JP2904006B2 - ドロス除去装置および方法 - Google Patents

ドロス除去装置および方法

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JP2904006B2
JP2904006B2 JP12192494A JP12192494A JP2904006B2 JP 2904006 B2 JP2904006 B2 JP 2904006B2 JP 12192494 A JP12192494 A JP 12192494A JP 12192494 A JP12192494 A JP 12192494A JP 2904006 B2 JP2904006 B2 JP 2904006B2
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新吾 末吉
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、溶融めっきにおいてめ
っき浴中に生じるボトムドロスを浴中から除去するボト
ム除去装置および方法に関し、溶融めっきの中でも特
に、溶融Al−Zn合金めっきまたは溶融Alめっきに
有効なドロス除去装置および方法に関する。
【0002】
【従来の技術】溶融Al−Zn合金めっき鋼板は、Al
を3.5〜75wt%含み、残りがZnと、さらに必要に
応じて微量添加されたSi,Mg,ミッシュメタル(C
e,La,Nd,Sm)などの第三成分とからなる合金
によってめっきされた鋼板である。
【0003】現在製品化されているものは、Alを3.5
〜5.5wt%含み、残りがZnと、微量のミッシュメタ
ル(Ce,La,Nd,Sm)、またはミッシュメタル
およびMgとからなる合金をめっきした低Al−Zn合
金めっき鋼板と、Alを55wt%、Znを43.4wt
%、Siを1.6wt%それぞれ含む合金をめっきした高
Al−Zn合金めっき鋼板の二種類である。
【0004】一般に使用されている溶融Znめっき鋼板
に比べて、低Al−Zn合金めっき鋼板は、同じ厚みの
めっき層で比較して、塩害地、重工業地帯での耐食性が
1.5〜2倍と良好なため、高級プレコート鋼板として屋
根材、壁材、プレハブ住宅の骨材、自動車部品等に使用
されている。また、高Al−Zn合金めっき鋼板は、溶
融Znめっき鋼板に比べて3〜6倍の優れた耐食性能を
有している上、銀白色の美麗な外観を持つため、溶融Z
nめっきプレコート鋼板の代替として、自動車足廻り部
材、乾燥機等の家電用品としての用途もあり、今後需要
の急増が見込まれている。
【0005】一方、その製造においては、低Al−Zn
合金めっきの場合は、通常の溶融Znめっきに比べてめ
っき浴の融点が低いため、低温でめっき作業が可能であ
る反面、めっき浴と鋼板とのぬれ付着張力が小さいた
め、点状不めっきがでやすい性質がある。この点状不め
っきを防止するために微量のミッシュメタルがめっき浴
に添加されるが、十分な不めっき防止効果を得るために
は、溶解度に対し過剰に添加せざるを得ない。その結
果、過剰添加分は経時的にZn−ミッシュメタル金属間
化合物として粒成長してボトムドロスを形成し、これが
鋼帯に付着すると、凸状欠陥となり、高級プレコート鋼
板としての商品価値を消失させることになる。
【0006】また、高Al−Zn合金めっきの場合は、
通常の溶融Znめっきに比べてボトムドロスの発生量が
多く、しかも経時的にドロスが造塊するため、除去不能
となり、時にはめっき作業が不可能になる場合があると
いう問題点がある。
【0007】従来、溶融めっき浴中のボトムドロスを除
去する方法として、最も一般的な方法は、めっき浴中A
濃度を上昇させてFe−ZnボトムドロスをFe−A
lに変化させ、トップドロス化させる方法である。この
他、箱型装置をめっき浴槽底部に設置し、金属露出面に
ボトムドロスを付着凝着させる方法(特開平4−337
056号)、ドロス回収用ポットにめっき浴を移送し、
溶解度差を利用してボトムドロスを凝集沈澱させる方法
(特開平4−221050号)などがある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】従来のボトムドロス除
去方法のうち、浴中Al濃度を上昇させる方法について
