JP2002113502A - 鋼帯の製造方法及びその装置 - Google Patents

鋼帯の製造方法及びその装置

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JP2002113502A
JP2002113502A JP2000306385A JP2000306385A JP2002113502A JP 2002113502 A JP2002113502 A JP 2002113502A JP 2000306385 A JP2000306385 A JP 2000306385A JP 2000306385 A JP2000306385 A JP 2000306385A JP 2002113502 A JP2002113502 A JP 2002113502A
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steel strip
surface roughness
pressure liquid
pressure
roll
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JP2000306385A
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Masayasu Ueno
雅康 植野
Satoshi Kamioka
悟史 上岡
Yukio Kimura
幸雄 木村
Yasuhiro Sotani
保博 曽谷
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JFE Engineering Corp
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NKK Corp
Nippon Kokan Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 生産性および品質を低下させることなく、形
状矯正、鋼帯の機械的特性、表面粗さといった要求され
るすべての品質を確保することができる鋼帯の製造方法
およびその装置を提供する。 【解決手段】 鋼帯を調質圧延するに際し、ワークロー
ルの中心線平均粗さRaが0.3μm以下のブライトロールを
用いて調質圧延を行った後に、ノズル群から高圧液体を
鋼帯表面に噴射することによって、鋼帯に表面粗さを付
与する。前記鋼帯は、ワークロールに中心線平均粗さRa
が0.3μm以下のブライトロールを備える調質圧延機、お
よび、該調質圧延機の後方に、高圧液体を鋼帯表面に噴
射して鋼帯に表面粗さを付与するノズル群を備えた高圧
液体噴射装置が配設されている装置で製造する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は鋼帯への表面粗さ付
与技術に関するものであり、より詳しくは生産性および
品質の低下を引き起こすことなく、要求される表面粗さ
をもった鋼帯を安定して製造する方法およびその装置に
関する。
【0002】
【従来の技術】近年ユーザーの鋼帯表面に対するニーズ
は多様にわたり、使用される用途によって必要とされる
鋼帯の表面状態は異なってきている。ブライト仕上げと
呼ばれる鋼帯の表面は凹凸が少なく、一般に高光沢性が
必要とされる反射板や外装用の建材等の用途に使用され
る。一方ダル仕上げと呼ばれる鋼帯は表面に凹凸を付与
することによって、プレス成形時の加工用潤滑油の保持
性を向上し、成形加工時の焼き付きや擦り傷の防止に効
果があることが知られている。
【0003】自動車用鋼帯などでは成形性を確保するた
めにJIS B 0601で規定された中心線平均粗さRa(μm)
を一定の範囲内とした鋼帯が要求される。さらに同じダ
ル仕上げにおいてもJIS B 0610で規定された表面粗さの
長波長成分である、ろ波中心線うねりWca(μm)の大き
さを小さくすることによって、プレス成形性および塗装
後鮮映性に優れた鋼帯を製造できることが特開平5-1590
1号公報に開示されており、このような鋼帯は自動車用
外板等として使用されている。
【0004】このような鋼帯の表面粗さは、調質圧延時
