JP2946643B2 - ポリエステルフイルム - Google Patents

ポリエステルフイルム

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JP2946643B2 JP2143067A JP14306790A JP2946643B2 JP 2946643 B2 JP2946643 B2 JP 2946643B2 JP 2143067 A JP2143067 A JP 2143067A JP 14306790 A JP14306790 A JP 14306790A JP 2946643 B2 JP2946643 B2 JP 2946643B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、ポリエステルフイルムに関するものであ
る。特に本発明は、耐湿熱性、機械的特性及び光学特性
に優れたポリエステルフイルムに関するものである。
ここで、本願においては、特にことわりのない限り、
「フイルム」には、一般にシートと呼ばれる厚物も含む
ものとする。
[従来の技術] 光学用の支持体層としては、従来まで、ポリアクリル
系フイルムや、セルロースエステル系フイルム或はポリ
カーボネートフイルムが用いられていた。
ところが、ポリアクリル系フイルムは、光学特性に優
れているものの、湿度による寸法変化を起こしやすく、
また加工性が悪いといった問題がある。そこで、吸水性
を抑えるために、疏水性を有するモノマーを共重合して
いるが(たとえば特開昭58−127754、特開昭58−1151
5)機械的強度や耐熱性が低下し好ましくない。
セルロースエステル系フイルムは、耐熱性、光学特性
に優れており、たとえば偏光フイルムの保護フイルムと
して一般に用いられているが(偏光フイルムの応用、p1
35、1986、シーエムシー社)、湿度による寸法変化が大
きく、高温高湿下での加水分解が激しいといった問題が
ある。
ポリカーボネートフイルムは、湿度の影響を受けにく
く形成しやすい反面、光学的歪が生じやすいという問題
がある。そのため、一般に分子量を下げたり、共重合が
ブレンドによるもの(例えば特開昭60−215051)や、特
定のビスフェノール誘導体を用いるもの(特開昭63−35
619)があるが、必ずしも良好な低複屈折性は得られて
いない。また、ポリカーボネートフイルムは、耐溶剤性
が極めて悪いという問題もある。
そこで、ポリエステルフイルムを支持体層として用い
ればよいという提案がなされていた。ポリエステルフイ
ルムは、耐湿性がポリカーボネートフイルムと同じレベ
ルであり、また成形性に優れ、透明性を有するフイルム
である。
[発明が解決しようとする課題] しかし、ポリエステルフイルムを支持体層とした光学
媒体においても、耐熱性・耐溶剤性が不十分であり、光
学的歪すなわち複屈折が大きくなりやすいという欠点を
有している。
すなわち、耐熱性が悪化すると、光学媒体の加工時、
或いは、製品としての使用時に受ける熱によって、該媒
体が変形し、屈折率が生じたり、製品そのものの外観が
損なわれたりする。
また、耐溶剤性が悪いと、例えば偏光フイルムにおい
ては、透明フイルムが偏光子と貼り併せる際に用いられ
る接着剤によって、白化あるいは変形してしまう。
更に、フイルムに複屈折があると、例えばこのフイル
ムを保護フイルムとして用いた偏光板を通して物体を見
た場合、方向により保護フイルム上に光の干渉による色
むらが生じることがあり、液晶表示用の偏光フイルムな
どとしては適さない。或いは、複屈折のあるフイルムを
光記録用保護フイルムとして利用する場合、記録信号の
読取りに偏光したレーザ光を用いているため、信号強度
が低下し信号の読取りエラーが発生してしまう。
この屈折率は、フイルム成形時に容易に発生する。こ
の屈折率が配向複屈折であり、この値が大きいと光学用
途において支障となるわけである。
[課題を解決するための手段] 本発明は、かかる欠点を解消するために次の構成を有
する。すなわち、少なくともA層とB層とからなり、A
層のポリエステルの光弾性係数が1.6×10-3mm2/kgf以
下、B層のポリエステルのガラス転移温度が75℃以上で
あるポリエステルフイルムであって、溶剤浸漬時のヘイ
ズ値が5%以下、全層における面内複屈折が2.5×10-4
以下、さらにポリエステルフイルムの少なくとも片側の
表層はA層であることを特徴とするポリエステルフイル
ムに関するものである。
通常、ポリエステルフイルムは口金より押出して成形
されるが、その際に生じる複屈折は、押出時の剪断およ
びドラフトによるものであるが、このフイルムの配向を
厚み方向に詳細に測定したところ、フイルムはその表層
部分が大きく配向し、中層部分はほとんど配向しないこ
とがわかった。そこで大きな剪断応力を受ける表層部分
に低配向性のポリマーを積層すればフイルム全体の複屈
