JP2938864B1 - ウエイトローラ及びその製造方法 - Google Patents

ウエイトローラ及びその製造方法

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JP2938864B1 JP22462298A JP22462298A JP2938864B1 JP 2938864 B1 JP2938864 B1 JP 2938864B1 JP 22462298 A JP22462298 A JP 22462298A JP 22462298 A JP22462298 A JP 22462298A JP 2938864 B1 JP2938864 B1 JP 2938864B1
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Abstract

【要約】 【課題】 重量調整部材7のカラー5への圧入が容易
で、しかも重量調整部材7がカラー5から抜脱しにくい
ウエイトローラ1及びこの製造方法を提供すること。 【解決手段】 一対の筒体3、3で略円筒状のカラー5
を形成する。重量調整部材7の左側半分を左側の筒体3
に圧入し、右側半分を右側の筒体3に圧入して、ウエイ
トローラ1を構成する。各筒体3の内周に、他の筒体3
との当接端部近傍にて内向きに突出する環状凸部11を
形成する。一方、重量調整部材7の外周中央に、環状凹
部9を形成する。そして、環状凸部11と環状凹部9と
を嵌合させる。筒体3には、環状鍔部13を形成する。
環状鍔部13に代えて、円盤体を設けてもよい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、無段変速装置、遠
心クラッチ等に用いられるウエイトローラ及びその製造
方法に関し、特には合成樹脂製等のカラーに金属製等の
重量調整部材を圧入して構成されるウエイトローラ及び
その製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】例えばファミリーバイク等には、エンジ
ンの回転数の変化に応じて変速が自動的に行われる無段
変速装置が用いられている。この無段変速装置は、回転
軸に固定された固定プレートと回転軸方向に移動自在と
された可動プレートとからなるプーリ、このプーリに掛
けられたVベルト等の動力伝達帯体、可動プレートの背
面側に位置して回転軸に固定されたガイドプレート、可
動プレートとガイドプレートとの間隙に位置する円筒状
のウエイトローラ等を備えている。そして、可動プレー
トとガイドプレートとの間隙は、プーリの半径方向外側
に向かうに従って狭くなるように構成されている。
【0003】この無段変速装置においてエンジンの回転
数が増加すると、ウエイトローラに作用する遠心力が大
きくなり、このウエイトローラがプーリの半径方向外側
に移動する。この移動に伴って可動プレートの背面がウ
エイトローラに押され、可動プレートが固定プレートに
近づき、プーリの溝幅が狭くなる。すると、動力伝達帯
体とプーリとの接触位置が半径方向外側に移動する(す
なわち動力伝達帯体とプーリとのかみ合い半径が大きく
なる)。そして、無段階に変速が行われる。同様の機構
は、無段階変速装置のみならず、遠心クラッチ等にも用
いられている。
【0004】このウエイトローラは可動プレート及びガ
イドプレートと摺動するので、耐摩耗性の高いものでな
ければならない。また、ウエイトローラがエンジンの回
転数に応じて円滑に移動するには、表面の摩擦抵抗が小
さいものでなければならない。また、ウエイトローラに
はエンジンから熱が伝導し、ウエイトローラ自体も摩擦
発熱を起こすので、耐熱性に優れたものでなければなら
ない。さらに、ウエイトローラには可動プレート及びガ
イドプレートから荷重が加わり、しかもエンジンの振動
が加わるので、強度に優れたものでなければならない。
