JP2930737B2 - カルシウム強化食品およびその製造方法 - Google Patents

カルシウム強化食品およびその製造方法

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JP2930737B2
JP2930737B2 JP2415301A JP41530190A JP2930737B2 JP 2930737 B2 JP2930737 B2 JP 2930737B2 JP 2415301 A JP2415301 A JP 2415301A JP 41530190 A JP41530190 A JP 41530190A JP 2930737 B2 JP2930737 B2 JP 2930737B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、カルシウムを溶解状態
で含有するカルシウム強化食品およびその製造方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】カルシウムの所要量は、年齢、性別によ
り異なるが、現在日本では600mg/日(成人)を推奨
している。しかしながら、過去20年間、日本人のカル
シウム摂取量は所要量を下回っているのが現状であり、
最近の嗜好本位の食事では、ますますカルシウム摂取不
足になりやすい。更に、高齢化が進行する中で、カルシ
ウムの不足は高齢者にとって深刻な問題である骨粗鬆症
の発症にもつながるのである。
【0003】そこで、カルシウムを強化した食品は、今
後ますます必要になると予想されるが、カルシウムの強
化法として、単に添加量を多くするだけでは不十分であ
る。つまり、カルシウムは栄養的に吸収されやすく、利
用されやすい形態で強化されることが望ましいと言え
る。
【0004】水に難溶性又は不溶性のカルシウム塩は、
一般に安価であり、カルシウム強化の目的でよく利用さ
れている。しかしながら、その特性である水への溶解度
の低さが生体における利用効率を低下させており、更
に、液状食品に添加されれば保存中に沈澱しやすい。
【0005】水に難溶性又は不溶性のカルシウム塩の分
散性を改良し沈澱等を生じさせない技術としては、食用
油脂と炭酸カルシウムを混合し、乳化剤で安定化する方
法(特開57−110167)や微細結晶セルロースに
炭酸カルシウムを保持させる方法(特公57−3594
5)、スラリー状形態の炭酸カルシウムを親水性乳化剤
の水溶液と混合処理する方法(特開64−1394
7)、水酸化カルシウムと麦芽糖または乳糖との複合体
を利用する方法(特開平1−95727)、炭酸カルシ
ウムとクエン酸(1:1.4 )と水とを混合し得られる微
細なクエン酸カルシウムをプロセスチーズに強化する方
法(特公平2−21783)等があるが、これらは分散
性の改良が充分でなく一部沈澱を生じたり、風味を損ね
る等の問題がある他、生体利用効率の向上はほとんど望
めないものである。
【0006】それは、これらの方法はいずれも水に難溶
性又は不溶性のカルシウム塩を真に可溶化するものでは
ないためで、水に難溶性又は不溶性のカルシウム塩は、
どんなに微粒化してもそのまま使用したのでは保存中に
沈澱を生じやすく、しかも生体利用効率が低いためであ
る。
【0007】一方、水に可溶性である有機酸カルシウム
塩は保存中の沈澱を起こしにくく安定であるが、一般に
高価であり、しかもカルシウム重量比が相対的に小さい
ことから、添加量を多くしなければならなくなる。ま
た、可溶性のカルシウム塩は、たんぱく質が存在する場
合、たんぱく質と反応し、沈澱を起しやすい。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来技
術の実情に鑑み、水に難溶性又は不溶性のカルシウム塩
を可溶化し、かつその状態を保持したまま、食品に安定
的に添加しうる技術に基づき、カルシウムを強化した食
品及びその製造方法を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、水に難溶
性又は不溶性のカルシウム塩について鋭意研究の結果、
その生体利用効率を高めるとともに、特に液状食品にお
