JP2928159B2 - 高速半導体スイッチ回路 - Google Patents

高速半導体スイッチ回路

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体を用いた高
速スイッチに関する。特に、ジャイロトロン高周波発振
装置、レーザ発振装置及びX線発生装置などの高電圧回
路においてオン・オフを高速に行わせて給電させ、これ
らの装置の異常時に給電を高速に遮断して保護するスイ
ッチに適するものである。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】自己消弧形半導体デバ
イスには、GTOなどの50〜150μSと比較的オン
・オフ時間即ちいわゆるスイッチング時間の長いもの
と、近年開発されたIGBTのようにほぼ1.5μS程
度とスイッチング時間の短い半導体デバイスとがある。
このような自己消弧形半導体デバイスを直列接続化して
高電圧用の半導体スイッチを構成して直流電圧源と上記
のような装置との間に直列に接続した保護回路は、スイ
ッチング時間の比較的長いGTOなどを従来用いてい
た。この場合、直列スイッチ内部に構成される並列共振
回路の共振周波数とスイッチング周波数とは重なること
がなかったので、GTOなどの素子が破壊することはな
かった。しかし、GTOなどの比較的スイッチング時間
が長い半導体デバイスを用いることは、負荷の装置の異
常時に給電を高速に遮断するという保護回路としての本
来的な目的の点で不十分であった。
【0003】本発明は、複数の高速半導体スイッチを直
列接続した構成のスイッチ回路であって、高速で且つ高
電圧のスイッチングに耐え得る半導体スイッチ回路を提
供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明の一つの高速半導体スイッチ回路は、直列接
続された複数の高速半導体スイッチから成り、前記高速
半導体スイッチは数マイクロ秒の高速のスイッチング時
間を有し、前記複数の半導体スイッチに直列接続された
1つ以上のローパスフィルタを備え、前記ローパスフィ
ルタは、前記直列接続された複数の高速半導体スイッチ
のみから成る高速半導体スイッチ回路が有する共振作用
をダンピングさせる高周波領域における抵抗成分を有し
且つ低周波領域において低インピーダンスになる特性を
有することを特徴とする。
【0005】上記課題を解決するため、本発明の別の高
速半導体スイッチ回路は、直列接続された複数の高速半
導体スイッチから成り、前記高速半導体スイッチは数マ
イクロ秒の高速のスイッチング時間を有し、前記直列接
続された複数の高速半導体スイッチの両端間に並列接続
され、且つ前記直列接続された複数の高速半導体スイッ
チのみから成る高速半導体スイッチ回路内に発生する共
振波を抑制する直列接続されたコンデンサと抵抗とから
成る共振抑制回路を備えることを特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】初めに、GTOのようなスイッチ
時間の比較的長い半導体スイッチをIGBTのようなス
イッチング時間の短い半導体スイッチに単に置換する場
合に生じる問題を説明し、次いで、その問題を克服した
本発明の好適な実施形態を説明する。かかる単なる置換
は、高速遮断の目的は達成できるが、直列スイッチ内部
に構成される並列共振回路により共振し、直列化したI
GBTの素子の一部を共振による過電圧で破壊してしま
う問題が生じる。かかる問題を、ジャイロトロン高周波
発振装置に直流電圧源から給電している系において、該
装置の異常時に給電を高速に遮断するための半導体スイ
ッチにIGBTを用いた場合を例に以下に説明する。
【0007】核融合プラズマに用いられるジャイロトロ
ン高周波発振装置の高速保護のための半導体スイッチと
しては、DC100KV程度の電圧を遮断する必要があ
る。一方1つのIGBTの耐圧は高いものでも1000
Vのオーダーであるので、当然のことながら1つのIG
BTでは耐圧が不足する。従って、かかる目的のための
半導体スイッチを構成するには、IGBTを100個程
度直列接続する必要がある。図1は、IGBTを100
個直列に接続して構成した半導体スイッチ回路及びその
制御系を、該半導体スイッチ回路を試験する試験回路と
共に示す。図1において、10は最大100kVの可変
