JP2926240B2 - 摺動材およびその表面処理方法 - Google Patents

摺動材およびその表面処理方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、鉄系合金の摺動材及びその表面処理方法に
係り、特に高荷重条件で使用される自動車エンジン、油
圧機器、空調機器及び圧縮機器などの摺動面の耐摩耗性
を向上するに好適な摺動材及びその表面処理方法に関す
る。
〔従来の技術〕
摺動材の表面処理方法としては、特開昭62−192534号
公報及び特開昭63−79940号公報に記載された技術が知
られている。前者は、チル層で囲まれた凹部が散点状に
設けられているとともに、その凹部の周縁が摺動面より
も所定量突出していることが特徴である摺動材及びその
表面処理方法である。また、後者は、高密度エネルギ熱
源により鋳鉄製摺動材の表面部のみを溶融してブローホ
ールを生成させ、該ブローホールに高合金化材料粉末を
充填して再溶融することにより、鋳鉄表面を高合金化す
る表面処理方法である。
その他にも、特開昭62−265960号公報、特開昭62−25
3779号公報、特開昭62−211393号公報などの、高密度エ
ネルギ熱源を用いて摺動材表面に散点状の微細な凹みを
形成する方法が知られている。
〔発明が解決しようとする課題〕 上記公報によって開示された従来技術のうち、特開昭
62−192534号公報に開示された技術は、摺動材表面に、
チル層で構成されかつ周縁が該摺動材表面よりも所定量
突出した多数の凹部が散点状に設けられたことを特徴と
するものであるが、以上の特徴からも明らかなように、
摺動材表面に潤滑油が保持されていないか、または保持
されていた潤滑油が摩耗、逸損した場合には、多数の凹
部の周縁の突出部分だけが摺動荷重を負担することとな
る。さらに、該凹部の周縁の突出部分における摺接面積
は、凹部の形状及び分布状況からも明らかなように極め
てわずかであるから、前記突出部分の摺接面圧もまた極
めて大きくなり、この部分で急速に焼付きや凝着を生じ
て摺動材の耐摩耗性を損なう危険性が高い。
特開昭63−79940号公報に開示された技術は、高密度
エネルギ熱源によって鋳鉄製摺動材の表面を溶融して溶
融金属中及びその表面にブローホールを生成させた後、
該ブローホールに高合金化材料粉末を充填し、これらを
再び溶融し鋳鉄表面のみを高合金化するものである。こ
の技術では、第1工程において鋳鉄材表面及びその表層
部分に多数の突孔及び凹部が形成されるが、該空孔及び
凹部を油溜りとして積極的に利用することが開示されて
いない上に、これらの空孔及び凹部は高合金化材料粉末
の充填空間として利用されるために最終的に得られる摺
動面には凹部は残っていない。それ故、本公知例は、鋳
鉄材表面に油溜り用の凹部を形成するための表面処理技
術を開示するものではない。
その他に、摺動材表面を高密度エネルギ熱源で急速溶
融し、溶融金属の排除によって多数の凹部を形成する方
法が開示されている。しかしながら、いずれの方法にお
いても、凹部の形成技術として開示されているだけであ
り、熱処理に伴なう焼入れ硬化の効果を開示したものは
ない。摺動材の摺接面は、潤滑剤を供給するとともに、
硬質材料であるものの方が耐摩耗性に優れているが、こ
れらの公知例では、摺接面の硬化処理に言及したものは
ない。
本発明の課題は、摺接面に、潤滑剤を保持する多数の
凹部を備えるとともに、該摺接面の硬度が母材部分より
も高く、摩耗量のすくない摺動部材および母材表面にそ
のような摺接面を形成する表面処理方法を提供するにあ
る。
〔課題を解決するための手段〕
上記の課題は、鉄系合金の摺動材表面を、収束集中し
た高密度エネルギ熱源を用いて急速加熱し、該摺動材表
面を局部的にかつ微小深さだけ溶融すると同時に、該溶
融金属に気体噴流を吹き付けて、該気体噴流により前記
溶融金属を排除して微小な凹部を形成するとともに、前
記急速加熱に伴い前記凹部を囲む部分を焼き入れ硬化す
ることを特徴とする摺動材の表面処理方法により達成さ
れる。
また、鉄系合金の摺動材表面を、収束集中した高密度
エネルギ熱源を用いて急速加熱し、該摺動材表面を局部
的にかつ微小深さだけ溶融すると同時に、該溶融金属に
冷却用液体を吹き付けることにより、前記溶融金属の一
部または大部分を排除して、前記摺動材表面に微小な凹
部を形成することを特徴とする摺動材の表面処理方法と
してもよい。
金属材料の摺動材表面を、収束集中した高密度エネル
ギ熱源を用いて急速加熱し、該摺動材表面を局部的にか
つ微小深さだけ溶融すると同時に、該溶融金属に酸化性
の気体または液体を吹き付けることにより、前記溶融金
属の一部または大部分を酸化したのち、該酸化物を適宜
の手段で除去して前記摺動材の表面に微小な凹部を形成
することを特徴とする摺動材の表面処理方法としてもよ
い。
鉄系合金からなる摺動材の表面を概略最終形状に仕上
げる第1工程と、該摺動材の表面に溶融金属の付着を防
止する保護被膜を形成する第2工程と、該摺動材表面
