもよい。
【0057】一方、ステップS12でステアリング角速
度が所定判別値以下と判断された場合には、車体20が
実際にローリングしているか否かが判断される(ステッ
プS13)。この判断は、ローリングセンサ24からの
検出信号、つまり、ローリング信号に基づいてなされ、
車体20にローリングが生じていると判断されたとき、
即ち、ローリングセンサ24がオン状態になっている場
合には、前述したステップS4に進むことになるが、本
実施例では、ステップS13とステップS4との間に、
必要に応じてステップS14が追加されている。
【0058】このステップS14では、ローリングセン
サ24でのオン作動が設定時間継続しているか否かが判
断され、この条件を満たすときに、ステップS4に進
み、全てのエアスプリング3L,3Rのばね定数を大に
切り換え、車体20のローリングを抑制する。一方、ロ
ーリングセンサ24のオン作動が設定時間を満たす前に
終了するか、または、ステップS13にてローリングセ
ンサ24の作動がオフ状態であると判断された場合に
は、ステップS15へ進む。
【0059】ステップS15では、左前車軸側の電磁弁
6および右後車軸側の電磁弁6が開位置(オフ状態)に
なるのに対し、右前車軸側の電磁弁6および左後車軸側
の電磁弁6が閉位置(オン状態)に切り換え駆動され
る。つまり、車体20において対角線上に位置する前後
車軸の一方側のエアスプリング3L,3Rは、そのばね
定数が大となり、他方側のエアスプリング3L,3Rの
ばね定数が小となる。
【0060】従って、この場合には、ステップS4のよ
うに全てのエアスプリング3L,3Rのばね定数を大に
切り換えた場合と、全てのエアスプリング3L,3Rの
ばね定数を小に切り換えた場合との中間の状態を得るこ
とができる。なお、ステップS15では、各エアスプリ
ング3L,3Rのばね定数に対応するように、ショック
アブソーバ19の減衰力をも切り換える。また、ステッ
プS4,S7,S11,S15からは、ステップS1に
戻り、上述した制御動作を繰り返すことになる。
【0061】このように、図4のステップS4〜S15
による制御動作にて、車体20の状態、つまり、前進/
後進,車速条件,ブレーキング,急旋回,ローリング状
態に応じて、各エアスプリング3L,3Rのハード/ソ
フトの切換制御が行なわれるので、車体20の揺れ(ノ
ーズアップ,ノーズダウン,ローリング)を有効に抑止
することができる。
【0062】さて、次に、電子コントローラ30の車高
調整用制御手段30bによる車高調整制御動作を、図5
〜図11に従って説明する。まず、図5により車高調整
用制御手段30bの制御処理のメインプログラムについ
て説明すると、後述するブザー37の予吹鳴時間,各モ
ードごとのタイマー35,36の作動時間等の初期設定
を行なった後(ステップA)、図6により説明するニー
リング処理(ステップB)、図7により説明するニーリ
ング復帰処理(ステップC)、図8により説明する車高
ダウン処理(ステップD)、図9により説明する車高復
帰処理(ステップE)、図10により説明するエアシリ
ンダ給排気用電磁弁14の監視処理(ステップF)が順
次行なわれていく。なお、フェリー乗船スイッチ34を
オン操作することにより行なわれるフェリー乗船モード
時の処理のみ、図5に示すメインプログラムとは別個に
実行され、その動作については図11により説明する。
【0063】ここで、各ステップB〜Fおよびフェリー
乗船モード処理について詳細に説明する前に、図2に示
した本実施例のエアサスペンションの空圧回路による基
本的な車高調整動作について説明しておく。本実施例で
は、車高の低下調整に際しては、エアシリンダ給排気用
電磁弁14をオン状態にすることにより、エア供給源9
からエアシリンダ13への給気が行なわれ、このエアシ
リンダ13(センシングロッド12)が短縮する。これ
により、揺動レバー11が下方へ引かれ、レベリングバ
ルブ10は車高が高くなったのと同じ状態になって、各
エアスプリング3L,3R内のエアがレベリングバルブ
10の排気管10aから排出され車高の低下調整が行な
われるようになっている。
【0064】このとき、本実施例では、車高の低下調整
に伴い電磁弁14をオン状態にした場合、これと同時に
エアスプリング排気用電磁弁16もタイマー35により
所定時間だけオン状態にする。これにより、レベリング
バルブ10を通さずに各エアスプリング3L,3R内の
エアが電磁弁16の排気管16dから排出され、車高は
急速に低下する。電磁弁16がオン状態になっている時
間(駆動時間)は、タイマー35により規定されている
ので、上述した急速な車高の低下は、所定位置で止ま
り、その後は上述したようにレベリングバルブ10の排
気管10aから徐々に排気されて正確な設定車高まで低
下調整が行なわれる。
【0065】一方、車高を低下状態から復帰(所定車高
まで上昇)させる際には、電磁弁14をオン状態からオ
フ状態に切り換えることにより、エアシリンダ13内の
エアが電磁弁14の第3接続口14cから排出され、こ
のエアシリンダ13(センシングロッド12)は通常の
長さに復帰する。これにより、揺動レバー11が押し上
げられ、レベリングバルブ10は車高が低くなったのと
同じ状態になって、レベリングバルブ10を介してエア
供給源9からのエアが各エアスプリング3L,3R内へ
供給され車高の上昇・復帰調整が行なわれるようになっ
ている。
【0066】このとき、本実施例では、車高の復帰調整
に伴い電磁弁14をオフ状態にした場合、これと同時に
エアスプリング給気用電磁弁18もタイマー36により
所定時間だけオン状態にする。これにより、レベリング
バルブ10を通さずにエア供給源9からのエアが電磁弁
18を介して各エアスプリング3L,3R内へ供給さ
れ、車高は急速に上昇する。この時も電磁弁18がオン
状態になっている時間(駆動時間)が、タイマー36に
より規定されているので、上述した急速な車高の上昇
は、所定位置で止まり、その後は上述したようにレベリ
ングバルブ10を介してエア供給源9から徐々に給気さ
れて正確な設定車高まで復帰(上昇)調整が行なわれ
る。
【0067】本実施例では、上述のごとく行なわれる車
高調整動作を利用して、以下のように各モード、つま
り、ニーリングモード,車高ダウンモード,フェリー乗
船モードによる車高調整が行なわれる。まず、ニーリン
グモードの選択は、ニーリングスイッチ33をオン操作
することにより行なわれ、ニーリングモード選択時のニ
ーリング処理およびニーリング復帰処理は、それぞれ図
6,図7に示す手順で行なわれる。つまり、ニーリング
処理(ステップB)では、図6に示すように、ニーリン
グスイッチ33がオン状態になっているか否かを判断し
