JP2636896B2 - リン脂質系乳化剤 - Google Patents

リン脂質系乳化剤

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は新規なリン脂質系乳化剤に関するものであ
る。
〔従来の技術〕
従来より乳化剤として各種の物質が知られており、そ
の利用分野も広範に亘っている。代表的なもののひとつ
としてレシチン、リゾレシチンなどのようなリン脂質系
の乳化剤が挙げられるが、これらは医薬品、化粧品ある
いは食品用乳化剤としても用いられ重宝されている。
〔発明が解決しようとする課題〕
上記したレシチン、リゾレシチンなどのように乳化能
を有し、しかも乳化剤としての汎用範囲の広い新規物質
が新たに開発されたなら、乳化剤としての選択の巾が広
がりその利用分野の一層の開発に寄与し得るであろう。
よって、本発明はこのような要望に答え得る、即ち新
規な乳化剤を提供することを目的とする。
〔課題を解決するための手段〕
本発明は上記の目的を、天然の生体膜の構成成分であ
るリン脂質を骨格に持つ乳化剤を提供することによって
達成したものである。
本発明によれば、一般式 〔式中、R1はC13〜C21の直鎖炭化水素を意味し、R2はC7
〜C9の直鎖飽和炭化水素を意味する〕 で表わされるリン脂質系乳化剤が提供される。
本発明において、R1は、上記した通りC13〜C21の(つ
まり炭素数が13個から21個までの)直鎖炭化水素である
が、この炭素の個数は、一般に天然のレシチン、リゾレ
シチンなどのリン脂質において、グリセロールの1位の
水酸基とエステル結合している脂肪酸残基の直鎖炭化水
素部分(C−C結合は飽和あるいは不飽和)とほぼ同じ
である。天然のレシチン、リゾレシチンを原料として本
発明のリン脂質誘導体を製造したときには、一般にR1
C13〜C21の範囲に入る多種類の直鎖炭化水素を含むこと
になる。また、例えば、1−パルミトイルリゾホスファ
チジルコリンなどを原料として本発明のリン脂質誘導体
を製造したときには、R1はC13〜C21の範囲に入る1種類
の直鎖炭化水素のみを含むことになる。
また、本発明においてR2は、上記した通りC7〜C9の直
鎖飽和炭化水素である。
R2相当部分の炭素数がC13〜C21の範囲にある天然のレシ
チンと比べると、炭素数が一段と低い値になっている点
で天然のレシチンと大きく異なる。
このような本発明のリン脂質系乳化剤の製造方法を、
リゾレシチンを出発原料とする典型的な製造例でもって
以下説明する。
A:エステル化反応 リゾレシチン(1位でエステル結合している脂肪酸残
基のR1がC13〜C21の直鎖炭化水素となっているもの:例
えば卵黄リゾレシチン、大豆リゾレシチンなど)の2位
の水酸基を下記の方法に準じてn−アルキル酸(飽和C7
〜C9COOH)でエステル化する。
リゾレシチン(1モル)、n−アルキル酸(1.5〜2.0
モル)、エステル化触媒として4−ジメチルアミノピリ
ジン(2.2〜2.6モル)および溶媒としてクロロホルム
(リゾレシチン重量の約60倍量)を、窒素気流下氷冷し
ながら混和する(混合液はほぼ10℃)。この混合液に、
エステル化を促進させるために、脱水剤N,N′−ジシク
ロヘキシルカルボジイミド(2.5〜3.0モル)をその約6
倍量のクロロホルム溶液として滴下する。次いで室温に
おいて遮光の下、窒素気流下で撹拌しながら40時間保持
し、エステル化反応を行なう。
B:脱水剤等の除去処理 エステル化反応終了後の反応液から減圧下溶媒(クロ
ロホルム)を留去する。残留物にクロロホルム溶液(ク
ロロホルム:メタノール:水=5:4:1)を、原料リゾレ
シチン1gに対して約75mlの割合で添加し、撹拌後、主と
してN,N′−ジシクロヘキシルカルボジイミドの分解物
