JP2904324B2 - ポリスルホン系中空糸膜および製造方法 - Google Patents

ポリスルホン系中空糸膜および製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はポリスルホン系中空糸膜
に関するものであり、詳しくは優れた耐圧性と透水性能
を併せもった複合中空糸膜の支持膜として用いるポリス
ルホン系中空糸膜およびその製造方法を提供することに
ある。
【0002】
【従来技術】分離膜において高性能化、高機能化を目指
した複合分離膜についての研究が盛んに行われている。
複合分離膜とは一般に分離機能を有する分離活性層と耐
圧性を付与するための支持層からなり、これらの二層が
異なる物質で構成されている。複合分離膜の製法として
は耐圧性を有する支持膜上に支持膜とは異なる素材を複
合膜化することが一般的である。現在、複合膜化方法と
しては塗布法、界面重合法、蒸着重合法、プラズマ重合
法などについて検討されており一部実用化されている。
様々な用途の複合分離膜が開発研究される上で、複合膜
化方法の確立は元より支持膜の高性能化が要望されてい
る。
【0003】ポリスルホンによる分離膜は、主に限外濾
過の範囲で優れた特性を有することが知られているが、
ポリスルホンは耐熱性、耐薬品性、安全性に優れてお
り、このため分離膜の支持膜、医療、食品工業などにも
広く用いられている。しかし、従来のポリスルホンを用
いた中空糸膜は操作圧力10kg/cm2 以下のいわゆる低
圧仕様が多く、操作圧力50kg/cm2 以上のいわゆる高
圧仕様のものは皆無に等しく、支持膜として高圧仕様に
耐え得る中空糸膜の有すべき必要条件さえ明確ではなか
った。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は高圧仕
様に耐え得る中空糸支持膜の必要条件を明確にし、更に
その必要条件を踏まえ、優れた耐圧性と透水性能を併せ
もった複合中空糸膜の支持膜として用いるポリスルホン
系中空糸膜およびその製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】高圧用複合分離膜の支持
膜として最も重要な要件である耐圧性について検討した
結果、膜に耐圧性がない場合は、高圧条件では圧力のた
め中空糸が収縮を起こし、支持膜の単位操作圧力あたり
の純水透過量が低圧条件での場合と比較して小さい値と
なることが判った。そこで、操作圧力55kg/cm2 での
純水透過量と操作圧力2kg/cm2 での純水透過量の比を
耐圧性の指標に用いることが可能であると考え、検討し
た結果、純水透過量の比が0.8より小さい場合は操作
圧力55kg/cm2 での純水透過量が比較的小さく、また
長時間圧力をかけて運転した場合、時間とともに透水性
が低下することが判った。一方、純水透過量の比が1.
0よりも大きい場合は膜構造に欠陥が生じ、リークが起
こっており、膜の除去率が低下していることが判った。
更に支持膜の透水性能および支持膜の形状についても鋭
意検討した結果、発明したポリスルホン系中空糸膜は次
の構成を有するに至った。
【0006】すなわち、 (1)操作圧力55kg/cm2 での純水透過量と操作圧力
2kg/cm2 での純水透過量の比が0.8以上1.0以下
であり、かつ操作圧力55kg/cm2 での純水透過量が1
0(l/m2・日・kg/cm2 )以上であることを特徴とす
るポリスルホン系中空糸膜。 (2)二重管構造の中空糸製造用ノズルを用い、外側の
環状口から紡糸原液を吐出させ乾湿式紡糸法により中空
糸を製造する場合において、該紡糸原液がポリマー濃度
30重量%以上であり、かつ2種類以上の極性有機溶剤
の混合液を含み、また芯部から気体を吐出させることに
より得られることを特徴とする請求項1記載のポリスル
ホン系中空糸膜の製造方法。
【0007】以下、本発明を詳細に説明する。本発明に
おいて用いるポリスルホンは、次の一般式(1)または
(2)で表される繰り返し単位を有する重合体である。 −A−SO2 −A−O−(A−Rm −A−X)n − (1) −A−SO2 −A−SO2 −A−O− (2) (但し、Aはそれぞれ同一または異なる芳香族基を示
