JP2943448B2 - 適応信号処理装置及び能動型不快波制御装置 - Google Patents

適応信号処理装置及び能動型不快波制御装置

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JP2943448B2
JP2943448B2 JP3243799A JP24379991A JP2943448B2 JP 2943448 B2 JP2943448 B2 JP 2943448B2 JP 3243799 A JP3243799 A JP 3243799A JP 24379991 A JP24379991 A JP 24379991A JP 2943448 B2 JP2943448 B2 JP 2943448B2
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filter coefficient
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三浩 土井
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、適応信号処理装置、
及び自動車の車室や航空機の客室等の騒音又は振動の不
快波を能動的に低減する能動型不快波制御装置に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の能動型不快波制御装置と
しては、例えば英国公開特許公報第2149614号記
載の図19に示すようなものがある。
【0003】この従来装置は適応信号処理装置によって
構成され、航空機の客室やこれに類する閉空間に適用さ
れるもので、閉空間101内にラウドスピーカ103
a,103b,103cおよびマイクロホン105a,
105b,105c,105dを備えており、ラウドス
ピーカ103a,103b,103cによって騒音に干
渉させる制御波としての制御音を発生し、マイクロホン
105a,105b,105c,105dによって残差
信号(残留不快波としての残留騒音)を測定するように
なっている。これらラウドスピーカ103a,103
b,103c、マイクロホン105a,105b,10
5c,105dは信号処理機107に接続されており、
信号処理機107は基本周波数測定手段によって測定し
た騒音源(不快波源)の基本周波数とマイクロホン10
5a,105b,105c,105dからの入力信号と
を受けとり、閉空間101内の音圧レベルを最小にする
ようラウドスピーカ103a,103b,103cに駆
動信号を出力するものである。
【0004】図20は上記能動型不快波制御装置を自動
車に適用した場合につき概念的に示したブロック図であ
る。
【0005】なお、説明を簡単にするためラウドスピー
カ103、及びマイクロホン105はそれぞれ1個ずつ
設けられているものとする。
【0006】今、騒音源(不快波源)からマイクロホン
105までの車両伝達系の伝達関数をGとし、ラウドス
ピーカ103からマイクロホン105までの伝達関数を
Cとし、騒音源が発生する音源情報信号をXp とする
と、マイクロホン105で観測される残留騒音としての
信号Eは、 E=Xp ・G+Xp ・W・C となる。ここでWは消音するために必要な伝達関数であ
る。消音対象点(マイクロホン105の位置)におい
て、騒音が完全に打ち消された時E=0となる。この時
Wは、 W=−G・C-1 となる。即ち、車両において車室内に伝達される騒音
(1次音)をラウドスピーカ103から出力される制御
音(2次音)によって相殺するためには、車両伝達系の
伝達関数Gに対してW・Cが等価の伝達関数となる必要
がある。そして、マイク検出信号Eが最小となるWを求
め、このWに基づいて信号処理器107内の適応ディジ
タルフィルタのフィルタ係数Wを適応的に更新する。
【0007】この場合マイク検出信号Eを最小にするよ
うフィルタ係数Wを求める手法として最急降下法の一種
であるLMSアルゴリズム(Least Mean S
quare)等を用いている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】ところで車両の騒音と
しては、エンジン音、振動、サスペション振動に基づく
エンジン騒音、ロードノイズ等種々のものが存在する。
ここでエンジン騒音の場合はその信号が単純な正弦波で
あるため、信号処理器107内の適応ディジタルフィル
タのフィルタ係数Wは信号の位相と振幅を表現するのみ
でよい。このため、信号処理器107の演算負荷が小さ
く、エンジン回転数変化によって周波数が逐次変化する
場合であっても、フィルタ係数Wが迅速、かつ適格に更
新されるものとなる。
【0009】しかしながら、騒音がサスペンション振動
に伴うロードノイズである場合には、その信号が極めて
複雑なものとなり、信号処理に困難を伴なうものとな
る。
【0010】すなわち、ロードノイズの場合、Gの伝達
特性を表現するインパルス応答は図21に示すような残
響特性を持った信号となり、ディジタル信号処理におい
ては、このインパルス応答関数の畳み込み演算を行なう
ことになるため、フィルタ係数WはGと同様な残響特性
を持たせる必要がある。従って、Wを正確に表現するデ
ィジタルフィルタは図22に示すようにフィルタ係数
(W0 ,W1 ,W2 ,…,Wi )が非常に多くなり、フ
ィルタ処理に際してはこれらのフィルタ係数を時系列的
に逐次更新して行かなければならない。
【0011】ここで、車両伝達系の伝達関数Gが走行中
に変化しないものであれば、信号処理器107がひとた
び目標波形の信号を出力すればフィルタ係数Wの更新動
作は不要となる。しかし、現実にはサスペンションの撓
み、介在するブッシュ類の非線形性等により、様々な条
件でGは変化し、これに対応して構成されるべきフィル
タ係数Wも追従させる必要がある。
【0012】従って、フィルタ係数Wの更新数が膨大と
なり、信号処理器107の演算負荷が極めて大きなもの
となる。
【0013】しかも、図19のようにラウドスピーカ1
03a,103b,103cが複数になるとフィルタ係
数Wの更新数がラウドスピーカの数に略比例して増加
し、更に騒音源等が多くなると膨大な計算量を必要とす
る。このためロードノイズの騒音低減のようにランダム
な信号が次から次へと入力される場合に、全てのフィル
タ係数の更新を十分に追従させるには極めて大きな容量
の信号処理器107が必要となり、自動車用の装置とし
て適さなくなるという問題がある。
【0014】そこでこの発明は、装置の小型化を図りな
がら高速処理が可能な適応信号処理装置、及び能動型不
快波制御装置の提供を目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、入力された信号を複数のフィルタ係数を用いてフィ
ルタ処理し複数の信号を出力する適応ディジタルフィル