(ステップB1)、オン状態であれば、パーキングスイ
ッチ27がオン状態であるか否かつまり車体20が駐車
状態か否かを判断し(ステップB2)、オン状態であれ
ば、車速センサ22がゼロ出力か否かつまり車体20が
停車状態か否かを判断し(ステップB3)、ゼロ出力
(停止状態)であれば、車体20が既にニーリング状態
もしくは車高ダウン状態になっているか否かを判断する
(ステップB4,B5)。
【0068】これらのステップB1〜B5による判断に
より、ニーリングスイッチ33およびパーキングスイッ
チ27がともにオン状態であり、且つ、車速センサ22
の出力がゼロであり、未だニーリング状態にも車高ダウ
ン状態にもなっていないと判断された場合に、ステップ
B6〜B10による処理が実行される。ステップB1〜
B5の判断による条件を一つでも満たさない場合には、
リタンする。
【0069】ステップB6では、ニーリング処理および
ニーリング復帰処理で使用する前車軸側の電磁弁14,
16,18が正常な状態であるか否かを判断し、異常が
ある場合には、ブザー鳴動/ランプ表示用制御手段30
cに対しダイアグノシスランプ点灯指令を出力する(ス
テップB10)。これらの前車軸側の電磁弁14,1
6,18が正常であれば、ブザー鳴動/ランプ表示用制
御手段30cに対し、ニーリング動作を開始する前に所
定時間だけブザー37を鳴動させるためのブザー吹鳴指
令を出力する(ステップB7)。
【0070】そして、ブザー37の予吹鳴時間が経過し
た後、前車軸側のエアシリンダ給排気用電磁弁14がオ
ン状態に駆動されるとともに(ステップB8)、前車軸
側のエアスプリング排気用電磁弁16がタイマー35に
より所定時間だけオン状態に駆動される(ステップB
9)。このとき、図4のステップS3,S4にて説明し
た通り、電磁弁16(もしくは電磁弁14)がオン状態
になると、標準車高への復帰が完了するまで、ECS用
制御手段30aの動作によりECS用電磁弁6が強制的
にオン状態に切り換えられ閉位置に切換駆動され、エア
スプリング3L,3Rと各補助エアタンク5との連通が
断たれる。
【0071】これにより、ニーリング処理時に、電磁弁
16からの排気対象となるエア室の容積を、エアスプリ
ング3L,3Rのみとして小さくできるだけでなく、上
述したステップB8,B9の動作および図4のステップ
S3,S4の動作により、停車状態で車体20の前車軸
側のエアスプリング3L,3Rについて、これらのエア
スプリング3L,3Rから適当量のエアが、レベリング
バルブ10を通さずに電磁弁16から排出されることに
なるので、扉を有する車体20前側の車高低下つまりニ
ーリングが極めて短時間で行なわれ、乗員や乗客の乗降
を容易に行なえるようになる。
【0072】一方、車体20をニーリング状態から標準
車高位置に上昇・復帰させるニーリング復帰処理(ステ
ップC)は、ニーリングスイッチ33のオフ操作,パー
キングスイッチ27のオフ動作,もしくは車速センサ2
2の出力がゼロではなくなった場合のいずれかを検知し
た場合に行なわれる。つまり、ニーリング復帰処理(ス
テップC)では、図6に示すように、ニーリングスイッ
チ33がオフ状態になっているか否かを判断し(ステッ
プC1)、オフ状態でなければ、パーキングスイッチ2
7がオ状態であるか否かを判断し(ステップC2)、
状態でなければ、車速センサ22がゼロ出力か否か
を判断し(ステップC3)、ゼロ出力であればリタンす
る。
【0073】これらのステップC1〜C3による判断に
より、ニーリングスイッチ33のオフ状態,パーキング
スイッチ27のオフ状態,車速センサ22の非ゼロ出力
のいずれかが検知された場合、車体20が既にニーリン
グ状態もしくは車高ダウン状態になっているか否かを判
断し(ステップC4,C5)、ニーリング状態ではない
と判断された場合および車高ダウン状態であると判断さ
れた場合には、リタンする。そして、ステップC4,C
5により、ニーリング状態であると判断され、且つ、車
高ダウン状態ではないと判断された場合に、ステップC
6〜C11による処理が実行される。
【0074】ステップC6では、ニーリング復帰処理に
使用する前車軸側の電磁弁18が正常な状態であるか否
かを判断し、この電磁弁18に異常がある場合には、ブ
ザー鳴動/ランプ表示用制御手段30cに対しダイアグ
ノシスランプ点灯指令を出力するとともに(ステップC
10)、車高を標準車高に上昇・復帰させるべくエアシ
リンダ給排気用電磁弁14をオフ状態にする(ステップ
C11)。
【0075】これにより、エアシリンダ13内のエアが
電磁弁14の第3接続口14cから排出され、前車軸側
のエアシリンダ13(センシングロッド12)が通常の
長さに戻るため、揺動レバー11が押し上げられ、レベ
リングバルブ10を介してエア供給源9からのエアが前
車軸側のエアスプリング3L,3R内へ供給される。従
って、電磁弁18に異常が生じた場合には、レベリング
バルブ10を用いて前車軸側の車高が通常の位置(標準
車高)まで上昇・復帰する。
【0076】ステップC6により前車軸側の電磁弁18
が正常であると判断された場合には、ブザー鳴動/ラン
プ表示用制御手段30cに対し、ニーリング復帰動作を
開始する前に所定時間だけブザー37を鳴動させるため
のブザー吹鳴指令を出力する(ステップC7)。そし
て、ブザー37の予吹鳴時間が経過した後、前車軸側の
エアスプリング給気用電磁弁18がタイマー36により
所定時間だけオン状態に駆動されるとともに(ステップ
C8)、前車軸側のエアシリンダ給排気用電磁弁14が
オフ状態に駆動される(ステップC9)。
【0077】このとき、ECS用制御手段30aの図4
のステップS3,S4による処理動作により、車体20
の車高が標準車高に復帰するまでは、ECS用電磁弁6
が強制的にオン状態に切り換えられ閉位置に切換駆動さ
れているので、エアスプリング3L,3Rと各補助エア
タンク5との連通が断たれたままである。従って、ニー
リング復帰処理時にも、電磁弁18への給気対象となる
エア室の容積を、エアスプリング3L,3Rのみとして
小さくでき、さらに、上述したステップC8,C9の動
作および図4のステップS3,S4の動作により、車体
20の前車軸側のエアスプリング3L,3Rについて、
これらのエアスプリング3L,3Rへエア供給源9から
適当量のエアが、レベリングバルブ10を通さずに電磁
弁18を介して供給されることになるので、扉を有する
車体20前側の標準車高への上昇つまりニーリング復帰
が極めて短時間で行なわれる。
【0078】次に、車高ダウンモード選択時の車高ダウ
ン処理および車高復帰処理について説明すると、これら
の処理は、それぞれ図8,図9に示す手順で行なわれ
る。つまり、車高ダウン処理(ステップD)では、図8