直流電圧源を、R1はジャイロトロン高周波発振装置に
相当する負荷抵抗をそれぞれ示す。図1に示されるイン
ダクターL1、ダイオードD1及び抵抗R2から構成さ
れる回路は公知の限流リアクトル12である。半導体ス
イッチ回路14は、図1に示されるように#1から#1
00までの100個のIGBTが直列接続された構成を
有し、直流電圧源10、負荷抵抗R1及び限流リアクト
ル12と直列接続されている。なお、IGBTは170
0V、360A定格の東芝製MG360V1US41で
あり、抵抗R1及びR2、及びインダクターL1の値は
それぞれ16.5Ω、1.5Ω及び3mHである。各I
GBTのコレクタとエミッタ間には、図1に示されるよ
うにダイオードD2、キャパシタC1及び抵抗R3及び
R4から成る公知のスナバー回路16が接続されてい
る。なお、キャパシタC1、及び抵抗R3及びR4の値
は、それぞれ1μF、5Ω及び100kΩである。各I
GBTのゲートには該ゲートを制御するためのゲート回
路18が接続されている。一方、交流電力を受け取るた
めの絶縁変圧器20に高周波電力発生装置22が接続さ
れており、該高周波電力発生装置22は絶縁変圧器20
からの電力を高周波電力に変換する。高周波電力発生装
置22には、各ゲート回路18に1つ設けられているゲ
ート回路用変圧器T#1〜T#100が直列接続されて
おり、高周波電力発生装置22で発生した高周波電力が
ゲート回路用変圧器T#1〜T#100を介して、#1
〜#100のゲート回路18にゲート駆動電力として供
給される。
【0008】各ゲート回路18にはフォトディテクタ
(図示せず)が設けられている。トリガコントロールユ
ニット24は、上位の制御系から半導体スイッチ回路1
4の各IGBTへのオン/オフ信号を受け、それぞれの
ゲート回路18(#1〜#100)へトリガ信号を光フ
ァイバー線を介して分配している。
【0009】図2は、図1に示される構成の半導体スイ
ッチ回路の1つのIGBTのオン時及びオフ時の過渡電
圧波形を示すオシロ波形の写真で、(A)はオン時の波
形を、(B)はオフ時の波形をそれぞれ示す。なお、
(B)のオフ時の波形は安定状態に至る前の過渡状態を
示す。また、写真内の上側に見える横線はこの電圧波形
の測定とは関係ないものである。100個ものIGBT
を直列接続した半導体スイッチ回路全体は、各IGBT
が有する接合部の静電容量、各IGBTに付加されたス
ナバー回路16の静電容量、更に100個の直列のIG
BTの配線により半導体スイッチ回路そのものに生じる
インダクタンスとによりLCの分布定数回路を厳密には
形成しているが、図2の(A)の共振波形から、近似的
にLCの並列共振回路と見做すことが可能である。
【0010】図3は、そのような観点から見た図1に示
す回路の等価回路である。図3において、図1と同じ参
照番号及び符号は同じ構成要素を示す。また、30は、
図1の直列形スイッチである半導体スイッチ回路14の
等価回路である。等価回路30の中のSは直列形スイッ
チのスイッチ機能部分を示すスイッチを、CSは直列形
スイッチ内部の静電容量を、LSは直列形スイッチ内部
のインダクタンスをそれぞれ示す。
【0011】図3に示されるような等価回路30で表し
得る図1の半導体スイッチ回路14の図1の試験回路に
おいて、トリガコントロールユニット24にオン信号を
受けると、前述したように、各ゲート回路18を介して
各IGBTはターン・オンされ、即ち図3においてスイ
ッチSが投入されるので、図2の(A)に示されるよう
に振動電圧即ち一種の寄生振動が生じる。実際にこの試
験を行った後に各IGBTの健全性を調べたところ67
個目のIGBTが破壊されていることがわかった。な
お、スイッチのオフ時は、オン時よりはIGBTへの影
響は少ないが、それでも図2の(B)に示されるように
大きくハングした後に収斂しておりIGBTへの影響が
無視できないことがわかる。
【0012】図2のオンあるいはオフ時の電圧振動波形
及び図3に示される半導体スイッチ回路14の等価回路
から、IGBTの破壊を回避するには、かかる電圧振動
を抑制すればよいことがわかる。
【0013】本発明の1つは、図3に示される等価回路
30において、直列形スイッチ内部のインダクタンスL
Sに直列に高周波領域において抵抗成分に見え、低周波
