JP2903432B2 - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物

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JP2903432B2
JP2903432B2 JP29968890A JP29968890A JP2903432B2 JP 2903432 B2 JP2903432 B2 JP 2903432B2 JP 29968890 A JP29968890 A JP 29968890A JP 29968890 A JP29968890 A JP 29968890A JP 2903432 B2 JP2903432 B2 JP 2903432B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、耐衝撃性、耐疲労性、摺動性、および耐汚
染性に優れ、成形時の成形収縮の小さい熱可塑性樹脂組
成物に関する。
〔従来の技術〕
アクリル系樹脂、スチレン系樹脂などで代表されるビ
ニル系(共)重合体;ABS樹脂、ハイインパクトポリスチ
レン樹脂(HIPS)、AES樹脂、MBS樹脂、AAS樹脂などで
代表されるビニル系グラフト共重合体は、成形時の成形
収縮が小さく、成形加工性、機械的強度、耐疲労性、成
形外観の美しさなどの優れていることから、各種用途の
成形材料として広く使用されている。
このビニル系(共)重合体、ビニル系グラフト共重合
体は、前記のように優れた特徴を有することから、広い
分野の用途に展開されるようになり、その結果、摺動
性、耐汚染性が要求される用途への使用あるいは該用途
への使用の検討が活発となり、摺動性、耐汚染性の一層
の改良が求められている。
ビニル系(共)重合体あるいはビニル系グラフト共重
合体の摺動性、耐汚染性の改良は、ポリテトラフルオロ
エチレン、二硫化モリブデン、チタン酸カリウムウイス
カーなどを添加する方法が知られている。しかしなが
ら、これらの方法では、ビニル系(共)重合体、ビニル
系グラフト共重合体の優れた性質を著しく低下させる。
〔発明が解決しようとする課題〕
本発明は、前記従来技術の課題を背景になされたもの
で、耐汚染性および摺動性に優れるとともに、耐衝撃
性、耐疲労性にも優れ、しかも成形時の成形収縮の小さ
い熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。
〔従来の技術〕
〔課題を解決するための手段〕 本発明は、下記(A)ビニル系重合体50〜99重量%、
および(B)グラフト共重合体50〜1重量%を含有し、
かつ(A)成分+(B)成分中の変性ポリオルガノシロ
キサン(III)の含有量が1〜30重量%であることを特
徴とする熱可塑性樹脂組成物を提供するものである。
(A)ビニル系モノマーを重合して得られる(共)重合
体(A−1)およびゴム状重合体〔ただし、変性ポリオ
ルガノシロキサン(III)を除く〕の存在下に、ビニル
系モノマーを重合して得られるグラフト共重合体(A−
2)の群から選ばれた少なくとも1種のビニル系重合
体。
(B)一般式R1 nSiO(4-n)/2(式中、R1は置換または非
置換の1価の炭化水素基であり、nは0〜3の整数を示
す)で表される構造単位を有するオルガノシロキサン
(I)90〜99.8重量%と、 一般式 (式中、R2は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基
を示す)で表される不飽和基とアルコキシシリル基とを
合わせ持つグラフト交叉剤(II)10〜0.2重量%とを縮
合させて得られる変性ポリオルガノシロキサン(III)
の存在下に、少なくとも1種のビニル系モノマーを重合
して得られ、かつグラフト率が5重量%以上であるグラ
フト共重合体。
まず、本発明の(A)成分について説明すると、
(共)重合体(A−1)およびグラフト共重合体(A−
2)に使用されるビニル系モノマーとしては、例えばス
チレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、モ
ノブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチ
レン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸ナトリウム
などの芳香族ビニル化合物;メチルメタクリレート、エ
チルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレー
ト、ブチルメタクリレート、アリルメタクリレートなど
のメタクリル酸エステル;メチルアクリレート、エチル
アクリレート、ブチルアクリレート、ヒドロキシエチル
アクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレートなど
のアクリル酸エステル;アクリロニトリル、メタクリル
ニトリルなどのシアン化ビニル化合物;エチレン、プロ
ピレンなどのオレフィン;ブタジエン、イソプレン、ク
ロロプレンなどの共役ジオレフィン;マレイミド、N−
メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピ
ルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−シク
ロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−
(p−ブロモフェニル)マレイミド、トリブロモフェニ
ルマレイミド、N−(p−クロルフェニル)マレイミド
などのマレイミド化合物;無水マレイン酸などの酸無水
物;および酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、
トリアリルイソシアヌレート、アクリル酸、メタクリル
酸などが挙げられ、これらは単独であるいは併用して用
いられる。好ましいビニル系モノマーの種類としては、
芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル、シ
アン化ビニル化合物、マレイミド系化合物および酸無水
物である。
このうち、芳香族ビニル化合物として好ましいもの
は、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレ
ンであり、(メタ)アクリル酢酸エステルとして好まし
いものは、メチルメタクリレートであり、シアン化ビニ
ル化合物として好ましいものは、アクリロニトリル、メ
タクリルニトリルであり、マレイミド系化合物として好
ましいものは、マレイミド、N−フェニルマレイミド、
N−シクロヘキシルマレイミドおよびトリブロモフェニ
ルマレイミドであり、酸無水物として好ましいものは、
無水マレイン酸である。
なお、前記(A−1)成分および/または(A−2)
成分ならびに(B)成分を用いて、本発明の熱可塑性樹
脂組成物を得る場合において使用するそれぞれのビニル
系モノマーは、全く同じでなくてもよいが、混合される
ポリマーのそれぞれのビニル系モノマー成分が同一系列
のモノマーもしくは同一系列のモノマーを含んでいる
か、または同一系列でなくても極性基を有するモノマー
を含んでいると、混合されるポリマーの相溶性が一段と
向上し、本発明の目的とする効果が一段と優れたものに
なる。
(共)重合体(A−1)は、前記ビニル系モノマーの
単独重合体あるいは2種以上の共重合体である。(A−
1)成分の好ましいビニル系モノマーの組合せとその組
成割合を以下に示す。
芳香族ビニル化合物100重量%。
(メタ)アクリル酸エステル100重量%。
芳香族ビニル化合物/マレイミド系化合物=5〜95/9
5〜5重量%。
芳香族ビニル化合物/マレイミド系化合物/シアン化
ビニル化合物および/または(メタ)アクリル酸エステ
ル=5〜95/5〜60/5〜40重量%。
芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステルお
よびシアン化ビニル化合物の3種から選ばれた少なくと
も2種であり、 芳香族ビニル化合物を必須成分とする場合には全モノ
マー中5〜95重量%、 (メタ)アクリル酸エステルを必須成分とする場合に
は全モノマー中5〜95重量%、 シアン化ビニル化合物を必須成分とする場合には全モノ
マー中5〜50重量%である。
また、グラフト共重合体(A−2)は、ゴム状重合体
の存在下に前記ビニル系モノマーを重合して得られる。
ここで、(A−2)成分の製造に使用されるゴム状重
合体としては、ポリブタジエン、ブタジエン−スチレン