は、溶融Znめっき浴で発生するボトムドロスと、低A
l−Zn合金めっき浴または高Al−Zn合金めっき浴
で発生するボトムドロスとでは生成する金属間化合物が
全く異なるため、溶融Al−Zn合金めっきに対しては
効果がない。
【0009】箱型装置を用いる方法は、低Al−Zn合
金めっき浴に関しては、ボトムドロスの一部が浮遊する
ため十分な効果が得られにくい上、ボトムドロスがポッ
トの底のコーナー部に堆積しやすいため、複数の設置が
必要となる。また、高Al−Zn合金めっき浴に関して
は、めっき浴温が600℃と高いため、長期間浸漬に耐
え得る材料がなく、しかも、ボトムドロスがポットの底
のコーナー部で大量発生し、容易に造塊するため、箱型
装置をコーナー部に据え付けても、その引き上げが困難
になる。
【0010】ドロス回収ポットを用いる方法について
は、回収用ポットの設置が必要であること、回収ポット
に堆積したドロスの除去が困難であること、更に、高A
l−Zn合金めっきに関しては、ボトムドロスがめっき
用ポットの底部で造塊することが問題になる。
【0011】特に、高Al−Zn合金めっき浴のボトム
ドロスについての問題は深刻であり、発生したボトムド
ロスを放置しておくと容易に造塊し、除去不能となるた
め、製造終了後、毎回、めっき浴が入ったまま、スコッ
プまたはバケットを用いて機械的にボトムドロス除去を
行っているのが現状である。
【0012】溶融Znめっきとの浴替えを行うと、ボト
ムドロスがトップドロス化し、除去が可能になることが
知られているが、浴替え用の別のポットが必要な上、浴
替え時に高Al−Zn合金めっき浴が残存することによ
り、溶融Znめっき浴のAl濃度管理(通常0.2wt
%)が困難になり、更に、高Al−Zn合金めっきの場
合は、通常1〜3wt%のSiを添加するため、Si混
入により溶融Znめっき鋼板の品質が悪影響を受けると
いう問題もある。
【0013】このように、高Al−Zn合金めっき鋼板
製造時に発生するボトムドロスに関しては、有効なドロ
ス除去方法が存在しないのが実情である。
【0014】本発明の目的は、高Al−Zn合金めっき
鋼板製造時に発生するボトムドロスを容易かつ効率的に
除去でき、合わせて低Al−Zn合金めっき鋼板製造時
および溶融Alめっき鋼板製造時に生じるボトムドロス
に関しても、これを容易かつ効率的に除去できるボトム
ドロス除去装置および方法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】高Al−Zn合金めっき
鋼板製造時に発生するボトムドロスをスコップやバケッ
トによる機械的除去を行うことなしに、また、めっき用
ポット以外のポットを用いることなく製造終了後、比較
的短時間で物理的または化学的に除去する方法を開発す
るため、本発明者らは、まず、高Al−Zn合金めっき
鋼板製造時のドロス発生挙動に関して、実用化されてい
るZn−55%Al−1.6%Siめっきに対して基礎調
査を行った。
【0016】その結果、ボトムドロスはZn−Al−F
e−Siの4元系金属間化合物であり、その発生は鋼帯
の成分であるFeのめっき浴中への溶解により決まるこ
とが判った。
【0017】また、ボトムドロス発生要因として、め
っき浴温低下部でのドロス発生、鋼帯めっき時のめっ
き−鉄素地界面合金層の欠落があり、特に、の場合ド
ロスが容易に造塊し、大きなものでは粒径が100mm
程度にまで到達することが判明した。
【0018】すなわち、めっき浴中では、鋼帯を連続的
にめっきする過程において、めっき浴中のFe量は絶え
ず飽和溶解度であるが、めっきボット内に浴温低下部が
存在すると、浴温低下部でドロスが発生し、鋼帯からは
絶えず飽和量に到達するだけのFeが溶出しており、浴
温低下部で析出したドロスは成長を続けることになるの
である。
【0019】本発明者らは、このようなめっき浴温低下
部で析出するドロスの成長を定量化するため、高Al−
Zn合金めっき浴中での浴温とFe溶解度の関係を調査
したところ、図1の如く、従来の溶融亜鉛めっき浴の約
十倍と非常に大きいことを見出した。
【0020】そして、めっき浴温低下部での発生ドロス
は容易に造塊すること、および高Al−Zn合金めっき
浴が流体の領域である580℃(Zn−55%Al−1.