に表面粗さを調整したダルロールをワークロールとして
用い、ロール表面粗さを鋼帯表面に転写することによっ
て付与するのが一般的である。調質圧延におけるロール
表面粗さの転写は主として圧延時の伸長率に支配されて
おり、伸長率が大きいほどロール表面粗さが鋼帯に転写
される割合(転写率)は増加していく。したがって、ある
表面粗さを持ったロールによる調質圧延によって、目標
とする表面粗さを有する鋼帯を得るには最適な伸長率が
存在する。
【0005】一方、調質圧延では表面粗さの付与と同時
に鋼帯の機械的特性の調整も行っており、鋼帯の機械的
特性は圧延時に与えられる伸長率によって変化する。こ
のとき鋼帯に与えられる伸長率は材質により各々最適値
が存在する。
【0006】したがって、ユーザーごとに異なる鋼帯の
表面粗さ仕様を満足し、且つ最適な伸長率を得るために
は、目標表面粗さごとに表面粗さの異なるロールを用意
して対応する必要があった。連続焼鈍ラインや溶融亜鉛
めっきラインのような連続ライン内での調質圧延におい
て、材質や目標表面粗さに応じてロール組替えを行った
場合、組み替え回数の増加にともない生産性が大きく低
下するといった問題が生じることになる。
【0007】このような問題を解決する方法として、調
質圧延時にロールバイト内に形成される潤滑液の液膜厚
を調整することによって、伸長率とは独立にロール表面
粗さの鋼帯への転写を制御する方法が特開平8-215708号
公報に開示されている。この方法では、圧延機入側に設
置されたノズルで潤滑液と気体を混合し、極小径の液滴
とした潤滑液を霧上に鋼帯に噴射することを特徴として
いる。このとき液圧や気体圧を変更し、流量や液滴径を
調整することによってロールバイト内の液膜厚を制御し
ている。通常ウエット圧延方式のようにロールバイト内
に一定の厚さを持つ液膜が形成された場合、潤滑液は非
圧縮に近く高圧が負荷されてもその体積は減少しないた
め、液膜厚さが厚いとロールの表面粗さがそのまま転写
されず、鋼帯の表面粗さは小さくなってしまう。
【0008】一方ドライ圧延方式のような場合、ロール
表面と鋼帯の間に潤滑液が存在しないため、ウエット圧
延方式と比較して同一伸長率におけるロール表面粗さの
転写率は大きくなる。したがってロールバイト内に形成
される液膜厚を制御してやればロール表面粗さの転写率
を伸長率とは独立に制御することが可能となる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら特開平8-
215708号公報で開示された方法では以下のような問題が
生じる。通常ダルロール表面は圧延長の増加にともない
摩耗やめっき皮膜の凝着によって初期ロール粗さが低下
していく。ロール表面粗さが低下した場合、同一圧延条
件で得られる鋼帯の表面粗さは小さくなっていき、目標
の表面粗さが大きいような領域においては液膜厚を薄く
しても、所定の表面粗さの鋼帯を得ることができない。
そのため、ある一定量圧延した後にロールを交換するこ
とにより製品に付与される表面粗さを一定に保つことが
必要となる。
【0010】またバイト内の液膜厚によって制御できる
ロール表面粗さの転写率はそれほど大きくないため、目
標表面粗さが大きく異なる鋼帯を同一のロールで製造す
ることは難しい。特にブライト仕上げを要求される鋼帯
とダル仕上げを要求される鋼帯を連続して製造するよう
な場合には必ずロール組み替えを行う必要がある。
【0011】さらに通常、調質圧延では鋼帯の形状を矯
正するためにロールクラウンを変更するワークロールベ
ンダー等の形状制御アクチュエーターを使用している。
形状制御アクチュエーターを使用した場合、幅方向での
圧力分布は均一とはならず、その結果幅方向におけるロ
ール表面粗さの転写も不均一となる。このような不均一
な転写は鋼帯の表面ムラとして観察され、製品品質上問
題となるケースがあった。このような問題は鋼帯の調質
圧延において、表面粗さの付与と材質の調整、および形
状矯正を同時に行う従来技術においては回避することは
難しい問題であった。
【0012】そこで本発明では前記従来技術の問題点を
解決し、生産性および品質を低下させることなく、形状