共重合体、ポリイソプレン、ブタジエン−アクリロニト
リル共重合体、エチレン−プロピレン−(ジエン)共重
合体、イソブチレン−イソプレン共重合体、アクリルゴ
ム、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン
−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−
ブタジエン−スチレンラジアルテレブロック共重合体、
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポ
リウレタンゴムなどが挙げられる。
(A−2)成分中のゴム状重合体の含有量は、好まし
くは3〜80重量%、さらに好ましくは5〜70重量%であ
る。この範囲において、本発明の目的とする効果の一段
と優れたものが得られる。
また、(A−2)成分のグラフト率は、好ましくは5
重量%以上、さらに好ましくは10〜200重量%であり、
この範囲において本発明の目的とする効果の一段と優れ
たものが得られる。
(A−2)成分の好ましいビニル系モノマーの組合せ
とその組成割合は、前記(A−1)成分における前記
〜と同様である。
(A−1)〜(A−2)成分を製造する重合法は、一
般の公知の重合法を用いることができる。
例えば、乳化重合法、懸濁重合法、バルク重合法、溶
液重合法、およびこれらの重合法を組み合わせた重合法
が挙げられる。
なお、このようにして得られる(共)重合体(A−
1)あるいはグラフト共重合体(A−2)のポリスチレ
ン換算重量平均分子量は、通常、10,000〜500,000、好
ましくは50,000〜200,000程度である。
次に、本発明を構成する(B)グラフト共重合体に使
用されるオルガノシロキサン(I)は、前記一般式で表
される構造単位を有するものであり、直鎖状、分岐状ま
たは環状構造を有するが、好ましくは環状構造を有する
オルガノシロキサンである。このオルガノシロキサン
(I)の有する置換または非置換の1価の炭化水素基と
しては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ビニ
ル基、フェニル基、およびそれらをハロゲン原子または
シアノ基で置換した置換炭化水素基などを挙げることが
できる。また、前記平均組成式中、nの値は0〜3の整
数である。
オルガノシロキサン(I)の具体例としては、ヘキサ
メチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテト
ラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ド
デカメチルシクロヘキサシロキサン、トリメチルトリフ
ェニルシクロトリシロキサンなどの環状化合物のほか
に、直鎖状あるいは分岐状のオルガノシロキサンを挙げ
ることができる。
なお、このオルガノシロキサン(I)は、あらかじめ
縮合された、例えばポリスチレン換算の重量平均分子が
500〜10,000程度のポリオルガノシロキサンであっても
よい。
また、オルガノシロキサン(I)が、ポリオルガノシ
ロキサンである場合、その分子鎖末端は、例えば水酸
基、アルコキシ基、トリメチルシリル基、ジメチルビニ
ルシリル基、メチルフェニルビニルシリル基、メチルジ
フェニルシリル基などで封鎖されていてもよい。
また、(B)成分に使用されるグラフト交叉剤(II)
は、前記一般式で表される不飽和基とアルコキシシリル
基とを合わせ持つ化合物である。
前記一般式のR2としては、水素原子または炭素数1〜
6のアルキル基であるが、水素原子または炭素数1〜2
のアルキル基が好ましく、さらに好ましくは水素原子ま
たはメチル基である。
これらの化合物としては、具体的にはp−ビニルフェ
ニルメチルジメトキシシラン、1−(m−ビニルフェニ
ル)メチルジメチルイソプロポキシシラン、2−(p−
ビニルフェニル)エチルメチルジメトキシシラン、3−
(p−ビニルフェノキシ)プロピルメチルジエトキシシ
ラン、3−(p−ビニルベンゾイロキシ)プロピルメチ
ルジメトキシシラン、1−(o−ビニルフェニル)−1,
1,2−トリメチル−2,2−ジメトキシジシラン、1−(p
−ビニルフェニル)−1,1−ジフェニル−3−エチル−
3,3−ジエトキシジシロキサン、m−ビニルフェニル−
