JP2941584B2 - 遮音装置 - Google Patents

遮音装置

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JP2941584B2
JP2941584B2 JP4334898A JP33489892A JP2941584B2 JP 2941584 B2 JP2941584 B2 JP 2941584B2 JP 4334898 A JP4334898 A JP 4334898A JP 33489892 A JP33489892 A JP 33489892A JP 2941584 B2 JP2941584 B2 JP 2941584B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、衝撃振動音の伝播を軽
減する遮音装置に係り、特に住宅の階上で発生した衝撃
音が階下に伝わるのを軽減する遮音床装置として用いる
のに好適な遮音装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、集合住宅等においては、階上から
の床衝撃音が大きな問題となっている。この床衝撃音に
は、通常歩行時に生じる軽量衝撃による床衝撃音と、重
量物を落下させたり子供が飛び跳ねた際に生じる重量衝
撃による床衝撃音とがあるが、特に重量衝撃による床衝
撃音については、床スラブを厚くする以外に有効な解決
策はなかった。
【0003】ところが、床スラブを厚くした場合には、
一定の高さ内に構築できる階数が少なくなってしまい、
また建築資材費も嵩むため、必ずしも有効な手段とは云
えない。またこの方法は、木造住宅に適用することは極
めて困難である。
【0004】そこで、本出願人は先に、特開平2−28
9759号公報に示されているように、上材と下材との
間に介装される緩衝機構の上下寸法を小さくし、既存の
建物や木造住宅にも容易に適用でき、しかも居住性を悪
くするおそれがない遮音装置を提案した。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本出願人が先に提案し
た前記遮音装置においては、弾性部材により衝撃振動音
を吸収するとともに、減衰機構により弾性部材の弾性復
帰動作に抵抗を与えるようにしているので、居住性を損
なうことなく重量衝撃音を吸収することができるという
利点を有しているが、この緩衝機構により軽量衝撃音も
吸収できるようにすると、居住性が悪くなったり、ある
いは重量衝撃音の吸収効果が低下する等の問題がある。
【0006】本発明は、かかる現況に鑑みなされたもの
で、重量衝撃音も軽量衝撃音も吸収できる遮音装置を提
供することを目的とする。
【0007】本発明の他の目的は、居住性を損なうこと
なく衝撃振動音の吸収効果をより向上させることがで
き、しかも緩衝機構の寿命を延ばすことができる遮音装
置を提供するにある。
【0008】本発明の他の目的は、施工の巧拙により衝
撃音の吸収効果が低下するおそれがなく、また施工が容
易な遮音装置を提供するにある。
【0009】本発明のさらに他の目的は、上材と下材と
の上下間隔を可及的狭くすることができる遮音装置を提
供するにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、前記目的を達
成する手段として、上材と下材との間に、衝撃振動音を
吸収する緩衝機構を介装した遮音装置において、前記緩
衝機構を、衝撃荷重の負荷により弾性変形して衝撃振動
音を吸収するスプリング機構と、このスプリング機構と
上材または下材との間に配置される緩衝材とから構成
し、緩衝材に、前記スプリング機構弾性変形する衝撃
荷重よりも軽量の衝撃荷重で弾性変形する脆弱部を設け
るようにしたことを特徴とする。
【0011】そして、本発明においては、スプリング機
構の弾性復帰動作に抵抗を与える減衰機構を設けること
が好ましく、また脆弱部を、緩衝材の表面に設けられた
凹凸部で構成したり、あるいは緩衝材の厚さ方向中間部