矯正、鋼帯の機械的特性、表面粗さといった要求される
すべての品質を確保することができる鋼帯の製造方法お
よびその装置を提供するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決する本発
明の手段は次のとおりである。第1の手段は、鋼帯を調
質圧延するに際し、ワークロールの中心線平均粗さRaが
0.3μm以下のブライトロールを用いて調質圧延を行った
後に、ノズル群から高圧液体を鋼帯表面に噴射すること
によって、鋼帯に表面粗さを付与することを特徴とする
鋼帯の製造方法を提供する。
【0014】第2の手段は、第1の手段において、予め制
御装置内に記憶させておいた高圧液体の噴出圧力、ノズ
ルと鋼帯間の距離(スタンドオフ距離)、高圧液体の噴射
時間のいずれか一つあるいは二つ以上と鋼帯表面粗さと
の関係に基づいて、鋼帯の目標表面粗さに応じて、高圧
液体の噴出圧力、ノズルと鋼帯間の距離(スタンドオフ
距離)、高圧液体の噴射時間のいずれか一つあるいは二
つ以上を組み合わせて制御することを特徴とする鋼帯の
製造方法を提供する。
【0015】第3の手段は、第1または第2の手段におい
て、高圧液体を噴射して鋼帯の表面粗さを付与した後
に、鋼帯の表面粗さを計測し、計測した表面粗さと目標
表面粗さとの偏差に基づいて、高圧液体の噴出圧力、ノ
ズルと鋼帯間の距離(スタンドオフ距離)、高圧液体の噴
射時間のいずれか一つあるいは二つ以上を組み合わせて
前記偏差をなくするように制御することを特徴とする鋼
帯の製造方法を提供する。
【0016】第4の手段は、第1〜第3のいずれかの手段
において、鋼帯が、主としてη相からなるめっき層を有
する亜鉛めっき鋼帯であることを特徴とする鋼帯の製造
方法を提供する。
【0017】第5の手段は、ワークロールに中心線平均
粗さRaが0.3μm以下のブライトロールを備える調質圧延
機、および、該調質圧延機の後方に、高圧液体を鋼帯表
面に噴射して鋼帯表面粗さを付与するノズル群を備えた
高圧液体噴射装置が配設されていることを特徴とする鋼
帯の製造装置を提供する。
【0018】第6の手段は、ワークロールに中心線平均
粗さRaが0.3μm以下のブライトロールを備える調質圧延
機、高圧液体を鋼帯表面に噴射して鋼帯表面粗さを付与
するノズル群を備えた高圧液体噴射装置および鋼帯の表
面粗さを計測する表面粗さ計が、鋼帯の走行方向にこの
順で配設されていることを特徴とする鋼帯の製造装置を
提供する。
【0019】第7の手段は、ワークロールに中心線平均
粗さRaが0.3μm以下のブライトロールを備える調質圧延
機、高圧液体を鋼帯表面に噴射して鋼帯表面粗さを付与
するノズル群を備えた高圧液体噴射装置および鋼帯の表
面粗さを計測する表面粗さ計が、鋼帯の走行方向にこの
順で配設され、また該表面粗さ計で計測した鋼帯表面粗
さと目標鋼帯表面粗さに基づいて、該偏差を0にするの
に必要な高圧液体噴射装置の噴射条件を演算し、演算結
果に基づいて高圧液体噴射装置の高圧水噴射条件を制御
する制御演算装置が配設されていることを特徴とする鋼
帯の製造装置を提供する。
【0020】
【発明の実施の形態】係る課題を解決するため本発明者
らが発明した方法について説明する。本発明の特徴とす
るところは調質圧延における表面粗さを付与する機能と
形状矯正及び材質調整の機能を分離した点である。
【0021】まず形状矯正及び材質の調整を行うため中
心線平均粗さRaが0.3μm以下のブライトロールを用いて
調質圧延を行う。表面粗さが大きいダルロールを用いて
調質圧延を行った場合、伸長率の変化とともに転写率が
変化するため、鋼帯の表面粗さは大きく変化する。一
方、ブライトロールではロール表面粗さがダルロールと
比較して小さいため、転写率が変化しても鋼帯の表面粗
さは大きく変化しない。
【0022】表1に溶融亜鉛めっき鋼帯をロール径φ120
mmの中心線平均粗さRaが3.0μmのダルロールとRaが0.3
μmのブライトロールを用いて調質圧延を行った場合の
鋼帯の中心線平均粗さRaの測定結果を示す。
【0023】
【表1】
【0024】例1、例2において鋼帯入側形状は良好であ
り、形状制御アクチュエーターとしてワークロールベン
