JP2907835B2 - 気泡を有する可塑性油中微粒子分散型食品の製造法 - Google Patents

気泡を有する可塑性油中微粒子分散型食品の製造法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、気泡を有する可塑性油中微粒子分散型食品
の製造法、詳しくは、広い温度範囲で可塑性を有し、且
つ微粒子及び微細な気泡が均一に分散してなる可塑性油
中微粒子分散型食品の製造法に関する。本発明の製造法
によって得られる気泡を有する可塑性油中微粒子分散型
食品は、軽い食感を有し、菓子パン等のセンター用素材
又はフィリング用素材等の食品素材として利用できる。
〔従来の技術及び発明が解決しようとする課題〕
油中微粒子分散型食品とは、油脂類に溶けない、食品
素材、例えば、タンパク質、糖類、デンプン類、あるい
はその他の呈味性成分等が、微細な粒子の型で、油脂中
に分散してなる食品を言う。又、可塑性油中微粒子分散
型食品とは、常温あるいは室温中にて可塑性を有する油
中微粒子分散型食品を言う。油中微粒子分散型食品に
は、チョコレート類が包含され、気泡を導入したチョコ
レートとしては、特公昭34−3741号公報及び特公昭34−
5736号公報に記載されたものがあげられる。これらの公
報に記載されたチョコレートは、融解したチョコレート
を混練した際生じる気泡を、特公昭34−3741号公報では
常圧又は加圧下において膨張することによって、又特公
昭34−5736号公報では減圧下において膨張することによ
って、多孔質な状態にし、更に冷却固化して気孔を保持
する方法により得られる。しかしながら、これらの方法
では、チョコレートを急冷捏和しておらず、又、可塑性
を有するものは製造できない。
又、特公昭57−21293号公報及び特開昭58−141749号
公報にも気泡を導入したチョコレートの製造法が記載さ
れているが、これらの公報に記載の方法は、加圧下で溶
解されたチョコレート等に加圧したガスを導入し、混合
均一化したのち圧力を解放して気泡を生じさせる方法で
あり、チョコレートを急冷捏和しておらず、これらの方
法でも可塑性を有するものは製造できない。
又、特公昭63−13656号公報には、チョコレート類を
急冷混捏し、場合によってはホイップすることによって
気体を導入して製造する、気泡性を有するチョコレート
の製造方法などが記載されているが、使用されている油
脂がハードなものなので、この方法でも可塑性を有する
ものは製造できない。
さらに、特開昭63−28355号公報には、あらかじめ発
泡させたショートニングとチョコレートを混合し、さら
に減圧発泡させて気泡入りチョコレートとする方法が記
載されているが、ショートニングは気泡源として使用さ
れ、又、その比率も限定されており、やはりこの方法で
も可塑性を有するものは製造できない。
以上に述べた通り、気泡を有するチョコレート、つま
り気泡を有する油中微粒子分散型食品は見られるが、気
泡を有する油中微粒子分散型食品であって、可塑性を有
するものは見られない。
従って、本発明の目的は、広い温度範囲で可塑性を有
し、且つ微粒子及び微細な気泡が均一に分散してなる、
気泡を有する可塑性油中微粒子分散型食品の製造法を提
供することにある。
〔課題を解決するための手段〕
本発明は、前記目的を、融解状態にした油中微粒子分
散型食品を急冷捏和し、次いで該食品に、2kg/cm2以上
の加圧下で不活性気体を導入、攪拌混合して微細な気泡
を均一に分散させることを特徴とする気泡を有する可塑
性油中微粒子分散型食品の製造法を提供することにより
達成したものである。
以下、本発明の気泡を有する可塑性油中微粒子分散型
食品の製造法について詳述する。
本発明で用いられる油脂としては、天然の動植物油
脂、およびこれらにエステル交換、水素添加、分別など
の処理を施した加工油脂をあげることができ、これらの
各種油脂を目的に応じて適宜配合して用いることができ
る。
本発明において、微粒子として上記油脂中に分散する
食品素材としては、好ましくは水分含量15%以下(より
好ましくは10%以下)の乾燥食品及び/又は低水分含有
食品、例えば、チーズ、ヨーグルトなどの酪農加工品、
蓄肉類、ハム、ソーセージなどの蓄肉加工品、卵などの
畜産物及びその加工品、植物種子、果実、野菜、球根な
