JP2020193711A - ウエイトローラー - Google Patents

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Isato Shiraki
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Abstract

【課題】ヒートショックに対して破断やクラックが生じにくく、耐摩耗性に優れる被覆部材を備えたウエイトローラーを提供する。【解決手段】ウエイトローラー1は、筒状の重量調整部材3と、この重量調整部材3の外周面上に設けられた被覆部材5とを備える。被覆部材5は、ポリアミドをベース樹脂とする樹脂組成物、補強繊維及び潤滑剤を含む。被覆部材5における補強繊維の含有率は、3.0質量%以上である。この補強繊維は、少なくとも一部に屈曲部を有して引張弾性率が7GPa以上110GPa以下の有機繊維を含む。【選択図】図1

Description

本明細書に開示された技術は、無段変速装置等に用いられるウエイトローラーに関する。
自動二輪車等には、エンジンの回転数に応じて変速が自動的に行われる無段変速装置が用いられている。無段階変速装置は、固定プレートと可動プレートとを有するプーリと、当該プーリに巻き掛けられたVベルトと、可動プレートの背面側に、回転軸に固定された状態で取り付けられたガイドプレートと、ガイドプレートと可動プレートとの隙間に、プーリの径方向に移動可能に配置された円筒状のウエイトローラーとを備えている。
ガイドプレートと可動プレートとの隙間は、プーリの径方向外側に向かうにつれて狭くなっており、エンジンの回転数が増加してウエイトローラーに加わる遠心力が大きくなると、ウエイトローラーがプーリの径方向外側に移動する。この移動に伴って可動プレートの背面がウエイトローラーに押され、可動プレートと固定プレートとで形成されるV字状の溝の幅が狭くなる。これによって、Vベルトのプーリへの巻き掛け半径は大きくなり、無段階変速が行われる。
特許文献1〜3には、従来のウエイトローラーが記載されている。従来のウエイトローラーは、例えば、金属からなる重量調整部材と、重量調整部材の外表面を覆う樹脂製の被覆部材とで構成されている。
特開2000−55154号公報 特開平8−14346号公報 特開平9−42396号公報
ところで、例えば特許文献1に記載のウエイトローラーは、重量調整部材と被覆部材とを別個に作製した後、重量調整部材を被覆部材へ圧入することで形成される。これに対し、インサート成形によって重量調整部材を被覆する被覆部材を形成することで、圧入工程を省き、製造コストを低減することができる。
しかしながら、インサート成形により製造されたウエイトローラーでは、急激な温度変化(すなわち、ヒートショック)によって、被覆部材のうち重量調整部材のコーナー部を覆う部分に応力が集中しやすくなっており、圧入工程により製造されたウエイトローラーに比べて破断やクラックが生じやすくなっている。
被覆部材に補強繊維を混入することで、破断及びクラックが生じる可能性を低減することができるとも考えられるが、高価な補強繊維を多量に使用すれば、かえって製造コストの増加を招くおそれがある。
一方、ウエイトローラーは、可動プレート及びガイドプレートと摺動するので、耐摩耗性に優れることが望まれている。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、ヒートショックに対して破断やクラックが生じにくく、耐摩耗性に優れる被覆部材を備えたウエイトローラーを適切な製造コストで提供することにある。
本明細書に開示されたウエイトローラーは、円筒状の重量調整部材と、前記重量調整部材の外周面上に設けられた被覆部材とを備えた円筒状のウエイトローラーである。前記被覆部材は、ポリアミドをベース樹脂とする樹脂組成物、補強繊維及び潤滑剤を含み、前記被覆部材における補強繊維の含有率は、3.0質量%以上であり、補強繊維は、少なくとも一部に屈曲部を有して引張弾性率が7GPa以上110GPa以下の有機繊維を含んでいてもよい。
この構成によれば、ベース樹脂であるポリアミドに、補強繊維及び潤滑剤が添加されていることにより、ヒートショックによるクラック等の発生を効果的に抑えることができる。また、潤滑剤を14質量%以上20質量%以下とすることで、十分な強度を確保しつつ、使用時に可動プレートやガイドプレートと接触する被覆部材の耐摩耗性を大幅に改善することができる。
本明細書に開示されたウエイトローラーは、ヒートショックに対して破断やクラックが生じにくく、耐摩耗性に優れる被覆部材を備えている。また、当該ウエイトローラーは、適切な製造コストで製造可能である。
図1は、本明細書に開示されたウエイトローラーを示す図である。 図2は、本明細書に開示されたウエイトローラーの変形例を示す図である。 図3は、図1に示すウエイトローラーの製造方法を示す断面図である。 図4は、図2に示すウエイトローラーの製造方法を示す断面図である。 図5は、本明細書に開示されたウエイトローラーを用いた無段変速装置の一部を示す断面図である。 図6は、樹脂の摩擦摩耗試験を説明するための図である。 図7は、表3に記載された結果に基づき、樹脂組成物中のPTFEの含有率(配合率)と比摩耗量との関係を示す図である。 図8は、表4に記載された寸法変化率の測定結果を示す図である。 図9は、表5に記載された寸法変化率の測定結果を示す図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本明細書では、説明の便宜上、円筒形のウエイトローラーのうち、ゲート跡が形成された端面側を底部又は下部とし、他方の端面側を上部と表現する場合がある。