タと、前記複数の出力信号と入力される信号とを制御対
象となる信号伝達系を介して干渉させ、該信号伝達系に
おける特定位置で前記干渉後に残留する信号を低減させ
るように前記フィルタ係数を各出力信号に対応して更新
する適応制御器とを備え、前記複数の出力信号のいずれ
かに対応した特定のフィルタ係数の更新を順に又は前記
残留する信号の低減に係る重要度に応じて前記フィルタ
処理の度毎に選択する手段を設け、前記適応制御器は前
記選択に応じてフィルタ係数更新の動作を順次繰返すこ
とを特徴とする。
【0016】請求項2の発明は、共通の騒音又は振動の
不快波に干渉させる複数の制御波を発生して評価点の不
快波低減を図る複数の制御波源と、前記干渉後の所定位
置の残留不快波を検出する手段と、前記不快波を発生さ
せる不快波源の作動状態に応じた周波数の信号を検出す
る不快波発生状態検出手段と、前記不快波発生状態検出
手段の検出信号を複数のフィルタ係数によってフィルタ
処理し前記各制御波源を駆動する複数の駆動信号を出力
する適応ディジタルフィルタと、前記残留不快波検出手
段の出力信号と不快波発生状態検出手段の出力信号とに
基づき前記残留不快波検出手段の出力信号を低減するよ
うに前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を各駆
動信号に対応して更新する適応制御器とを備え、前記複
数の駆動信号のいずれかに対応した特定のフィルタ係数
の更新を順に又は前記残留不快波検出手段の低減に係る
重要度に応じて前記フィルタ処理の度毎に選択する手段
を設け、前記適応制御器は前記選択に応じてフィルタ係
数更新の動作を順次繰返すことを特徴とする。
【0017】請求項3の発明は、 請求項2記載の能動
型不快波制御装置であって、前記選択手段は、前記制御
波源の制御効果に対する寄与度の増大に応じて前記フィ
ルタ係数更新の選択頻度を高くして変更することを特徴
とする。
【0018】請求項4の発明は、共通の騒音又は振動の
不快波に干渉させる複数の制御波を発生して評価点の不
快波低減を図る制御波源と、前記干渉後の所定位置の残
留不快波を検出する手段と、前記不快波を発生させる同
質の複数の不快波源の作動状態に応じた周波数の複数の
信号を検出する複数の手段と、前記不快波発生状態検出
手段の検出信号を複数のフィルタ係数によってフィルタ
処理し前記各制御波源を駆動する信号を出力する適応デ
ィジタルフィルタと、前記残留不快波検出手段の出力信
号と不快波発生状態検出手段の出力信号とに基づき前記
残留不快波検出手段の出力信号を低減するように前記適
応ディジタルフィルタのフィルタ係数を更新する適応制
御器とを備え、前記各不快波発生状態検出手段の各出力
信号のいずれかを順に又は前記残留不快波検出手段の出
力信号の低減に係る重要度に応じて前記フィルタ処理の
度毎に選択する手段を設け、前記適応制御器及び適応デ
ィジタルフィルタは、前記出力信号の選択に応じて順次
動作を繰返すことを特徴とする。
【0019】請求項5の発明は、請求項4記載の能動型
不快波制御装置であって、前記信号選択手段は、前記不
快波発生状態検出手段の不快波に対する関与度の高まり
に応じて前記不快波発生状態検出手段の出力信号の選択
頻度を高くするように変更することを特徴とする。
【0020】請求項6の発明は、請求項2,3,4又は
5記載の能動型不快波制御装置であって、各駆動信号に
対応して更新されるフィルタ係数の更新頻度を、所定の
フィルタ係数より前のフィルタ係数と後のフィルタ係数
とで異ならせる手段を設けたことを特徴とする。
【0021】
【作用】請求項1の発明では、適応ディジタルフィルタ
が入力された信号を複数のフィルタ係数を用いてフィル
タ処理し出力する。また適応制御器は前記複数の信号と
入力された信号とを干渉させ、干渉後の所定位置の信号
を低減させるように前記フィルタ係数を各出力信号に対
応して更新する。従って、入力信号に対して目標の信号
波形を出力することができる。しかも複数の出力信号の
内、所定の出力信号に対応した特定のフィルタ係数のみ
を選択して更新する動作を順次繰返すため、全てを同時
に更新する場合に比べて演算処理速度が飛躍的に向上す
る。
【0022】請求項2の発明では、不快波源の不快波発
生状態に関する信号を不快波発生状態検出手段が検出
し、適応ディジタルフィルタは不快波発生状態の検出信
号を複数のフィルタ係数によってフィルタ処理し制御波
源を駆動する信号を出力する。これによって、制御波源
は不快波に干渉させる制御波を発生して評価点の不快波
低減を図ることができる。このとき、適応制御器が残留
不快波検出手段の出力信号と不快波発生状態検出手段の
出力信号とに基づき前記残留不快波検出手段の出力信号
を低減するように前記適応ディジタルフィルタのフィル
タ係数を各駆動信号に対応して更新する。そして、適応
制御器はこのフィルタ係数の更新に際し複数の駆動信号
の内の所定の駆動信号に対応した特定のフィルタ係数の
みを選択して更新する動作を順次繰返すため全てを同時
に更新する場合に比べて演算処理速度が飛躍的に向上す
る。
【0023】請求項3の発明では、制御波源の制御効果
に対する寄与度に応じてフィルタ係数更新の選択頻度を
変更するため、フィルタ係数更新の制御効果に対する寄
与度を高めることができる。
【0024】請求項4の発明では、適応ディジタルフィ
ルタ及び適応制御器が各不快波発生状態検出手段の特定
の出力信号のみを選択して順次動作を繰返すため、同質
の不快波源が複数存在し、不快波発生状態検出手段の出
力信号が複数の場合でも一回の処理で取扱う不快波発生
状態に関する信号の数を減らすことができる。
【0025】請求項5の発明では、不快波発生状態検出
手段の不快波に対する関与度に応じて前記不快波発生状
態検出手段の出力信号の選択頻度を変更するため処理す
べき不快波発生状態に関する信号の関与度を高めること
ができる。
【0026】請求項6の発明では、駆動信号に対応して
更新されるフィルタ係数の更新頻度を所定のフィルタ係
数より前のフィルタ係数と後のフィルタ係数とで異なら
せるようにしたため、全てを同時に更新する場合に比べ
て一回の処理で更新すべきフィルタ係数の数を減らすこ
とができる。
【0027】
【実施例】以下、この発明の実施例を説明する。
【0028】なお説明は車室内空間を例として行う。
【0029】第1実施例 図1はこの発明の第1実施例を示す概略図である。
【0030】図1のように車体1は前輪2a,2b、後
輪2c,2dによって支持され、前輪2a,2bは車体
1の前部に配置されたエンジン4によって回転駆動さ
れ、いわゆる前置きエンジン前輪駆動車を構成してい
る。
【0031】前記車室内の騒音(不快波)は、例えば路
面からの入力により振動を受けるサスペンション振動が
騒音源(不快波)となっており、不快波発生状態検出手
段としては、サスペンション振動を検出するためサスペ
ンションのスピンドル近傍に設けられた加速度検出器5