6%Siの場合、固−液共存温度域は371〜570
℃)でのFe溶解度と、650℃での溶解度との差が0.
5wt%と大きいことを最大限利用することにより、従
来はその除去が困難であった高Al−Zn合金めっき製
造時に発生するボトムドロスを容易に効率よく除去でき
ることを見出した。また、その技術は低Al−Zn合金
めっき鋼板製造時に発生するZn−ミッシュメタル系の
ボトムドロスの除去や、溶融Alめっき鋼板製造時に発
生するFe−Si系のボトムドロスの除去に対しても有
効であることが判った。
【0021】本発明は上記知見に基づきなされたもの
で、溶融めっき浴中に溶解させたボトムドロスを装置表
面に析出させて浴中から除去するドロス除去装置であっ
て、系外から搬入されて前記めっき浴に浸漬され、内部
を流通する冷却媒体により強制冷却されると共に、前記
めっき浴から引き上げて系外へ搬出することができる可
搬式の冷却体により構成されており、且つ、当該冷却体
が、浴体積をA(cm )とし浸漬部表面積をB(cm
)として、A/B≦300cmの表面積をもつドロス
除去装置を要旨とする。
【0022】また、溶融めっき浴の下部に堆積したボト
ムドロスを溶解できる温度まで浴温を上昇させた状態
で、前記冷却体をめっき浴に浸漬して浴中に溶解するボ
トムドロスを前記冷却体の表面に析出させ、しかる後
に、前記冷却体をめっき浴から引き上げて系外へ搬出す
ることを特徴とするドロス除去方法を要旨とする。
【0023】本発明は、Alを40wt%以上含む高A
l−Zn合金めっき浴において生じるボトムドロスの除
去に有効である。Alが40wt%未満ではボトムドロ
スの発生量が少なく、ドロス除去の必要性が小さい。
【0024】従来、実用化されている55%近傍Al
(Alが52wt%以上58wt%以下、Znが40w
t%以上47wt%以下)の高Al−Zn合金めっき鋼
板の製造では、めっき−地鉄界面の合金層の生成を抑制
し、加工性を確保するため、めっき浴中にSiが添加さ
れている。Si添加量が1.2wt%未満ではめっき−地
鉄界面の合金層抑制に対して不十分であり、Si添加量
が3.0wt%を超えるとめっき皮膜組織中に多量のSi
金属が析出するため、十分な耐食性が得られない。スパ
ングルサイズの点からも、一般的には、Si添加量は1.