(実施形態)
−ウエイトローラーの構成−
図1は、本明細書に開示されたウエイトローラー1を示す図である。図1の左図は、ウエイトローラー1の軸に平行な方向の断面図であり、図1の右図は、ウエイトローラー1を底面側から見た平面図である。
図1に示すように、本実施形態のウエイトローラー1は、円筒状の重量調整部材3と、重量調整部材3の外周面7上に設けられた樹脂組成物からなる被覆部材5とを備え、全体として円筒形状を有している。被覆部材5は、重量調整部材3の外周面7だけでなく、重量調整部材3の被覆部材5からの脱落を防ぐ等の目的で、重量調整部材3の底面と、上面の少なくとも一部とを覆っていてもよい。被覆部材5は、有底筒状であって、その底部の中央部には、平面視において円形のディスクゲート跡11が形成されていてもよい。
被覆部材5は、ディスクゲート方式のインサート成形により形成されており、被覆部材5は、重量調整部材3の上面の一部から外周面7及び下面の一部に亘る領域において重量調整部材3と密着している。被覆部材5のうち、重量調整部材3の外周面を覆う部分の厚みは、上下端を除いてほぼ均一になっており、当該厚みは、例えば1.5mm以上2.5mm以下程度であってもよい。被覆部材5の厚みを小さくしすぎると、ヒートショックにより破断やクラックが生じやすくなり、被覆部材5の厚みを大きくしすぎると、製造コストが上昇してしまう。
被覆部材5を構成する樹脂組成物は、自己潤滑性を有していることが好ましい。「自己潤滑性を有する」とは、摩擦係数が小さいことを意味する。樹脂組成物が自己潤滑性を有することにより、金属からなる部材に摺動させた場合の摩耗量を小さくすることができる。被覆部材5を構成する樹脂組成物としては、例えばスラストシリンダー式の摩擦摩耗試験(JIS K 7218−1986)によって測定される比摩耗量が0.5(10−3mm3/(N・km))以下である材料が好ましく用いられる。
被覆部材5を構成する樹脂は、例えばポリアミドをベース樹脂とし、無機繊維を2.5質量%以上7質量%未満、有機繊維を1質量%以上7質量%以下、潤滑剤を12質量%以上20質量%以下の含有率でそれぞれ含んでいる。
ポリアミドは、優れた強靱性、耐衝撃性、柔軟性を有するとともに、無機繊維や有機繊維等の補強繊維との親和性が高いので、ベース樹脂として好ましく用いられる。ポリアミドとしては、例えば、縮合重合タイプであるナイロン66、ナイロン46、ナイロン610、ナイロン9T、ナイロン10T、開環重合タイプであるナイロン6、ナイロン11、ナイロン12等を用いることができるが、これらに限定されない。また、複数種のポリアミドをブレンドしたものをベース樹脂として用いてもよい。
ポリアミドのうち、脂肪族系ナイロンであるナイロン66、ナイロン46は、耐熱性に優れ、靱性及び自己潤滑性を有していることから、優れた耐摩耗性能を有している。このため、ナイロン66及びナイロン46はベース樹脂としてより好ましく用いられる。ナイロン66は、ナイロン46に比べて吸水性が低く、吸水による寸法変化が小さい上、安価であるので、ベース樹脂としてより好ましく用いられる。
被覆部材5中の当該ポリアミドの含有率は、少なくとも66質量%以上であればよく、樹脂組成物の構成材料中で最も高ければよい。
また、被覆部材5を構成する樹脂組成物において、ベース樹脂の含有量を100%とした場合の無機繊維の含有量は、例えば3%以上10%以下程度であってもよい。
無機繊維としては、例えば、引張弾性率が100GPa以上650GPa以下程度の直線状繊維が用いられる。無機繊維の例としては、カーボン繊維、ガラス繊維、バサルト繊維等、及びこれらの混合物が挙げられる。これらのうち、耐熱性に優れる点からカーボン繊維やガラス繊維が好ましく用いられる。強度及び剛性に優れ、高温下でも機械的特性が低下しにくいことから、カーボン繊維が被覆部材5の補強用繊維としてより好ましく用いられる。
ガラス繊維の種類は特に限定されないが、例えばEガラス(アルミノホウケイ酸ガラス)やSガラス(マグネシウムアルミノケイ酸塩ガラス)は高い引張弾性率と優れた耐熱性を有しているので、補強用繊維として好ましく用いられる。
カーボン繊維は、ポリアクリロニトリル(PAN)系カーボン繊維、ピッチ系カーボン繊維のいずれであってもよく、これらのカーボン繊維の併用であってもよい。これらのカーボン繊維のうち、高強度且つ高弾性率であることから、PAN系カーボン繊維が好ましく用いられる。カーボン繊維の引張弾性率は、例えば100GPa以上であれば好ましく、200GPa以上であれば少量でも被覆部材5の破損を防ぐことができるので、より好ましい。このようなカーボン繊維は、引張強度が例えば1.0GPa以上であってもよく、2.5GPa以上であればより好ましい。
被覆部材5中の無機繊維の直径や長さは特に限定されないが、無機繊維の直径は、例えば5μm以上18μm以下程度であってもよい。