からなる不溶物をガラスフィルター(目径:20〜30μ)
で濾別除去する。尚、クロロホルム溶液に水を加えるの
は未反応(未分解)脱水剤を分解させ、有機溶媒に不溶
なものにするためである。
このようにして脱水剤(分解物)を除去して得られた
濾液は、次いで、これとほぼ同容量のイオン交換樹脂
(アンバーライト IRA−45とアンバーライト IRC−50
との1:1混合物)を用いたイオンクロマト処理に付し、
未反応の(過剰の)n−アルキル酸およびエステル化触
媒4−ジメチルアミノピリジンを樹脂に吸着除去させ
る。得られた溶出液は、樹脂のクロロホルム溶液(脱水
剤除去の際用いる溶液と同じでよく、しかも同量)によ
る第一洗浄液と合わせたのち減圧下で溶媒(クロロホル
ム、メタノール、水)を留去する。残留物を上記クロロ
ホルム溶液の約1/3容量のクロロホルムに溶解させ、生
じる不溶物(主として残存していたN,N′−ジシクロヘ
キシルカルボジイミドの分解物)を更にガラスフィルタ
ーで濾別除去する。
C:目的リン脂質系乳化剤の分画 上記の除去処理によって得られた濾液には目的とする
リン脂質系乳化剤の他、上記の処理によっても除去し得
ない幾分かのn−アルキル酸や4−ジメチルアミノピリ
ジンが通常依然残存しているので、これらを除くために
該濾液を次いで以下に示すシリカゲルカラムクロマト処
理に付す。
即ち、濾液をその8倍容量のシリカゲルを充填したカ
ラムに供したのち、下記の3種類の混合溶媒を用いて段
階的に溶出操作を行なう。
(1)第一溶出操作 クロロホルム:メタノール=9:1の混合溶媒を原料リ
ゾレシチン1gに対して約500mlの割合で用いる。この溶
出操作により主としてn−アルキル酸が溶出される。
尚、この操作の終了は、100ml画分で集める溶出液をそ
れぞれ溶媒留去した上で残渣が認められなくなったこと
を確認した時点とする。
(2)第二溶出操作 クロロホルム:メタノール=1:1の混合溶媒を原料リ
ゾレシチン1gに対して約500mlの割合で用いる。この溶
出操作により主として4−ジメチルアミノピリジンが溶
出される。尚、この操作の終了は、溶出液の一部をTLC
で展開後検出を254nmの紫外線ランプ照射により行な
い、黒色スポット(紫外線吸収物質4−ジメチルアミノ
ピリジンの存在は螢光部を黒色化する)が認められなく
なったことを確認した時点とする。
(3)第三溶出操作 クロロホルム:メタノール=3:7の混合溶媒を原料レ
ゾレシチン1gに対して約500mlの割合で用いる。この溶
出操作により目的とするリン脂質系乳化剤が溶出され
る。尚、この操作の終了は、溶出液の一部をTLCで展開
後検出をDittmer試薬噴霧により行ない、リン脂質の存
在を示す青色スポットが認められなくなったことを確認
した時点とする。
上記の第三溶出操作で得られる溶出液は、次いで減圧
下で溶媒を留去し、目的とするリン脂質系乳化剤を得
る。収率は一般的に60〜70%である。
尚、上記Aのエステル化反応で用いるn−アルキル酸
(飽和C7〜C9COOH)を以下具体的に示す。
C7:n−オクタン酸 C8:n−ノナン酸 C9:n−デカン酸 尚、以上の製造方法は、リゾレシチン(天然のレシチ
ンの加水分解などによって製造される)を出発原料とす
る方法であるが、例えば、1−パルミトイルリゾホスフ
ァチジルコリンなどを出発原料とする場合なども上記に
準じて製造することができる。
〔実施例〕
以下、本発明を実施例および比較例でもって更に詳しく
説明する。
実施例1−3および比較例1−7 下記の原料を用い、上記A、BおよびCで示した方法
に準じて本発明のリン脂質系乳化剤(R2:C7〜C9の直鎖
飽和炭化水素)および比較のためのリン脂質系乳化剤
(R2:C2〜C6およびC10〜C11の直鎖飽和炭化水素)を製
造した。
尚、比較例においてエステル化反応で用いるn−アル
