JP2912756B2 - 合成樹脂被膜の形成装置及び形成方法 - Google Patents

合成樹脂被膜の形成装置及び形成方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、半導体素子または静電
チャックの絶縁膜、パッシベーション膜、ソフトエラー
膜、プラスチックコンデンサの誘電体などに用いられる
薄い合成樹脂被膜の形成装置及び形成方法に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】従来、合成樹脂被膜の形成方法として
は、合成樹脂原料モノマー(以下、原料モノマーと略
す)を適当な溶媒に溶かして基体に塗布し、これを基体
上で重合させる「湿式法」、合成樹脂自体を基体上に蒸
着させる「ポリマー蒸着法」または原料モノマーをプラ
ズマ状態にして、プラズマ中で基体上に重合させる「プ
ラズマ重合法」、原料モノマーを真空中で蒸発させて、
これを基体上で重合させる「蒸着重合法」などが知られ
ている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来の合成樹脂被膜の形成方法では、「湿式法」の場合は
極めて薄い膜を形成するのが困難である。また基体に対
する合成樹脂の密着力が不十分で、しかも塗液の調合や
溶媒の除去(乾燥)・回収などの工程が入るために、不
純物の混入が起こりやすいという課題を有していた。ま
た「ポリマー蒸着法」の場合は、蒸着時にポリマーの重
合とともに分解が併発し、原料ポリマーの重合度が低下
して、形成された合成樹脂被膜の物性が低下するという
課題を有していた。「プラズマ重合法」の場合は、原料
モノマー自体が分解したりするので、合成樹脂被膜の分
子構造の制御が困難であるという課題を有していた。
【0004】そこで、特開昭61−78463号公報に
開示されているように、例えば、4,4′ジフェニル・
メタン・ジイソシアネートのような芳香族ジイソシアネ
ートと、例えば、4,4′ジアミノ・ジフェニル・エー
テルのような芳香族ジアミンを用いて真空中で両原料モ
ノマーを蒸発させて、これを基体上で重合させて尿素樹
脂被膜を形成させる「蒸着重合法」が提案され、再現性
・安定性・制御性に優れた乾式の薄膜形成法が実現し
た。しかし、上記両原料モノマーは一定温度に保って常
時蒸発させておく必要があり、蒸発源噴き出し口の開閉
装置を閉じて被膜形成を中断している時には、蒸発した
原料モノマーの大部分は真空排気ポンプに到達しポンプ
オイルを短時間に劣化させてしまうという問題があっ
た。
【0005】この一つの対策として、一般的な金属の
「真空蒸着法」で用いられる冷却機能付きの残留水分ト
ラップ装置を真空排気経路の途中(真空排気ポンプの直
前)に設置したが、トラップされる原料モノマーの量が
多いために短時間でトラップ能力や排気能力が低下し
た。これを回復させるためには原料モノマーの蒸発を停
止させてから真空を破ってトラップ内部を清掃する必要
があり、作業時間と原材料のロスが大幅に増加するの
で、上記のトラップ方式では不十分で効率的な合成樹脂
被膜形成が実現できないことが判明した。
【0006】本発明は上記従来の問題を解決するもの
で、「蒸着重合法」で効率良く合成樹脂被膜を得ること
のできる形成装置及び形成方法を提供することを目的と
する。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に本発明の合成樹脂被膜の形成装置は、真空槽に対して
原料モノマーの蒸気を供給するモノマー蒸気供給系に、
蒸発源容器と真空排気装置との間に直列に設けられ、モ
ノマー蒸気が前記真空排気装置に達するのを防止するモ
ノマートラップとは別個に、蒸発源容器とモノマートラ
ップとの間の真空排気経路に対して枝分かれ状にモノマ
ートラップ容器を設置した構成となっている。 そして、
モノマートラップ容器は一度トラップした原料モノマー
を加熱して再使用する構成を有していることが望まし
本発明による合成樹脂被膜の形成方法は、モノマー
トラップ容器に一度トラップされた原料モノマーを加熱
して再使用することを特徴としている。
【0008】
【作用】上記本発明の構成によれば、真空排気ポンプ又
は真空排気ポンプの直前に設置したモノマートラップへ
到達する原料モノマーの量を減少させることができ、ま
た真空を破ることなくモノマートラップ容器に一度トラ
ップされた原料モノマーを加熱して再使用することがで
きる。したがって一度モノマーを仕込んで真空排気を開
始すれば、真空を破ることなく長時間安定して被膜形成
が行え、また原料ロスの少ない効率的な被膜形成ができ
ることとなる。
【0009】
