JP2918604B2 - 摺動型ブッシュ組立体 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 【産業上の利用分野】

本発明は摺動型ブッシュ組立体に関するもので、詳し
くは車両のサスペンション、例えばダブルウィッシュボ
ーンにおけるアッパーアームと車体との連結部に用いて
好適な摺動型ブッシュ組立体に関するものである。

【従来の技術】

従来、車両サスペンション等の枢支連結部に使用され
るブッシュ組立体は、一般に同心的に配設される内外二
つの筒状部材間にゴム材料からなる筒状の弾性部材が介
装された構造であり、その弾性部材のばね特性によっ
て、主として軸直角方向の振動を吸収するようになって
いる。 しかし、このような構造のブッシュ組立体は、軸直角
方向の剛性を上げると捩り剛性が増加するという難点が
あった。このために、上記筒状部材と弾性部材との間
に、この弾性部材による捩り剛性を低減させるための摺
動部材を介在させることが、例えば、英国特許第104582
7号や米国特許第3331642号の明細によって提案されてい
る。 このように筒状部材と弾性部材との間に摺動部材を介
在させた摺動型ブッシュ組立体は、摺動部材によって筒
状部材と弾性部材間の摩擦抵抗が軽減し、筒状部材と弾
性部材は容易な相互の回転が可能となるから、軸直角方
向の剛性を保持すると共に軸回転方向の捩り剛性を低く
することができる。そして従来、この摺動用樹脂材料か
らなる円筒状摺動部材は補強と信頼性向上を考えて内側
から、あるいは外側から金属材料からなる支持筒に圧入
されて用いられていた。例えば特開昭61−127934号公報
においては剛性スリーブ部材（摺動部材）の端部を、半
径方向外方に延びる外フランジ部とその外フランジ部の
外周縁から軸方向外側に延びる筒城延長部にて構成さ
せ、かつ摺動部材が一端に半径方向外方に延びる外フラ
ンジ部を有する二つの円筒体にて構成され、かつ、その
二つの円筒体を、その外フランジ部がブッシュ組立体の
端部側に位置するように円筒部材と前記剛性スリーブ部
材との間に配置させ、そのいずれかで圧入固定して円筒
体と内筒部材との間、あるいは剛性スリーブと円筒体と
の間で相対回動を行なったり、又は円筒体をいずれにも
固定せずに、剛性スリーブ及び円筒部材双方に対して相
対回動し得るようにした構成が提案されている。 これらの摺動型ブッシュ組立体においては、その一例
を第３図に示したが、外筒部材（12）と剛性スリーブ
（10）とが同心的に配置され、その空間内に弾性部材
（13）を注入して弾性部材（13）が加硫一体成形され、
その後外筒部材（12）を絞り加工して弾性部材（13）が
圧縮される。そして肩部（16）を有する剛性スリーブ
（10）にフランジ部（18）を有する摺動部材（14）が両
側から組付けられ、その上から止めリング（15）の圧入
により、内筒部材（11）及び、樹脂製剛性部材（14）の
抜け出しが防止され、その外方へシール部材（17）が配
設されるといった構成により製造されていた。 ところが、この構成による方法であると円滑な摺動性
能を得るためには、径方向の公差を非常に厳しく管理す
る必要があった。また、止めリング（15）が必要である
し、その圧入においては圧入しすぎると円滑な摺動を阻
害するため、圧入時ストロークを管理したり、樹脂製の
摺動部材（14）のフランジ部（18）を破損するという問
題が生じるため、最大0.5mm程度の隙間（19）を設けて
ガタをもつよう隔置する必要があった。これにしても、
公差を厳しく管理したり圧入時にストロークを管理する
必要があったり、組付け作業は極めて煩わしいものであ
った。更に、軸方向の入力荷重が大きい時には摺動樹脂
へフランジ座面を大きくとる必要があり、摺動型ブッシ
ュ組立体をコンパクトにできない難点があった。 そこで、本発明者らは、先に特願平１−332323号明細
書において、摺動層として、内筒部材の中央部に凸部を
設け、剛性スリーブの両端を小径とし、その小径部を前
記内筒部材中央部の凸部外径よりわずかに大きくして、
内筒部材と剛性スリーブを同心的に配置し、剛性スリー
ブと、内筒部材の間に摺動部材樹脂を一体に成形した摺
動構造を提案した。 このような摺動構造であれば、剛性スリーブと内筒部
材に対し、摺動部材樹脂を一体に成形するため、樹脂の
成形収縮により摺動部材樹脂円筒の半径方向内方に収縮
が起り、内筒に強固に固着されると共に、剛性スリーブ
との間にわずかに隙間を生じ、剛性スリーブと樹脂製の
摺動部材間で円周方向に摺動可能となる。また、このよ
うな構成によれば、強固な抜け止め得られるので、止め
リングが不要となりコンパクトな摺動型ブッシュ組立体
が提供できるのである。

