JP2921881B2 - 硬質発泡体 - Google Patents

硬質発泡体

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JP2921881B2 JP25909289A JP25909289A JP2921881B2 JP 2921881 B2 JP2921881 B2 JP 2921881B2 JP 25909289 A JP25909289 A JP 25909289A JP 25909289 A JP25909289 A JP 25909289A JP 2921881 B2 JP2921881 B2 JP 2921881B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は硬質発泡体に関する。さらに詳しくは、本発
明はJIS A 1321に規定された表面試験および基材試験に
合格する不燃材料として使用しうる硬質発泡体に関す
る。
[従来の技術] 従来より塩化ビニル樹脂(以下、PVCという)に無機
物を含有させた不燃性PVC発泡体としては、たとえば特
公昭62-56113号公報、特公昭64-4992号公報に記載され
たものが知られており、これらの公報に記載されたPVC
発泡体においては無機物として酸化亜鉛を含有させるこ
とを必須としている。
しかしながら、酸化亜鉛を含有するPVC発泡体は、加
熱されるといわゆる亜鉛バーニング現象と称される黒化
現象を呈するという品質面の問題点を有している。さら
に、酸化亜鉛は比較的高価であり、経済的観点において
もその使用は望ましいものではない。
[発明が解決しようとする課題] 本発明は前記のごとき実情に鑑みてなされたものであ
り、酸化亜鉛を使用せずに不燃材料となりうるPVC系硬
質発泡体を提供することを目的とするものである。
[課題を解決するための手段] すなわち、本発明はPVC 100部(重量部、以下同様)
に対して酸化亜鉛を含有せずに金属水酸化物を900部以
上含有してなる硬質発泡体に関する。
[作用および実施例] 本発明は、酸化亜鉛を用いなくても特定の溶剤を用い
てPVCと溶剤が相溶性を呈する温度以上の温度で混練す
ることにより、PVC 100部に対して金属水酸化物を900部
以上と大量に含有せしめた硬質発泡体がえられるという
技術に基づいて完成されたものである。
このように、本発明においては、酸化亜鉛が不要であ
るので、亜鉛バーニング現象の発生がなく、しかも大量
の金属水酸化物の配合を可能としたものであるので、JI
S A 1321に規定された表面試験および基材試験に合格す
るのである。
また、本発明においてはPVCと相溶性を呈する特定の
溶剤が用いられ、該溶剤がPVC粒子中のいわゆるドメイ
ン粒子やミクロドメイン粒子を分子オーダーの大きさま
でときほぐし、PVC粒子の粒状性や多孔性を消失させる
ため、セル膜の発泡ガス保持性が向上して良好な発泡体
の製造が可能となるのである。
さらに、溶剤は、密閉金型中で分解型発泡剤の分解に
より発生したチッ素、二酸化炭素などの発泡ガスを該溶
剤中に溶解し、金型を閉じているあいだにこれらの発泡
ガスを安定に保持する役割を果たしているものと考えら
れる。
また、PVCとの相溶性を呈する特定の溶剤の存在下で
発泡させるため、系の粘弾性が小さくなり、発泡時のセ
ル膜の伸びに起因する発泡体中の残留応力ないし残留歪
が小さくなると考えられる。
また、発泡後、溶剤を揮散除去するあいだに応力緩和
ないし歪緩和が速やかに生じると考えられる。
これらの結果、JIS A 1321に規定された表面試験およ
び基材試験に合格し、燃焼時の変形量あるいは高温下で
の使用時の寸法変化量が小さい硬質発泡体がえられるの
である。
本明細書にいうPVCは、塩化ビニル単独重合体が灰化
などの燃焼特性の点からもっとも好ましい。しかしなが
ら、本発明の目的を阻害しない範囲内で塩化ビニルを50
重量%以上含有する共重合体類をはじめ、PVCと相溶性
を呈するブレンド用樹脂、たとえば塩素化塩化ビニル樹
脂、塩素化ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合
体などの少なくとも1種との混合物でもよい。該混合物
中のブレンド用樹脂の割合は少量であるのが好ましく、
50重量%以下、好ましくは30重量%以下、さらに好まし
くは20重量%以下であることが望ましい。本発明に用い
られるPVCの代表例としては、塩化ビニル単独重合体が
あげられる。かかるPVCの種類や製造法については、本
発明においてはとくに限定はないが、なかでも安価であ
るという点より、懸濁重合PVCが好ましい。前記PVCの平
均重合度は、1500未満では発泡時にセル膜が破れやす
く、発泡ガスの逸散による発泡倍率の低下をきたしやす
く、また5000をこえるばあいには、工業的に製造するこ
とが難しくなる傾向がある。
ここで、懸濁重合PVCとは、粒子径が1μm程度の一
次粒子の集合体からなる粒子径100〜300μmの多孔質PV
Cをいい、いわゆる懸濁重合法によって製造されたもの
である。前記一次粒子は、粒子径が0.1μm程度のいわ
ゆるドメイン粒子からなり、該ドメイン粒子はさらに0.
