JP2898577B2 - シールド掘進機の発進到達用立坑およびシールド掘進機の発進到達方法 - Google Patents

シールド掘進機の発進到達用立坑およびシールド掘進機の発進到達方法

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JP2898577B2 JP18779895A JP18779895A JP2898577B2 JP 2898577 B2 JP2898577 B2 JP 2898577B2 JP 18779895 A JP18779895 A JP 18779895A JP 18779895 A JP18779895 A JP 18779895A JP 2898577 B2 JP2898577 B2 JP 2898577B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、シールド掘進機が発進
あるいは到達する立坑、および、そのような立坑からの
シールド掘進機の発進あるいは到達方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、高深度の立坑からシールド掘進機
を発進させる場合は、図15(A)および図15(B)
に示すように(日経コンストラクション1995.3.
24号第43頁より)、地山の崩落や、出水を防ぐため
に、掘削する前に坑口となる壁体に続く広い範囲にわた
る薬剤注入124、コラムジェット122、凍結処理な
どによって地盤改良を行い地盤を安定化させる。そし
て、シールド掘進機24の発進前に、人手によって坑口
部分120の壁体30のコンクリートを取り除き、鉄筋
を切断する。これは、シールド掘進機による鉄筋の切削
が困難なためである。その後、この鉄筋が取り除かれた
部分から、シールド掘進機を発進させる。シールド掘進
機を立坑に到達させる場合も、同様である。
【0003】上述の従来例に必要な地盤改良は、坑口か
ら続く広い範囲にわたる必要があり、そのための工費と
工期は多大であった。このような地盤改良の効果が不十
分な場合は、立坑の深部における高い土水圧のために、
出水事故や地山の崩落などを招くことがあり、安全上も
問題が多かった。特に、立坑壁体の発進坑口部の鉄筋除
去は人手によるため、このような問題が起こると人命に
も関わる危険性が高かった。
【0004】そのため、シールド掘進機の発進あるいは
到達において、地盤改良と人手による鉄筋の除去とを不
必要とする立坑、およびそのような立坑を利用した工法
が提案されている。そのような立坑の一つのタイプは、
立坑壁体の坑口となる部分を無筋とし、無筋部の補強を
その外部に設けた構造によって行っているものである。
このような提案の例は、特開平4-16695,特開平5-34609
3,特開平6-33688,特開平6-73977,特開平6-280471な
どに見られる。
【0005】しかしながら、このようなタイプの立坑で
は、その構造が大がかりとなり、そのためにコスト上昇
と、工期の長期化を招くという問題があった。
【0006】このような問題を解決するために提案され
たもう一つのタイプ立坑は、立坑壁体の坑口となる部分
をやはり無筋部とし、その部分の内部に配設した線材に
よって無筋部にプレストレスをかけることによって、無
筋部に十分な強度を持たせている。そして、シールド掘
進機の発進前にシールド掘進機のシールド内の圧力と土
水圧とを平衡させ、その状態で無筋部内のこの線材を抜
き去り、ストレス付与部材が除去された無筋部を掘削し
ながらシールド掘進機が発進するようにしたものであ
る。このような提案の例は、特開平6-2484,特開平6-33
687,特開平6-42289,特開平6-193380,特公平6-84713
などに見られる。これらによっても、やはり地盤改良と
人手による鉄筋の除去とを不必要とすることができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで、立坑壁体の