【0005】これらの要求を満足するウエイトローラと
して、金属製の重量調整部材の表面を自己潤滑性の合成
樹脂で被覆したものが提案されている(例えば特開昭6
1−163821号公報、特開昭61−165058号
公報等参照)。このウエイトローラは、あらかじめ重量
調整部材が挿入された金型内に溶融合成樹脂を射出成形
することによって得られるものである。しかし、このよ
うにして製造されたウエイトローラには、成形時の金属
と合成樹脂との熱収縮率の相違に起因する内部応力が残
留する。このため、使用中に合成樹脂部分にクラックが
生じてしまいがちである。
【0006】内部応力の残留を防止したウエイトローラ
が、特公平5−49853号公報に開示されている。こ
のウエイトローラでは、まず円筒状のカラーが合成樹脂
を用いて成形される。そして、このカラー内に、金属製
の重量調整部材が圧入される。重量調整部材とカラーと
は一体的に接着されてはいないので、温度変化によって
もカラーに内部から無理な応力が作用することがない。
このウエイトローラでは、カラーの端部(重量調整部材
を圧入する側の端部)の内周に内側に突出する環状の鍔
部が形成されており、この鍔部が重量調整部材の側面を
押圧することによりカラーから重量調整部材が抜脱する
のを防止している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、カラー
は合成樹脂から形成されるので吸湿しやすく、この吸湿
により鍔部の内周直径が大きくなって重量調整部材の側
面を押圧する力が不足し、カラーから重量調整部材が抜
脱してしまうことがある。また、負荷変動の大きなエン
ジンでは、鍔部が変形したり摩滅したりして、やはりカ
ラーから重量調整部材が抜脱してしまうことがある。鍔
部の内周直径を小さくしてより広い面積で重量調整部材
の側面を押圧する手段も考えられるが、鍔部の内周直径
を小さくするとカラーへの重量調整部材の圧入が困難と
なってしまう。
【0008】本発明はこれらの問題に鑑みてなされたも
のであり、重量調整部材の圧入が容易であるにもかかわ
らず重量調整部材が抜脱しにくいウエイトローラ及びそ
の製造方法を提供することをその目的とするものであ
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記した問題を解決する
ためになされた発明は、略円筒状のカラーと、このカラ
ーの内部に圧入される重量調整部材とを備えたウエイト
ローラであって、このカラーは互いの端部同士が当接す
る2つの筒体から構成されており、各筒体の内周には、
他の筒体との当接端部近傍にて内向きに突出する環状凸
部が形成されており、重量調整部材の外周には、両筒体
の環状凸部が嵌合する環状凹部が形成されていることを
特徴とするウエイトローラ、である(請求項1)。
【0010】このウエイトローラでは、筒体の環状凸部
が重量調整部材の環状凹部と嵌合するので、カラーから
重量調整部材が抜脱しにくい。
【0011】この発明において、環状凸部の突出高さを
重量調整部材の外周直径の0.005倍以上0.035
倍以下とすれば、カラーへの重量調整部材の圧入の容易
性とカラーからの重量調整部材の抜脱しにくさとをより
よく両立させることができる(請求項2)。
【0012】この発明において、筒体の2つの端部のう
ち他の筒体との当接端部とは異なる端部に、重量調整部
材の側面を覆う被覆部を形成することにより、カラーか
らの重量調整部材の抜脱をより確実に抑えることができ
る(請求項3)。このような被覆部を設けても、本発明
のウエイトローラはカラーが2つの筒体に分割されてい
るのでカラーへの重量調整部材の圧入が極めて容易であ
る。この被覆部は、筒体の内周から内向きに、内周直径
が重量調整部材の外周直径の0.965倍以下である環
状鍔部を突出させて構成することができる(請求項
4)。また、この被覆部を円盤体とし、被覆部で重量調
