JP2900127B2 - ペンタフルオロエタン・パーフルオロプロパン混合冷媒 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、ペンタフルオロエタン
・パーフルオロプロパン混合冷媒に関し、更に詳しくは
環境試験機、冷凍庫等の−４５〜−５５℃程度の低温を
必要とする機器に好適に用いられる混合冷媒に関する。

【０００２】

【従来の技術・発明が解決しようとする課題】従来、エ
アコン・冷凍機等においては、作動流体としてフロン類
と呼ばれるハロゲン化炭化水素が種々使用されている。
中でもモノクロロジフルオロメタン（ＨＣＦＣ２２）は
家庭用エアコン、ビル用エアコンや大型冷凍機等の作動
流体として、現在幅広く用いられている。

【０００３】一方、−４０〜−６０℃の低温を必要とす
る環境試験機、冷凍庫等の機器に限っ場合には、或いは
標準沸点−４０．８℃のＨＣＦＣ２２が用いられてお
り、さらに標準沸点−４５．６℃のモノクロロジフルオ
ロメタン（以下ＨＣＦＣ２２）、モノクロロペンタフル
オロエタン（以下ＣＦＣ１１５）の重量組成比０．４８
８：０．５１２からなる共沸混合物（以下Ｒ５０２）；
標準沸点−４６．９℃のＨＣＦＣ２２、ＣＦＣ１１５、
プロパンの重量組成比０．４５９：０．４８１：０．０
６１からなる共沸混合物（以下Ｒ５０２Ｐ）；標準沸点
−４６．９℃のＨＣＦＣ２２、ＦＣ２１８のモル組成比
０．６２：０．３８からなる共沸混合物（以下ＴＰ５Ｒ
２）、などの混合冷媒も、単一冷媒では満足し得ない特
性を得る目的で使用されている。

【０００４】しかしながら、近年フロンによる成層圏の
オゾン層破壊が地球規模の環境問題となっており、成層
圏オゾン破壊能力が大であるフロン類（以下、特定フロ
ンと記す）については、すでに国際条約によって使用量
及び生産量の規制がなされ、さらに将来的には特定フロ
ンの使用・生産を廃止しようという動きがある。

【０００５】従って、ＣＦＣ１１５、ＨＣＦＣ２２のよ
うなＯ．Ｄ．Ｐ（トリクロロフルオロメタンの成層圏オ
ゾン破壊能力を１としたときの成層圏オゾン破壊能力を
示すオゾン破壊係数）が０より大きい冷媒は、その使用
が好ましくなく、将来的には使用不可能となる。

【０００６】特に、ＣＦＣ１１５はＯ．Ｄ．Ｐが０．６
と大きく、特に早急な代替が必要とされる冷媒である。
またＨＣＦＣ２２は、オゾン破壊係数が０．０５と微小
であるが、すでに規制対象に追加され、２０３０年に全
廃の見込みである。従って、ＣＦＣ１１５を含むＲ５０
２や、ＨＣＦＣ２２の代替となる、環境問題の生じない
作動流体の早期開発が強く要望されている。

【０００７】かかる実情において、Ｏ．Ｄ．Ｐが０であ
るペンタフルオロエタン（ＨＦＣ１２５）を用いた混合
冷媒が各種開示されている（特開平３−１５２１８２号
公報、特開平５−１１７６４３号公報、特開平５−１１
７６５１号公報等）。これらのうち、例えば特開平３−
１５２１８２号公報には、ＨＣＦＣ２２およびＨＦＣ１
２５から選択される主要成分と、ＨＦＣ１２５およびオ
クタフルオロプロパンから選択される冷媒と、プロパン
を非引火性となる比率で混合した混合物からなる冷凍装
置用非引火性冷媒組成物が開示されている。また、特開
平５−１１７６４３号公報には、ＨＦＣ１２５、５５〜
８５重量％、プロパン１０重量％以下、テトラフルオロ
エタン１５〜４５重量％の少なくとも三種のフロン類を
含む作動流体が開示されている。