シールド掘進機の坑口となる部分に設けた無筋部に線材
を挿通し、その線材によって無筋部にプレストレスをか
けることによって、無筋部の強度を増すタイプの上述の
立坑、例えば、特開平6-2484,特開平6-33687,特開平6
-42289,特開平6-193380,特公平6-84713には、以下に
示すような問題があった。
【0008】すなわち、特開平6-2484および特開平6-42
289に開示された発明では、ストレス付与部材を地表か
ら無筋部の下部の深度までにわたって設置する必要があ
り、大がかりとなる。また、このストレス付与部材は壁
体が地表から無筋部の下部の深度まで完成してからでな
いと無筋部にストレスを付与することができないため、
壁体が完成するまでの間に、無筋部が耐えられる以上の
力が加わると、無筋部が破壊される恐れがある。さら
に、ストレス付与部材を固定するために、その両端に特
別の係止部を設ける必要もある。
【0009】また、特公平6-84713,特開平6-33687,特
開平6-193380に開示された発明においても、ストレス付
与部材を固定するために、その両端に特別の係止部を設
ける必要がある。さらに、ストレス付与部材の着脱のた
めの作業スペースが坑内に必要となるため、立坑が大型
化してしまうという問題もある。
【0010】さらに、特公平6-84713および特開平6-193
380では、ストレス付与部材を緊張させると、ストレス
付与部材が無筋部に対して立坑外部からの土水圧と同様
な方向の力を及ぼす恐れがあり、必ずしも無筋部の補強
としての役割を果たさない。
【0011】本発明は、上記のような問題点に鑑みてな
されたものであって、その目的は、シールド掘進機の発
進到達時には掘削可能な坑口となるように壁体に設けら
れた無筋部を補強するストレス付与部材の係止部とし
て、壁体構築時の沈設の際に特に有用な中空管が利用さ
れるため、特別な構造を付加する必要がない立坑、およ
び、そのような立坑からのシールド掘進機の発進あるい
は到達方法を提供することにある。
【0012】また、本発明の他の目的は、シールド掘進
機の発進あるいは到達にあたって、坑口の壁体に設けら
れた無筋部を補強するストレス付与部材を除去する必要
のない立坑、および、そのような立坑からのシールド掘
進機の発進あるいは到達方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段および作用】請求項1の発
明は、シールド掘進機の発進地点用あるいは到達地点用
の立坑において、前記立坑の壁体の一部として設けら
れ、前記シールド掘進機が発進時あるいは到達時に掘削
する無筋部と、前記無筋部の両側の前記壁体内に配置さ
れ、外部と連通する少なくとも一対の中空管と、前記一
対の中空管の相互間の前記無筋部に配設され、前記中空
管で各端部が固定されることによって張架された、複数
のストレス付与部材とを含んで構成されることを特徴と
している。
【0014】請求項1の発明によれば、立坑の壁体を構
成するケーソン躯体の沈設等において有用な中空部をケ
ーソン躯体に形成する中空管を用いてストレス付与部材
が固定され、ストレス付与部材の固定のために壁体の形
状を変更する必要がない。
【0015】また、中空管はストレス付与部材に緊張を
与えるための固定部材としても機能するため、固定部材
を省略することができる。
【0016】さらに、中空管の中空部は、シールド掘進
機が無筋部を掘削する直前に無筋部からストレス付与部
材を抜き去るために利用できる。
【0017】請求項2の発明は、請求項1に記載の立坑
において、前記ストレス付与部材は、前記無筋部の厚さ
方向にて前記立坑の内方に変位した位置に張架されてい
ることを特徴としている。
【0018】請求項2の発明によれば、土水圧などの外
力による無筋部に対する曲げモーメントによる歪みが無
筋部の立坑外部側より大きい立坑内部側にストレス付与
部材が配設されているため、無筋部は土水圧などの外力
による無筋部に対する曲げモーメントに対してさらに効
