JP2910604B2 - ステンレス鋼帯の調質圧延方法 - Google Patents

ステンレス鋼帯の調質圧延方法

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JP2910604B2 JP2392995A JP2392995A JP2910604B2 JP 2910604 B2 JP2910604 B2 JP 2910604B2 JP 2392995 A JP2392995 A JP 2392995A JP 2392995 A JP2392995 A JP 2392995A JP 2910604 B2 JP2910604 B2 JP 2910604B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、冷間圧延後焼鈍した
ステンレス鋼帯の調質圧延方法に関し、特に高伸び率圧
延でも表面品質に優れたステンレス鋼帯を安定して圧延
可能な調質圧延方法に関する。
【0002】
【従来の技術】冷間圧延されたステンレス鋼帯は、焼鈍
又は焼鈍酸洗し、必要により酸洗処理を行った後、伸び
率が 0.5%〜 1.5%程度の調質圧延が行われる。調質圧
延の目的は焼鈍後のステンレス鋼帯の降伏点伸びの消
去、形状矯正、光沢の付与等であるが、ステンレス鋼帯
では特に光沢の付与に主眼がおかれている。
【0003】このため、ステンレス鋼帯を調質圧延する
場合、一般には圧延油等の潤滑剤(調質圧延剤)を用い
るウェット圧延方式ではステンレス鋼帯表面の光沢度が
低下するため、調質圧延剤を用いないドライ圧延方式が
とられている。また、ドライ圧延方式のためロール表面
に摩耗粉や異物が付き易く、それを除去し易い大径ロー
ルを用いた2Hiの圧延機が多く用いられている。この
光沢向上のメカニズムは、非常に平滑にロール表面を研
磨した大径のワークロールでステンレス鋼帯を0.5%〜
1.0%程度の伸び率となる圧延を施し、ロール表面の平
滑面を鋼帯に転写し、かつ大径ロールによる長い接触弧
長でより一層光沢を向上させるのである。
【0004】ところが、ドライ圧延方式にて調質圧延を
行うと、完全なドライ圧延方式では、ロールとステン
レス鋼帯との摩擦係数が高くなりすぎ調質圧延での高伸
び率圧延が不可能になる。ドライ圧延方式では、調質
圧延剤によるロールおよびステンレス鋼帯の清浄効果が
期待できないため、ロール疵等の原因となり歩留を低下
させるといった問題がある。
【0005】そのため、現状では、ドライ圧延方式を適
用し、かつ1パス当たりの圧下量を少なくした調質圧延
が行われており、生産性の低下を余儀なくされている。
【0006】その対策として、特開昭62−6703号公報に
は、冷間圧延後焼鈍酸洗したステンレス鋼板を表面粗さ
がRaで 0.3μm以下のワークロールで圧下率 2%以上の
調質圧延を行う際に、冷間圧延時の最終パスに表面粗さ
が0.25μm以下でかつ調質圧延時のワークロールの表面
粗さ以下のワークロールを用いて圧延することで光沢む
らを防止する技術が開示されているが、上記のドライ圧
延方式の問題点を解消させることはできない。
【0007】そこで、ドライ圧延方式での問題点を解消
するために圧延潤滑剤を使用するウェット圧延方式の適
用が検討されており、ウェット圧延方式は、圧延性を向
上させると共に調質圧延剤による清浄機能が期待できる
ため、ロールや材料に付着している汚れ、異物を取り除
くことで疵の発生を防止することができる。
【0008】特公昭57-39842号公報には、調質圧延の第
1パスを伸び率 0.1〜 0.5%のドライ圧延後、第2パス
以降をウェット圧延を行うステンレス鋼帯の調質圧延方
法が、特開平4-333303号公報には、調質圧延の第1パス
をウェット圧延、第2パス以降をドライ圧延とするステ
ンレス鋼帯の調質圧延方法が提案されている。
【0009】しかし、上記2件の発明は、単に従来から
のドライ圧延方式とウェット圧延方式を組み合わせた複
数パスでの調質圧延を前提としており、生産性の低下は
避けられない。また、一つの圧延機で複数パスの圧延を
行う場合はドライ圧延方式とウェット圧延方式の切り替
えが困難であり、複数の圧延機を設ける場合は新たな設