領域でできるだけ低インピーダンスになるようなローパ
スフィルタLPF32を同図に示すように挿入すること
により、共振作用をダンプしようとするものである。こ
のローパスフィルタが、実際に直列接続された複数のI
GBTのような高速半導体スイッチに対して、IGBT
のような高速半導体スイッチ間に適宜直列に挿入される
ことにより、スイッチングの際に生じる電圧振動を抑制
即ち共振波を吸収し、共振波によって高速半導体スイッ
チが破壊されるのを防止する作用する。
【0014】図4は、本発明の一つであるかかる技術思
想を図1に示される半導体スイッチ回路に適用した好適
実施形態の一つを示す。図4において、図1と同一の参
照番号及び符号のものは同一の構成要素を示す。また、
図4において、34は、本発明により挿入されたローパ
スフィルタの一形態であって、フェライトのコアに巻線
した非線形リアクトルを示す。フェライトのコアを用い
た非線形リアクトルは、高周波領域でtanδにより低
周波領域より高い損失特性を有するのでローパスフィル
タとしての作用を有する。本実施形態では、かかる非線
形リアクトル34が、10個の直列接続されたIGBT
に対して1個を10個のIGBTから成る一つのグルー
プに対してそのグループ内の中央に挿入し、またグルー
プとグループの段間に1個挿入されている。従って、非
線形リアクトル34は、IGBTが100個であるの
で、10のグループに対して10個と、グループ段間に
9個と計19個用いられている。
【0015】図4に示される非線形リアクトル34を挿
入した場合について、図1の構成の場合と同様の要領で
得たオン時あるいはオフ時の過渡電圧波形を示すオシロ
波形の写真を図5に示す。図5の(A)はオン時を、ま
た(B)はオフ時をそれぞれ示す。なお、(B)のオフ
時の波形は安定状態に至る前の過渡状態を示す。また、
図5の波形は、測定上の都合で5個のIGBT間のもの
である。さらに、写真内の上側に見える横線はこの電圧
波形の測定とは関係ないものである。図5の過渡電圧波
形から、電圧の振動は殆ど抑制されていることがわか
る。この実験後においても、全部のIGBTの健全性に
異常はみられず、正常に高速のスイッチ機能が実現して
いることがわかった。
【0016】なお、本発明は、ローパスフィルタの数と
挿入個所に限定されず、要はローパスフィルタが共振を
抑制して半導体スイッチの破壊を防止するように、直列
接続された半導体スイッチに対して直列に挿入されるこ
とにある。
【0017】図6は、ローパスフィルタの本発明の他の
実施形態を示す。図6の(A)は、抵抗とインダクタン
スを並列接続したものであり、(B)は、フェライトの
コアに巻線を二重巻きにし、2次側に抵抗を接続したも
のである。
【0018】これらのローパスフィルタの構成は、例示
であって、本発明を限定するものではなく、本発明のロ
ーパスフィルタは、高周波領域において抵抗成分に見
え、低周波領域でできるだけ低インピーダンスになるよ
うな特性を示すいずれのタイプのものでもよい。
【0019】また、高速半導体スイッチのグループ内あ
るいはその段間に挿入されるローパスフィルタは同一の
タイプのものに限定されず、種種のタイプのものを組み
合わせても良い。
【0020】本発明の別のものは、図3に示される等価
回路において、図7に示されるようにキャパシタCC
抵抗RCとの直列接続された共振抑制回路である外部補
償回路36を半導体スイッチ回路の等価回路30の両端
間に並列に接続して、共振を抑制しようとするものであ
る。図1の構成の半導体スイッチ回路に対しては、実際
には図8に示されるように、#1のIGBTのコレクタ
と#100のIGBTのエミッタ間に直列接続されたキ
ャパシタCCと抵抗RCとを接続する。この構成におい
て、前述のオンあるいはオフの試験をした結果、いずれ
のIGBTも破壊されてなく、正常なスイッチ機能を有
することが確認された。
【0021】以上説明したように、本発明によれば、複
数の直列接続された高速半導体スイッチからなる半導体
スイッチ回路において、半導体スイッチ間に直列にロー
パスフィルタを適宜挿入、あるいは直列接続された高速
半導体スイッチの両端間に直列接続された抵抗とキャパ
シタとを並列に接続することにより、これらの要素が挿
入されない時に半導体スイッチ回路内に発生する共振波
の発生が抑制され、その結果高速のスイッチ機能が支障