折を小さくすることができる。すなわち、ポリエステル
フイルムの少なくとも片側の表層に光弾性係数が1.6×1
0-3mm2/kgf以下、好ましくは1.2×10-3mm2/kgf以下、更
に好ましくは0.9×10-3mm2/kgf以下の層(A層)を有す
ることにより、複屈折の小さいフイルムを得ることがで
きる。このA層である低光弾性層は、フイルムの片側積
層でもよく、両側積層でもよい。
A層に用いられるポリエステルのジカルボン酸として
は例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナ
フタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン
酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェノキシエ
タンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハ
ク酸、アジピン酸、セバチン酸、スチルベンジカルボン
酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルチオエーテル
ジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、フェニ
ルインダンジカルボン酸、α,β−ビス(2−クロルフ
ェノキシ)エタン4,4′−ジカルボン酸、更にp−オキ
シ安息香酸などのオキシカルボン酸などを挙げることが
できる。これらのうち、本発明の場合、特にテレフタル
酸、イソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ナフ
タレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェ
ニルスルホンジカルボン酸、アジピン酸、セバチン酸、
α,β−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン4,4′−
ジカルボン酸が好ましい。
更にA層に用いられるポリエステルに実質的に線状で
ある範囲内で、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメ
リット酸、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの三
官能基以上の多官能性化合物を共重合させても、更に
は、ポリエステル主鎖に分子量300〜70000程度のポリマ
ー、例えばポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポ
リアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリシロキサン、
ポリメチルメタクリレート、ポリブチルアクリレート及
びそれらの誘導体などを側鎖にグラフト共重合させてお
いてもよい。
また、A層に用いられるポリエステルのジヒドロキシ
化合物成分としては、エチレングリコール、トリメチレ
ングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキ
サンジメタノール、ビス(4−ヒドロキシエトキシフェ
ニル)スルホン、2,2−ビス(4−ヒドロキシジフェニ
ル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフ
ェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ス
ルホン、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレン
グリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリ
コール、ハイドロキノン、シクロヘキサンジオールなど
を挙げることができる。これらのうち、本発明の場合、
特にエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノー
ル、ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホ
ン、ハイドロキノンが好ましい。
また、A層の光弾性を低下させるための、共重合成分
として、イソフタル酸、ジフェニルスルホン−2,2′−
ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−2,2′−ジカルボ
ン酸、ジフェニル−2,2′−ジカルボン酸(ジフェン
酸)、ジフェニルチオエーテル−2,2′−ジカルボン
酸、ジフェニルケトン−2,2′−ジカルボン酸、フェニ
ルインダン−4′,5−ジカルボン酸といった二官能基の