ダーを使用した。このときワークロールベンダーは圧延
時のロールの弾性変形を補償するように設定されてお
り、圧延機出側における板形状はフラットであった。ま
た例3、例4において鋼帯入側形状は耳波であり、形状制
御アクチュエータとしてワークロールベンダーを使用し
た。このときワークロールベンダーは鋼帯の耳波を矯正
するため、センター部が凸クラウンを持つよう設定され
ており、圧延後の板形状はフラットであった。
【0025】ダルロールにおいては伸長率が0.5%から
1.5%に変化した場合、鋼帯の中心線平均粗さRaは0.14
μm変化するのに対し、ブライトロールでは0.02μm程度
の変化しか生じていない。また形状矯正を行うためロー
ルクラウンを変更した場合、ダルロールでは板センター
部と板エッジ部において転写ムラが発生しているが、ブ
ライトロールでは製品上問題となるような転写ムラは観
察されない。
【0026】つまりブライトロールを用いることによっ
て材質に応じて伸長率を変更した場合、及び形状矯正を
行うためロールクラウンを変更しても鋼帯の表面粗さを
ほぼ一定値に保つことができる。
【0027】したがってブライトロールによる調質圧延
で、材質調整と形状矯正が行われた鋼帯を圧延機後方に
配置された表面粗さを付与する設備によって、目標とす
る表面粗さに制御することができれば圧延ロールの組み
替えを行う必要はなく生産性は大きく向上する。
【0028】このとき表面粗さを付与する設備には以下
のような機能が要求される。ひとつは材質を変化させる
ことなく表面粗さを付与することが可能であること、次
に連続ラインにおいて生産性を低下させることなく目標
表面粗さに制御できることである。本発明者らはこのよ
うな要求を満たす鋼帯の表面粗さ付与手段について検討
を行ない、高圧液体による壊食現象を利用して表面粗さ
を制御する本発明に至った。以下、本発明についてさら
に説明する。
【0029】高圧流体を空気中に噴射した場合、流体の
構造は図1のようになっている。図1中のXpの領域は、ポ
テンシャルコア2と呼ばれ、ノズル1から噴射した流体
(噴流)がノズル出側と同じ流速を維持しつづける領域
である。Xbの領域では、噴流は減速するものの、液柱3
となって存在しするため連続性は保持される。このXbの
領域とこれよりノズルに近い領域を連続流領域と呼ぶ。
ノズルからの距離がXbの領域より遠くなると、液柱3が
分裂して液滴4となるため連続性は失われる。このXbよ
りノズルから遠い領域を液滴領域と呼ぶ。
【0030】ここで、連続流領域では、標的物体への衝
撃圧は、運動量保存則から、次式(1)のようになる。
【0031】
【数1】
【0032】一方、液滴領域では、液滴の標的物体への
衝突圧力は水撃作用が発生する。水撃作用とは、高速な
液体流体を物体に衝突させたときに、液体中発生する激
しい圧縮波により高い衝撃が発生する現象である。水撃
現象が発生した場合の衝撃圧は次式(2)となる。
【0033】
【数2】
【0034】つまり、液滴流領域では連続流領域と比較
して、非常に高い圧力で標的物体に衝撃を与えることが
出来る。たとえば、常温の水を噴射圧力50Mpaで噴射した
場合、流体のノズル出口速度は313m/sとなる。そのと
き、連続流領域の衝突圧力は式(1)から50Mpaとなるのに
対して、液滴領域の衝突圧力は式(2)から約450Mpaとな
るため、液滴領域では連続流領域の約10倍の衝突圧力を
標的物体に与えることができる。
【0035】また、ノズルから標的物体までの距離(以
後スタンドオフ距離と呼ぶ)と衝撃圧力の関係を図2に示
す。衝撃圧力はスタンドオフ距離により、1つのピーク
を持っている。このピーク領域では、液体噴流が完全に
液滴となり、かつ液滴の減速も少ないため、水撃作用が
効率的に働き高い衝撃圧を発生させることができる。こ
のように、気中噴流における液滴群の衝突により極めて
高い衝撃圧が発生するため、標的物体面には液滴の大き
さ程度の微少な領域に対して、衝撃荷重や繰返し荷重が
発生する。このときの衝撃荷重や繰返し荷重が材料固有
の値を超えた時に、標的物体の表面にクレーター状のピ
ットが生じる。この現象は一般的に壊食として知られて
おり、この現象を利用することにより標的物体の表面に
