JP2902679B2 - 固体電解コンデンサの製造方法 - Google Patents

固体電解コンデンサの製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 (イ) 産業上の利用分野 本発明は、電解質としてTCNQ塩(ここでTCNQとは7・
7・8・8テトラシアノキノジメタンを意味する)より
なる有機半導体を用いた固体電解コンデンサの製造方法
に関する。
(ロ) 従来の技術 従来、固体電解コンデンサの固体電解質として有機半
導体、特にTCNQ塩を用いることが提案されている(例え
ば特公昭62−52939号公報(H01G9/02)参照)。このよ
うな従来技術においては、第2図に示す如く、TCNQ塩か
らなる有機半導体の粉末(6)を適量熱伝導性のケース
(アルミニウムケース等)(5)に適度に加圧して収納
し、これを250〜300℃の温度で融解液化し、あらかじめ
予熱しておいたコンデンサ素子(1)を浸漬する。更に
コンデンサ素子をケースと共に急冷却後、ケース開口部
に熱硬化性樹脂(例えばエポキシ樹脂)(7)を充填
し、85〜105℃の温度で長時間放置して硬化させてい
た。尚、ここでコンデンサ素子(1)とはアルミニウ
ム、タンタル、ニオブ等の弁作用を有する金属の化成箔
を陽極とし、通常これら金属の化成処理を施していない
箔を陰極とし、そしてこれら陰極箔と陽極箔の間にスペ
ーサ紙を挟んで巻回したものである。また、(2)
(3)はそれぞれ陽極および陰極リード線、(4)はリ
ードボスである。
このような従来の固体電解コンデンサにおいては、固
体電解質としての有機半導体(6)がその上に被覆され
た熱硬化性樹脂(7)と反応してその特性が劣化する。
その結果、有機半導体の等価直列抵抗(ESR)が大きく
なり、初期特性の悪化を招くという問題がある。
(ハ) 発明が解決しようとする課題 本発明は上述の如き問題、即ち固体電解質としての有
機半導体がエポキシ系樹脂と有機半導体との反応により
劣化し、ESRが増大するという問題を解決するものであ
る。
(ニ) 課題を解決するための手段 本発明はコデンサ素子にTCNQ塩を含浸後、冷却固化
し、該コンデンサ素子を低分子量のポリオレフィンで被
覆するものである。また、斯る低分子量ポリマーによる
被覆後、耐湿性に優れたエポキシ系樹脂で被覆するもの
である。更にまた、コンデンサ素子を全面樹脂封口した
いわゆる樹脂ディップタイプにするのではなく、ケース
に収納するタイプにする場合、コンデンサ素子を被覆す
る低分子量ポリマーでケースの開口部を封止する。更に
必要に応じて斯るケース開口部を耐湿性に優れたエポキ
シ系樹脂で被覆するものである。
(ホ) 作用 低分子量ポリマーはTCNQ塩と全く反応しないので、TC
NQ塩が劣化することがない。また、更に斯る低分子量ポ
リマーは粉末状にできるので、作業性も良く、またいつ
でも溶融して使用できるため可使用時間(ポットライ
フ)の心配もない。斯る低分子量ポリマーをエポキシ系
樹脂で被覆すればコンデンサ素子への水分の浸入が防止
される。更にまた、エポキシ系樹脂とTCNQ塩との間にTC
NQ塩と反応しない低分子量ポリマーの樹脂層が形成され
ているので、エポキシ系樹脂とTCNQ塩との反応によりTC
NQ塩が劣化することがない。
(ヘ) 実施例 本発明の実施例として、陽極用アルミニウム箔と陰極
用アルミニウム箔とを厚さ50μのマニラ紙をセパレータ
紙として巻き取ったコンデンサ素子に、固体電解質とし
てN−n−ブチル−イソキノリウム(TCNQ)のTCNQ塩
を用いた場合の製造過程を説明する。
まず、上記捲取りコンデンサ素子の陽極箔の切り口を
化成液を用いて陽極化成電圧とほぼ同じ電圧を印加し、
化成する。次に第1図に示す如く有底円筒状のアルミニ
ウムケース(4)内に上記TCNQ塩の粉末(6)を適量入
れ、TCNQ塩の融点以上、好ましくは280℃〜300℃に保持
された鉄板上に上記ケースを加熱保持する。尚、斯るケ
ース(5)は最終的にはコンデンサの外囲器となるもの
である。上記TCNQ塩(6)の融点は210〜230℃であり、