果的に対抗することができる。
【0019】請求項3の発明は、請求項2に記載の立坑
において、前記一対の中空管の相互間の前記無筋部を含
む前記壁体が、立坑外方に向けて凸となる曲率を有する
横断面形状であり、前記ストレス付与部材は、前記一対
の中空管の相互間にてほぼ直線的に張架されていること
を特徴としている。
【0020】請求項3の発明によれば、立坑の水平断面
は円状、楕円状等の形状を持っており、ストレス付与部
材が主に無筋部の立坑内部側にほぼ直線的に挿通されて
いるため、無筋部は立坑施工時の偏圧や土水圧などの外
力による無筋部に対する曲げモーメントに対して、効果
的に対抗することができる。
【0021】請求項4の発明は、請求項3に記載の立坑
において、前記無筋部の立坑内部側は、前記シールド掘
進機が掘削を開始する面が平面となるように、他の領域
の壁体よりも厚肉であることを特徴としている。
【0022】請求項4の発明によれば、立坑の水平断面
は円状、楕円状等の形状を持っており、シールド掘進機
が発進する無筋部の立坑内部側の表面は平面となるよう
に内側に近いほど肉厚となり、主にこの肉厚部にストレ
ス付与部材がほぼ直線的に挿通されている。したがっ
て、無筋部は立坑施工時の偏圧や土水圧などの外力によ
る無筋部に対する曲げモーメントに対して、効果的に対
抗することができる。また、シールド掘進機の掘削開始
時の掘削面が平面となるため、シールド掘進機が進行方
向のぶれ等を起こすことなく確実に発進することができ
る。
【0023】請求項5の発明は請求項2に記載の立坑に
おいて、前記ストレス付与部材は、立坑内方に向かって
凸となる曲率を有するように湾曲して張架されているこ
とを特徴とする。
【0024】請求項5の発明によれば、ストレス付与部
材に与えている張力の分力として、無筋部に対する外力
と対抗する成分が生ずるため、無筋部は立坑施工時の偏
圧や土水圧などの外力に対してさらに効果的に対抗する
ことができる。さらに、コンクリート材料は、圧縮モー
メントよりも引張モーメントに対して弱い性質を持つ
が、その引張モーメントが土水圧によって発生する無筋
部端部の立坑内方側に近い位置にストレス付与部材が位
置して圧縮モーメントを加えるため、効果的に無筋部の
強度を高めることができる。
【0025】請求項6の発明は、請求項1ないし5に記
載のいずれかの立坑において、前記一対の中空管の中空
部に通ずる作業用ゲートを前記壁体の立坑内部側に設け
たことを特徴としている。
【0026】請求項6の発明によれば、無筋部の中空部
に通ずる作業用ゲートを立坑壁体の立坑内部側に設けて
あるため、ストレス付与部材を着脱する作業者が中空部
の無筋部付近に到達するために、中空管の中空部の長い
距離を移動する必要がない。
【0027】請求項7の発明は、請求項6に記載の立坑
において、前記壁体の内面から立坑内部側に突出する補
強用の突出部を前記無筋部付近に設け、この突出部上部
の壁体に前記作業用ゲートを設けたことを特徴としてい
る。
【0028】請求項7の発明によれば、無筋部付近で立
坑壁体の内面から立坑内部側に突出する突出部が設けら
れているため、無筋部付近の壁体が補強されるととも
に、この突出部を作業用ゲートに入る足場としても利用
することができる。
【0029】請求項8の発明は、請求項1ないし7に記
載のいずれかの立坑において、前記中空管が、前記無筋
部にも配置され、少なくともこの部分は前記シールド掘
進機によって切削可能な材料により形成され、その内部
には低強度の充填材が充填されていることを特徴として
いる。
【0030】請求項8の発明によれば、無筋部に配置さ
れた中空管がシールド掘進機によって切削可能であるた
め、シールド掘進機が無筋部を掘削するのに先立って無
筋部の中空管を除去する必要がない。
【0031】請求項9の発明は、請求項1ないし8に記
載のいずれかの立坑において、前記中空管が前記壁体内
に周方向に一定間隔を置いて配置され、鉛直方向に連通
していることを特徴としている。