粗さを付与することが可能となる。
【0036】このとき図2及び式(2)からわかるように、
標的物体に作用する衝撃圧力は、スタンドオフ距離及び
液体の噴出圧力に応じて変化させることができ、衝撃圧
力、スタンドオフ距離を制御してやることによって表面
粗さを制御することが考えられる。また同一箇所に繰り
返し荷重が作用した場合に壊食される量は、繰り返し回
数が多いほど大きい。したがって同一箇所に高圧液体が
噴射される時間を制御してやれば表面粗さを制御でき
る。
【0037】図3は本発明者らが上記の考えにもとづき
検討を行った表面粗さ制御装置の概略構成を説明する側
面図である。搬送テーブル5上を移動している鋼帯6にポ
ンプ7に接続されたノズル群8から鋼帯表面に高圧液体を
直接噴射することが可能である。ノズル群8は鋼帯6の進
行方向に対して、流体が扇形に広がって噴射されるフラ
ットスプレーノズル9が150mmピッチで複数配列されてい
る。このとき、フラットスプレーノズル9は、鋼帯6の進
行方向に対向した向きに傾斜角度θ1を付けて噴射す
る。このようなヘッダを長手方向に5列設置した。
【0038】このとき、図4に示すようにねじり角度が
θ2となるようにフラットスプレーノズルを取付ける。
このような角度でノズルを取付けると、噴射された水は
高圧水噴射装置の後方、すなわち鋼帯進行方向に流れ出
すことはなく、かつ高圧水衝突面のエッジ部をオーバー
ラップさせることができるため、高圧水衝突面端部の衝
撃圧が弱い領域の補償を行い、板幅方向に均一な粗さが
付与できるようになる。
【0039】図5〜図7は高圧液体として水を使用し、搬
送テーブル5上を移動している溶融亜鉛めっき鋼帯にノ
ズルから高圧液体を噴射した場合の鋼帯の表面粗さの変
化を示したものである。縦軸として中心線平均粗さRa
(μm)をとっている。図5は高圧水の噴射圧力を変更した
場合の結果である。噴射圧力が大きくなるにつれて、鋼
帯の中心線平均粗さRaは大きくなっていく。図6はスタ
ンドオフ距離を変更した場合であるが、距離を離してい
く段階で中心線平均粗さRaが極値をもつことがわかる。
これは前述した噴流構造と関係しており、極値を持つス
タンドオフ距離から流体は液滴となっていると考えられ
る。図7は鋼帯の同一箇所に衝突する液体の衝突時間を
変更したものである。衝突時間が増加するにつれ中心線
平均粗さRaの値が大きくなっているのがわかる。
【0040】一般に鋼帯に要求される表面粗さは中心線
平均粗さRaが0.1〜3.0μmの範囲であり、ブライト材の
ような中心線平均粗さRaが非常に小さい領域では上記の
高圧水設備を使用せず、ダル仕上げが要求されるような
場合は噴出圧力、スタンドオフ距離、衝突時間を制御す
ることによって鋼帯の表面粗さを制御できる。このとき
の高圧水噴射前後における鋼帯の機械的特性を調査した
結果を表2に示す。
【0041】
【表2】
【0042】高圧水を噴射した場合としない場合のサン
プルにおいて引張り試験を実施し、降伏応力および破断
伸びを調査した。高圧水を噴射した場合においても鋼帯
の機械的特性は変化しておらず、本手法によって材質を
変化させることなく表面粗さを付与できることがわか
る。
【0043】このときあらかじめ、図5〜7に示されるよ
うな目標表面粗さに対する、噴出圧力、スタンドオフ距
離、衝突時間の関係を求めておけば、噴出圧力、スタン
ドオフ距離、衝突時間を制御することによって材質を変
化させることなく容易に表面粗さを制御することが可能
となる。さらに表面粗さを付与する設備の後方に鋼帯の
表面粗さを測定する装置を配置し、表面粗さの検出結果
が目標粗さと異なる場合には目標表面粗さとなるよう、
噴出圧力、スタンドオフ距離、衝突時間を制御する信号
を送ることによって、安定的に目標表面粗さをもった鋼
帯を製造することが可能となる。
【0044】噴出圧力、スタンドオフ距離、衝突時間は
いずれか一つを制御してもよいし、二つ以上を組み合わ
せて制御してもよい。
【0045】したがって、中心線平均粗さRaが0.3μm以
下のブライトロールを用いて調質圧延を行い、鋼帯の形
状矯正、機械的特性の調整を行った後に、高圧液体を用
いて所定の鋼帯表面粗さを付与することによって、生産