また、被覆部材5を構成する樹脂組成物において、ベース樹脂の含有量を100%とした場合の有機繊維の含有量は、例えば1%以上10%以下程度であってもよい。
有機繊維としては、例えば、引張弾性率が7GPa以上110GPa以下程度の繊維が用いられる。有機繊維としては、例えば芳香族ポリアミド繊維(アラミド繊維)、超高分子量ポリエチレン繊維、ポリアリレート繊維、PBO(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサザール)繊維などの種々の繊維、及びそれらの2種以上を含む混合繊維を用いることができる。
これらの有機繊維の中で、耐熱性が高く、強度に優れるパラ系又はメタ系の芳香族ポリアミド繊維(アラミド繊維)が補強用繊維として好ましく用いられる。パラ系アラミド繊維の材料としては、例えばコポリパラフェニレン−3,4’オキシジフェニレン・テレフタラミドや、ポリパラフェニレンテレフタラミド(PPTA)が、メタ系アラミド繊維としては、ポリメタフェニレンイソフタラミド(MPIA)が用いられる。上述のアラミド繊維材料のうち、物性が優れているという観点から、コポリパラフェニレン−3,4’オキシジフェニレン・テレフタラミド及びPPTAが好ましく用いられる。PPTA繊維は、引張弾性率が72GPa、引張強度も2950MPaと高く、伸縮しにくい上、安価であることから、無機繊維と共に使用する補強用繊維としてより好ましく使用される。
なお、有機繊維としては、上述の繊維のうち2種以上を混合した繊維を用いてもよい。
被覆部材5において、有機繊維は柔軟性を有しているので、それらの多くは少なくとも一部に屈曲部を有している。このため、後述するように、有機繊維の多くは、無機繊維と被覆部材5中でからみ合っており、無機繊維及び有機繊維をそれぞれ単独で使用する場合に比べて繊維の含有率を下げてもクラック等の発生を低減できるものと考えられる。
被覆部材5中の有機繊維の径や長さは特に限定されないが、有機繊維の径は例えば10〜16μm程度であってもよく、有機繊維の長さは例えば1mm以上3.5mm以下程度であってもよい。有機繊維の長さが1mm以上であれば、無機繊維とからみ合いやすく、有機繊維の長さが3.5mm以下であれば、混練が行いやすいので、好ましい。有機繊維の長さが1mmである場合、加工性の面からより好ましい。
上述の無機繊維は、樹脂組成物の混練時や金型への注入の際に折損しやすいので、成形後の被覆部材5中では、その繊維長が短くなっている。これに対し、有機繊維は折損しにくいので、被覆部材5中でも樹脂に添加した際の繊維長がほぼそのまま保たれる。
被覆部材5を構成する樹脂組成物中の無機繊維の含有率を例えば3質量%に固定し、有機繊維の含有率を1質量%〜7質量%の範囲内で増加させることで、耐摩耗性を向上させることができる。また、有機繊維の含有率を例えば2質量%に固定して無機繊維の含有率を2.5質量%〜7.0質量%の範囲内で増加させることにより、耐ヒートショック性を高めることができる。
また、被覆部材5を構成する樹脂組成物中の、無機繊維の含有率と有機繊維の含有率の和は、3.5質量%以上8質量%以下であってもよく、3質量%以上5質量%以下であってもよい。無機繊維の含有率と有機繊維の含有率の和が3.5質量%以上であればPTFEを14質量%と十分高い値にした場合であってもクラック等の発生を抑えることができ、上記含有率の和が8.0質量%以下であることにより、コストの増加を抑えることができる。上記含有率の和が5.0質量%以下であれば、よりコストを低減できるので好ましい。
潤滑剤としては、例えば、液状タイプの他、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系潤滑剤や、黒鉛、二硫化モリブデン、窒化ホウ素などの固形タイプの潤滑剤、これらの潤滑剤を2種以上混合したものを用いることができる。潤滑剤は、被覆部材5中、粒子状且つ分散された状態で含まれていてもよい。液状潤滑剤を用いると、樹脂表面からしみ出し、摩耗粉を凝着させてしまう場合があるが、粒状潤滑剤を用いれば、摩耗粉を凝着させにくくし、異常摩耗を生じにくくさせることができる。なお、これらの潤滑剤が、被覆部材5を構成する樹脂に自己潤滑性を付与する。
重量調整部材3は、被覆部材5よりも比重の大きい材料で構成されていればよく、例えば快削鋼(SUM22、23)や冷間圧造用炭素鋼線(SWCH)などの金属等で構成されていてもよい。重量調整部材3の内径及び外径は任意に調整されればよい。
図2は、本明細書に開示されたウエイトローラー1の変形例を示す図である。図2の左図は、ウエイトローラー1の軸に平行な方向の断面図であり、図2の右図は、ウエイトローラー1を底面側から見た平面図である。
図2に示すように、ウエイトローラー1において、被覆部材5は、重量調整部材3の外周面7から上下のコーナー部に亘る領域を覆うように設けられている。被覆部材5は、重量調整部材3の底面全体を覆っている必要はなく、重量調整部材3の底面の一部のみを覆っていてもよい。被覆部材5の底部の外周端には、ピンゲートのゲート跡13が形成されている。
−ウエイトローラーの効果−