を、高密度エネルギ熱源を用いて局部的にかつ微小深さ
だけ急速溶融しかつその溶融金属の一部または大部分を
排除する第3工程と、該摺動材表面の保護被膜,溶融金
属及び酸化物を除去して摺動面に仕上げる第4工程と、
を備えた摺動材の表面処理方法としてもよい。
摺動面の少なくとも一部に、微小な凹部が形成されて
いることと、該凹部の表面が曲面をなしていることと、
該凹部の表面が微細な急冷再凝固組織をなしていること
と、該再凝固組織を囲うように硬化組織が形成されてい
ることと、を特徴とする摺動材によっても、上記課題は
達成される。
摺動面の少なくとも一部に、表面が曲面をなしている
微小な凹部が形成されていることと、該凹部の表面が曲
面をなしていることと、該凹部の表面が微細な急冷再凝
固組織をなしていることと、該凹部に摺動性能向上に有
効な物質が保持されていることと、を特徴とする摺動材
としてもよい。
回転体の軸受部材であって、その軸または軸受に摺動
面を備えた鉄系合金からなるリング状部材が嵌合されて
いることと、該リング状部材の摺動面が、硬質の平滑面
と複数の微小な凹部とを備えていることと、を特徴とす
る軸受部材としてもよい。
また、周期的に出力熱量が変動する脈動状高密度エネ
ルギ熱源を鉄系合金の摺動部材の表面で移動させなが
ら、前記熱源により該表面を局部的にかつ微小深さだけ
溶融させると同時に、溶融した金属の一部または大部分
を適宜の手段に依って除去し、前記表面に多数の微小な
凹部を破線状または不連続的に形成することを特徴とす
る摺動材の表面処理方法としてもよい。
さらに、摺動材の表面を、表面から所定深さだけ硬化
させる手順を備えたことを特徴とする請求項,2,3,4,5,
6,7に記載の摺動材の表面処理方法としている。
〔作用〕 0.2%以上の炭素元素を含有する鉄系合金は、マルテ
ンサイト変態点(約790℃)以上に加熱された後に急冷
却されれば、マルテンサイト変態によって焼入れ硬化す
る。収束集中した高密度エネルギ熱源、例えば、レーザ
ビーム、電子ビーム、光ビーム、プラズマアーク、プラ
ズマジェット等の中から選ばれた適宜の高密度エネルギ
熱源によって、鉄系合金から構成された摺動部材の表面
が、摺動部材の溶融温度以上に急速加熱され、前記の摺
動部材の表面が微小深さだけ溶融する。同時に、該溶融
金属の一部または大部分が気体流または液体流によって
排除されて、前記の摺動部材の表面に微小な凹部が形成
される。さらに、前記の摺動部材の表面の非溶融面に付
着した溶融金属の粒(いわゆる、スパッタ)がショット
ブラスト処理、ショットピーニング処理、エッチング処
理等の適宜の手段によって除去される。以上の工程によ
って、摺動部材の表面に付着していた。スパッタ、ホコ
リ、ゴミ及び酸化物がきれいに除去されると、摺動部材
の表面に微小かつ滑らかな曲線形状を有する凹部が形成
され、該凹部表面は急冷再凝固した微細組織となる。
また、0.2%以上の炭素元素を含有する鉄系合金で
は、以上に述べた表面処理工程を伴ない、摺動部材表面
がマルテンサイト変態点以上の温度に急速加熱された
後、加熱部周囲への熱伝導現象によって急速冷却される
ため、加熱部分を中心としてマルテンサイト変態点以上
に加熱された部分が焼入れ硬化する。高密度エネルギ熱
源によって摺動部材の局部が急速加熱、急速冷却される
本発明の表面処理方法で必要な入熱量は極めて少量であ
り、かつ短時間で局部が急速加熱、急速冷却されるた
め、加熱処理に伴なって生じる加熱部の熱変形と熱ひず
みが最小に抑えられる。
また、高密度エネルギ熱源によって摺動部材の表面が
局部的にかつ微小深さだけ溶融される際に、該溶融金属
に酸化性気体、例えば空気が吹き付けられるならば、前
記の溶融金属の大部分は、急速に酸化物に変化する。金
属を溶融して急速に変化させて得られる金属酸化物は多
孔質で、且つ脆いから適宜の手段によって容易かつ確実
に除去可能である。該酸化物が適宜の手段、例えば、シ
ョットブラスト処理によってきれいに除去されれば、溶
融形状にほぼ相当する滑らかな曲線状の凹部が形成され
るとともに、該凹部の表面は急冷再凝固した微細組織と
なる。滑らかかつ微細組織で曲線形状をする凹部は、摺
動特性を向上するための物質、例えば潤滑油とのなじみ
性が良いから、潤滑油の保持性能に優れている。また、
前記の摺動部材の表面に形成される微細な凹部を細かく
かつ多数の凹部に分割し、散点状、破線状または不連続
状とすることにより、各凹部の潤滑剤の保持性能はさら
に向上する。
また、高密度エネルギ熱源により摺動部材の表面が局
部的にかつ微小深さだけ溶融されると同時に適宜の手
段、方法、工程により該溶融金属の一部または大部分が
除去されて摺動部材の表面に微小な凹部が形成された
後、該摺動部材の表面が浸炭、窒化、メッキ等の適宜の
方法で表面硬化される摺動材の表面処理方法も有効であ
る。この処理方法は焼入れ硬化処理が困難な、0.2%以
下の炭素含有量の軟鋼材やステンレス鋼、アルミニウム
合金、チタン合金、銅合金等の摺動特性を向上させる場
合に有効である。