従って上記加熱によりケース内のTCNQ塩は溶解液化す
る。続く工程ではケース内の液化TCNQ塩中にあらかじめ
準備されているコンデンサ素子(1)を浸漬し、素子内
にTCNQ塩(6)を含浸させる。
次の工程では直ちにこの状態でケースごと急冷し、TC
NQ塩を固化させる。斯る工程によりコンデンサ素子
(1)に液状のTCNQ塩(6)が含浸され、その後の急冷
却によりTCNQ塩は再結晶化して2〜5Ωcm(25℃)の高
い電導度を示す固体電解質を形成する。
続く工程では前記TCNQ塩含浸済みの素子(1)上に低
分子量ポリマーとして低分子量ポリプロピレン(市販商
品名:ビスコール等)の粉末(8)をケース開口部上端
まで充てんした後、190℃中に1分間放置し、低分子量
ポリプロピレン(8)を液化させた後、冷却する。そし
て冷却固化後、最後に熱硬化性樹脂(7)にて上記ケー
ス(5)の開口部を封口する。
次に125℃にて1時間ほぼコンデンサの定格電圧と同
じ電圧を印加して目的とする固体電解コンデンサか完成
する。本発明の実施例と従来例との特性比較データを次
に記載する。
なお、実施例1〜3は低分子量ポリマーとして低分子
量ポリオレフィンを使用し、それを素子上に充てん後、
加熱融解し、冷却固化し、更にその上にエポキシ樹脂を
被覆して封口したものである。また従来例1〜3はエポ
キシ樹脂にて封口したものである。
なお、上記表はサンプル各20個の平均値を示す。また
測定温度は20℃である。
第1表の実施例からわかる如く、有機半導体(TCNQ
塩)を電解質として用いた固体電解コンデンサにおい
て、ESRの増大の防止に役立っていることがわかる。
尚、この他のN−n−プロピルキノリン、N−エチル
イソキノリン、N−イソプロピルキノリン、N−n−ヘ
キシルキノリン等のTCNQ塩についても同様の効果が得ら
れる。
(ト) 発明の効果 本発明の固体電解コンデンサの製造方法によれば、低
分子量ポリマーはTCNQ塩と全く反応しないので、TCNQ塩
を含浸したコンデンサ素子の被覆や封口に使用すると、
TCNQ塩の特性が劣化することがなく、更に、低分子量ポ
リマーで被覆後、エポキシ系樹脂で被覆したり、封口す
る際には水分の浸入を更に確実に遮断できるので、極め
て特性がよくなる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の固体電解コンデンサの製造方法を用い
たコンデンサの実施例を示す断面図、第2図は従来例の
断面図である。 (1)……コンデンサ素子、(2)(3)……陽極およ
び陰極リード線、(5)……金属ケース、(6)……有
機半導体(TCNQ塩)、(7)……エポキシ系樹脂、
(8)……低分子量ポリマー。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アルミニウム、タンタル、ニオブ等の弁作
    用を有する金属の化成箔よりなる陽極箔と金属の薄箔よ
    りなる陰極箔との間にセパレータ紙を介して巻回したコ
    ンデンサ素子を、有底筒状のケース内で加熱溶解させた
    TCNQ塩に浸漬して、前記コンデンサ素子に前記TCNQ塩を
    含浸させた後、該TCNQ塩を冷却固化させる工程と、 前記ケースの開口部にポリオレフィンの粉末を充填し、
    該粉末を加熱して液化させた後、冷却固化させることに
    より、前記TCNQ塩を含浸させたコンデンサ素子のケース
    開口部側をポリオレフィンにて被覆する工程とを備える
    ことを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。
  2. 【請求項2】前記TCNQ塩を含浸させたコンデンサ素子の
    ケース開口部側をポリオレフィンにて被覆した後、前記
    ケースの開口部にエポキシ系樹脂を充填して封口する工
    程を備えることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載
    の固体電解コンデンサの製造方法。
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