JP2900610B2 - 厚膜導体組成物 - Google Patents

厚膜導体組成物

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JP2900610B2
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resistor
tcr
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conductor composition
thick film
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希世史 柳沼
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は抵抗器の性能を向上し得
る厚膜導体組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】厚膜組成物はおもに導体、抵抗体、誘導
体(ガラス)の3種類に分類され、これらを組合せて混
成集積回路、チップ抵抗器、ネットワーク抵抗器などの
電子部品を形成している。厚膜組成物は一般に金属、ガ
ラス、酸化物などの粉末を液状のビヒクルと混練した糊
状の物で、金、銀、白金などの貴金属を主成分とすると
導体組成物に、ルテニウム酸化物とガラスを主成分とす
ると抵抗体組成物に、ガラスを主成分とすると誘電体組
成物になる。
【0003】これらの組成物はアルミナなどのセラミッ
ク基板上に10μm程度の厚さに焼き付けられて機能を
果たす。まず、スクリーン印刷法によってアルミナ基板
上に所望のパターン、所望の厚さに印刷する。これを1
00〜300℃で乾燥し、低沸点成分を蒸発させる。次
に450〜1000℃で空気中で焼成し基板上に焼き固
める。厚膜抵抗器は通常、導体を形成しておき、その1
部に重なるように抵抗体を形成する。誘電体はおもに抵
抗体上にその保護のためにコートされる。
【0004】各膜の厚さは通常10μm前後であるが、
抵抗体が橋渡しされる電極(導体)と電極(導体)との
距離と抵抗体の幅は必要とする電力によって決定され
る。この両者の積は抵抗体の面積といわれ、これが小さ
くなるほど許容できる電力が小さくなる。したがって必
要とする電力によってサイズ(電極間距離×抵抗体幅)
が異なり、小さい電力ほどサイズが小さくなる。最近で
は消費電力が小さくなる傾向であり、部品として使われ
る抵抗器も小電力つまりは小型化へと急速に進んでい
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで厚膜抵抗体の
抵抗値は、電極間距離、抵抗体幅及び抵抗体厚さによっ
て影響を受け、理論値と異なる値を示すことがある。こ
のことを厚膜抵抗体の形状効果という。特に電極間距離
が1mm以下になると形状効果が顕著で、最近の小型化の
大きな障害の1つになっている。
【0006】理論的には、抵抗値と許容電力は電極間距
離に比例し、抵抗値の温度係数(以下TCRという)は
変化しないものと考えられる。確かに、電極間が充分大
きい場合はその通りであるが1mm以下になると、理論通
りにならず予想以上に抵抗値と許容電力が下がり、TC
Rが正に大きくなる。
【0007】抵抗値については用いる抵抗体組成物を高
目のものとし、許容電力については抵抗体の形状を変更
するなどして対処することができるが、TCRには現在
までの所有効な手段がない。もちろん、抵抗体組成物の
組成を変更してTCRを調整する方法はあるが、抵抗体
のサイズが変わると又違った大きな値になってしまう。
従ってある決められたサイズでしかTCRを調整するこ
とができず、すべてのサイズでTCRを調整する方法が
なかった。このためサイズ毎にTCRの異なる抵抗体組
成物が必要であり、抵抗体組成物の種類が増す分、それ
を使用する抵抗器の製造価格が高くなるのが避けられな
かった。
【0008】本発明の目的はこのような形状効果による
TCRの変化を小さくし、TCRの小さい抵抗器の製造
を可能にする電極用の導体組成物を提供することにあ
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
本発明の導体組成物は、Ag粉末45〜85重量%、C
uまたはCu化合物粉末0.1〜1.5重量%、Nb化
合物Sb化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物
粉末0.01〜1.0重量%及び有機質ビヒクル12.