図1及び図2に示すような、インサート成形によって形成されたウエイトローラー1では、重量調整部材3の上面及び下面の両面の少なくとも一部ずつを覆うことができるので、圧入工程によって形成されるウエイトローラーに比べて重量調整部材3の被覆部材5からの脱落が生じにくくなっている。しかしながら、ヒートショックにより被覆部材5が重量調整部材3と密着した状態で軸方向及び径方向に収縮と膨張を繰り返すので、被覆部材5のうち重量調整部材3のコーナー部を覆う部分10a、10bには、強い応力が加わる。このため、被覆部材5中の無機繊維の含有率が低いと、実際に使用する場合、上記部分10a、10bに径方向に沿ったクラックや破断が生じるおそれがある。
ここで、本願発明者の独自の検討により、ポリアミドをベース樹脂とし、潤滑剤を含まない樹脂で被覆部材5を構成する場合、無機繊維を単独で7質量%以上含んでいれば、クラックや破断の発生を抑えることが可能であることが判明した。しかし、カーボン繊維等
の無機繊維は高価であるので、無機繊維の含有率をあまり高くすると、製造コストが高くなってしまう。
さらに、ウエイトローラーの耐摩耗性を改善するために被覆部材5にフッ素系樹脂等の潤滑剤を添加すると、クラックや破断がより生じやすくなることも判明した。また、アラミド繊維等の有機繊維を単独で用いる場合、繊維の含有率を増やしても、クラック等の発生を十分に抑えられないことも分かった。
以上の知見に基づいて、本願発明者が検討を重ねた結果、ポリアミドをベース樹脂とし、潤滑剤を含む樹脂で被覆部材5を構成する場合、引張弾性率が100GPa以上650GPa以下の無機繊維と、引張弾性率が7GPa以上110GPa以下の有機繊維とを併せて添加することにより、ヒートショックによるクラック等の発生を抑えつつ、無機繊維の使用量を効果的に低減できることが明らかになった。これは、無機繊維と、屈曲部を有する有機繊維とが被覆部材5中でからみ合うことによって繊維のネットワークが形成されたためと推定された。
なお、無機繊維(例えばカーボン繊維)の引張弾性率は、JIS R7606に準拠した方法で測定され、有機繊維(例えばアラミド繊維)の引張弾性率は、JIS L1017に準拠した方法で測定される。
本実施形態のウエイトローラー1では、被覆部材5を構成する樹脂において、無機繊維の含有率を2.5質量%以上7質量%未満、有機繊維を1質量%以上7質量%以下とし、当該樹脂に自己潤滑性を付与することで、無機繊維の使用量を減らして製造コストを低減しつつ、クラックや破断の発生を効果的に低減することが可能となる。なお、無機繊維の含有率が3質量%以上であれば、クラック等の発生をより確実に低減することができるので、より好ましい。
また、被覆部材5を構成する樹脂組成物中、潤滑剤の含有率を12質量%以上20質量%以下とすることで、耐摩耗性を顕著に改善しつつ、潤滑剤の添加によるクラック等の発生を抑えることが可能になる。
なお、被覆部材5を構成する樹脂組成物中の無機繊維の含有率が2.5質量%以上3.0質量%以下であれば無機繊維のコストをより効果的に低減できるので、より好ましい。また、無機繊維の含有率が少なくとも2.5質量%あれば、被覆部材5が吸水した場合の寸法変化を小さくすることができるので、高湿度環境下においても無段変速装置内でウエイトローラー1のスムーズな動作を実現することができる。
また、被覆部材5を構成する樹脂組成物中の有機繊維の含有率が1.0質量%以上2.0質量%以下であればより好ましい。有機繊維の含有率をこの範囲にすることで、有機繊維の使用量を抑えつつ、ヒートショックによるクラックや割れの発生を抑えることが可能となる。
被覆部材5を構成する樹脂組成物中、潤滑剤の含有率を12質量%以上14質量%以下とすれば、耐摩耗性を顕著に改善しつつ、クラック等をより生じにくくすることができる。
なお、発明者による検討によれば、被覆部材5の製造に用いられる無機繊維の長さは、被覆部材5のヒートショック耐性に大きく影響しないことが分かっている。また、被覆部材5の製造に用いられる有機繊維の長さも被覆部材5のヒートショック耐性に大きく影響しない。
−ウエイトローラーの製造方法−
図3は、図1に示すウエイトローラー1の製造方法を示す断面図である。本実施形態のウエイトローラー1は、インサート成形法により製造される。
本実施形態のウエイトローラー1を製造する際には、まず別途金型を用いた公知の成形等により、金属からなり、円筒形の重量調整部材3を作製する。一方で、所定の含有率になるように上述の無機繊維、有機繊維及び潤滑剤が添加されたポリアミド樹脂材料(樹脂31)を、各繊維及び潤滑剤が均一に混ざるように混練しておく。なお、重量調整部材3は、金型を用いた鍛造、若しくは切削加工によって所望の形状にされる。
次いで、凹部が形成された第1の金型27と、当該凹部の中央部に設置された円柱状のコアピン21とで形成された円筒状のキャビティ内に重量調整部材3を設置し、ランナー25が形成された第2の金型29でキャビティに蓋をする。ディスクゲート23は、凹部の中央に設けられる。図3において、符号37は重量調整部材3の内径を示し、符号35はコアピン21の直径を示し、符号33は重量調整部材3の内径37とコアピン21の直径35の差(すなわち、クリアランス)を示す。
この状態で、ランナー25及びディスクゲート23を介して加熱された液状の樹脂31をキャビティ内に注入する。金型を冷却し、樹脂31が固化した後、第2の金型29を開き、第1の金型27から成形されたウエイトローラー1を取り出す。樹脂31を注入する際の第1の金型27及び第2の金型29の温度は、ベース樹脂によって決まる。例えばベース樹脂としてナイロン66又はナイロン46を用いる場合、金型温度は80℃〜90℃程度とする。
