JP2920840B2 - Ti―Ni系合金加工方法 - Google Patents

Ti―Ni系合金加工方法

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) この発明はTi−Ni系合金加工方法に関するものであ
り,さらに詳しくは家電製品,自動車用アクチュエータ
ーおよび医療器具用バネ材などに用いられる形状記憶効
果を示すTi−Ni系合金の加工方法の改良に関するもので
ある。
(従来の技術) 形状記憶合金,特にTi−Ni系合金がマルテンサイト変
態の逆変態に附随して顕著な形状記憶効果を示すことは
よく知られている。
かかるTi−Ni系合金からなる素材を製造する従来一般
的な方法においては、,高周波真空溶解によって得られ
たインゴットを800〜900℃の温度条件下で熱間加工し,
さらに700℃以上の温度で中間歪取り焼鈍を繰返しなが
ら各回につき10〜20%の減面率で冷却間加工を施すこと
により所定寸法の素材を得ていた。
(発明が解決しようとする課題) 上記のように従来の焼鈍は700℃以上の温度で行われ
ている。これは熱間加工を800〜900℃で行うことでTi−
Ni系合金の変形抵抗を小さくできることから,冷間加工
に際しては少なくとも合金の再結晶温度以上で加熱する
必要があるからである。
しかし,このような温度範囲を採用するが故に冷間加
工時に結晶粒子の生長が促進されて粒子が粗大化し,得
られる合金の機能性を最大限に発揮させることができな
いという欠点がある。
この発明の目的は冷間加工時における結晶粒子の生長
を抑制することにより,得られる合金の機能性を最大限
に発揮させることにある。
(課題を解決するための手段) この発明によれば、Ti−Ni系合金の冷間加工の中間歪
取り焼鈍を550〜600℃の温度範囲で行い、形状記憶処理
後に5μm以下の結晶粒径の有する合金を得ることを特
徴とするTi−Ni系合金加工方法が得られる。
(実施例) 原子比にして50.7%のNiを含むTi−Ni系合金の熱間加
工上り材を1000℃で溶体化処理した後圧下率25%の加工
を施し,ついで500〜670℃の範囲の種々の温度で冷間加
工した。得られたサンプルについて冷間加工温度と硬度
との関係を測定した。500℃,550℃,及び600℃で冷間加
工したときのそれぞれの結果を第1図に示す。図中横軸
に冷間加工時間(Hr)を縦軸にビッカース硬度(Hv)を
とってある。
尚、650℃以上の温度では早期に再結晶化が起きてそ
の硬度は260Hvであった。また、図から明らかなよう
に、550℃以下の温度では冷間加工時間を2Hrとしても硬
度の充分な低下が認められなかった。これはこの温度範
囲では内部応力の低減が不充分だからである。一方550
〜600℃の温度範囲では,得られる硬度は650℃以上の場
合と同程度まで低下し,再冷間加工が可能な歪の回復が
あったことが確認された。
また1000℃で溶体化処理したサンプルと550℃で冷間
加工したサンプルの組織を観察した結果を第2図に示
す。図から明らかなように550℃で冷間加工したサンプ
ルの場合には再結晶化による結晶粒子の粗大化が防止さ
れており,繊維状組織が残っている。また600℃で冷間
加工したサンプルの場合でも,冷間加工時間を長くする
ことにより,550℃で冷間加工したサンプルと同様の組織
が得られることが確認された。
中間冷間加工温度を650℃,600℃および550℃の3通り
にし,圧下率75%で得た加工材のそれぞれを,725℃の温
度で30〜1800秒熱処理して得たサンプルについて結晶粒
子の状態を観察した。その結果を別表に示す。
650℃の焼鈍処理サンプルの場合の結晶粒子は熱処理
時間には依存せず,粒子の粗大化が即座に進行してい
る。これに対して600℃および55℃の焼鈍処理サンプル
の場合には熱処理時間に伴って結晶粒子は大きくなって
おり,短時間処理によって粒径を5μm以下とすること
ができた。
このように,この発明によれば,中間焼鈍を0〜600
℃とすることにより,最終熱処理時の合金結晶粒子の大
きさを任意に調節することができる。かつ5μm以下の
結晶粒子を得ることも可能になることが明らかになっ
た。
なお,この発明において焼鈍温度を550℃以上とした
のは,この下限温度未満では加工歪の回復が不充分だか
らである。さらに600℃以下としたのは,この上限温度
を越えると再結晶が進行し易く,工程制御が難しいから
である。
さらに別表中のサンプルNo.9〜12について20℃におけ
る5%引張下での歪曲線を求めた結果を第3図に示す。
この結果から合金結晶粒子が小さい程加重時と最加重時
の応力が近いことが分る。すなわちエネルギー回収効率
は結晶粒子に依存していることが分る。
(発明の効果) この発明によれば,加工中における結晶粒子の生長を
自由に抑制できるので,機能性の秀れたTi−Ni系合金の
提供が可能となった。
【図面の簡単な説明】
第1図はこの発明の実施例における種々の焼鈍温度条件
下における焼鈍時間と得られたサンプルの硬度との関係
を示すグラフ,第2図は同実施例において得られたサン
プルの金属組織を示す写真,第3図は同実施例中の一部
のサンプルの応力−歪線図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C22F 1/10,1/18

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Ti−Ni系合金の冷間加工の中間歪取り焼鈍
    を550〜600℃の温度範囲で行い、形状記憶処理後に5μ
    m以下の結晶粒径の有する合金を得ることを特徴とする
    Ti−Ni系合金加工方法。
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