JP2918654B2 - ホイップクリーム - Google Patents

ホイップクリーム

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JP2918654B2 JP2204830A JP20483090A JP2918654B2 JP 2918654 B2 JP2918654 B2 JP 2918654B2 JP 2204830 A JP2204830 A JP 2204830A JP 20483090 A JP20483090 A JP 20483090A JP 2918654 B2 JP2918654 B2 JP 2918654B2
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賢治 舛井
毅 安増
正延 打越
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、豊かな乳味感、こく味感を有するホイップ
クリームに関する。
[従来の技術及び発明が解決しようとする課題] 牛乳を遠心分離して得られる生クリームは、天然の好
ましい乳味感、こく味感に代表される風味を有し、ホイ
ップクリーム用などに幅広く用いられている。また、近
年、食生活の洋風化並びに高級志向などの影響として、
前記用途の他に料理、調理用としての需要が増加する傾
向がある。しかしながら、生クリームは高価であるだけ
でなく、品質的にも一定なものにするのがむずかしいと
か、あるいは天然物であるが故に物性の面で欠点を有し
ており、使用上も制約される。
例えば、ホイップ用生クリームでは良好なホイップ状
態を保つ時間が短く、オーバーホイップとなり、水分離
が起こり易く、水中油型(O/W)分散の安定性の面から
も問題がある。
これらの品質上、物性上及び価格上の問題を解消する
目的で、動植物性食用油脂を用いた合成クリームが開発
されており、生クリームあるいは乳脂肪を含んだコンパ
ウンドクリームが広く利用される様になっている。
しかしながら、その様に生クリーム、乳脂肪を含んだ
コンパウンドクリームも、生クリームの有する乳味感、
こく味を発現させるためには、多量の生クリームあるい
は乳脂肪を用いなければならず、必ずしも風味的に満足
するものが得られ難いのが現状である。
[課題を解決するための手段] 以上の様な状況にもとづき、本発明者らは少量の乳成
分においても、充分な乳味感、こく味感を有するO/W乳
化物を得るため鋭意研究した結果、ジグリセリドと蛋白
質及び必要に応じ乳成分を特定量含有させて水中油型乳
化油脂組成物をつくれば、ホイップクリームの乳味感、
こく味感が飛躍的に向上することを見い出し、本発明を
完成するにいたった。
即ち、本発明は油相中に1種又は2種以上のジグリセ
リドを10重量%以上20重量%未満含有し、水相中には0.
1重量%以上の蛋白質を含有してなるホイップクリーム
に係わるものである。より好ましくは油相/水相の重量
比が10/90〜70/30であり、油相中全油脂量を基準にして
10重量%以上20重量%未満の一種又は二種以上のジグリ
セリドを含有し、水相中0.1重量%以上の蛋白質を含有
し、油滴表面に蛋白質が凝集してなり、更に、乳成分を
0.1重量%以上含有することを特徴とする、乳味感、こ
く味感に優れたホイップクリームを提供するものであ
る。
本発明で用いるジグリセリドとしては上昇融点が20℃
未満、好ましくは−20〜15℃のジグリセリド(グリセリ
ンジ脂肪酸エステル)が好ましい。かかるジグリセリド
を構成する脂肪酸としては、炭素数16〜22の不飽和脂肪
酸が好ましく、その含有量としてはジグリセリドの脂肪
酸残基を基準として70重量%以上、中でも80重量%以上
が好ましい。尚ジグリセリドの構成脂肪酸としては2個
以上の二重結合を有する高度不飽和脂肪酸含量が70重量