し、Rは2価の有機基を示し、XはOまたはSO2 を示
し、mおよびnはそれぞれ0または1を示す。) 特に次式(3)、(4)または(5)で表される繰り返
し単位を有するポリスルホンが入手も容易であるので、
本発明において好適に用いられる。 −φ−SO2 −φ−O−φ−C(CH32 −φ−O− (3) −φ−SO2 −φ−O− (4) −φ−SO2 −φ−φ−SO2 −φ−O− (5) (但し、φはベンゼン環を示す。)
【0008】海水淡水化などの高圧仕様に耐え得るポリ
スルホン系中空糸膜を製造するためには、構造が緻密で
あることが必要であり、また中空糸強度も大きくなくて
はならないことから紡糸原液としてのポリマー溶液の濃
度を30重量%以上、好ましくは35重量%以上にする
必要がある。紡糸原液としてのポリマー溶液の濃度が3
0重量%より小さい場合は、中空糸降伏点強度は1kg/
mm2 より小さくなるため中空糸の取扱いが難しく、また
膜を形成する際に中空糸内部に直径10μmをこえて重
合体が欠落した空洞、いわゆるキャビティーが中空糸膜
内部に発生しやすくなり耐圧性が低下する。しかし、従
来の方法ではポリマー溶液の濃度が30重量%を越える
と、得られる中空糸膜の透水性能が実用的な意味を持た
ないほど小さくなる。また、ポリマー溶液の濃度が30
重量%を越えると紡糸原液のゲル化が生じやすくなり、
安定した性能を有する支持膜を得ることが困難であっ
た。このことが高圧仕様に使用可能な耐圧性と透水性能
を併せもつ中空糸を得ることができない一つの原因とな
っていた。
【0009】中空糸膜内部にキャビティーが存在しない
中空糸膜を製造するためには、ある程度の非溶剤を紡糸
原液中に含有する必要がある。ここでいう非溶剤とは溶
剤と混和するがポリマーを溶解しない物質をいう。非溶
剤は膜を形成する際の相分離に関わり、細孔の形成の核
として意味があると考えられ、中空糸の構造および透水
性能、耐圧性にも重要な役割を果たす。非溶剤の例とし
ては、グリセリン類、ポリエチレングリコール類、メタ
ノール、エタノール、テトラヒドロフランなどが好まし
く用いられるがこれらに限定されない。一般に中空糸構
造中にキャビティーの発生を防ぎ、透水性能を向上させ
るためには、紡糸原液中の非溶剤濃度を上げる必要があ
るが、紡糸原液として30重量%以上のポリスルホン濃
度である場合、高非溶剤濃度では紡糸原液のゲル化が進
行するため、透水性能が極端に低下し安定した性能を有
する膜を製造することはできない。そこで、紡糸原液中
の非溶剤濃度をキャビティーが発生しない最低値に設定
することにより、中空糸に耐圧性を付与したまま紡糸原
液のゲル化を低減した。
【0010】紡糸原液中の極性有機溶剤としてはポリマ
ーに対する溶解能を持ち、非溶剤と混和することが必要
であり、一般に高沸点性非プロトン性有機溶剤が用いら
れる。例としてはN−メチル−2−ピロリドン、ジメチ
ルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスル
ホキシドなどが好ましく用いられるがこれらに限定され
ない。紡糸原液のポリマー濃度が高い場合、ポリマー濃
度が低い場合と比較して、溶剤の溶解能の違いが膜を形
成する際の相分離性に大きく関わっており、すなわち,
溶剤の溶解能の僅かな違いが膜の透水性能に大きく関係
していることを見出した。
【0011】ポリスルホンの溶解性を考えた場合、N−
メチル−2−ピロリドン(以下NMPと称す。)の方が
ジメチルアセトアミド(以下DMAcと称す。)より溶
解能が高いため、NMPを溶剤として用いた場合、紡糸
原液のゲル化を抑制することは可能であるが、相分離は
起こしにくく高透水量は期待できない。逆にDMAcを
溶剤として用いた場合、紡糸原液はゲル化を起こしやす
いが、相分離は起こしやすく高透水量が期待できる。ポ
リマーに対する溶解能の異なる溶剤を2種類以上混合
し、ポリマーに対する溶解能を制御することにより、紡
糸原液のポリマー濃度が高い場合でさえ、高い透水性能
を有し、かつ紡糸原液のゲル化を抑制することが可能と
なった。
【0012】更に中空糸膜の透水性能を上げるためにゲ
ル化に関与しない程度に紡糸原液中に添加剤を適宜用い
てもよい。添加剤としては界面活性剤や無機塩類、親水