6%程度が最適のようである。
【0025】本系では、Siの添加により多量のボトム
ドロスが生じる。また、めっき浴温が600℃と高いた
め、浴中ロールには一般的にSUS316L等のステン
レスロールが使用されているが、SUS316Lの溶損
によるボトムドロスも生じる。
【0026】本発明は、特に本系、すなわちAlを52
wt%以上58wt%以下、Znを40wt%以上47
wt%以下、Siを1.2wt%以上3.0wt%以下、F
e,Cr,Ni,Moのうちの一種または二種以上を含
む高Al−Zn合金めっき浴において発生するボトムド
ロスの除去に有効である。Fe,Cr,Ni,Moとい
った成分は、鋼帯や浴中機器に用いられるステンレス鋼
から溶出するものである。
【0027】本発明は又、溶融Alめっき鋼板製造時に
発生するFe−Al−Si系のボトムドロスの除去に有
効である。
【0028】溶融Alめっき鋼板の製造では、めっき浴
温が670℃前後と高温であるため、高Al−Zn合金
めっき鋼板の場合と同様に、鋼板−めっき界面での合金
層成長を抑制するため約10%前後のSiがめっき浴に
添加されており、Fe−Al−Si系のボトムドロスを
発生する。本発明はこのドロス除去にも有効である。
【0029】本発明は又、低Al−Zn合金めっき鋼板
製造時に発生するZn−ミッシュメタル系のボトムドロ
スの除去に有効である。
【0030】低Al−Zn合金めっき鋼板の製造に際し
ては、点状不めっき防止を目的としてミッシュメタルが
めっき浴に添加される。このミッシュメタルは、Zn−
Al地金中には粒径が20ミクロン以下のZn−Alミ
ッシュメタル金属間化合物として存在するが、めっき浴
に添加されると、過飽和分はボトムドロスとして沈降
し、経時的にZn−ミッシュメタル金属化合物として成
長する。ここで、ミッシュメタルのめっき浴中への溶解
度は浴温が500℃を超えると急激に増大する(図
3)。そのため、浴温によるミッシュメタルの溶解度差
を利用することにより、Zn−ミッシュメタル系のボト
ムドロスの除去が可能となる。
【0031】また、低Al−Zn合金めっき浴には、塩
害地での耐食性向上およびめっき時に発生するスパング
粒界の軽減を目的としてMgが0.03wt%以上0.20
wt%以下添加される場合があるが、そのような低Al
−Zn合金めっき浴に発生するZn−ミッシュメタル系
のボトムドロスの除去に対しても本発明は効果がある。
Mgが0.03wt%未満では耐食性、スパングル粒界凹
み軽減の効果が小さく、また、Mgが0.20wt%超え
では、めっき皮膜の延性が低下するため、薄板の連続め
っきとしては好ましくない。
【0032】すなわち、本発明は、Al3.5wt%以上
5.5wt%以下およびミッシュメタル(La,Ce,N
d,Sn等)を含む低Al−Zn合金めっき浴、または
Al3.5wt%以上5.5wt%以下、Mg0.03wt%
以上0.2wt%以下およびミッシュメタル(La,C
e,Nd,Sn等)を含む低Al−Zn合金めっき浴に
おいて発生するZn−ミッシュメタル系のボトムドロス
の除去に有効である。
【0033】
【作用】本発明の骨子は、めっき浴温を上げてボトムド
ロスを溶解した状態で、冷却体の表面をめっき浴中の浴
温最低下部とすることで、その表面にドロスを析出、造
塊させることである。冷却体の表面にドロスが析出、造
塊すると、その冷却体をめっき浴から引き上げ、オフラ
インでそのドロスを酸洗溶解または機械的手段等により
除去する。かくして、めっき浴中のボトムドロスが系外
へ排出される。
【0034】ドロス除去作業終了直前に、冷却体をON
の状態でめっき浴に浸漬したまま、インダクターをOF
Fにし、めっき融点近傍まで浴温を低下させると、温度
差分のFe量に対応するドロスが除去されるので、更に
効率よくドロス除去ができ、しかも、めっき浴中のFe
濃度は低い状態となる。
【0035】Fe系のボトムドロスが生じる高Al−Z
n合金めっき鋼板製造時または溶融Alめっき鋼板製造
時には、めっき浴をドロス以外からFeが供給されにく
い状態にすることが望まれる。この状態は、例えば鋼帯