【０００８】しかしながら、両者はいずれもＨＣＦＣ２
２の代替を目的とするものであり、その標準沸点もＨＣ
ＦＣ２２と同程度と予測され、Ｒ５０２の場合のような
低温での使用には適さない。また、前者のようにＯ．
Ｄ．Ｐが０でないものを混合する場合が多く、トータル
のＯ．Ｄ．Ｐが０でないものがほとんどである。

【０００９】本発明の目的は、かかる課題を解決すべ
く、Ｏ．Ｄ．Ｐが０であり成層圏オゾン層に及ぼす影響
がないと共に、標準沸点が−４８．５〜−４９．０℃と
低く、Ｒ５０２より冷凍能力が優れ、特に環境試験機に
適する作動流体を提供することにある。

【００１０】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の目
的を達成するため鋭意検討した結果、ペンタフルオロエ
タンとパーフルオロプロパンを混合してなる混合冷媒
が、上記の課題を解決しうること、およびその共沸混合
物が冷媒として優れた効果を有することを見出し、本発
明を完成するに至った。

【００１１】すなわち、本発明の要旨は、 （１）ペンタフルオロエタン（ＨＦＣ１２５）とパーフ
ルオロプロパン（ＦＣ２１８）を混合してなる混合冷媒
であって、混合の比率がモル比（ＨＦＣ１２５／ＦＣ２
１８）で８０／２０〜９０／１０である混合冷媒、並び
に （２）混合の比率がモル比（ＨＦＣ１２５／ＦＣ２１
８）で８４／１６である前記（１）記載の混合冷媒、に
関する。

【００１２】本発明の混合冷媒は、ペンタフルオロエタ
ン（ＨＦＣ１２５）とパーフルオロプロパン（ＦＣ２１
８）を混合してなるものである。ペンタフルオロエタン
は、化学式Ｃ₂ ＨＦ₅ で表される化合物であり、標準沸
点は−４８．５℃であり、それ自身のＯ．Ｄ．Ｐは０で
ある。パーフルオロプロパンは、化学式Ｃ₃ Ｆ₈ で表さ
れる化合物であり、標準沸点は−３９℃であり、それ自
身のＯ．Ｄ．Ｐは０である。従って、両者の混合物であ
る本発明の混合冷媒も、トータルのＯ．Ｄ．Ｐが０とな
る。

【００１３】本発明におけるペンタフルオロエタン（Ｈ
ＦＣ１２５）とパーフルオロプロパン（ＦＣ２１８）の
混合比率は、モル比（ＨＦＣ１２５／ＦＣ２１８）で、
８０／２０〜９０／１０が好ましく、最も好ましくは８
４／１６である。この範囲よりペンタフルオロエタンの
比率が小さいと、共沸とは見なし難くなる傾向があり、
この範囲より比率が大きいと、共沸とは見なし難くなる
傾向がある。

【００１４】本発明においては、混合比率を任意に変化
させることにより、後述の実施例で示すように、−４
８．５〜−４９．０℃の範囲内で任意の標準沸点のガス
を得ることができる（図３参照）。

【００１５】本発明の混合冷媒は、特に上記の混合比率
が８４／１６である場合に、共沸性を有し、単一冷媒と
見なせ、取扱いしやすい理由から、冷凍機等の冷媒とし
てより好ましいものとなる。このような共沸性とみなせ
るＨＦＣ１２５／ＦＣ２１８＝８４／１６（mol/mol ）
の混合冷媒の飽和蒸気圧曲線を図１に示す。図１から明
らかなように、この場合の混合冷媒の標準沸点は、−４
９．０℃である。また、上記の共沸性の混合冷媒の温度
−圧力−比容積の関係を図２に示す。

【００１６】本発明の混合冷媒は、前記の飽和蒸気圧曲
線等から分かるように、蒸発温度−４９．０℃までは、
蒸発圧力を正圧とすることができ、圧縮器の負担を小さ
くすることができる。また、蒸発圧力を正圧とすること
ができるため、ロータリー式圧縮機を用いることが出来
る、さらにレシプロ式圧縮機において蒸発圧力を負圧に
すれば、蒸発温度−５５℃程度も可能となる。