【0032】請求項9の発明によれば、鉛直方向に中空
部を持つ中空管が壁体内で周方向に一定間隔を置いて配
置されているため、立坑を形成するための壁体を構成す
るケーソン躯体の沈設を容易に、しかも、バランスの取
れた状態で行うことができる。
【0033】請求項10の発明は、請求項1ないし9に
記載のいずれかの立坑において、前記ストレス付与部材
が、前記シールド掘進機によって切削可能な材料により
形成されていることを特徴としている。
【0034】請求項10の発明によれば、無筋部に挿通
されたストレス付与部材がシールド掘進機によって切削
可能であるため、シールド掘進機が無筋部を掘削するの
に先立ってストレス付与部材を除去することなくシール
ド掘進機を発進させることができる。
【0035】請求項11の発明は、シールド掘進機の発
進地点あるいは到達地点を立坑の内部とするシールド掘
進機の発進あるいは到達方法において、前記立坑の壁体
の一部として設けられた無筋部と、前記無筋部の両側の
前記壁体内に配置され外部と連通する少なくとも一対の
中空管と、前記一対の中空管の相互間の前記無筋部に配
設され前記中空管で各端部が固定されることによって張
架された複数のストレス付与部材とを有する立坑壁体を
構築する工程と、前記立坑壁体を沈設する工程とを、含
むことを特徴としている。
【0036】請求項11の発明によれば、壁体を構成す
るケーソン躯体の沈設等において有用な中空部を壁体に
形成する中空管を用いてストレス付与部材が固定される
ため、壁体の形状の変更や特別な取付部材の設置なしで
ストレス付与部材を固定することができる。
【0037】請求項12の発明は、請求項11に記載の
シールド掘進機の発進地点あるいは到達地点を立坑の内
部とするシールド掘進機の発進あるいは到達方法におい
て、前記中空管内の中空部を利用して、前記ストレス付
与部材を除去するストレス付与部材除去工程を、更に含
むことを特徴としている。
【0038】請求項12の発明によれば、ストレス付与
部材を、シールド掘進機が無筋部を掘削する直前に中空
管の中空部を利用して抜き去り、シールド掘進機による
掘削を容易に行うことができる。
【0039】請求項13の発明は、請求項12に記載の
シールド掘進機の発進あるいは到達方法において、前記
ストレス付与部材除去工程は、前記壁体の立坑内部側に
設けられ、前記無筋部付近の前記中空管の中空部に通ず
る作業用ゲートを利用することを特徴としている。
【0040】請求項13の発明によれば、ストレス付与
部材の除去は、例えば、作業者が中空管の中空部に通ず
る作業用ゲートから中空部に入り行えるため、ストレス
付与部材を除去する作業者が中空部の無筋部付近に到達
するために、中空管の中空部の長い距離を移動する必要
がない。
【0041】請求項14の発明は、請求項11に記載の
シールド掘進機の発進あるいは到達方法において、シー
ルド掘進機によって切削可能な材料によって形成された
前記ストレス付与部材が挿通された前記無筋部をシール
ド掘進機が掘削する工程を更に含むことを特徴としてい
る。
【0042】請求項14の発明によれば、ストレス付与
部材はシールド掘進機によって切削可能な材料によって
形成されているため、ストレス付与部材を除去すること
なくシールド掘進機が無筋部を掘削できる。
【0043】
【実施例】
〔実施例1〕以下、本発明の好適な実施例について、図
面を参照しながら詳細に説明する。
【0044】図1は、本発明の実施例1に係る円形の水
平断面を持つ立坑10の構造を示す水平端面図である。
図2は図1のA−Aにおける縦断面図である。
【0045】この立坑10は、シールド掘進機24を発
進または到達させるもので、内径は数10m程度まで、
深さは場合により異なるが100m程度までであるのが
一般的である。本実施例では、立坑10の水平断面は円
形形状であるが、これに限らず、楕円形、矩形、多角形
などであってもよい。なお、水平断面の形状が円形であ
る場合は均一な外圧が立坑10にかかる場合、曲げモー