いて、保存中の沈澱やたんぱく質との反応による沈澱生
成を起こさない安定なカルシウムの存在形態を見い出し
本発明に至った。
【0010】即ち、本発明は、水難溶性又は水不溶性カ
ルシウム塩と反応して水難溶性又は水不溶性カルシウム
オキシ酸塩を生じ得るオキシ酸溶液中で、前記カルシウ
ムオキシ酸塩を生じない範囲で前記カルシウム塩を溶解
してなるオキシ酸カルシウム溶液が添加されたカルシウ
ム強化食品である。
【0011】更に、本発明は、水難溶性又は水不溶性カ
ルシウム塩と反応して水難溶性又は水不溶性カルシウム
オキシ酸塩を生じ得るオキシ酸溶液中に、前記カルシウ
ムオキシ酸塩が生じない範囲で前記カルシウム塩を添加
し炭酸ガスを放出させてオキシ酸カルシウム溶液を得、
これを流動状態にある食品に混合する工程を包含するカ
ルシウム強化食品の製造方法である。
【0012】本発明によれば、水に難溶性又は不溶性の
カルシウム塩を可溶化することにより、これらのカルシ
ウム塩の生体利用効率を向上させるとともに、液状食品
における保存中の沈澱形成を生じることなく、また、た
んぱく質の沈澱も引き起こさずに、カルシウムの食品へ
の強化を実現できる。
【0013】水に難溶性又は不溶性のカルシウム塩はい
くら微粒子化しても真に可溶化しないため、沈澱等の問
題を本質的には解決しえない。そこで、これらの塩を可
溶化することが課題となる。
【0014】一般に水に難溶性又は不溶性のカルシウム
塩を溶解するには、酸性液に添加すればよい。例えば、
塩酸溶液等に溶解すれば可溶化する。しかしながら、こ
の場合、たんぱく質との反応性が高まりたんぱく質の沈
澱を生じやすくなり、又、再び中性域に調整しても、や
はり保存中に沈澱を起しやすく、従って、これらの塩を
可溶化しただけでは不充分で、更にたんぱく質との反応
性を抑え、しかも広いpH域において安定的に使用可能
とする必要がある。
【0015】本発明者らは、この点を検討した結果、こ
れらのカルシウム塩をオキシ酸溶液に溶解することによ
って、即ち、更に反応を進めると新たな不溶性のカルシ
ウム塩を生成するその前の段階においてカルシウム塩を
可溶化することによって、安定な可溶性カルシウムキレ
ート化合物が生成しうることを見い出した。このもの
は、食品中に添加されても安定的に存在し、蛋白質との
反応性が低く、加熱殺菌処理等を施すことも可能であ
る。
【0016】以下、本発明を詳述する。
【0017】本発明において、「水難溶性又は水不溶性
カルシウム塩」(以下、単にカルシウム塩という。)と
は、当業界で一般的に水難溶性又は水不溶性に分類され
るカルシウム塩であり、特殊条件下でそのような性質を
呈するものではない。代表的には、炭酸カルシウム、リ
ン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、水酸化カルシ
ウム、硫酸カルシウム及びクエン酸カルシウム等を例示
しうるが、これに限らず同様な性質を有する無機又は有
機酸塩であればよい。
【0018】「カルシウム塩と反応して水難溶性又は水
不溶性カルシウムオキシ酸を生じ得るオキシ酸溶液」と
は、カルシウム塩と反応し、カルシウムをイオン化する
とともに、オキシ酸の有するカルボニル基の水素とイオ
ン交換し、その結果、難溶性又は不溶性の沈澱を新たに
生成するようなオキシ酸の溶液をいう。この沈澱は新た
に生成されたカルシウムオキシ酸塩である。ここでいう
カルシウムオキシ酸塩が水難溶性又は水不溶性であると
は、オキシ酸溶液中で沈澱を生じることをいい、沈澱を
起す機構はどのようなものでもよい。即ち、一般に溶解
性があると認められる例えば乳酸カルシウムも特定条件
下(濃度、pH、温度等の諸条件)においては沈澱を生
じ、従って、本発明でいう水難溶性又は水不溶性カルシ
ウムオキシ酸塩(以下、カルシウムオキシ酸塩とい
う。)に該当する。
【0019】代表的には、クエン酸、酒石酸、乳酸、グ
ルコン酸、リンゴ酸、酢酸等を例示しうるが、好ましく
は、ジ又はトリカルボン酸であるクエン酸、酒石酸等カ
ルボキシル基を複数有するものである。これらは又、オ
キシ酸の中でも酸性の比較的強いものである。特に、ク
エン酸が好ましい。この理由は明らかではないが、後述
する反応機構を促進しうるカルボキシル基の数及び立体