本発明の表面処理方法により、摺動部材の表面に形成
される微小な凹部は、上記に記載したように高密度エネ
ルギ熱源によって形成される摺動部材表面の溶融金属の
形状によって決定される。また、溶融金属の形状は、被
加熱材料の熱特性と高密度エネルギ熱源の加熱条件とに
よって一義的に決定される。すなわち、本発明の表面処
理方法は、高密度エネルギ熱源の被処理面に対する移動
速度と移動方向を含む加熱条件を制御することにより、
摺動部材の表面に微小な凹部を適切な位置及び形状で形
成する。
〔実施例〕
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
第1図に本発明の摺動部材の表面処理方法の第1の実
施例を示す。第2図と第3図は、第1図に示された表面
処理方法で処理された摺動部材表面の処理方向の断面と
それと直角方向の断面の詳細を示す。図において、ほぼ
円筒形をなすプラズマトーチ5の内部に、同心状に同じ
く円筒状のノズル電極7が、開口を有する先端を、プラ
ズマトーチ5の端部開口からやや突出させて内装され、
該ノズル電極7にはさらに同心状に、棒状の電極6が、
その先端をノズル電極7の開口内側に位置させて内装さ
れている。該電極6はプラズマアーク発生用電源10に接
続され、該電源10の他端は摺動材1の母材部分に接続さ
れている。摺動材1は、ほぼ概略の最終形状と表面あら
さに仕上げられ、表面にセラミックや黒鉛が塗布されて
保護被膜13が形成されている。プラズマトーチ5の内周
とノズル電極7の外周とで形成される円筒状の空間には
シールドガス9が供給され、ノズル電極7の内周と電極
6の外周とで形成される円筒状の空間にはプラズマガス
8が供給される。
プラズマアーク発生用電源10により摺動材1と電極6
の間にプラズマアーク発生電圧が加えられると、摺動材
1と電極6の間に高密度エネルギ熱源であるプラズマア
ーク11が発生する。炭素元素を0.2%以上含有する炭素
鋼、合金鋼、鋳鉄などの材料からなる摺動材1の表面
が、この収束集中した高密度エネルギ熱源であるプラズ
マアーク11により、局部的に急速加熱され、摺動材1の
表面が局部的かつ微小深さだけ急速に溶融する。溶融深
さは0.01〜0.5mm程度でよい。同時に、プラズマガス8
およびシールドガス9の気体噴流の圧力によって前記の
溶融金属の一部または大部分が吹き飛ばされ、表面が滑
らかな曲線形状の微小な凹部2が形成されるとともに、
該凹部の表面は、急冷再凝固した微細組織部3となり、
該微細組織部3を囲む焼入れ硬化部4が形成される。プ
ラズマアーク11は、ノズル電極7の先端の小さい径の開
口と、プラズマガス8の流れによって十分に収束集中さ
れている。高密度エネルギ熱源であるプラズマアークの
収束集中が良い程、すなわち熱源の寸法が小さい程金属
が急速に溶融するとともに、溶融金属池の寸法を小さく
することができる。また、プラズマアーク発生用電源の
出力電流は、第4図に示されるように、周期的に増減す
る脈動状出力であり、その結果、このプラズマアーク発
生用電源10から得られるプラズマアーク11の熱量もま
た、出力電流と同様に、周期的に増減する脈動状の値を
示す。
このようなプラズマアーク11を用いて摺動材1の表面
が急速加熱され、かつ加熱条件(プラズマアーク11の進
行速度、プラズマアーク発生用電源の出力波形等)が適
当に設定されると、第1図に示されるように、断続した
凹部2と、微細組織部3が設けられ、微細組織部3を囲
む焼入硬化部4が得られる。
しかしながら、摺動材1の表面の一部が溶融され、該
溶融金属の一部または大部分が排除されて、凹部2が形
成される際、排除された溶融金属の一部が摺動材1の表
面に溶融金属粒(いわゆる、スパッタ12)として付着す
る。そのため、排除された溶融金属粒が摺動材1の表面
に付着しないように保護皮膜13が形成されているが、ス
パッタ12の付着の完全な防止は難しい。そこで、摺動材
1の表面に付着したスパッタ12を除去すると同時に、摺
動材1の表面にある保護被膜13、ゴミ、ホコリ及び酸化
物を除去するため、摺動材1の表面がショットブラスト
で処理されてきれいにされる。以上の表面処理工程によ
り、形状及び表面あらさがほぼ要求された品質に仕上げ
られるとともに、摺動材の表面が焼入れ硬化し、該表面
上に多数かつ微小で滑らかな曲面を有する凹部2が形成
される。しかも、これらの凹部2の表面は、急冷凝固組
織の硬くてかつ微細組織であり、潤滑剤とのなじみ性が
良好である。形成される凹部の寸法は、高密度エネルギ
熱源の入熱密度及びその寸法と、熱源の移動速度、被処
理材の溶融温度、比熱及び熱伝導係数、溶融金属の流動
特性、溶融金属を排除するためのプラズマガスとシール
ドガスの流量と流速及びそれらの流れ方向等の関係によ
って大きく変わる。例えば、プラズマアークを用いて適
切な処理条件で表面処理された摺動材1の表面の微小凹
みの微細組織および焼入硬化部の第2図、第3図に示さ
れる寸法は、W1及びW2が0.2から1.5mm,h1が0.15から0.5