に示すように、車高ダウンスイッチ32がオン状態にな
っているか否かを判断し(ステップD1)、オン状態で
あれば、車体20が既に車高ダウン状態になっているか
否かを判断し(ステップD2)、未だ車高ダウン状態に
なっていなければ、車体20が既にニーリング状態にな
っているか否かを判断する(ステップD3)。
【0079】これらのステップD1〜D3による判断に
より、車高ダウンスイッチ32がオン状態であり、且
つ、未だ車高ダウン状態になっていないと判断された場
合には、車体20がニーリング状態にあるか否かに応じ
て、ステップD4〜D13による処理が実行される。ス
テップD1,D2の判断により、車高ダウンスイッチ3
2がオフ状態であると判断された場合、もしくは、車体
20が既に車高ダウン状態になっていると判断された場
合には、リタンする。
【0080】本実施例では、ニーリング処理よりも車高
ダウン処理を優先させるもので、車体20がニーリング
状態にも車高ダウン状態にもなっていない場合には、ス
テップD4〜D8による車高ダウン処理が実行される一
方、車体20が既にニーリング状態になっている場合に
は、ステップD9〜D13による後車軸側の車高ダウン
処理が実行される。
【0081】車体20がニーリング状態にも車高ダウン
状態にもなっていない場合には、まず、ステップD4に
おいて、車高ダウン処理および車高復帰処理で使用する
前後全ての電磁弁14,16,18が正常な状態である
か否かを判断し、異常がある場合には、ブザー鳴動/ラ
ンプ表示用制御手段30cに対しダイアグノシスランプ
点灯指令を出力する(ステップD8)。これらの電磁弁
14,16,18が正常であれば、ブザー鳴動/ランプ
表示用制御手段30cに対し、車高ダウン動作を開始す
る前に所定時間だけブザー37を鳴動させるためのブザ
ー吹鳴指令を出力する(ステップD5)。
【0082】そして、ブザー37の予吹鳴時間が経過し
た後、前後のエアシリンダ給排気用電磁弁14がオン状
態に駆動されるとともに(ステップD6)、前後のエア
スプリング排気用電磁弁16がタイマー35により所定
時間だけオン状態に駆動される(ステップD7)。な
お、タイマー35により設定される前後の電磁弁16の
オン駆動時間は、必要に応じて前後それぞれ異なる値に
設定してもよい。
【0083】このときも、ECS用制御手段30aの図
4のステップS3,S4による処理動作により、電磁弁
16(もしくは電磁弁14)がオン状態になると、標準
車高への復帰が完了するまで、ECS用電磁弁6が強制
的にオン状態に切り換えられ閉位置に切換駆動され、エ
アスプリング3L,3Rと各補助エアタンク5との連通
が断たれる。
【0084】これにより、車高ダウン処理時において、
電磁弁16からの排気対象となるエア室の容積を、エア
スプリング3L,3Rのみとして小さくできるだけでな
く、上述したステップD6,D7の動作および図4のス
テップS3,S4の動作により、車体20の全てのエア
スプリング3L,3Rについて、これらのエアスプリン
グ3L,3Rから適当量のエアが、レベリングバルブ1
0を通さずに電磁弁16から排出されることになるの
で、各エアスプリング3L,3R内に適当量のエアを残
しながら車体20全体の車高を低下させる車高ダウンが
極めて短時間で行なわれる。
【0085】また、ステップD3により車体20がニー
リング状態であると判断された場合には、車体20の前
車軸側は既に車高低下状態になっているので、ステップ
D9〜D13により車体20の後車軸側の車高低下調整
を行なう。まず、ステップD9において、以後の車高ダ
ウン処理および車高復帰処理で使用する後車軸側の電磁
弁14,16,18が正常な状態であるか否かを判断
し、異常がある場合には、ブザー鳴動/ランプ表示用制
御手段30cに対しダイアグノシスランプ点灯指令を出
力する(ステップD13)。これらの電磁弁14,1
6,18が正常であれば、ブザー鳴動/ランプ表示用制
御手段30cに対し、車高ダウン動作を開始する前に所
定時間だけブザー37を鳴動させるためのブザー吹鳴指
令を出力する(ステップD10)。
【0086】そして、ブザー37の予吹鳴時間が経過し
た後、後車軸側のエアシリンダ給排気用電磁弁14がオ
ン状態に駆動されるとともに(ステップD11)、後車
軸側のエアスプリング排気用電磁弁16がタイマー35
により所定時間だけオン状態に駆動される(ステップD
12)。このとき、ECS用制御手段30aの図4のス
テップS3,S4による処理動作により、先のニーリン
グ処理動作に伴いECS用電磁弁6は強制的にオン状態
に切り換えられ閉位置に切換駆動され、エアスプリング
3L,3Rと各補助エアタンク5との連通が断たれたま
まとなっている。
【0087】従って、電磁弁16からの排気対象となる
エア室の容積は、エアスプリング3L,3Rのみとして
小さくなっており、さらに、上述したステップD11,
D12の動作および図4のステップS3,S4の動作に
より、車体20の後車軸側のエアスプリング3L,3R
について、これらのエアスプリング3L,3Rから適当
量のエアが、レベリングバルブ10を通さずに電磁弁1
6から排出され、各エアスプリング3L,3R内に適当
量のエアを残しながら車体20の後車軸側の車高が極め
て短時間で低下し、車体20全体が車高ダウン状態とな
る。
【0088】このような車高ダウンモード選択時には、
車体20が走行中であっても各エアスプリング3L,3
R内にエアを残した状態で車体20全体の車高が低下さ
れ、車高制限のあるトンネルを通過する際などに適して
いる。また、このとき、車高ダウン中を通じて(車高が
標準車高に復帰するまで)、ECS用電磁弁6が強制的
にオン状態に切り換えられ閉位置に切換駆動され続ける
ので、各エアスプリング3L,3Rはばね定数の大きい
ハード状態になっており、路面が荒れていても車体変動
を抑制でき、トンネル内で車高ダウン状態で走行しても
車体20の挙動を抑えながら安全に走行することができ
る。
【0089】一方、車体20を車高ダウン状態から標準
車高位置に上昇・復帰させる車高復帰処理(ステップ
E)では、図9に示すように、車高ダウンスイッチ32
がオフ状態になっているか否かを判断し(ステップE
1)、オフ状態であれば、車体20が既に車高ダウン状
態もしくはニーリング状態になっているか否かを判断し
(ステップE2,E3)、車高ダウン状態ではないと判
断された場合およびニーリング状態であると判断された
場合には、リタンする。そして、ステップE2,E3に
より、車高ダウン状態であると判断され、且つ、ニーリ
ング状態ではないと判断された場合に、ステップE4〜
E9による処理が実行される。
【0090】ステップE4では、車高復帰処理に使用す