整部材の側面全体を覆うようにしてもよい(請求項
5)。このように被覆部が設けられたウエイトローラは
内部の重量調整部材の種類の識別が困難であるが、被覆
部に識別表示を設ければ、識別を容易とすることができ
る(請求項6)。
【0013】このウエイトローラの製造に当たり、筒体
をディスクゲートを用いた射出成形により形成すれば、
ウエルドが生じず、また合成樹脂中の繊維の配向乱れも
生じないので、筒体の品質を安定させることができる
(請求項7)。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、適宜図面を参照しつつ本発
明を詳説する。
【0015】図1(a)は本発明の一実施形態にかかる
ウエイトローラ1が示された断面図であり、図1(b)
及び図1(c)はこのウエイトローラ1の構成部材が示
された断面図である。このウエイトローラ1は、左右一
対の筒体3(図1(c)に示される)からなるカラー5
と、このカラー5が挿着された重量調整部材7(図1
(b)に示される)とから構成されている。重量調整部
材7は、左側半分が左側の筒体3に圧入されており、右
側半分が右側の重量調整部材7に圧入されている。
【0016】重量調整部材7は金属材料で構成されてい
る。用いられる金属材料は特に限定されるものではな
く、例えばステンレス鋼、炭素鋼、銅タングステン鋼、
快削鋼、その他の各種特殊鋼、銅合金、焼結金属等が挙
げられる。金属材料は比重が高いのでウエイトローラ1
の重量を高めることができ、遠心力により移動するとい
うウエイトローラ本来の機能を高めることができる。
【0017】図1(b)に示されるように、重量調整部
材7は略円筒状である。そして、内周直径(図1(b)
中D1で示される)を変更することにより、ウエイトロ
ーラ1の重量が調整される。具体的には、内周直径D1
を大きくすることによりウエイトローラ1を軽くするこ
とができ、内周直径D1を小さくすることによりウエイ
トローラ1を重くすることができる。内周直径D1をゼ
ロ、すなわち重量調整部材7を中実体とすることによ
り、ウエイトローラ1の重量を極めて大きなものとする
ことも可能である。重量調整部材7の外周の軸方向中央
は環状に切り欠かれており、環状凹部9が形成されてい
る。また、重量調整部材7の両端は面取りされている
(図1(b)中Caで示される)。
【0018】図1(c)に示されるように、筒体3は略
円筒状である。そして、後に詳説するように、一方の端
部(図1(c)における右側端部)には内向きに突出す
る環状凸部11が形成されている。また、他方の端部に
は、後に詳説するように、被覆部としての環状鍔部13
が形成されている。
【0019】この筒体3は、合成樹脂組成物から成形さ
れている。用いられる合成樹脂組成物は特には限定され
ないが、耐熱性の合成樹脂をベースポリマーとする合成
樹脂組成物を用いればウエイトローラ1の耐熱性が向上
し、内部が高温となる密閉式無段変速装置にも使用でき
るので好ましい。好適に用いられる耐熱性の合成樹脂と
しては、例えばナイロン66やナイロン46等のポリア
ミド、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド等が挙
げられる。
【0020】また、この耐熱性の合成樹脂に自己潤滑性
樹脂を配合すれば、ウエイトローラ1の摩擦抵抗を少な
くすることができ、しかも耐摩耗性を向上させることが
できる。従って、潤滑油を用いない乾式の無段変速機に
もウエイトローラ1を使用することができる。好適に用
いられる自己潤滑性樹脂としては、例えばポリテトラフ
ルオロエチレン、高密度ポリエチレン等が挙げられる。
自己潤滑性樹脂の配合量は、ベースポリマー100重量
部に対して1重量部以上20重量部以下が好ましく、1
0重量部以上15重量部以下が特に好ましい。配合量が
上記範囲未満であると、ウエイトローラ1の摩擦抵抗が