01μm程度のいわゆるミクロドメイン粒子からなるもの
である。また、懸濁重合PVC以外にもペーストPVCを使用
することができる。ここで、ペーストPVCとは、数μm
以下の粒子径をもつ真球状の微細粉末で、いわゆる乳化
重合法やミクロ懸濁重合法で製造されるものであり、前
記微細粉末はさらに径の小さい多数の微粒子から構成さ
れる。
本発明に用いられる金属水酸化物としては、たとえば
水酸化アルミニウム(脱水温度300℃)、水酸化マグネ
シウム(脱水温度350℃)、水酸化カルシウム(脱水温
度580℃)、水酸化スズ(脱水温度160℃)などがあげら
れるが、これらのなかでは水酸化アルミニウムおよび水
酸化マグネシウムは脱水温度が発泡体製造時に脱水が開
始するほど低くなく、また発泡体の燃焼が相当進行した
のちに脱水が開始するほども高くないので好ましい。前
記金属水酸化物のなかでは、水酸化アルミニウムおよび
水酸化マグネシウムは、発泡体が200〜400℃に加熱され
たときに脱水分解し、そのときの吸熱によって発泡体燃
焼時の発熱量を小さくして発泡体の温度上昇を抑制し、
また発泡体の変形量を小さくするという効果を呈するも
のである。これらのなかでは水酸化アルミニウムがとく
に好ましいものである。前記金属水酸化物の粒子径は小
さいほど一般に充填効果は大になるが、コストなどとの
兼ねあいもあり、通常、平均粒子径が0.2〜60μmのも
のが用いられる。
本発明においては、吸熱効果の大きい水酸化アルミニ
ウムなどに代表される金属水酸化物は、本発明の硬質発
泡体を建設省告示第1231号に規定される、たとえば断熱
材などとして用いられる不燃材料とするために使用され
る。かかる金属水酸化物の使用量は、PVC 100部に対し
て少なくとも900部、好ましくは少なくとも1000部であ
ることが望ましい。
なお、前記金属水酸化物の使用量は、多くなるにした
がって耐火性が向上するとはいうものの、熱伝導率の増
大、脆さ、製品重量の増大などの欠点が発生する傾向が
あるので、その使用量は、PVC 100部に対して2000部以
下、好ましくは1500部以下、さらに好ましくは1100部以
下であることが望ましい。
不燃基準を充分に満足する良好なセル径を有する発泡
体をうるためには、酸化亜鉛を含まない無機物質には造
核剤が含まれていることが好ましい。
前記造核剤の代表例としては、たとえばもっとも汎用
されているタルクなどがあげられる。かかる造核剤のな
かでもタルクは発泡体のセル径をコントロールする効果
にすぐれたものである。造核剤の粒子径は、小さいほど
一般に発泡体のセル径も小さくなる傾向があるので、所
望するセル径に応じて選定されるが、通常平均径は1〜
50μm程度であるのが好ましい。
前記造核剤の使用量は、PVC 100部に対して通常1〜2
00部、好ましくは50〜150部となるように調整されるの
が望ましい。
なお、本発明の硬質発泡体は、金属水酸化物および造
核剤などの酸化亜鉛を含まない無機粒状物を大量に含有
したものであるから、不適切な製法によっては耐衝撃性
が低下したり、吸水性や水蒸気透過性が大きいばあいが
ある。
そこで、これらの特性を低下させるおそれのあるばあ
いには、金属水酸化物および造核剤などの酸化亜鉛を含
まない無機粒状物の粒径(比表面積)とその使用量を適
度に調整することが有効となる。
すなわち、発泡体セル膜中における前記金属水酸化物
などの相互の接触の度合いおよびPVCと前記金属水酸化
物などとの界面の面積を適度にコントロールすることに
より、高度の耐熱性を阻害することなく、良好な耐衝撃