〔3−(トリエトキシシリル)プロピル〕ジフェニルシ
ラン、〔3−(p−イソプロペニルベンゾイルアミノ)
プロピル〕フェニルジプロポキシシランなどのほか、こ
れらの混合物を挙げることができる。
グラフト交叉剤(II)としては、好ましくはp−ビニ
ルフェニルメチルジメトキシシラン、2−(p−ビニル
フェニル)エチルメチルジメトキシシラン、3−(p−
ビニルベンゾイロキシ)プロピルメチルジメトキシシラ
ンであり、さらに好ましくはp−ビニルフェニルメチル
ジメトキシシランである。
このグラフト交叉剤の使用割合は、(I)成分と(I
I)成分の合計量中、0.2〜10重量%、好ましくは0.5〜
5重量%であり、0.2重量%未満では得られる変性ポリ
オルガノシロキサン(III)の存在下にビニルモノマー
を重合した場合に高いグラフト率が得られず、その結
果、変性ポリオルガノシロキサン(III)とグラフトさ
れたビニルポリマー間の界面接着力が低下し、層状剥離
が生じて得られる(B)グラフト共重合体に充分な衝撃
強度が得られない。一方、グラフト交叉剤(II)の割合
が10重量%を超えると、グラフト率は増大するが、グラ
フトされたビニルポリマーの重合がグラフト交叉剤(I
I)の増加とともに低下し、このビニルポリマーが低分
子量となり、その結果、充分な衝撃強度が得られない。
変性ポリオルガノシロキサン(III)は、前記オルガ
ノシロキサン(I)とグラフト交叉剤(II)とを、例え
ばアルキルベンゼンスルホン酸などの乳化剤の存在下に
ホモミキサーなどを用いて剪断混合し、縮合させること
によって製造することができる。この乳化剤は、オルガ
ノシロキサン(I)の乳化剤として作用するほか縮合開
始剤となる。
この乳化剤の使用量は、(I)成分および(II)成分
の合計量に対して、通常、0.1〜5重量%、好ましくは
0.3〜3重量%程度である。
なお、この際の水の使用量は、(I)成分および(I
I)成分100重量部に対して、通常、100〜500重量部、好
ましくは200〜400重量部である。
また、縮合温度は、通常、5〜100℃である。
なお、変性ポリオルガノシロキサン(III)の製造に
際し、得られるグラフト共重合体の耐衝撃性を改良する
ために、第3成分として架橋剤を添加することもでき
る。この架橋剤としては、例えばメチルトリメトキシシ
ラン、フェニルトリメトキシシラン、エチルトリエトキ
シシランなどの3官能性架橋剤、テトラエトキシシラン
などの4官能性架橋剤を挙げることができる。この架橋
剤の添加量は、オルガノシロキサン(I)およびグラフ
ト交叉剤(II)の合計量に対して、通常、10重量%以
下、好ましくは5重量%以下程度である。
なお、このようにして得られる変性ポリオルガノシロ
キサン(III)のポリスチレン換算重量平均分子量は、
通常、30,000〜1,000,000、好ましくは50,000〜300,000
程度である。
次に、このようにして得られる変性ポリオルガノシロ
キサン(III)の存在下に、ビニルモノマーを重合する
ことにより、(B)グラフト共重合体が得られる。
ここで(B)成分の製造に使用されるビニル系モノマ
ーは、前記(A)成分の製造に使用されるビニル系モノ
マーと同様である。
なお、(B)成分に使用されるビニル系モノマーのう
ち、(B)グラフト共重合体の耐衝撃性をより向上させ
る目的としては、65〜75重量%のスチレンおよび35〜25
重量%のアクリロニトリルを含むものが好ましい。
なお、変性ポリオルガノシロキサン(III)の存在下
にビニル系モノマーを重合する際の仕込み組成は、(II
I)成分が好ましくは5〜80重量%、さらに好ましくは1
0〜60重量%、ビニル系モノマーが好ましくは95〜20重
量%、さらに好ましくは90〜40重量%〔ただし、(II
I)+ビニル系モノマー=100重量%)であり、(III)
成分が5重量%未満では充分な衝撃強度、摺動性および
耐汚染性が得られず、一方80重量%を超えるとグラフト
結合するビニルポリマーの割合が減少し、成形時の成形
収縮が大きくなり、さらに外観不良、衝撃強度の低下が
生じる。
また、このようにして得られる(B)グラフト共重合
体のグラフト率は、5重量%以上、好ましくは10重量%
以上、さらに好ましくは30重量%以上、特に好ましくは
50〜120重量%である。このように、(B)グラフト共