に設けたくり抜き部で構成したり、さらには合成樹脂発
泡体で構成することがより好ましい。
【0012】また、スプリング機構を、ベースプレート
と;ベースプレートの一面側に配置され、反ベースプレ
ート側に凸状に湾曲する弾性部材と;この弾性部材を弾
性変形自在にベースプレートに支持する支持機構と;か
ら構成し、前記弾性部材を、合成樹脂材で被覆すること
が好ましい。
【0013】そしてその際、合成樹脂材は、0.2mm
以上の厚さとすることが好ましく、また合成樹脂材とし
て、ポリエチレンまたはその発泡体を用いることがより
好ましい。
【0014】また、緩衝機構を、所定形状のユニット材
に取付けてユニット化し、かつこのユニット材により上
材または下材を構成することが好ましい。
【0015】さらに、緩衝機構の一部を、上材または下
材のうちの少なくともいずれか一方の厚さ領域内に位置
させるようにすることがより好ましい。
【0016】
【作用】本発明に係る遮音装置においては、上材に衝撃
荷重が負荷されると、緩衝機構のスプリング機構が弾性
変形し、この弾性変形により衝撃振動音が吸収される。
そして、減衰機構を設けた場合には、この弾性部材の弾
性復帰の際に、減衰機構により抵抗が与えられるので、
スプリング機構の振動が短時間で減衰し、居住性の向上
が図られる。
【0017】ところで、スプリング機構が弾性変形する
場合には、それに先立って、緩衝材の脆弱部が弾性変形
する。すなわち、緩衝材の脆弱部は、軽量衝撃振動音を
吸収する。しかもスプリング機構自体は、重量衝撃振動
音を吸収するのに最適な構造とすることができるので、
居住性が悪くなったり、重量衝撃音の吸収効果が低下す
るといった不具合がない。
【0018】そして、本発明において、脆弱部を、緩衝
材の表面に設けた凹凸部で構成したり、あるいは緩衝材
の厚さ方向中間部に設けたくり抜き部で構成したり、さ
らには合成樹脂発泡体で構成することにより、軽量衝撃
音を吸収するのに最適な値を得ることが可能となる。
【0019】また、スプリング機構を、ベースプレート
と、弾性部材と、支持機構とから構成することにより、
スプリング機構がユニット化されて施工が容易となり、
また弾性部材がベースプレート上で動作することになる
ので、上材あるいは下材の素材が変更になつても、常に
安定した弾性変形動作が得られる。また、弾性部材を合
成樹脂材で被覆することにより、弾性部材の弾性変形時
に生じる振動音を低減でき、また寿命を延ばすことが可
能となる。
【0020】そしてその際、合成樹脂材を0.2mm以
上の厚さとすることにより、弾性変形時に生じる振動音
をほぼ完全に防止することが可能となり、その効果は、
合成樹脂材として、ポリエチレンまたはその発泡体を用
いた際に最も発揮される。
【0021】また、緩衝機構を、所定形状のユニット材
に取付けてユニット化し、かつユニット材により上材ま
たは下材を構成することにより、施工が容易になるとと
もに、施工の巧拙によって衝撃振動音の吸収効果が低下
するといった不具合が全くない。
【0022】さらに、緩衝機構の一部を、上材または下
材のうちの少なくともいずれか一方の厚さ領域内に位置
させることにより、上材と下材との間隙を狭くすること
が可能となる。
【0023】
【実施例】以下、本発明を図面を参照して説明する。図
1は、本発明の一実施例に係る遮音装置を示すもので、
図中、符号1は緩衝機構であり、この緩衝機構1は、上
材2と下材3との間に介装され、衝撃振動音を吸収する
ようになっている。
【0024】前記上材2は、図1に示すように、角材を
所定間隔で配した根太4と、この根太4上に配した例え
ばパーチクルボード製の捨張床5と、この捨張床5上に
配した例えばフローリング製の床仕上材6とから構成さ
れており、また下材3は、例えばコンクリート製の床ス
ラブ7で構成されている。そして、前記緩衝機構1は、
根太4に設けた凹部7内にその一部が埋設され、根太4
と下材3との上下寸法を可及的小さくできるようになっ
ている。
【0025】前記根太4は、通常は35×90mmの角
