JP2931688B2 - 写真用処理剤組成物 - Google Patents

写真用処理剤組成物

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、露光済みのハロゲン化
銀写真感光材料を処理する写真用処理剤組成物の改良に
関し、更に詳しくは、有害な作用をする金属イオンを封
鎖するため、写真用として新規なキレート剤を含有させ
た写真用処理剤組成物の改良に関するものである。
【0002】
【発明の背景】一般に、露光済みのハロゲン化銀写真感
光材料を処理して画像を得るためには、現像液、定着液
をはじめとして、各種の処理液による処理が必要であ
る。殊にカラー画像を得るためには、更に多くの処理工
程が必要である。これらの処理に際して用いられる処理
液は、多数の成分を含んでいるから、その調製の時用い
る水の中にカルシウム、マグネシウム、鉄などの金属イ
オンが含まれていると、これらと反応して沈澱やスラッ
ジを生ずる。そして自動現像処理機に付属しているフィ
ルターの目づまりを起したり、或いは処理中の写真感光
材料面に付着して汚染を生ずる等の欠点があった。
【0003】又、処理液の調製の際純水を用いてこれを
防いでも、写真感光材料から処理液中に金属イオンが溶
出したり、前の処理工程から金属イオンが持ち込まれた
りするため、処理液中の沈澱やスラッジの発生を完全に
防止するのは甚だ困難であった。
【0004】更に、処理液中に含まれている各種成分中
のあるものは、金属イオンの作用によりその酸化や分解
が促進され効力を失うため、この処理液で処理すると、
カブリの発生や感光度の低下を来たす等の欠点があっ
た。
【0005】処理液に対する金属イオンの好ましくない
これらの作用を防止するため、金属イオンを封鎖するい
わゆるキレート剤を写真処理剤組成物中に添加配合する
ことが提案され実用されている。例えば、英国特許52
0,593号によって提案されたヘキサメタリン酸ナト
リウムのようなポリリン酸塩、米国特許321,445
号によって提案されたアルキリデンジホスホン酸、米国
特許3,201,246号で提案されたアミノポリメチ
レンホスホン酸及びエチレンジアミン四酢酸で代表され
るアミノポリカルボン酸などを挙げることができる。
【0006】しかしながら、これらのキレート剤を配合
した場合も、実用上は種々欠点があって満足し得ないの
が実情である。即ち、ポリリン酸塩は金属イオン封鎖力
が小さく、重金属イオンに対しては特に弱いため実用に
供し得ない。アルキリデンジホスホン酸は、カルシウム
イオンとナトリウムイオンとがある濃度以上共存すると
き、固形沈澱物を発生して、自動現像処理機に障害を起
す問題点がある。エチレンジアミン四酢酸で代表される
通常のアミノポリカルボン酸や、アミノトリメチレンホ
スホン酸で代表されるアミノポリメチレンホスホン酸は
金属イオン封鎖力が大きく優れたものであるが、ヒドロ
キシルアミンを含むカラー現像液では、金属イオンの存
在下にヒドロキシルアミンを分解し、この現像液で処理
するとカブリを発生する欠点があり、又黒白現像液にお
いては、現像主薬の酸化を促進して保存性を劣化させ、
高感度フィルムに対して著しいカブリを起す欠点があ
る。
【0007】以上のように、従来提案されたキレート剤
はいずれも何等かの欠点があり、写真用処理剤組成物に
用いて充分満足する効果が得られていないのが実状であ
る。
【0008】更に、近年の低公害化等の社会環境的要請
及び低コスト化等の経済的要請から写真用処理液の補充
量は益々低減される傾向にあり、このため写真感光材料
から溶出したカルシウム等の金属イオンも蓄積量が増加
する傾向にある。
【0009】更に近年、地球環境保護の立場から生分解
性の良い素材の使用が望まれてきているが、従来キレー
ト剤として最も良く用いられてきたエチレンジアミン四
酢酸やジエチレントリアミン五酢酸は、殆ど生分解しな
いことが知られており、一部地域では使用規制の動きさ
えある。しかるに、本発明のキレート剤は、生分解性が