る全ての電磁弁18が正常な状態であるか否かを判断
し、この電磁弁18に異常がある場合には、前述した図
7のステップC10,C11と同様に、ブザー鳴動/ラ
ンプ表示用制御手段30cに対しダイアグノシスランプ
点灯指令を出力するとともに(ステップE8)、車高を
上昇・復帰させるべくエアシリンダ給排気用電磁弁14
をオフ状態にする(ステップE9)。
【0091】これにより、エアシリンダ13内のエアが
電磁弁14の第3接続口14cから排出され、全てのエ
アシリンダ13(センシングロッド12)が通常の長さ
に戻るため、揺動レバー11が押し上げられ、レベリン
グバルブ10を介してエア供給源9からのエアが全ての
エアスプリング3L,3R内へ供給される。従って、電
磁弁18に異常が生じた場合には、レベリングバルブ1
0を用いて車体20全体の車高が通常の位置(標準車
高)まで上昇・復帰する。
【0092】ステップE4により全ての電磁弁18が正
常であると判断された場合には、ブザー鳴動/ランプ表
示用制御手段30cに対し、車高復帰動作を開始する前
に所定時間だけブザー37を鳴動させるためのブザー吹
鳴指令を出力する(ステップE5)。そして、ブザー3
7の予吹鳴時間が経過した後、全てのエアスプリング給
気用電磁弁18がタイマー36により所定時間だけオン
状態に駆動されるとともに(ステップE6)、全てのエ
アシリンダ給排気用電磁弁14がオフ状態に駆動される
(ステップE7)。
【0093】このとき、ECS用制御手段30aの図4
のステップS3,S4による処理動作により、車体20
全体の車高が標準車高に復帰するまでは、ECS用電磁
弁6が強制的にオン状態に切り換えられ閉位置に切換駆
動されているので、エアスプリング3L,3Rと各補助
エアタンク5との連通が断たれたままである。従って、
車高復帰処理時にも、電磁弁18への給気対象となるエ
ア室の容積を、エアスプリング3L,3Rのみとして小
さくできるだけでなく、上述したステップE6,E7の
動作および図4のステップS3,S4の動作により、車
体20の全てのエアスプリング3L,3Rについて、こ
れらのエアスプリング3L,3Rへエア供給源9から適
当量のエアが、レベリングバルブ10を通さずに電磁弁
18を介して供給されることになるので、車体20全体
の標準車高への上昇つまり車高復帰が極めて短時間で行
なわれる。なお、本実施例では、主供給管路8からエア
スプリング3L,3Rに至る経路として分岐供給管路7
と17との2系統がそなえられているので、エアスプリ
ング給気用電磁弁18をタイマー36により所定時間だ
けオン状態に駆動すると同時にエアシリンダ給排気用電
磁弁14をオフ状態に駆動することにより、分岐供給管
路7と17との2系統を通じて同時にエアスプリング3
L,3Rへエアを供給することもできる。この場合、車
高復帰をより短時間で行なうことができる。
【0094】ところで、エアスプリング排気用電磁弁1
6およびエアスプリング給気用電磁弁18は、車高ダウ
ンスイッチ32やニーリングスイッチ33がオン/オフ
操作されない限り作動せず、そのオン/オフ操作時で各
電磁弁16,18を作動させる直前には、ステップB
6,C6,D4,D9,E4にて説明したように、各電
磁弁16,18のチェックを行なっている。しかし、エ
アシリンダ給排気用電磁弁14は、車高調整期間中、常
時オン状態となって作動しているので、この電磁弁14
を監視する必要がある。
【0095】そこで、本実施例では、電子コントローラ
30の車高調整用制御手段30bに、図10に示すよう
なフローにより電磁弁14を監視する機能をもたせてい
る。この監視処理(ステップF)では、まず、前車軸側
の電磁弁14が正常な状態であるか否かを判断し(ステ
ップF1)、この電磁弁14が正常である場合には後車
軸側の電磁弁14が正常な状態であるか否かを判断する
(ステップF2)。
【0096】ステップF1で前車軸側の電磁弁14が異
常であると判断された場合には、ブザー鳴動/ランプ表
示用制御手段30cに対しダイアグノシスランプ点灯指
令を出力した後(ステップF3)、車体20が車高ダウ
ン状態になっているか否かを判断し(ステップF4)、
車高ダウン状態でない場合にはニーリング状態になって
いるか否かを判断する(ステップF5)。
【0097】ステップF4で車高ダウン状態であると判
断された場合には、前後の電磁弁14をいずれもオフ状
態にし(ステップF6)、全てのエアシリンダ13(セ
ンシングロッド12)を通常の長さに戻して揺動レバー
11を押し上げ、レベリングバルブ10を介してエア供
給源9からのエアを全てのエアスプリング3L,3R内
へ供給する。これにより、レベリングバルブ10を用い
て車体20全体の車高が通常の位置(標準車高)まで上
昇・復帰する(ステップF7)。
【0098】ステップF5でニーリング状態であると判
断された場合には、前車軸側の電磁弁14のみがオン状
態で後車軸側の電磁弁14はオフ状態であるので、前車
軸側の電磁弁14をオフ状態にし(ステップF8)、後
車軸側のエアシリンダ13(センシングロッド12)を
通常の長さに戻して揺動レバー11を押し上げ、レベリ
ングバルブ10を介してエア供給源9からのエアを前車
軸側のエアスプリング3L,3R内へ供給する。これに
より、レベリングバルブ10を用いて前車軸側の車高が
通常の位置(標準車高)まで上昇・復帰する(ステップ
F9)。なお、ステップF5でニーリング状態でないと
判断された場合にはリタンされる。
【0099】一方、ステップF2で後車軸側の電磁弁1
4が異常であると判断された場合には、ブザー鳴動/ラ
ンプ表示用制御手段30cに対しダイアグノシスランプ
点灯指令を出力した後(ステップF10)、車体20が
車高ダウン状態になっているか否かを判断し(ステップ
F11)、車高ダウン状態であると判断された場合に
は、前述したステップF6,F7と全く同様に、前後の
電磁弁14をいずれもオフ状態にし(ステップF1
2)、レベリングバルブ10を用いて車体20全体の車
高が通常の位置(標準車高)まで上昇・復帰する(ステ
ップF13)。なお、ステップF2で後車軸側の電磁弁
14が正常であると判断された場合およびステップF1
1で車高ダウン状態でないと判断された場合にはリタン
される。
【0100】このような電磁弁14の監視機能により、
前後の電磁弁14のいずれかに異常が発生した場合に
は、ブザー鳴動/ランプ表示用制御手段30cに対しダ
イアグノシスランプ点灯指令が出力されるとともに、車
体20がニーリング状態,車高ダウン状態のいずれの状
態であってもレベリングバルブ10によるニーリング復
帰もしくは車高復帰が行なわれ、車体20全体の車高が
標準車高に戻されるようになっている。