材を600mm間隔で配して構成されるが、10×10
mm〜200×200mm程度の範囲のものが使用可能
であり、また間隔も任意に設定することができる。ま
た、木材以外に、アルミ,鉄,ステンレス鋼等の金属、
プラスチック、集成材、積層材あるいは合板等も使用で
き、前記緩衝機構1は、この根太4の凹部7内に予め取
付けた状態でユニット化されている。そしてこのユニッ
ト化により、現場施工が容易になるとともに、施工の巧
拙によって緩衝機能が変化しないようになっている。な
お、この根太4は、後述する捨張床5の種類にもよる
が、必要に応じ省略してもよく、この場合には、緩衝機
構1は、直接捨張床5に取付けられることになる。そし
てこの際、捨張床5に凹部7を設けるようにしてもよ
い。
【0026】前記捨張床5は、通常は25mmの厚さを
有するパーチクルボードを900×1200mmにカッ
トして用いられるが、厚さは、3〜60mm程度の範囲
のものが使用でき、また大きさは、100×150mm
〜1200〜2700mm程度の範囲のものが使用でき
る。また、パーチクルボード以外に、木材単板,合板,
インシュレーションボード,ハードボード,集成材,ラ
ンバコア,ハニカムあるいは積層材等を用いることもで
きる。
【0027】また、前記床仕上材6は、通常は厚さ12
〜15mmのフローリングが用いられるが、コルク,合
板,合成樹脂材,集成フローリング,積層フローリン
グ,むく材,アルミ等の金属板,ガラス,セラミック
ス,ゴム,モルタル,石,石膏ボード,インシュレーシ
ョンボード,ハードボード,布,畳,カーペット,ある
いはこれらのいずれかを組合わせた複合材等を用いるこ
ともできる。また、この床仕上材6と捨張床5との間、
あるいは捨張床5と根太4との間には、石綿,ガラス繊
維,ゴム,化学繊維,天然繊維その他の遮音材を介装す
ることもできる。
【0028】一方、前記緩衝機構1は、図2に示すよう
に、衝撃荷重の負荷により弾性変形して衝撃振動音を吸
収するスプリング機構11と、このスプリング機構11
の弾性復帰動作に抵抗を与える減衰機構12と、前記ス
プリング機構11と下材3との間に配置される緩衝材1
3とから構成されており、前記緩衝材13には、後に詳
述するように、スプリング機構11の弾性変形に先立っ
て弾性変形する脆弱部14が設けられている。この緩衝
機構1は、通常は600×900mmの間隔で設置され
るが、この間隔は、100×100mm〜2000×2
000mmmの範囲で任意に設定することができる。
【0029】前記スプリング機構11は、図3に示すよ
うに、ベースプレート15と、このベースプレート15
の下面側に配置される弾性部材16と、この弾性部材1
6を弾性変形自在にベースプレート15に支持する支持
機構17とを備えている。
【0030】前記ベースプレート15は、図3ないし図
5に示すように、例えばプラスチックにより幅50m
m,長さ300mm程度の方形板状に形成されており、
その両側近傍位置には、弾性部材16の長手方向の位置
規制を行なう突片18がそれぞれ設けられ、その内側に
は、弾性部材逃がし孔19,支持部20,および減衰機
構逃がし孔21が順次設けられている。
【0031】前記支持部20は、図3ないし図6に示す
ように、その上面がベースプレート15の上面よりも高
く設定されており、この支持部20上に後述する減衰機
構12の長手方向両端部が載置されるようになってい
る。
【0032】この支持部20の幅方向両端部には、図5
および図6に示すように、支持部20から立上がって減
衰機構12の両側部を支持するとともに、上面に弾性部
材16の長手方向両端部が載置される支持ガイド片22
がそれぞれ設けられている。そして、前記支持機構17
は、各支持ガイド片22の長手方向内端部に、ベースプ
レート15と一体に設けられている。
【0033】この支持機構17は、図3ないし図6に示
すように、先端が内側に鉤形に屈曲する一対の係止片2
3で構成されており、これら両係止片23を外側に弾性
変形させて弾性部材16を装着することにより、弾性部