5〜54.89重量%を含有する点に特徴がある。
【0010】
【作用】TCRの形状効果を詳しく調べた結果、抵抗体
の幅と厚さはほとんど影響なく、電極間距離が小さくな
るほど顕著になることがわかった。これはTCRの形状
効果が抵抗体自身に起因せず電極の影響を強く受けてい
ることを示している。
【0011】更に抵抗体中の成分を詳細に調査した結
果、電極に近ずくにしたがって銅が多く検出されること
を見出した。この銅は抵抗体を焼成するときに電極から
拡散したものと考えられる。銅は電極とセラミック基板
との接着力を向上させるための添加物であり、電極を形
成する導体組成物には少量ながら必ず添加されている。
また抵抗体側からみると、銅はTCRを正に大きくする
添加物として知られている。したがって従来の組成物に
よると必ず電極から銅が抵抗体中へ拡散し、電極付近の
抵抗体部分のTCRが正に大きくなる。そして電極間距
離が小さくなるに従って抵抗体全体に占める銅の量が増
し、TCRが正に顕著に大きくなるのである。TCRの
形状効果はこのようにして現われると考えられる。
【0012】実際、銅は、銅粉末、酸化銅粉末、または
ガラス中に溶かしてガラスと共に添加され、導体膜と基
板との接着強度を著しく向上させる成分であり、除くこ
とは難しい。したがって通常0.1〜1.5%の範囲内
で銅が導体組成物中に含まれている。
【0013】そこで本発明者は導体組成物中の銅成分を
そのままにして様々な添加物を導体組成物に添加して抵
抗体のTCRの形状効果を試験した結果、Nb、Sbの
化合物が有効であることを見出した。従来よりこれらの
添加物はTCRを負に調整するために抵抗体組成物に使
われてきた。これらを導体組成物に添加すると、抵抗体
中へ拡散してTCRを負の方向にするように働きCu拡
散の影響を打消すことができる。この量を適量にするこ
とによってTCRの形状効果を小さくすることができ
る。適量は銅の量によって変り、銅が多くなると添加量
も多く、少なくなると添加量も少なくなる。Nb、Sb
化合物の添加が少なすぎると効果が不十分であり、適量
より多く添加し過ぎても導体近傍の抵抗体のTCRが負
になり過ぎる。通常の導体組成物では、Nb、Sb化合
物の添加を0.01〜1.0重量%の範囲内で調整する
必要がある。
【0014】本発明が適用し得る厚膜導体組成物はAg
系の導体組成物ならば何れであってもよい。したがっ
て、基本的には本発明にAg、有機質ビヒクルの制限は
ないが、一般的に導体組成物になり得る含有率は存在
し、Ag粉末は45〜85重量%、有機質ビヒクルは1
2.5〜54.89重量%となる必要がある。Ag粉末
が45重量%を下回ると抵抗値が高くなりすぎて抵抗体
の電極として機能せず、85重量%を越えるとビヒクル
分が少なくなりすぎて糊状にすることが困難になる。ビ
ヒクルが13重量%を下回るとまた糊状にすることが困
難になり、50重量%を越えると焼成後の膜が薄すぎて
連続的な膜にならない。なお、一般に導体組成物に添加
されるガラス、Bi2 3 、NiO、V2 5 、ZnO
などは本効果を阻害するものではなく、0〜7重量%含
有しても差支えない。
【0015】
【実施例】下記の原料を第1表に示す組成で調合し、ス
リーロールミルで混練して糊状の厚膜導体組成物を調製
した。
【0016】Ag粉:平均粒子径1.4μm、Pd粉:
平均粒子径0.1μm、 Cu粉:平均粒子径0.5μm、CuO粉:平均粒子径
0.1μm、 Nb205粉:平均粒子径0.1μm、Sb203粉:
平均粒子径0.1μm、 Pt粉:平均粒子径0.3μm、ガラス粉:ホウケイ酸
鉛、軟化点689℃、平均粒子径2.4μm、ビヒク
ル:エチルセルロースをターピネオールに溶解したも
の。
【0017】調製された導体組成物を純度96%のアル
ミナ基板に印刷し、ピーク温度120℃のベルト炉で乾
燥し、ピーク温度850℃、ピーク時間9分間でトータ
ル30分間に設定されたベルト炉で焼成し電極を形成し
た。電極膜厚は10±2μmになるようにした。シート
抵抗値100Ω/□の市販のRuO2を主成分とする抵
抗体組成物を、上記のように形成した電極の間を橋渡し
するように印刷し、再び同じ炉で乾燥、焼成した。抵抗
体の膜厚は10±2μmにした。
【0018】上記抵抗器において、抵抗体の幅を0.5
mmとし、長さを0.5、1.0、1.5mmとし、TCR
の形状効果を測定した。TCRの測定は25℃、−55
℃、125℃において抵抗値を測定し、次式によってT
CR値を求めた。
【0019】 (125℃の抵抗値)−(25℃の抵抗値) 106 高温TCR=───────────────────×──── (ppm/℃) 25℃の抵抗値 100
【0020】 (−55℃の抵抗値)−(25℃の抵抗値) 106 低温TCR=───────────────────×──── (ppm/℃) 25℃の抵抗値 −80
【0021】第2表に抵抗器のTCRを示す。比較例
ではCuまたはCuOの添加量によって差はあるもの
の、抵抗のサイズが小さくなるとTCRが正に大きくな
っている。この比較例のAgを1部Nb、Sbの酸化物
に置き換えた本発明例では、小さいサイズ(幅0.5m
m)のTCRが大きいサイズのTCRとほぼ同等の値に
なっている。この結果から幅1.0mmで抵抗組成物の
TCRを調整すれば小さいサイズでも同じ小さい値のT
CRが得られるようになる用途が得られた。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】
【発明の効果】これまで抵抗体が小さくなると新しく小
さいサイズに合わせた抵抗組成物が必要であったが、本
発明の導体組成物を使用することによって1種類の抵抗
組成物で全てのサイズに適用できるようになった。これ
により抵抗組成物を大量に製造することが可能となり、
抵抗組成物の価格、それを使用する抵抗器の価格を大幅
に下げることが可能になった。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Ag粉末45〜85重量%、CuまたはC
    u化合物粉末0.1〜1.5重量%、Nb化合物Sb
    化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物粉末0.0
    1〜1.0重量%及び有機質ビヒクル12.5〜54.
    89重量%を含有することを特徴とする厚膜導体組成
    物。
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