性を低下させることなく、高品質の鋼帯を製造すること
が可能となる。
【0046】次に、本発明の実施の一形態を図を用いて
説明する。図8は溶融亜鉛めっき鋼帯の製造ラインの要
部設備の配置を示す概略図である。図8のラインにおい
て、冷間圧延を経て製造された鋼帯はペイオフリール10
から巻き戻され、焼鈍工程11を経た後に、溶融亜鉛めっ
き浴12に浸漬してめっきされる。めっき浴から出た鋼帯
に対しては、ワイピングノズル13でめっき量が調整され
る。さらに、めっき設備の下流に材質調整と形状矯正を
行う調質圧延機14が配置されている。調質圧延機14は4
重式圧延機であり、そのワークロール15には中心線平均
粗さRaが0.3μm以下のブライトロールが用いられてい
る。
【0047】調質圧延機14で所定の伸長率を付与された
鋼帯はその下流に配置された表面粗さ与装置16によって
目標の表面粗さに制御される。表面粗さ付与装置16は図
3に示すような高圧液体を噴射することが可能なノズル
群8を複数配列した構成となっている。さらにその下流
側には表面粗さ計17が配置されており、表面粗さ計17で
鋼帯の表面粗さをオンラインで計測し、計測結果を制御
演算装置20に送る。制御演算装置20は、目標表面粗さに
対して実測値が違う場合、両者の偏差をなくするのに必
要な噴出圧力、スタンドオフ距離、衝突時間のいずれか
一つまたは二つ以上の条件を演算し、演算結果を表面粗
さ付与装置16に信号を送り、噴出圧力、スタンドオフ距
離、衝突時間のいずれか一つまたは二つ以上を組み合わ
せて制御する。これによって安定的に目標の表面粗さを
得ることができる。その後、鋼帯表面に付着した液体を
除去する目的でエアージェットによるパージを行うパー
ジ設備18を通過した後、テンションリール19によって巻
き取られて製品となる。このとき鋼帯の表面粗さ計17と
パージ設備18はその順序が逆でも構わない。
【0048】本発明が対象とする鋼帯は、溶融めっき後
合金化処理が施されていない、めっき層が主としてη相
からなる溶融亜鉛めっき鋼帯が好適であるが、これに限
定されず、溶融めっき後合金化処理を施した合金化溶融
亜鉛めっき鋼帯、また前記以外の表面処理鋼帯や連続焼
鈍ラインで製造される冷延鋼帯等、めっき処理を行わな
い鋼帯を広く対象とする。
【0049】
【実施例】溶融亜鉛めっき鋼帯の製造ラインにおいて本
発明を適用した場合、及び比較として従来技術を用いた
場合の結果を以下に示す。図9は、溶融亜鉛めっき鋼板
の製造ラインにおいて、圧延長に対する鋼帯表面粗さの
変化を調査した図である。従来例1はロール径φ650mm、
ロールバレル長2000mm、中心線平均粗さRa=3.0μmの調
質圧延ロールを用いて板厚0.8mm、板幅1200mmの溶融亜
鉛めっき鋼板をライン速度90mpmで製造した場合の結果
である。このとき伸長率0.8%、鋼帯の目標表面粗さはR
a=1.2μmであるが、圧延長が増加するにつれロール摩耗
と亜鉛の付着によってロール粗さが低下するため、圧延
長の増加とともに鋼帯のRaは低下していく。30km圧延を
行った時点での鋼帯Raは1.0μmとなっており、目標表
面粗さが確保できないため、ロール組み替えを行ってい
る。
【0050】一方、本発明を用いた実施例1は板厚0.8m
m、板幅1200mmの溶融亜鉛めっき鋼板をロール径φ650m
m、ロールバレル長2000mm、中心線平均粗さRa=0.3μmの
圧延ロールを用いて調質圧延を行った後に、噴射圧力50
0kg/cm2、スタンドオフ距離100mm、噴射時間3secで水を
噴射した場合の結果である。圧延長が増加しても鋼帯の
表面粗さは変化せず、200km圧延を行っても鋼帯表面粗
さは1.2μmを確保できており、ロール組み替えを行う必
要はなく従来例1と比較して大幅に生産性が向上してい
る。
【0051】図10は、縦軸に亜鉛めっき鋼帯エッジ部と
センター部の中心線平均粗さRaの変化量ΔRa、横軸に製
品の急峻度(波高さ/ピッチ×100(%))をとったもの
である。従来例2はロール径φ650mm、ロールバレル長20
00mm、中心線平均粗さRa=3.0μmの調質圧延ロールを用
いて、板厚1.2mm、板幅1600mmの溶融亜鉛めっき鋼板を