性高分子重合体などが挙げられる。界面活性剤は、アニ
オン界面活性剤としてアルキル硫酸エステル塩、アルキ
ルベンゼンスルホン酸塩、アルキルリン酸エステル塩、
カチオン界面活性剤として第4級アンモニウム塩、アル
キルアミン塩、非イオン界面活性剤としてポリオキシエ
チレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエ
ーテルなどが挙げられるがこれらに限定されない。無機
塩類は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸などの
アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が好適に用いられ
る。例としては塩化リチウム、硝酸リチウム、塩化カル
シウム、塩化マグネシウム、臭化リチウム、硝酸カリウ
ムなどが挙げられるがこれらに限定されない。また親水
性高分子重合体はポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニ
ルなどが挙げられるがこれらに限定されない。
【0013】中空糸支持膜の透水性は操作圧力55kg/
cm2 での純水透過量が好ましくは10(l/m2・日・kg
/cm2 )以上が望まれ、更に好ましくは50(l/m2
日・kg/cm2 )以上が望まれる。操作圧力55kg/cm2
での純水透過量が10(l/m2・日・kg/cm2 )より小
さい場合は、複合膜とした後の透水性が低く、複合中空
糸膜としての実用性が小さくなる。
【0014】中空糸膜の製法としてはポリスルホン重合
体、極性有機溶剤および非溶剤を混合加熱溶解し、脱泡
後、通常の方法により中空糸製造用の二重環状ノズルの
外側の環状口から紡糸原液を押し出し、内外から凝固さ
せることにより中空糸膜が得られる。一般に中空糸を凝
固するための凝固液として水が用いられるが、紡糸溶液
中のポリスルホン濃度が高い場合、中空部を形成するた
めに二重環状ノズルの芯部から水を吐出させると、中空
糸の凝固が早く起こるため中空糸の延糸性を損ねること
になる。また、中空糸の凝固を遅らせるため芯部から溶
剤系の液体を吐出した場合、洗浄が不十分である場合は
中空糸の中空部に溶剤が残留し、結果として経時的にポ
リマーを再溶解し中空糸膜の透水性能の低下を引き起こ
すことになる。そこで、中空糸膜の中空部を形成するた
めの凝固剤について鋭意検討した結果、二重環状ノズル
の芯部からは空気および窒素などの気体を吐出すること
により、中空糸中の残留溶剤量を低減し中空糸膜の性能
の安定化を達成することができた。
【0015】更に中空糸膜の耐圧性の向上を目指し検討
した結果、中空糸外径は150μm以上175μm以下
であることが好ましく、特に160μm以上165μm
以下であることが好ましい。中空糸外径が175μmよ
り大きい場合は水圧をかけると径方向に圧縮されやすく
なるため耐圧性が低下する。中空糸外径が150μmよ
り小さい場合は中空部が小さくなるため圧力損失を受け
やすくなり、透水性が低下することが判った。また、中
空糸の中空率は13%以上17%以下が好ましく、特に
14%以上16%以下が好ましい。中空率が13%より
も小さい場合は中空部が小さいため圧力損失を受けやす
くなり、透水性が低下する。一方、中空率が17%より
も大きい場合は中空糸の膜厚が薄くなるため耐圧性が低
下する。
【0016】支持膜上に支持膜の素材と異なる分離活性
層を複合膜化によって形成する際、支持膜の複合膜形成
面の表面孔径が大きい場合、分離活性層素材が支持膜内
部へ侵入しやすくなるため、形成した複合分離膜の透水
性能の低下の要因となり、更に分離活性層に欠陥が生じ
やすくなるため、複合分離膜の分離能力の低下の要因と
なることが判った。そのため支持膜の表面孔径を小さく
する必要があるが、平均分子量6万のデキストランの除
去率が90%以上である場合、上記の問題点が生じない
ことが判った。
【0017】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、
本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではな
い。中空糸紡糸の際には、特に断らない限り次に示す方
法によった。つまり、紡糸原液を100℃で12時間溶
解攪拌し、紡糸原液が均一溶解できていることを確認
後、100℃で1時間脱泡を行い、紡糸原液を40℃に
冷却した後、紡糸原液吐出部外径660μm、内径50
0μm(スリット幅80μm)、芯ガス吐出部200μ
mを有する二重管構造の中空糸製造用ノズルから紡糸原
液および窒素を吐出させ、乾湿式紡糸を行った。乾式部
の長さは2cmとし、凝固液として25℃の水を使用し
た。また、紡糸原液流量は0.8cc/min、紡速は30m/
min であった。凝固後水洗し、更に90℃の熱水で1時
間湿熱処理を施した。得られたポリスルホン系中空糸膜
の外径は160〜166μm、中空率は14〜15%で
あった。この中空糸を100本束ね、片端開口、中空糸
有効長35cmの中空糸束を得た。
【0018】なお、以下において中空糸性能は次のよう
にして求めた。上記中空糸束に操作圧力55kg/cm2
温度25℃にてRO水(東洋紡績製Hollosep使用)を透
過させ、60分後からの透水量の測定値を操作圧力55
kg/cm2 における純水透過量(FR55)とした。同様に操
作圧力2kg/cm2 における純水透過量(FR2 )を測定
し、操作圧力55kg/cm2 での純水透過量と操作圧力2
kg/cm2 での純水透過量の比(FR55/FR2 )を求め、耐
圧性の指標とした。また、膜の除去率は300ppmデキスト
ラン(平均分子量 60000)の水溶液を操作圧力5kg/cm
2 、温度25℃にて供給し60分後の測定値を除去率と
した。なお除去率は次式のように定義した。 (1−膜透過液中の溶質の濃度/供給原液中の溶質の濃
度)×100(%)
【0019】実施例1、比較例1〜4 ポリスルホン(Amoco社製 Udel P-3500)30重量%、非
溶剤としてテトラエチレングリコール13.3重量%、
添加剤として塩化リチウム0.7重量%を含む紡糸原液
においてDMAcとNMPの溶剤組成重量比を変化させ
た場合の100℃、12時間溶解攪拌後の紡糸原液安定
性および透水性について調べた結果を表1に記す。
【表1】
【0020】上表のようにDMAcの溶剤比が大きいほ
ど中空糸の透水性は高くなるが、紡糸原液の安定性が悪
化しゲル化が進行した。ゲル化が進行する紡糸原液では
時間とともに透水性は低下し安定な中空糸膜性能は得ら
れない。(ゲル化進行系については紡糸初期の透水量を
示した。)DMAc/NMP=60/40の場合に紡糸
原液のゲル化は抑制され、また、高透水性を示した。以
上のようにポリマーに対する溶解能の異なる溶剤を2種
類以上混合しポリマーに対する溶解能を制御することに
より、紡糸原液のポリマー濃度が高い場合でさえ、高い
透水性能を有する中空糸が製造でき、かつ紡糸原液のゲ
ル化を抑制することが可能となった。
【0021】実施例2、3、4、比較例5 実施例1と同じ芳香族ポリスルホンの紡糸原液含有濃度
を変化させて紡糸実験を行った結果を表2に示す。な
お、溶剤としてDMAc/NMP=60/40の混合溶
剤を用い、非溶剤としてテトラエチレングリコール18
重量%、また添加剤としてラウリルベンゼンスルホン酸
ナトリウム(LBS)0.1重量%を含む紡糸原液を用
いた。
【表2】
【0022】比較例5の場合、降伏点強度が小さく、耐
圧性(FR55/FR2 )が低いため、ポリマー濃度が低いに
もかかわらず操作圧力55kg/cm2 での透水量は比較的
小さい。また、耐圧性が低いため長時間圧力をかけて運
転した場合、時間とともに透水性が低下した。実施例2
ではポリマー濃度を増加させたことにより、耐圧性が向
上し、そのため透水性も向上した。また長時間圧力をか
けて運転した場合でも中空糸性能の経時変化も認められ
なかった。実施例3、4では更にポリマー濃度を増加さ
せたことにより透水性は低下したが、耐圧性は飛躍的に
向上した。また、ポリマー濃度30重量%以上の場合は
デキストラン(分子量 60000)の除去率が90%を上回
っており、ポリマー濃度を増加させたために中空糸の表
面孔径は細孔化したと考えられる。そのため、分離活性
層を複合膜化によって形成した場合、分離活性層に欠陥