a〜5dが用いられている。そして、これら加速度検出
器5a〜5dからの出力信号(路面からサスペンション
へ入力される路面振動信号)が車室内騒音に相関のある
信号(加速度信号x)とされている。
【0032】また、車体1内の音響閉空間としての車室
6内には制御波源としてラウドスピーカ7a,7b,7
c及び7dがそれぞれ前席S1,S2、及び後席S3,
S4に対向するドア部に配置されている。
【0033】さらに各座席S1〜S4のヘッドレスト位
置にそれぞれ残留不快波検出手段としてのマイクロホン
8a〜8hが配設されている。
【0034】これらマイクロホン8a〜8hに入力され
る車室6内の残留騒音(残留不快波)は、その音圧に応
じた電気信号としてノイズ信号e1 〜e8 が出力される
構成となっている。
【0035】前記加速度検出器5a〜5d及びマイクロ
ホン8a〜8hの出力信号は適応信号処理装置としての
コントローラ10に個別に供給されるように構成されて
いる。このコントローラ10から出力される駆動信号y
1 〜y4 は個別にラウドスピーカ7a〜7dに供給さ
れ、これらスピーカ7a〜7dから車室6内に音響信号
(制御波)が出力される構成となっている。
【0036】前記コントローラ10は図2に示すよう
に、第一ディジタルフィルタ12、第二ディジタルフィ
ルタ(適応ディジタルフィルタ)13、マイクロプロセ
ッサ(適応制御器)16を備えている。そして、加速度
検出器5a〜5dから入力される加速度信号xはA/D
変換器11によってディジタル信号に変換され、基準信
号xとして第一ディジタルフィルタ12及び適応ディジ
タルフィルタ13に入力される構成となっている。
【0037】また、前記マイクロホン8a〜8hの出力
信号であるノイズ信号e1 〜e8 は、アンプ30a〜3
0hによって増幅され、A/D変換器15a〜15hに
よってA/D変換され、前記第一ディジタルフィルタ1
2の出力信号と共にマイクロプロセッサ16に入力され
る構成となっている。
【0038】ここで、前記第一ディジタルフィルタ12
は、加速度信号xを入力し、前記マイクロホン8a〜8
h及びスピーカ7a〜7d間の伝達関数の組合せ数に応
じてフィルタ処理された基準信号rlm(後述する第
(4),(5)式参照)を生成するものである。
【0039】前記適応ディジタルフィルタ13は機能的
にはスピーカ7a〜7dへの出力チャンネル数に応じた
フィルタを個々に有し(後述)、加速度信号xを入力
し、その時点で設定されているフィルタ係数(後述する
(5)式参照)に基づき適応信号処理(フィルタ処理)
を行ってスピーカ駆動信号y1 〜y4 を出力するもので
ある。
【0040】前記適応ディジタルフィルタ13から出力
される駆動信号y1 〜y4 はD/A変換器17a〜17
dによってD/A変換され、アナログスイッチ28a〜
28d及びアンプ18a〜18dを介してラウドスピー
カ7a〜7dに出力される構成となっている。
【0041】前記マイクロプロセッサ16は前記ノイズ
信号e1 〜e8 並びにフィルタ処理された基準信号rlm
を入力し、適応ディジタルフィルタ13の出力信号が目
標の信号波形となるようにフィルタ係数を最急降下法の
一種であるLMSアルゴリズムを用いて逐次更新する構
成となっている。
【0042】前記基準信号rlmにはラウドスピーカ7a
〜7bとマイクロホン8a〜8hとの間の伝達関数をデ
ィジタルフィルタのフィルタ係数(インパルス応答関
数)として表したClmが含まれており、マイクロプロセ
ッサ16は制御波源と残留不快波検出手段との間の伝達
関数を含む制御アルゴリズムを用いて前記残留不快波検
出手段であるマイクロホン8a〜8hの出力信号を低減
するように前記適応ディジタルフィルタ13のフィルタ
係数Wを各駆動信号y1 〜y4 に対応して更新する手段
を構成している。
【0043】一方、この発明の第1実施例では前記適応
ディジタルフィルタ13が図3のように構成されてい
る。すなわち適応ディジタルフィルタ13は、スピーカ
の出力チャンネル数7a〜7dに応じたフィルタとして
第一フィルタ13a、第二フィルタ13b、第三フィル
タ13c、及び第四フィルタ13dを有し、それぞれ加
速度信号xを入力し、その時点で設定されているフィル
タ係数によってフィルタ処理するように構成されてい
る。
【0044】各フィルタ13a〜13dはそれぞれ選択
回路14a〜14dを備えている。これら選択回路14
a〜14dは、例えば各サンプリング時刻毎に切換えら
れて動作し、いずれかの選択回路14a〜14dが動作
しているときに、いずれかのフィルタ13〜13dのフ
ィルタ係数が更新されるようになっている。したがって
選択回路14a〜14dは、複数の駆動信号y1 〜y4
の内の所定の駆動信号に対応したフィルタ係数の更新を
選択する手段を構成している。
【0045】そして、マイクロプロセッサ16は前記選
択回路14a〜14dの選択に応じてフィルタ係数更新
の動作を順次繰返すものとなっている。
【0046】なお、選択回路14aから14dはマイク
ロプロセッサ16に設けることも可能である。
【0047】ここで、コントローラ10の騒音低減制御
原理を一般式を用いて説明する。
【0048】今、l番目のマイクロホンが検出したノイ
ズ信号をel (n)、ラウドスピーカ7a〜7dからの
制御音(二次音)が無いときのl番目のマイクロホンが
検出した残留騒音検出信号をepl(n)、m番目のラウ
ドスピーカとl番目のマイクロホンとの間の伝達関数
(FIR(有限インパルス応答)関数)HlmのJ番目
(J=0,1,2,…,Ic −1)[Ic は定数]に対
応するフィルタ係数をClmj 、基準信号をX(n)、基
準信号を入力しm番目のラウドスピーカを駆動する適応
フィルタのi番目(i=0,1…Ik −1)[Ik は定
数]の係数をWmiとすると、
【数1】 が成立する。ここで、(n)がつく項は、何れもサンプ
リング時刻nのサンプル値であり、また、Mはラウドス
ピーカの数(本実施例では4個)、Ic はディジタルフ
ィルタで表現されたフィルタ係数Clmのタップ数(フィ
ルタ次数)、Ikは適応フィルタのフィルタ係数Wmi
タップ数(フィルタ次数)である。
【0049】上式(1)中、右辺の「ΣWmix(n−j
−i)」(=ym )の項は適応ディジタルフィルタ13
に基準信号xを入力したときの出力を表し、「ΣClmj
{ΣWmix(n−j−i)}」の項はm番目のスピーカ
に入力された信号エネルギがこれらスピーカから音響エ
ネルギとして出力され、車室6内の伝達関数Clmを経て
l番目のマイクロホンに到達したときの信号を表し、更
に、「Σ ΣClmj {ΣWmix(n−j−i)}」の右
辺全体は、l番目のマイクロホンへの到達信号を全スピ
ーカについて足し合わせているから、l番目のマイクロ
ホンに到達する制御音の総和を表す。
【0050】ついで評価関数(最小にすべき変数)Je
を、
【数2】 とおく。ここで、Lはマイクロホンの数(本実施例では