性と耐水性を兼備したすぐれた発泡体をうることができ
る。つまり、耐熱性は、前記金属水酸化物などの相互の
接触度合をあるレベル以上に保つことにより、高度の状
態に維持され、一方、耐衝撃性および耐水性は、PVCと
前記金属水酸化物などとの界面の面積を減少させること
により向上されるのである。
これらの性質は、具体的にはPVC単位量あたりの金属
水酸化物および造核剤などの酸化亜鉛を含まない無機粒
状物の総表面積を尺度として規定することができるもの
であり、通常耐衝撃性を向上させ、吸水性および水蒸気
透過性を小さくさせるためには、PVC 1gあたりの前記金
属水酸化物などの総表面積は、3〜30m2、好ましくは5
〜25m2、さらに好ましくは8〜18m2となるように調整さ
れることが望ましい。
本発明に用いられる溶剤としては、平均重合度が2400
であるPVC 100部、該溶剤100部および二塩基性ステアリ
ン酸鉛6部からなる混合物をプラストグラフを用いて室
温から昇温しつつ毎分30回転で混練したときに最大トル
クが4〜25N・mであるものが用いられる。
PVCと溶剤の相溶性の尺度を決定する方法としては、
たとえばプラストグラフで混練し、ゲル化の過程を調べ
る方法、透明容器中でPVCを懸濁させた溶液を加熱し、P
VCが溶解して透明化する温度を調べる方法などいくつか
の方法が考えられるが、静的な試験よりも動的、すなわ
ち実際に混練機で混練するに類似した状況のもとで評価
することがより現実の製造法に近似しており適当である
と考えられることから、当業者にも慣用されているプラ
ストグラフを用いる評価方法を本発明において採用し
た。
前記平均重合度2400のPVC 100部、溶剤100部および二
塩基性ステアリン酸鉛6部の混合物を用いたのは、プラ
ストグラフの操作性を考慮し、かつ可塑剤のPVC可塑化
の能力を調べる際に通常、当業者が用いるのに近い条件
とするためである。前記ブラストグラフとしては、ブラ
ベンダー社製のPLASTI-CORDER を用いる。回転速度を
毎分30回転としたのは、前記プラストグラフを用いて発
泡性組成物の混練・ゲル化の過程を調べる際に一般によ
く採用される回転速度であるためである。
PVC粒子は加熱されるとその表面が溶融し、PVC粒子同
士が粘着しはじめ、プラストグラフを用いたときのトル
ク値が次第に上昇し、最大トルク値を示す温度では粒子
内部はまだ固く溶融していないが、ほぼ全部の粒子が粘
着を終了している。
PVCとの相溶性のよい溶剤は、PVC粒子内部に入りこみ
やすく、粒子表面部分に存在する溶剤量が減少するた
め、たがいに粘着した粒子相互間の摩擦が大きくなり、
トルクも大きくなる。すなわち、最大トルク値の大きい
溶剤ほどPVCとの相溶性が大きくなると考えられる。
したがって、溶剤が示す最大トルク値は大きいことが
望ましいが、最大トルク値があまりにも大きくなりすぎ
たばあいには、発泡温度が低くなり、発泡時に発泡体を
相当な低温にまで冷却する必要が生じ、エネルギーロス
を招くので、25N・m以下、好ましくは20N・m以下、さ
らに好ましくは15N・m以下であることが望ましい。
また、溶剤が示す最大トルク値が小さくなるにしたが
ってえられる発泡体の発泡倍率が低下する傾向にあり、
発泡倍率が50倍以上の発泡体をうるためには、最大トル
ク値は、4N・m以上であることが望ましい。
一般に溶剤が最大トルク位を示すときの温度(以下、
最大トルク温度という)が低いほど発泡温度が低くなる
傾向があり、前記最大トルク温度が低すぎるばあいに