mm,h2が0.01から0.1mmである。これらの寸法に処理され
た摺動材は、摩擦面圧に対する材料強度が十分にあると
ともに、潤滑材の保持性に優れている微小かつ滑らかな
曲面状の凹部が多数かつ適宜に配置されているので耐摩
耗性に優れている。
第5図は本発明の第2の実施例による摺動部材の表面
処理方法を示す。図において、中空円筒形のレーザ照射
装置の本体14の先端には、細い開口穴17が設けられ、中
間には、本体14の軸芯方向に対してやや傾斜した分岐管
14Aが設けられている。本体14の中空円筒内には本体14
の軸芯と光軸を並行させてレーザビーム集光用の集光レ
ンズ16が設けられている。表面処理は、レーザ照射装置
の本体14の中空部を通って放射されるレーザビーム15に
よって行われ、このレーザビームは集光レンズ16によっ
て細かく絞られた後、開口穴17を通って摺動材1の表面
に放射される。摺動材1の表面は投射された高密度エネ
ルギ熱源レーザビームによって急速加熱されるが、この
レーザビーム15の照射熱量を周期的に変動させることに
より、破線状、散点状及び不連続状に、摺動材1の表面
が局部的にかつ微小深さだけ溶融される。また、分岐管
14Aに酸化性気体(例えば空気)18が供給され、供給さ
れた該酸化性気体18は本体14の先端の開口穴17を経て前
記溶融した金属に噴流となって吹きつけられ、溶融金属
を酸化物に変化させるとともに、その一部または大部分
が吹きとばされる。高温でかつ急速に酸化させられた金
属酸化物は、多孔質でかつ脆いから、摺動材1の表面に
ほとんど付着しないし、万一付着しても容易に除去され
る。それ故、本実施例の場合には、溶融金属の付着を防
止するための保護皮膜が形成されなくても溶融金属がほ
とんど付着しない。また、保護被膜を摺動材1の表面に
形成すれば、溶融金属は全く付着しないか、まれに付着
したものも極めて容易に除去される。また、本実施例の
表面処理方法では、溶融金属の大部分が酸化物として除
去されるため、摺動材1の表面の微小な凹部は、寸法精
度良く所望の形状、位置、深さで形成することができ
る。
なお、本発明の表面処理方法は、摺動材1の表面を概
略の最終形状及び表面あらさに仕上げた後、摺動面の局
部を微小深さだけ溶融、除去して微小な凹部を形成する
表面処理方法であるから、原理的に非溶融面は処理前の
表面形状及び表面あらさを保つ。しかしながら、本発明
の表面処理に伴なう急速加熱、急速冷却によって表面形
状及び表面あらさが悪化する場合もあるが、その悪化の
程度は熱変形がほとんどないから極めてわずかであり、
それら悪化した部分は研削仕上げ、バフ仕上げ、ラッピ
ング処理などによって容易に取り除くことができる。ま
た、冷却用の液体を吹き付けて積極的に加熱面を冷却す
れば、上記の熱変形や熱ひずみの発生をそれに小さくす
ることができる。
第6図は本発明の第3の実施例を示す。図において、
回転軸19には外周面を摺動面とするリング状部材22が嵌
装されている。リング状部材20の外周面に接して軸受22
が設けられる。海水用ポンプなどの腐食性の強い環境で
使用されるポンプ用の回転軸は、ステンレス鋼などの耐
食性の良い材料で作られている場合が多い。しかしなが
ら、これらの耐食性材料は摺動特性が劣るために、耐摩
耗性を改善する必要がある。そこで、耐食性を有する回
転軸19の外周に、鉄系合金製のリング状部材20が焼きば
めまたは冷しばめの手段によって嵌合されかつ一体化さ
れる。次に、前記のリング状部材20の外周面が概略の最
終形状と表面あらさ状態に加工される。そして、本発明
の表面処理方法により、リング状部材20の外周面に微小
な凹部21が適宜の形状、例えば、ら旋状に形成される。
最後にリング状部材20の外周面が仕上げられて摺動面と
なる。リング状部材20の外周面に形成されたら旋状の凹
部21は、回転軸19が回転するのに伴ない、摺動方向に凹
部が断続状をなす。このら旋状の凹部21に潤滑剤が保持
され、摺接面に潤滑剤が確実に供給されるから、摺動特
性が改善される。また、本実施例の軸受構造によれば、
軸の材料の選択の自由度が増し、表面処理が容易になる
とともに、摺動性能が向上する。なお、本発明の表面処
理方法によれば、高密度エネルギ熱源により摺動材の表
面を局部的かつ微小深さだけ急速溶融するだけで、耐摩
耗性を改善するのに有効な微小な凹部が形成される。そ
れ故、上記焼きばめまたは冷しばめ部の嵌合精度に全く
影響を与えることなく、リング状部材20の外周表面の表
面処理が行われる。
さらに0.2%以上の炭素元素を含有する鉄系合金製の
リング状部材20が用いられたならば、表面処理に伴ない
リング状部材の外周面が同時に焼入れ硬化される。
本発明の表面処理方法ではリング状部材20の外周表面
の0.2から2mm程度の深さしか熱影響を与えないで表面処
理が行われる。それ故、上述したように、回転軸19とリ
ング状部材20が予め焼きばめ結合された後での表面処理
が可能であるが、適宜の肉厚を有するリング状部材20が
用いられたならば、前もって表面処理されたリング状部