8個)である。
【0051】そして、評価関数Jeを最小にするフィル
タ係数Wmiを求めるために、本実施例ではLMSアルゴ
リズムを採用する。つまり、評価関数Jeを各フィルタ
係数Wmiについて偏微分した値で当該フィルタ係数Wmi
を更新する。そこで、(2)式より、
【数3】 となるが、(1)式より、
【数4】 となるから、この(4)式右辺をrlm(n−i)とおけ
ば、フィルタ係数の書換え式は重み係数γl も含めた形
で以下の(5)式により得られる。
【0052】
【数5】 ここで、αは収束係数であり、フィルタが最適に収束す
る速度や、その際の安定性に関与する。なお、収束係数
αを本実施例では一つの定数のように扱っているが、各
フィルタ毎に異なる収束係数(αmi)とすることもでき
るし、また重み係数γl を一緒に取り込んだ係数
(αl )として演算することもできる。
【0053】次に図4,図5のフローチャートを用いて
説明する。
【0054】図4は、スピーカ駆動信号を出力するため
のフローチャートであり、図5は、適応ディジタルフィ
ルタ13のフィルタ係数更新のためのフローチャートで
ある。
【0055】まず、図4においてステップS41では、加
速度信号xを入力する。すなわち、加速度検出器5a〜
5dから入力される加速度信号xは、A/D変換器11
によってディジタル信号に変換され、基準信号xとして
適応ディジタルフィルタ13に入力される。ついでステ
ップS42において、基準信号xがフィルタ処理される。
すなわち、適応ディジタルフィルタ13において、その
時点で設定されているフィルタ係数(前記(5)式参
照)に基づきフィルタ処理を行なってスピーカ駆動信号
1 〜y4 を出力する。次にステップS43において、ス
ピーカ駆動を行なう。すなわち、スピーカ駆動信号y1
〜y4 はD/A変換器17a〜17dによってD/A変
換され、アナログスイッチ28〜28、およびアン
プ18〜18を介してラウドスピーカ7〜7
出力され、これによってラウドスピーカ7〜7はエ
ンジン4から車室6内に伝達される騒音に対して逆位相
の制御音を出力し、車室6内の騒音低減を図る。
【0056】次に図5において、まずステップS51では
基準信号検出が行われる。すなわち、第一ディジタルフ
ィルタ12は基準信号xを入力し、マイクロホン8a〜
8hおよびスピーカ7a〜7d間の伝達関数の組合せ数
に応じてフィルタ処理された基準信号rlm(前記
(4),(5)式参照)を生成し、マイクロプロセッサ
16に出力する。同時にステッフS52では、車室内騒音
eの検出が行なわれる。すなわち、前記のようにしてラ
ウドスピーカ7a〜7dによって制御音が出力されると
車室6内の騒音は相殺され、その残差信号として残留騒
音がマイクロホン8a〜8hで検出される。そして、マ
イクロホン8a〜8hの出力信号であるノイズ信号e1
〜e8 はアンプ30a〜30hによって増幅され、A/
D変換器15a〜15dによってA/D変換され、マイ
クロプロセッサ16に入力される。
【0057】次に、ステップS53では、音圧の自乗e2
の総和演算が行なわれる(前記(2)式参照)。
【0058】次にステップS54において、適応ディジタ
ルフィルタ13のフィルタ係数の更新が行なわれる。す
なわち、マイクロプロセッサ16において前記基準信号
lmおよび音圧の自乗e2 の総和演算に基づき音圧の自
乗和を最小とするように前記(5)式を演算し、これに
よって適応ディジタルフィルタ13のフィルタ係数を更
新する。したがって、適応ディジタルフィルタ13のフ
ィルタ係数を適応的に更新しながら基準信号xをフィル
タ処理し、ラウドスピーカ7a〜7dを駆動することが
でき、これによって車室6内の騒音低減を図ることがで
きるのである。
【0059】ところで、前記フィルタ係数Wmiの更新演
算を全てのラウドスピーカに対応して同時に行なう場
合、その演算量はラウドスピーカの数Mに略比例して膨
大なものとなる。しかし、この第1実施例では選択回路
14a〜14dがサンプリング時刻n毎に切換えられて
動作し、あるサンプリング時刻nでは第一〜第四フィル
タ13a〜13dのいずれかのフィルタ係数の更新を行
なうため、(5)式の更新演算はm番目のラウドスピー
カについて行なえばよく、M個のスピーカ全てについて
行なう必要はなくなる。例えばあるサンプリング時刻n
において、選択回路14aが動作している場合、更新演
算は、
【数6】 となる。
【0060】この動作を図6のフローチャートを用いて
さらに説明する。
【0061】まず、ステップS61でm=1とし、ステッ
プS62でm番目のスピーカに関するフィルタ係数Wmi
更新演算及び更新を行なう(この演算及び更新は前記図
5のフローチャートに基づいて行なわれる)。ここでは
ステップS61でm=1としているので1番目のスピーカ
に関する更新演算及び更新を行なう。次にステップS63
でm=m+1とし、ステップS64でmをMと比較し、全
てのスピーカに関しフィルタ係数Wmiの更新演算及び更
新が行なわれたかどうかを判断する。
【0062】この実施例ではM=4であるからステップ
63において1づつインクリメントされることにより、
ステップS62で2番目、3番目、4番目のスピーカに関
するフィルタ係数W2i,W3i,W4iが順次更新演算及び
更新されるものである。
【0063】こうして、あるサンプリング時刻において
1iの更新演算によって第一フィルタ13aのフィルタ
係数が更新され、次のサンプリング時刻ではW2iの更新
演算によって第二フィルタ13bのフィルタ係数が更新
され、次のサンプリング時刻ではW3iの更新演算によっ
て第三フィルタ13cのフィルタ係数が更新され、更に
次のサンプリング時刻ではW4iの更新演算によって第四
フィルタ13dのフィルタ係数が更新されるものとな
る。従ってマイクロプロセッサ16において、1回のサ
ンプリング内での更新演算は例えば前記(6)式とな
り、スピーカ数による増加はなくなる。従ってコントロ
ーラ10の演算負荷が著しく軽減され、小型のコントロ
ーラで大幅な高速処理が可能となる。
【0064】また、コントローラの演算能力を一定とし
て考えた場合はサスペンションの振動入力などランダム
信号に対応してフィルタ(W=−G・C-1参照)を表現
するためにフィルタ係数の数iを大幅に増大することが
でき、適確な処理が可能となる。
【0065】第一〜第四フィルタ13a〜13dのう
ち、あるサンプリング時刻で選択されないフィルタの係
数Wmiは更新されないが、前回あるいその前に更新され
たフィルタ係数に従ってフィルタ処理を実施するため、
実際に駆動されるラウドスピーカはM=4個であり、広
い領域の制御を実現することができる。
【0066】なお、第1実施例では各フィルタ13a〜
13dのフィルタ係数を順次更新するようにしたが、マ
イクロプロセッサ16の演算能力に応じて更新するスピ
ーカ数を組合わせることも可能である。例えば、あるサ
