JP2941447B2 - ホスファチジン酸類の製造方法 - Google Patents
ホスファチジン酸類の製造方法Info
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酸(以下PAと略記する)類及び/又はリゾホスファチジ
ン酸(以下L-PAと略記する)類の製造方法に関するもの
である。
質は生体膜構成要素の基本物質であり、細胞組織の保
護、情報の伝達、物質移動の制御等、生命活動の基本を
司る機能を有する脂質の一つである。
形成するベシクル(又はリポソーム)が各種機能物質を
包接する機能を有するという現象が学問的並びに工業的
に注目され始め、例えば医薬・医療分野においてDDS(ド
ラッグデリバリーシステム)としてその応用が期待され
ている。
の食品分野への利用について検討を続けてきたが、先般
リン脂質の1種であるPAを利用することにより、油ハネ
の無い離型性に優れた調理油を完成させることに成功し
た(特開平1−27431 号) 。
例えば製パン工程での生地物性改良(特開昭58−51853
号) 、PAとツエイン複合体よりなる乳化剤の製造(特開
昭62−204838号) 等食品工業への利用、医薬品への利用
(特開昭54−105222号、同55−11582号、同56−127308
号、同60−255728号) 、化粧品への利用(特開昭59−27
809 号) 、化成品への応用(特開昭53−108503号、同60
−243171号) 等が挙げられ、各種産業分野での利用が検
討されている。
の破砕物又は抽出液で処理する方法等があるが、得られ
たものは夾雑物が混入しているため精製する必要があ
る。現在、PA、L-PA等のリン脂質の精製法にはカラムク
ロマトグラフィーが一般的に使用されている。特に、ケ
イ酸カラムクロマトグラフィーによる精製法は展開溶媒
の極性を変えることにより、各成分を溶出させ、分取し
ている。PA、L-PAの精製には展開溶媒としてクロロホル
ム−メタノール混合溶媒を用い、それの混合比を変える
ことにより、極性を変化させ、分画を行っている。しか
し、夾雑物の混入が問題となり、又、高純度の標品を得
るには、カラムを数回通すことが必要で、それに伴う使
用溶媒の増加、回収率の低下等の問題が生ずる。さら
に、薄層クロマトグラフィー上で分離したPA、L-PAを非
分解試薬で検出し、その部分をかきとって抽出する方法
がとられているが、この方法では収量に問題があり、工
業上、有効ではないと考えられる。
L-PA類を効率よく製造する方法を提供することにある。
尚、本発明でいうPA類及び/又はL-PA類とは、PA及び/
又はL-PAの金属塩並びに金属を含まない遊離のPA及び/
又はL-PAである。
解決すべく鋭意研究の結果、本発明を完成するに到っ
た。
砕物又は抽出液で処理してホスファチジン酸及び/又は
リゾホスファチジン酸を含むリン脂質混合物を得、この
リン脂質混合物を下記の工程(a) 及び(b) を含む精製工
程により精製し、更に酸性下、含水水溶性溶剤による洗
浄を行うことを特徴とするホスファチジン酸類及び/又
はリゾホスファチジン酸類の製造方法を提供するもので
ある。
ファチジン酸を含むリン脂質混合物を、水又は非極性溶
剤に分散又は溶解し、次いで多価金属塩水溶液と極性溶
剤存在下アルカリ条件で反応させ、ホスファチジン酸及
び/又はリゾホスファチジン酸の多価金属塩を含有する
リン脂質混合物を製造する工程。
剤に溶解させた後、ホスファチジン酸 及び/又はリゾホ
スファチジン酸の多価金属塩を沈澱させる物質を添加
し、ホ スファチジン酸及び/又はリゾホスファチジン酸
の多価金属塩を沈殿させる工 程。
子の破砕物又は抽出液で処理する。油糧種子の破砕物又
は抽出液としては、油糧種子を破砕又は抽出したもの、
あるいはこれらを更に膜等に透過精製した処理物などが
使用できる。この処理は不活性ガス存在下で行うことが
好ましく、処理方法は従来公知の方法を用いることがで
きる。
リン脂質混合物は上記工程(a) を含む精製工程により精
製される。
酸及び/又はリゾホスファチジン酸を含むリン脂質混合
物を水又は非極性溶剤に分散又は溶解する。この際用い
る非極性溶剤としては、炭素数5〜16の比誘電率10以下
の液体有機化合物が挙げられ、比誘電率10以下の液体有
機化合物としては、炭素数5〜16の炭化水素、ハロゲン
化炭化水素、芳香族炭化水素等の置換基を有する炭化水
素などが挙げられるが、安全性の面から炭素数5〜16の
炭化水素が良く、特にn−ヘキサンが好ましい。ここ
で、比誘電率は、日本化学会編化学便覧基礎編改訂2版
(1975年)の第1166頁〜1168頁並びに第1582頁〜1583頁に
記載の液体有機化合物並びに液体の比誘電率に基づくも
のである。次に当該水又は非極性溶剤に対し0.1 倍容量
以上、好ましくは 0.4〜0.8 倍容量の多価金属塩水溶液
と極性溶剤の混合液を加える。混合液の容積比は多価金