がめっき浴に浸漬されていない状態である。
【0036】除去すべきボトムドロスを一旦溶解させる
ためのめっき浴温としては、高Al−Zn合金めっき
浴、溶融Alめっき浴の場合は、融点+30℃以上融点
+120℃以下が望ましい。融点+30℃未満では溶解
Fe量が少なく、ボトムドロスの溶解が不十分であるた
め、冷却体を使用しても、ドロスを回収するのに時間が
かかる。一方、融点+120℃を超えると、めっき浴の
蒸発が激しくなり(特にZn量が多い組成で顕著)、作
業上、安全上好ましくない。特に望ましい浴温は、下限
については融点+40℃以上、上限については融点+1
00℃以下である。
【0037】低Al−Zn合金めっき浴において、Zn
−ミッシュメタル系のボトムドロスを除去する場合の浴
温は、ミッシュメタルのめっき浴中への溶解度が浴温5
00℃以上で急激に増大するので、500℃以上が望ま
しく、530℃以上が更に望ましい。ただし、浴温が6
00℃を超えると、めっき浴からのZnの蒸発が激しく
なるので、600℃以下が望ましく、580℃以下が更
に望ましい。
【0038】冷却体は、めっき浴に簡単に浸漬でき、且
つ、そのめっき浴から引き上げて系外へ搬出することが
できる可搬式あれば、箱状、パイプ状等いずれでもよ
く、また、材質もめっき浴に侵食されないものであれ
ば、ステンレス鋼、セラミックス、WC−Co等の合金
を溶射したものなど特に限定しない。
【0039】好ましくは、図4に示す如く、パイプを蛇
行させて1方向あるいは2方向に並列させ、その内部に
冷却媒体を流通させる冷却体1である。この冷却体1は
その体積に比して大きい表面積をもち、めっき浴中に溶
解したドロスを効率よく析出させることができる。冷却
体1の平面形状は、表面積確保のため、めっき浴槽の平
面形状に対応した出来るだけ大きい角形が望ましい。冷
却体1の下方には、析出したドロスが引き上げ時にめっ
き浴中に落ちないように、受け皿のような物を付設する
のが良い。
【0040】ドロスを除去する際には、図5に示す如
く、クレーン等で吊り下げて冷却体1をめっき浴槽2内
のめっき浴3に浸漬する。その浸漬深さは、槽底からの
距離で表わしてめっき浴深さの1/2〜1/3が望まし
い。冷却体1を上げすぎると、ポット浴底で溶解したド
ロスを有効に冷却体表面に再析出させられず、下げすぎ
た場合は、冷却体1の表面に析出したドロスが槽底に付
着し、冷却体1の引き上げが困難になる。
【0041】冷却体の表面積は、めっき浴量をAc
、浴中浸漬部の表面積をBcmとして、A/B≦
300cmを満足できるものとする。300cmを超え
た場合は、めっき浴との接触面積が不十分となり、効率
良くドロスを析出させることができない。特に望ましく
はA/B≦100cmである。
【0042】冷却体の浸漬時間については、冷却体の表
面積とめっき浴温に大きく依存する。冷却体の表面積が
大きくめっき浴温が高いほど、効率良くドロスを析出さ
せることができるため、浸漬時間は短くてよい。
【0043】冷却体に流通させる冷却媒体としては、空
気,N2 ガス,Arガス,Heガス,水等何れでも良い
が、N2 ガスなど比較的安価で、冷却媒体の温度制御が
容易なものが好ましい。
【0044】冷却体の表面温度は融点近傍が好ましい。
融点以下であると、冷却体の表面にドロス以外にAlリ
ッチ層が析出するため、めっき浴成分が低Al側にシフ
トしてしまう。一方、めっき浴温近傍では、溶解度差に
よるドロス成分の析出量が小さく、十分な効果が得られ
ない。従って、ドロス成分を最も有効に系外除去するに
は、冷却体の表面温度をめっき浴組成の融点近傍に制御
する必要がある。そのため、冷却媒体の流量および/ま
たは温度を制御できる冷却体が好ましい。
【0045】なお、冷却媒体により強制冷却される冷却
器をめっき浴に浸漬させて、浴温を調整する技術は、実
公昭55−51795号公報および実開昭2−1360
55号公報に開示されている。その冷却器は、めっき浴
に溶解させたボトムドロスの析出に一応は使用可能であ
る。しかし、可搬式ではなく定置式のため、ドロス析出