ライン速度90mpmで製造した場合の結果である。このと
き鋼帯の入側形状は急峻度2.0%の中伸びであり、調質
圧延機によってワークロールベンダーを使用するこによ
って形状矯正を行っている。圧延後の鋼帯形状は急峻度
0.2%となっており、充分フラットであるがエッジ部と
鋼帯中央部において転写ムラが観察され、製品品質上問
題となった。
【0052】従来例3はロール径φ650mm、ロールバレル
長2000mm、中心線平均粗さRa=3.0μmの調質圧延ロール
を用いて、板厚1.2mm、板幅1600mmの溶融亜鉛めっき鋼
板をライン速度90mpmで製造した場合の結果である。こ
のとき鋼帯の入側形状は急峻度2.0%の中伸びであっ
た、このときワークロールベンダーは使用しなかった。
幅方向における転写ムラは発生していないが、圧延後の
急峻度は1.6%となっており、形状が完全に矯正されて
いない。
【0053】一方、本発明を用いた実施例2はロール径
φ650mm、ロールバレル長2000mm、中心線平均粗さRa=3.
0μmの調質圧延ロールを用いて調質圧延を行った後に噴
射圧力500kg/cm2、スタンドオフ距離100mm、噴射時間3s
ecで水を噴射し、板厚1.2mm、板幅1600mmの溶融亜鉛め
っき鋼板をライン速度90mpmで製造した場合の結果であ
る。このとき鋼帯の入側形状は急峻度2.0%の中伸びで
あり、調質圧延機によって形状矯正を行った。圧延後の
鋼帯形状は急峻度で0.2%であり、フラットな形状が得
られている。また表面状態を目視で観察したところ、鋼
帯全幅にわたって良好な表面状態が得られており、従来
例2と比較して形状、表面状態の両面において高品質の
鋼帯が製造できる。
【0054】
【発明の効果】本発明によれば、生産性や品質を損なう
ことなく、形状矯正、鋼帯の機械的特性、表面粗さとい
った要求されるすべての品質を確保された鋼帯を安定的
に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】大気中への噴流の噴射を説明する図である。
【図2】大気中において、標的物体に液体噴流を噴射し
た時の噴射距離と衝撃圧の関係を説明する図である。
【図3】表面粗さ制御装置の概略を説明する側面図であ
る。
【図4】図3の装置に配設されているフラットスプレーノ
ズルのスプレーパターンを説明する平面図である。
【図5】高圧液体の噴射圧力を変更した場合の鋼帯の表
面粗さ変化を示す図である。
【図6】高圧液体のスタンドオフ距離を変更した場合の
鋼帯の表面粗さ変化を示す図である。
【図7】高圧液体の衝突時間を変更した場合の鋼帯の表
面粗さ変化を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態である溶融亜鉛めっき鋼帯
の製造ラインを説明する図である。
【図9】従来技術および本発明を溶融亜鉛めっき鋼板の
製造ラインに適用した場合の圧延長に対する、鋼帯表面
粗さの変化を説明する図である。
【図10】従来技術および本発明を溶融亜鉛めっき鋼板の
製造ラインに適用した場合の、鋼帯の形状と幅方向の鋼
帯表面粗さの転写状態を説明する図である。
【符号の説明】
1 ノズル 2 ポテンシャルコア 3 液柱 4 液滴 5 搬送テーブル 6 鋼帯 7 ポンプ 8 ノズル群 9 フラットスプレー 10 ペイオフリール 11 焼鈍炉(焼鈍工程) 12 亜鉛ポット(溶融亜鉛めっき浴) 13 ワイピングノズル 14 調質圧延機 15 ブライトロール(ワークロール) 16 表面粗さ付与装置(高圧液体噴射装置) 17 表面粗さ計 18 パージ設備 19 テンションリール 20 制御演算装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 木村 幸雄 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 曽谷 保博 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 Fターム(参考) 4E002 AD06 BB09 BC07 BD10 4K027 AA05 AB05 AB06 AB09 AB35