【発明が解決しようとする課題】

しかしながら、前記提案した摺動型ブッシュ組立体で
は、内筒部材中央部の凸部が、剛性スリーブの対応する
凹部及び両端の小径部だけで保持されていたため、過大
な軸方向への入力に対しては、樹脂フランジ部の面圧が
過大となり、保持強度や耐久性が充分ではなかった。 さらに、摺動部材樹脂は半径方向内方に収縮すると同
時に、軸線方向中央に向かって収縮するが、内筒部材中
央部の凸部と剛性スリーブの対応する凹部による一山構
造では、使用する樹脂の収縮率が大きく、面圧や軸方向
の縮みに影響を与え、収縮率の大きな樹脂を使用した場
合には、最悪の場合軸方向にガタを生じるきらいがあっ
たのである。 また、摺動部材を繊維強化樹脂材料（FRP,FRTP）で形
成すれば、その軸方向への縮みも小さくすることがで
き、軸方向の機械強度も向上できるが、このように、摺
動部材を繊維強化樹脂材料で形成する場合でも、材料コ
ストが高くなったり、成形性が低下するという問題や、
ややもすると、摺動する相手部材を摩耗させる可能性が
あったのである。

【課題を解決するための手段】

上記課題を検討した結果、次のような摺動型ブッシュ
組立体を開発した。すなわち、同心的に配置された内筒
部材（１）と外筒部材（２）の間に同心的に剛性スリー
ブ（６）が介在し、剛性スリーブ（６）と外筒部材
（２）の間に弾性部材（３）が、また剛性スリーブ
（６）と内筒部材（１）の間に摺動部材（４）が介装し
てなる摺動型ブッシュ組立体において、前記内筒部材
（１）の外周面に複数凸部（1a）を設け、剛性スリーブ
（６）の内周面へ前記内筒凸部（1a）に対応する位置に
複数の凹部（6a）を設け、前記剛性スリーブ（６）と内
筒部材（１）の間の摺動部材（４）を樹脂により注入一
体に成形し、樹脂製摺動部材（４）の半径方向内方への
収縮により内筒部材（１）に固着すると共に、剛性スリ
ーブ（６）との間に隙間を形成させて、剛性スリーブ
（６）と摺動部材（４）間で円周方向に摺動可能として
なることを特徴とする摺動型ブッシュ組立体である。 また、剛性スリーブ（６）の両側小径部（6b）内径を
前記内筒部材（１）の複数の凸部（1a）外径よりもわず
かに大とし、その間に摺動部材（４）樹脂を一体に成形
した構造の摺動型ブッシュ組立体を開発した。 更に、このような摺動型ブッシュ組立体のおいては、
剛性スリーブ（６）は端部内周又は外周にシール部材
（７）の環状剛性金具（８）を圧入あるいは絞り加工し
て、少なくとも内筒部材（１）と剛性スリーブ（６）間
をシールするシール部材（７）を設けた構造することも
できる。

【作用】

剛性スリーブと内筒部材に対し、摺動部材（４）樹脂
により注入一体に成形するため、樹脂の成形収縮により
摺動部材（４）樹脂円筒の半径方向内方に収縮すると同
時に肉厚中心に厚み方向に収縮が起り、内筒に強固に固
着されると共に剛性スリーブ（６）との間にわずかに隙
間を生じ、剛性スリーブと樹脂製の摺動部材（４）間で
摺動可能となる。 また、軸線方向に入力された大荷重に対して、内筒部
材の複数（ｎ個）の凸部と、剛性スリーブの内径側に設
けられた複数（ｎ個）の凹部によって径方向のサイズを
あげることなく一山構造の場合の1/nの面圧となり、摺
動部材と剛性スリーブ間の僅かな隙間が摺動を可能とし
ながら、軸線方向のガタを防ぐ作用が得られるので、極
めて起動トルクが低く、耐久性にすぐれたものとなる。 更に、剛性スリーブ（６）の小径部内径を前記内筒部
材（１）の凸部外径よりもわずかに大とすることによっ
て、樹脂の剪断破断力を大きくし、強固な抜け止めの作
用が得られる。