は、発泡温度が低くなりすぎてたとえば0℃以下という
ような冷却下で発泡を行なう必要が生じ、工業的に実施
が困難となる。
一方、最大トルク温度が高くなるにしたがって発泡温
度が高くなる傾向があり、あまりにも発泡温度が高くな
りすぎたばあいには、エネルギーロス、作業環境の悪化
など、工業的に実施が困難となる傾向がある。
これらのことを勘案すれば、最大トルク温度は40〜15
0℃、好ましくは50〜140℃、さらに好ましくは60〜130
℃であることが望ましい。
上記のような条件を満足する溶剤の一例を示せば、た
とえば芳香族系溶剤とケトン類との混合溶剤、エステル
類とケトン類の混合溶剤、セロソルブ類とケトン類の混
合溶剤などがあり、その具体例としては、たとえばトル
エン/シクロヘキサノン(重量比、以下同様)が3/1〜1
5/1の混合溶剤、トルエン/アセトンが2/1〜15/1の混合
溶剤、トルエン/ジイソブチルケトンが5/1の混合溶
剤、トルエン/メチルエチルケトンが5/1の混合溶剤、
トルエン/シクロペンタノンが5/1の混合溶剤、トルエ
ン/メチルイソブチルケトンが5/1の混合溶剤、トルエ
ン/メシチルオキサイドが5/1の混合溶剤、トルエン/
ジメチルホルムアミドが9/1の混合溶剤、酢酸n−ブチ
ル/シクロヘキサノンが5/1の混合溶剤などがあげられ
るが、これらの溶剤の例示はほんの一例であり、上記の
条件を満たせば他の溶剤を使用しうることは勿論のこと
である。
本発明に規定する溶剤の沸点(混合溶剤のばあいは、
混合溶剤としての沸点)は0〜250℃、好ましくは10〜2
10℃、さらに好ましくは20〜190℃であることが望まし
い。沸点があまりにも低いと発泡性組成物の混練時に該
溶剤が揮散消失するおそれがあり、一方、あまりにも高
いと発泡成形後に発泡体からの該溶剤の揮発除去が困難
となる。
なお、本発明の溶剤のなかには、スチレンモノマー、
アクリロニトリルモノマーなどの重合性を有する一般に
単量体といわれている液体は含まれない。なぜならば、
これらの単量体が発泡体製造工程中で重合し、最終の発
泡体中に存在すると、燃焼特性を大幅に悪化させるから
である。
発泡性組成物中に含まれる溶剤量は、PVCと溶剤の均
一ゲル相により金属水酸化物が包埋される程度をよくし
て発泡体中に大量の金属水酸化物を含有させ、またPVC
の粒状性および多孔性を消失させて発泡ガスの保持性を
向上させ、さらに発泡体中の残留応力ないし残留歪を小
さくするためには、発泡性組成物中の溶剤量は多いほど
好ましい。しかし、あまりにも多いばあいには、発泡適
性温度が低くなりすぎて実際の製造工程に不向きとなる
ことがある。したがって、溶剤量は、PVCの平均重合度
や溶剤のPVCとの相溶性の程度や金属水酸化物の使用量
などにもよるが、一般にPVC 100部に対して250〜3000
部、好ましくは350〜2000部、さらに好ましくは450〜10
00部であることが望ましい。
本発明に用いられる分解型発泡剤としては、たとえば
アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、
ジアゾアミノベンゼン、ジニトロソペンタメチレンテト
ラミン、p−トルエンスルホニルヒドラジドなどの熱分
解によりチッ素ガスを発生するものがあげられる。本発
明においてチッ素ガスを発生する分解型発泡剤が好適に
用いられるのは、チッ素ガスは発泡後、溶剤を揮散除去
する工程において、発泡体から透過逸散しにくいためで
ある。
前記分解型発泡剤の使用量は、所望する発泡倍率や発