【0101】次に、フェリー乗船スイッチ34をオン操
作することにより、図5〜図10により上述した制御動
作とは別個に車高調整用制御手段30bにおいて割り込
み実行されるフェリー乗船モード時の制御処理動作を、
図11により説明する。ここで、図11(a)はフェリ
ー乗船モード状態への移行処理動作を説明するためのフ
ローチャート、図11(b)はフェリー乗船モード状態
からの復帰処理動作を説明するためのフローチャートで
ある。
【0102】まず、フェリー乗船モードの選択はフェリ
ー乗船スイッチ34をオン操作することにより行なわ
れ、図11(a)に示すように、フェリー乗船スイッチ
34のオン状態を検知すると(ステップG1)、パーキ
ングスイッチがオン状態であるか否かを判断し(ステッ
プG2)、オン状態であれば、車速センサ22がゼロ出
力か否かを判断し(ステップG3)、ゼロ出力(停止状
態)であれば、ステップG4へ移行する。
【0103】これらのステップG1〜G3による判断に
より、フェリー乗船スイッチ34およびパーキングスイ
ッチ27がともにオン状態であり、且つ、車速センサ2
2の出力がゼロであると判断された場合に、ステップG
4〜G8による処理が実行される。ステップG1〜G3
の判断による条件を一つでも満たさない場合には、フェ
リー乗船状態への車高調整処理は実行されない。
【0104】なお、上述したステップG1〜G3の判断
により、このフェリー乗船状態への車高調整処理は、車
体20が車高ダウンモード状態である場合(パーキング
スイッチ27がオフ状態)には実行されず、車体20が
ニーリングモード状態である場合(パーキングスイッチ
27がオン状態かつ車速センサ22がゼロ出力)には、
このニーリングモード状態に優先して実行されることに
なる。
【0105】さて、ステップG4では、フェリー乗船モ
ード状態への移行処理もしくはフェリー乗船モード状態
からの復帰処理で使用する前後全ての電磁弁14,1
6,18が正常な状態であるか否かを判断し、異常があ
る場合には、ブザー鳴動/ランプ表示用制御手段30c
に対しダイアグノシスランプ点灯指令を出力する(ステ
ップG5)。これらの電磁弁14,16,18が全て正
常であれば、ブザー鳴動/ランプ表示用制御手段30c
に対し、フェリー乗船モード状態への移行動作を開始す
る前に所定時間だけブザー37を鳴動させるためのブザ
ー吹鳴指令を出力する(ステップG6)。
【0106】そして、ブザー37の予吹鳴時間が経過し
た後、前後のエアシリンダ給排気用電磁弁14がオン状
態に駆動されるとともに(ステップG7)、前後のエア
スプリング排気用電磁弁16が無限時間オン状態に駆動
・保持される(ステップG8)。このときも、ECS用
制御手段30aの図4のステップS3,S4による処理
動作により、電磁弁16(もしくは電磁弁14)がオン
状態になると、標準車高への復帰が完了するまで、EC
S用電磁弁6が強制的にオン状態に切り換えられ閉位置
に切換駆動され、エアスプリング3L,3Rと各補助エ
アタンク5との連通が断たれる。
【0107】これにより、フェリー乗船モード状態への
移行処理時に、電磁弁16からの排気対象となるエア室
の容積を、エアスプリング3L,3Rのみとして小さく
できるとともに、上述したステップG7,G8および図
4のステップS3,S4の動作により、停車状態で車体
20の全てのエアスプリング3L,3Rについて、これ
らのエアスプリング3L,3R内の全エアが、無限時間
オン状態の電磁弁16から排出されることになるため、
車体20全体の車高を最低位置まで低下(タイダウン)
させたフェリー乗船モード状態に極めて短時間で到達さ
せることができ、フェリー乗船時等に車体20をフェリ
ー上に安全に固定できる。
【0108】一方、車体20をフェリー乗船モード状態
から標準車高位置に上昇・復帰させる復帰処理は、フェ
リー乗船スイッチ34のオフ操作により実行される。本
実施例では、車体20がフェリー乗船モード状態になっ
ている場合、パーキングスイッチ27はオン状態でロッ
クされ、車速センサ22が非ゼロ出力にもならないもの
として、本実施例のフェリー乗船状態からの復帰処理時
には、ニーリング復帰処理時のようにパーキングスイッ
チ27のオフ動作,車速センサ22の非ゼロ出力につい
ての検知・判断は行なわず、フェリー乗船スイッチ34
のオフ操作を検知した場合に復帰処理を実行するものと
している。
【0109】つまり、図11(b)に示すように、フェ
リー乗船スイッチ34のオフ状態を検知すると(ステッ
プG9)、その復帰処理に使用する前後の電磁弁18が
正常な状態であるか否かを判断し(ステップG10)、
この電磁弁18に異常がある場合には、ブザー鳴動/ラ
ンプ表示用制御手段30cに対しダイアグノシスランプ
点灯指令を出力するとともに(ステップG11)、車高
を標準車高に上昇・復帰させるべくエアスプリング排気
用電磁弁16をオフ状態にするとともに、エアシリンダ
給排気用電磁弁14をオフ状態にする(ステップG1
2)。
【0110】これにより、エアシリンダ13内のエアが
電磁弁14の第3接続口14cから排出され、全てのエ
アシリンダ13(センシングロッド12)が通常の長さ
に戻るため、揺動レバー11が押し上げられ、レベリン
グバルブ10を介してエア供給源9からのエアが全ての
エアスプリング3L,3R内へ供給される。従って、電
磁弁18に異常が生じた場合には、レベリングバルブ1
0を用いて車体20全体の車高が通常の位置(標準車
高)まで上昇・復帰する。
【0111】ステップG10により全ての電磁弁18が
正常であると判断された場合には、ブザー鳴動/ランプ
表示用制御手段30cに対し、フェリー乗船モード状態
からの復帰動作を開始する前に所定時間だけブザー37
を鳴動させるためのブザー吹鳴指令を出力する(ステッ
プG13)。そして、ブザー37の予吹鳴時間が経過し
た後、全ての電磁弁16をオン状態からオフ状態に切換
駆動してから(ステップG14)、全てのエアスプリン
グ給気用電磁弁18がタイマー36により所定時間だけ
オン状態に駆動されるとともに(ステップG15)、全
てのエアシリンダ給排気用電磁弁14がオフ状態に駆動
される(ステップG16)。
【0112】このとき、ECS用制御手段30aの図4
のステップS3,S4による処理動作により、車体20
全体の車高が標準車高に復帰するまでは、ECS用電磁
弁6が強制的にオン状態に切り換えられ閉位置に切換駆
動されているので、エアスプリング3L,3Rと各補助
エアタンク5との連通が断たれたままである。従って、
フェリー乗船モード状態からの復帰処理時にも、電磁弁
18への給気対象となるエア室の容積を、エアスプリン
グ3L,3Rのみとして小さくでき、さらに、上述した
ステップG15,G16の動作および図4のステップS