ンプリング時刻で第一、第二フィルタ13a,13bの
フィルタ係数を同時に更新し、次のサンプリング時刻で
第三、第四フィルタ13c,13dのフィルタ係数を同
時に更新し、これらの更新を交互に行なうようにするこ
ともできる。更にフィルタを増加し、あるいは減少して
任意の組合わせにおいて更新演算をすることも可能であ
る。
【0067】第2実施例 サスペンション振動に基づくロードノイズ等では車両伝
達系の伝達関数を表現するインパルス応答は残響特性が
あるため、適応ディジタルフィルタ13のフィルタ係数
は図7で示すように、同様な残響特性を持たせる必要が
あり、多くのフィルタ係数を必要としていることは上記
した通りである。
【0068】ここで全てのフィルタ係数が更新前0にセ
ットされていることを考慮すると、図7で示すように所
定のフィルタ係数Wa より前のフィルタ係数(W0 〜W
a-1)は後のフィルタ係数(Wa 〜Wi )より更新量が
大きいことになる。このように更新量の相違がある状態
で全フィルタ係数が同じ頻度で更新された時、i+1個
あるフィルタ係数のうち、前半及び後半から更新される
要素としてそれぞれフィルタ係数(W0 ,W1 )(W
i-1 ,Wi )を抜き出して表現すると、図8,図9のよ
うになる。
【0069】この図8,図9は、前記(5)式の演算を
模式図的に表したもので横軸、及び縦軸をフィルタ係数
とし、紙面に直交する方向を音圧の自乗値としている。
楕円で表しているのは等音圧線であり、これら等音圧線
の集まりとして音圧の自乗値としての二次局面が図10
のように存在しているのである。従って、図8,図9は
図10で示す二次局面を上方から見た状態を示してい
る。
【0070】そして、更新量の大きなフィルタ係数(W
0 ,1 )が最適値を示すP1 まで収束する前に、更新
量の小さなフィルタ係数(Wi-1 ,Wi )は最適値を示
すP2 に到達しており、(Wi-1 ,Wi )は(W0 ,W
1 )が収束するまで最適値近傍で更新され続けることに
なる。このことを考慮してフィルタ係数の更新頻度をあ
るフィルタ係数Wa の前半と後半で異ならせることによ
り、実際のフィルタ係数が最適値へ収束するまでの時間
を全フィルタ係数で均一化し、これによっても全体の更
新演算量を低減するようにしている。
【0071】この第2実施例の装置は前記第1実施例の
図1、図2の装置によって実現することができる。すな
わち、この実施例においてマイクロプロセッサ16はフ
ィルタ係数の更新頻度を異ならせる手段を構成してい
る。
【0072】この場合、作用は図11のフローチャート
に基づいて行なわれる。
【0073】ただし、基本的な作用は第1実施例と同様
であり、あるサンプリング時刻ではm番目のスピーカに
関するフィルタ係数Wmiの更新演算及び更新を行ない、
その更新動作をサンプリング時刻毎に順次繰返すもので
ある。従って第1実施例の図6のフローチャートのステ
ップS61に対応してこの実施例の図11のフローチャー
トのステップS111 ではm=1とし、同ステップS63
対応して同ステップS116 ではm=m+1とし、同ステ
ップS64に対応して同ステップS117 ではM個のスピー
カ全てについて更新が行なわれたかどうかを判断してい
る。
【0074】更にこの第2実施例ではステップS111
おいてA=1とし、ステップS112において、A=1の
ときはT=1とし、A≠1のときにはT=0としてい
る。更にステップS113 においてT=1のときはステッ
プS114 に移行し、m番目のスピーカに関し所定のフィ
ルタ係数よりも前のフィルタ係数Wm1〜Wmiの更新演算
及び更新を行なうようにしている。そして、所定のフィ
ルタ係数よりも前のフィルタ係数の更新がM個のスピー
カについて終了したとき、ステップS118 においてA=
A×(−1)とし、ステップS112 へ移行する。従って
A=1ではないのでT=0となりステップS113 ではT
=1でないと判断されステップS115 へ移行し、m番目
のスピーカについて所定のフィルタ係数より後のフィル
タ係数Wmi+1〜WmIk の更新演算及び更新が行なわれ
る。そしてこの場合の更新もM個のスピーカについて終
了するまで行なわれ、以下同様な手順によりステップS
114 とステップS115 のフィルタ係数更新演算及び更新
が繰返されるものである。
【0075】従って、このような制御により車室内騒音
がサスペンションの振動入力などランダム信号に基づき
フィルタ係数が膨大になる場合でもその全てを同時に更
新する場合に比べてコントローラ10の演算負荷が著し
く軽減され、小型のコントローラでより大幅な高速処理
が可能となる。
【0076】図12は第2実施例の変形例に係るフロー
チャートを示すものである。この変形例では更新頻度マ
ップを用いてフィルタ係数の更新頻度を異ならせるよう
にしている。
【0077】すなわち、図12において、まずステップ
121 では基準信号検出が行われる。すなわち、第一デ
ィジタルフィルタ12は基準信号xを入力し、マイクロ
ホン8a〜8hおよびスピーカ7a〜7d間の伝達関数
の組合せ数に応じてフィルタ処理された基準信号r
lm(前記(4),(5)式参照)を生成し、マイクロプ
ロセッサ16に出力する。同時にステップS122 では、
車室内騒音eの検出が行なわれる。すなわち、前記のよ
うにしてラウドスピーカ7a〜7dによって二次音が出
力されると車室6内の騒音は相殺され、その残差信号と
して残留騒音がマイクロホン8a〜8hで検出される。
そして、マイクロホン8a〜8hの出力信号であるノイ
ズ信号e1 〜e8 はアンプ30a〜30hによって増幅
され、A/D変換器15a〜15hによってA/D変換
され、マイクロプロセッサ16に入力される。
【0078】次に、ステップS123 では、音圧の自乗e
2 の総和演算が行なわれる(前記(2)式参照)。
【0079】次にステップS124 において適応ディジタ
ルフィルタ13の更新頻度に関するマップが読み込ま
れ、このマップに基づいてステップS125 においてフィ
ルタ係数の更新が行われる。即ち、マイクロプロセッサ
16において前記基準信号rlm、及び音圧e2 の総和演
算に基づき音圧の自乗和を最小とするように、前記
(5)式を演算し、これによって適応ディジタルフィル
タ13のフィルタ係数を逐次更新する。従って、適応的
に更新されるフィルタ係数によって基準信号xをフィル
タ処理し、ラウドスピーカ7a〜7dを駆動することが
でき、これによって車室6内の騒音低減を図ることがで
きるのである。
【0080】図13、図14は前記更新順序をマップと
して表現したものである。このマップにおいて○印が更
新を行ない、×印は更新を行なわないことを表してい
る。
【0081】例えば、更新回数1の場合1番目のスピー
カで見ると、フィルタ係数W1aより前半のフィルタ係数
(W11〜W1a-1)は更新しているが、後半のフィルタ係
数(W1a〜W1i)は更新を行なっていない。このような