材16の長手方向両端部が包持されるようになってい
る。
【0034】前記弾性部材16は、図7および図8に示
すように、例えば帯板状のばね材を屈曲成形して構成さ
れており、その中央部には、下方に凸の円弧状に湾曲す
るばね部24が形成され、またばね部24の両側には、
概略水平状の支持部25がそれぞれ形成され、さらに各
支持部25の外側には、上方に屈曲して減衰機構12を
受ける受け部26がそれぞれ形成されている。そして、
この弾性部材16の表面は、合成樹脂,好ましくはポリ
エチレンまたはその発泡体からなる外被膜27で被覆さ
れており、この外被覆27の厚さは、0.2mm以上,
好ましくは0.4〜0.8mm程度に設定され、防錆効
果に加え振動音吸収効果も得られるようになっている。
【0035】また、前記弾性部材16は、図7および図
8に示すように、その長さL1 が20〜1000mm,
好ましくは240mm程度に設定され、また幅W1 が5
〜100mm,好ましくは30mm程度に設定され、ま
た高さH1 が5〜500mm,好ましくは25mm程度
に設定され、さらに板厚T1 が0.5〜5mm,好まし
くは2.5mm程度に設定されている。そして、この弾
性部材16の各支持部25には、支持ガイド片22およ
び係止片23との直接接触を防止するためのカバー28
が装着され、また前記緩衝材13は、ばね部24の中央
部に装着されるようになっている。
【0036】前記カバー28は、図9および図10に示
すように、例えばプラスチックを用いて、開口端にリッ
プ29を有するリップ溝形状に形成されており、溝底部
中央には、弾性部材16への装着を容易にするためのV
溝30が設けられている。
【0037】一方、前記減衰機構12は、図11および
図12に示すように、帯板状のばね材を屈曲成形して構
成されており、その中央部には、下方に凸の円弧状に湾
曲するばね部31が形成され、またばね部31の両側位
置には、ほぼ水平に延びる減衰部32がそれぞれ形成さ
れている。これら各減衰部32の外端部は、図12に示
すように、概略半分の幅になるように狭幅化され、この
部分が前記支持ガイド片22の間に配されるようになっ
ている。そして、この減衰機構12の表面は、合成樹
脂,好ましくはポリエチレンまたはその発泡体からなる
外被膜33で被覆されており、この外被膜33の厚さ
は、0.2mm以上,好ましくは0.4〜0.8mm程
度に設定され防錆効果に加え振動音吸収効果も得られる
ようになっている。
【0038】また、前記減衰機構12は、図11および
図12に示すように、その長さL2が20〜1000m
m,好ましくは240mm程度に設定され、後述するカ
バー34を両側の減衰部32に装着した状態で、弾性部
材16の受け部26間に小さな力で押込んで装着できる
ようになっている。前記減衰機構12はまた、その幅W
2 が5〜100mm,好ましくは30mm程度に設定さ
れ、、また高さH2 が2〜480mm,好ましくは18
mm程度に設定され、さらに板厚T2 が0.4〜4m
m,このましくは1.6mm程度に設定されている。そ
して、この減衰機構12の各減衰部32には、前記カバ
ー34がそれぞれ装着されるようになっている。
【0039】このカバー34は、図13および図14に
示すように、浅底容器状の本体35と、この本体35に
ヒンジ36を介し連結される蓋体37とから、例えば合
成樹脂の一体成形で形成されており、本体35の係止孔
38に蓋体37の係止突起39を圧入することにより、
減衰部32を被覆できるようになっている。そしてこの
カバー34により、振動音をより低減できるとともに、
外被膜27の剥離を防止できるようになっている。
【0040】前記緩衝材13は、図15に示すように、
外面に脆弱部14を有する外側部材40と、この外側部
材40とともに、弾性部材16を包む内側部材41とか
ら構成されている。
【0041】前記外側部材40は、図15および図16
に示すように、例えば合成樹脂により、弾性部材16の
幅W1 よりも大寸法の横幅を有する方形厚板状に形成さ