泡剤の種類、金属水酸化物の使用量および溶剤の種類お
よびその量により異なるが、通常PVC 100部に対して5
〜100部、好ましくは10〜50部、とくに好ましくは20〜5
0部である。前記分解型発泡剤の使用量は、5部未満で
あるばあい、所望する発泡倍率とならなくなることがあ
り、また100部をこえると発泡時にセル膜の破断が生じ
やすくなる傾向にある。
なお、前記発泡剤は、必要に応じてたとえば尿素系の
発泡助剤などと組合せて用いられうる。
本発明に用いられる安定剤としては、PVCの分解劣化
を阻止する能力を有するものであればいずれのものをも
用いうる。かかる安定剤の具体例としては、たとえば二
塩基性ステアリン酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛、三塩基性
硫酸鉛やステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムな
どがあげられる。かかる安定剤の配合量は、耐熱性が要
求されない用途に供したときには使用しなくてもよい
が、通常の用途では、PVC 100部に対して、好ましくは
2〜20部、さらに好ましくは3〜7部であるのが望まし
い。なお、20部をこえても安定化効果はそれほど向上せ
ず、逆にコスト的に不利となる。
なお、本発明においては、さらにたとえば酸化チタ
ン、群青などの顔料;第三級アミン、アルキルスルホン
酸塩などの帯電防止剤など、通常プラスチックの添加剤
として用いられているものを必要に応じて適宜調整して
使用しうることはもちろんである。
つぎに本発明の硬質発泡体を製造する方法の一例につ
いて説明する。
まず、所定量に計量された原料をたとえば双腕ニーダ
ーなどの温度調節が可能でかつ高剪断力での混練が可能
な混練機に投入する。混練機の温度調節を行ない、PVC
と溶剤が相溶性を呈する温度以上でかつ溶剤の沸点以下
の温度で各原料が均一に分散されるまで混練し、必要で
あれば一度組成物の温度を下げ、発泡剤の分解温度以下
の温度でさらに発泡剤を投入して混練する。
ここで、本明細書にいう相溶性を呈する温度とは、PV
C、酸化亜鉛を含まない無機物質、溶剤および安定剤か
らなる混合物をプラストグラフを用いて任意の混練速度
で室温から昇温しつつ混練したときに最大トルクを示す
温度をいい、各原料の種類およびその量、混練機械の種
類、混練条件によってその都度異なった値をとる。
PVCと溶剤が相溶性を呈する温度以上でかつ溶剤の沸
点以下の温度で混練するのは、PVCと溶剤が相溶性を呈
する温度よりも低いばあい、発泡性細成物の混練時に溶
剤がPVCを分子オーダーまでときほぐしてPVCと均一ゲル
相を形成するという本発明の基本原理が満足されないた
めである。また溶剤の沸点よりも高いばあい、発泡性組
成物の混練時に溶剤が揮散消失する割合が大きくなるか
らである。
なお、たとえばPVCと溶剤が相溶性を呈する温度で分
解がはじまるような分解型発泡剤を使用するばあいに
は、PVC、金属水酸化物、溶剤および安定剤をPVCと溶剤
が相溶性を呈する温度以上で混練したのち、分解型発泡
剤の分解温度以下の温度でさらに分解型発泡剤を投入
し、さらに混練する。
つぎに調製された発泡性組成物を、たとえばアルミニ
ウム合金などからなる密閉金型に充填し、金型を油圧駆
動型加熱プレス機にセットするなどして、加圧下で該発
泡性組成物を加熱する。加圧および加熱条件は、発泡性
組成物の構成成分により異なるが、分解型発泡剤の分解
が実質的に完了することが必要である。これは発泡性組
