JP2503567B2 - レシチンの精製方法 - Google Patents

レシチンの精製方法

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JP2503567B2 JP2312888A JP2312888A JP2503567B2 JP 2503567 B2 JP2503567 B2 JP 2503567B2 JP 2312888 A JP2312888 A JP 2312888A JP 2312888 A JP2312888 A JP 2312888A JP 2503567 B2 JP2503567 B2 JP 2503567B2
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【発明の詳細な説明】 〈産業上の利用分野〉 本発明は酢酸エステルを使用するレシチンの精製方法
に関し、更に詳しくは、大豆レシチンやなたねレシチン
等の中性脂質を多量に含有するレシチンから中性脂質を
除去し、ホスファチジルコリンやホスファチジルエタノ
ールアミン等の含有率の高い高純度レシチンを得る方法
に関するものである。
なお本明細書中で「レシチン」という用語は、リン脂
質を主要成分とする混合物を表わす。
〈従来の技術〉 レシチンは乳化剤,分散剤,安定剤,抗酸化剤等とし
て食品,医薬品,化粧品,飼料,工業製品等の広い分野
に応用されている。
かようなレシチンは卵黄,肉牛の脳等の動物組織や、
大豆,なたね,アルファルファの種子等の植物組織に存
在し、レシチンの製造原料としては数多くの原料が挙げ
られている。
これらのうち特に大豆レシチンやなたねレシチンと称
されているクルードレシチンは、大豆やなたね等の原料
をn−ヘキサン等の溶剤で抽出した抽出原油に熱水また
は水蒸気を加えて水和し、レシチンを凝集沈澱させ、こ
れを遠心分離機で分離しまたは乾燥することにより得ら
れる。かくして得られたレシチンには、その原料によっ
ても異なるが、ホスファチジルコリン(以下PCと略
称)、ホスファチジルエタノールアミン(以下PEと略
称)、ホスファチジルイノシトール(以下PIと略称)、
ホスファチジン酸(以下PAと略称)およびその他のリン
脂質の他に、通常トリアシルグリセロール(=トリグリ
セリド、中性脂肪)、遊離脂肪酸等(以下これらをまと
めて中性脂質という)が30〜40%程度含まれ、さらには
ステロール等のロウ物質や炭水化物等も含まれている。
代表的な大豆クルードレシチンの組成を第1表に示す。
第1表 大豆クルードレシチンの組成 (重量%) ホスファチジルコリン(PC) 20 ホスファチジルエタノールアミン(PE) 15 ホスファチジルイノシトール(PI) 20 ホスファチジン酸(PA)、その他のリン脂質 5 炭水化物、ロウ物質 5 中性脂質(NL) 35 上記の組成の中でPCはレシチンの主成分であり、PC含
有を高めたものを通常高純度レシチンと称しており、特
に近年、クルードレシチンから中性脂質を除去しPC含量
を高めた高純度レシチンの需要が増加し始めている。
かような高純度レシチンを利用する例として、酵素法
による乳化機能の改質がある。例えば特開昭61−199749
号公報には、ホスホリパーゼDにより大豆レシチンとグ
リセロールとの間にホスファチジル基転移反応を起させ
て得られたホスファチジルグリセロール(以下PGと略
称)を含む改質大豆レシチンが、カルシウムイオン、ナ
トリウムイオン等の金属イオンやpHにより乳化力が阻害
されない食品用乳化剤として有効であることが記載され
ている。本発明者らは乳化機能の優れたかような改質大