後に系外で析出ドロスを除去するようなことはできな
い。また、めっき浴との接触面積等についての配慮もな
い。そのため、ボトムドロスの除去装置として使用する
ことは不可能である。
【0046】
【実施例】以下に本発明の実施例について説明する。
【0047】〔実施例1〕SUS316Lからなるパイ
プを用いて、図6に示す実験用の冷却体1を製作した。
【0048】図6(A)の冷却体1は、大面積用で、上
下の盤状ヘッダ1a,1aと、盤状ヘッダ1a,1a間
に設けた外径が20mmの複数本の垂直なパイプ1b,
1b…とからなり、全体をめっき浴に浸漬しパイプ本数
により浸漬部表面積を200cm2 (1本)、500c
2 (6本)、666cm2 (7本)、2000cm2
(16本)に調整する構成とした。図6(B)の冷却体
1は、小面積用で、逆台形状に加工した1本のパイプの
外径(20mmまたは40mm)と浸漬深さにより、浸
漬部表面積を18cm2 、25cm2 、33cm2 に調
整するものとした。
【0049】いずれの冷却体1においても、冷却媒体に
はN2 ガスを用いて、冷却体1の表面に溶接した熱電対
により、その表面温度を測定し、測定温度が目標温度と
なるように、N2 ガスの流量を制御する。
【0050】実験としてまず、めっき槽を想定したマグ
ネシアからなるるつぼ内に、表1および表2に示す4種
類の高Al−Zn合金めっき浴(No.1〜4,5,6
〜12,13〜14)および1種類の溶融Alめっき浴
(No.15〜16)をそれぞれ10000cm3 調製
した。
【0051】次いで、各めっき浴の浴温を融点+120
℃に保持して、冷却鋼板を浸漬し、攪拌を行いながら冷
延鋼板を溶解し、めっき浴中のFe量を飽和させた。こ
のとき、めっき浴の成分分析を行い、めっき浴中に溶解
するFe量を測定した。めっき浴中の全Fe量をXとす
る。
【0052】めっき浴から冷延鋼板を引き上げた後、め
っき浴温を融点まで下げて、ドロスを析出させた。表1
および表2に示す温度にめっき浴温を調整保持し、前述
した実験用の冷却体をめっき浴に浸漬して、冷却体の表
面にドロスを析出させた。この間、浴温が保持温度に維
持されるように、ヒータで温度制御を行った。
【0053】1時間後、ヒータをOFFにした。浴温が
下がり、融点近傍になった時点で、冷却体をめっき浴か
ら引き上げた。
【0054】その後、めっき浴を再び融点+120℃ま
で加熱して、めっき浴の成分分析を行い、めっき浴中に
残存したFe量を測定した。めっき浴中に残存する全F
e量をYとし、(1−Y/X)×100(%)をドロス
回収率とした。
【0055】結果を表1および表2に示すが、めっき浴
温が高すぎたり低すぎたりしない限り、また、冷却体の
浸漬部表面積が小さすぎない限り、めっき浴中に溶解す
るドロスを高効率に析出除去することができた。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】〔実施例2〕表3に示す3種類の実用高A
l−Zn合金めっき浴(No.17〜18,19〜2
4,25〜27)について、実施例1と同様の方法を用
いて実験を行った。
【0059】めっき浴中のSi量の調整には、市販のA
l−3%Si合金またはAl−20%Si合金を用い
た。また、Cr,Ni,Mgの添加は、市販のSUS4
30(18Cr)ステンレス鋼板、SUS304(18
Cr−8Ni)ステンレス鋼板、SUS316L(8C
r−8Ni−2.5Mo)ステンレス鋼板を粉状にしてめ
っき浴に10g添加することにより行った。
【0060】結果を表3に示す。本発明は従来その除去
が困難とされていた高Al−Zn合金めっき鋼板製造時
に発生するボトムドロスを効率よく簡単に除去できる。
【0061】
【表3】
【0062】〔実施例3〕Zn−5.5%Al−0.2%ミ
ッシュメタル合金、純亜鉛、金属Mgを用いて、表4に
示す7種類の低Al−Zn合金めっき浴(No.29〜
30,31〜36,37,38,39〜40,41,4
2)をそれぞれカーボンるつぼ内に10000cm3 調
製した。