極めて優れており、この意味で極めて優れた素材でもあ
る。
【0010】
【発明の目的】本発明はこれらの問題を解決するために
なされたもので、第1の目的は、金属イオンの存在によ
る沈澱やスラッジの発生がない、安定な処理液が得られ
る写真用処理剤組成物を提供するにある。
【0011】第2の目的は、自動現像処理機により処理
を行なう際、長期に亙って安定な処理ができ、付属のフ
ィルターの目詰まりを起さない写真用処理剤組成物を提
供するにある。
【0012】第3の目的は、生分解性に優れ、地球環境
の保護に適した写真用処理剤組成物を提供するにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者は前記目的を達
成するため鋭意検討した結果、多数のキレート剤のうち
特定の化合物を使用するとき、前記問題点を解決し得る
ことを見出し、本発明を完成したものである。
【0014】即ち、本発明に係る写真用処理剤組成物
(直接ポジカラー発色現像液用処理剤組成物を除く。)
は下記一般式[A]及び[B]で示される化合物の少な
くとも一種を含有することを特徴とする。 一般式[A]
【0015】
【化3】 [式中、A1〜A4は−CH2OH又は−COOMを表わ
し、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。Mは
水素原子、アルカリ金属又はその他のカチオン(第2鉄
イオンである場合を除く。)を表わす。Xは炭素数2〜
6の置換又は未置換のアルキレン基を表わす。] 一般式[B]
【0016】
【化4】 [式中、A1 〜A4 は前記一般式[A]で定義したもの
と同義であり、nは1〜8の整数を表わす。またB1
びB2 は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ
炭素数1〜5の置換又は未置換のアルキレン基を表わ
す。]
【0017】
【発明の具体的構成】以下、一般式[A]、[B]で示
される化合物について詳説する。式中、A1〜A4はそれ
ぞれ同一であっても異なっていてもよく、−CH2
H又は−COOMを表わす。Mは水素原子、アルカリ金
属(例えばナトリウム、カリウム)又はその他のカチオ
ン(例えば、アンモニウム、メチルアンモニウム、トリ
メチルアンモニウム等)を表わす。Xは炭素数2〜6の
置換又は未置換のアルキレン基を表わす。但し、Mが第
2鉄イオンである場合には本発明から除かれる。
【0018】又、B1 及びB2 は同一であっても異なっ
ていてもよく、それぞれ炭素数1〜5の置換又は未置換
のアルキレン基を表わす。Xで表わされるアルキレン基
としては、エチレン、プロピレン、ブチレン等が挙げら
れる。又、B1 及びB2 で表わされるアルキレン基とし
ては、メチレン、エチレン、プロピレン等が挙げられ
る。置換基としては、水酸基、炭素数1〜3のアルキル
基(例えば、メチル、エチル等)等が挙げられる。nは
1〜8の整数を表わし、好ましくは1〜4である。以下
に前記一般式[A]及び[B]で示される化合物の好ま
しい具体例を挙げるが、これらに限定されるものではな
い。
【0019】
【化5】
【0020】
【化6】
【0021】上記一般式[A]、[B]で示される化合
物は一般に知られている方法で合成することができる。
【0022】これらの化合物を写真用処理剤組成物中に
配合する量は、仕上り処理液1リットル当たり0.1〜
50gが好ましく、より好ましくは0.5〜10gであ
る。配合に際しては、前記一般式で示される化合物を2
種以上組合せ使用してもよく、又他のキレート剤と組合
せて使用しても差支えない。配合には、処理液を調製す
るとき他の成分と共に処理液中に加えてもよいし、又、
他の成分と共に粉末状のままキットの中に、或いは濃厚
液キットの中に配合してもよい。
【0023】本発明の写真用処理剤組成物は、ハロゲン
化銀写真感光材料を処理するためのあらゆる処理液に適
用することができる。例えば、一般の黒白用現像液、リ