豆レシチンの組成としてPG含量がおよそ50%以上が好ま
しいことを見い出した。また現在知られているホスホリ
パーゼDによる酵素反応ではレシチン中のPC、PE等が主
としてホスファチジル基転移反応の基質となり得るの
で、PC+PEの含量が少なくとも50%以上の高純度レシチ
ンを原料として使用するのがよい。
レシチンを精製して高純度レシチンを製造する方法は
これまでに種々の分別または分画法が提案されているが
(堺宗雄および中里真人著「レシチンの製造と分画技
術」、フードケミカル,1985年12月,68−73頁参照)、品
質や価格の面で実用化されている方法としては、アセト
ンまたはエタノールを用いる溶剤分別法であろう。
アセトン分別法は、大豆クルードレシチンからアセト
ン可溶物として中性脂質と、アセトン不溶物としてPC,P
E,PI等のリン脂質とに分別する方法であり、基本的原理
は脱脂である。この方法はかなり古くから応用されてお
り、現在高純度レシチン製造技術としては最も多く用い
られている。
一方、エタノール分別法は、原理的にはアセトン分別
と異なり、クルードレシチン中の各種リン脂質および中
性脂質のエタノールに対する溶解性の差を利用したもの
である。すなわちこの方法においては、クルードレシチ
ンからエタノール可溶物として多量のPCと少量のPE、PI
および中性脂質と、エタノール不溶物として多量のPE、
PIおよび中性脂質と少量のPCとに分別する。
〈発明が解決しようとする問題点〉 しかしながら上述したアセトン分別は、i)アセトン
使用量が原料クルードレシチンに対して10倍以上と多量
に使用しなくてはならず、またアセトン回収の点からも
コスト高になる。ii)アセトンは第4類危険物第1石油
類に属し、その指定数量は100lと少量である、iii)酵
素を用いてレシチンを改質する際に酵素反応への影響が
ある、等の問題点がある。さらに、iv)アセトンは乾燥
処理によっても十分にレシチンから除くことが難しい。
50ppmを超える残留アセトンは、アルドール縮合等によ
り有害なメシチルオキサイドを生成する。したがって有
害なアセトン酸化物の生成を抑えるには、アセトンを50
ppm以下、好ましくは25ppm以下まで留去する必要があ
り、そのためにはかなりの労力を要する工程となってい
るのが現状である。
一方、エタノール分別においては、得られた高純度レ
シチン中にも中性脂質が通常20〜25重量%程度含まれ、
中性脂質の除去率が良くなく、レシチン中のPC含量の向
上には限界がある。
そこで本発明の目的は、上述したようなアセトン分別
やエタノール分別における問題点を解決して、アセトン
よりも少量の使用量で済みかつアセトンよりも安全な溶
剤を用いることができるとともに、中性脂質を効果的に
除去して高純度レシチンを得ることができるレシチンの
精製方法を提供することにある。
〈問題点を解決するための手段〉 上記の目的を達成するため本発明によれば、中性脂質
含有レシチンを酢酸エステルで常温にて溶解したのちに
冷却して中性脂質を主要成分とする可溶分とリン脂質を
主要成分とする不要分とに分別する。
酢酸エステルとしては、酢酸と炭素数1〜4個のアル
コールとのエステルがよく、好ましくは酢酸メチルや酢
酸エチルが使用できる。酢酸エステルの使用量は、一般
的には中性脂質含有レシチン重量に対して容量(ml)/
重量(g)で4倍前後または4倍を上回る程度の容量を
使用するが、中性脂質含有リン脂質中のリン脂質と中性
脂質の比率にバラツキがあるので、その組成や目的とす
る分別レシチンの組成等に応じて酢酸エステルの使用量
を加減する。
本発明で原料として用いる中性脂質含有レシチンは、
大豆やなたね等の原油から抽出したクルードレシチン
