JP3065782B2 - チタン合金の水素処理方法 - Google Patents

チタン合金の水素処理方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、チタン合金の主に金属
組織を改善するために、一時的に水素を吸蔵、排出させ
る方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】チタン合金は比強度が高くかつ耐食性が
優れていることから、航空機用部材をはじめ多くの構造
材料分野で使用されており、近年その用途はさらに拡大
しつつある。とりわけ、α型、α+β型チタン合金はそ
の需要の大部分を占め、例えば航空機用部材では、疲労
特性、加工性等に優れた材料、すなわち微細で等軸的な
組織を有する材料が要求されている。また、このような
用途への材料に対しては、従来からも厳格な品質規格
(例えばAMS4967)があり、等軸的な組織を有す
る材料が要求されている。
【0003】例えば、α型およびα+β型チタン合金に
ついては、このような分野で使用される各種形状(板、
線、管、棒等)を有する製品は、通常熱間加工と熱処理
の組み合わせにより製造される。しかし、内部の組織は
温度変化に対して非常に敏感に変化し、例えば、わずか
な温度上昇によっても結晶粒が成長し、加工後の組織が
不均一になりやすい。さらに、この熱間加工時に形成さ
れた組織は、後の熱処理によってはあまり改善されな
い。
【0004】このようなことから、チタン合金の微細か
つ等軸的な組織を得る製造方法として、本発明者らはチ
タン合金に水素を0.02〜2重量%吸蔵させ、時効処
理を行い、次いで水素排出処理を行う方法を提案した
(特願昭63−329431号)。この方法では、時効
処理後常温まで冷却し、次いで再加熱により水素排出処
理を行うことを前提としていたが、材料の形状や大きさ
あるいは水素吸蔵量によっては、材料に表面割れ等の欠
陥が生じる場合があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、チタン合金
の組織を従来の加工と熱処理によらないで微細でかつ等
軸的にすることを可能にし、疲労特性、加工性等に優れ
た材料とするために、一時的に水素を吸蔵、排出させて
組織を改善する処理において、表面割れ等の欠陥を生ず
ることなく、時効処理、水素排出処理を施すチタン合金
の水素処理方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するために種々の検討を重ねた結果、以下の事実
を見出した。α型、α+β型チタン合金に水素を多量に
吸蔵させ、比較的低い温度範囲にて時効処理すると、材
料中に水素化物が微細に析出し、次いでこの材料を真空
中にて焼鈍すれば、水素が除去されるとともに再結晶に
より微細でかつ等軸的な組織が得られる。しかし、時効
処理後の材料は水素化物析出により脆化する傾向にあ
り、時効処理の冷却時および水素排出処理の昇温時の熱
応力により割れが生じる場合があることが判明した。こ
の傾向は材料の形状が複雑でサイズが大きいほど、水素
吸蔵量が多いほど顕著であるが、最も影響する因子とし
て、時効処理から水素排出処理に移行する過程の温度が
重要であり、ここでの最低温度が低いほど割れ発生が顕
著となること、この温度を200℃以上に規制すれば表
面割れ等の欠陥を完全に防止できることを見出した(図
1)。
【0007】本発明は、上記知見に基づいてなされたも
のであり、その要旨とするところは以下に示す通りであ
る。すなわち、チタン合金に水素を吸蔵させる処理、時
効処理、該時効処理に引き続く水素排出処理を少なくと
も含むプロセスにおいて、前記時効処理から前記水素排
出処理に移行する過程において前記チタン合金の温度を
少なくとも200℃以上とすることを特徴とするチタン
合金の水素処理方法である。
【0008】以下に、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の対象材は、α型およびα+β型チタン合金であ
る。素材としては、インゴット等の鋳造材、鍛造、分塊
圧延、熱間圧延、熱間押出および熱処理等を行った熱間
加工製品、あるいは冷間加工製品、さらには粉末のプレ
ス成形材等において、針状組織を有する材料、または、
これらの素材を溶接あるいはろう付けした部材および溶
接管等の製品に適用できる。すなわち、素材の形状、大
きさおよび製造履歴に関わらず適用できる。また、素材
への水素吸蔵量に関係なく適用できるが、最終の組織細
粒化のためには多いほうが望ましく、その場合前述した
ように割れやすいので、本発明の効果がより大きく現れ
る。
【0009】チタン合金素材に水素を吸蔵させた後、必
要に応じてα+β域あるいはβ域にて溶体化処理し、次
いで時効処理により水素化物を析出させ、材料温度を2
00℃以上としたまま最終の水素排出処理に移行する。
時効処理から水素排出処理に移行する過程の最低温度を
200℃以上としたのは、前述したように200℃未満
になると熱応力により材料に表面割れ等の欠陥が発生す
るからである。この過程での他の熱履歴、例えば時効処
理の冷却条件、水素排出処理の昇温条件あるいは所要時
間等は特に規定されるものではないが、製造効率等を考
慮すると、同一炉内で時効処理温度から連続的に加熱し
水素排出処理温度まで到達させるのが望ましい。時効処
理温度範囲は200〜700℃が良いが、最終の組織細
粒化のためには300〜530℃が望ましい。この温度
範囲では水素化物が微細析出するため、材料の脆化傾向
は著しいが、本発明の目的とする割れ防止の効果は最も
大きく現れる。時効処理の雰囲気としては、大気あるい
は不活性ガス(アルゴン、窒素等)雰囲気、あるいは水
素を含む不活性ガス雰囲気が望ましい。水素排出処理温
度・時間については、特に限定されるものではなく、通
常加工後の再結晶のための条件で良いが、できるだけ低
温が望ましい。ただし、吸蔵させた水素を排出するため
に、処理雰囲気を減圧とする必要がある。
【0010】
【実施例】代表的なα+β型チタン合金であるTi−6
Al−4V合金の板(4mm厚さの500mm角)を用い
て、水素を1.0重量%吸蔵させ、β域にて溶体化処理
(830℃で20分保持後空冷)した後、表1に示す条
件で時効処理から水素排出処理までを行った。その時の
材料の表面および内部割れを目視および光学顕微鏡によ
り観察・評価した結果を実験条件とともに表1に示す。
尚、内部の金属組織も調べたが、いずれの実験条件でも
良好な微細かつ等軸的な組織が得られた。
【0011】この結果からも明らかなように、本発明法
によれば材料に表面割れ等の欠陥を生ずることなく、時
効処理後の材料から水素を排出させることができる。
【0012】
【表1】
【0013】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、従
来の加工と熱処理では困難であった微細かつ等軸的な組
織を有するチタン合金材を、水素を一時的に吸蔵・排出
させて製造するために、材料に表面割れ等の欠陥を生ず
ることなく水素を排出させることができる。従って、本
発明の産業上の有用性は極めて顕著である。
【図面の簡単な説明】
【図1】Ti−6Al−4V合金に水素を1.0重量%
吸蔵させ、β域にて溶体化処理(830℃で20分保持
後空冷)した後、時効処理から水素排出処理までを行っ
た場合の時効〜水素排出間の最低温度と材料の割れ発生
状況との関係を示す図。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22F 1/00 - 3/02

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 チタン合金に水素を吸蔵させる処理、時
    効処理、該時効処理に引き続く水素排出処理を少なくと
    も含むプロセスにおいて、前記時効処理から前記水素排
    出処理に移行する過程において前記チタン合金の温度を
    少なくとも200℃以上とすることを特徴とするチタン
    合金の水素処理方法。
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