属塩水溶液/極性溶剤が0.1以上が好ましく、特に0.5〜
2.0が好ましい。また、ここで用いる極性溶剤として
は、炭素数1〜10の比誘電率10を超える液体有機化合物
が挙げられ、比誘電率10を超える液体有機化合物として
は、炭素数1〜10の1価アルコール、ケトン、多価アル
コールが挙げられ、中でも安全性の面からエタノールが
好ましい。更に、多価金属塩水溶液として用いる多価金
属塩としては、Mg, Ca, Sr, Ba等のIIA 族元素、Al等の
IIIB族元素の塩化物、硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩等が挙
げられるが、好ましくは塩化物であり、より好ましくは
Ca塩が挙げられ、特に塩化カルシウムが好適である。多
価金属塩水溶液の濃度としては、上記リン脂質混合物の
モル数に対して1倍モル以上、好ましくは1〜7倍モル
が最適である。以上の組成でpH7.0 以上のアルカリ条件
下、好ましくはpH10〜12で0.5 時間以上攪拌処理するこ
とによりPA及びL-PAの多価金属塩を含むリン脂質混合物
が得られる。
(b) は上記工程(a) で得られたPA及び/又はL-PAの多価
金属塩を選択的に沈澱させる工程である。本工程におい
ては、上記のPA及び/又はL-PAの多価金属塩を含むリン
脂質混合物から静置分離、遠心分離等の公知の技術によ
りPA及び/又はL-PAの多価金属塩を含むリン脂質混合物
を含有する非極性溶剤相を分離する。水を用いた分散系
では脱水、脱溶剤後、非極性溶剤に溶解する。用いられ
る非極性溶剤としては、上記工程(a) で用いたものが使
用できる。次にPA及び/又はL-PAの多価金属塩を含むリ
ン脂質混合物を含有する非極性溶剤に対し、0.1 容量倍
以上、好ましくは0.1 〜2.0 容量倍のPA及び/又はL-PA
の多価金属塩を沈澱させる物質を添加してPA及び/又は
L-PAの多価金属塩を選択的に沈澱させる。添加量が0.1
容量倍未満の場合PA及び/又はL-PAの多価金属塩の沈澱
生成が起こらず、2.0 容量倍を超えると非極性溶剤中に
溶解している不純物が極性溶剤により抽出され、生成す
るPA及び/又はL-PAの多価金属塩の純度が低下する。
沈澱させる物質としては、脂質類又は炭素数1〜10の極
性基を有する極性溶剤が挙げられる。脂質類としては、
モノグリセライド、ジグリセライド、トリグリセライド
の1種又はそれ以上の混合物が挙げられる。例えば、炭
素数8〜24の飽和脂肪酸残基、不飽和脂肪酸残基を含有
するモノグリセライド、ジグリセライド、トリグリセラ
イドが挙げられるが、好適には上昇融点が20℃未満であ
るものが望ましい。より好適なものとしては、原料の入
手等から食用油脂、とりわけ食用の液状油脂が安全性の
面から好ましい。具体的には大豆油、ナタネ油、ヒマワ
リ油、コーン油、米油、綿実油等の植物油脂、魚油等の
動物油脂がある。また炭素数1〜10の極性基を有する極
性溶剤としては、比誘電率10を超える液体有機化合物が
挙げられ、比誘電率10を超える液体有機化合物として
は、1価アルコール、ケトン、多価アルコールの1種又
はそれ以上の混合物が挙げられ、1価アルコールとして
はメタノール、エタノール、イソプロパノール等が、ケ
トンとしてはアセトン、メチルエチルケトン等が、多価
アルコールとしてはエチレングリコール、グリセリン等
が挙げられる。特に1価アルコールが好ましい。
の工程(b) を2回以上繰り返すことが望ましい。すな
わ、得られた沈澱物を再びn −ヘキサン等の非極性溶剤
に溶解し、PA及び/又はL-PAの多価金属塩を選択的に沈
澱させる物質を添加することにより精製を行う。
含水水溶性溶剤による洗浄を行う。この洗浄はpH0.5 〜
5、温度0〜40℃の条件で、固形分に対して5重量倍以
上の含水水溶性溶剤を用いて行うことが好ましい。含水
水溶性溶剤としては、上記した炭素数1〜10の極性基を
有する極性溶剤として比誘電率20を越える液体有機化合
物が挙げられ、比誘電率20を越える液体有機化合物とし
ては、1価アルコール、ケトン、多価アルコールの1種
又はそれ以上の混合物が挙げられる。1価アルコールと
しては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等
が、ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン等
が、多価アルコールとしては、エチレングリコール、グ
リセリン等が挙げられ、好適にはエタノールが用いられ
る。含水水溶性溶剤中の水溶性溶剤に対する水の量は5
〜80重量%が好ましい。
PAの多価金属塩は従来公知の塩交換法によりナトリウム
塩等の各種塩化合物にすることができ、また、脱塩処理
により金属を含まない遊離のPA及び/又はL-PAが得られ
る。
するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものでは
ない。
ワーリングブレンダーにて破砕した。50ml容量のガラス
製カラムに上記破砕物20gを充填し、0.1M酢酸ソーダ/
酢酸緩衝液120 ml(pH6.0)を通液させた。その後、流出
してきた液を分画分子量13000 の膜に透過させ、清澄な
抽出液を得た。
販脱脂レシチン(ツルーレシチン工業(株)製)20gを
とり、上記の抽出液(pH6.0) 120 mlを加え、反応系を窒
素ガス通気下(100 ml/min)で30℃に保ちながら24時間
攪拌を続けた。反応後、70℃、1時間加熱処理・冷却
し、エタノール65mlを加えた後にヘキサン150 mlで抽出
した。
上記で得たヘキサン抽出液150 mlをとり、エタノール25
ml、水15ml、ヘキサン抽出液固形分の1/2 倍量の塩化カ
ルシウムを加えた。そして、常温で攪拌しながら1N 水
酸化ナトリウム溶液を加えてpHを10.0にした。さらに攪
拌を4時間続け熟成させた後に、遠心分離によってヘキ
サン溶液を得た。
を加えて溶剤沈澱させ、遠心分離により上清を除去し
た。沈澱部にヘキサンを加えて溶解させ、全体を75mlに
した。そしてヘキサン溶液を塩酸酸性(pH1)下、50%
エタノール水で15℃、10分攪拌洗浄後、分離し、得られ
たヘキサン相を水酸化ナトリウム水溶液で中性に戻し、
脱溶剤してPAを得た。
られたPAの加熱着色性を下記方法により評価した。結果
は表1に示した。
を含むナタネ油10gを加え、攪拌して溶解させる。それ
をブロックヒーターで180 ℃, 70分加熱した後、色差分
析計(日本電色工業(株)SZ−Σ80)でヘキサンに対す
る色差を測定し、そのΔE(H)値を色相の値とした。
キサン抽出液150 mlをとり、エタノール25ml、水15mlを
加えた。そして常温で攪拌しながら1N 水酸化ナトリウ
ム溶液を加えてpHを10.0にした。さらに攪拌を4時間続
け熟成させた後に、遠心分離によってヘキサン溶液を得
た。このヘキサン溶液150 mlにエタノール75mlを加え、
このエタノール添加時の沈澱量を測定した。
キサン抽出液150 mlをとり、エタノール25ml、水15ml、
ヘキサン抽出液固形分の1/2 倍量の塩化カルシウムを加
えた。そして常温で攪拌を4時間続け熟成させた後に、
遠心分離によってヘキサン溶液を得た。このヘキサン溶
液150 mlにエタノール75mlを加え、このエタノール添加
時の沈澱量を測定した。結果は表1に示した。
50%エタノール水で15℃、10分攪拌洗浄後、分離し、得
られたヘキサン相を水酸化ナトリウム水溶液で中性に戻
し、脱溶剤してPAを得た。このPAの加熱着色性を実施例
1と同様の方法で評価した。結果は表1に示した。
Claims (5)
- 【請求項1】 レシチンを油糧種子の破砕物又は抽出液
で処理してホスファチジン酸及び/又はリゾホスファチ
ジン酸を含むリン脂質混合物を得、このリン脂質混合物
を下記の工程(a) 及び(b) を含む精製工程により精製
し、更に酸性下、含水水溶性溶剤による洗浄を行うこと
を特徴とするホスファチジン酸類及び/又はリゾホスフ
ァチジン酸類の製造方法。 (a) ホスファチジン酸及び/又はリゾホスファチジン酸
を含むリン脂質混合物を、水又は非極性溶剤に分散又は
溶解し、次いで多価金属塩水溶液と極性溶剤存在下アル
カリ条件で反応させ、ホスファチジン酸及び/又はリゾ
ホスファチジン酸の多価金属塩を含有するリン脂質混合
物を製造する工程。(b) (a) で得たリン脂質混合物を非極性溶剤に溶解させ
た後、ホスファチジン酸 及び/又はリゾホスファチジン
酸の多価金属塩を沈澱させる物質を添加し、ホ スファチ
ジン酸及び/又はリゾホスファチジン酸の多価金属塩を
沈殿させる工 程。 - 【請求項2】 非極性溶剤が炭素数5〜16の比誘電率10
以下の液体有機化合物である請求項1記載の製造方法。 - 【請求項3】 極性溶剤が炭素数1〜10の比誘電率10を
超える液体有機化合物である請求項1又は2記載の製造
方法。 - 【請求項4】 ホスファチジン酸及び/又はリゾホスフ
ァチジン酸の多価金属塩を沈殿させる物質が、脂質類又
は炭素数1〜10の極性基を有する極性溶剤である請求項
1〜3の何れか1項記載の製造方法。 - 【請求項5】 含水水溶性溶剤による洗浄が、pH0.5 〜
5、温度0〜40℃の条件で、固形分に対して5重量倍以
上の含水水溶性溶剤を用いて行われる請求項1〜4の何
れか1項記載の製造方法。
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1991
- 1991-02-22 JP JP2841891A patent/JP2941447B2/ja not_active Expired - Fee Related
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