構造が関係し、クエン酸のそれが有効に機能するためと
考えられる。
【0020】「カルシウムオキシ酸塩を生じない範囲で
カルシウム塩を溶解」するとは、オキシ酸溶液にカルシ
ウム塩を溶解していくと一定量は溶解するがそれを越え
ると溶液は白濁し更には沈澱を起す条件に至らない範囲
内でカルシウム塩を溶解するということである。
【0021】溶解状態にあるカルシウムと白濁又は沈澱
を起したカルシウムとではそれらの存在形態が異なる。
本発明はカルシウムの存在形態の変化を利用するもので
ある。次にオキシ酸としてクエン酸、およびカルシウム
塩として炭酸カルシウムを例にとり、反応機構について
説明する。
【0022】クエン酸と炭酸カルシウムの反応において
は、最終的に難溶性のクエン酸カルシウムが生成する。
しかし、特定条件下ではクエン酸カルシウムの生成過程
でキレート化合物と考えられる可溶化状態の化合物が生
成する。これは「化1」に示す様な反応と考えられる。
【0023】
【化1】 つまりCaCO3 はアルカリ金属塩であるから、塩酸や
硝酸等の酸にはCO2 を発生して溶解し、これはクエン
酸においても同様であるが、クエン酸との反応において
は、ある濃度以上のクエン酸とCaCO3 が存在して水
が水和すると、水に難溶性のカルシウム塩が生成する。
クエン酸溶液に可溶化状態のCaCO3 を加熱した場合
にも同様の反応により難溶性の塩が生成しうるので、濃
度及び温度をファクターとしてクエン酸2分子とCa3
分子の結合、更に水4分子の水和まで反応を進ませない
条件下に反応を抑えることが必要となる。
【0024】更に、この反応が可溶化状態でとどまるた
めには、CaCO3 に対してクエン酸が過剰に存在する
ことが必要であることも判明した。
【0025】即ち、カルシウムの可溶化キレート化合物
を生成するためのファクターとして、溶液温度、カルシ
ウム及びオキシ酸の濃度、およびカルシウムとオキシ酸
の濃度比を考慮する必要があり、それぞれを適正化する
ことで目的の安定なキレート化合物が得られる。CaC
3 のクエン酸溶液への概略溶解曲線を図1に示す。同
図は温度条件25℃におけるもので、図中は液が不透
明化した点、は炭酸カルシウムが残存あるいはクエン
酸カルシウムの沈澱が生成した点を示す。本図は、Ca
CO3 13g/dl 程度以上ではクエン酸濃度のいかんを
問わず完全溶解せず、一部クエン酸カルシウムの沈澱等
を生成し、又CaCO3 13g/dl 程度以下では[クエ
ン酸/CaCO3 ]の比が1.5 未満では同様に不溶化物
を生成することが判る。
【0026】ここで、重要なことは、カルシウム塩の構
成比から考えると、[クエン酸/CaCO3 ]=1.28
(クエン酸2分子:CaCO3 3分子)がCaCO3
対するクエン酸の最低必要量になる(中和濃度と考えて
よい)が、実際にはクエン酸は過剰に存在する必要があ
るということで、本例では[クエン酸/CaCO3 ]=
1.5 以上である必要がある。
【0027】次に、第3の要因である温度であるが、こ
れをクエン酸とCaCO3 を例として示せば、表1の様
になる。
【0028】
【表1】 表1に示すように、溶解状態は温度に影響される。一旦
可溶化したものでは濃度により沈澱を生じうる。
【0029】このように可溶化キレート化合物は、オキ
シ酸溶液及びカルシウム塩の濃度、それらの濃度比およ
び溶液温度を適正化してはじめて実現できることが判
る。
【0030】カルシウムのクエン酸による可溶化キレー
ト化合物の構造は明らかでないが、「化2」に示す様な
ものであり、更にOH基も関与すれば、5〜6員環を含
む多座箱体になると考えられる。
【0031】
【化2】 一方、オキシ酸ではない例えばHCl等の強酸では、配
位結合を生ずるよりイオン結合(例えばCaCl2 を生
じる。)が優位になってしまい、可溶化キレート化合物
が生成されない。即ち、単にカルシウムを酸により可溶
化すればよいのではなく、安定な可溶化キレート化合物
にする必要があり、これによりはじめて蛋白質との反応
性が低く、安定なカルシウム溶解状態の実現が可能とな
る。
【0032】図1に示したような溶解曲線は用いるオキ
シ酸により異なるので、実施に当っては事前に個別的に
評価しておく必要がある。