以上の方法によれば、キャビティ端面の中央部に設けたディスクゲート23から樹脂31を注入するので、キャビティ端面の中央部から周辺部に向かう樹脂31の流れ40によって、重量調整部材3がセンタリングされる。このため、クリアランス33の位置によるばらつきは小さくなり、重量調整部材3の中心軸とコアピン21の中心軸との位置ズレも小さくすることができる。
しかしながら、図4に示すような、ピンゲート方式の金型を用いてウエイトローラー1を作製してもよい。
この場合、第1の金型27の凹部を覆う第2の金型41のランナー43及びピンゲート45は、キャビティ端面の周辺部分に対応する位置に設けられており、樹脂39は、ピンゲート45を介してキャビティ内に注入される。この方法により、図2に示す変形例に係るウエイトローラー1を作製することができる。
−ウエイトローラー1の使用方法−
図5は、ウエイトローラー1を用いた無段変速装置の一部を示す断面図である。この無段変速装置は、回転軸61を軸として回転するプーリ55と、プーリ55のV字状溝に巻き掛けられたVベルト59と、ウエイトローラー1と、ガイドプレート57とを備えている。プーリ55は、回転軸61に固定された固定プレート51と、回転軸61の軸方向に移動自在となっている可動プレート53とで構成される。
略円盤状のガイドプレート57は、可動プレート53の背面側に、ウエイトローラー1を挟持できる隙間を空けて回転軸61に固定されている。可動プレート53とガイドプレート57との間の隙間は、プーリ55の径方向外側に向かうにつれて狭くなっている。
この無段変速装置において、回転軸61に連結されたエンジンの回転数が増加すると、ウエイトローラー1がプーリ55の径方向外側に移動する。すると、ウエイトローラー1に押された可動プレート53は、プーリ55の溝幅が狭くなる方向に移動する。その結果、Vベルト59の巻き掛け半径は大きくなり、無段階変速が行われる。
以上では、ウエイトローラー1とその製造方法の一例及びウエイトローラー1の使用方法を説明したが、各部材の形状、構成、配置、構成材料、サイズ、製造条件、手順の前後等は本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば、重量調整部材3の外周面に周方向に延びる凹部又は凸部を形成するとともに、被覆部材5の内周面に当該凹部又は凸部と嵌合する凸部又は凹部を形成することにより、熱による膨張と収縮を抑え、ヒートショック耐性の向上を図ってもよい。
また、成形時の金型温度を高くして材料特性の向上を図ったり、成形後に例えば150℃程度で所定時間熱アニールを加えることによって残留応力を除去し、被覆部材5のヒートショック耐性の向上を図ったりしてもよい。
後述の実施例又は比較例に係るウエイトローラーを実際に作製し、ヒートサイクル試験及び摩擦摩耗試験によって評価した結果について、以下説明する。これらの実施例によって本発明が限定的に解釈されることはない。
−ウエイトローラーの作製−
上述したディスクゲート方式又はピンゲート方式の製造方法に従って、実施例1〜10に係るウエイトローラーと、比較例1〜19、21、23に係るウエイトローラーとを作製した。具体的には、実施例1、2、比較例1〜3に係るウエイトローラーをピンゲート方式で、実施例3〜10、比較例4〜19、21、23に係るウエイトローラーをディスクゲート方式で作製した。成形時の金型温度はいずれも90℃とした。
比較例20、22に係るウエイトローラーは、被覆部材を金型を用いて成形した後、重量調整部材を被覆部材に圧入することにより形成した。
実施例5〜7、比較例8〜13、20、21に係るウエイトローラーの外径は、18mmとし、高さは14mmとした。実施例8〜10、比較例14〜19、22、23に係るウエイトローラーの外径は、20mmとし、高さは15mmとした。
重量調整部材の構成材料は、いずれの実施例、比較例においても快削鋼(SUM22、23)とした。被覆部材を構成する樹脂の組成は、実施例及び比較例ごとに後述するようにそれぞれ変更した。以下の実施例及び比較例では、カーボン繊維やアラミド繊維等の含有率が下記の値になるように、カーボン繊維等及び/又はPTFEが混合された樹脂材料、アラミド繊維が混合された樹脂材料等をドライブレンドした後、成形することにより被覆部材を形成した。
<実施例1>
ベース樹脂としてナイロン46(以下の表では「PA46」と表記)を、無機繊維としてカーボン繊維(以下の表では「CF」と表記)を用いた。
有機繊維としては、長さ1mmのパラ系アラミド繊維(帝人社製、商品名「テクノーラ」)のカットファイバーを用いた。当該アラミド繊維は、コポリパラフェニレン−3,4’オキシジフェニレン・テレフタラミドからなり、引張弾性率が73.5GPa、引張強度が3400MPaである。有機繊維の引張弾性率は、JIS L1017に準拠した方法で測定された値である。
カーボン繊維の含有率は、樹脂組成物全体の3.1質量%とし、有機繊維の含有率は、樹脂組成物全体の2.4%とした。
潤滑剤としては、樹脂組成物全体の15.4質量%のPTFEを用いた。
<実施例2>