や、このクルードレシチンをさらにエタノール分別して
エタノール不溶分を除去したもの(以下「エタノール分
別レシチン」という)が使用できる。
また分別温度は、低温であれはあるほどよいが、中性
脂質含有レシチンの組成、酢酸エステルの種類、目的と
する分別レシチンの組成等に応じてその温度を決定す
る。
以下に本発明の精製方法を各工程ごとに説明する。
溶解工程 中性脂質を30〜40%程度の多量に含有する大豆やなた
ね等のクルードレシチンに対しては、酢酸エステル(m
l)/クルードレシチン(g)の比が4倍以上になるよ
うに酢酸エステルを加えて、攪拌しながら常温で溶解さ
せる。中性脂質の含量が20〜25%程度に低減しているエ
タノール分別レシチンを本発明方法でさらに精製して、
クルードレシチンを本発明方法で精製したものと同程度
のPC濃度をもつ高純度レシチンを得よえとする場合に
は、酢酸エステルの使用量は3倍程度に減量することが
できる。このように、酢酸エステルの使用量は、原料の
中性脂質含有レシチンの組成に応じて増減できるが、こ
の増減量は実験により確認すればよい。
冷却工程 常温にて溶解して得られた溶液を攪拌しながら冷却し
ていくと、酢酸エチルの場合5℃前後でリン脂質の沈澱
が始まる。沈澱の開始はPCが最も早く、PI,PAがこれに
次ぎ、PEが最も遅い。冷却が進むにつれてリン脂質の沈
澱が多くなる。PCの沈澱は−10℃前後でほぼ一定にな
る。中性脂質の溶液中の残量は温度によって殆んど変化
なくほぼ一定である。
添付図面は、エタノール分別レシチンに対して4倍量
の酢酸エチルを加えて常温で攪拌溶解したのちこの溶液
を冷却したときの、分別温度別のレシチンの回収率と中
性脂質の除去率を示したグラフである。ここで このグラフからわかるように、分別温度を下げるに従っ
てPC,PI,PA,PE等の各リン脂質の沈澱量は増加し、−10
℃に冷却した場合ではPCの約96%、PI,PA,PEの約88%が
分別沈澱する。一方中性脂質は、溶液を冷却しても殆ん
ど分別沈澱せず溶液中に約98%が残存する(除去率98
%)。このようにして、中性脂質の殆んどが除去されPC
の大部分が回収されることにより、PC含量の高い高純度
レシチンが得られる。またPEについても同様に、中性脂
質の除去により相対的に含量が増加し、PC+PE含量の高
い高純度レシチンを得ることができる。
分別温度を−10℃より低温にしても、PCやPEの回収率
の向上は少ない。冷却のエネルギー消費によるコストを
考慮すれば、酢酸エチルの場合分別温度は好ましくは−
5℃以下、さらに好ましくは−10℃程度までが適切と考
えられる。
一方、酢酸メチルの場合の分別温度は、好ましくは5
℃以下、さらに好ましくは0℃以下であり、酢酸プロピ
ルの場合は−20℃以下、好ましくは−30℃以下であり、
酢酸ブチルの場合は−50℃以下、好ましくは−60℃以下
となり、酢酸エステルの炭素数が多くなるほど分別温度
は低温にする必要がある。
沈澱の分離工程 冷却沈澱が終了したら攪拌を停止して約30分間静置
し、沈澱物を十分に沈澱させる。主として中性脂質を含
む酢酸エステルからなる上澄液は除去し、蒸留等により
酢酸エステルを回収して再利用する。
一方沈澱物は容器下部より抜き出し、必要により遠心
濃縮をおこなったのち、真空攪拌式乾燥器,薄膜濃縮
機,遠心薄膜濃縮機等を用いて酢酸エステルの回収を行
なうと共に乾燥を行ない、高純度レシチンを回収する。
かくして得られた高純度レシチンは、酢酸エステルが検
出されない検出限界以下程度(1ppm以下)まで除去され
ており、臭気や毒性の点で問題のない製品を得ることが