備投資が必要となる。
【0010】さらなる問題点として、従来から普通鋼に
適用されるウェット圧延方式を適用した場合に、上述し
たようなドライ圧延方式による光沢向上のメカニズムが
阻害され、光沢が著しく劣化するという問題がある。
【0011】そこで、特開昭56ー74303号公報には、ワー
クロールの後面において、上下のワークロールとバック
アップロールとの間に圧延油を噴射し、さらに上部圧延
油噴射ヘッダーから噴射した圧延油を、水切り片を持っ
た水切り樋によってワークロールの両サイドに流出させ
る鋼帯のウェット調質圧延方法が開示されているが、水
切り片をワークロールに押圧するので疵が付き易く、ロ
ール振動等で隙間が生じた場合、潤滑過多や不足が部分
的に生じて鋼帯表面に油膜厚さの変動による光沢ムラが
発生し、商品価値が低下するといった問題がある。さら
に、ステンレス鋼帯の調質圧延機は一般に上下にワーク
ロールのみを有する2Hiミルが多く、この方法は適用
できない。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、大幅
な設備投資を必要とせずに、高伸び率圧延でも表面品
質、特に光沢度に優れたステンレス鋼帯を安定して圧延
可能な調質圧延方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、ステンレ
ス鋼帯の光沢度を維持しつつ、生産性向上のため1パス
当たりの圧下量を大きくできる調質圧延方法として、現
状行われているドライ圧延方式をウェット圧延方式に変
更することとし、通常のウェット圧延方式で問題となっ
ていた光沢度の改善のためにロールとステンレス鋼帯と
の間の液膜厚さの極薄化に着目して検討を重ねた結果、
下記の知見を得、本発明を完成させた。
【0014】通常のウェット圧延方式ではロールバイ
ト部に液溜まりができるため、潤滑剤等の調質圧延剤の
種類や圧延条件の変更でロールとステンレス鋼帯の間の
液膜厚さを調整することはできない。
【0015】従来のドライ圧延方式に代えて極少量の
調質圧延剤を供給することで、ドライ圧延方式並みの高
光沢が得られる。
【0016】さらに、調質圧延剤を霧状とし、かつそ
の液滴径を規定することで均一な極薄液膜とすることが
できる。
【0017】ここに本発明は、冷間圧延されたステンレ
ス鋼帯を焼鈍後、調質圧延するに際し、調質圧延剤と気
体を混合して平均径で30μm以下の液滴とした圧延液を
霧状にして吹き付けて圧延するステンレス鋼帯の調質圧
延方法である。
【0018】
【作用】従来ステンレス鋼帯の調質圧延に適用されてい
たドライ圧延方式をウェット圧延方式に変更することに
より、ロールとステンレス鋼帯との摩擦係数が低下し、
1パス当たりの圧下量を大きくすることができる。しか
し、ウェット圧延方式では光沢度が低下する。
【0019】そこで、光沢を維持し、圧延作業性を向上
させるために、極薄い潤滑液膜を形成することが必要で
ある。しかし、通常のウェット圧延方式ではロールバイ
ト入口部に液溜まりができるため、潤滑剤等の調質圧延
剤の種類や圧延条件の変更でロールとステンレス鋼帯の
間の液膜厚さを調整することができない理由について説
明する。
【0020】図6は、通常のウェット圧延方式時のロー
ルバイト入口部の調質圧延剤の導入メカニズムを示す側
面断面図である。図6に示すように、ロールバイト入口
部のワークロール1とステンレス鋼帯3で形作られる楔
状になった部分に調質圧延剤5の液溜まりを作り、ワー
クロール1とステンレス鋼帯3の間で絞られた調質圧延
剤5が実際のロールバイト内に導入されていく。
【0021】また、「冷間圧延に関する実験」塑性と加
工 vol.7 No.66(1966)p383にも記載されているように、
ロールバイト内に導入される調質圧延剤の量は、流体力
学的に、ワークロールとステンレス鋼帯の速度、ワーク
ロール径、調質圧延剤の粘度に支配されており、入口で
の膜厚パラメーターtd で表すと下記(1)式となる。
【0022】td ={η(UR +US )}/αP (1)ここで、td :調質圧延剤の膜厚パラメーターη
:調質圧延剤の粘度UR :ワークロールの周速US