なく実現できる。特に、半導体スイッチが直列に接続さ
れているので、本発明の半導体スイッチ回路は、高電圧
回路のスイッチングに適している。
【図面の簡単な説明】
【図1】IGBTを100個直列に接続して構成した半
導体スイッチ回路及びその制御系を、該スイッチ回路を
試験する試験回路と共に示す図である。
【図2】図1に示される構成の半導体スイッチ回路のオ
ン時及びオフ時の過渡電圧波形を示すオシロ波形の写真
で、(A)はオン時の波形を、(B)はオフ時の波形を
それぞれ示す。
【図3】図1に示す回路の等価回路及び本発明によるロ
ーパスフィルタを挿入して共振作用を抑制することを説
明するための図である。
【図4】図1に示される半導体スイッチ回路に本発明を
適用した一実施形態を示す図である。
【図5】図4に示される構成の本発明の一実施形態の半
導体スイッチ回路のオン時及びオフ時の過渡電圧波形を
示すオシロ波形の写真で、(A)はオン時の波形を、
(B)はオフ時の波形をそれぞれ示す。
【図6】ローパスフィルタの本発明の他の実施形態を示
す。
【図7】図3に示す等価回路の両端間に並列に共振抑制
回路を接続して共振作用を抑制することを説明するため
の図である。
【図8】キャパシタCCと抵抗RCとの直列接続された共
振抑制回路を設けた本発明の一実施形態を示す図であ
る。
【符号の説明】
32:ローパスフィルタ 34:非線形リアクトル 36:共振抑制回路
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平1−202155(JP,A) 特開 平4−372585(JP,A) 特開 昭52−106276(JP,A) 特開 昭56−105868(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) H03K 17/10 H03K 17/08 H03K 17/16

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 直列接続された複数の高速半導体スイッ
    チから成る高速半導体スイッチ回路において、 前記高速半導体スイッチは数マイクロ秒の高速のスイッ
    チング時間を有し、 前記複数の半導体スイッチに直列接続された1つ以上の
    ローパスフィルタを備え、 前記ローパスフィルタは、前記直列接続された複数の高
    速半導体スイッチのみから成る高速半導体スイッチ回路
    が有する共振作用をダンピングさせる高周波領域におけ
    る抵抗成分を有し、且つ低周波領域において低インピー
    ダンスになる特性を有することを特徴とする高速半導体
    スイッチ回路。
  2. 【請求項2】 前記ローパスフィルタは、高周波領域で
    tanδにより低周波領域より高い損失特性を有するフ
    ェライトのコアに巻線した非線形リアクトルであること
    を特徴とする請求項1記載の高速半導体スイッチ回路。
  3. 【請求項3】 前記ローパスフィルタは、並列接続され
    た抵抗とインダクタンス素子から成ることを特徴とする
    請求項1記載の高速半導体スイッチ回路。
  4. 【請求項4】 前記ローパスフィルタは、フェライトの
    コアに二重巻きにし且つ2次側に抵抗を接続した構成か
    ら成ることを特徴とする請求項1記載の高速半導体スイ
    ッチ回路。
  5. 【請求項5】 直列接続された複数の高速半導体スイッ
    チから成る高速半導体スイッチ回路において、 前記高速半導体スイッチは数マイクロ秒の高速のスイッ
    チング時間を有し、 前記直列接続された複数の高速半導体スイッチの両端間
    に並列接続され、且つ前記直列接続された複数の高速半
    導体スイッチのみから成る高速半導体スイッチ回路内に
    発生する共振波を抑制する直列接続されたコンデンサと
    抵抗とから成る共振抑制回路を備えることを特徴とする
    高速半導体スイッチ回路。
  6. 【請求項6】 前記高速半導体スイッチがIGBTであ
    ることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記
    載の高速半導体スイッチ回路。
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