材20が回転軸19に焼きばめ結合されてもよい。例えば、
10mmの肉厚に機械加工された炭素鋼製(例えばS45C)の
リング状部材20内側に冷却用の水冷された鋼の丸棒が嵌
合された後、リング状部材20の外周面が本発明の表面処
理方法で処理され、微小かつ滑らかな曲面を有する凹部
21が形成されると同時に、外周表面から0.2から0.5mmの
深さまで焼入れ硬化される。次に、リング状部材20から
水冷銅の丸棒が抜き取られた後、このリング状部材20が
焼きばめ温度約200℃に加熱される。次いで回転軸19の
所定位置にリング状部材20が挿入され、回転軸19とリン
グ状部材20とが焼きばめ結合される。最後に、リング状
部材20の表面に研削仕上げ、バフ仕上げまたはラップ仕
上げまどの仕上げ処理が施され、摺動材として要求され
る寸法及び表面あらさに仕上げられる。回転軸19とリン
グ状部材20は予め、仕上げ代を考慮して加工されるが、
本発明の方法では、表面処理と焼きばめで発生する熱変
形に伴なう変形は極めてわずかであるから、前述した仕
上げ代はわずかである。それ故、最後に行われる仕上げ
は、簡単かつ容易であり、仕上げ代もわずかである。
また、リング状部材20の内面に上記の表面処理が施さ
れるとともに、該リング状部材20が軸受22の内面に焼き
ばめ嵌合されて一体化された場合にも、本発明の目的は
達成され、耐摩耗性に優れた軸受構造が実現される。
第7図は本発明の第4の実施例を示したものであり、
第8図は第7図のVIII−VIII断面を示す。油潤滑条件下
で使用されるすべり軸受24と摺接する回転軸23の摺動面
に回転軸23の軸方向と平行に多数の微小な直線状の凹部
25が形成される。凹部25の軸方向の幅bはすべり面の軸
方向の幅aよりも若干小さく、各凹部25は、回転軸の摺
動面上に細長くかつ独立した凹みとして形成されてい
る。すべり軸受の摺動特性を改善するための一方法とし
て、潤滑油26をすべり面に供給することが一般的に実施
されている。しかしながら、軸受荷重が大でかつ回転速
度が遅い場合には、回転軸23と軸受24の隙間dが狭くな
りすぎて潤滑油膜が途切れてしまい、回転軸と軸受が金
属接触することがある。一度、金属接触すると、すべり
面が摩擦熱により、焼き付き、摩擦面が著しく損傷する
ため、耐摩耗性が損なわれる。本発明によれば、微小な
直線状の凹部25が回転軸23の軸方向と平行に多数設けら
れ、この凹部25には必ず潤滑油26が保持される。そし
て、大きな軸受荷重と遅い回転速度における摩擦条件の
下にて、回転軸23と軸受24とが金属接触して、摩擦発熱
したとしても、凹部25に保持された潤滑油26によって、
金属接触部が冷却されるとともに、金属接触面の潤滑が
改善される。さらに焼付きが発生した場合には、凹部25
が焼付損傷部の拡大を防ぐため、焼付きによるロックが
おこりにくい。一方、回転速度が速い場合には、くさび
膜効果によって回転軸23と軸受24の間に適当な油膜面が
形成され、回転軸23と軸受24が金属接触することがなく
耐摩耗性も良い。それ故、回転軸と平行でかつ微小な凹
部25を設けたすべり摩擦軸受構造は、大きな軸受荷重の
条件においても、低速から高速の広いすべり摩擦条件下
において優れた耐摩耗性を有する。
すべり軸の表面に設けられた凹部の深さが十分浅けれ
ば、例えば0.005から0.02mm程度であれば、潤滑油の表
面張力によって潤滑油が保持されるから、前述したよう
に独立した凹部でなくても良い。すなわち、軸表面にら
旋状または格子状に凹部が形成されかつ各凹部が摺動方
向に対して断続状に配置されているならば、前述の独立
した凹部と同様の効果が得られる。
第9図および第10図は、本発明の第5,第6の実施例を
示す。SUS304ステンレス鋼製の摺動材1の表面がレーザ
ビームなどの高密度エネルギ熱源で局部的かつ微小深さ
だけ急速に溶融され、この部分に気体が吹きつけられて
前記の溶融金属の一部または大部分が吹き飛ばされ、微
小かつ滑らかな曲面状の凹部2が形成される。形成され
た凹部2の表面は微細組織部3でおおわれ、吹き飛ばさ
れなかった溶融金属の一部が凝固して形成された曲線形
状の滑らかな表面となる。次に、この摺動材1の表面が
ショットブラスト処理され、摺動材表面に付着してい
る。スパッタ、ゴミ、ホコリ、酸化物が除去されるとと
もに、摺動材表面に微小な凹部が形成され、後工程のメ
ッキが密着しやすいように表面処理が行なわれる。最後
に、この摺動材1の表面に硬質クロムメッキが施され、
摺動材表面を硬くするとともに耐食性、耐摩耗性に優れ
たメッキ27の皮膜が形成される。以上の工程で処理され
たステンレス製摺動部材は、耐食性、耐摩耗性に優れて
いるとともに、潤滑剤保持用の微小な凹部を有し、耐摩
耗性改善効果が顕著である。アルミ、銅、ステンレスの
ように急熱、急冷処理だけでは硬化することができない
材料で作られた摺動部材、例えばステンレス鋼の耐摩耗
性を改善するためにも本発明の表面処理方法は有効であ
る。
軟鋼のように焼入れ硬化できない材料や焼入れ硬化組