【実施例】

以下図面によって本発明の実施例を詳細に説明する。 第１図は本発明の摺動型ブッシュ組立体の第１実施例
の断面図である。 この摺動型ブッシュ組立体は、同心的に配置された内
筒部材（１）と外筒部材（２）との間に、内筒（１）側
から摺動部材（４）、剛性スリーブ（６）、ゴム弾性部
材（３）が同心的に設けられている。前記内筒部材
（１）には、２個の凸部（1a）（1a）を設け、かつ、剛
性スリーブ（６）の内径側中央部にも２個の凹部（6a）
（6a）を設けると共に、剛性スリーブ（６）の両側小径
部（6b）（6b）を、前記内筒部材（１）中央部の凸部
（1a）（1a）外径よりも僅かに大きくしている。この剛
性スリーブ（６）は絞り加工によって形成したため内外
面が凸凹状となっている。 ここに示した摺動型ブッシュ組立体の組付けに際して
は、予め外筒部材（２）と剛性スリーブ（６）との間に
弾性部材（３）がゴムか加硫同時接着された後に、外筒
部材（２）が絞り加工され、ゴムが予備圧縮されたもの
を内筒部材（１）へ外挿し、そして、前記剛性スリーブ
（６）と内筒部材（１）の間に摺動部材樹脂を一体に成
形するか、あるいは、予め剛性スリーブ（６）内に内筒
部材（１）を内挿し、摺動部材（４）樹脂を一体成形し
たものに、前記弾性部材（３）及び外筒部材（２）とが
加硫接着された後、外筒部材（２）が絞り加工されて、
ゴムが予備圧縮される。 剛性スリーブ（６）の外周端部にシール部材（７）を
設けている。環状のシール部材（７）はリング状の剛性
金具（８）とそれに一体のシールゴム及びシールを密着
させるガータースプリング（９）とからなり、剛性金具
（８）の圧入あるいは絞り加工により、内筒部材（１）
と剛性スリーブ（６）間にシール機構を設けることがで
きる。圧入、絞り加工いずれの場合も必要に応じ、接
着、非接着で用いることができる。 第２図は本発明の摺動型ブッシュ組立体の第２実施例
の断面図である。 図示した摺動型ブッシュ組立体は、同心的に配置され
た内筒部材（１）と外筒部材（２）との間に、内筒
（１）側から摺動部材（４）、剛性スリーブ（６）、筒
状のハウジング（５）、ゴム弾性部材（３）が同心的に
設けられている。前記円筒部材（１）の外周面には３個
の山からなる凸部（1a）を設け、ハウジング（５）内の
剛性スリーブ（６）の内周面に、３個の凹部（6a）を設
けると共に、剛性スリーブ（６）の両側小径部（6a）
（6b）を前記内筒部材（１）外周面の凸部（1a）外径よ
りも僅かに大きくしている。この例は剛性スリーブ
（６）の内径側凹部（6a）を内面加工によって形成した
ため外周面には凹凸がない。 この摺動型ブッシュ組立体の組付けに際しては、予め
ハウジング（５）と弾性部材（３）及び外筒部材（２）
とがゴム加硫同時接着された後に、外筒部材（２）が絞
り加工されゴムが予備圧縮されたものを剛性スリーブ
（６）へ外挿入固定し、それらを内筒部材（１）へ外挿
し、そして、前記剛性スリーブ（６）と内筒部材（１）
の間に摺動部材（４）樹脂を一体に成形する。 あるいは、予め剛性スリーブ（６）内に内筒部材
（１）を内挿し、摺動部材（４）樹脂を一体成形したも
のに、前記ハウジング（５）と弾性部材（３）及び外筒
部材（２）とが加硫接着されて、予備圧縮されたものを
外挿圧入固定するのである。 剛性スリーブ（６）のハウジング（５）の内周端部に
シール部材（７）を設けている。この環状のシール部材
（７）により内筒部材（１）とハウジング（５）間にシ
ール機構を設けることができる。シール部材（７）は必
要に応じ圧入のみ、あるいは圧入接着して用いられる。 摺動部材（４）に使用する樹脂としては、ポリアミド
樹脂、ポリアセタール樹脂、高分子量ポリエチレン、ポ
リオキシメチレン樹脂、あるいはこれらとガラス繊維
や、炭素繊維による短繊維補強樹脂などがあげられる。 摺動部材（４）樹脂は半径方向内方に収縮すると同時
に、軸線方向中央に向かって僅かに収縮し、樹脂の保持
力を向上させるが、複数個所で半径方向外方に膨出して
いるため、それに対応して受圧面が形成され、軸方向入
力に対する面圧を低くおさえることができると同時に、
複数の凸部と凹部が樹脂の収縮により噛み合い軸方向の
ガタをなくすことができる。使用する樹脂によっても異
なるが、樹脂の肉厚を１〜2mmに設定すれば、剛性スリ
ーブと樹脂製摺動部材の間の隙間は0.1mm以下に抑える
ことができる。 更に、大きな抜け荷重が必要とされるものにおいて
は、上記のように内筒部材（１）と剛性スリーブ（６）
を同心的に配置した後、前記内筒部材（１）を拡径また
は剛性スリーブ（６）を絞り加工して、剛性スリーブ
（６）の小径部（6b）内径を前記内筒部材（１）の凸部
（1a）外径よも小さくするといった方法により対応する
こともできる。 以上本発明は、これら基本的構成に基づいて、その精
神を逸脱することなく、当業者の知識に基づいて種々な
る変更、改良等を施した態様で実施し得るものであるこ
とはいうまでもない。