%を越えないことが好ましく、更に好ましくは60重量%
以下である。
中でもジ不飽和ジグリセリドを用いるのが好ましい。
就中、ジシス不飽和ジグリセリドが好ましく、その含有
量としてはジグリセリドを基準として50重量%以上が好
ましい。更には70重量%以上が好ましい。
本発明に用いる上昇融点が20℃未満のジグリセリド
は、天然起源の油脂、例えばサフラワー油、ナタネ油、
コーン油、大豆油、綿実油、オリーブ油、パーム油等の
植物油、更にはラード、牛脂、魚油、バター脂等の動物
脂、あるいはそれらの硬化油、分別油、ランダムエステ
ル交換油から選ばれた1種以上の油脂とグリセリンの混
合物を、アルカリ金属又は(及び)アルカリ土類金属の
水酸化物の存在下でエステル交換するか、又は不飽和脂
肪酸レベルの高い脂肪酸組成物とグリセリンの混合物を
エステル化反応することにより得られる。
生成ジグリセリド混合物中に形成された過剰のモノグ
リセリドは、油脂組成物中に高い比率で含まれると、口
腔内にて水と相互作用してゲル物質を形成し、食感に著
しい悪影響を及ぼすため、予め分子蒸留法あるいはクロ
マトグラフィー法によって除去することが好ましい。従
ってモノグリセリドは全油脂量を基準として10重量%以
下が好ましく、更に好ましくは0〜5重量%である。
また、本発明に用いる油脂は、天然起源の油脂、例え
ば、サフラワー油、オリーブ油、綿実油、ナタネ油、コ
ーン油、大豆油、パーム油等の植物油脂、更にはラー
ド、牛脂、魚油、バター脂等の動物油脂あるいはそれら
の硬化油、分別油、ランダムエステル交換油から選ばれ
た1種又は2種以上の油脂である。
更に、口溶け性を重視するために、固形脂として、ハ
ードバターを用いることができる。又、乳化安定性や起
泡力を安定化させる為にも固形脂を用いるのが好適であ
る。例えば、ヤシ油やパーム核油からつくられるラウリ
ン系のハードバター、あるいは大豆油、コーン油などの
植物油脂をトランス酸の生成の多い条件下で水素添加し
て得られる油脂をそのまま、あるいは溶剤分別して得ら
れるトランス型ハードバター、また、パーム油、シア
油、イリッペ脂等のトリグリセリドの2位の位置にオレ
イン酸を多量に含有する油脂を溶剤分別して得られる中
融点画分のテンパリング型ハードバター、更にそのテン
パリング型ハードバターを、1,3位に選択性を有するリ
パーゼにより適当な脂肪酸あるいは脂肪酸エステルとエ
ステル交換を行い得られるPOSt脂(1−パルミトイル−
2−オレオイル−3−ステアロイルグリセリン)、およ
びカカオ脂から選ばれる1種又は2種以上のハードバタ
ーを用いることができる。
上記の油脂あるいはハードバターと上昇融点が20℃未
満のジグリセリドとを組み合わせて製造された油脂を使
用し得る。これらの組み合わせから一般に次の値 N10≦60,N20=5〜40,N30=0〜20,N35=0〜10 に相当する油脂固体プロフィル(NMRにより各温度で測
定した固体脂%)を有し、ジグリセリドを10重量%以上
30重量%未満含有する油脂組成物を製造することが好ま
しい。
油脂固体プロフィルは各種温度(例えば10〜35℃)に
おけるN値で表され、結晶脂肪のレベルを%で示したも
のである。
油脂固体プロフィルは、例えば日本油化学協会制定の
基準油脂分析試験法の暫3−1983、暫定固体脂含量(NM
R法)により測定することができる。
本発明乳化物中の水相の割合は、乳化物中30〜90重量
%、即ち、油相/水相の重量比が10/90〜70/30となる割
合が好ましい。水相中には、卵蛋白質、乳蛋白質、大豆
蛋白質、小麦蛋白質等の蛋白質、複合蛋白質及びこれら
蛋白質の分解物から選ばれる一種又は二種以上の蛋白質
を0.1重量%以上、好ましくは、0.2〜30重量%含有す
る。
また、上記蛋白質を含む粉体、溶液等を蛋白質含量と
して0.1重量%以上含有させてもよい。蛋白質の含有量
が水相中0.1重量%未満の場合には、乳味感、こく味感