キル酸(飽和C2〜C6C00HおよびC10〜C11COOH)は、具体
的には、以下のものである。
C2:n−プロピオン酸 C6:n−ヘプタン酸 C3:n−酪酸 C10:n−ウンデカン酸 C4:n−吉草酸 C11:n−ドデカン酸 C5:n−ヘキサン酸 原料 (a)卵黄リゾレシチン 2.1g その他、この卵黄リゾレシチン1モルに対し: (b)N−カルキル酸(飽和C2〜C11COOH) 1.8モル (c)4−ジメチルアミノピリジン 2.4モル (d)N,N′−ジシクロヘキシルカルボジイミド2.8モル の比となる量の、(b)、(c)および(d)を用い
た。
得られたリン脂質誘導体は、次いで、構造決定のため
にいずれも1H−NMR、13C−NMR,IR,TLCおよびガスクロマ
トグラフィーによる分析に供された。
分析結果を表1にまとめて示す。
表1の分析結果から本発明のリン脂質系乳化剤が前記
一般式を有するものであることが確認された。
試験例 上記実施例1〜3で得られた本発明のリン脂質系乳化
剤および比較例1〜7で得られたリン脂質系乳化剤の乳
化能特性に関し、以下の試験法に準じてそれらの乳化力
程度をそれぞれ測定した。
(イ)試験法: 試料0.25gを清水10mlに溶解後、大豆油10mlを加えて
二重円筒高速ミキサーで10,000rpm 2分間の条件の下撹
拌して乳化させる。24時間静置した後分離して現われた
水層部分の高さを測定し、全体の高さで除した値×100
=水層分離率(%)を求める。この値は小さいものほど
乳化力の程度が高いことを示す。
(ロ)結果: 上記の測定結果を以下の表2にまとめて示す。尚、市
販の卵黄リゾレシチンおよび卵黄レシチンについての測
定結果も示す。
実施例4 (重量%) (A)大豆油 20.0 実施例3のリン脂質系乳化剤 1.2 (B)濃グリセリン 2.5 注射用蒸留水 76.3 上記の配合割合で常法に則り静注用脂肪乳剤を調製し
た。得られた脂肪乳剤は、小粒径でかつ保存安定性に優
れていた。
実施例5 (重量%) (A)蜜ロウ 2.0 ステアリン酸 5.0 ステアリルアルコール 5.0 還元ラノリン 2.0 スクワラン 20.0 自己乳化型モノステアリン酸グリセリン 3.0 実施例1のリン脂質系乳化剤 7.0 (B)グリセリン 5.0 メチルパラベン 0.2 精製水 50.6 (C)香料 0.2 上記の配合割合で常法に則りスキンクリームを調製し
た。得られたクリームは、小粒径でかつ保存安定性に優
れていた。
〔発明の効果〕
本発明のリン脂質系乳化剤は、従来乳化剤として知ら
れているレシチンおよびリゾレシチンに比べて、更にま
た、本発明の乳化剤と化学構造類似のリン脂質系乳化剤
に比べて、一段と優れた乳化力を有するものであり、し
かも本発明の乳化剤は天然の生体膜の構成部分であるリ
ン脂質を骨格とするものであるため安全性が高く、よっ
てとりわけ医薬品、化粧品あるいは食品用の乳化剤ない
しはリポリーム用膜材としての利用に寄与し得ることが
できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−139188(JP,A) 特開 昭63−188692(JP,A) 特開 昭63−83093(JP,A) 特開 昭63−83094(JP,A) 特開 昭62−94(JP,A) 特開 昭63−91090(JP,A)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一般式 〔式中、R1はC13〜C21の直鎖炭化水素を意味し、R2はC7
    〜C9の直鎖飽和炭化水素を意味する〕 で表されることを特徴とするリン脂質系乳化剤。
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