バーサルフィルム用第1現像液、リス用伝染現像液、カ
ラー用発色現像液(直接ポジカラー発色現像液は除
く。)、漂白液、定着液、漂白定着液、停止液、硬膜
液、安定液、カブリ液及び調色液等が挙げられるが、こ
れらに限定されるものではない。又、本発明の写真用処
理剤組成物はカラーフィルム、カラー印画紙、リバーサ
ルフィルム、一般用黒白フィルム、X線用フィルム、印
刷用リスフィルム及びマイクロフィルム等、すべてのハ
ロゲン化銀写真感光材料の処理に使用することができ
る。
【0024】
【実施例】以下、実施例によって本発明を更に詳細に説
明するが、本発明の実施態様がこれに限定されるもので
はない。
【0025】実施例1 写真用処理剤組成物として、下記組成のカラー印画紙用
現像液を調製した。
【0026】 炭酸カリウム 30g 臭化カリウム 5mg 塩化カリウム 1.2g ジエチレングリコール 5g 亜硫酸カリウム 0.5g ヒドロキシルアミン硫酸塩 1g ベンジルアルコール 2g 3−メチル−4−アミノ−N−エチル−N−(β−メタンスルホンアミドエチ ル)アニリン硫酸塩 6.0g 水酸化カリウム 1.4g 蛍光増白剤(チノパールSFP) 2g 水にて1リットルに仕上げ、水酸化カリウム及び20%
硫酸を用いてpH10.1に調整した。
【0027】上記現像液を試料(A)とし、これに前記
例示化合物A−1を2g/lの割合で加えたものを試料
(B)とした。同様の例示化合物B−1を2g/l加え
たものを試料(C)、ヘキサメタリン酸ナトリウム(H
MPと略す)を2g/l加えたものを試料(D)、1−
ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸(HED
Pと略す)の60%溶液を3.3g/l加えたものを試
料(E)、エチレンジアミン四酢酸(EDTAと略す)
を2g/l加えたものを試料(F)及びニトリロトリメ
チレンホスホン酸(NTPと略す)を2g/l加えたも
のを試料(G)とし7種の試料を作成した。
【0028】各試料は加えた物質によりpHが変化して
いるので、水酸化カリウム又は希硫酸を用いて、pHを
それぞれ10.1となるよう調整し、次の各実験を行っ
た。各実験の結果は最後にまとめて示す。
【0029】実験1 上記の現像液試料(A)〜(G)に、第2鉄イオン1.
5ppmと銅イオン0.5ppmをそれぞれ添加し、3
5℃で7日間放置した後、ヒドロキシルアミンを定量分
析し、その減少率を求めた。
【0030】実験2 紙支持体の片面にポリエチレンを、別の面の第1層側に
酸化チタンを含有するポリエチレンをラミネートした支
持体上に以下に示す構成の各層を塗設し、多層カラー感
光材料を作成した。塗布液は下記のごとく調製した。 第1層塗布液 イエローカプラー(Y−1)26.7g、色素画像安定
化剤(ST−1)10.0g、(ST−2)6.67
g、添加剤(HQ−1)0.67gを高沸点溶剤(DN
P)6.67gに酢酸エチル60mlを加え溶解し、こ
の溶液を20%界面活性剤(SU−1)7mlを含有す
る10%ゼラチン水溶液220mlに超音波ホモジナイ
ザーを用いて乳化分散させてイエローカプラー分散液を
作製した。この分散液を下記条件にて作製した青感性ハ
ロゲン化銀乳剤(銀10g含有)と混合し第1層塗布液
を調製した。
【0031】第2層〜第7層塗布液も上記第1層塗布液
と同様に調製した。
【0032】また、硬膜剤として第2層及び第4層に
(H−1)を、第7層に(H−2)を添加した。塗布助
剤としては、界面活性剤(SU−2)、(SU−3)を
添加し、表面張力を調整した。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【化7】
【0036】
【化8】
【0037】
【化9】
【0038】
【化10】
【0039】[青感性ハロゲン化銀乳剤の調製方法]4
0℃に保温した2%ゼラチン水溶液1000ml中に下
記(A液)及び(B液)をpAg=6.5、pH=3.