織以上の硬さを必要とする高負荷面圧を受ける材料など
の摺動剤の耐摩耗性を改善するためにも本発明の表面処
理方法は有効である。例えば、第10図に示されるよう
に、軟鋼(SPCC材)に適用される場合、まず、軟鋼であ
る摺動材1の表面が電子ビームなどの高密度エネルギ熱
源で局部的に、かつ微小深さだけ急速に溶融され、この
部分に気体が吹きつけられて前記溶融された金属の一部
または大部分が吹きとばされ、微小かつ滑らかな曲面状
の凹部2が形成される。形成された凹部2の表面は、急
冷された微細な再凝固組織となり、摺動性を向上するた
めの物質、例えば、潤滑油や二硫化モリブデン等とのな
じみ性が良く、これらの保持性も良好である。また、こ
の摺動材には、摺動面側の表面から炭素元素が侵入、拡
散されて表面から所定の深さだけ浸炭処理され硬化部28
が形成されている。さらに、最初、摺動材表面が浸炭処
理された後、本発明の表面処理が行なわれ、微小な凹部
が形成されるとともに浸炭部分が焼入れ硬化され、最後
に、該表面に窒化処理されるならば、摺動材の表面は、
単に浸炭または窒化されるよりも、硬くて耐摩耗性に優
れた表面組織が得られるとともに寸法精度の良い摺動材
が得られる。金属材料の表面硬化法の中には、一旦硬化
された表面が加熱によって軟化するものもある。しかし
ながら、本発明の表面処理法では、高密度エネルギ熱源
により表面の局部かつ微小深さだけが急速溶融されるた
めに熱影響をうける部分が極めて小さく限定されるか
ら、各種の表面硬化処理方法の適用が可能である。さら
に、本発明の表面処理方法は、表面を急速加熱し、微小
深さだけ急速溶融し、さらに、溶融金属を気体または液
体によって吹き飛ばす方法であるから、表面が硬くても
容易に微小かつ滑らかな曲面状の凹部が形成される。
また、本発明の表面処理によって摺動材表面に微小な
凹部が形成された後、浸炭処理、窒化処理、酸窒化処
理、塩酸窒化処理等の各種の表面硬化処理が行なわれる
ことも可能である。
第11図は本発明の第7の実施例を示す。表面処理され
る回転軸23の設定位置上に、回転軸の軸方向に揺動する
プラズマトーチ5が取付けられ、回転する回転軸23の表
面がプラズマアーク11により局部的かつ微小深さだけ急
速溶融される。同時に、該回転軸23の溶融部分にノズル
29から冷却用液体である高圧の水30が吹き付けられて、
溶融金属が吹き飛ばされ、凹部25が形成されるとともに
この部分が急速冷却される。そして、回転軸23が焼入れ
硬化処理が可能な材料、例えば、鋳鉄(FCD45)であれ
ば、上記の表面処理に伴ない、表面上に微小な凹部が形
成されると同時に、この部分が焼入れ硬化される。ま
た、本実施例の方法では急速加熱、微小溶融の直後に、
積極的に冷却水が吹き付けられて、急速冷却が行われる
ため、処理中の回転軸23の温度上昇が抑えられるととも
に、処理に伴なう熱変形や熱ひずみを非常に小さくする
ことができる。また、鋳鉄(FCD45)は急熱急冷すると
熱ひずみに伴なう急激に応力変化を受けて焼き割れが生
じやすい材料であるが、本実施例の方法によれば、加熱
部分が局部かつ微小部分に限定されるとともに、被加熱
部分が加熱直後に急速に冷却されるので、鋳鉄のように
焼き割れしやすい材料でも焼き割れを発生させないで焼
入れ硬化することができる。また、前述のように、回転
軸23にリング状部材を焼きばめ結合したものの場合に
は、本実施例の表面処理方法は、熱変形が少ないことか
ら、さらに有効であるとともに、材料の選択の自由度が
増し各種機械の耐食性、耐摩耗性の向上と低コスト化に
有効である。
なお、第11図には、凹部25の形状が蛇行状に示されて
いるが、本発明の実施はこの形状に限定されるものでは
ない。回転軸23の回転数nとプラズマトーチの揺動速度
Nの組合せによって種々の形状の凹部25の形成が可能で
ある。第11図の凹部形状はn<<Nの場合に形成され、
n>>Nの場合はリング状となりn≒Nの場合は格子状
となる。また、プラズマトーチ5の揺動軌跡を円弧状と
すれば、山形状、波形状及びら旋状などの凹部形状の形
成が可能である。
次に本発明の効果を更に明確にするため、本発明の実
施例による摺動部材の表面処理条件と摩耗試験結果につ
いて説明する。
被処理材料として、0.4から0.5%の炭素元素を含有す
る一般的な炭素鋼のS45Cを用いた。まず、被処理面が中
仕上げ程度に仕上げられた後、該被処理面が収束したプ
ラズマアークにより局部的かつ急速に溶融されるととも
に溶融金属体積の0.5から0.8程度がプラズマガスの噴射
力で溶融池から排除され、被処理材の表面から0.02から
0.05mm程度の深さの凹みが形成された。S45Cの溶融金属
は粘性が高くて流動性が悪いため、排除された溶融金属
の大部分は、形成された凹部及び凹部の周囲の摺動材表
面に再溶着した。プラズマアークを30から50mmの広幅で
かつ0.5から10回/秒程度の高速度で揺動させるととも
に各凹部の間隔(すなわち揺動ピッチ)を0.5から3mm程
度として、凹部の深さは0.02から0.05mm、凹部の幅が0.