高くなったり耐摩耗性が不十分となったりしてしまうこ
とがある。逆に、配合量が上記範囲を超えると、ウエイ
トローラ1が強度不足となってしまうことがある。
【0021】合成樹脂組成物には、補強繊維が配合され
てもよい。これにより、ウエイトローラ1の強度を高め
ることができる。好適に用いられる補強繊維としては、
例えばアラミド繊維、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸
ウィスカ等が挙げられる。なかでも、アラミド繊維を用
いれば、ウエイトローラ1と摺動するプレートを摩耗さ
せたり損傷させたりすることがないので好ましい。補強
繊維の配合量は、ベースポリマー100重量部に対して
1重量部以上15重量部以下が好ましく、3重量部以上
10重量部以下が特に好ましい。配合量が上記範囲未満
であると、ウエイトローラ1の強度が不十分となってし
まうことがある。逆に、配合量が上記範囲を超えると、
補強繊維が相手部材を損傷させたり、摩擦係数が高くな
って摩耗しやすくなる傾向がある。
【0022】図2は、図1(a)の点線円A部分が示さ
れた拡大図である。但し、説明の便宜上左側の筒体3の
みが示されており、右側の筒体3は図示が省略されてい
る。この図からも明らかなように、筒体3の内周の一端
近傍には、内向きに突出する環状凸部11が形成されて
いる。そして、この環状凸部11は、重量調整部材7の
環状凹部9と嵌合する。図1(a)に示されるように、
環状凹部9には左右両方の筒体3の環状凸部11が嵌合
する。これにより、筒体3(すなわちカラー5)からの
重量調整部材7の抜脱が抑えられる。
【0023】環状凸部11と環状凹部9とが嵌合するこ
とにより重量調整部材7の抜脱が抑えられる理由は以下
の通りと推測される。例えば、左側の筒体3から重量調
整部材7が右方向へ抜脱する際には、この左側の筒体3
の環状凸部11が右方向に変形する必要がある。しか
し、左側の筒体3の環状凸部11の右側には右側の筒体
3の環状凸部11が存在するので、左側の筒体3の環状
凸部11はほとんど変形を起こすことができない。この
結果、重量調整部材7の抜脱が抑えられるのである。
【0024】環状凸部11の突出高さ(図2においてH
で示される)は、重量調整部材7の外周直径(図1
(b)においてD0で示される)の0.005倍以上
0.035倍以下が好ましく、0.015倍以上0.0
30倍以下が特に好ましい。突出高さHが上記範囲未満
であると、重量調整部材7の抜脱が充分には抑えられな
いことがある。突出高さHが上記範囲を超えると、筒体
3への重量調整部材7の圧入が困難となってしまうこと
がある。
【0025】環状凸部11の側面の一方は傾斜部15と
なっている。この傾斜部15は、筒体3を成形する際に
金型からの離型を容易とするためのものである。また、
重量調整部材7の環状凹部9の角部にこの傾斜部15の
寸法にほぼ相当する面取りを施せば、環状凸部11への
応力集中を避けることができる。
【0026】筒体3の内周直径(図1(c)においてD
3で示される)は、重量調整部材7の外周直径D0と同一
か、若干大きめとされている。具体的には、(D3
0)の値が0.3mm以下となるように、寸法が決定
される。この値が0.3mmを越えると、筒体3からの
重量調整部材7の抜脱が起こりやすくなってしまい、ま
た、エンジンの振動等により重量調整部材7が筒体3内
部で微小振幅で移動して騒音の原因となってしまうこと
がある。なお、筒体3に無理な応力がかかって使用中に
破損してしまうことを避けるには、筒体3の内周直径D
3が重量調整部材7の外周直径D0よりも小さくならない
ようにする必要がある。
【0027】この筒体3の、環状凸部11が形成された
端部と反対側の端部(図1(c)における左側端部)に
は、被覆部としての環状鍔部13が形成されている。こ
の環状鍔部13は、筒体3の内周から内向きに突出して