位置が非対称であるものを含むことが好ましい。特に好
ましい共重合成分は、ジフェニルスルホン−2,2′−ジ
カルボン酸、ジフェニル−2,2′−ジカルボン酸(ジフ
ェン酸)、フェニルインダン−4′,5−ジカルボン酸で
あり、添加量は5モル%〜50モル%であり、好ましくは
15モル%〜45モル%であり、より好ましくは25モル%〜
40モル%である。これによって、共重合したポリエステ
ルの主鎖が屈曲した構造をとり易く、非晶性や光学特性
が向上する。つまりポリマーがフイルムとなった時に、
外力に対してポリマーが配向し難くなるため、複屈折の
発生が抑えられる。
又、A層のポリエステルに側鎖をつけることにより、
ポリエステルの分子鎖軸方向の分極率とそれに垂直な方
向の分極率の差が小さくなり、ポリマーの固有複屈折が
低下するため、光学的歪みが起きにくい。側鎖をつける
方法としては例えばマクロモノマーといわれる末端に重
合可能な官能基としてジヒドロキシル基やジカルボキシ
ル基をもつ高分子量のモノマーを使う方法がある。その
構造は、 あるいは などがあり、ここで、Rには、スチレン、スチレンアク
リロニトリル、メチルメタクリレート、ブチルアクリレ
ートなどがある。マクロモノマーの分子量は300〜6000
が好ましい。これらのマクロモノマーを他のジカルボン
酸及びジヒドロキシ化合物と共重合すれば容易に側鎖を
もうけることができる。
本発明のポリエステルフイルムを溶剤に浸漬した時の
ヘイズ値は5%以下であり、好ましくは3%以下、更に
好ましくは1%以下である。ここでいう溶剤とは、芳香
族系、ケトン系、クロル系、エステル系の溶剤であり、
たとえば、芳香族系ではトルエン、キシレン、ケトン系
ではアセトン、メチルエチルケトン、クロル系ではクロ
ロホルム、塩化メチレン、エステル系では酢酸エチルな
どが挙げられる。本発明のポリエステルフイルムは、こ
れら溶剤の少なくとも1つにおいて、浸漬時のヘイズ値
が上記の値以下になればよい。但し、A層が片面積層の
場合は、溶剤をA層表面のみに接した時のヘイズ値で表
わす。ポリマーが溶剤に接触すると、膨潤及び溶解、あ
るいは結晶化によってヘイズ値が上昇することがある。
ポリマーの膨潤や溶解を抑制するために、ポリマーと溶
剤の親和性を低下させればよい。そのために、たとえ
ば、テレフタル酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、
ナフタレンジカルボン酸、α,β−ビス(2−クロルフ
ェノキシ)エタン4,4′−ジカルボン酸、ジフェニルジ
カルボン酸、エチレングリコール、トリメチレングリコ
ール、ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホ
ン、シクロヘキサンジメタノールといった成分を共重合
することが好ましい。
更に、ポリマーが溶剤の可塑剤効果によって結晶化す
ることを抑制するためには、ポリマーを非晶性にしても
よいが、非晶性にすることによって耐溶剤性が低下して
しまうことがある。別の手法として、非常に高結晶性を
もたらす成分を共重合することによって、フイルム製膜
した直後や製膜後の短時間に急速に結晶化を進行させ、
微細な結晶を生成させる方法がある。これによると、生
成する結晶は微細であるため、フイルムの透明性は維持
され、溶剤と接してもそれ以上結晶化が進行せずフイル
ムは白化しなくなり、また結晶自身が耐溶剤性をもたら
す。共重合成分としては、長鎖脂肪族ジカルボン酸や長
鎖脂肪族ジオールが好ましいが、分子鎖が長くなり過ぎ
ると耐熱性が悪化するため、炭素数が10以下が好まし
く、特にアジピン酸、セバチン酸、ブチレングリコー
ル、ヘキシレングリコールが好ましい。
B層のポリエステルのガラス転移温度は75℃以上であ
り、好ましくは90℃以上であり、更に好ましくは100℃
である。
B層に用いられるポリエステルのジカルボン酸として
は例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナ
フタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン
酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェノキシエ
タンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハ
ク酸、アジピン酸、セバチン酸、スチルベンジカルボン
酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルチオエーテル
ジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、フェニ
ルインダンジカルボン酸、α,β−ビス(2−クロルフ
ェノキシ)エタン4,4′−ジカルボン酸、更にはp−オ