3,S4の動作により、全てのエアスプリング3L,3
Rについて、これらのエアスプリング3L,3Rへエア
供給源9から適当量のエアが、レベリングバルブ10を
通さずに電磁弁18を介して供給され、車体20全体の
フェリー乗船モード状態から標準車高への上昇復帰が極
めて短時間で行なわれる。
【0113】さて、次に、電子コントローラ30のブザ
ー鳴動/ランプ表示用制御手段30cによるブザー鳴動
処理動作を図12に従って説明する。このブザー鳴動/
ランプ表示用制御手段30cによるブザー鳴動処理動作
では、図12に示すように、まず、車高調整用制御手段
30bから車高調整動作開始前のブザー吹鳴指令を受け
たか否かを判断する(ステップH1)。このブザー吹鳴
指令は、前述した通り、ステップB7,C7,D5,D
10,E5,G6,G13において車高調整動作開始前
に出力されるもので、このブザー吹鳴指令が受けたと判
断された場合には、所定時間だけブザー37を連続鳴動
させる(予吹鳴機能;ステップH2)。なお、ブザー吹
鳴指令を受けない場合にはリタンされる。
【0114】ステップH2による予吹鳴が行なわれた
後、各ステップB9,C8,D7,D12,E6,G
8,G15により電磁弁16もしくは18がオン状態と
されている間(つまり車高調整動作中)は、ステップH
3の判断(電磁弁16もしくは18がオン状態であるか
否か)により、ブザー37を断続的に鳴動させる(車高
調整鳴動告知機能;ステップH4)。
【0115】そして、ステップH3により電磁弁16,
18がオフ状態になったと判断された場合には、ブザー
37の鳴動を停止させる(ステップH5)。このとき、
フェリー乗船モード選択時のステップG8では、電磁弁
16が無限時間オン状態とされるため、図12に示すフ
ローチャートでは、ステップH3,H4によりブザー3
7が断続的に鳴動し続けることになってしまうので、フ
ェリー乗船モード選択時の車高低下調整時のみは、車体
20の車高が最低位置まで低下した時点で、ステップH
4によるブザー37の断続的鳴動を停止させるようにす
る。
【0116】このように、車高調整動作開始前に所定時
間だけブザー37を連続鳴動させる予吹鳴機能と、車高
調整動作中にはブザー37を断続的に鳴動させる車高調
整鳴動告知機能とをそなえることにより、車高調整を行
なう車体20の内部や近傍の乗員,乗客に対して、車高
調整を開始する旨および車高調整動作中である旨を告知
し警告を発することができるので、車体20の車高調整
を安全に行なうことができる。
【0117】また、ブザー鳴動/ランプ表示用制御手段
30cによるランプ表示処理動作としては、ダイアグノ
シスランプ39の点灯状態を制御するフェール表示機能
と、本実施例の装置による車高調整が3つのモード(車
高ダウンモード,ニーリングモード,フェリー乗船モー
ド)のいずれの選択により行なわれているかを表示する
モード表示機能とが行なわれる。
【0118】フェール表示機能では、前述したステップ
B10,C10,D8,D13,E8,F3,F10,
G5,G11による電磁弁14,16,18のフェール
検出に伴い、車高調整用制御手段30bからダイアグノ
シスランプ点灯指令を受けると、ダイアグノシスランプ
39が点灯される。また、モード表示機能では、車高ダ
ウンスイッチ32,ニーリングスイッチ33,フェリー
乗船スイッチ34のいずれがオン操作されたかに基づい
て、オン操作されたスイッチ32〜34に対応するラン
プ、つまり車高ダウンモード用ランプ38a,ニーリン
グモード用ランプ38b,フェリー乗船モード用ランプ
38cのいずれかを、車高調整開始時から車高復帰完了
までの間(車高調整期間中)に亘って点灯させることに
より、選択されたモードを明確に表示している。
【0119】このような表示機能をそなえることによ
り、本実施例の装置における電磁弁14,16,18の
フェール状態をダイアグノシスランプ39により運転者
等に対して明確に表示・告知することができるととも
に、車高調整時には、いずれのモードが選択されている
かを各ランプ38a〜38cにより運転者等に対して明
確に表示・告知することができる。
【0120】なお、各ランプ38a〜38cの点灯期間
については、各スイッチ32〜34にオン操作時からオ
フ操作時までの間としてもよいし、前述したステップS
4による判断と同様に、車高調整の開始を電磁弁16の
オン駆動(もしくは電磁弁14のオン駆動)により検知
し、車高復帰の完了を、電磁弁18のオン状態からオフ
状態への切換(もしくは車高センサ22による車体20
の標準車高への復帰検出)により検知し、これらの車高
調整開始から車高復帰完了までの期間を点灯期間として
もよい。
【0121】このように、本実施例の装置によれば、電
磁弁16,18を用いることでレベリングバルブ10を
介さずに各エアスプリング3L,3Rへのエアの給排気
が行なわれるため、車高の低下/復帰調整が迅速に行な
われるだけでなく、これらの電磁弁16,18による車
高の低下/復帰調整時には、ECS用制御手段30aに
よりECS用電磁弁6が強制的に閉状態(オン状態)に
駆動制御されるため、各エアスプリング3L,3Rが補
助エアタンク5から遮断され、車高調整時における排気
/給気の対象となるエア室の容積を小さくでき、車高の
低下/復帰調整をより迅速に行なえるようになって、電
子制御エアサスペンション車における車高の低下/復帰
調整を極めて短時間で行なえるのである。
【0122】また、車高の復帰調整時に、補助エアタン
ク5と各エアスプリング3L,3Rとが遮断され排気/
給気の対象となるエア室の容積が小さいため、エアの充
填消費が少なくて済み、エアを圧縮供給するためのエア
コンプレッサの寿命も長くできるなどの利点もある。さ
らに、本実施例によれば、車高ダウンモード,ニーリン
グモード,フェリー乗船モードの3種類のうちのいずれ
かを選択して、車高調整用制御手段30bにより各モー
ドに応じた車高調整が行なわれるので、各種状況に臨機
応変に対応した車高調整を実現できる。
【0123】例えば、前述したように、車高ダウンモー
ド選択時には、全てのエアスプリング3L,3R内にエ
アを残し且つ該エアスプリング3L,3Rをハード(E
CS用電磁弁6を閉)とした状態で車体20全体の車高
が低下されるので、車体20に大きな揺れを生じさせる
ことなく車高制限のあるトンネルを安全に通過できるよ
うになる。ニーリングモード選択時には、停車状態で前
車軸側のエアスプリング3L,3Rについて適当量のエ
アが排出され、扉の有る車体20前側の車高が低下さ
れ、乗員や乗客の乗降を容易に行なえるようになる。フ
ェリー乗船モード選択時には、全てのエアスプリング3
L,3Rから全エアが排出され車体20全体の車高が最