【0033】前述したように、オキシ酸はカルシウム塩
に対して過剰量(中和に必要な理論値より)必要であ
り、少なければ直ちに沈澱を生ずる。沈澱等を生じない
範囲であれば、任意にカルシウム塩を添加でき、この範
囲はオキシ酸カルシウム塩の種類、溶液温度等により異
なる。従って、その範囲を一義的に規定することはでき
ないが、クエン酸とCaCO3 では[クエン酸/CaC
3 ]の使用比率は、1.5 〜3程度が望ましく、クエン
酸による風味への影響(酸味)を考慮すれば、[クエン
酸/CaCO3 ]=2程度が好ましい。[クエン酸/C
aCO3 ]が3を越えてもキレート化合物の生成、安定
には影響はほとんどないが、クエン酸がそれより多くと
も効果はかわらず、又酸性が強く食品への利用が制限さ
れうるので大過剰のクエン酸は不要である。
【0034】一方、酒石酸においては、クエン酸より酸
性が弱く、かつカルボキシル基の距離が離れていること
もあり、クエン酸程キレート剤としての機能が強くない
と考えられるが、実際、[酒石酸/CaCO3 ]の比率
は3〜5が望ましく、しかもCaCO3 溶解量はクエン
酸の25%(1/4)程度である。又、得られるキレー
ト化合物のpH安定性もクエン酸によるもの程ではな
い。
【0035】次に、上述可溶化キレート化合物を含有す
るオキシ酸カルシウム溶液のpHは、結果的に好ましく
は3〜5程度となっている。この溶液中のキレート化合
物はpH変化に対して安定である。即ち、該キレート化
合物の生成過程においては結果的にpHは適正条件を設
定する上で重要な指標となるが、一旦生成されれば、p
H変化に対し安定となる。従って、この溶液にアルカリ
剤を添加してpHを調整することができる。この理由
は、アルカリ剤によるpH調整は、キレート形成後に過
剰に存在するオキシ酸の中和や、キレート中のフリーの
COOH基の中和に主に関与し、キレートの立体構造を
破壊するまでには至らないためと考えられる。但し、N
aOH等の強いアルカリ剤を過剰に使用すれば、当然、
キレートの立体構造は影響を受けるため、pH調整の範
囲は、通常、6〜9程度である。尚、pH6〜9は食品
への応用を勘案すれば充分な調整範囲といえる。
【0036】pH調整に使用できるアルカリ剤として
は、NaOH、KOH、Na2 CO3 、K2 CO3 、又
はNaHCO3 等を例示できる。
【0037】オキシ酸カルシウム溶液中には、キレート
を不安定化する物質は含有しないのが好ましい。例え
ば、HCl等の強酸、又オキシ酸であるが酸性の強度の
相当に異なるもの等である。本発明においては、基本的
に用いるカルシウム塩、オキシ酸、アルカリ剤のいずれ
も2種以上を混合して用いることが可能である。しか
し、場合により、酸性の異なるオキシ酸同士を用いる
と、酸性の弱い方のオキシ酸はキレートを形成せず、か
えって他方のオキシ酸がキレートを形成するのを妨害す
ることがあるので、この点を考慮する。
【0038】尚、前述した通りアルカリ剤の添加による
pHの調整はオキシ酸カルシウム溶液を調製した後であ
り、アルカリ剤をカルシウム塩と同時にあるいは予め添
加しておくことはキレート形成の阻害原因となりうる。
【0039】又、アルカリ剤によるpH調整においてキ
レートの安定性の高いオキシ酸は比較的酸性の強いもの
であり、例えばクエン酸である。酸性が弱くなると安定
性は若干低下する。例えば酒石酸によるキレートではア
ルカリ剤により中和すればキレートの一部は不安定化す
る。従って、酒石酸とのキレートは酸性域、pH3〜6
程度において有効である。
【0040】次に、上述したオキシ酸カルシウム溶液を
添加し、カルシウムを強化する食品としては、添加時に
流動状態であり充分な混合が可能なものであって、強ア
ルカリ性や、強酸性でなければその形態を問わずいずれ
も用いることができる。即ち、グレープ果汁飲料、スポ
ーツ飲料等の弱酸性の飲料、牛乳や加工乳、豆乳等のタ
ンパクを含有し弱酸性〜中性付近の飲料、発酵乳飲料等
のタンパクを含有し酸性付近の飲料、脱脂粉乳、粉末果
汁飲料等の粉末又は顆粒状食品、ヨーグルト等の半固形
食品、豆腐、果汁ゼリー等の固形食品等の食品において
カルシウムの強化を実施しうる。これは、本発明におけ
るキレートが、可溶でありかつタンパクとの反応性が低