の発現が不充分となり、効果が現われない。
本発明において、油滴表面に蛋白質の凝集が観察さ
れ、乳化物の風味と密接な関係があることを見出した。
即ち、本発明における油滴表面の蛋白質の凝集とは、透
過型電子顕微鏡を用いて観察されうるものであり、更に
はAgriculturalBiological Chemistry45巻、2491〜2496
頁においてShimizuらが述べる方法によって定量するこ
とが可能であり、発明者らはこの方法に準じて、油滴表
面に形成される蛋白質の凝集層の分画を行い、本発明に
おけるジグリセリドを用いた乳化物の油滴表面では著し
く蛋白質の凝集量が増加しており、しかも乳化組成物中
のジグリセリド含量の増加に従い、油滴表面における蛋
白質の凝集量が増加してゆくことが認められ、乳化物の
風味・食感との間に有意な相関を見出した。
また、本発明乳化物は乳成分を0.1重量%以上含有さ
せることが好ましい。乳成分とは、生乳、脱脂乳、全脂
粉乳、乳脂肪、乳清、生クリーム、チーズ類、ヨーグル
ト類、バター、バターミルク又はそれらを濃縮加工した
ものを意味する。(あるいはミルクフレーバー、バター
フレーバー等、乳製品に用いられる呈味剤、フレーバー
をも意味する。)これらの含有量は0.1重量%以上が好
ましく、より好ましくは0.5〜50重量%含まれる。
又、本発明乳化物の油相中には目的に応じて、他の呈
味料、フレーバー、香味料、乳化剤、安定剤等の添加剤
を加えることができ、水相中には乳化安定性強化を目的
として蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステ
ル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等の乳化剤、及びア
ラビアガム、キサンタンガム、カラギーナン、ローカス
トビーンガム、タマリンドガム、澱粉、α化澱粉、ペク
チン等の高分子多糖類の一種又は二種以上を配合するこ
ともできる。更に本発明乳化物の水相には、目的に応じ
て食塩、糖、食酢、香辛料糖の調味料、香味料及び着色
料等の各種添加料・添加剤も配向することができる。
[発明の効果] 本発明のホイップクリームは、油相成分としてジグリ
セリドを特定量含有し、水相の1成分として蛋白質を用
いて油滴表面に蛋白質を凝集させ、かつ好ましくは乳成
分を特定量含有することにより、クリームの乳味感、こ
く味感を著しく向上するものである。
[実施例] 以下に参考例、実施例、比較例をもって本発明乳化物
の効果を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限
定されるものではない。
参考例(油脂試料の調製) ナタネ白絞油75重量部及びグリセリン25重量部を混合
し、これに水酸化カルシウム0.1重量部を加え常法によ
りエステル交換反応を行なった後、分子蒸留法によりモ
ノグリセリドを除去し、更に常法により精製を行なって
エステル交換油を得た。このエステル交換油のグリセリ
ド組成はトリグリセリド19.4%、ジグリセリド79.6%、
モノグリセリド1.0%であった。
次に上記エステル交換油とナタネ白絞油を表−1に示
す割合で配合し、油脂試料(1)、(2)を調製した。
これら油脂試料及びナタネ白絞油のグリセリド組成を表
−1に示す。
実施例1 ヤシ硬化油10重量部、ナタネ硬化油10重量部、乳脂肪
5部に油脂試料(1)を15重量部、配合、溶解した油相
に、乳化剤として蔗糖脂肪酸エステル0.2重量部、レシ
チン0.2重量部、グリセリン脂肪酸モノエステル0.1重量
部を加えて油相を調製した。
カゼインソーダ0.5重量部、脱脂粉乳3.5重量部、リン
酸第2ソーダ0.2重量部を精製水51重量部に溶解し水相
を調製した。
75℃にて油相を水相に加えながら、ホモミキサーにて
乳化したO/W乳化物を更にホモゲナイザーにて乳化した