成物に応じた適当な温度、たとえば80〜180℃および圧
力140kg/cm2以上が選定される。なお、所定温度、たと
えば130℃以上に達したら、5〜30分間程度その状態を
維持するのが好ましい。そののち金型を加圧したままプ
レス機の加圧加熱板温度を、水などの冷却媒体を用いて
発泡適性温度まで降下させる。発泡適性温度は、発泡性
組成物の組成や金型の形状およびその寸法などによって
異なるが、通常前記加圧加熱温度よりも低く、発泡時に
セル膜が破れることによる発泡ガスの逸散が生じないよ
うなPVC相の粘弾性を与える温度である。該発泡適性温
度はたとえば30〜100℃程度である。金型内容物が発泡
適性温度になったら金型を型開きし、金型内容物を大気
圧下に解放すると同時に発泡させることにより最終の硬
質発泡体がえられる。
発泡直後の硬質発泡体には、使用した溶剤が残存して
いるので、溶剤に応じた適当な温度で適当な時間放置し
て残存溶剤を揮散除去する。なお、発泡体からの有機溶
剤の除去はカッターなどで切断して表面積を大にするこ
とで除去を促進させることもできる。
本発明の硬質発泡体の発泡倍率は、該硬質発泡体を断
熱材として用い、JIS A 1321に規定された表面試験およ
び基材試験(すなわち不燃規格)に合格させるために
は、50倍以上にするのが好ましく、燃焼時の発熱量、発
煙量および経済性を考慮するばあいには、さらに高発泡
倍率を有する発泡体とすることが望ましく、好ましくは
60倍以上、さらに好ましくは80倍以上である。しかしな
がら、発泡倍率が200倍をこえるばあいには、正常な発
泡体を製造することが困難なうえ、仮に良好な発泡体が
えられたとしても強度などの物性が不充分となるため、
200倍以下であることが好ましい。
以上は本発明の硬質発泡体の製造法の一例であり、本
発明の硬質発泡体は他の製造法によって製造されてもよ
いことは勿論である。
以下に本発明の硬質発泡体を実施例にもとづいて詳細
に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定される
ものではない。
実施例1〜3および比較例1 第1表に示す原料を第2表に示す割合で総量が30kgに
なるように計量した。
発泡剤以外の原料すべてを有効容量20lの双腕ニーダ
ーに投入し、ニーダーのジャケットに熱水を通して、原
料の混練温度が第2表に示した温度となるように調整し
て30分間混練して組成物をえた。
つぎにニーダーシャケットに温水を通し、ニーダー内
の組成物の温度を約60℃にまで下げてから発泡剤を投入
し、ひきつづき10分間混練して発泡性組成物をえた。
混練後の発泡性組成物をキャビティ寸法870mm×800mm
×35mmのアルミニウム合金製金型に充填し、金型をアル
ミニウム板で蓋をし、油圧駆動型加熱プレス機にセット
して、室温(約20℃)から130℃まで10分問で昇温し
た。
プレス機の締付圧は各実施例において金型面積1cm2
たり約150kgであった。
つぎに金型を140℃で10分間保持したのち、プレス機
冷却板に温水を通して、金型温度を発泡に適性な温度、
すなわち発泡温度にまで約10分間で降温し、そのままの
発泡温度で約30分間保持した。
そののちプレス機の締付圧を解放したところ、金型内
容物は約1秒間で発泡を完了した。
えられた発泡体はいずれも外観美麗であり、切断面の
気泡の均一性も良好であった。
発泡体を熱風循環式オーブンに入れ、75℃で約2日間
放置して溶剤を揮散除去した。
つぎに、発泡体のPVC 1gあたりの無機粒状物の総表面