重合体のグラフト率が5重量%未満では、充分な摺動
性、耐汚染性、耐衝撃性が得られず、また成形時の成形
収縮が大きくなり好ましくない。
なお、(B)グラフト共重合体中に分散している変性
ポリオルガノシロキサン(III)の平均粒径は、好まし
くは5,000Å以下、さらに好ましくは3,000Å以下であ
り、また(B)グラフト共重合体のメチルエチルケトン
可溶分の極限粘度〔η〕(30℃、メチルエチルケトン
中)は、0.2〜0.8dl/gである。前記平均粒径が、5,000
Å以下であると、光沢、表面平滑性、ウエルド外観に優
れ、また前記極限粘度〔η〕が0.2〜0.8dl/gの範囲であ
ると、衝撃強度と成形加工性のバランスに優れる。
(B)グラフト共重合体の製造方法は特に限定される
ものではなく、例えば前記(A−2)成分で示した重合
法で得られる。その一例としては、特開昭63-105956号
明細書に記載の乳化重合や溶液重合の方法などを用いる
ことができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の組成割合は、(A−
1)および/または(A−2)からなる(A)成分50〜
99重量%、好ましくは60〜95重量%、(B)成分50〜1
重量%、好ましくは40〜5重量%であり、かつ(A)成
分および(B)成分中の変性ポリオルガノシロキサン
(III)の含有量が1〜30重量%、好ましくは2〜25重
量%である。
(A)成分が50重量%未満であると〔すなわち、
(B)成分が50重量%を超えると〕、耐疲労性および
(A)成分の優れた性質、例えば耐衝撃性、着色性など
が損なわれるので好ましくなく、一方(A)成分が99重
量%を超えると〔すなわち、(B)成分が1重量%未満
であると〕、充分な摺動性、耐汚染性が得られず好まし
くない。
また、(A)〜(B)成分中の変性ポリオルガノシロ
キサン(III)の含有量が、1重量%未満では充分な摺
動性、耐汚染性が得られず、一方30重量%を超えると
(A)成分の前記したような優れた性質が損なわれるの
で好ましくない。
本発明の熱可塑性樹脂組成物における好ましい(A)
成分と(B)成分の組合せを、下記〜に示す。ただ
し、(B)成分における略称は、次のとおりである。
B1;(III)成分の存在下に、スチレンおよびアクリロニ
トリルを重合して得られた(B)成分。
B2;(III)成分の存在下に、スチレンを重合して得られ
た(B)成分。
B3;(III)成分の存在下に、メタクリル酸メチルを重合
して得られた(B)成分。
B4;(III)成分の存在下に、メタクリル酸メチルおよび
スチレンを重合して得られた(B)成分。
スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)/B1 アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体
(ABS樹脂)/B1 ポリスチレン/B2 ポリスチレングラフトポリブタジエン (HIPS樹脂)/B2 アクリロニトリル−エチレンプロピレン−スチレン共
重合体(AES樹脂)/B1 N−フェニルマレイミド−スチレン共重合体/B1 ポリメタクリル酸メチル/B3 ポリメタクリル酸メチルグラフトアクリルゴム/B3 メタクリル酸メチル−スチレン共重合体グラフトブタ
ジエンゴム(MBS樹脂)/B4 α−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体/B1 なお、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じ
て摺動性付与剤を添加することができる。
摺動性付与剤としては、例えばポリテトラフルオロエ
チレンなどのポリフッ化エチレン;二硫化モリブデンな
どの硫化モリブデン;ワラストナイト、チタン酸カリウ
ム、マイカ、カーボンファイバー、炭化ケイ素ウィスカ
ーなどが挙げられる。
これらの摺動性付与剤の添加効果を得るための配合量
は、好ましくは本発明の熱可塑性樹脂組成物100重量部
に対して、0.5〜40重量部である。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じ
て他の重合体を添加することができる。
このような重合体としては、例えばポリブタジエン、
ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブ
タジエン共重合体、ポリイソプレン、天然ゴムなどのジ
エン系ゴム;アクリルゴム、エチレン−プロピレン共重
合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、塩素化
ブチルゴム、塩素化ポリエチレンなどのオレフィン系ゴ
ム;スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン
−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−
ブタジエン−スチレンラジアルテレブロック共重合体な
どの芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体;該
ブロック共重合体の水素化物;ポリプロピレン、ポリエ
チレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリエチ
レンテレフタレート、ポリブチルテレフタレート、ポリ
アセタール、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリフッ化ビ
ニリデン、ポリスルホン、エチレン−酢酸ビニル共重合
体、PPS樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、PPO樹脂、
ゴム変性PPO樹脂、ポリアミド系エラストマー、ポリエ
ステル系エラストマーなどが挙げられる。
さらに、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、必要に応
じて充填剤、顔料、難燃剤、老化防止剤、安定剤、帯電
防止剤などを添加することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の配合方法は、特に限定
されるものではなく、例えばヘンシェルミキサー、タン
ブラーなどで混合し、さらにバッチニーダー、バンバリ
ーミキサー、または単軸もしくは多軸スクリュー押し出
し機で溶融混合する方法などを挙げることができる。
〔実施例〕
以下、実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明す
る。なお、実施例中の部および%は、特に断らない限り
重量部および重量%である。
また、実施例中、各種の測定項目は、下記に従った。
グラフト率 グラフト共重合体の一定重量(x)をアセトン中に投
入し、振とう機で2時間振とうし、遊離の共重合体を溶
解させ、遠心分離機を用いて回転数23,000rpmで30分間
遠心分離し、不溶分を得る。次に、真空乾燥機を用いて
120℃で1時間乾燥し、不溶分重量(y)を得、次式に
よりグラフト率、グラフト効率を算出した。
グラフト率(%)=〔y−(x×グラフト共重合体中の
(III)成分分率)〕×100/〔x×グラフト共重合体中
の(III)成分分率〕 極限粘度〔η〕 共重合体を、メチルエチルケトンに溶解し、温度30℃
でウベローデ型粘度計で測定した。
摺動特性 摩擦摩耗試験は、鈴木式摺動試験機を使用し、相手材
としてはスチール(S45C)を用いた。
試験片は、外径25.6mm、内径20.0mmの中空円筒状のも
のを用い、相手材も同様の形状のものを用いた。
動摩擦係数の測定条件は、室温23℃、湿度50%の雰囲
気中で荷重2kg、走行速度50cm/秒で測定した。
動摩擦係数は、次式によって算出する。
(式中、μは動摩擦係数、Fはロードセルに与える
力、Pは荷重、Rはロードセルまでのアーム長、r1は内
径、r2は外径を表す。) 比摩耗量の測定条件は、室温23℃、湿度50%の雰囲気
中、対スチール(S45C)で、荷重2kg、走行速度50cm/
秒、16.7時間(走行速度30km)で測定した。比摩耗量
は、次式によって算出する。
A=ΔW/(P×l×α) (式中、Aは比摩耗量、ΔWはサンプルの重量変化、P
は荷重、lは走行距離、αはサンプルの密度を表す。) 限界PV値は、摩擦速度30cm/秒を一定として荷重を変
化させて溶融あるいは著しい摩耗が生じる時点を判定
し、そのときの速度と荷重の積を限界PV値とした。