ステンレス鋼帯の速度α :咬み込み角度で、下式で求
まる(α=(Δh/R)1/2 、Δh:圧下量、R:ロー
ル径)P:ステンレス鋼帯の変形抵抗これから、調質圧
延剤の粘度以外は圧延条件によって決まってしまい、調
質圧延剤の量を調節しても膜厚には影響しない。
【0023】ところで、調質圧延に使用される調質圧延
剤は、通常の冷間圧延に用いられる圧延油に比べ極端に
粘度が低いものが用いられており、一般的には圧延油を
数%含む水溶液として使用されるため実際の粘度は水と
変わらない程度となっているため、調質圧延剤の粘度を
調整して膜厚(膜厚パラメーターtd )を制御すること
もできない。したがって、通常のウェット圧延方式を調
質圧延に適用する限り調質圧延剤の膜厚の調整は事実上
不可能といえる。
【0024】図7は、通常の別のウェット圧延方式時の
ロールバイト入口部の調質圧延剤の導入メカニズムを示
す側面断面図である。ノズル4を圧延機出側に配置し、
ワークロール1とバックアップロール2の間に調質圧延
剤5を噴射し、ワークロール1とバックアップロール2
の間で調質圧延剤5を絞り、通常のウェット圧延方式よ
り薄い膜を形成する圧延方法である。しかし、これとて
もワークロールとバックアップロールから換算される等
価なロール径が実際のワークロール径より少し小さくな
るというだけで、ロールバイトに導入される調質圧延剤
の量はやはり流体力学的因子に支配され、調質圧延剤の
膜厚の調整はできない。
【0025】すなわち、ステンレス鋼帯の調質圧延にウ
ェット圧延方式を適用した場合の光沢不良の解決のため
には、極薄い調質圧延剤の液膜を形成して調質圧延を行
うことが有効である。しかし、ロールバイト入口部に液
溜まりができると液膜の厚さ制御は不可能になる。そこ
で、流体力学的に支配される導入液量より少ない液量で
調質圧延剤を供給することで極薄液膜を形成することが
できる。
【0026】しかし、通常の調質圧延剤をスプレーする
方法では、仮に流量を絞って供給しても板幅方向にむら
無く調質圧延剤を塗布するためには、相当量の調質圧延
剤を供給することが必要なため、ロールバイト入口部に
液溜まりの発生は避けられなかった。
【0027】図8は、通常のスプレー法で調質圧延剤を
供給した場合の調質圧延剤の分布状況を示す斜視図であ
る。図はステンレス鋼帯の入側から見た図であるが、ワ
ークロール1とステンレス鋼帯3の間で絞られた調質圧
延剤5が調質圧延時に流体力学的にロールバイト内に導
入される時の液膜厚さはたかだか数μm程度の厚みであ
るが、これより薄い液膜厚さを全幅で達成するためには
ロールバイト入口部で数μm以下の液膜を鋼帯全幅に亘
って均一に形成しなければならない。しかし、通常の調
質圧延剤を直接スプレーする方法では調質圧延剤5は
(a)のように液状に広がり、板幅端部から一部が流れ
落ちるため、過不足なく板幅方向に均一厚みを達成する
ことは不可能である。また、薄膜化するため極端に調質
圧延剤の液量を少なくすれば(b)のように板幅方向で
調質圧延剤5が供給されない部分が発生し、かえって製
品品質や生産性を損ねる結果となる。
【0028】それに対して、本発明者らは極薄液膜を形
成する調質圧延剤の供給方法について検討した結果、調
質圧延剤を気体と混合し、液滴径を規定した圧延液を霧
状に噴霧することで、ステンレス鋼帯表面に極薄液膜を
形成できることを見いだした。
【0029】図1は、本発明の調質圧延方法の例を示す
側面図である。(a)は上下にワークロール1とバック
アップロール2を有する4Hiの調質圧延機の入側にノ
ズル4を設置し、各々のノズル4に、液流量と気体流量
を調整できるポンプにより調質圧延剤及び気体を供給し
て霧状の圧延液6をステンレス鋼帯3の表面および裏面
に噴射する。また、(b)は上下にワークロール1を有
する2Hiの調質圧延機の入側にノズル4を設置し、各
々のノズル4に調質圧延剤及び気体を供給して霧状の圧
延液6をステンレス鋼帯3の表面および裏面に噴射す
る。
【0030】調質圧延剤の液流量はノズル径の他に、液
圧や気体圧によって制御可能であり、圧延速度や目標と
する潤滑状態に応じて適正に選択する。噴射された液滴
のステンレス鋼帯表面への広がりはノズル4の開口角度