どの農産物及びその加工品、ウニ、海苔、魚卵類、魚肉
類などの海産物及びその加工品、脱脂粉乳、全脂粉乳、
蔗糖、乳糖、麦芽糖、果糖、澱粉、蛋白質、香辛料、調
味料などの可食物が挙げられる。これらの食品素材のう
ち、最初から水分が15%以下のものはそのまま、それ以
上のものは適宜乾燥、脱水して用いるのが好ましい。上
記食品素材の形状は粒状または粉末状が好ましく、食品
素材を一種または二種以上混合して用いてもよい。
上記油脂と上記食品素材との配合割合は、油脂25〜99
重量%に対して食品素材1〜75重量%が好ましい。油脂
が25重量%未満であると製品のなめらかさやスプレッド
性などが低下し、ぱさつく感じが出る。また、食品素材
が1重量%未満ではその風味の発現が不十分である。
又、本発明において使用する不活性気体としては、窒
素、二酸化炭素、空気等が代表的なものとしてあげられ
るが、無色、無臭で人体に悪影響を与えるような物質を
何ら含有しないものであればこれ以外でも使用出来る。
不活性気体の導入方法としては、一定速度の急冷捏和
された油中微粒子分散型食品の流れのなかに、加圧下に
連続的に気体を導入し攪拌混合する方法が好ましく、こ
の方法により、所定ガス量の入った製品を効率的に得る
ことができる。製品の不活性気体含有量(気泡含有率)
は体積比率で5〜60%が好ましい。5%以下では軽い食
感の製品が得られず、又60%以上では導入された気泡が
不安定となり、脱泡等の現象が起き易くなる。より好ま
しい不活性気体含有量(気泡含有率)は20〜50%であ
り、この範囲では、食感の非常に軽いものが得られ、
又、導入された気泡も、より安定に保持される。
上記不活性気体の導入圧は2kg/cm2以上が必要で、急
冷捏和された油中微粒子分散型食品にはこれ以下の圧力
では順調に気体が導入され難い。
又、本発明の製造法においては、油中微粒子分散型食
品を融解状態にした後、脱泡機等により脱気した後、急
冷捏和し、次いで窒素ガス等の不活性気体を導入するこ
とにより、導入ガス量がより正確にコントロールされる
とともに、系内に酸素がないので風味劣化のより少ない
ものを製造することが出来る。
本発明の製造法を、その好ましい実施態様についてさ
らに詳細に述べる。
本発明を実施するには、まず油脂を60℃程度に加熱融
解し、この中に食品素材及び必要に応じ乳化剤を加え、
50〜60℃で攪拌混合する。上記乳化剤としては、レシチ
ン、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エス
テル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、蔗糖脂肪
酸エステルなど公知の食品用乳化剤を使用することがで
きる。
次いで、混合物を微粉砕処理する。微粉砕処理は、ロ
ールリファイナー、ボールミル、媒体攪拌ミル、ハンマ
ーミル、ピンミル、ジェットミル、コロイドミルなどの
微粉砕機で行うことができる。この微粉砕処理は、好ま
しくは40〜60℃の温度で、食品素材の平均粒子径を70μ
m以下、好ましくは5〜40μm、より好ましくは10〜30
μmになるように行う。
次いで、このように微粉砕化、均質化されて得られる
融解状態の油中微粒子分散型食品を急冷捏和機に通して
可塑化する。急冷捏和とは、例えば0℃から−30℃の接
触面に食品を接触させ、次いで捏和することで、これに
よって例えば静置放冷(徐冷)するといった冷却固化工
程では得られない、広い温度範囲で可塑性を持つ食品を
得ることができる。かかる急冷捏和機としては、ショー
トニング、マーガリンの製造に使用されるボテーター、
コンビネーター、パーフェクター、コンプレクターなど
が挙げられる。
可塑化された油中微粒子分散型食品にはその後直ちに
不活性気体が導入され、更に攪拌機に送られ、攪拌され
ることによって、微細な気泡を均一に含有する、本発明
の気泡を有する可塑性油中微粒子分散型食品が得られ
る。上記の不活性気体の導入と攪拌混合とは、場合によ
っては同時に行ってもよい。又、この時、可塑化された
油中微粒子分散型食品の流速と圧入される不活性気体の
流速を適宜調節することによって、上記食品に含まれる
気泡の量を調節することができる。
尚、この際、油中微粒子分散型食品を十分に急冷捏和