できる。さらに、上記のごとき方法を採用すれば、低温
で酢酸エステルを除去できるため、酸化等によりレシチ
ンが着色したり味覚が変化することもない。
なお、本発明方法で得られた高純度レシチンにホスホ
リパーゼDを用いる酵素法を施して乳化機能を改質しよ
うとする場合には、酵素反応を酢酸エステルと水および
グリセリンの均一系で行なうことができるので、本発明
方法における冷却工程で得られた沈澱物をそのまま酵素
反応槽へ供給すればよい。
上述した本発明方法による酢酸エステル分別を、標準
的組成の大豆クルードレシチンを原料として施すことに
よって、PC含量30〜40%前後の高純度レシチンを得るこ
とができる。これ以上の高PC濃度の高純度レシチンを製
造しようとする場合には、他の分別法または分画法と本
発明方法との併用が必要となることがある。すなわち、
他の分別法または分画法によって得られた分別(分画)
レシチンを本発明方法の原料とするか、あるいは本発明
方法によって得られたレシチンを他の分別法または分画
法の原料とすればよく、この場合エタノール分別法と本
発明の酢酸エステル分別法との組合せが好ましい。
エタノール分別法としては、エタノールまたは約95容
量%濃度のエタノール水溶液を用い、これをレシチン原
料重量に対して容量(ml)/重量(g)比で約4倍以上
の容量を加えて常温で攪拌溶解したのち、エタノール可
溶分とエタノール不溶分を分別し、上澄のエタノール可
溶分からエタノールを蒸発除去した残留物としてエタノ
ール分別レシチンを得る方法が好ましく採用できる。
エタノール分別法と本発明の酢酸エステル分別法との
組合せによって、標準的組成の大豆クルードレシチンを
処理した場合、PC含量65%程度の高純度レシチンを得る
ことができる。従って、本発明の酢酸エステル分別法で
得られたレシチンと、エタノール分別−酢酸エステル分
別組合せ法で得られたレシチンとを種々の割合で配合す
れば、30〜60%の範囲で所望のPC含量を有する各種高純
度レシチン製品を提供することが可能となる。
〈実施例〉 以下に本発明方法を実施例および比較例を挙げてさら
に説明するが、本発明の特許請求の範囲はこれら実施例
により規制されるものではない。
以下の実施例および比較例におけるリン脂質および中
性脂質の確認は下記の分析法を用いた。
分析装置としてイアトロスキャン(TLC/FID)TH−10
型、薄層クロマトグラフ分析装置を用いた。
リン脂質の含量の確認は総量として10〜20μgの試料
をクロマロッドにスポットした後にクロロホルム:メタ
ノール:アンモニア(10:10:1)の展開液で展開分離
し、風乾後に燃焼測定を行なった。
中性脂質の測定は上述の展開液でクロマロッドの中間
まで展開後、ヘキサン:エーテル:ギ酸(40:40:1)で
再度展開分離し、風乾後に燃焼測定を行なう二重展開法
を用いた。
実施例1 酢酸エチル分別での分別温度の選定 中性脂質を多量に含む原料レシチンとして「ボレック
FS(BOLEC FS)」(西独ユニミルズ(UNIMILLS)社製商
品名)を使用し、この原料レシチン1gに酢酸エチル50ml
を加えて攪拌,溶解した。溶解は常温で容易であった。
この溶液を各々0℃,−5℃,−10℃に冷却して生成し
た沈澱を遠心分離機で3000rpm,5分間処理して回収後、
ロータリエバポレータで真空度30torr,乾燥時間15分の
条件で乾燥した。
得られた乾燥回収レシチンの分別温度別の収量よび収
率を第2表に示す。
原料レシチンおよび分別温度別乾燥回収レシチンの組成
を第3表に示す。
乾燥回収レシチン中の各成分の原料レシチンに対する回
収率を分別温度別に第4表に示す。
第2表の結果から判るように、製品の収率が0℃では