キシ安息香酸などのオキシカルボン酸などを挙げること
ができる。これらのうち、本発明の場合、特にテレフタ
ル酸、イソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ナ
フタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン
酸、α,β−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン4,
4′−ジカルボン酸が好ましい。
また、B層に用いられるポリエステルのジヒドロキシ
化合物成分としては、エチレングリコール、トリメチレ
ングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキ
サンジメタノール、ビス(4−ヒドロキシエトキシフェ
ニル)スルホン、2,2−ビス(4−ヒドロキシジフェニ
ル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフ
ェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ス
ルホン、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレン
グリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリ
コール、ハイドロキノン、シクロヘキサンジオールなど
を挙げることができる。これらのうち、本発明の場合、
特にエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノー
ル、ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン
が好ましい。
好ましい組み合わせとしては、ポリエチレンテレフタ
レート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキシ
レンジメチンレンテレフタレート、ポリエチレンビスフ
ェノキシカルボキシレート、またはそれらの変性体であ
る。
本ポリエステルフイルムは、A層及びB層を有するポ
リエステルフイルムであり、A/Bの二層構造でもよく、A
/B/Aの三層構造でもよく、A、B以外の層を有する多層
構造でもよい。A層は、ポリエステルフイルムの少なく
とも片側の表層に積層することが必要であり、その厚み
は1〜30μmが好ましく、より好ましくは3〜20μmで
あり、最も好ましくは5〜15μmである。A層は耐溶剤
性を有する層であり、積層厚みが1μmよりも小さいと
内層であるB層まで溶剤が浸透し、B層が溶剤により白
化したり、膨潤してしまう。また、A層厚みがは30μm
より大きくなるとフイルムの耐熱性が低下し、熱によっ
て変形しやすくなったり、機械的強度が低下する。本ポ
リエステルフイルムの全層の厚みに対して、A層の厚み
の和は、60%以下であり、30%以下が好ましく、15%以
下が更に好ましい。また、B層の厚みは、本ポリエステ
ルフイルムの全層の厚みに対して、40%以上が好まし
い。
又、A層及びB層に用いられるポリエステルの相対粘
度ηは14〜70が好ましく、より好ましくは20〜60であ
る。ηが14未満になると、フイルムの機械的強度が極
端に低下してしまう。又、ηが70を超えるとフイルム
成形時に、分子鎖が容易に配向し複屈折率を生じ易くな
る。
ポリエステルフイルムは、上述のポリエステルを用い
て通常のフイルム製造方法、即ち押出し機から溶融ポリ
エステルをシート状に押出しし、これを冷却ロールに接
触させて急冷固化する方法により製造することができ
る。そこで、ポリマーの押出し温度は、ポリマーの融点
により10℃〜50℃高温であることが好ましいが、酸化分
解や熱分解が急激には進行しない温度範囲において、で
きるだけ高い方が望ましい。
また、溶融ポリエステルシートを冷却ロールに接触さ
せる際は、静電印加冷却法を適応することが好ましい。
更に、製膜速度は、0.5m/分〜40m/分であり、好ましく
は2.0m/分〜30m/分である。
こうして得られる本ポリエステルフイルムの全層にお
ける面内複屈折は2.5×10-4以下であり、好ましくは3
×10-4以下であり、更に好ましくは1×10-4以下であ
る。本ポリエステルの場合、表層付近の複屈折が大きく
なり、内層部の複屈折は非常に小さい傾向にあるが、こ
の面内複屈折は全層にわたる複屈折値の平均値である。
また、複屈折の分布は、平均複屈折に対して、±20%以
内であることが好ましく、更に好ましくは±10%以内で
ある。即ち、複屈折が小さいフイルムを光学用フイルム
として用いる場合、例えばこのフイルムを保護フイルム
として用いた偏光板を通して物体を見ると、方向により
保護フイルム上に光の干渉による色むらが生じることが