れており、その上面には、弾性部材16が配される浅溝
42が設けられ、また下面には、例えば複数本の凸条で
形成される脆弱部14が一体成形されている。そしてこ
の脆弱部14は、弾性部材16の弾性変形に先立って弾
性変形し、軽量衝撃音を吸収できるようになっている。
【0042】なお、この脆弱部14は、凸条ではなく柱
状等の突起でもよく、また外側部材40の下面ではな
く、弾性部材16に接触する上面側に設けてもよい。ま
た、外側部材40の肉厚内に孔をくり抜き、このくり抜
き部を脆弱部14としてもよい。さらに、外側部材40
の下面に、適度な硬さを有する合成樹脂発泡体貼着して
脆弱部14としてもよい。
【0043】一方、前記内側部材41は、図15および
図17に示すように、例えば合成樹脂により、前記外側
部材40と同一形状寸法の方形薄板状に形成されてお
り、その上面には、複数本の小さな凸条43が一体成形
されている。そして、この内側部材41により、弾性部
材16と減衰機構12との直接接触が阻止され、衝撃音
を防止できるとともに、外被膜27,33の剥離を防止
できるようになっている。
【0044】この内側部材41と前記外側部材40と
は、図15ないし図17に示すように、内側部材41の
四隅部に設けた係止突起44を、外側部材40の四隅部
に設けた係止孔45に圧入することにより一体に連結さ
れ、弾性部材16に装着固定されるようになっている。
【0045】次に、本実施例の作用について説明する。
図1において、床仕上材6に衝撃荷重が負荷されると、
きず緩衝材13の脆弱部14が弾性変形する。軽量衝撃
荷重の場合には、この脆弱部14のみが弾性変形して衝
撃振動音が吸収される。
【0046】一方、重量衝撃荷重の場合には、脆弱部1
4の弾性変形に引続き、弾性部材16のばね部24が弾
性変形し、次いでこのばね部24に押圧されて、減衰機
構12のばね部31が弾性変形する。そして、これら一
連の弾性変形により、衝撃荷重が吸収され、重量衝撃振
動音が吸収される。
【0047】ところで、弾性変形した弾性部材16のば
ね部24が弾性復帰する際には、両端の受け部26は内
側に弾性変形することになるが、その際、減衰機構12
の減衰部32により内側から押圧され、結果としてばね
部24の弾性復帰動作に抵抗が与えられる。このため、
弾性部材16の振動が短時間で減衰し、居住性の向上が
図られる。
【0048】(実験例)本発明者等は、前記緩衝機構1
をコンクリート床版上に600×900mmの間隔で配
置し、床衝撃音レベルがどの程度改善されるかを確認す
る実験を行ない、図18に示す結果を得た。
【0049】なお、弾性部材16には、長さL1 が24
0mm,幅W1 が30mm,高さH1 が25mm,板厚
1 が2.5mmの金属ばねを用い、また減衰機構12
には、長さL2 が232mm,幅W2 が30mm,高さ
2 が18mm,板厚T2 が1.6mmの金属ばねを用
いた。そして、これらの表面を、0.5mm厚のポリエ
チレンで被覆して、外被膜27,33とした。
【0050】図18の実線グラフからも明らかなよう
に、広い周波数領域において極めて良好な結果が得ら
れ、遮音等級LH 40を問題なくクリアできることが確
認された。
【0051】しかして、弾性部材16および減衰機構1
2により、重量衝撃音を吸収するとともに、緩衝材13
により軽量衝撃音を吸収するようにしているので、広い
周波数領域に亘って、充分な衝撃振動音の吸収効果が得
られる。
【0052】また、減衰機構12および弾性部材16
は、0.2mm厚以上の外被膜27,33で被覆されて
いるので、防錆効果とともに振動音の吸収効果も得られ
る。特に外被膜27,33をポリエチレンで形成した場
合には、減衰機構12および弾性部材16との密着性が
充分となり、長期に亘って充分な効果が得られる。
【0053】また、緩衝材13を、緩衝機構1に組込ん
でいるので、外被膜27,33を充分保護できることは
もとより、下材3側に配置するよりも施工性がよくな
り、また緩衝材13の幅を弾性部材16の幅W1 よりも