いる。この環状鍔部13は、図1(a)に示されるよう
に重量調整部材7の側面17を覆っている。環状鍔部1
3の内周直径(図1(c)においてD2で示される)
は、重量調整部材7の外周直径D0の0.965倍以下
とされている。これにより、重量調整部材7の側面17
のより多くの部分を環状鍔部13で覆うことができ、筒
体3からの重量調整部材7の抜脱がより確実に抑えられ
る。もちろん、このウエイトローラ1では環状凸部11
と環状凹部9とが嵌合しているので、環状鍔部13を必
ずしも設ける必要はない。なお、重量調整部材7の側面
17をより多く覆うという観点より、環状鍔部13の内
周直径D2は小さいほど好ましい。
【0028】このウエイトローラ1では、カラー5が中
央にて2つの筒体3、3に分割されている。そして、左
側の筒体3は左側から、右側の筒体3は右側からそれぞ
れ重量調整部材7に挿着される。従って、重量調整部材
7の両方の側面17、17を環状鍔部13で覆うことが
でき、カラー5からの重量調整部材7の抜脱を確実に抑
えることができる。
【0029】筒体3の内周の環状鍔部13の立ち上がり
部分には、面取りが施されている(図1(c)中Cbで
示される)。この面取りCbの寸法は、重量調整部材7
の両端部の面取りCaとほぼ同等か若干小さめとされて
いる。こうすることにより、重量調整部材を容易に圧入
することができ、またガタツキを防止することができ
る。
【0030】次に、このウエイトローラ1の製造方法に
ついて説明する。まず、前述の合成樹脂組成物を用いて
左右2つの筒体3が形成される。この形成には、通常は
射出成形法が用いられる。この際、いわゆるディスクゲ
ート方式の成形金型を用いることにより、ウエルドや繊
維の配向乱れが生じにくく、ウエルド割れ、真円度の低
下等を防止することができる。次に、環状凹部9を備え
た重量調整部材7が用意される。そして、重量調整部材
7の左側半分が左側の筒体3に圧入され、右側半分が右
側の筒体3に圧入される。圧入と同時に両筒体3の環状
凸部11が重量調整部材7の環状凹部9と嵌合する。こ
うして、2つの筒体3、3からなるカラー5が重量調整
部材7に確実に装着される。
【0031】図3は、このウエイトローラ1を用いた無
段変速装置の一例が示された断面図である。この無段変
速装置では、回転軸19に固定された固定プレート21
と回転軸方向(図3中左右方向)に移動自在とされた可
動プレート23とからなるプーリ25が設けられてい
る。プーリ25の溝幅は、半径方向外側に向かうに従っ
て広くなるように構成されている。そして、可動プレー
ト23の背面側には、ガイドプレート27が回転軸19
に固定されて設けられている。可動プレート23とガイ
ドプレート27との間隙はプーリ25の半径方向外側に
向かうに従って狭くなるように構成されており、この間
隙にウエイトローラ1が装填されている。プーリ25に
はVベルト29が掛けられている。
【0032】この無段変速装置において回転軸19に連
結されたエンジン(図示されず)の回転数が増加する
と、ウエイトローラ1に作用する遠心力が大きくなり、
このウエイトローラ1がプーリ25の半径方向外側に移
動する。この移動に伴って可動プレート23の背面がウ
エイトローラ1に押され、可動プレート23が固定プレ
ート21に近づき、プーリ25の溝幅が狭くなる。する
と、Vベルト29とプーリ25との接触位置が半径方向
外側に移動する(すなわちVベルト29とプーリ25と
のかみ合い半径が大きくなる)。そして、無段階に変速
が行われる。
【0033】ウエイトローラ1が半径方向外側に移動す
る際、可動プレート23及びガイドプレート27とウエ
イトローラ1の外周面とが摺動するが、このウエイトロ
ーラ1は摩擦抵抗が小さいので移動が円滑に行われる。
また、このウエイトローラ1は耐摩耗性及び耐熱性に優
れるので、摺動によって摩耗することが少なく、摩擦熱