なく、またこのフイルムを光記録用保護フイルムとして
利用すると、レーザ光の偏光状態が変化することがな
く、信号の読取りエラーは減少する。
また、該ポリエステルフイルムの最大粗さRtは、100n
m以下が好ましく、より好ましくは60nm以下であり、最
も好ましくは30nm以下である。フイルムの表面が粗れ
て、Rtが100nmを超えると、光が屈折・散乱したり、干
渉するため、フイルムを透過する光の強度が低下した
り、光が歪んでしまうため、光学用としては適さなくな
る。
また、該ポリエステルフイルムのピークの平均間隔Sm
は20μm以上が好ましく、より好ましくは50μm以上で
あり、最も好ましくは100μm以上である。Smが20μm
より小さくなっても、光の散乱、干渉が大きくなり、ま
た複屈折のむらが大きくなり、干渉じまの原因にもな
る。また、光記録用として用いる場合には、記録のスポ
ット径が0.5〜10μmであるために、突起の部分によっ
て光が正常に反射せず記録の読み取りエラーの発生原因
ともなる。
前述のキャスティング法において、冷却ロールの表面
を0.2S以下にすることにより、表面の平滑なフイルムが
得られるが、それでも不十分な場合は、押し出された溶
融状態のフイルムをキャストドラムと付設の冷却ロー
ル、あるいはキャストドラムと金属製のエンドレスベル
トで圧着して冷却するのがよい。その際に、キャストド
ラムだけでなく、付設の冷却ロール、あるいは、金属製
のエンドレスベルトの表面は平滑であること、すなわち
冷却体表面の最大粗さは0.2S以下と平滑であることが求
められ、また十分に冷却することによって、フイルムの
両面を急冷してその結晶化を防止しできる。
又、別の手法として、0.2S以下の平滑なドラムにキャ
ストしたフイルムの非ドラム面をガラス転移以上に加熱
した付設のロールで圧着し、冷却ロールで急冷しても良
い。
更に、押し出された溶融状態のポリマーを0.2S以下の
表面の平滑な2本のロールの間にバンクとして溜め、ロ
ールの間から押し出しても、カレンダリングしても良
い。
又、押し出された溶融状態のポリマーを0.2S以下の平
滑な金属製のエンドレスベルト上にキャストし、そのエ
ンドレスベルトと別の平滑な金属製のエンドレスベルト
で加熱、圧着し、急冷しても良い。
ただし、いずれの場合においても、フイルムの平滑時
にフイルムに生じる複屈折を最小限にするために、溶融
したポリマーを圧着しなければならず、またフイルム厚
みに対して、圧着部分の間隙は85%以上にすることがよ
い。また圧着時の線圧は40kg/cm以下にするのが好まし
い。
このようにして、透明性・平滑性に優れたフイルムが
得られる。
また、本発明のポリエステルフイルムの厚さとしては
特に限定はしないが、延伸シートの場合、6〜360μ
m、無延伸シートの場合、30〜2000μm程度のものが好
んで用いられ、好ましくは40〜700μmである。
次に、本発明ポリエステルフイルムを製造する方法に
ついて述べる。しかし、必ずしもこの方法に、限定され
るものではない。
ジカルボン酸あるいは/又はそのエステル形成誘導体
と、ジヒドロキシ化合物とを常法により混合して反応さ
せて、主鎖にエステル結合を有する好ましくは相対粘度
ηが14〜70のポリエステル組成物を得る。
一旦エステル交換が必要な場合には、重合触媒以外に
エステル交換触媒を用いる。もちろん実用上、着色防止
剤、酸化防止剤、熱安定剤、結晶核剤、すべり剤、ブロ
ッキング防止剤、粘度調節剤、消泡剤、透明化剤などを
添加させてもよい。しかし、本発明に係るフイルムは透
明性と表面の平滑性が要求されるので、ポリエステルと
しては粒子を実質的に含まないか、又はきわめて微細な
粒子のみを含むものが望ましい。
このようにして得られたA層、B層のポリエステルを
前述の押し出し温度で共押出し、製膜することにより、
複屈折が2.5×10-4以下のポリエステルフイルムが得ら
れる。キャストフイルムはそのまま用いても良いが、フ
イルム表面を平滑化するために、前述のように平滑化処
理を行なうことが好ましい。
このようにして得られた表面の粗大粗さRtが100nm以
下のフイルム表面に傷が発生しないように、ポリマーの
押し出し時あるいはキャスト直後に、ポリプロピレン、
エチレンプロピレンコポリマー、ポリメチルペンテン、
エチレン酢酸ビニルポリマーなどのオレフィンポリマー
をラミネートしたり、あるいは耐スクラッチ層をコーテ
ィングするのがよい。
該ポリエステルフイルムを光記録媒体として利用する
場合、光ディスクや光カード、光テープといったものが
考えられる。光ディスクにおいては、たとえば該ポリエ
ステルフイルムの片面に無機質あるいは有機質の光記録
媒体を真空蒸着、スパッタリングあるいはスピンコート
することによって光記録媒体を形成させることができ、
また光カードにおいては、たとえば片側に塩化ビニル基