く、更にpHの調整が可能という特性を有するためには
じめて実現可能となる。
【0041】キレートによっては安定なpH領域が異な
るので、そのキレートのpH安定性に応じて食品に添加
すればよい。例えば、酒石酸とのキレートはグレープ果
汁等のpHの比較的低い食品に対して極めて有効である
が、クエン酸とのキレートは更に牛乳等のpHが中性付
近のものに対しても充分安定で有効である。
【0042】食品への添加はキレートが充分混合される
状態を達成される限り、制限なく実施できる。又、混合
後はキレートの食品全体に対する濃度が低下するため熱
安定性も向上する。従って、通常、混合後に加熱殺菌処
理を施してもタンパクの沈澱等の反応は顕在化しない。
即ち、キレートを混合した食品は通常のプロセスに従っ
て、その後製造することができ、特別の処理は要しな
い。
【0043】本発明によれば、安定的にカルシウムを食
品に強化可能となり、その添加量は安定なキレートが生
成される範囲内において任意に選択できる。オキシ酸カ
ルシウム溶液中のカルシウム濃度は概ね5%程度まで調
整が可能なので、この溶液を食品中に10%混合すれば
0.5 %(500mg/100g)程度の範囲までカルシウ
ム強化が可能となる。但し、安定性の観点の他、食品の
風味上の観点から添加量は設定されるべきで、pH調整
のアルカリ剤、酸味、等を考慮する。しかし、本発明に
おけるキレートは可溶であり、かつ反応性が低いことか
ら、カルシウム自体が風味へ与える影響は従来技術によ
るカルシウム添加時のそれより大幅に小さい。
【0044】次に、上述したオキシ酸カルシウム溶液の
調製方法について説明する。
【0045】基本的には、水難溶性又は水不溶性カルシ
ウム塩と反応して水難溶性又は水不溶性カルシウムオキ
シ酸塩を生じ得るオキシ酸溶液中に、前記カルシウムオ
キシ酸塩が生じない範囲で前記カルシウム塩を添加し炭
酸ガスを放出させることによりオキシ酸カルシウム溶液
を得ることができる。
【0046】これを具体的に炭酸カルシウムを例にとり
説明すれば、クエン酸を水に溶解し40℃以下、好まし
くは20〜25℃の温度下で攪拌しながら、炭酸カルシ
ウムを[クエン酸/CaCO3 ]=1.5 〜3程度になる
ように少しづつ添加する。溶解中に炭酸ガスが放出する
が、所定量の炭酸カルシウムを溶解後、充分に攪拌して
この炭酸ガスを除去する。ここで特に重要な点は、溶解
条件を常温〜微温下とし、しかも低濃度(CaCO3
度が13%以下)で行うということである。つまり、こ
の溶解反応は、クエン酸に炭酸カルシウムを溶解するこ
とにより、安定な可溶性の複合体、すなわち、キレート
体を生成することにあり、これを高濃度や高温下で行っ
た場合、前述したように不溶性のクエン酸カルシウムを
生成してしまうのである。また、低濃度の溶液において
も、これを85℃以上の温度条件下に数分間置くと、ク
エン酸カルシウムを生成してしまう。すなわち、この溶
解反応は好ましくは常温下において、かつ低濃度で行な
い、安定な可溶性複合体を生成する段階までとし、反応
が進み不溶性のカルシウム塩を生成させないことが重要
である。尚、溶解を低温で行うのは反応が進みすぎて不
溶性のカルシウム塩が形成するのを防ぐためである。
【0047】得られるオキシ酸カルシウム溶液のpHは
3〜5程度であるが、これをNaOH、KOH、Na2
CO3 、K2 CO3 、又はNaHCO3 等のアルカリ剤
によりpH調整しpH6〜9程度にしてもよい。
【0048】本発明におけるカルシウム強化食品中にお
いて、本発明に係るキレートが存在しているか否かを直
接に分析することは困難である。しかし、オキシ酸及び
カルシウムの存在を各々別に測定することにより[オキ
シ酸/カルシウム]の比が推測されるので、この値を使
用原料とのかね合いで評価すれば結果的に検証は可能で
ある。
【0049】
【実施例】以下実施例により、本発明を具体的に説明す
る。
【0050】実施例1:液状栄養組成物 表2に示す基本組成に基づき、以下の工程により、カル
シウムを強化した液状栄養組成物を調製した。脱塩ホエ
ー粉(脱脂率90%以上)10.8kgとWPC(ホエー蛋白濃
縮物)0.4kg を温水35kgに溶解し、更にデキストリン6.