広くしているので、緩衝機構1を根太4に予め組付けて
ユニット化しても、施工の際に、安定が悪く根太4が横
倒しになってしまうといった不具合がない。
【0054】なお、前記実施例においては、緩衝機構1
を、根太4の凹部7内に直接取付ける場合について説明
したが、ゴムあるいはプラスチック等の緩衝シートを介
装するようにしてもよく、また凹部7を省略してもよ
い。そして、凹部7を省略した場合には、根太4と下材
3との間に大きな空間を取ることができ、遮音効果がよ
り向上するとともに、温度,湿度をより安定させること
ができ、また大きな空間を、配線,配管等の設置スペー
スとして利用することもできる。
【0055】また、図19(a),(b)に示すよう
に、緩衝機構1を、相隣る根太4の間に、その一部が上
材2の厚さ領域内に入るようにして配置するようにして
もよい。
【0056】また、減衰機構12および弾性部材16
は、前記実施例の構造に限定されるものではなく、例え
ば各ばね部24,31が、図20(a),(b),
(c)に示すように、三角形状や波形形状や多角形状等
であってもよく、また板厚が各所一様である必要もな
い。また、ばね鋼を用いず、ステンレス鋼やプラスチッ
ク、ガラス繊維等で強化したプラスチック、あるいは例
えばばね鋼の間にゴムを介装した複合材や集成ばね等を
用いるようにしてもよい。また、板状である必要もな
く、棒状のばね材を湾曲させて用いたり、線状のばね材
を束ねてこれを湾曲させて用いたり、コイルスプリング
を湾曲させて用いるようにしてもよく、また図21に示
すように、弾性部材16として板ばねを用い、減衰機構
12としてコイルスプリングを用いる等、構造の異なる
ばねを組合わせて用いるようにしてもよい。
【0057】また、減衰機構12および弾性部材16
を、各々1枚のばね材で構成する必要もなく、2〜10
枚程度の範囲であれば、複数枚のばね材で構成するよう
にしてもよく、また図22に示すように、減衰機構12
と弾性部材16とを、1枚のばね材で構成するようにし
てもよい。
【0058】また、減衰機構12を、図23に示すよう
に、小孔52および大孔53を有するシリンダ51と、
このシリンダ51内を摺動するピストン54と、ピスト
ン54の摺動に応じて大孔53を開閉する開閉弁55と
からなる空気ばね装置で構成するようにしてもよい。
【0059】また、前記実施例では、緩衝機構1を、弾
性部材16が下向きに凸になるようにして用いる場合に
ついて説明したが、緩衝機構1の上下を逆にして用いる
ようにしてもよい。そしてこの際、緩衝機構1の安定性
が悪い場合には、図24(a),(b)に示すように、
弾性部材16の頂部に溝形等の受け金具61を設け、こ
の受け金具61の内面に、緩衝材13を配置するように
すればよい。
【0060】またこの際、下材3と根太4との上下間隔
を狭くする必要がある場合には、図25に示すように、
下材3に凹部71を設け、緩衝機構1を、この凹部71
内に配するようにすればよい。そして、凹部71を充分
深くすることができる場合には、図26に示すように、
弾性部材16および減衰機構12を、ともにコイルスプ
リングで構成することも可能である。
【0061】また、下材3に凹部を設けないで根太4と
の上下間隔を狭くする方法としては、図27に示すよう
に、ベースプレート15に、4個の支持片81を設ける
とともに、このベースプレート15に2本の鋼製ベルト
82の外端をそれぞれ固定し、両鋼製ベルト82の内端
間をコイルスプリング83で連結することが考えられ
る。そして、このようにすることにより、コイルスプリ
ング83を用いても、下材3と根太4との上下間隔を狭
くすることができる。
【0062】また、前記実施例では特に説明しなかった
が、下材3が現場打ちコンクリート製の床スラブである
場合には、どうしても表面に凹凸が生じてしまうので、
例えば図1に示す状態において、脆弱部14と下材3と
の間に隙間が生じる緩衝機構1が出現するおそれがあ
る。そこで、このような場合には、図28(a),