31.9%と低いものの、−5℃では50.7%、−10℃では5
0.8%とかなり良好な収率が得られた。
第3表に示した結果より酢酸エチル分別の製品では中
性脂質(NL)が良く除去されPC含量が70重量%台の高純
度レシチンが得られた。
また製品の収率に各成分の割合を乗じて算出した第4
表の回収率の結果から、原料中のPC量に対する製品中の
PC量の重量割合は−5℃で89.9%、−10℃で97.0%であ
った。この点から判断して酢酸エチル分別での分別温度
は少なくとも−5℃以下、好ましくは−10℃以下である
と判断される。
実施例2 酢酸エチル分別での溶剤比の選定 中性脂質を多量に含む原料レシチンとして「ボレック
FS」を使用し、酢酸エチル10mlに対してこの原料レシチ
ンを0.5g,1.0g,2.5g,4g加えて、原料レシチン重量に対
する溶剤の容量比(ml/g)が各々20倍,10倍,4倍,2.5倍
となるようにし、各々を常温で攪拌,溶解した。これら
の溶液を−10℃に冷却して生成する沈澱を実施例1と同
様にして回収,乾燥した。得られた乾燥回収レシチン中
の酢酸エチルの量は検出限界以下(1ppm)以下であっ
た。
本実施例に用いた原料レシチン「ボレックFS」の組成
を第5表に示す。
乾燥回収レシチンの収量および原料レシチンに対する収
率を溶剤比別に第6表に示す。
第6表からわかるように、溶剤比が4倍以上で良好な
収率となったが、2.5倍では不良であった。
乾燥回収レシチン中のNL,PC,PE含量(組成)およびこ
れら各成分の原料レシチンに対する回収率を溶剤比別に
それぞれ第7表および第8表に示す。
第7表に示されるように、溶剤比が4倍以上では中性
脂質(NL)の含量がほぼ2%前後、PC含量が60%以上と
品質は良好であるが、溶剤比が2.5倍では中性脂質含量
が急に高くなり、相対的にPC含量が49.0%と著しく低下
する。第8表に示されるように、溶剤比が4倍以上では
中性脂質の除去率は97〜98%と高く、PCの回収率は97%
前後、PEの回収率も88%前後と良好であるが、溶剤比が
2.5倍では中性脂質の除去率は著しく低下する。
以上の結果から−10℃酢酸エチル分別における溶剤比
は少なくとも4倍以上とする必要がある。
なお、−5℃酢酸エチル分別においても実験を行なっ
たが、同様な傾向であった。
実施例3 低PC含量クルードレシチンの精製 PC含量の比較的低い大豆クルードレシチンを原料レシ
チンとして使用し、この原料レシチン2.5gに酢酸エチル
10mlを常温で攪拌,溶解した。この溶液を各々0℃,−
5℃,−10℃に冷却して生成する沈澱を実施例1と同様
にして回収,乾燥した。
本実施例に用いた原料レシチンの組成を第9表に示
す。
得られた乾燥回収レシチンの分別温度別の収量および収
率を第10表に示す。
分別温度別の乾燥回収レシチンの組成を第11表に示す。
乾燥回収レシチン中の各成分の原料レシチンに対する
回収率を分別温度別に第12表に示す。
本実施例に用いたクルードレシチンはPC含量19.4%と
ほぼ標準的なクルードレシチンであるが、第11表に示す
ごとく酢酸エチル分別にて、0〜−10℃の範囲でPC含量
36.2〜38.0%とかなり高濃度のPCの製品を得ることがで
きた。
一方、第12表の結果が示すように、分別温度0℃では
収率が32.5%と低いが、−5℃および−10℃では47.7%
および49.2%と収率が向上していることがわかる。
実施例4 エタノール分別と酢酸エチル分別との組合せ 原料レシチンとして大豆クルードレシチンを使用し、
これをエタノール分別したのち引続き本発明方法による
酢酸エチル分別を行なった。各分別に用いた条件は次の