およびステンレス鋼帯3とノズル4との距離により決ま
るが、板幅方向の分布ムラを避けるためには、板幅方向
に複数のノズル4を設置し、広がった圧延液が隣接する
圧延液と一部ラップする程度に、ステンレス鋼帯とノズ
ルの距離、ノズル開口角度やノズル個数を決めるのがよ
い。
【0031】また、ロールバイト入口部に液溜まりが形
成しない条件は、圧延速度等の圧延条件に応じて調質圧
延剤の液流量(ステンレス鋼帯への調質圧延剤の付着
量)を調整することで達成されるが、表面性状を美麗に
保つためにはこれだけでは不十分である。調質圧延剤の
付着量が一定の場合を考えると、液滴径が小さければ、
液滴の数が多く、薄くかつ均一な液膜を形成することが
できるが、液滴径が大きくなると液滴同士の間隔が広く
なりすぎ、液滴がロールとステンレス鋼帯の間で絞られ
ても完全に板面全体には調質圧延剤が広がらない。すな
わち、ある一部に非常に液膜の厚いところができそのま
わりには全く調質圧延剤の行きわたらない部分ができて
しまう。このような状態のまま圧延すると調質圧延剤の
有るところは、液膜が厚すぎてオイルピット状の欠陥が
でき、製品自体に斑模様ができてしまうことになる。
【0032】すなわち、後の実施例で説明するが液滴の
平均径が30μmより大きい場合に、ロールバイト入口部
で液溜まりができないように液流量を調整して調質圧延
を行った場合は、ステンレス鋼帯上に斑模様が発生して
しまった。したがって、このような斑模様をなくし美麗
な表面性状を得るためには、調質圧延剤を気体と混合し
て霧状に噴射する圧延液の液滴は平均径で30μm以下に
する必要がある。
【0033】また、特に液滴が平均径で20μm以下の時
には、ロールバイト入口部で液溜まりができないように
調質圧延剤の液流量を調整する範囲が広くなるため、よ
り安定した調質圧延が可能である。
【0034】さらに、調質圧延剤と気体を混合して平均
径で30μm以下の液滴とした圧延液をステンレス鋼帯に
霧状に吹き付ける位置は、調質圧延機入側のステンレス
鋼帯表面やロール表面とするのがよい。ステンレス鋼帯
表面に微細な液滴を均一に吹き付けることで、圧延液が
ロールとステンレス鋼帯との間で絞られても均一で薄い
液膜を形成することができる。一方、圧延液をワークロ
ール表面に吹き付けた場合は、吹き付ける位置によって
は、液滴がロールとステンレス鋼帯がかみ合う部分に到
達する時点でロールに吹き付けた微細な液滴が凝集して
大きな液滴となり、均一で薄い液膜とならない場合もあ
り、折角微細な液滴として極薄液膜をステンレス鋼帯表
面に均一に形成させるという効果が低下する恐れがあ
る。そのため、圧延液を吹き付ける位置を調質圧延機入
側のステンレス鋼帯表面とするのがより好ましい。
【0035】次に、調質圧延剤を気体と混合して霧状に
噴霧する方法について例を挙げて説明する。
【0036】図2は本発明方法に使用するノズルの例を
示す断面図である。内部に調質圧延剤5を噴射する内側
ノズル11、その外周に気体を噴射する外側ノズル12
を有する2重構造のノズル4とすることで、調質圧延剤
と気体を混合した霧状の圧延液6を噴射させることがで
きる。ここで、調質圧延剤と気体は各々流量および圧力
調整が可能なポンプにより供給される。このような2重
構造を持ったノズル4を用いて調質圧延剤5と気体を同
時に噴射すると、調質圧延剤5は気体圧と液圧、すなわ
ち気体流量と液流量に応じた大きさの微細な球形の液滴
からなる圧延液6となり、大気中に霧状に噴射される。
【0037】ここで、調質圧延剤とは、調質圧延時のロ
ールとステンレス鋼帯との潤滑に用いられる液であり、
通常は有機系潤滑剤を数%の濃度で水と混合させた水溶
液が用いられる。また、調質圧延剤と混合される気体に
は通常は空気が用いられる。
【0038】図3は、気体流量と調質圧延剤の液流量を
変化させた時の液滴径の変化を示す図である。この図か
ら、気体流量と調質圧延剤の液流量を変更して気体圧と
液圧を調整することで液滴の大きさを自由に制御するこ
とができ、極端に液流量を絞ればサブミクロンの大きさ
まで調節が可能である。霧状に噴射された液滴は、一定
の付着効率のもとでステンレス鋼帯表面に点々と付着し