2から1mm、焼入れ硬化部の深さ0.1から0.5mmの摺動材表
面組織が得られた。また、溶融金属の流動性が悪いた
め、排除された溶融金属が凹部及びその周囲に再溶着す
るとともに、これらが凝固する過程で表面張力によって
不規則に凝縮して固まった。これらの凝固金属組織が適
宜に研削除去され、凹部の面積割合が0.3〜0.5程度にな
るように削られると、凹部は網目状となり、各凹部が分
離、分割された形状となっている。すなわち、S45Cのよ
うに溶融金属の粘性が大で流動性が高い材料では、表面
張力の影響によって、入熱量を変動させなくても、適宜
かつ不規則に分割された凹部の形成が可能である。
また、S45Cは炭素元素を約0.45%含有しているため、
これらの急熱、急冷処理に伴ない焼入れ硬化が生ずる。
上述の例では、表面から0.1から0.5mm程度の深さの硬度
がHv600からHv800となった。
実施された摩耗試験は、円筒リングと平板とが潤滑油
の中に浸漬された状態で、円筒リングの端面が平板に当
接されて円筒リングに荷重と回転が与えられるすべり摩
擦試験である。この円筒リングは炭素鋼S45Cが焼入れ硬
化された後、研削されて十分滑らかに仕上げられたもの
である。また、平板としては炭素鋼S45Cが焼入れ硬化さ
れた後、研削されて十分滑らかに仕上げられた従来品
と、前記の表面処理方法で仕上げられた本発明品との2
種類が用いられた。前記した本発明の表面処理で仕上げ
られた平板の寸法及び性質は、凹部の深さ0.02mm、凹部
の幅0.3から0.5mm、凹部の長さ1から3mm、凹部の面積
割合0.3、焼入れ硬化部の深さ0.3mm、焼入れ硬化部の硬
さHv600からHv800、母材の硬さHv200からHv230、凹部以
外の表面あらさ1.0μであった。上記の各試験片を用い
て各種の荷重と摺動速度の摩擦条件において摩耗試験が
実施された結果、摩擦係数は従来品が0.02から0.05、本
実施例によって表面処理された平板が0.04から0.08であ
ったが、摩耗量は従来品を1とすると本発明の実施例品
では0.5から0.05と大幅に減少した。すなわち、同一摩
擦条件において、本発明のものは従来品よりも摩擦寿命
が2倍から20倍となることがわかった。摩擦寿命が改善
できたのは、摺動面に微小な凹部が設けられた結果、摺
動面の潤滑性能が向上したためである。
以上の説明では、実用的な高密度エネルギ熱源として
良く使用されるレーザビームとプラズマアークが用いら
れた場合について述べたが、電子ビーム、光ビーム、プ
ラズマジェットなどを用いても加熱条件が適切に設定さ
れれば、本発明の表面処理方法の実施は可能である。ま
た、摺動部としては、回転軸と軸受の場合だけが例示さ
れているが、本発明はこの構造の摺動部のみに限定され
るものではない。例えば、カムとロックアーム間の摺動
部、スラスト軸受部、往復動するピストン、油圧シリン
ダなど各種の構造及び形式の摺動部分へも、本発明の表
面処理方法及び摺動材の適用が可能である。
〔発明の効果〕
以上、詳細に説明したように、本発明に係る摺動材に
よれば、摺動材の摺動面の少なくとも一部に微小な凹部
が多数設けられるとともに、該凹部の表面が滑らかな曲
面形状であり、該凹部が摺動材の耐摩耗性を向上するた
めの潤滑油、潤滑グリース、潤滑用粉末、潤滑用の固体
いずれかの保持部をなし、適宜にこの凹部から摺接面に
潤滑材を供給することができる。特に、潤滑油によって
潤滑される摩擦条件下では摩耗量が著しく減少し、該摺
動材を用いた機械の寿命を伸ばし、保守を容易にする効
果がある。また、本発明に係る摺動材によれば、回転軸
材料の選択の自由度が増すため、耐摩耗性、耐食性及び
回転軸材料の材料費削減が可能となる。また、本発明の
表面処理方法は、表面処理に伴なう入熱量が少なく、加
熱が局部的であり、かつ急速加熱、急速冷却であるが、
表面処理に伴なう熱変形が少なく、後加工もほとんど必
要がないので、表面処理を容易かつ安価に行ないうる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明に係る摺動材の表面処理方法の第1の
実施例を示す断面図、第2図は第1図のII−II線矢視断
面図、第3図は第2図のII−II線矢視断面図、第4図は
プラズマアーク発生用電源の出力電流の波形の例を示す
概念図、第5図は本発明の第2の実施例を示す断面図、
第6図は本発明の第3の実施例を示す側面図、第7図は
本発明の第4の実施例を示す側面図、第8図は第7図の
VIII−VIII線矢視断面図、第9図は本発明の第5の実施
例を示す断面図、第10図は本発明の第6の実施例を示す
断面図で、第11図は本発明の第7の実施例を示す斜視図