【実施例】以下本発明の一実施例について、図面を参照
しながら説明する。
【0010】図1は、本発明を実施するために使用する
合成樹脂被膜の形成装置の概略断面図である。図1に示
すように、真空排気装置1に接続された真空槽2内に
は、合成樹脂被膜を形成させるための基体3が、基体ホ
ルダー4によって下向きに保持される。真空槽2の下部
には原料モノマーを噴き出すための蒸発源ノズル5,6
が設けられ、それらに接続した蒸発源容器7,8はヒー
ター(図示せず)と熱電対(図示せず)とによって、原
料モノマーがそれぞれ所定温度に保たれるように制御さ
れる。蒸発源ノズル5,6には開閉装置9,10がそれ
ぞれ設けられ、その開閉により基体3に形成される膜厚
が調整される。開閉装置9,10の下にはそれぞれ真空
排気装置11,12が接続され、これらの真空排気経路
とは枝分かれ状にモノマートラップ容器13,14があ
り、また真空排気装置11,12の直前にもモノマー蒸
気が前記真空排気装置に達するのを防止するモノマート
ラップ15,16が直列に設置されている。通常、モノ
マートラップ15,16の温度は0℃に設定した。な
お、モノマートラップ容器13,14には蒸発源容器
7,8と同様のヒーターと熱電対とによる温度調節機能
も取り付けられるようになっている。
【0011】次に上記装置を用いた重付加反応による尿
素樹脂被膜の形成方法を説明する。 (実施例1)ガラス板を基体3とし、蒸発源容器7にジ
アミンの1種である4,4′メチレン・ジアニリン(以
下、MDAと略す)200gを、蒸発源容器8にジイソ
シアネートの1種である4,4′ジフェニル・メタン・
ジイソシアネート(以下、MDIと略す)250gを充
填し、開閉装置9,10を閉じた状態で、真空槽2内の
雰囲気ガスの全圧が1×10-3Pa以下になるまで、真
空排気装置1により排気する。また、蒸発源容器7,8
内の雰囲気ガスの全圧が1×10-3Pa以下になるま
で、真空排気装置11,12により排気する。次いで、
蒸発源容器7,8のヒーターを制御して、MDAを11
0±0.5℃に、MDIを85±0.5℃に加熱した。
この時の蒸発源容器7,8内の雰囲気ガスの全圧はそれ
ぞれ0.6Pa,1.3Paであった。この状態で開閉
装置9,10を同時に120秒間開けて基体3上に両原
料モノマーの蒸気を差し向けて、厚さ1μmの尿素樹脂
膜A(合成樹脂被膜)を得た以外は開閉装置9,10を
閉じたままで、48時間連続して両原料モノマーを蒸発
させた。その後真空を破って、各モノマートラップに補
足されたモノマーを採取しそれらの重量を測定したとこ
ろ、モノマートラップ13,14,15,16に対して
それぞれ70g,110g,80g,110gであっ
た。
【0012】(実施例2)実施例1と全く同様にして4
8時間連続して両原料モノマーを蒸発させた後、両蒸発
源容器を室温以下に冷却した。この時の蒸発源容器7,
8内の雰囲気ガスの全圧はそれぞれ2×10-4Pa,6
×10-4Paであった。次にモノマートラップ容器1
3,14にヒーターと熱電対とによる温度調節機能を取
り付けそれぞれ110±0.5℃,85±0.5℃に加
熱し、開閉装置9,10を同時に120秒間開けて基体
3上に両原料モノマーの蒸気を差し向けて、厚さ1μm
の尿素樹脂膜B(合成樹脂被膜)を得た。この尿素樹脂
膜Bは赤外分光分析と熱分析から尿素樹脂膜Aと同質で
あることを確認した。
【0013】(比較例)図2は、上記実施例と比較する
ために使用する合成樹脂被膜の形成装置の概略断面図
で、図1のモノマートラップ容器13,14を省略して
いる。図2の装置を用いた以外は実施例2と全く同様に
して、48時間連続して両原料モノマーを蒸発させた
後、両蒸発源容器を室温以下に冷却した。この時の蒸発
源容器7,8内の雰囲気ガスの全圧はそれぞれ3×10
-3Pa,8×10-3Paで排気能力の低下が現れた。次
に真空を破って、モノマートラップ15,16内を観察
すると真空排気経路に目詰まりが見られ、各モノマート
ラップに補足されたモノマーを採取しそれらの重量を測
定したところ、モノマートラップ15,16に対してそ
れぞれ150g,220gであった。
【0014】以上説明したように本実施例によれば、各
原料モノマーの蒸発源容器にそれぞれ開閉装置と真空排
気装置とを有した蒸着重合装置において、各原料モノマ
ーの真空排気経路とは枝分かれ状にモノマートラップ容
器をそれぞれ設置することにより、真空排気ポンプ及び
真空排気ポンプの直前に設置したモノマートラップへ到
達する原料モノマーの量を減少させることができる。こ
のように比較的効率よく各原料モノマーをトラップでき
る原因は、有機物である原料モノマーの蒸気圧が1Pa