マップを図12のステップS124 で読み込むことによ
り、この更新頻度に応じてフィルタ係数を更新するもの
である。従って、車室内騒音がサスペンションの振動入
力等ランダム信号に基づきフィルタ係数が膨大になる場
合でも、その全てを同時に更新する場合に比べてコント
ローラ10の演算負荷が著しく軽減され、小型のコント
ローラで大幅な高速処理が可能となる。
【0082】図13の場合は、フィルタ係数の更新を全
て同じ係数番号から後のものの頻度を少なくしている
が、図14のように、各ラウドスピーカ7a〜7dの駆
動信号毎に、更新頻度を変える点となる所定のフィルタ
係数Wbaを変化させることができる。
【0083】即ち、b番目のスピーカで見るとフィルタ
係数Wbaよりも後のものを点としてその前後の更新頻度
を変えている。
【0084】従って、ラウドスピーカ7a〜7dの設置
場所に係わらず各ラウドスピーカ7a〜7dに関し適切
な更新頻度を設定することができ、更に高速処理が可能
となるものである。
【0085】第3実施例 この第3実施例は、複数のラウドスピーカの制御効果に
対する寄与度に応じてフィルタ係数更新の選択頻度を変
更するようにしたものである。例えば図1のようにラウ
ドスピーカ7a〜7dがそれぞれ前席S1,S2及び後
席S3,S4に対応するドア部に配置されている場合、
前席側のスピーカ7a,7bと後席側のスピーカ7c,
7dとで制御効果に対する寄与度が異なってくる場合が
ある。例えば乗員が運転者一人だけの場合には前席側の
スピーカ7a,7bの寄与度が高く、また後席に人が乗
車しているときには後席側のスピーカ7c,7dの寄与
度が大きいか前後席いずれのスピーカの寄与度も等しく
なるといった如きである。また、いずれかの窓を開けた
時などにも各スピーカの制御効果に対する寄与度は異な
ることがある。
【0086】この第3実施例では後席に人が乗っている
か否かによって寄与度が異なる場合について説明する。
なお、装置としては図1、図2に示すものと同様のもの
で構成することができる。
【0087】そしてその作用は図15に示すフローチャ
ートに基づいて行なわれる。このフローチャートでは後
席に人が乗っていない場合は、前席側のスピーカの寄与
度が大であるとし、1〜f番目のスピーカの選択頻度を
高くし、後席に人が乗っている場合には後席側のスピー
カの寄与度が大であるか前後席とも寄与度は同等である
とし1〜f番目の選択頻度と(f+1)〜M番目のスピ
ーカの選択頻度とを同等にするようにしている。
【0088】なお、この実施例においてもラウドスピー
カは前席側2個、後席側2個の4つであり、前記fは2
でありMは4となる。
【0089】まずステップS151 において後席に人が乗
っているか否かを判断し、人が乗っていればステップS
152 でAA=1とし、乗っていなければステップS153
でAA=−1とする。いま、AA=−1であるものとし
ステップS154 においてm=1とし、ステップS155
おいてm番目のスピーカに関するWmi更新演算及び更新
を行なう。次いでステップS156 において、m=m+1
としステップS157 においてmとfとの比較を行ない、
前席側のスピーカに関するフィルタ係数の更新が1回づ
つ行なわれたかどうかを判断する。
【0090】前席側のスピーカに関するフィルタ係数の
更新が1回づつ行なわれれば、ステップS158 において
AA=1の判断において後席に人が乗っているかどうか
を判断し、乗っていなければステップS159 へ移行して
AA=AA×(−1)とし、ステップS154 へ移行す
る。そして再びステップS155 ,S156 ,S157 が実行
される。すなわち、後席に人が乗っていなければ前席側
のスピーカに関するフィルタ係数の更新が2回続けて行
なわれるのである。
【0091】次にステップS158 において再びAA=1
の判断が行なわれ、既にステップS159 において−1が
掛けられているのでAA=1となり、ステップS160
移行しm=f+1として後席側のスピーカの更新制御に
移行する。次いで、ステップS161 においてm番目のス
ピーカに関するWmiの更新演算及び更新が行なわれる。
ステップS162 ではm=m+1とし、ステップS163
おいてmがMと比較され、後席側のスピーカについてフ
ィルタ係数の更新が1回づつ行なわれたか否かが判断さ
れる。1回づつ更新されていなければ再びステップS
161 ,S162 が実行され、1回づつ更新されていればス
テップS111 へ戻り上記同様の作用が繰返される。
【0092】従ってこのような制御により、後席に人が
乗っていなければ前席側のスピーカに関するフィルタ係
数の更新が2度続けられた後、後席側のスピーカに関す
るフィルタ係数の更新が行なわれ、後席に人が乗ってい
る場合には前後席いずれの側のスピーカに関するフィル
タ係数の更新も同等の選択頻度で行なわれるものであ
る。従って、この実施例では制御効果に対する寄与度の
高いスピーカに関し優先的にフィルタ係数の更新を行な
うため、高速処理を可能にしながら制御効果をより高め
ることができる。
【0093】第4実施例 第1実施例の場合には、各サスペンション加速度検出器
5a〜5dで検出された加速度信号が略同時に第一ディ
ジタルフィルタ12、あるいは適応ディジタルフィルタ
13へ入力されているため、演算負荷が加速度検出器の
数に比例して増大しているものとなっている。
【0094】従ってこの第4実施例では、各騒音発生状
態検出手段としての加速度検出器5a〜5dの出力信号
を選択する手段として加速度信号選択回路21を設けて
いる。
【0095】そして、加速度信号選択回路21はマイク
ロプロセッサ16からの指令によって加速度検出器5a
〜5dの出力信号を順次選択し、出力するように構成さ
れている。
【0096】他の構成は図2の第1実施例と同様である
ため同一符号を付して説明は省略する。
【0097】そしてこの場合の作用は図17に示すフロ
ーチャートに基づいて行なわれる。
【0098】まず、複数の加速度検出器5a〜5dのう
ちp番目の加速度検出器に基づく基準信号をxp とす
る。ステップS171 においてp=1とし、1番目の加速
度検出器、例えば5aの出力信号が選択され、A/D変
換器11を介して基準信号x1が第一ディジタルフィル
タ12及び適応ディジタルフィルタ13へ入力される。
次いでステップS172 においてp番目の基準信号xp
対するWmiの更新演算及び更新が行なわれる。次いでス
テップS173 においてp=p+1とされ、ステップS
174 においてpとPとの比較が行なわれ、全ての加速度
検出器5a〜5dに関する基準信号xp に対しフィルタ
係数の更新演算及び更新が行なわれたかどうかが判断さ
れ、完了していなければステップS172 ,S173 が繰り
返えされ、完了した場合にはステップS171 へ移行し、
上記ステップが繰り返えされる。
【0099】従って、この実施例では複数の加速度検出