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼帯を調質圧延するに際し、ワークロー
    ルの中心線平均粗さRaが0.3μm以下のブライトロールを
    用いて調質圧延を行った後に、ノズル群から高圧液体を
    鋼帯表面に噴射することによって、鋼帯に表面粗さを付
    与することを特徴とする鋼帯の製造方法。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の鋼帯の製造方法におい
    て、予め制御装置内に記憶させておいた高圧液体の噴出
    圧力、ノズルと鋼帯間の距離(スタンドオフ距離)、高圧
    液体の噴射時間のいずれか一つあるいは二つ以上と鋼帯
    表面粗さとの関係に基づいて、鋼帯の目標表面粗さに応
    じて、高圧液体の噴出圧力、ノズルと鋼帯間の距離(ス
    タンドオフ距離)、高圧液体の噴射時間のいずれか一つ
    あるいは二つ以上を組み合わせて制御することを特徴と
    する鋼帯の製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1または2に記載の鋼帯の製造方法
    において、高圧液体を噴射して鋼帯の表面粗さを付与し
    た後に、鋼帯の表面粗さを計測し、計測した表面粗さと
    目標表面粗さとの偏差に基づいて、高圧液体の噴出圧
    力、ノズルと鋼帯間の距離(スタンドオフ距離)、高圧液
    体の噴射時間のいずれか一つあるいは二つ以上を組み合
    わせて前記偏差をなくするように制御することを特徴と
    する鋼帯の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれかに記載の鋼帯の製
    造方法において、鋼帯が、主としてη相からなるめっき
    層を有する亜鉛めっき鋼帯であることを特徴とする鋼帯
    の製造方法。
  5. 【請求項5】 ワークロールに中心線平均粗さRaが0.3μ
    m以下のブライトロールを備える調質圧延機、および、
    該調質圧延機の後方に、高圧液体を鋼帯表面に噴射して
    鋼帯に表面粗さを付与するノズル群を備えた高圧液体噴
    射装置が配設されていることを特徴とする鋼帯の製造装
    置。
  6. 【請求項6】 ワークロールに中心線平均粗さRaが0.3μ
    m以下のブライトロールを備える調質圧延機、高圧液体
    を鋼帯表面に噴射して鋼帯に表面粗さを付与するノズル
    群を備えた高圧液体噴射装置および鋼帯の表面粗さを計
    測する表面粗さ計が、鋼帯の走行方向にこの順で配設さ
    れていることを特徴とする鋼帯の製造装置。
  7. 【請求項7】 ワークロールに中心線平均粗さRaが0.3μ
    m以下のブライトロールを備える調質圧延機、高圧液体
    を鋼帯表面に噴射して鋼帯に表面粗さを付与するノズル
    群を備えた高圧液体噴射装置および鋼帯の表面粗さを計
    測する表面粗さ計が、鋼帯の走行方向にこの順で配設さ
    れ、また該表面粗さ計で計測した鋼帯表面粗さと目標鋼
    帯表面粗さに基づいて、該偏差を0にするのに必要な高
    圧液体噴射装置の噴射条件を演算し、演算結果に基づい
    て高圧液体噴射装置の高圧水噴射条件を制御する制御演
    算装置が配設されていることを特徴とする鋼帯の製造装
    置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2021508771A (ja) * 2017-12-26 2021-03-11 ポスコPosco 加工後耐食性に優れた亜鉛合金めっき鋼材及びその製造方法

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2021508771A (ja) * 2017-12-26 2021-03-11 ポスコPosco 加工後耐食性に優れた亜鉛合金めっき鋼材及びその製造方法
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