0に制御しつつ30分かけて同時添加し、更に下記(C
液)及び(D液)をpAg=7.3、pH=5.5に制
御しつつ180分かけて同時添加した。
【0040】このとき、pAgの制御は特開昭59−4
5437号記載の方法により行い、pHの制御は硫酸ま
たは水酸化ナトリウムの水溶液を用いて行った。 (A液) 塩化ナトリウム 3.42g 臭化カリウム 0.03g 水を加えて 200ml (B液) 硝酸銀 10g 水を加えて 200ml (C液) 塩化ナトリウム 102.7g 臭化カリウム 1.0g 水を加えて 600ml (D液) 硝酸銀 300g 水を加えて 600ml
【0041】添加終了後、花王アトラス社製デモールN
の5%水溶液と硫酸マグネシウムの20%水溶液を用い
て脱塩を行った後、ゼラチン水溶液と混合して平均粒径
0.85μm、変動係数(σ/r)=0.07、塩化銀
含有率99.5モル%の単分散立方体乳剤EMP−1を
得た。
【0042】上記乳剤EMP−1に対し、下記化合物を
用い50℃にて90分化学熟成を行い、青感性ハロゲン
化銀乳剤(Em−B)を得た。
【0043】 チオ硫酸ナトリウム 0.8mg/モルAgX 塩化金酸 0.5mg/モルAgX 安定剤(STAB−1) 6×10−4モル/モルAgX 増感色素(BS−1) 4×10−4モル/モルAgX 〃 (BS−2) 1×10−4モル/モルAgX
【0044】[緑感性ハロゲン化銀乳剤の調製方法]
(A液)と(B液)の添加時間及び(C液)と(D液)
の添加時間を変更する以外はEMP−1と同様にして、
平均粒径0.43μm、変動係数(σ/r)=0.0
8、塩化銀含有率99.5モル%の単分散立方体乳剤E
MP−2を得た。
【0045】EMP−2に対し、下記化合物を用いて5
5℃で120分化学熟成を行い、緑感性ハロゲン化銀乳
剤(Em−G)を得た。
【0046】 チオ硫酸ナトリウム 1.5mg/モルAgX 塩化金酸 1.0mg/モルAgX 安定剤(STAB−1) 6×10−4モル/モルAgX 増感色素(GS−1) 4×10−4モル/モルAgX
【0047】[赤感性ハロゲン化銀乳剤の調製方法]
(A液)と(B液)の添加時間及び(C液)と(D液)
の添加時間を変更する以外はEMP−1と同様にして、
平均粒径0.50μm、変動係数(σ/r)=0.0
8、塩化銀含有率99.5モル%の単分散立方体乳剤E
MP−3を得た。
【0048】EMP−3に対し、下記化合物を用いて6
0℃で90分化学熟成を行い、赤感性ハロゲン化銀乳剤
(Em−R)を得た。
【0049】 チオ硫酸ナトリウム 1.8mg/モルAgX 塩化金酸 2.0mg/モルAgX 安定剤(STAB−1) 6×10−4モル/モルAgX 増感色素(RS−1) 4×10−4モル/モルAgX
【0050】
【化11】
【0051】以上のようにして作ったカラー印画紙に、
感光計を用いて白色段階露光を与えた後、実験1で7日
間放置した後の現像液試料(A)〜(G)をそれぞれ用
いて、次の工程に従って処理を行った。
【0052】
【0053】使用した漂白定着液の組成は下記の通りで
ある。
【0054】 エチレンジアミン四酢酸 4g 亜硫酸アンモニウム(50%溶液) 30ml チオ硫酸アンモニウム(70%溶液) 140ml アンモニウム(28%溶液) 30ml エチレンジアミン四酢酸鉄(III)ナトリウム 70g 水にて1リットルに仕上げた。
【0055】上記発色現像処理を終ったものについて、
PDA65型光電濃度計(コニカ株式会社製)を用いて
未露光部ブルー反射濃度のカブリ濃度を測定した。
【0056】実験3 現像液試料(A)〜(G)にそれぞれカルシウムイオン
200ppmとナトリウムイオン3200ppmとを加
え、室温で7日間放置し沈澱の発生状況を観察した。以
上の実験1〜3の結果をまとめて表3に示す。
【0057】
【表3】
【0058】上表の結果が示すように、本発明による現
像液試料(B)及び(C)はヒドロキシルアミンの分解
が少なく、カブリも少なく、金属イオンの存在による沈
澱の発生もないことがわかる。
【0059】一方、比較の試料(E)においては、ヒド
ロキシルアミンの分解抑制とカブリ発生についてはある