通りである。
エタノール分別: エタノール濃度 95% 溶 剤 比 95%エタノール10ml/原料レシチン2.5
g(4倍) 分別温度 常温(15〜20℃) 分別時間 30分 不溶分分離法 遠心分離,3000rpm×5分 可溶分乾燥法 ロータリエバポレータ,真空度30torr 酢酸エチル分別: 溶 剤 比 酢酸エチル10ml/エタノール分別レシ
チン2.5g(4倍) 分別温度 常温で溶解後−10℃に冷却 分別時間 10分 不溶分分離法 遠心分離,3000rpm×5分 可溶分乾燥法 ロータリエバポレータ,真空度30torr 原料レシチンとして用いた大豆クルードレシチンの組成
を第13表に示す。
上記原料レシチンをエタノール分別して得られたレシ
チンの収量,収率および組成を第14表に示す。
第13表および第14表の結果からエタノール分別レシチン
中の各成分の回収率を求めると第15表のようになる。
第14表に示した組成を有するエタノール分別レシチン
にさらに本発明による酢酸エチル分別を施した。得られ
た酢酸エチル分別レシチンの収量,収率および組成を第
16表に示す。
第14表および第16表の結果から酢酸エチル分別レシチン
中の各成分の回収率を求めると第17表のようになる。
第16表からわかるように、エタノール分別と酢酸エチ
ル分別とを組合せることによって、PCおよびPEの含量は
原料レシチンの各々19.4%および8.8%が73.6%および
8.8%と高品質の高純度レシチンが得られている。また
中性脂質(NL)の含量も34.6%から0.5%に減少してい
る。
エタノール分別および酢酸エチル分別を通じての製品
の着色や臭気の発生は殆んど認められなかった。また酢
酸エチル分別を施した最終製品について酢酸エチルの残
留をガスクロマト法により測定したが、検出限界以下で
検出されなかった。
なお得られた製品の収率は、原料レシチンに対して、
エタノール分別では33%、酢酸エチル分別では71%、こ
れら2つの分別を通じての全処理では23.4%であった。
実施例5 エタノール分別と酢酸エチル分別との組合せ 原料レシチンとしてPC含量の低い大豆クルードレシチ
ンを使用し、実施例4と同様にしてエタノール分別した
のち引続き本発明方法による酢酸エチル分別を行なっ
た。
原料レシチンとして用いた大豆クルードレシチンの組
成を第18表に示す。
上記原料レシチンをエタノール分別して得られたレシ
チンの収量は0.825g(収率33.0%)であった。このエタ
ノール分別レシチンの組成を第19表に示す。
第18表および第19表の結果からエタノール分別レシチ
ン中の各成分の回収率を求めると第20表のようになる。
第19表に示した組成を有するエタノール分別レシチン
にさらに本発明による酢酸エチル分別を施した。得られ
た酢酸エチル分別レシチンの収量は1.575g(収率63%)
であった。この酢酸エチル分別レシチンの組成を第21表
に示す。
第19表および第21表の結果から、酢酸エチル分別レシ
チン中の各成分の回収率を求めると第22表のようにな
る。
酢酸エチル分別を施した最終製品のPC含量は、原料レ
シチンとしてPC含量19.4%のクルードレシチンを用いた
場合(実施例4)に73.6%の製品が得られたのに対し
て、原料レシチンとしてPC含量14.1%のクルードレシチ
ンを用いた本実施例では59.0%の製品しか得られなかっ
た。従って、原料レシチンの違いによって、得られる製
品のPC含量もかなり相違することがわかる。
また酢酸エチル分別を施した最終製品の中性脂質(N
L)含量は、PC含量19.4%の原料レシチンを用いた場合
(実施例4)では0.5%であったのに対して、PC含量14.