することが必要で、これによって、高融点部の油脂の結
晶が微細且つ均一に生じ、油中微粒子分散型食品の粘性
が増加するので微小な気泡を安定に保てる。急冷捏和が
不十分であると、微細な気泡が形成されず、又生じた気
泡の安定性も悪く、粗大な気泡になりやすく、脱泡しや
すくなる。急冷捏和機の上流に脱泡機を配置して、融解
した油中微粒子分散型食品をあらかじめ脱泡し、気泡の
無い状態にしておくと、圧入する不活性気体量の調節だ
けで常に一定の気泡含有率を有する製品を得ることも可
能である。又、不活性気体を導入した後攪拌する攪拌機
としては、各種のミル、各種のミキサー、及びエクスト
ルーダーなどが用いられる。
又、製品によっては、最後にテンパリングやエージン
グといった温度処理(使用される油脂の融点以下の温度
で一定時間放置すること)を適宜行う。
本発明の気泡を有する可塑性油中微粒子分散型食品に
は、風味を向上させる意味で、各種フレーバー、着香
料、調味料を適宜添加することができる。
〔実施例〕
以下に本発明の実施例をあげ、本発明を更に具体的に
説明する。
実施例1 下記配合の油脂及び食品素材等を用い、次のようにし
て本発明の気泡を有する可塑性油中微粒子分散型食品を
製造した。
配 合 ナタネ硬化油(融点15℃) 29重量% ナタネ硬化油(融点35℃) 5重量% ナタネ硬化油(融点60℃) 2重量% 米白絞油硬化油(融点35℃) 4.5重量% 砂 糖 42重量% ココアバター 10重量% 脱脂粉乳 5重量% カカオマス 2重量% レシチン 0.5重量% 香 料 適 量 まず上記配合の油脂分を混和槽に入れ、60℃に加熱し
て均一に融解させた。この油相に上記配合の食品素材等
を添加し50℃に保温しながら攪拌混合した。得られた混
合物を媒体攪拌ミルで処理して微粉砕して均質化した。
次いでこれを急冷捏和機を通過させて可塑化した。この
とき可塑化された物の温度は30℃であった。次に可塑化
物中に5kg/cm2の窒素を導入し、ピンミキサーで攪拌混
合することにより微細な気泡を有する可塑性油中微粒子
分散型食品を得た。このとき下記第1表に示すように急
冷捏和機の通過速度と窒素ガスの流速を調節することに
よって、下記第1表に示す種々の気泡含有率の上記食品
を得た。
上述の如くして得られた本発明の気泡を有する可塑性
油中微粒子分散型食品は何れも、気泡を含まないものと
比較して5〜35℃で軟らかく、且つ耐熱性に優れ、35℃
でも1週間以上油の分離が生ぜず、絞り袋による絞り出
しの成形で30℃で1週間以上の保形性を有した。又、食
感は何れも気泡を含まないものと比較して非常に軽いも
のであった。
実施例2〜4 下記第2表に示す配合(重量%)により、実施例1と
同様にして、気泡含有率40%の本発明の気泡を有する可
塑性油中微粒子分散型食品をそれぞれ製造した。
上述の如くして得られた本発明の気泡を有する可塑性
油中微粒子分散型食品何れも、気泡を含まないものに比
較して、食感が軽く、スプレッド性等にも優れており、
菓子パン等のフィリング素材等に有用である。
〔発明の効果〕
本発明の製造法によれば、広い温度範囲で可塑性を有
し、且つ微粒子及び微細な気泡が均一に分散してなる、
気泡を有する可塑性油中微粒子分散型食品を得ることが
でき、食品中に気泡が均一に分散、導入される為、得ら
れる気泡を有する可塑性油中微粒子分散型食品は、食感
が非常に軽く、スプレッド性が良好で、且つ耐熱性にも
優れた可塑性を有するものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭62−275648(JP,A) 特公 昭63−13656(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) A23G 1/00 - 9/30

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】融解状態にした油中微粒子分散型食品を急
    冷捏和し、次いで該食品に、2kg/cm2以上の加圧下で不
    活性気体を導入、攪拌混合して微細な気泡を均一に分散
    させることを特徴とする気泡を有する可塑性油中微粒子
    分散型食品の製造法。
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