である。 1……摺動材、2,21,25……凹部、 3……微細組織部(急冷再凝固組織)、 4……焼入れ硬化部(硬化組織)、 8……気体噴流(プラズマガス)、 9……気体噴流(シールドガス)、 11……高密度エネルギ熱源(プラズマアーク)、 12……スパッタ、13……保護被膜、 15……高密度エネルギ熱源(レーザビーム)、 18……酸化性気体(空気)、 19,23……回転軸、20……リング状部材、 22,24……軸受、30……冷却用液体(水)。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 岩倉 昭太 茨城県土浦市神立町502番地 株式会社 日立製作所機械研究所内 (72)発明者 飯塚 董 栃木県下都賀郡大平町富田800番地 株 式会社日立製作所栃木工場内 (72)発明者 米谷 栄二 茨城県土浦市神立町650番地 日立建機 株式会社土浦工場内 (72)発明者 内川 直志 静岡県清水市村松390番地 株式会社日 立製作所清水工場内 (56)参考文献 特開 昭56−116821(JP,A) 特開 昭63−140849(JP,A) 特開 昭58−71374(JP,A) 特開 昭63−295081(JP,A) 特開 昭58−48622(JP,A) 実開 昭63−15325(JP,U) 実開 昭62−50023(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C21D 1/09,1/34 C23C 26/00 B23K 26/00 F02F 1/00 C16C 33/14 B23Q 1/26

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】鉄系合金の摺動材表面を、収束集中した高
    密度エネルギ熱源を用いて急速加熱し、該摺動材表面を
    局部的にかつ微小深さだけ溶融すると同時に、該溶融金
    属に気体噴流を吹き付けて、該気体噴流により前記溶融
    金属を排除して微小な凹部を形成するとともに、前記急
    速加熱に伴い前記凹部を囲む部分を焼き入れ硬化するこ
    とを特徴とする摺動材の表面処理方法。
  2. 【請求項2】鉄系合金の摺動材表面を、収束集中した高
    密度エネルギ熱源を用いて急速加熱し、該摺動材表面を
    局部的にかつ微小深さだけ溶融すると同時に、該溶融金
    属に冷却用液体を吹き付けることにより、前記溶融金属
    の一部または大部分を排除して、前記摺動材表面に微小
    な凹部を形成することを特徴とする摺動材の表面処理方
    法。
  3. 【請求項3】金属材料の摺動材表面を、収束集中した高
    密度エネルギ熱源を用いて急速加熱し、該摺動材表面を
    局部的にかつ微小深さだけ溶融すると同時に、該溶融金
    属に酸化性の気体または液体を吹き付けることにより、
    前記溶融金属の一部または大部分を酸化したのち、該酸
    化物を適宜の手段で除去して前記摺動材の表面に微小な
    凹部を形成することを特徴とする摺動材の表面処理方
    法。
  4. 【請求項4】鉄系合金からなる摺動材の表面を概略最終
    形状に仕上げる第1工程と、該摺動材の表面に溶融金属
    の付着を防止する保護被膜を形成する第2工程と、該摺
    動材表面を、高密度エネルギ熱源を用いて局部的にかつ
    微小深さだけ急速溶融しかつその溶融金属の一部または
    大部分を排除する第3工程と、該摺動材表面の保護被
    膜,溶融金属及び酸化物を除去して摺動面に仕上げる第
    4工程と、を備えた摺動材の表面処理方法。
  5. 【請求項5】摺動面の少なくとも一部に、微小な凹部が
    形成されていることと、該凹部の表面が曲面をなしてい
    ることと、該凹部の表面が微細な急冷再凝固組織をなし
    ていることと、該再凝固組織を囲うように硬化組織が形
    成されていることと、を特徴とする摺動材。
  6. 【請求項6】摺動面の少なくとも一部に、表面が曲面を
    なしている微小な凹部が形成されていることと、該凹部
    の表面が曲面をなしていることと、該凹部の表面が微細
    な急冷再凝固組織をなしていることと、該凹部に摺動性
    能向上に有効な物質が保持されていることと、を特徴と
    する摺動材。
  7. 【請求項7】回転体の軸受部材であって、その軸または
    軸受に摺動面を備えた鉄系合金からなるリング状部材が
    嵌合されていることと、該リング状部材の摺動面が、硬
    質の平滑面と複数の微小な凹部とを備えていることと、
    を特徴とする軸受部材。
  8. 【請求項8】周期的に出力熱量が変動する脈動状高密度
    エネルギ熱源を鉄系合金の摺動部材の表面で移動させな
    がら、前記熱源により該表面を局部的にかつ微小深さだ
    け溶融させると同時に、溶融した金属の一部または大部
    分を適宜の手段に依って除去し、前記表面に多数の微小
    な凹部を破線状または不連続的に形成することを特徴と
    する摺動材の表面処理方法。
  9. 【請求項9】摺動材の表面を、表面から所定深さだけ硬
    化させる手順を備えたことを特徴とする請求項,2,3,4,
    6,または7に記載の摺動材の表面処理方法。
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