器によって騒音源を適確にとらえることができながら、
1回の処理で取扱う加速度検出器の出力信号(騒音相関
信号)を減らすことができ、高速処理が可能となる。
【0100】第5実施例 第4実施例では複数の加速度検出器5a〜5dからの出
力信号を順次選択して制御するようにしたが、前輪側の
加速度検出器5a,5bと後輪側の加速度検出器5c,
5dとの間などにおいて騒音に対する関与度が異なって
くる場合もある。従って、この第5実施例では不快波発
生状態検出手段の騒音に対する関与度に応じて不快波発
生状態検出手段の出力信号の選択頻度を変更する構成と
している。
【0101】装置としては図16に示すものと同様に構
成することができる。
【0102】作用は図18に示すフローチャートに基づ
いて行なわれれる。基本的には第4実施例の図17に示
すフローチャートと同様であり、図17のステップS
171 に対応する図18のステップS182 においてp=q
+1とし、同ステップS172 に対応するステップS183
においてp番目の基準信号xp に対するWmiの更新演算
及び更新が行なわれ、ステップS173 に対応する同ステ
ップS184 ,S190 においてp=p+1とされ、p番目
の基準信号xp に対するWmiの更新演算及び更新が行な
われるようになっている。
【0103】一方、この第5実施例では、後輪側(q+
1)〜P番目の加速度検出器の騒音に対する関与度が高
く、前輪側1〜q番目の加速度検出器の騒音に対する関
与度は低いものとしている。そして、加速度検出器は前
輪側5a,5bの2個であり、後輪側は5c,5dの2
個でありため、q=2であり、P=4である。
【0104】まずステップS181 において、後輪側の加
速度信号を優先的に選択するようAA=−1とし、ステ
ップS182 においてp=q+1とし、後輪側の加速度検
出器5c,5dの選択を行なう。次いでステップS183
において後輪側におけるp番目の加速度検出器に基づく
基準信号xp に対するWmiの更新演算及び更新を行な
う。
【0105】次いでステップS184 においてp=p+1
とし、ステップS185 においてpとP(総数)との比較
を行ない、後輪側の加速度検出器5c,5dの出力信号
の選択を全て行なったかどうかを判断する。全ての選択
が行なわれてなければステップS183 へ戻り、同様の手
順で更新演算及び更新が行なわれる。
【0106】後輪側の加速度検出器5c,5dの出力信
号の選択が全て行なわれればステップS186 へ移行し、
AA=1かどうかの判断が行なわれる。この場合、ステ
ップS181 においてAA=−1としたのでステップS
187 へ移行してAA=AA×(−1)とし、再びステッ
プS182 へ移行する。従って、ステップS183
184,S185 が再び繰返され、後輪側の加速度検出器
5c,5dの出力信号の選択が2度続けて行なわれるこ
とになる。
【0107】次いでステップS186 では再びAA=1の
判断が行なわれ、この時ステップS187 の実行によって
既にAA=1となっているのでステップS188 へ移行し
てp=1とされ、前輪側の加速度検出器の出力信号の選
択が行なわれる。
【0108】次いでステップS189 において、ステップ
183 と同様にフィルタ係数の更新演算及び更新が行な
われる。ステップS190 ではp=p+1とされ、ステッ
プS191 においてpとqとの比較が行なわれ、前輪側の
加速度検出器の出力信号の選択が全て行なわれたかどう
かが判断される。全ての選択が行なわれていなければ、
ステップS189 へ戻り同様の動作が繰返される。
【0109】ステップS191 において前輪側の加速度検
出器5a,5bの出力信号の選択が完了したと判断され
た場合、ステップS181 へ戻り同様の動作が繰返される
ものである。
【0110】従ってこの実施例では、第4実施例と同様
な作用効果を奏する他、騒音に対する関与度に応じて加
速度検出器の出力信号の選択頻度を変更するため、騒音
に対する関与度の高い信号を用いて制御することがで
き、制御効果をより高めることができる。
【0111】なお、この発明は上記実施例に限定される
ものではない。例えば、各駆動信号に対応して更新され
るフィルタ係数の更新頻度を所定のフィルタ係数より前
のフィルタ係数と後のフィルタ係数とで異ならせる手段
を設ける例は、第3実施例、第4実施例、第5実施例に
適用することもできる。
【0112】騒音低減を図る評価点とマイクロホンとが
空間的に離れたものであっても所定比に基づいて評価点
の残留騒音を推定し、制御を行なわせることができる。
適応ディジタルフィルタのフィルタ係数の更新アルゴリ
ズムとしては、時間領域のLMSアルゴリズムに限らず
周波数領域のLMSアルゴリズムなど他のアルゴリズム
を適用することができる。更にこの発明は振動の不快波
制御に応用することもできる。
【0113】
【発明の効果】以上より明らかなように、請求項1の発
明では、複数の信号と入力される信号とを干渉させて、
干渉後の所定位置の信号を低減させる場合に、フィルタ
係数の更新を選択して行なうことができ、フィルタ係数
の更新数を減らして演算装置の演算負荷を軽減し、小型
の装置による高速演算が可能となる。
【0114】請求項2の発明では、共通の不快波に複数
の制御波を干渉させて評価点での不快波低減を図る場合
に、フィルタ係数の更新数を減らし、演算装置の演算負
荷を軽減し、小型の装置により高速演算を可能とする。
【0115】請求項3の発明では制御波源の制御効果に
対する寄与度に応じてフィルタ係数更新の選択頻度を変
更するから高速処理と制御効果の増大を可能とする。
【0116】請求項4の発明では、共通の不快波に複数
の制御波を干渉させて評価点での不快波低減を図る場合
に、同質の不快波源の不快波発生状態に関する複数の信
号を検出する不快波発生状態検出手段の出力信号を選択
して制御するから、複数の不快波発生状態検出手段によ
り不快波源を的確にとらえながら1回の処理で取扱う不
快波発生状態に関する信号を減らすことができ、高速処
理が可能となる。
【0117】請求項5の発明では、不快波発生状態検出
手段の不快波に対する関与度に応じて不快波発生状態検
出手段の出力信号の選択頻度を変更するから制御効果を
より高めることができる。
【0118】請求項6の発明では、各駆動信号に対応し
て更新されるフィルタ係数の更新頻度を所定のフィルタ
係数より前のフィルタ係数と後のフィルタ係数とで異な
らせることができるため、更新すべきフィルタ係数を更
に減少させ、演算装置の演算負荷をより軽減し、より小
型化と高速演算が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例に係る能動型不快波制御装置を車両
に適用した状態の概略ブロック図である。
【図2】第1実施例に係る制御ブロック図である。
【図3】適応ディジタルフィルタのブロック図である。
【図4】スピーカ駆動のフローチャートである。