(b)に示すように、緩衝機構1と下材3との間に、緩
衝材13よりも大形で先端に傾斜部91aを有する方形
板状の隙間取り板91を介装し、隙間が生じないように
すればよい。この際、隙間は必ずしも一定ではないの
で、予め厚さの異なる隙間取り板91を複数種類用意
し、隙間寸法に合わせ適宜選択して用いるようにした
り、あるいは複数の隙間取り板91を重ね合わせて用い
るようにする。そして、重ね合わせて用いた各隙間取り
板91がずれるおそれがある場合には、下側の隙間取り
板91の上面に設けた凸部を、上側の隙間取り板91の
下面に設けた凹部に嵌入係止するようにすればよい。
【0063】また、前記実施例では、下材3がコンクリ
ート製の床スラブである場合について説明したが、木造
住宅にも適用することができ、この場合には、下材3が
大引となる。
【0064】さらに、前記実施例では、遮音床装置とし
て用いる場合について説明したが、床の遮音に限らず階
段の遮音にも適用でき、また例えば内燃機関等の振動が
機器の遮音等にも適用することができ、同様の効果が期
待できる。
【0065】
【発明の効果】以上説明したように本発明は、スプリン
グ機構に加え、脆弱部を有する緩衝材を設けるようにし
ているので、重量衝撃振動音のみならず、軽量衝撃振動
音も確実に吸収することができ、しかも居住性が悪くな
るといった不具合がない。また、減衰機構を設けるよう
にすれば居住性をより向上させることができる。
【0066】そして、本発明において、脆弱部を、凹凸
やくり抜き部や合成樹脂発泡体で構成することにより、
軽量衝撃音を吸収するのに最適な値を容易に得ることが
できる。
【0067】また、スプリング機構を、ベースプレート
と、弾性部材と、支持機構とから構成することにより、
スプリング機構がユニット化されて施工が容易となり、
また弾性部材がベースプレート上で動作することになる
ので、上材あるいは下材の素材が変更になっても、常に
安定した弾性変形動作が得られる。また、弾性部材を合
成樹脂材で被覆することにより、弾性部材の弾性変形時
に生じる振動音を低減でき、また寿命を延ばすことがで
きる。
【0068】そしてその際、合成樹脂材を0.2mm以
上の厚さとすることにより、弾性部材の弾性変形時に生
じる振動音をほぼ完全に防止することができ、合成樹脂
材として、ポリエチレンまたはその発泡体を用いること
が最も好ましい。そして、ポリエチレンまたはその発泡
体は、耐熱性,耐寒性に優れているので、温度変化に対
しても安定である。
【0069】また、緩衝機構を、所定形状のユニット材
に取付けてユニット化し、かつユニット材により上材ま
たは下材を構成することにより、施工が容易となるとと
もに、施工の巧拙によって、衝撃振動音の吸収効果が低
下するといった不具合が全くない。
【0070】さらに、緩衝機構の一部を、上材または下
材のうちの少なくともいずれか一方の厚さ領域内に位置
させることにより、上材と下材との間隙を狭くすること
ができ、また過負荷によって緩衝機構が損傷するのを防
止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る遮音装置を示す断面図
である。
【図2】図1の緩衝機構の拡大図である。
【図3】図2の分解図である。
【図4】ベースプレートの正面図である。
【図5】図4の底面図である。
【図6】図4のVI−VI線拡大断面図である。
【図7】弾性部材の詳細を示す断面図である。
【図8】図7の底面図である。
【図9】弾性部材に装着されるカバーの詳細図である。
【図10】図9の平面図である。
【図11】減衰機構の詳細を示す断面図である。
【図12】図11の底面図である。
【図13】減衰機構に装着されるカバーの詳細図であ
る。
【図14】図13のカバーの蓋体を開いた状態を示す構
成図である。
【図15】弾性部材に装着される緩衝材の構成を示す断
面図である。
【図16】外側部材を図15の下方から見た構成図であ
る。
【図17】内側部材を図15の上方から見た構成図であ
る。
【図18】緩衝機構の効果を示すグラフである。