程度効果があるものの、金属イオンの存在による沈澱発
生には全く効果がなく使用に耐えないことが判る。
【0060】更に比較の試料(F)は、沈澱発生に対し
ては本発明に用いるキレート剤同様効果があるが、ヒド
ロキシルアミンの分解を促進し、著しいカブリを発生し
使用に耐えない。試料(A)、(D)及び(G)も、ヒ
ドロキシルアミンを分解し、カブリを生じる上、金属イ
オンの存在による沈澱発生防止力も弱く、実用に適しな
いものである。
【0061】実施例2 写真用処理剤組成物として、下記組成のリバーサルフィ
ルム用第1現像液(黒白現像液)を調製した。
【0062】 亜硫酸カリウム(50%溶液) 45ml 臭化ナトリウム 2.2g チオシアン酸ナトリウム 1.0g 溶化カリウム 3mg ジエチレングリコール 20ml 1−フェニル−3−ピラゾリドン(商品名フェニドン) 0.60g ハイドロキノン 6.0g 炭酸カリウム 28.2g 水酸化カリウム 2.8g 水にて 1リットルとする
【0063】上記現像液を試料(H)とし、これにエチ
レンジアミン四酢酸(EDTAと略す)を2g/lの割
合で加えたものを試料(I)とした。同様に例示化合物
A−1を2g/lの割合で加えたものを試料(J)、エ
チレンジアミン四メチレンホスホン酸(EDTPと略
す)を2g/lを加えたものを試料(K)とし計4種の
試料を作成した。各試料は、水酸化カリウム又は20%
硫酸を用いて、pHが9.90となるよう調整した。
【0064】以上の各試料に、第2鉄イオンを2.5p
pm及びカルシウムイオンを220ppm添加し、35
℃7日間保存した後、定量分析を行ってフェニドンの減
少率を測定し、又沈澱の発生状況を観察した。得られた
結果を表4に示す。
【0065】
【表4】
【0066】上表の結果が示すように、比較試料(I)
は金属イオンの存在による沈澱の発生を有効に防止する
ものの、現像主薬であるフェニドンの分解を促進させ
る。一方の比較試料(H)及び(K)はフェニドンの分
解に効果がないか、あるいは少なく、沈澱発生防止にも
余り効果がない。これに反し、本発明に用いるキレート
剤を含む試料(J)は、沈澱発生を有効に防止すると共
に、フェニドンの分解も良好に抑制していることがわか
る。
【0067】実施例3 写真用処理剤組成物として、下記組成の漂白液(1)、
(2)の2種、定着液、漂白定着液を調製し、両液につ
いて金属イオンによる沈澱発生に対する例示化合物の効
果を試験した。
【0068】 漂白液(1) エチレンジアミン四酢酸鉄(III)アンモニウム(2水塩) 120g 臭化アンモニウム 100g 水を加えて1リットルとする。
【0069】 漂白液(2) 1,3−ジアミノプロパン四酢酸鉄(III)アンモニウム 125g 硝酸ナトリウム 40g 臭化アンモニウム 150g 氷酢酸 40g 水を加えて1リットルとする。
【0070】 定着液 チオ硫酸アンモニウム 200g 亜硫酸アンモニウム 20g メタ重亜硫酸カリウム 10g 水にて1リットルとする。
【0071】 漂白定着液 エチレンジアミン四酢酸鉄(III)アンモニウム 60g 亜硫酸アンモニウム(40%溶液) 20ml チオ硫酸アンモニウム(70%溶液) 200ml アンモニア水(28%溶液) 30ml 水にて1リットルとする。
【0072】上記漂白液(1)、(2)2種、定着液及
び漂白定着液について、そのままのものを比較用とし、
また例示化合物A−1〜A−4、B−1〜B−4をそれ
ぞれ4g/lの割合で添加して32種の本発明試料を作
った。これらの液はアンモニウム水又は酢酸を用いて、
漂白液(1)についてはpH6.0、漂白液(2)につ
いてはpH4.2、定着液についてはpH6.8、漂白
定着液についてはpH7.1となるよう調整し、それぞ
れの液にカルシウムイオンを500ppm添加した。
【0073】これを放置したとき、何も加えない比較用
のものは定着液及び漂白定着液のいずれも甚だしい沈澱
を生じたが、本発明に係る化合物を添加したものは何等
沈澱が発生しなかった。
【0074】実施例4 写真用処理剤組成物として、下記組成の安定液を調整
し、実施例3で用いた漂白定着液を10%添加し、硫化
による浮遊物の発生防止効果を試験した。