盤を貼りつけたポリエチレンフイルム上にゼラチンと銀
粒子の混合体を塗布、処理して光記録層とし、この記録
層の上に保護層として該ポリエステルフイルムを貼付け
て光記録媒体を形成させることができる。
また、該ポリエステルフイルムを偏光フイルムとして
用いる場合は、例えば、延伸したポリビニルアルコール
フイルムを緊張状態に保ったままヨウ素とヨウ化カリウ
ムからなる水溶液にヨウ素を吸着させ、次にホウ酸を主
成分とする水溶液に浸漬して偏光素子であるポリヨウ素
を形成させる。このフイルムを熱処理し、更にホウ酸を
主成分とする水溶液に浸漬したあと、そのフイルムの片
面あるいは両面に保護層として、本発明のポリエステル
フイルムを形成することにより、偏光フイルムを得るこ
とができる。
[物性の測定方法] (1)ガラス転移温度 ポリエステルフイルム100mgを、走査型熱量計にセッ
トし、窒素気流下で20℃/minの速度で昇温していき、ベ
ースラインが偏奇し始める温度と、新たなベースライン
に戻る温度との平均値を用いる。
(2)相対粘度η ポリエステルをドライアイスで冷却した後、粉砕機で
100メッシュ以下に粉砕する。その8gを150℃の熱o−ク
ロロフェノール100cc中に入れ1〜2分で溶解させる。
このポリマー溶液の粘度ηと、o−クロロフェノールの
粘度ηとを25℃で測定しその比をもって相対粘度とす
る。
η=η/η (3)複屈折、光弾性係数 フイルム面内の複屈折の測定はナトリウムD線(589n
m)を光源として直交ニコルを備えた偏光顕微鏡に試料
フイルム面が光軸と垂直となるように置き、試料の複屈
折によって生じた光路差Γをコンペンセーターの補償値
から求め、Γ/dをもって複屈折とした。ここでdは試料
フイルムの厚さである。
光弾性係数は、幅10mmの試料に1kgfの荷重を加えた時
の幅屈折の変化Δnを求め、Δn/Sをもって光弾性係数
とした。ここでSは試料にかかる応力である。その際、
弾性微小変形時の厚み変化は無視できるものとする。
(4)耐溶剤性 試料を溶剤に1分間浸漬し、溶剤を乾燥させた時の試
料のヘイズ値を測定した。ヘイズ値については、日本精
密光学(株)製SEP−H−2を使用し、試料のトータル
ヘイズをもって値とした。A層が片側積層の場合は、A
層表面のみに溶剤を接したときのトータルヘイズを上記
方法で測定した。
(5)最大粗さRt、ピークの平均間隔Sm 小坂研究所製の高精度薄膜段差測定機ET−10を用いて
測定した。Rtは粗さ曲線の最大の山と最深の谷の距離で
表わされ、Smは粗さ曲線の中心線と交わる一組の山と谷
の平均間隔で表わされる。測定条件は、下記のとおりで
あり、20回の測定の平均値を持って値とした。
◇触針先端半径:0.5μm ◇触針荷重 :5mg ◇測定長 :1mm ◇カットオフ値:0.08mm なお、パラメータの定義の詳細は、例えば奈良二郎著
「表面粗さの測定・評価法」(総合技術センター、198
3)に示されている。
(6)機械的強度 試料を折曲げた時、180゜まで完全に折曲げることの
できたものを○、折曲がらず割れてしまったものを×と
した。
(7)耐湿性 試料を60℃24時間真空乾燥機で乾燥後、重量W0を測定
し、常温24時間水中に浸漬後に増加した試料中の水分量
が、W0に対して0.4%未満のものを○、0.4%以上のもの
を×とした。
[実施例] 次に本発明を実施例によってさらに詳細に説明する。
実施例1、比較例1、比較例2 A層ポリエステルとして、ジカルボン酸として2,6−
ナフタレンジカルボン酸90モル%、ジフェニル−2,2′
−ジカルボン酸10モル%、ジヒドロキシ化合物としてエ
チレングリコールからなる相対粘度20のポリエステルを
用い、B層のポリエステルは、ジカルボン酸として、テ
レフタル酸を用い、ジヒドロキシ化合物として、エチレ
ングリコール50モル%及びビス(4−ヒドロキシエトキ
シフェニル)スルホン50モル%からなる相対粘度20のポ
リエステルを用いた。
2基の押出機とA/B/Aの3層溶融共押出が可能な口金
を用い、それぞれのポリマーを常法により290℃に加熱
し、A/B/Aの3層共押出を行なった。
比較例1においては、その溶融押出フイルムを、製膜
速度10m/分で静電印加により、表面温度が40℃の鏡面ド
ラム上に密着させ、積層厚みがA/B/A:10μm/380μm/10
μm、全厚み400μmのフイルムを得たが、フイルム表
面にダイラインが残った。
実施例1においては、溶融押出フイルムを、製膜速度
10m/分で静電印加により、表面温度が80℃の鏡面ドラム
上に密着させ、その直後に付設の冷却ロールをシートに
接触させた。鏡面ドラム及び冷却ロールは0.1Sのものを
用いた。これにより、積層厚みがA/B/A:10μm/380μm/1
0μm、全厚み400μmの平滑なフイルムを得た。
比較例2においては、同様の構成を有する溶融フイル