低位置まで低下され、フェリー乗船時等に車体20をフ
ェリー上に安全に固定できる。
【0124】またさらに、本実施例では、車高調整用制
御手段30bによる電磁弁16,18の駆動制御時間が
それぞれタイマー35,36により各モードに応じて規
定されているので、電磁弁16,18による急速な車高
調整を各モードに応じた所定の位置で確実に停止させる
ように制御することが容易にでき、その後の車高位置の
微調整はレベリングバルブ10を用いて行なわれるよう
になる。そして、前述したように、各モードでの車高低
下調整時には、タイマー35,36により所定時間だけ
エアスプリング3L,3Rと大気(外気)とを連通する
ように排気用電磁弁16を切り換えることによりエアス
プリング3L,3Rから第1分岐供給管路7および排気
用電磁弁16を通じて大気中へエアを排出して車高を急
速に低下させることができる。タイマー35,36によ
り規定される所定時間を経過した後は、レベリングバル
ブ10とエアスプリング3L,3Rとの間を連通するよ
うに排気用電磁弁16を切り換えることにより、レベリ
ングバルブ10を用いて設定車高まで正確に車体20が
低下調整される。また、車高復帰調整時には、タイマー
35,36により所定時間だけエアスプリング3L,3
Rとエア供給源9とを連通するように給気用電磁弁18
を切り換えることにより、第2分岐供給管路17からエ
アスプリング3L,3Rにエアが直接的に供給されるの
で、車高を急速に上昇させることができる。タイマー3
5,36により規定される所定時間を経過した後は、レ
ベリングバルブ10を用いて設定車高まで正確に車体2
0が復帰調整される。上述のように、主供給管路8から
エアスプリング3L,3Rに異なる経路で至る2種類の
分岐供給管路7,17をそなえ、一方にレベリングバル
ブ10および排気用電磁弁16を介設し、他方に給気用
電磁弁18を介設することにより、車高低下調整時およ
び車高復帰調整時に目標車高への到達時間を大幅に短縮
することができる。
【0125】さらにまた、本実施例では、ブザー鳴動/
ランプ表示用制御手段30cによる予吹鳴機能および車
高調整鳴動告知機能により、乗員,乗客に対して車高調
整を開始する旨および車高調整動作中である旨を告知す
ることで警告が発せられ、車体20の車高調整が安全に
行なわれる。また、電磁弁14,16,18のフェール
状態やスイッチ32〜34により選択されたモードが、
ダイアグノシスランプ39や各ランプ38a〜38cに
より運転者等に対して明確に表示・告知されるので、運
転者等が本実施例の装置のフェール状態や車高調整状態
を正確に把握し管理できる利点もある。
【0126】なお、上記実施例では、車高調整期間中に
亘ってECS用電磁弁6を強制的に閉状態(オン状態)
に駆動しているが、電磁弁16もしくは18がオン状態
になっている間のみECS用電磁弁6を閉状態に駆動す
るようにしてもよい。この場合、車高ダウンモードを選
択し車体20の車高を所定位置まで低下させた状態で、
エアスプリング3L,3Rについてハード/ソフトの切
換を行なうことができる。
【0127】また、上記実施例では、車体20の前側に
扉がありニーリングモード選択時には車体20前側の車
高を低下させるようにしたが、本発明の装置は、これに
限定されるものではなく、扉が車体20の中央部や後側
にある場合にも同様に適用され、扉が中央部にある場合
には車体20全体の車高を所定位置まで低下させる一
方、扉が後側にある場合には車体20後側の車高を所定
位置まで低下させる。
【0128】さらに、上記実施例では、本発明の装置を
バスに適用した場合について説明したが、本発明は、こ
れに限定されるものではなく、電子制御エアサスペンシ
ョンを有する車であれば、上記実施例と同様に適用され
同様の作用効果が得られる。
【0129】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明の電子制御
エアサスペンション車用車高調整装置によれば、排気用
電磁弁および給気用電磁弁による車高調整時には、エア
スプリングが補助エアタンクから遮断され、車高調整時
の排気/給気の対象となるエア室の容積を小さくでき、
車高の低下/復帰調整をより迅速に行なえ、電子制御エ
アサスペンション車における車高の低下/復帰調整を極
めて短時間で行なえる。また、このとき、排気/給気の
対象となるエア室の容積が小さいため、車高の復帰調整
時におけるエアの充填消費を少なくでき、エアを圧縮供
給するためのエアコンプレッサの寿命も長くできる利点
もある。
【0130】また、車高調整用制御手段が、エアスプリ
ング内に適当量のエアを残しながら前記車体全体の車高
を低下させる車高ダウンモードと、停車状態で車体の扉
位置に応じた位置の前記エアスプリングについて該エア
スプリングから適当量のエアを排出し前記扉位置に応じ
た前記車体の位置の車高を低下させるニーリングモード
と、フェリー乗船時に前記エアスプリングから全てのエ
アを排出し前記車体全体の車高を最低位置まで低下させ
るフェリー乗船モードとのいずれかを選択して前記の排
気用電磁弁および給気用電磁弁を駆動制御するように構
成することにより、車高制限の有るトンネル通過時,乗
員や乗客の乗降時,フェリー乗船時の安定的な固定時な
どの各種状況に臨機応変に対応した車高調整を実現でき
る。
【0131】さらに、車高ダウンモード,ニーリングモ
ードおよびフェリー乗船モードのいずれかの選択に伴う
車高調整用制御手段による排気用電磁弁および給気用電
磁弁の駆動制御時間を規定するタイマーをそなえること
により、これらの電磁弁による急速な車高調整を各モー
ドに応じた所定の位置で確実に停止させるように容易に
制御できる利点がある。またさらに、主供給管路からエ
アスプリングに異なる経路で至る2種類の分岐供給管路
をそなえ、一方にレベリングバルブおよび排気用電磁弁
を介設し、他方に給気用電磁弁を介設することにより、
車高低下調整時および車高復帰調整時に目標車高への到
達時間を大幅に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例としての電子制御エアサスペ
ンション車用車高調整装置の構成を示すブロック図であ
る。
【図2】本実施例におけるエアサスペンションの空圧回
路を示す構成図である。
【図3】本実施例の装置をそなえたバス(電子制御エア
サスペンション車)を示す斜視図である。
【図4】本実施例のECS用制御手段による制御処理動
作を説明するためのフローチャートである。
【図5】本実施例の車高調整用制御手段によるメインプ
ログラムを示すフローチャートである。
【図6】本実施例の車高調整用制御手段によるニーリン