アイゾット衝撃強度(ノッチ付き) 試験方法;ASTM D256 試験条件;1/4″、23℃ 単位;kg・cm/cm 成形収縮率(寸法安定性の指標) 直径10cm、厚さ2mmの円板を作製し、その金型寸法と
成形体の寸法から、成形収縮率を測定した。
成形収縮率=(成形体直径/金型直径)×100(%) 疲労強度 試験方法;JIS K7118 試験条件;応力振幅一定形のシェンク (Schenk)型疲労試験機を用い、繰り返し回数107
で試験片がきれるときの応力を測定した。単位は、kg/c
m2である。
参考例1〔(共)重合体(A−1)の製造〕 攪拌機を備えた内容積7lのガラス製フラスコに、イオ
ン交換水200部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウ
ム2.0部、t−ドデシルメルカプタン0.3部、過硫酸アン
モニウム0.3部を仕込み、70℃まで昇温した。
次に、ビニル系モノマーを第1表に示す割合で混合し
たものを3分割し、1時間おきにフラスコに添加し、3
時間で重合を完結させた。
次いで、塩化カリウム2部を用いて生成物を凝固さ
せ、脱水、水洗、乾燥を行って、粉末状の(共)重合体
を得た。
第1表に、重合転化率と極限粘度〔η〕を示す。
参考例2〔グラフト共重合体(A−2)の調製〕 グラフト共重合体(A−2)として、以下のものを用
いた。
ABS樹脂;日本合成ゴム(株)製、JSR ABS10 AES樹脂;日本合成ゴム(株)製、JSR AES110 MBS樹脂;日本合成ゴム(株)製、JSR MBS66 AAS樹脂;日立化成工業(株)製、バイタックス V-6700 HIPS樹脂;大日本インキ(株)製、 GH7000 ゴム強化樹脂;三菱レイヨン(株)製、IR-20 参考例3〔変性ポリオルガノシロキサン(R−1)の製
造〕 p−ビニルフェニルメチルジメトキシシラン1.5部
(ただし、後記B−6の場合には、0.001部)とオクタ
メチルシクロテトラシロキサン98.5部を混合し、これを
ドデシルベンゼンスルホン酸2.0部を溶解した蒸溜水300
部中に入れ、ホモミキサーにより3分間撹拌して乳化分
散させた。
この混合液を、コンデンサー、チッ素ガス導入口およ
び撹拌機を備えたセパラブルフラスコに移し、撹拌混合
しながら90℃で6時間加熱し、5℃で24時間冷却するこ
とによって縮合を完結させた。
得られた変性ポリオルガノシロキサン中のオクタメチ
ルシクロテトラシロキサンの縮合率は92.8%であった。
この変性ポリオルガノシロキサンラテックスを炭酸ナ
トリウム水溶液でpH7に中和した。
参考例4〔(B)グラフト共重合体B−1〜6の製造〕 攪拌機を備えた内容積7lのガラス製フラスコに、イオ
ン交換水I00部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウ
ム0.5部、水酸化カリウム0.01部、t−ドデシルメルカ
プタン0.1部および第2表に示す割合で、参考例3の変
性ポリオルガノシロキサンラテックス(R−1)と各種
ビニル系モノマーからなるバッチ重合成分を加え、攪拌
しながら昇温した。温度が45℃に達した時点で、エチレ
ンジアミン四酢酸ナトリウム0.1部、硫酸第1鉄0.003
部、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシラート・二
水塩0.2部およびイオン交換水15部よりなる活性水溶
液、ならびにジイソプロピルベンゼンヒドロキシパーオ
キサイド0.1部を添加し、1時間反応を続けた。
そののち、イオン交換水50部、ドデシルベンゼンスル
ホン酸ナトリウム1部、水酸化カリウム0.02部、t−ド
デシルメルカプタン0.1部、ジイソプロピルベンゼンヒ
ドロキシパーオキサイド0.2部および第2表に示す割合
の各種ビニル系モノマーよりなるインクレメント重合成
分の混合物を3時間かけて連続的に添加し、反応を続け
た。添加終了後、さらに攪拌しながら、1時間反応を続
けたのち、2,2−メチレン−ビス−(4−エチレン−6
−t−ブチルフェノール)0.2部を添加し、反応生成物
をフラスコより取り出した。次いで、塩化カリウム2部
を用いて生成物を凝固させ、脱水、水洗、乾燥を行っ
て、粉末状のグラフト共重合体B−1〜6を回収した。
第2表に、重合転化率、および先に述べた方法で測定
したグラフト率、極限粘度〔η〕を示す。