ベース樹脂としてナイロン46を、無機繊維としてガラス繊維(以下の表では「GF」と表記)を用いた。有機繊維としては、長さ1mmの系アラミド繊維(帝人社製、商品名「テクノーラ」)のカットファイバーを用いた。
ガラス繊維の含有率は、樹脂全体の5.0質量%とし、アラミド繊維の含有率は、樹脂全体の6.3質量%とした。
潤滑剤としては、樹脂全体の13.5質量%のPTFEを用いた。
<実施例3>
ベース樹脂としてナイロン46を、無機繊維としてカーボン繊維を用いた。有機繊維としては、長さ1mmのアラミド繊維(帝人社製、商品名「テクノーラ」)のカットファイバーを用いた。
カーボン繊維の含有率は、樹脂全体の3.0質量%とし、アラミド繊維の含有率は、樹脂全体の2.1質量%とした。
潤滑剤としては、樹脂全体の13.8質量%のPTFEと、0.7質量%のポリエチレンとを用いた。
<実施例4>
ベース樹脂としてナイロン46を、無機繊維としてカーボン繊維を用いた。有機繊維としては、長さ1mmのアラミド繊維(帝人社製、商品名「テクノーラ」)のカットファイバーを用いた。
カーボン繊維の含有率は、樹脂全体の3.0質量%とし、アラミド繊維の含有率は、樹脂全体の2.4質量%とした。
潤滑剤としては、樹脂全体の15.4質量%のPTFEと、0.8質量%のポリエチレンとを用いた。
<実施例5>
ベース樹脂としてナイロン66(BASF社製、商品名「ULTRAMID A3W」;以下の表では「PA66」と表記)を、無機繊維としてカーボン繊維を用いた。当該ベース樹脂は、融点が260℃、23℃、湿度50%下での吸水率は、2.50〜3.10%である。
有機繊維としては、長さ1mmのパラ系アラミド繊維(帝人社製、商品名「トワロン1684」)のカットファイバーを用いた。このアラミド繊維は、PPTAからなり、引張弾性率は72GPaで、引張強度は2950MPaである。
カーボン繊維の含有率は、樹脂全体の3.0質量%とし、アラミド繊維の含有率は、樹脂全体の2.0質量%とした。潤滑剤としては、樹脂全体の12.0質量%のPTFE(ソルベイスペシャルティポリマーズ社製、商品名「ポリミストF284」)を用いた。
なお、実施例6〜10に係るウエイトローラーでは、使用した繊維の種類及び含有率が実施例5に係るウエイトローラーと同じであるが、潤滑剤であるPTFEの含有率が異なっている。
<実施例6>
成形に用いる樹脂組成物中、カーボン繊維の含有率を3.0質量%、アラミド繊維の含有率を2.0質量%とし、PTFEの含有率を13.0質量%とした。
<実施例7>
成形に用いる樹脂組成物中、カーボン繊維の含有率を3.0質量%、アラミド繊維の含有率を2.0質量%とし、PTFEの含有率を14.0質量%とした。
<実施例8>
成形に用いる樹脂組成物中、カーボン繊維の含有率を3.0質量%、アラミド繊維の含有率を2.0質量%とし、PTFEの含有率を12.0質量%とした。
<実施例9>
成形に用いる樹脂組成物中、カーボン繊維の含有率を3.0質量%、アラミド繊維の含有率を2.0質量%とし、PTFEの含有率を13.0質量%とした。
<実施例10>
成形に用いる樹脂組成物中、カーボン繊維の含有率を3.0質量%、アラミド繊維の含有率を2.0質量%とし、PTFEの含有率を14.0質量%とした。
<比較例1>
ベース樹脂としてナイロン66を用い、無機繊維としてカーボン繊維を用いた。成形に用いる樹脂組成物中、カーボン繊維の含有率を3.0質量%とした。有機繊維及び潤滑剤は用いなかった。
<比較例2>
ベース樹脂としてナイロン66を用い、無機繊維としてカーボン繊維を用いた。成形に用いる樹脂組成物中、カーボン繊維の含有率を7.0質量%とした。有機繊維及び潤滑剤は用いなかった。
<比較例3>
ベース樹脂としてナイロン46を用い、有機繊維として長さ1mmのパラ系アラミド繊維(帝人社製、商品名「テクノーラ」)のカットファイバーを用いた。成形に用いる樹脂組成物中、アラミド繊維の含有率を7.0質量%とした。潤滑剤として、15.0質量%のPTFEを用いた。無機繊維は用いなかった。
<比較例4>
ベース樹脂としてナイロン66を用い、無機繊維としてカーボン繊維を用いた。成形に用いる樹脂組成物中、カーボン繊維の含有率を3.1質量%とした。潤滑剤として、8.0質量%のPTFEを用いた。有機繊維は用いなかった。
<比較例5>
ベース樹脂としてナイロン66を用い、無機繊維としてカーボン繊維を用いた。成形に用いる樹脂組成物中、カーボン繊維の含有率を7.0質量%とした。潤滑剤として、5.4質量%のPTFEを用いた。有機繊維は用いなかった。
<比較例6>
ベース樹脂としてナイロン46を用い、有機繊維として長さ1mmのパラ系アラミド繊維(帝人社製、商品名「テクノーラ」)を用いた。成形に用いる樹脂組成物中、アラミド繊維の含有率を7.0質量%とした。潤滑剤として、15.0質量%のPTFEを用いた。無機繊維は用いなかった。
<比較例7>
ベース樹脂としてナイロン66を用い、有機繊維として長さ1mmのパラ系アラミド繊維(帝人社製、商品名「テクノーラ」)を用いた。成形に用いる樹脂組成物中、アラミド繊維の含有率を3.0質量%とした。潤滑剤として、10.0質量%のPTFEを用いた。無機繊維は用いなかった。
<比較例8>
ベース樹脂としてナイロン66を、無機繊維としてカーボン繊維を用いた。有機繊維としては、長さ1mmのパラ系アラミド繊維(帝人社製、商品名「トワロン1684」)のカットファイバーを用いた。