各々一定面積に広がる。広がった液滴は圧延中に更にロ
ールとステンレス鋼帯の間で絞られ、当初の液滴径の数
分の1〜数十分の1の厚さの液膜となる。
【0039】また、圧延中の調質圧延剤の液流量や液滴
径の調整は、基本的に液圧と気体圧の調整により行う
が、これ以外の流量の調整方法として、ステンレス鋼帯
−ノズル間距離、ノズルの迎え角を変化させる方法があ
る。これは、霧状に噴霧した圧延液は微細な液滴とな
り、一定の付着効率でステンレス鋼帯上に付着するが、
その付着効率を変化させることにより制御するものであ
る。付着効率とは、ノズルから噴射された液滴の量と、
実際にステンレス鋼帯上に付着した液滴の量の比を表す
ものである。ノズルから噴射された液滴は一定の速度を
持っているが、ノズルからの距離に応じてその速度を減
じ、液滴の付着性は液滴径とステンレス鋼帯への衝突速
度に影響されるため、ステンレス鋼帯−ノズル間距離に
より付着効率が変化する。
【0040】さらに、圧延中はステンレス鋼帯も速度を
持ち、ノズルの迎え角を変化させると液滴とステンレス
鋼帯との相対速度も変化する。よって、ノズルの迎え角
もステンレス鋼帯への付着性を支配している。しかし、
これらのステンレス鋼帯−ノズル間距離やノズルの迎え
角は付着量制御方法としては応答性が遅く圧延中のステ
ンレス鋼帯の速度変化等には追随できない場合が多いた
め、これらの制御方法は補助的に用いるのが適当であ
る。
【0041】以上述べたように、本発明方法によれば、
調質圧延剤の液量および液滴径をコントロールすること
で、ロールとステンレス鋼帯間の液膜厚さを適切な厚さ
とすることができるため、従来のドライ圧延方式で問題
となった、ロール疵による歩留まり低下のみでなく、生
産性の高い高伸び圧下圧延も可能となった。
【0042】本発明はステンレス鋼帯の高光沢圧延を目
的としているが、通常のウェット圧延方式では小径のロ
ールで圧延すれば光沢が改善され、大径ロールを用いた
場合は光沢度が低下することが知られている。しかし、
ステンレス鋼帯の調質圧延ではドライ圧延方式が行われ
ており、ロール表面に付着した付着物除去の容易さや形
状修正能力の点から大径ロールを用いる必要があった。
しかも、高摩擦係数となるため1パス当たりの伸び率を
制限した圧下量でしか圧延することができなかった。
【0043】本発明方法を適用することで、調質圧延剤
によるロール表面の清浄効果および摩擦係数の低減も図
ることができるため、 300mmφ、さらには 500mmφ以上
の大径ロールを使用し、1パス当たりの圧下率が大きい
圧延が可能となった。さらに、通常のウェット圧延方式
で大径ロールを使用した場合の光沢度低下という問題も
改善することができる。
【0044】また、高光沢ステンレス鋼帯として、特に
高い光沢を要求される場合には、2パス以上の複数パス
での調質圧延を行うことが必要な場合もある。1つの圧
延機で複数パスを行う場合、少なくとも最終パスはドラ
イ圧延方式で行うのが望ましいが、通常の潤滑方法では
ウェット圧延方式で圧延を行った後、ドライ圧延方式に
切り替えるためには、大がかりな洗浄装置、ロール替え
等を伴うが、本発明方法では、液量を極少量に制御でき
るため余分な液がミルまわりに付着することもなく、ま
たステンレス鋼帯上に残る調質圧延剤も圧延に必要な最
小量であるため、第1パスのみ本発明方法を用いてもす
ぐにドライ圧延方式に近い圧延が可能である。
【0045】さらに本発明は、ミル形式によらず効果が
あることは明かであるが、特に2Hi圧延機でその特徴
が顕著に現れる。4Hi以上のロールを持つ圧延機で
は、出側から潤滑油を噴射し、ワークロールとバックア
ップロールの間で潤滑油を絞る方法あるいは、これにス
クレーパー等を組み合わせて液膜厚さを調整することも
可能であるが、2Hi圧延機ではこのような調整方法を
採ることもできず、ドライ圧延方式かウェット圧延方式
の一方を選択する以外になかった。特に、ステンレス鋼
の調質圧延機としては大径2Hi圧延機が主流であり、
本発明の適用先として特に優れている。
【0046】
【実施例】以下、本発明の効果を実施例に基づいて説明
する。
【0047】(実施例1)図1(b)の2Hiの1段圧