【0075】 安定液 5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン 0.02g 2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン 0.02g エチレングリコール 1.0g 2−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン 0.01g ベンゾトリアゾール 1g アンモニア水(28%) 3ml 水で1リットルとし、水酸化カリウム及び20%硫酸で
pH8.0に調整した。
【0076】上記安定液について、そのままのものを比
較用とし、例示化合物B−1〜B−4をそれぞれ3g/
lの割で添加した4種の本発明試料を作った。
【0077】これらの安定液は、KOH又は20%硫酸
で、pH8.0となる様に調整し、それぞれの液に、カ
ルシウムイオンを100ppm添加して放置した。この
結果、何も加えない比較用のものは、2日で沈澱が生じ
表面に浮遊物が発生したが、例示化合物B−1〜B−4
を添加した本発明試料は10日後でも何等異常が認めら
れなかった。更に、黴の発生についても効果が認められ
た。
【0078】実施例5 写真用に一般的に用いることが知られているキレート
剤、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレン
トリアミン五酢酸(DTPA)、N−ヒドロキシエチル
エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、例示化合物A
−1及びB−1について、OECD化学品テストガイド
ラインの301C修正MITI試験(I)(1981年
5月12日採択)に従って生分解度を求めた。この際、
例示化合物A−1の生分解度を100とした時の相対分
解度を求め結果を表5に示す。
【0079】
【表5】
【0080】上記表5より、本発明のキレート剤は生分
解性が極めて良好であるのに対して、EDTA、DTP
A及びHEDTAは殆ど分解せず、地球環境保護の立場
から本発明のキレート剤は極めて好ましいものであるこ
とが判る。
【0081】
【発明の効果】本発明の写真用処理剤組成物を用いると
きは、次のような優れた効果がある。 (1)金属イオンの作用による処理液中の有効成分の酸
化や分解がなく、長期に亙って処理液の効力を持続さ
せ、常に一定の処理結果が得られる。 (2)金属イオンが処理液中に存在又は混入しても、沈
澱やスラッジの発生がなく、フィルターの目詰まりや被
処理物である写真感光材料を汚染することがない。 (3)生分解性が極めて良好で、地球環境保護の面で好
ましい。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G03C 7/407 G03C 5/305 C09K 3/00 108

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記一般式[A]及び[B]で示される化
    合物の少なくとも一種を含有することを特徴とする写真
    用処理剤組成物(直接ポジカラー発色現像液用処理剤組
    成物を除く。)。 一般式[A] 【化1】 [式中、A1〜A4は−CH2OH又は−COOMを表わ
    し、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。Mは
    水素原子、アルカリ金属又はその他のカチオン(第2鉄
    イオンである場合を除く。)を表わす。Xは炭素数2〜
    6の置換又は未置換のアルキレン基を表わす。] 一般式[B] 【化2】 [式中、A1〜A4は前記一般式[A]で定義したものと
    同義であり、nは1〜8の整数を表わす。またB1及び
    2は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ炭
    素数1〜5の置換又は未置換のアルキレン基を表わ
    す。]
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