カーボン繊維の含有率は、樹脂全体の1.0質量%とし、アラミド繊維の含有率は、樹脂全体の2.0質量%とした。潤滑剤としては、樹脂全体の14.0質量%のPTFEを用いた。
なお、比較例9〜19に係るウエイトローラーでは、比較例8に係るウエイトローラーと同様に、ベース樹脂はいずれもナイロン66とし、アラミド繊維として2質量%のトワロン1684を用いた。また、比較例9〜19に係るウエイトローラーでは、比較例8で用いたカーボン繊維と同一のカーボン繊維を用い、潤滑剤として同一のPTFEを用いた。
<比較例9>
成形に用いる樹脂組成物中、カーボン繊維の含有率を2.0質量%、アラミド繊維の含有率を2.0質量%とし、PTFEの含有率を10.0質量%とした。
<比較例10>
成形に用いる樹脂組成物中、カーボン繊維の含有率を2.0質量%、アラミド繊維の含有率を2.0質量%とし、PTFEの含有率を12.0質量%とした。
<比較例11>
成形に用いる樹脂組成物中、カーボン繊維の含有率を2.0質量%、アラミド繊維の含有率を2.0質量%とし、PTFEの含有率を13.0質量%とした。
<比較例12>
成形に用いる樹脂組成物中、カーボン繊維の含有率を2.0質量%、アラミド繊維の含有率を2.0質量%とし、PTFEの含有率を14.0質量%とした。
<比較例13>
成形に用いる樹脂組成物中、カーボン繊維の含有率を3.0質量%、アラミド繊維の含有率を2.0質量%とし、PTFEの含有率を10.0質量%とした。
<比較例14>
成形に用いる樹脂組成物中、カーボン繊維の含有率を1.0質量%、アラミド繊維の含有率を2.0質量%とし、PTFEの含有率を14.0質量%とした。
<比較例15>
成形に用いる樹脂組成物中、カーボン繊維の含有率を2.0質量%、アラミド繊維の含有率を2.0質量%とし、PTFEの含有率を10.0質量%とした。
<比較例16>
成形に用いる樹脂組成物中、カーボン繊維の含有率を2.0質量%、アラミド繊維の含有率を2.0質量%とし、PTFEの含有率を12.0質量%とした。
<比較例17>
成形に用いる樹脂組成物中、カーボン繊維の含有率を2.0質量%、アラミド繊維の含有率を2.0質量%とし、PTFEの含有率を13.0質量%とした。
<比較例18>
成形に用いる樹脂組成物中、カーボン繊維の含有率を2.0質量%、アラミド繊維の含有率を2.0質量%とし、PTFEの含有率を14.0質量%とした。
<比較例19>
成形に用いる樹脂組成物中、カーボン繊維の含有率を3.0質量%、アラミド繊維の含有率を2.0質量%とし、PTFEの含有率を10.0質量%とした。
<比較例20〜23>
被覆部材を構成する樹脂組成物の組成は、比較例3と同じとした。被覆部材の厚みは1.5mmとした。
−ヒートサイクル試験−
実施例1〜10及び比較例1〜19に係るウエイトローラーに対し、−20℃で30分間、130℃で30分間の処理を1サイクルとして、1000サイクルまでの処理を行い、ヒートショック耐性を評価した。約200サイクルごとにクラック及び破断の有無を目視により確認した。
実施例1〜4及び比較例1〜7に係るウエイトローラーの処理は、冷熱衝撃装置(エスペック社製、型番:TSA−41L−A)を用いて行い、実施例5〜10、比較例8〜19に係るウエイトローラーの処理は、冷熱衝撃装置(エスペック社製、型番:TSE−11−A)を用いて行った。
−摩擦摩耗試験−
JIS K 7218−1986に準拠した摩擦摩耗試験を行った。
図6は、樹脂の摩擦摩耗試験を説明するための図である。同図に示すように、被覆部材と同じ組成の樹脂を用いて内径が20mmで外径が25.6mmの円筒形の試験片62を作製した。この試験片62を、ADC12(銅、ケイ素、アルミニウム等を含む合金)からなる円板状の相手材60に接触させ、1600Nの荷重をかけた状態で、20mm/sの速度で回転摺動させる。この処理を20時間行った後、試験片62の摩耗量を測定し、比摩耗量を求めた。
<実施例11〜13>
実施例5、8における被覆部材と同じ組成の樹脂を用いて試験片62を作製し、これを実施例11とした。実施例6、9における被覆部材と同じ組成の樹脂を用いて試験片62を作製し、これを実施例12とした。実施例7、10における被覆部材と同じ組成の樹脂を用いて試験片62を作製し、これを実施例13とした。
<比較例24>
また、比較例13、19における被覆部材と同じ組成の樹脂を用いて試験片62を作製し、これを比較例24とした。
−吸水時の寸法変化測定−
一部の実施例及び比較例に係るウエイトローラーについて、吸水時の軸方向長さ(全長)の変化率を測定した。具体的には、ウエイトローラーを50℃、湿度95%の環境下に置き、所定の期間の経過時に軸方向の長さを測定した。吸水による全長変化率は、{(測定時のウエイトローラーの軸方向長さ)−(ウエイトローラーの初期の軸方向長さ)}/(ウエイトローラーの初期の軸方向長さ)により算出した。
−評価結果−
表1に、実施例1〜4及び比較例1〜7に係るウエイトローラーのヒートサイクル試験結果を示す。また、表2に、実施例5〜10及び比較例8〜19に係るウエイトローラーのヒートサイクル試験結果を示す。
Figure 2020193711
Figure 2020193711