ムをカラス口のTダイより押出した。その溶融押出フイ
ルムは、表面温度が30℃の3本の鏡面ロールでカレンダ
リングを行なった。その際ロール間隙は380μm、線圧1
20kg/cmに設定し、フイルムの製膜速度10m/分で行な
い、積層厚みがA/B/A:10μm/380μm/10μm、全厚み400
μmの平滑なフィルムを得た。鏡面ロールは、0.1Sのも
のを用いた。
実施例2 A層ポリエステルとして、相対粘度18のポリブチレン
テレフタレートを用い、B層のポリエステルは、ジカル
ボン酸として、ナフタル酸を用い、ジヒドロキシ化合物
として、エチレングリコール50モル%及びビス(4−ヒ
ドロキシエトキシフェニル)スルホン50モル%からなる
相対粘度20のポリエステルを用いた。
2基の押出機とA/Bの2層溶融共押出が可能な口金を
用い、それぞれのポリマーを常法により290℃に加熱
し、A/Bの2層共押出を行なった。その溶融押出フイル
ムを、製膜速度10m/分で静電印加により、表面温度が80
℃の鏡面ドラム上にフイルムのB層側表面を密着させ、
その直後に付設の冷却ロールをフイルムのA層側表面に
接触させた。鏡面ドラム及び冷却ロールは0.1Sのものを
用いた。これにより、積層厚みがA/B:7μm/93μm、全
厚み100μmの平滑なフイルムを得た。
実施例3 A層ポリエステルとして、相対粘度20のポリエチレン
α,β−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン4,4−ジ
カルボキシレートポリエステルを用い、B層ポリエステ
ルとして、ジカルボン酸としてテレフタル酸80モル%、
イソフタル酸20モル%、ジヒドロキシ化合物として、1,
4−シクロヘキサンジメタノールからなる相対粘度20の
ポリエステルを用いた。
2基の押出機とA/B/Aの3層溶融共押出が可能なカラ
ス口のTダイを用い、それぞれのポリマーを常法により
290℃に加熱し、A/B/Aの3層共押出を行なった。その溶
融押出フイルムは、表面温度が60℃の2本の鏡面ロール
間でポリッシングを行なった。その際ロール間でポリッ
シングを行なった。その際ロール間隙は380μm、線圧3
0kg/cmに設定し、フイルムの製膜速度15m/分で行ない、
積層厚みがA/B/A:10μm/380μm/10μm、全厚み400μm
の平滑なフイルムを得た。鏡面ロールは、0.1Sのものを
用いた。
比較例3 A層ポリエステルとして、ジカルボン酸としてテレフ
タル酸95モル%、イソフタル酸5モル%、ジヒドロキシ
化合物として、1,4−シクロヘキサンジメタノールから
なる相対粘度20のポリエステルを用い、B層ポリエステ
ルとして、ジカルボン酸としてテレフタル酸80モル%、
イソフタル酸20モル%、ジヒドロキシ化合物として、1,
4−シクロヘキサンジメタノールからなる相対粘度20の
ポリエステルを用いた。
実施例3と同様の手法で製膜を行ない、積層厚みがA/
B/A:10μm/380μm/10μm、全厚み400μmの平滑なフイ
ルムを得た。
比較例4 PMMA(三菱レーヨン社製、アクリライト)を用い、常
法により260℃に加熱し、比較例2と同様の方法でカレ
ンダリングを行ない、厚み400μmのフイルムを得た。
比較例5 ポリカーボネート(三菱瓦斯化学社製 ユーピロン
H−4000)を用い、常法によい315℃に加熱し、比較例
2と同様の方法でカレンダリングを行ない、厚み400μ
mのフイルムを得た。
[発明の効果] 光学用フイルムとして利用する時、その製造、保存、
あるいは使用時に加わる熱、溶剤、外力、さらには湿
気、光線といった外的環境に対して安定であり、光記録
媒体としては、信頼性が高く、他の光学用途においても
歪のない良好なフイルムが得られる。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B32B 1/00 - 35/00 G11B 7/24 G02B 1/04

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】少なくともA層とB層とからなり、A層の
    ポリエステルの光弾性係数が1.6×10-3mm2/kgf以下、B
    層のポリエステルのガラス転移温度が75℃以上であるポ
    リエステルフイルムであって、溶剤浸漬時のヘイズ値が
    5%以下、全層における面内複屈折が2.5×10-4以下、
    さらにポリエステルフイルムの少なくとも片側の表層は
    A層であることを特徴とするポリエステルフイルム。
  2. 【請求項2】表面の最大粗さRtが100nm以下、ピークの
    平均間隔Smが20μm以上であることを特徴とする特許請
    求の範囲第1項記載のポリエステルフイルム。
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