延機を用い、圧延機入側のステンレス鋼帯の上下面に向
けて圧延液を噴射するようにノズルを設けた装置で調質
圧延を行った。
【0048】板厚 0.8mm、板幅 400mmの冷延フェライト
系ステンレス鋼板(SUS430、表面仕上げNo.2B )を、ロ
ール径が 300mmφ、ロール粗度がRaで 0.1μmのブライ
トロールをワークロールに用いて調質圧延した。ステン
レス鋼板表面に噴射される圧延液は、液流量可変で液口
径 0.8mmのノズルを用いて液圧および空気圧を変えて平
均液滴径を表1に示すように変更した。液と空気の流量
を変化させることで同一ノズルでも液滴径を10倍のレン
ジで変更することができた。圧延潤滑剤として有機系調
質圧延剤を10%含む水溶液を用い、表1の条件で圧延機
入側の鋼板上に噴射し、圧延速度を変化させ、ロールバ
イト入口部で液溜まりのできない下限の圧延速度を求め
た。
【0049】次に、伸び率が1%となる圧下量で、ロー
ルバイト入口で液溜まりのできない圧延速度で調質圧延
し、圧延後のステンレス鋼板表面を目視観察してオイル
ピットの発生の有無で表面性状の評価を行った。その結
果も合わせて表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】表1から、本発明方法によれば圧延速度を
変更することでロールバイト入口部に液溜まりができな
い圧延条件を見いだすことが可能であった。また、平均
液滴径が30μm以下の場合にはオイルピットも発生せず
優れた表面性状のステンレス鋼板を得ることができた。
【0052】(実施例2)板厚 0.8mm、板幅1400mmの冷
延フェライト系ステンレス鋼板(SUS430)を焼鈍後、ロ
ール径が 600mmφ、ロール粗度がRaで0.05μmのブライ
トロールをワークロールに用いて圧延速度400m/minで調
質圧延を行った。本発明法の他に、比較として調質圧延
剤を用いないドライ圧延方式とロールバイト入口部に液
溜まりができるよう調質圧延剤を多量に噴射させたウェ
ット圧延方式も行った。なお、圧延機および調質圧延剤
は実施例1と同一である。
【0053】ノズルは30〜 350ミリリットル/minに液流
量可変のものを用い、液圧 0.6〜4.0kgf/cm2、空気圧を
1.0〜6.0kgf/cm2を種々組み合わせ調質圧延剤付着量を
変化させた。
【0054】図4は圧延時の調質圧延剤付着量に対する
摩擦係数の変化を示す図である。ここで、摩擦係数は圧
下率 0.5%と 1.0%での実荷重から逆算して求めた。ま
た、図5はその際の調質圧延剤付着量に対する表面光沢
度の変化を示す図である。表面光沢度は光沢度計を用い
入射角45°での光沢度(Gs45°)を測定した。なお、ド
ライ圧延方式では圧下率が 1.0%の調質圧延ができなか
ったため、その摩擦係数および表面光沢度は図示してい
ない。
【0055】図4および図5から、本発明法によれば、
圧下率が一定でも摩擦係数をウェット圧延方式からドラ
イ圧延方式並みまで自由に変化させることができる。こ
れに対してウェット圧延方式とドライ圧延方式では常に
摩擦係数は一定であり、さらにドライ圧延方式にいたっ
ては圧下率が 1.0%の時は圧延荷重が高くなりすぎ圧延
が不可能となった。また表面光沢度は圧下率が一定の場
合は、ウェット圧延方式、本発明法、ドライ圧延方式の
順で改善されている。
【0056】しかし、ドライ圧延方式の場合は1パス当
たりの圧下率を 1.0%未満に押さえる必要があり、所定
の圧下率を得るためには複数パスの圧延が必須となり生
産性が低下する。また、1パスでの圧下率が 1.0%以上
の調質圧延にはドライ圧延方式を適用することができ
ず、その場合は本発明法が最も光沢が良い。
【0057】(実施例3)板厚 0.8mm、板幅1200mmの冷
延フェライト系ステンレス鋼板(SUS430)を光輝焼鈍
後、ロール径が 500mmφ、ロール粗度がRaで0.02μmの
鏡面研磨ロールにて圧延速度400m/minの多パスの調質圧
延を行った。
【0058】第1パスは本発明法と比較としてウェット
圧延方式、ドライ圧延方式による圧延を行い、2パス目
以降は全て調質圧延剤の供給を止めた圧延を行った。な
お、圧延機および調質圧延剤は実施例1と同じものを用