46kgを溶解した。別にカゼイン1.91kgを温水20kgに、炭
酸カリウム76gを加えて溶解し、80℃にて15分攪拌保持
した後、上記溶解液に混合した。クエン酸0.35kgを水14
kg(常温)に溶解し、これに炭酸カルシウム 175gを徐
々に添加し溶解した([クエン酸/CaCO3 ]=2、
カルシウム塩濃度 1.2%)。この溶液を10分程度攪拌保
持した後(pH3.5)、炭酸ソーダ(5%液)にてpH
6.8 近傍に調整し、更に20分程攪拌し、炭酸ガスを充分
に放出させた。なお、pH調整には、苛性ソーダ等他の
アルカリ剤を使用してもよい。炭酸ガスを放出後、この
液を上記混合液に混合し、充分攪拌した。更に、所定量
の水溶性ビタミン類及びタウリン10mgを水3kgに溶解
し、混合した。そして、この混合液を炭酸ソーダ(5%
液)にてpH6.8 近傍に調整した。脂溶性ビタミン類及
びレシチン80gを精製植物油2.5kg に溶解し、これを上
記水溶液に混合し、150kg/cm2 の圧力にて均質化した。
この最終混合液を 140℃、4秒保持条件にてDSI滅菌
処理し、250kg/cm2 の圧力にて均質化後、5℃以下に冷
却し、無菌充填することによって、カルシウム強化液状
栄養組成物を得た。この製品中のカルシウム濃度は70mg
/100gで、製品pHは6.8であった。
【0051】この液状栄養組成物は、風味、色調とも良
好であり、滅菌処理後のたんぱく質の沈澱生成がなく、
保存中の沈澱も殆ど生じないものであった。また、この
栄養組成物を濃縮乾燥し粉末品を調製したところ、この
ものを水に還元しても沈澱を生成しなかった。この粉末
品はいわゆる粉ミルクとして供されるものである。
【0052】
【表2】
【0053】実施例2:乳飲料 脱脂粉乳5.0kg を水18.0kgに溶解し、新鮮な牛乳20.0kg
を混合した。別にクエン酸0.3kg を水15.0kg(常温)に
溶解し、これに炭酸カルシウム0.125kg を徐々に添加し
溶解した([クエン酸/CaCO3 ]=2.4 、カルシウ
ム塩濃度 0.8%)。この溶液を10分攪拌保持した後(p
H3.9)、砂糖5.0kg を添加溶解し、上記溶解液に混合
した。更に砂糖6.0kg 及び耐酸性CMC 0.3kg(15%
液)を添加し、充分攪拌して溶解した後、リンゴ果汁2
0.0kg、着色料0.001kg 及び着香料0.1kg を添加した。
この最終混合液を150kg/cm2 の圧力にて均質化後、140
℃、4秒保持条件にてDSI滅菌処理し、250kg/cm2
圧力にて均質化後、5℃以下に冷却し、無菌充填するこ
とによって、カルシウム強化乳飲料を得た(Ca50mg/1
00g 強化)。
【0054】この乳飲料は爽やかな風味とコクを持ち、
合わせてカルシウムを強化した乳飲料であり、滅菌製品
として長期保存した場合においても、沈澱を生ずること
がなかった。
【0055】実施例3:スポーツ飲料 精製塩0.5kg 、ビタミンC0.05kg、ビタミンB1 塩酸塩
0.03kg、リボフラビン0.03kg、クエン酸ナトリウム1.7k
g 、塩化マグネシウム0.2kg 及び粉末天然香料(レモン
ライム)2.0kg 、無水ブドウ糖80.0kg、果糖12.415kgを
水1260lに溶解した。別に、クエン酸2.4kg を水 240l
(常温)に溶解し、これに炭酸カルシウム0.675kg を徐
々に添加し溶解した([クエン酸/CaCO3 ]=3.