実施例1〜14、比較例1〜5 第3表に示す各成分を、内径40mmの押し出し機を用
い、温度200〜280℃の範囲で溶融混練りし、ペレットを
作製した。
このペレットを、5oz射出成形機(東芝機械(株)
製、IS-80A)を用い、成形温度200〜280℃で成形して試
験片を作製し、その物性を評価した。結果を第3表に示
す。
〔発明の効果〕 本発明の熱可塑性樹脂組成物は、成形時の成形収縮が
小さく、耐衝撃製、成形加工性、耐疲労性、摺動性およ
び耐汚染性に優れている。
摺動性の優れた材料として、ポリオキシメチレン、ナ
イロン6、ナイロン66などが知られ、これらのポリマー
は摺動性に優れていることから、各種のギヤ、軸受けな
どに広く使用されてはいる。
しかしながら、これらのポリマーは、成形時の成形品
の成形収縮が大きく、その結果、寸法安定性が充分でな
く、従って寸法精度が要求される用途に大きな支障とな
っており、また成形収縮が大きいことで成形品にヒケあ
るいは変形が生じやすく、肉厚成形品、大型成形品の用
途への使用に大きな支障となっていた。
これに対し、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、前記の
ような優れた性能を有し、特に成形収縮が小さいことか
ら、従来不可能であった寸法精度が要求される用途ある
いは大型、肉厚が要求される用途の成形材料として使用
することができ、さらに耐汚染性が求められる用途の成
形材料として使用することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、このように摺動性、
耐汚染性、成形加工性、耐衝撃性に優れており、かつ成
形時の成形収縮が小さいことから、例えば各種ギヤ、各
種の軸受け、プッシング、ベアリング、スリーブ、スリ
ッピング、ガイドレール、シール材、スイッチ部品、カ
ム、シリンジ、シューター、ダイヤフラム、リテーナ、
キャスターローラなどの成形材料として有用である。
さらに、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、耐汚染性も
兼ね備えているので、例えば洗面ユニット、厨房器具、
パネル、ハウジングなどの成形材料としても有用であ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−1763(JP,A) 特開 昭62−121751(JP,A) 特開 昭61−235462(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C08L 1/00 - 101/14 C08F 283/12

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記(A)ビニル系重合体50〜99重量%、
    および(B)グラフト共重合体50〜1重量%を含有し、
    かつ(A)成分+(B)成分中の変性ポリオルガノシロ
    キサン(III)の含有量が1〜30重量%であることを特
    徴とする熱可塑性樹脂組成物。 (A)ビニル系モノマーを重合して得られる(共)重合
    体(A−1)およびゴム状重合体〔ただし、変性ポリオ
    ルガノシロキサン(III)を除く〕の存在下に、ビニル
    系モノマーを重合して得られるグラフト共重合体(A−
    2)の群から選ばれた少なくとも1種のビニル系重合
    体。 (B)一般式R1 nSiO(4-n)/2(式中、R1は置換または非
    置換の1価の炭化水素基であり、nは0〜3の整数を示
    す)で表される構造単位を有するオルガノシロキサン
    (I)90〜99.8重量%と、 一般式 (式中、R2は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基
    を示す)で表される不飽和基とアルコキシシリル基とを
    合わせ持つグラフト交叉剤(II)10〜0.2重量%とを縮
    合させて得られる変性ポリオルガノシロキサン(III)
    に、少なくとも1種のビニル系モノマーを重合して得ら
    れ、かつグラフト率が5重量%以上であるグラフト共重
    合体。
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