1%の原料レシチンを用いた本実施例では6.7%となり、
中性脂質の除去率は実施例4よりも低下した。
得られた製品の収率は、原料レシチンに対して、エタ
ノール分別では33%、酢酸エチル分別では63%、これら
2つの分別を通じての全処理では20.8%であった。
前述したように、ホスホリパーゼDを用いて乳化機能
に優れた改質レシチンを製造するための原料としてはPC
+PE含量が50%以上の高純度レシチンであることが好ま
しい。かような観点からみると、本実施例で得られたエ
タノール分別レシチンのPC+PE含量は49.6%であり、上
記の改質レシチン製造用原料の品質としてはやや問題が
あるが、本実施例で得られた最終製品の酢酸エチル分別
レシチンのPC+PE含量は69.9%となり、上記の改質レシ
チン製造用原料として十分な品質である。
比較例 アセトン分別(従来法) 中性脂質を多量に含む原料レシチンとして「ボレック
スFS」を使用し、この原料レシチン5gにアセトン200ml
を加えて5分間超音波処理したのち、遠心分離機で5
℃,3000rpm,5分間処理した。次いでアセトン層を捨て、
さらに100mlのアセトンを加えた。このときの溶剤比は
アセトン(200ml+100ml)/原料レシチン5g=60倍(ml
/g)となる。次いで再度5分間超音波処理したのち、遠
心分離機で5℃,3000rpm,5分間処理した。アセトン層を
捨て、得られた沈澱物をロータリエバポレータに入れ
て、N2ガスを少量吹き付けながらバス温40℃,30torrで
アセトンを留去したのち、乾燥してアセトン分別レシチ
ン3.29gを得た。
原料レシチンの組成、およびアセトン分別レシチンの
組成と各成分の回収率を第23表に示す。
アセトン分別レシチンは、収率65.8%、PC含量49.2
%、PCの収率81.2%となった。溶剤比(60倍(ml/g)に
も拘らず得られた製品のPC含量は、本発明方法による溶
剤比4倍の酢酸エチル分別で得られた製品のPC含量に比
べてあまり良好とはならなかった。またPCの回収率も良
好でなかった。
〈発明の効果〉 以上の説明からわかるように本発明方法によれば次の
ような効果が得られる。
i)分別に必要な溶剤の量を低減できる。
分別に必要な酢酸エステル容量は、原料である中性脂
質含有レシチン重量に対して約4倍(ml/g)程度とする
ことができ、従来のアセトン分別による約10倍量のアセ
トン容量に比べて少なくすむ。これに伴い溶剤回収コス
トも節減できる。
ii)PC含量の高い高純度レシチンが得られる。
原料の中性脂質含有レシチンの組成により差異はある
が、標準的なクルードレシチンを原料として用いれば、
PC含量約30〜40%、PE含量約10%程度の高純度レシチン
が得られる。
またエタノール分別と本発明の酢酸エステル分別とを
組合せれば、PC含量65%程度、PE含量15%程度の高純度
レシチンが得られる。
従って、酢酸エステル分別レシチンとエタノール分別
−酢酸エステル分別レシチンとを種々の割合で配合する
ことにより、各種PC含量の高純度レシチン製品を調製す
ることができる。
iii)危険物貯蔵および製造上の問題点の減少 本発明で使用する酢酸エステル、例えば酢酸エチル
は、アセトンよりも貯蔵に際しての指定数量が大きく、
貯蔵および製造設備の問題で有利となる。また溶剤取扱
中の不快臭の問題も少なくなる。さらにアセトン分別で
問題となる残留溶剤濃度や有害な酸化物形成の欠点も、
本発明による方法では大いに改善できる。
iv)酵素を用いる改質レシチンの製造用原料として有利
に使用できる。
本発明方法における沈澱の分離工程で得られる沈澱物
は、乾燥させることなくそのまま酵素反応槽に供給でき
るため、アセトン等の他の溶剤を用いる分別法に比べて
有利となる。
【図面の簡単な説明】
添付図面は、本発明方法における分別温度とレシチンの
回収率および中性脂質の除去率との関係を示すグラフで
ある。

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】中性脂質含有レシチンを酢酸エステルで常
    温にて溶解したのち冷却して中性脂質を主要成分とする
    可溶分とリン脂質を主要成分とする不溶分とに分別する
    ことを特徴とするレシチンの精製方法。
  2. 【請求項2】前記酢酸エステルが酢酸エチルであること
    を特徴とする請求項1記載のレシチンの精製方法。
  3. 【請求項3】前記酢酸エステルの使用量が前記中性脂質
    含有レシチン重量に対し容量(ml)/重量(g)比で少
    なくとも4倍以上の容量であることを特徴とする請求項
    1記載のレシチンの精製方法。
  4. 【請求項4】前記中性脂質含有レシチンはクルードレシ
    チン、またはクルードレシチンをエタノール分別してエ
    タノール不溶分を除去したものであることを特徴とする
    請求項1記載のレシチンの精製方法。
  5. 【請求項5】上記分別が−5℃以下でおこなわれること
    を特徴とする請求項1記載のレシチンの精製方法。
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