前後と高いためと思われる。またモノマートラップ容器
に一度トラップした原料モノマーを加熱しても同質の被
膜が得られるので、一度モノマーを仕込んで真空排気を
開始すれば、真空を破ることなく長時間安定して被膜形
成が可能で、原料ロスの少ない効率的な被膜形成ができ
ることとなる。
【0015】なお、各原料モノマーの蒸発源容器に接続
された真空排気経路の配管は加熱して、配管上でのモノ
マートラップを防止することが望ましい。
【0016】また、蒸発源容器とモノマートラップ容器
とにそれぞれ専用のバルブを設置すれば、真空を破るこ
となく原料モノマーを追加することができ、成膜時間の
延長が可能となる。
【0017】また、実施例ではジアミンとジイソシアネ
ートを用いて合成樹脂として尿素樹脂を形成する場合を
示したが、合成樹脂を上記ジアミンと3,3′−4,
4′ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTD
A)のような酸二無水物とを用いてポリイミド樹脂とし
てもよいことは言うまでもない。
【0018】
【発明の効果】本発明は上記実施例より明らかなよう
に、各原料モノマーの蒸発源容器にそれぞれ開閉装置と
真空排気装置とを有した蒸着重合装置において、各原料
モノマーの真空排気経路とは枝分かれ状にモノマートラ
ップ容器をそれぞれ設置することにより、真空排気ポン
プ又は真空排気ポンプの直前に設置したモノマートラッ
プへ到達する原料モノマーの量を減少させることがで
き、また真空を破ることなく一度トラップした原料モノ
マーを加熱して再使用することができる。その結果安定
性の良い被膜形成が長時間、効率良くできる優れた合成
樹脂被膜の形成方法を実現できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例における合成樹脂被膜の形成
方法を実施するために使用する装置の概略断面図
【図2】本発明の一比較例における合成樹脂被膜を形成
するための装置の概略断面図
【符号の説明】
1,11,12 真空排気装置 5,6 蒸発源ノズル 7,8 蒸発源容器 13,14 モノマートラップ容器
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 飯島 正行 神奈川県茅ヶ崎市萩園2500番地 日本真 空技術株式会社内 (72)発明者 高橋 善和 神奈川県茅ヶ崎市萩園2500番地 日本真 空技術株式会社内 (56)参考文献 特開 昭60−104134(JP,A) 特開 平4−236769(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C23C 14/24 C23C 14/12

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 真空中で合成樹脂原料モノマーを蒸発さ
    せ、これらを基体上で重合させて樹脂被膜を形成する
    成樹脂被膜の形成装置であって、 前記基体を収容し、真空排気される真空槽と、 前記真空槽に前記合成樹脂原料モノマーの蒸気を供給す
    るモノマー蒸気供給系とを備え、 前記モノマー蒸気供給系は、 前記合成樹脂原料モノマーを蒸発させる蒸発源容器と、 前記モノマー蒸気供給系の真空排気を行う真空排気装置
    と、 前記蒸発源容器と前記真空排気装置との間に直列に設け
    られ、モノマー蒸気が前記真空排気装置に達するのを防
    止するモノマートラップと、 前記蒸発源容器と前記モノマートラップとの間の真空排
    気経路に対して枝分かれ状に設置されたモノマートラッ
    プ容器とからなる ことを特徴とする合成樹脂被膜の形成
    装置。
  2. 【請求項2】前記モノマートラップ容器に加熱手段を設
    けたことを特徴とする請求項1記載の合成樹脂被膜の形
    成装置。
  3. 【請求項3】請求項1または2記載の合成樹脂被膜の形
    成装置において、モノマートラップ容器を加熱して一度
    トラップした合成樹脂原料モノマーを再使用することを
    特徴とする合成樹脂被膜の形成方法。
  4. 【請求項4】合成樹脂がジイソシアネートとジアミンと
    の重付加反応によって形成される尿素樹脂であることを
    特徴とする請求項3記載の合成樹脂被膜の形成方法。
  5. 【請求項5】合成樹脂がジアミンと酸二無水物との加熱
    重合によって形成されるポリイミド樹脂であることを特
    徴とする請求項3記載の合成樹脂被膜の形成方法。
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