によって溶融してしまうこともない。また、このウエイ
トローラ1は強度に優れるので、エンジンからの振動等
によって破損してしまうこともない。さらに、このウエ
イトローラ1では環状凸部11と環状凹部9とが嵌合し
ているので、たとえ負荷変動の大きなエンジンであって
もカラー5から重量調整部材7が抜脱してしまうことが
ない。
【0034】図4(a)は本発明の他の実施形態にかか
るウエイトローラ31が示された断面図であり、図4
(b)はこの側面図である。このウエイトローラ31
は、左右一対の筒体33、33からなるカラー35と、
このカラー35が挿着された重量調整部材7とから構成
されている。重量調整部材7の構成は、図1(a)に示
されたウエイトローラ1のものと同等である。
【0035】筒体33の構成はおおむね図1(c)に示
された筒体3と同等であるが、被覆部として、環状鍔部
13に代わる円盤体37が設けられている。この円盤体
37により、重量調整部材7の側面17全体が被覆され
ている。また、筒体33の環状凸部39は、重量調整部
材7の環状凹部9と嵌合している。従って、筒体33か
らの重量調整部材7の抜脱が確実に防止される。
【0036】図4(b)に示されるように、円盤体37
の側面には識別表示としての着色部分41が設けられて
いる。この着色部分41は、例えば円盤体37の表面に
ペンキを塗工する等の方法により、容易に形成すること
ができる。この際、重量調整部材7の重量に応じて用い
るペンキの色彩を異ならせれば、外部から重量調整部材
7が見えなくともウエイトローラ31の種類を容易に識
別することができる。従って、例えば無段変速装置の組
立工場等に置いて誤ったウエイトローラ31を装填して
しまう等の過誤が防止される。識別表示の方法としては
着色には限られず、例えば文字を表示したり記号を打刻
したり等によっても可能である。
【0037】
【実施例】以下実施例に基づいて本発明の効果を明らか
にするが、この実施例の記載によって本発明が限定的に
解釈されるべきでないのはもちろんである。
【0038】[実施例1]ナイロン46(ディエスエム
社の商品名「STANYL」)100重量部、ポリテト
ラフルオロエチレン(旭硝子社の商品名「フルオンL−
169」)19.7重量部、高密度ポリエチレン(三井
石油化学社の商品名「ハイゼックス3300FP」)
5.3重量部及びアラミド繊維(帝人社の商品名「テク
ノーラT−322」)6.6重量部を混合し、合成樹脂
組成物を得た。この合成樹脂組成物を用い、ディスクゲ
ート式の成形金型にて、環状凸部及び環状鍔部を備えた
筒体を2つ射出成形した。この筒体の内周直径D3は1
3.1mmであり、環状凸部の突出高さHは0.2mm
であり、環状鍔部の内周直径D2は12.35mmであ
った。
【0039】一方、幅1mm、深さ0.25mmの環状
凹部を備えた硫黄系快削鋼(SUM−25)からなる重
量調整部材を用意した。この重量調整部材の外周直径D
0は13.00mmであり、重量は7.43グラムであ
った。この重量調整部材を上記2つの筒体に圧入し、環
状凸部を環状凹部に嵌合させて実施例1のウエイトロー
ラを得た。
【0040】このウエイトローラにおける、重量調整部
材の外周直径D0に対する環状凸部の突出高さHの比
(H/D0)は0.015であり、重量調整部材の外周
直径D0に対する環状鍔部の内周直径D2の比(D2
0)は0.950である。
【0041】[実施例2]実施例1と同様の方法にて、
円盤体を備えた筒体を2つ射出成形した。この筒体の内
周直径D3は13.1mmであり、環状凸部の突出高さ
Hは0.2mmであった。この筒体に上記重量調整部材
を圧入し、実施例2のウエイトローラを得た。このウエ
イトローラにおける重量調整部材の外周直径D0に対す
る環状凸部の突出高さHの比(H/D0)は、0.01
5である。
【0042】[実施例3]環状凸部の突出高さHを0.