比較例1、3の比較、及び比較例4、5の比較から、補強繊維としてカーボン繊維のみを用いる場合、3質量%の含有率では成形方法によらず、破断が生じたのに対し、7質量
%の含有率では、いずれの成形方法であってもクラックや破断が生じないことが分かった。
また、比較例3、6、7の結果から、補強繊維としてアラミド繊維のみを用いた場合には、繊維の含有率を高くしてもクラック又は破断の発生を防ぐことができないことが分かった。
これに対し、実施例1、3、4の結果より、無機繊維の含有率を3%程度にしても、1質量%以上7質量%以下のアラミド繊維と共に用いることで、クラックや破断の発生を効果的に防ぐことができることが確認された。
また、実施例2の結果から、カーボン繊維だけでなくガラス繊維であっても、アラミド繊維と共に用いることで、優れた補強効果を発揮できることが分かった。
なお、比較例9、10及び比較例15、16の比較から、PTFEの含有率が大きくなると、クラックや破断を生じやすくなることが示唆された。
しかし、実施例1〜10の結果から、無機繊維の含有率を3%以上とし、アラミド繊維の含有率を1質量%以上7質量%以下とすることで、PTFEの含有率が15%以上の場合でも、クラックや破断の発生を効果的に防ぐことができることが分かった。
表3は、摩擦摩耗試験の結果を示している。また、図7は、表3に記載された結果に基づき、樹脂組成物中のPTFEの含有率(配合率)と比摩耗量との関係を示す図である。
Figure 2020193711
表3及び図7に示す結果から、潤滑剤であるPTFEの含有率が12質量%以上の場合、PTFEの含有率が10質量%の場合に比べて比摩耗量が大幅に低減されることが分かった。また、PTFEの含有率が少なくとも12質量%以上14質量%以下の範囲では、PTFEの含有率が大きくなっても比摩耗量の減少量は比較的小さいことが確認できた。
表4には、外径が18mmである実施例及び比較例に係るウエイトローラーについての吸水時の軸方向長さ変化率(すなわち、全長変化率)を示し、表5には、外径が20mmである実施例及び比較例に係るウエイトローラーについての吸水時の全長変化率を示す。
また、図8は、表4に記載された結果を示す図であり、図9は、表5に記載された結果を示す図である。
Figure 2020193711
Figure 2020193711
表4、5及び図8、9に示す結果から、ウエイトローラーの外径によらず、ベース樹脂をナイロン66とし、被覆部材にカーボン繊維が2質量%〜3質量%、アラミド繊維が2質量%程度含まれていれば、吸水による寸法変化を小さく抑えることができることが確認
できた。
これに対し、比較例20〜23に係るウエイトローラーでは、実施例5〜10及び比較例9、10、12、13、15、16、18、19に係るウエイトローラーに比べて吸水による全長変化率が非常に大きくなっていた。これは、実施例5〜10及び比較例9、10、12、13、15、16、18、19に係るウエイトローラーでは、ベース樹脂として吸水性の低いナイロン66を使用しているためと考えられる。
また、比較例20と比較例21との比較、比較例22と比較例23との比較から、被覆部材を構成する樹脂組成物が同じ組成を有していても、インサート成形により作製されたウエイトローラーの方が圧入工程により作製されたウエイトローラーよりも吸水時の全長変化率を小さくできることが分かった。
これは、インサート成形によれば、径方向だけでなく軸方向にも成形収縮力が発生するので、被服部材の構成材料が同じである場合でも、寸法変化が抑えられたためと考えられる。
また、被覆部材中カーボン繊維の含有率が3質量%である場合には、カーボン繊維の含有率が2質量%である場合に比べて吸水による寸法変化を若干抑えられることも確認できた。
以上説明したように、本明細書に開示されたウエイトローラーは、例えば二輪車等の無段変速装置に用いることができる。
1 ウエイトローラー
3 重量調整部材
5 被覆部材
7 外周面
10a、10b コーナー部を覆う部分
11 ディスクゲート跡
13 ゲート跡
21 コアピン
23 ディスクゲート
25、43 ランナー
27 第1の金型
29、41 第2の金型
31、39 樹脂
45 ピンゲート
51 固定プレート
53 可動プレート
55 プーリ
57 ガイドプレート
59 Vベルト
61 回転軸

Claims (3)

  1. 円筒状の重量調整部材と、前記重量調整部材の外周面上に設けられた被覆部材とを備えた円筒状のウエイトローラーであって、
    前記被覆部材は、ポリアミドをベース樹脂とする樹脂組成物、補強繊維及び潤滑剤を含み、
    前記被覆部材における前記補強繊維の含有率は、3.0質量%以上であり、
    前記補強繊維は、少なくとも一部に屈曲部を有して引張弾性率が7GPa以上110GPa以下の有機繊維を含んでいる
    ことを特徴とするウエイトローラー。
  2. 請求項1に記載のウエイトローラーにおいて、
    前記補強繊維の含有率は、3.5%以上である
    ことを特徴とするウエイトローラー。
  3. 請求項1又は2に記載のウエイトローラーにおいて、
    前記被覆部材における前記潤滑剤の含有率は、14質量%以上20質量%以下である
    ことを特徴とするウエイトローラー。
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