が生じにくく、また分離活性層の極薄化が可能であるた
め分離性能および透水性ともに優れた複合分離膜が得ら
れる。
【0023】実施例5、6、比較例6、7 実施例1と同じ芳香族ポリスルホン32重量%、溶剤と
してDMAc/NMP=60/40の混合溶剤を用い、
また添加剤としてLBS0.2重量%を含む紡糸原液系
において非溶剤であるテトラエチレングリコールの含有
濃度を変化させて紡糸実験を行った結果を表3に示す。
【表3】
【0024】比較例6は非溶剤濃度が低いために中空糸
膜内部にキャビティーが発生し、耐圧性が低下した。表
のように初期透水量は高いものの長時間圧力をかけて運
転した場合、時間とともに透水性が低下した。一方、比
較例7は非溶剤濃度が高いため、紡糸原液のゲル化が生
じ、耐圧性は高いものの透水性は低下した。実施例5お
よび6の組成では中空糸膜内部にキャビティーは存在せ
ず、スポンジ状の構造を示した。また、紡糸原液の状態
も安定であることから透水性、耐圧性ともに高性能を有
する中空糸支持膜が得られた。
【0025】実施例7、比較例8 実施例1と同じ芳香族ポリスルホン30重量%、溶剤と
してDMAc22重量%、NMP22重量%、非溶剤と
してポリエチレングリコール(分子量200)26重量
%からなる紡糸溶液を用いて紡糸実験を行う際に、実施
例7では芯ガス(窒素)を用い、比較例8ではNMPを
芯液に用いた。その場合の紡糸実験を行った結果を表4
に示す。
【表4】
【0026】中空糸内部の凝固剤としてNMPを用いた
比較例8では、初期透水量は大きいものの、中空糸内に
NMPが残留するため中空糸が再溶解し、12日間浸水
保存した結果、透水量は大幅に低下した。一方、芯ガス
を用いた実施例7では比較例8と比較して初期透水量は
低いものの、透水量は経時変化を起こさないため、結果
的に比較例8の場合よりも高い透水量を示す。また、実
施例7の場合は中空内壁表面にも緻密な層が形成される
ため耐圧性が向上した。
【0027】実施例8、比較例9、10、11 実施例1と同じ芳香族ポリスルホン32重量%、溶剤と
してDMAc30重量%、NMP20重量%、非溶剤と
してテトラエチレングリコール18重量%からなる紡糸
溶液を用いて、中空糸寸法を変化させて紡糸実験を行っ
た結果を表5に示す。なお、中空率は次式により求め
た。 (中空糸内径)2 /(中空糸外径)2 ×100(%)
【表5】
【0028】比較例9は中空糸外径が大きいため中空糸
が圧力によって収縮しやすく、耐圧性が低くなった。比
較例10、11は中空糸内径が小さいため中空糸内の圧力損
失が大きく透水性が低下した。実施例8は上記問題点が
なく高い透水性および耐圧性を有している。
【0029】
【発明の効果】海水淡水化などの高圧仕様に耐え得る複
合中空糸膜の支持膜について検討した結果、ポリスルホ
ンからなる多孔膜において操作圧力55kg/cm2 での純
水透過量と操作圧力2kg/cm2 での純水透過量の比が
0.8以上1.0以下であり、かつ操作圧力55kg/cm
2 での純水透過量が10(l/m2・日・kg/cm2 )以上
である高圧仕様に十分耐え得る優れた耐圧性と透水性能
を併せもったポリスルホン系中空糸膜を開発することが
できた。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 操作圧力55kg/cm2 での純水透過量と
    操作圧力2kg/cm2での純水透過量の比が0.8以上
    1.0以下であり、かつ操作圧力55kg/cm2での純水
    透過量が10(l/m2・日・kg/cm2 )以上であること
    を特徴とするポリスルホン系中空糸膜。
  2. 【請求項2】 二重管構造の中空糸製造用ノズルを用
    い、外側の環状口から紡糸原液を吐出させ乾湿式紡糸法
    により中空糸を製造する場合において、該紡糸原液がポ
    リマー濃度30重量%以上であり、かつ2種類以上の極
    性有機溶剤の混合液を含み、また芯部から気体を吐出さ
    せることにより得られることを特徴とする請求項1記載
    のポリスルホン系中空糸膜の製造方法。
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