07mmとした他は実施例2と同様にして、実施例3の
ウエイトローラを得た。このウエイトローラにおける重
量調整部材の外周直径D0に対する環状凸部の突出高さ
Hの比(H/D0)は、0.005である。
【0043】[比較例]カラーが2つの筒体に分割する
のではなく一体とされた従来のウエイトローラを用意し
て、比較例とした。このウエイトローラのカラーの端部
には重量調整部材の側面を被覆する環状の鍔部が形成さ
れており、この鍔部の内周直径は12.65mmであっ
た。従って、重量調整部材の外周直径D0に対する鍔部
の内周直径の比は0.973である。
【0044】
【表1】
【0045】[各ウエイトローラの評価]実施例1から
3及び比較例のウエイトローラを、重量調整部材の抜脱
試験に供した。まず、加振装置(エミック株式会社の商
品名「F−300BM」)を用意し、この上にウエイト
ローラをその軸方向が鉛直方向となるように並べた。次
に、このウエイトローラを押さえプレートにより押さえ
つけて固定した。なお、ウエイトローラは、外径の1/
4程度が押さえプレートにかかるように配置した。そし
て、加振装置を、加速度が60G、周波数が100HZ
から150HZの変動(変動サイクル約10秒)の条件
で200時間運転した。運転開始から2時間経過時、4
時間経過時、12時間経過時、24時間経過時、48時
間経過時、100時間経過時及び200時間経過時のウ
エイトローラの状態を、目視により確認した。
【0046】実施例1から3のウエイトローラでは、2
00時間経過時も重量調整部材の抜脱が見られなかっ
た。これに対し、比較例のウエイトローラでは、12時
間経過時で重量調整部材の抜脱が見られた。この評価結
果より、本発明のウエイトローラの優位性が証明され
た。
【0047】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のウエイト
ローラは、重量調整部材とカラーとが一体的に接着され
ていないにもかかわらず、重量調整部材が抜脱しにくい
ものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)は本発明の一実施形態にかかるウエ
イトローラが示された断面図であり、図1(b)はこの
ウエイトローラの重量調整部材が示された断面図であ
り、図1(c)はこのウエイトローラの筒体が示された
断面図である。
【図2】図2は、図1(a)の点線円A部分が示された
拡大図である。
【図3】図3は、図1(a)に示されたウエイトローラ
を用いた無段変速装置の一例が示された断面図である。
【図4】図4(a)は本発明の他の実施形態にかかるウ
エイトローラが示された断面図であり、図4(b)はこ
の側面図である。
【符号の説明】
1、31・・・ウエイトローラ 3、33・・・筒体 5、35・・・カラー 7・・・重量調整部材 9・・・環状凹部 11、39・・・環状凸部 13・・・環状鍔部(被覆部) 15・・・傾斜部 17・・・側面 37・・・円盤体(被覆部) 41・・・着色部分(識別表示)

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 略円筒状のカラーと、このカラーの内部
    に圧入される重量調整部材とを備えたウエイトローラで
    あって、 このカラーは互いの端部同士が当接する2つの筒体から
    構成されており、各筒体の内周には、他の筒体との当接
    端部近傍にて内向きに突出する環状凸部が形成されてお
    り、 重量調整部材の外周には、両筒体の環状凸部が嵌合する
    環状凹部が形成されていることを特徴とするウエイトロ
    ーラ。
  2. 【請求項2】 上記環状凸部の突出高さが、重量調整部
    材の外周直径の0.005倍以上0.035倍以下であ
    る請求項1に記載のウエイトローラ。
  3. 【請求項3】 上記筒体の、他の筒体との当接端部とは
    異なる端部に、上記重量調整部材の側面を覆う被覆部が
    形成されている請求項1又は2に記載のウエイトロー
    ラ。
  4. 【請求項4】 上記被覆部が筒体の内周から内向きに突
    出する環状鍔部であり、この環状鍔部の内周直径が重量
    調整部材の外周直径の0.965倍以下である請求項3
    に記載のウエイトローラ。
  5. 【請求項5】 上記被覆部が重量調整部材の側面全体を
    覆う円盤体とされている請求項3に記載のウエイトロー
    ラ。
  6. 【請求項6】 上記被覆部に識別表示がなされた請求項
    3から5のいずれかに記載のウエイトローラ。
  7. 【請求項7】 請求項1から6のいずれかに記載のウエ
    イトローラの製造方法であって、 ディスクゲートを用いた射出成形により合成樹脂製の筒
    体を2つ成形する工程、この筒体に重量調整部材を圧入
    することにより重量調整部材に2つの筒体を装着する工
    程及び各筒体の環状凸部を重量調整部材の環状凹部に嵌
    合させる工程を含むウエイトローラの製造方法。
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