【００１７】本発明の混合冷媒は、後述の実施例が示す
ように、Ｒ５０２より冷凍能力が優れ、特に環境試験機
に適するものである。

【００１８】

【実施例】以下、実施例により本発明をさらに詳しく説
明するが、本発明はこれらの実施例等によりなんら限定
されるものではない。

【００１９】実施例１ ペンタフルオロエタン（ＨＦＣ１２５）とパーフルオロ
プロパン（ＦＣ２１８）の混合比率と標準沸点の関係を
図３に示す。

【００２０】実施例２ ＨＦＣ１２５／ＦＣ２１８＝８４／１６の混合物と、Ｒ
５０２、ＨＣＦＣ２２、ＴＰ５Ｒ２、Ｒ４０４ａの冷凍
能力の比較を図４に示すような装置を用いて下記の方法
で行った。

【００２１】まず、測定用シリンダー及び配管内を真空
ポンプで真空に減圧し、サンプルガスボンベより所定量
ガスをシリンダーに導入した。その時の導入前後のサン
プルガスボンベの重量を秤量し、導入ガス量とした（混
合ガスの場合も同様）。次に、熱媒の温度を変化させ、
その時の温度と圧力を測定した。その結果から、Ｐ−Ｖ
−Ｔの関係を求め、冷凍能力は、そのＰ−Ｖ−Ｔの関係
及び理想気体の定圧比熱を用いて計算した。ここで、理
想気体の定圧比熱は、リハニ・ドライスワミ法により推
定した。その結果を表１に示す。

【００２２】

【表１】

【００２３】表１の結果が示すように、本発明の混合冷
媒は、Ｒ５０２等より高い排除体積当り冷凍能力を有
し、標準沸点もＲ５０２等より低い。また、成績係数も
他の冷媒と同等であり、Ｒ５０２より冷凍能力が優れ、
特に環境試験機に適するものであることが判明した。

【００２４】本発明の態様をさらに挙げれば次のように
なる。即ち、ペンタフルオロエタン（ＨＦＣ１２５）と
パーフルオロプロパン（ＦＣ２１８）を混合してなる混
合冷媒であって、混合の比率がモル比（ＨＦＣ１２５／
ＦＣ２１８）で８０／２０〜９０／１０である混合冷媒
が挙げられる。混合比がこの範囲である混合冷媒も、共
沸性と見なすことができ、本発明の効果が完全共沸混合
物の場合と同様に得られる。

【００２５】

【発明の効果】本発明により、次の効果が得られる。 蒸発温度−４９．０℃までは、蒸発圧力を正圧とする
ことができ、圧縮器の負担を小さくすることができる。 トータルのＯ．Ｄ．Ｐは０である。 あらゆる混合比（ＨＦＣ１２５／ＦＣ２１８）におい
て不燃性である。 Ｒ５０２より冷凍能力が優れ、特に環境試験機に適す
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】図１は、ＨＦＣ１２５／ＦＣ２１８＝８４／１
６（mol/mol ）の混合冷媒の飽和蒸気圧曲線を示すもの
である。

【図２】図２は、ＨＦＣ１２５／ＦＣ２１８＝８４／１
６（mol/mol ）の混合冷媒の温度−圧力−比容積の関係
を示すものである。

【図３】図３は、ペンタフルオロエタン（ＨＦＣ１２
５）とパーフルオロプロパン（ＦＣ２１８）の混合比率
と標準沸点の関係を示すものである。

【図４】図４は、実施例２で用いた試験装置の概略図を
示すものである。

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ペンタフルオロエタン（ＨＦＣ１２５）
   とパーフルオロプロパン（ＦＣ２１８）を混合してなる
   混合冷媒であって、混合の比率がモル比（ＨＦＣ１２５
   ／ＦＣ２１８）で８０／２０〜９０／１０である混合冷
   媒。
2. 【請求項２】 混合の比率がモル比（ＨＦＣ１２５／Ｆ
   Ｃ２１８）で８４／１６である請求項１記載の混合冷
   媒。