後、得られた乳化物を氷中にて撹拌冷却し、5℃にて24
時間静置した。
調製したO/W乳化物を5℃にて砂糖10重量部、O/W乳化
物90重量部の割合にて混合、ホバートミキサーにてホイ
ップさせ、ホイップクリームを調製、評価サンプルとし
た。
比較例1 実施例1において、油脂試料(1)に代え、油脂試料
(2)を用い、他は全て実施例1に従ってO/W乳化物を
調製し同様に評価を行なった。
比較例2 実施例1において、油脂試料(1)に代え、ナタネ白
絞油を用い、他は全て実施例1に従ってO/W乳化物を調
製し同様に評価を行なった。
表−2から明らかな様に、ジグリセリド含有量が10重
量%以上20重量%未満において豊かな乳味感、こく味感
が発現することがわかる。
実施例2及び比較例3,4 菜種油と精製菜種油ジグリセリドを表−3に示す割合
で配合したもの3重量部に、硬化油3重量部、乳脂4重
量部を配合、溶解した油相に、乳化剤として蔗糖脂肪酸
エステル0.4重量部、レシチン0.26重量部、グリセリン
脂肪酸モノエステル0.2重量部を加えて油相を調製し
た。
一方、全脂粉乳10重量部、ヘキサメタ燐酸ソーダ0.16
重量部を精製水90重量部に溶解し、水相を調製した。
以下実施例1の方法に従い、O/W乳化物、ホイップク
リームの調製を行い、評価サンプルとした。
油滴表面の蛋白質の凝集量は以下の方法で測定した。
上記のO/W乳化物15gを5℃,10000gで30分間遠心分離を
行い、水相とクリーム層に分離する。得られたクリーム
に0.25M蔗糖水溶液を15g添加し、5℃で分散させた後、
5℃,10000gで30分間遠心分離を行い、クリーム層を洗
浄する。3回洗浄操作を繰り返し、得られたクリーム層
に0.25M蔗糖水溶液15gを加え、40℃で静置し油相を分離
し、40℃,10000gで15分間遠心分離を行い、水相と凝集
物層、油相を分離する。更に0.25M蔗糖水溶液15gを加
え、同様の操作を3回繰り返し、得られた凝集物層と油
相に蒸留純水15gを加え、40℃に静置し油相を吸引して
除去する。残余の油相についてはn−ヘキサンを重層
し、n−ヘキサン中に溶解せしめた後除去した。こうし
て調製した凝集物と遠心分離で分離された各水相の蛋白
質の定量を行った。その結果を表−4に示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 打越 正延 茨城県鹿島郡波崎町土合本町1丁目8762 ―23 花王寮 (72)発明者 田中 幸隆 茨城県鹿島郡波崎町土合本町1丁目8762 ―23 (56)参考文献 特開 平3−76533(JP,A) 特開 平3−91451(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) A23C 1/00 - 23/00

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】油相中に1種又は2種以上のジグリセリド
    を10重量%以上20重量%未満含有し、水相中には0.1重
    量%以上の蛋白質を含有してなることを特徴とするホイ
    ップクリーム。
  2. 【請求項2】ジグリセリドが a)上昇融点が20℃未満であり b)構成脂肪酸中の炭素数16〜22の不飽和脂肪酸含量が
    70重量%以上であり c)2個以上の二重結合を有する高度不飽和脂肪酸含量
    が70重量%を越えない ことを特徴とする請求項1記載のホイップクリーム。
  3. 【請求項3】蛋白質が卵蛋白質、乳蛋白質、大豆蛋白
    質、小麦蛋白質及びこれら蛋白質の分解物からなる群か
    ら選ばれる一種又は二種以上の蛋白質である請求項1記
    載のホイップクリーム。
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