積、見掛密度および発泡倍率を下記の方法にしたがって
測定した。また、JIS A 1321に準じて表面試験および基
材試験を行なった。その結果を第2表に示す。
(PVC 1gあたりの無機粒状物の総表面積) 柴田化学器械工業(株)製、D−700型を用い、BET法
にしたがって測定した。
(見掛密度) 発泡体から25mm角の立方体または75mm×25mm×15mmの
直方体を切出し、体積と重量を測定して算出した。
(発泡倍率) 第2表のPVC 100部に対する酸化亜鉛を含まない無機
物質、発泡剤および安定剤の配合量(部)から発泡体中
のPVCの見掛密度を式: [発泡体中のPVCの見掛密度]= [発泡体の見掛密度]×100/(100+[酸化亜鉛を含
まない無機物質量+発泡剤量+安定剤量])(g/cm3
より求めた。
PVCの比重を1.4として発泡倍率を式: [発泡倍率]=[1.4/発泡体中のPVCの見掛密度]
(倍)より算出した。
第2表に示した結果から明らかなように、実施例1〜
3でえられたいずれの硬質発泡体もJIS A 1321による表
面試験および基材試験に合格するものであり、不燃性発
泡体として好適に使用しうるものであることがわかる。
一方、比較例1でえられた硬質発泡体は、表面試験には
合格するものであるが、基材試験では炉内最高温度が80
6℃と合格基準の800℃を上まわるものであった。
比較例 2 実施例1において、水酸化アルミニウムの使用量を80
0部とし、さらに酸化亜鉛(平均粒径0.5μm)200部を
加えたほかは実施例1と同様にして発泡体をえた。
この発泡体の見掛密度は0.173(g/cm3)、発泡倍率は
97倍であった。
なお、発泡倍率は、前記[発泡体中のPVCの見掛密
度]を求める式中の「酸化亜鉛を含まない無機物質量」
を、「酸化亜鉛を含まない無機物質量+酸化亜鉛量」に
かえて求めた[発泡体中のPVCの見掛密度]を用いて求
めた値である。
この発泡体を実施例1でえられた発泡体とともに200
℃の熱風循環式オーブン中に30分間放置したところ、実
施例1でえられた硬質発泡体はまったく変色しなかった
のに対し、この発泡体は真黒に変色した。
[発明の効果] 本発明の硬質発泡体は、不燃特性を有するものである
から、たとえば不燃性建材などとして好適に使用しうる
ものである。
また、本発明の硬質発泡体は、石綿を必要としないの
で人体に対する安全衛生面にすぐれ、燃焼時の発熱量、
発煙量、有毒ガス発生量や変形量などが小さく、また高
温下で使用したときの寸法安定性すなわち耐熱性にすぐ
れ、しかも強制燃焼させても崩壊を生ぜしめる有害な灰
化の発生がなく、安価なものであるので、建築用断熱材
などとして好適に使用することができるものである。

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】塩化ビニル樹脂100重量部に対して酸化亜
    鉛を含有せずに金属水酸化物900重量部以上を含有して
    なる硬質発泡体。
  2. 【請求項2】塩化ビニル樹脂の平均重合度が1500〜5000
    である請求項1記載の硬質発泡体。
  3. 【請求項3】金属水酸化物が水酸化アルミニウムである
    請求項1記載の硬質発泡体。
  4. 【請求項4】造核剤を含有してなる請求項1記載の硬質
    発泡体。
  5. 【請求項5】造核剤がタルクである請求項4記載の硬質
    発泡体。
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