【0063】めっき浴を430℃に保持し、十分攪拌し
ながら、めっき浴をサンプリングし、これをICP分析
することにより、めっき浴中に存在するミッシュメタル
量(P)を求めた。
【0064】めっき浴を430℃に保持しつつ3時間静
置し、過剰添加分のZn−ミッシュメタル系金属間化合
物を沈降させた。そのときのめっき浴を分析し、430
℃でのミッシュメタルの固溶量(Q)を求めた。
【0065】表4に示す温度にめっき浴温を調整して保
持し、前述した実験用の冷却体を浸漬して、冷却体の表
面にドロスを析出させた。この間、浴温が保持温度に維
持されるように、ヒータで温度制御を行った。
【0066】1時間後、めっき浴から冷却体を引き上
げ、その表面に付着したドロスを塩酸により溶解し、I
CP分析することにより、ミッシュメタルの回収量
(R)を求め、R/(P−Q)×100をドロス回収率
(ミッシュメタル回収率)とした。
【0067】結果を表4に示すが、本発明は低Al−Z
n合金めっき鋼板製造時に発生するFe−ミッシュメタ
ル系のボトムドロスの除去に対しても有効である。
【0068】
【表4】
【0069】
【発明の効果】以上に説明した通り、本発明のボトム除
去装置および方法は、従来はその除去が困難とされてい
た高Al−Zn合金めっき鋼板製造時に発生するボトム
ドロスをめっき浴から簡単かつ効率的に除去できる。ま
た、低Al−Zn合金めっき鋼板製造時に発生するミッ
シュメタル系のボトムドロスおよび溶融Alめっき鋼板
製造時に発生するFe−Al−Si系のボトムドロスに
関しても、これらを簡単かつ効率的に除去できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】めっき浴温とFe溶解度との関係を示すグラフ
である。
【図2】Zn−ミッシュメタル系金属間化合物の粒成長
を示すグラフである。
【図3】めっき浴温とミッシュメタル溶解度との関係を
示すグラフである。
【図4】冷却体の構成例を示す模式図である。
【図5】冷却体の使用状態を示す模式図である。
【図6】実験に使用した冷却体の構成を示す模式図であ
る。
【符号の説明】
1 冷却体 2 めっき浴槽 3 めっき浴
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C23C 2/00 - 2/40

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 溶融めっき浴中に溶解させたボトムドロ
    スを装置表面に析出させて浴中から除去するドロス除去
    装置であって、系外から搬入されて前記めっき浴に浸漬
    され、内部を流通する冷却媒体により強制冷却されると
    共に、前記めっき浴から引き上げて系外へ搬出すること
    ができる可搬式の冷却体により構成されており、且つ、
    当該冷却体が、浴体積をA(cm )とし浸漬部表面積
    をB(cm )として、A/B≦300cmの表面積を
    もつドロス除去装置。
  2. 【請求項2】 溶融めっき浴の下部に堆積したボトムド
    ロスを溶解できる温度まで浴温を上昇させた状態で、
    求項1に記載の冷却体をめっき浴に浸潰して浴中に溶解
    するボトムドロスを前記冷却体の表面に析出させ、しか
    る後に、前記冷却体をめっき浴から引き上げて系外へ搬
    出することを特徴とするドロス除去方法。
  3. 【請求項3】 前記めっき浴が高Al−Zn合金めっき
    浴または溶融Alめっき浴の場合に、そのめっき浴をボ
    トムドロス以外からFeが供給されにくい状態にするこ
    とを特徴とする請求項2に記載のドロス除去方法。
  4. 【請求項4】 前記冷却体の表面にドロスを析出させた
    後、冷却体をめっき浴から引き上げる前に、浴温を融点
    近傍まで低下させることを特徴とする請求項2または3
    に記載のドロス除去方法。
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