【図5】フィルタ係数更新のフローチャートである。
【図6】フィルタ係数更新のフローチャートである。
【図7】フィルタ係数の模式図である。
【図8】フィルタ係数の収束を示す模式図である。
【図9】フィルタ係数の収束を示す模式図である。
【図10】二次曲面の説明図である。
【図11】第2実施例に係るフィルタ係数更新のフロー
チャートである。
【図12】第2実施例の変形例に係るフィルタ係数更新
のフローチャートである。
【図13】更新頻度のマップである。
【図14】更新頻度のマップである。
【図15】第3実施例に係るフィルタ係数更新のフロー
チャートである。
【図16】第4実施例に係る制御ブロック図である。
【図17】第4実施例に係るフィルタ係数更新のフロー
チャートである。
【図18】第5実施例に係るフィルタ係数更新のフロー
チャートである。
【図19】従来例に係る制御ブロック図である。
【図20】自動車に適用した場合の制御ブロック図であ
る。
【図21】伝達関数Gを表現するインパルス応答であ
る。
【図22】フィルタ係数の模式図である。
【符号の説明】
5a 加速度検出器 5b 加速度検出器 5c 加速度検出器 5d 加速度検出器 7a ラウドスピーカ(制御波源) 7b ラウドスピーカ(制御波源) 7c ラウドスピーカ(制御波源) 7d ラウドスピーカ(制御波源) 8a マイクロホン(残留不快波検出手段) 8b マイクロホン(残留不快波検出手段) 8c マイクロホン(残留不快波検出手段) 8d マイクロホン(残留不快波検出手段) 8e マイクロホン(残留不快波検出手段) 8f マイクロホン(残留不快波検出手段) 8g マイクロホン(残留不快波検出手段) 8h マイクロホン(残留不快波検出手段) 10 コントローラ(適応信号処理装置) 12 第1ディジタルフィルタ 13 適応ディジタルフィルタ 14a 選択回路(更新選択手段) 14b 選択回路(更新選択手段) 14c 選択回路(更新選択手段) 14d 選択回路(更新選択手段) 16 マイクロプロセッサ(適応制御器、更新頻度を異
ならせる手段) 21 加速度信号選択回路(信号選択手段)
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭62−209295(JP,A) 特開 平3−203497(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G10K 11/178

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 入力された信号を複数のフィルタ係数を
    用いてフィルタ処理し複数の信号を出力する適応ディジ
    タルフィルタと、前記複数の出力信号と入力される信号
    とを制御対象となる信号伝達系を介して干渉させ、該信
    号伝達系における特定位置で前記干渉後に残留する信号
    を低減させるように前記フィルタ係数を各出力信号に対
    応して更新する適応制御器とを備え、前記複数の出力信
    号のいずれかに対応した特定のフィルタ係数の更新を
    に又は前記残留する信号の低減に係る重要度に応じて前
    記フィルタ処理の度毎に選択する手段を設け、前記適応
    制御器は前記選択に応じてフィルタ係数更新の動作を順
    次繰返すことを特徴とする適応信号処理装置。
  2. 【請求項2】 共通の騒音又は振動の不快波に干渉させ
    る複数の制御波を発生して評価点の不快波低減を図る複
    数の制御波源と、前記干渉後の所定位置の残留不快波を
    検出する手段と、前記不快波を発生させる不快波源の
    状態に応じた周波数の信号を検出する不快波発生状態
    検出手段と、前記不快波発生状態検出手段の検出信号を
    複数のフィルタ係数によってフィルタ処理し前記各制御
    波源を駆動する複数の駆動信号を出力する適応ディジタ
    ルフィルタと、前記残留不快波検出手段の出力信号と不
    快波発生状態検出手段の出力信号とに基づき前記残留不
    快波検出手段の出力信号を低減するように前記適応ディ
    ジタルフィルタのフィルタ係数を各駆動信号に対応して
    更新する適応制御器とを備え、前記複数の駆動信号の
    ずれかに対応した特定のフィルタ係数の更新を順に又は
    前記残留不快波検出手段の低減に係る重要度に応じて前
    記フィルタ処理の度毎に選択する手段を設け、前記適応
    制御器は前記選択に応じてフィルタ係数更新の動作を順
    次繰返すことを特徴とする能動型不快波制御装置。
  3. 【請求項3】 請求項2記載の能動型不快波制御装置で
    あって、前記選択手段は、前記制御波源の制御効果に対
    する寄与度の増大に応じて前記フィルタ係数更新の選択
    頻度を高くして変更することを特徴とする能動型不快波
    制御装置。
  4. 【請求項4】 共通の騒音又は振動の不快波に干渉させ
    る複数の制御波を発生して評価点の不快波低減を図る制
    御波源と、前記干渉後の所定位置の残留不快波を検出す
    る手段と、前記不快波を発生させる同質の複数の不快波
    源の作動状態に応じた周波数の複数の信号を検出する複
    数の手段と、前記不快波発生状態検出手段の検出信号を
    複数のフィルタ係数によってフィルタ処理し前記各制御
    波源を駆動する信号を出力する適応ディジタルフィルタ
    と、前記残留不快波検出手段の出力信号と不快波発生状
    態検出手段の出力信号とに基づき前記残留不快波検出手
    段の出力信号を低減するように前記適応ディジタルフィ
    ルタのフィルタ係数を更新する適応制御器とを備え、前
    記各不快波発生状態検出手段の出力信号のいずれか
    順に又は前記残留不快波検出手段の出力信号の低減に係
    る重要度に応じて前記フィルタ処理の度毎に選択する手
    段を設け、前記適応制御器及び適応ディジタルフィルタ
    は、前記出力信号の選択に応じて順次動作を繰返すこと
    を特徴とする能動型不快波制御装置。
  5. 【請求項5】 請求項4記載の能動型不快波制御装置で
    あって、前記信号選択手段は、前記不快波発生状態検出
    手段の不快波に対する関与度の高まりに応じて前記不快
    波発生状態検出手段の出力信号の選択頻度を高くするよ
    うに変更することを特徴とする能動型不快波制御装置。
  6. 【請求項6】 請求項2,3,4又は5記載の能動型不
    快波制御装置であって、各駆動信号に対応して更新され
    るフィルタ係数の更新頻度を、所定のフィルタ係数より
    前のフィルタ係数と後のフィルタ係数とで異ならせる手
    段を設けたことを特徴とする能動型不快波制御装置。
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