【発明の効果】

本発明は以上のように樹脂の収縮傾向を巧みに利用し
た摺動型ブッシュ組立体の構造を提供するものである。
摺動部材となる樹脂の成形収縮により、複数の凹凸に沿
った収縮が起り、内筒に強固に固着されると同時に剛性
スリーブとの間にわずかに隙間を生じ、剛性スリーブと
樹脂の間で摺動可能となるので、これによって、従来の
煩わしい摺動部材の組付け作業の必要もなく摺動部材を
一体形成することができ、摺動抵抗値も一定の値とする
ことができた。 各部品の寸法公差は特に厳しく管理する必要もなく、
また止めリングを必要とせず、従ってその圧入管理も不
要となり、組付け作業が簡略化されると共に、使用部材
の低減を可能としたのである。 更に、軸線方向に大荷重が入力された場合でも、内筒
部材の複数の凸部と、剛性スリーブの内径側に設けられ
た複数の凹部によって十分な受圧面積が得られるので優
れた耐久性が確保でき、摺動部材と剛性スリーブ間の僅
かな隙間が摺動を可能としながら、軸線方向のガタをゼ
ロとするなど、乗り心地を含む車両の快適性が確保され
ることとなった。

【図面の簡単な説明】

第1,2図は本発明の摺動型ブッシュ組立体の断面図であ
る。第３図は同従来品の断面図である。 （１）内筒部材、（1a）内筒凸部 （２）外筒部材、（３）弾性部材 （４）摺動部材、（５）ハウジング （６）剛性スリーブ、（6a）剛性スリーブ凹部 （6b）剛性スリーブ端部小径部 （７）シール部材、（８）剛性金具 （９）ガータースプリング

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】同心的に配置された内筒部材（１）と外筒
   部材（２）の間に同心的に剛性スリーブ（６）が介在
   し、剛性スリーブ（６）と外筒部材（２）の間に弾性部
   材（３）が、また剛性スリーブ（６）と内筒部材（１）
   の間に摺動部材（４）が介装してなる摺動型ブッシュ組
   立体において、前記内筒部材（１）の外周面に複数の凸
   部（1a）を設け、剛性スリーブ（６）の内周面へ前記内
   筒凸部（1a）に対応する位置に複数の凹部（6a）を設
   け、前記剛性スリーブ（６）と内筒部材（１）の間の摺
   動部材（４）を樹脂により注入一体に成形し、樹脂製摺
   動部材（４）の半径方向内方への収縮により内筒部材
   （１）に固着すると共に、剛性スリーブ（６）との間に
   隙間を形成させて、剛性スリーブ（６）と摺動部材
   （４）間で円周方向に摺動可能としてなることを特徴と
   する摺動型ブッシュ組立体。
2. 【請求項２】請求項１記載の剛性スリーブ（６）の両側
   小径部（6b）内径を前記内筒部材（１）の複数の凸部
   （1a）外径よりもわずかに大とし、その間に摺動部材
   （４）樹脂を一体に成形してなることを特徴とする摺動
   型ブッシュ組立体。