【図19】(a),(b)は緩衝機構を相隣る根太の間
に配した場合の構成をそれぞれ示す説明図である。
【図20】(a),(b),(c)は形状の異なるばね
部をそれぞれ示す説明図である。
【図21】板ばねとコイルスプリングとで構成される緩
衝機構を示す説明図である。
【図22】1枚のばね材で構成される緩衝機構を示す説
明図である。
【図23】減衰機構を空気ばね装置で構成した例を示す
説明図である。
【図24】(a)は受け金具を用いた緩衝機構を示す構
成図、(b)は(a)の側面図である。
【図25】下材に凹部を設けた例を示す説明図である。
【図26】コイルスプリングにより緩衝機構を構成した
例を示す説明図である。
【図27】2本の鋼製ベルトをコイルスプリングで連結
した構造の緩衝機構を示す説明図である。
【図28】(a)は隙間取り板を用いて隙間を取る方法
を示す説明図、(b)は緩衝材と隙間取り板との関係を
示す(a)の平面図である。
【符号の説明】
1 緩衝機構 2 上材 3 下材 4 根太 5 捨張床 6 床仕上材 7 凹部 11 スプリング機構 12 減衰機構 13 緩衝材 14 脆弱部 15 ベースプレート 16 弾性部材 17 支持機構 24,31 ばね部 25 支持部 26 受け部 27,33 外被膜 32 減衰部

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 上材と下材との間に、衝撃振動音を吸収
    する緩衝機構を介装した遮音装置において、前記緩衝機
    構は、衝撃荷重の負荷により弾性変形して衝撃振動音を
    吸収するスプリング機構と、このスプリング機構と上材
    または下材との間に配置される緩衝材とを備え、緩衝材
    は、前記スプリング機構弾性変形する衝撃荷重よりも
    軽量の衝撃荷重で弾性変形する脆弱部を有していること
    を特徴とする遮音装置。
  2. 【請求項2】 スプリング機構の弾性復帰動作に抵抗を
    与える減衰機構を備えていることを特徴とする請求項1
    記載の遮音装置。
  3. 【請求項3】 脆弱部は、緩衝材の表面に設けられた凹
    凸部で構成されていることを特徴とする請求項1または
    2記載の遮音装置。
  4. 【請求項4】 脆弱部は、緩衝材の厚さ方向中間部に設
    けたくり抜き部で構成されていることを特徴とする請求
    項1または2記載の遮音装置。
  5. 【請求項5】 脆弱部は、合成樹脂発泡体で構成されて
    いることを特徴とする請求項1または2記載の遮音装
    置。
  6. 【請求項6】 スプリング機構は、ベースプレートと;
    ベースプレートの一面側に配置され、反ベースプレート
    側に凸状に湾曲する弾性部材と;この弾性部材を弾性変
    形自在にベースプレートに支持する支持機構と;を備
    え、弾性部材は、合成樹脂材で被覆されていることを特
    徴とする請求項1,2,3,4または5記載の遮音装
    置。
  7. 【請求項7】 弾性部材を被覆する合成樹脂材は、0.
    2mm以上の厚さを有していることを特徴とする請求項
    6記載の遮音装置。
  8. 【請求項8】 弾性部材を被覆する合成樹脂材は、ポリ
    エチレンまたはその発泡体であることを特徴とする請求
    項6または7記載の遮音装置。
  9. 【請求項9】 緩衝機構は、所定形状のユニット材に取
    付けられてユニット化され、かつユニット材により上材
    または下材が構成されることを特徴とする請求項1,
    2,3,4,5,6,7または8記載の遮音装置。
  10. 【請求項10】 緩衝機構は、その一部が上材または下
    材のうちの少なくともいずれか一方の厚さ領域内に位置
    していることを特徴とする請求項1,2,3,4,5,
    6,7,8または9記載の遮音装置。
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