グ処理動作を説明するためのフローチャートである。
【図7】本実施例の車高調整用制御手段によるニーリン
グ復帰処理動作を説明するためのフローチャートであ
る。
【図8】本実施例の車高調整用制御手段による車高ダウ
ン処理動作を説明するためのフローチャートである。
【図9】本実施例の車高調整用制御手段による車高復帰
処理動作を説明するためのフローチャートである。
【図10】本実施例の車高調整用制御手段によるエアシ
リンダ給排気用電磁弁の監視処理動作を説明するための
フローチャートである。
【図11】本実施例の車高調整用制御手段によるフェリ
ー乗船モード選択時の処理動作を説明するためのもの
で、(a)はフェリー乗船モード状態への移行処理動作
を説明するためのフローチャート、(b)はフェリー乗
船モード状態からの復帰処理動作を説明するためのフロ
ーチャートである。
【図12】本実施例のブザー鳴動/ランプ表示用制御手
段によるブザー鳴動処理動作を説明するためのフローチ
ャートである。
【符号の説明】
1 前車軸側サスペンション部 2 後車軸側サスペンション部 3L,3R エアスプリング 4 接続管路 5 補助エアタンク 6 エアサスペンション(ECS)用電磁弁 7 分岐供給管路(第1分岐供給管路) 8 主供給管路 8a サプライバルブ 9 エア供給源 10 レベリングバルブ 10a 排気管 11 揺動レバー 12 センシングロッド 13 エアシリンダ 14 エアシリンダ給排気用電磁弁 15 分岐供給管路 16 エアスプリング排気用電磁弁(三方電磁弁) 17 分岐供給管路(第2分岐供給管路) 18 エアスプリング給気用電磁弁 19 ショックアブソーバ 20 車体 21 圧力センサ 22 車速センサ 23 ステアリング角速度センサ 23a ステアリング 24 ローリングセンサ 25 フットブレーキスイッチ 26 バックアップランプスイッチ 27 パーキングスイッチ 28 車高センサ 29 インジケータ 30 電子コントローラ 30a エアサスペンション(ECS)用制御手段 30b 車高調整用制御手段 30c ブザー鳴動/ランプ表示用制御手段 31 オート/ハード選択スイッチ 32 車高ダウンスイッチ 33 ニーリングスイッチ 34 フェリー乗船スイッチ 35,36 タイマー 37 ブザー(スピーカ) 38a 車高ダウンモード用ランプ 38b ニーリングモード用ランプ 38c フェリー乗船モード用ランプ 39 ダイアグノシスランプ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭62−20782(JP,A) 実開 平3−25313(JP,U) 実開 平1−74906(JP,U) 実開 昭62−139716(JP,U) 実開 昭58−98211(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B60G 17/015 B60G 17/052 B60G 17/056

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 車体と前後左右の各車軸との間に少なく
    とも1個ずつ設けられ該車体を支持するエアスプリング
    と、前記の各エアスプリングに連通接続される補助エア
    タンクと、前記のエアスプリングと補助エアタンクとの
    間に介装されるエアサスペンション用電磁弁と、前記車
    体の状態に応じて前記エアサスペンション用電磁弁の開
    閉状態を制御するエアサスペンション用制御手段とをそ
    なえ、前記エアサスペンション用電磁弁を前記エアサス
    ペンション用制御手段にて開閉制御し前記のエアスプリ
    ングと補助エアタンクとの間を接断することにより前記
    エアスプリングのばね定数を調整する電子制御エアサス
    ペンション車用の車高調整装置であって、前記エアスプ
    リングと該エアスプリングにエアを供給するエア供給源
    との間にレベリングバルブをそなえ、該レベリングバル
    ブのセンシングロッドにエアシリンダを介装し、前記エ
    アシリンダに対して給気あるいは排気を行なうことによ
    り前記車体の車高の低下/復帰調整を行なうものにおい
    て、前記エア供給源に接続される主供給管路から分岐され、
    前記レベリングバルブを経由して前記エアスプリングに
    至る第1分岐供給管路と、 前記主供給管路から分岐され、前記第1分岐供給管路と
    は独立した経路で前記エアスプリングに至る第2分岐供
    給管路と、 前記のレベリングバルブとエアスプリングとの間の前記
    第1分岐供給管路に介設され、 前記車体の車高低下調整
    時には前記のレベリングバルブとエアスプリングとの間
    を遮断するとともに前記エアスプリングと大気とを連通
    して前記レベリングバルブを通さずに前記エアスプリン
    グからエアを排出する三方電磁弁からなる排気用電磁弁
    前記第2分岐供給管路に介設され、車高非調整時には前
    記のエア供給源とエアスプリングとの間を遮断する一
    方、 前記車体の車高復帰調整時には前記のエア供給源と
    エアスプリングとの間を連通して前記エア供給源からの
    エアを前記第2分岐供給管路を通じて前記エアスプリン
    グへ直接的に供給する給気用電磁弁と 記車体の車高調整時に、走行状態で前記エアスプリン
    グに適当量のエアを残しながら前記車体全体の車高を低
    下させる車高ダウンモードと、停車状態で前記車体の扉
    位置に応じた位置の前記エアスプリングについて該エア
    スプリングから 適当量のエアを排出し前記扉位置に応じ
    た前記車体の位置の車高を低下させるニーリングモード
    と、フェリー乗船時に前記エアスプリングから全てのエ
    アを排出し前記車体全体の車高を最低位置まで低下させ
    るフェリー乗船モードとのいずれかを選択して、前記の
    排気用電磁弁および給気用電磁弁を駆動制御する車高調
    整用制御手段と 前記の車高ダウンモード,ニーリングモードおよびフェ
    リー乗船モードのいずれかの選択に伴う前記車高調整用
    制御手段による前記の排気用電磁弁および給気用電磁弁
    の駆動制御時間を規定するタイマーと がそなえられ、 前記車高調整用制御手段による前記車体の車高調整時に
    は、前記エアサスペンション用制御手段により前記エア
    サスペンション用電磁弁が強制的に閉状態に駆動制御さ
    れることを特徴とする、エアサスペンション車用車高調
    整装置。
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