い、本発明法の圧延液の条件は表2に示すように表1の
Noで示している。また、ウェット圧延方式の潤滑条件は
実施例2と同様である。
【0059】合計伸び率が 2.5%に達するまでに要した
パス回数およびその際の光沢度と表面性状の評価結果を
表2に合わせて示す。
【0060】
【表2】
【0061】表2から、最終的な光沢度はドライ圧延方
式が最も良好だが、 2.5%の伸び率を得るために7パス
を要しており、また表面性状も不合格レベルである。こ
れに対して、本発明法とウェット圧延方式は各々3〜4
パスで所要伸び率を確保しており、表面性状も合格レベ
ルである。また、光沢度で比較すると本発明法は全パス
をドライ圧延方式で行った場合の良好な光沢度に近い
が、ウェット圧延方式では光沢度が確保できなかった。
さらに、本発明範囲より液滴径が大きい場合も、表面性
状が低下していた。したがって、総合的に評価すると本
発明法が最も優れている。
【0062】(実施例4)板厚 0.8mm、板幅1000mmのフ
ェライト系ステンレス鋼板(SUS430)を焼鈍後、ロール
径が 780mmφの2Hiの大径2段圧延機を用いて調質圧
延を行った。狙い伸び率を 0.6%として、本発明法と共
に比較としてドライ圧延方式とウェット圧延方式での圧
延を行った。なお、圧延、潤滑条件は実施例3と同様で
あり、本発明法の圧延液の条件は表3に示すように表1
のNoで示している。合計伸び率が 0.6%に達するまでに
要したパス回数およびその際の光沢度と表面性状の評価
結果を表3に合わせて示す。
【0063】
【表3】
【0064】表3から、ドライ圧延方式では狙い伸び率
に達するために4パス必要であったが、本発明法では、
1パス圧延で狙い伸び率を達成することができた。ま
た、光沢度をウェット圧延方式と比較すると本発明法が
明らかに優れており、本発明範囲より液滴径が大きい場
合も、光沢度と表面性状が低下していた。したがって、
総合的に評価すると本発明法が最も優れている。
【0065】
【発明の効果】以上述べたとおり、本発明方法によれ
ば、調質圧延剤を気体と混合し、微細な霧状にして噴霧
することにより、潤滑状態(摩擦係数)をドライ圧延方
式からウェット圧延方式並みまで可変とすることができ
る。これにより適正な潤滑状態にすることで表面性状を
損なうことなく、高伸び率の圧延でも高光沢のステンレ
ス鋼帯を安定して圧延することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の調質圧延方法の例を示す側面図であ
る。
【図2】本発明方法に使用するノズルの例を示す断面図
である。
【図3】気体流量と液流量を変化させた時の液滴径の変
化を示す図である。
【図4】実施例2における圧延時の調質圧延剤付着量に
対する摩擦係数の変化を示す図である。
【図5】実施例2における調質圧延剤付着量に対する表
面光沢度の変化を示す図である。
【図6】通常のウェット圧延方式で圧延した時のロール
バイト入口部の調質圧延剤の導入メカニズムを示す側面
断面図である。
【図7】通常の別のウェット圧延方式で圧延した時のロ
ールバイト入口部の調質圧延剤の導入メカニズムを示す
側面断面図である。
【図8】通常のスプレー法で調質圧延剤を供給した場合
の調質圧延剤の分布状況を示す斜視図である。
【符号の説明】
1:ワークロール2:バックアップロール3:ステンレ
ス鋼帯4:ノズル5:調質圧延剤6:圧延液11:内側
ノズル12:外側ノズル
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B21B 1/22 B21B 3/02 B21B 45/02

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】冷間圧延されたステンレス鋼帯を焼鈍後、
    調質圧延するに際し、調質圧延剤と気体を混合して平均
    径で30μm以下の液滴とした圧延液を霧状にして吹き付
    けて圧延することを特徴とするステンレス鋼帯の調質圧
    延方法。
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