6、カルシウム塩濃度 0.3%)。この溶液を10分攪拌保
持した後、上記溶解液に混合した。充分攪拌した後(p
H3.5)、プレート殺菌機により、93℃、2秒の条件に
て殺菌し、5℃以下に冷却後ガラス瓶容器に充填した。
【0056】このスポーツ飲料は、口当りが爽やかで大
変飲みやすく、不足しがちなカルシウムを120mg/100ml
と高濃度に、しかも吸収しやすい形態で強化できた。
【0057】実施例4:ゼリー グラニュー糖 100gとカラギーナン製剤9gを分散混合
し、これを水560gに加え、加熱溶解した。次に、グラ
ニュー糖 100gとグレープ果汁(5倍濃縮品)25gを加
えた。別に水 200g(常温)に酒石酸2gを溶解し、こ
れに炭酸カルシウム1gを徐々に添加し溶解した([酒
石酸/CaCO3 ]=2、カルシウム塩濃度 0.5%)。
この溶液を10分攪拌保持した後(pH3.9)、上記溶解
液に混合した。更に、クエン酸ソーダ2g、香料1g及
び天然色素を加え、充分攪拌混合した。80℃で5分間殺
菌した後、型に入れ、10℃以下に冷却することにより、
カルシウム強化グレープ果汁ゼリーを得た。
【0058】このゼリーの性状は、糖度22°、果汁分12
%、酸度0.32、pH3.9 であり、果汁の爽やかな風味と
コクをもち、製品 100g当たりカルシウムを40mg強化し
ている。
【0059】
【発明の効果】本発明によれば、水に難溶性又は不溶性
のカルシウム塩をクエン酸及び酒石酸等のオキシ酸溶液
に可溶化することにより、これらのカルシウム塩の生体
利用効率を向上させるとともに、液状食品における保存
中の沈澱形成を生じることなく、また、たんぱく質の沈
澱も引き起こさないというすぐれた性質を付加した食
品、飲料、栄養組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】クエン酸濃度に対する炭酸カルシウムの最大溶
解量を示す模式図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 石山 由美子 埼玉県狭山市新狭山2−3−7 ルミネ ス新狭山302 (56)参考文献 特開 昭56−97248(JP,A) 特開 平2−154663(JP,A) 特開 平1−268638(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) A23L 1/304 A23C 9/156 A23L 1/06 A23L 2/52 - 2/68

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水難溶性又は水不溶性カルシウム塩と
    該水難溶性又は水不溶性カルシウム塩と反応して水難溶
    性又は水不溶性カルシウムオキシ塩を生じ得るオキシ酸
    の水溶液とを混合することで得られ、かつ該水難溶性又
    は水不溶性カルシウム塩が溶解しており、更に該水難溶
    性又は水不溶性カルシウムオキシ酸塩の白濁または沈殿
    が生じていないオキシ酸カルシウム溶液が添加されたこ
    とを特徴とするカルシウム強化食品。
  2. 【請求項2】 オキシ酸カルシウム溶液のpHがアルカ
    リ剤で6−9に調整されたものである請求項1に記載の
    カルシウム強化食品。
  3. 【請求項3】 水難溶性又は水不溶性カルシウム塩と、
    該水難溶性又は水不溶性カルシウム塩と反応して水難溶
    性又は水不溶性カルシウムオキシ酸塩を生じ得るオキシ
    酸の水溶液とを、前記水難溶性又は水不溶性カルシウム
    塩が溶解し、かつ前記水難溶性又は水不溶性カルシウム
    オキシ酸塩の白濁または沈殿が生じない範囲で混合し、
    炭酸ガスを放出させてオキシ酸カルシウム溶液を得、こ
    れを流動状態にある食品に混合する工程を包含すること
    を特徴とするカルシウム強化食品の製造方法。
  4. 【請求項4】 オキシ酸カルシウム溶液にアルカリ剤を
    添加しpHを6−9に調整後、流動状態にある食品に混
    合する請求項3に記載のカルシウム強化食品の製造方
    法。
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DE102005040423A1 (de) * 2005-08-25 2007-03-01 Lahrsow, Jobst, Dr. med. dent. Nahrungsmittelzusatz zur Versorgung mit Mineralstoffen
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