メントは生ぜず、負荷のほとんどが軸力のみとして作用
するという利点がある。
【0046】立坑10は壁体30と、底盤40と、底盤
基礎部42とを含んで構成される。また、シールド掘進
機24は、発進の際には立坑10内部に、到達の際には
立坑10外部直近に、位置する。なお、本実施例では、
シールド掘進機24による掘削坑を既存構造物28まで
連続させるために、壁体30と既存構造物28とに接し
てそれぞれジェットグラウト工18が施され、それらの
間を結ぶように接続部土留壁20が設けられ、接続部土
留壁20の内側および既存構造物28の立坑10側に沿
って覆工処理38が施される。
【0047】本実施例の立坑10の壁体30内には、鉛
直方向に延びる中空部16を形成する中空管14が、周
方向に一定間隔をおいて配置されている。本実施例で
は、中空管の内径を1m〜1.5m程度としている。こ
の中空管14は、後述するように、立坑10壁体30の
構成ブロックであるケーソン躯体78,80(図5参
照)を用いて立坑10を構築する際に有用である。
【0048】また、壁体30のシールド掘進機24の発
進あるいは到達に対応する部分には、シールド掘進機2
4の断面形状たとえば円形に対応した形状の無筋部12
すなわち鉄筋を含まないコンクリート部分が設けられて
いる。なお、無筋部12のコンクリートに用いられる骨
材は、シールド掘進機24のビット消耗の少ない材料た
とえば石灰石などが望ましい。
【0049】この無筋部12は、図1に示すように、他
の領域の壁体30よりも厚肉とし、その内部側を平面と
して、シールド掘進機24が掘削を開始する掘削面が平
面となるようになっているため、シールド掘進機24は
進行方向のぶれ等を起こすことなく確実に発進すること
ができる。また、ストレス付与部材32は、この厚肉部
の立坑10内部側にほぼ直線的に張架されているため、
その張力には土水圧と同方向の分力成分を持つことがな
く、また、土水圧などの外力による無筋部12に対する
曲げモーメントによる歪みが無筋部の壁体外部側より大
きくなる壁体内部側に張架されているため、無筋部12
は土水圧や立坑施工時の偏圧などの外力に対して効果的
に対抗することができる。
【0050】前述の中空管14,15は、図1および図
5に示したように、壁体30の一部を成す無筋部12に
も設けられている。この無筋部の中空管15は、少なく
とも無筋部12の領域において、シールド掘進機24に
よって切削可能な材料、例えばアクリルあるいは樹脂に
よって形成されているため、シールド掘進機24は、こ
の中空管15を除去することなくそのまま無筋部12を
掘削して発進あるいは到達することができる。なお、無
筋部12の中空管15はシールド掘進機24によって掘
削される前に低強度の充填材で満たされる。
【0051】前述のように中空管15をシールド掘進機
24で切削可能な材料で形成する代わりに、無筋部の形
成時に中空部16を形成するための型枠材を入れてお
き、その後その型枠材を除去するようにしても、シール
ド掘進機24が無筋部12をそのまま掘削して発進ある
いは到達するようにできる。
【0052】このように、中空管14,15を無筋部1
2にも設けることによって、中空管14,15の中空部
16が立坑10壁体30の全周にわたって均一間隔で配
置できるため、後述するように、立坑10の構築におい
て立坑10壁体30の構成ブロックであるケーソン躯体
78の沈設をバランスのとれた状態で容易に行うことが
できる。
【0053】無筋部12には、この部分にストレスを付
与するためのストレス付与部材32が中空管14と交差
する方向に挿通されている。ストレス付与部材32に
は、ストレスを付与するために十分な強度を持つ線材、
例えばPC鋼線、FRP、炭素繊維などを用いる。スト
レス付与部材32の各端部は、図3(a)に示すよう
に、センターホールジャッキ60および定着具62を用
いて、無筋部12両側の中空管14に固定されている。
ストレス付与部材32は、図3(b)に部分拡大図とし
て示したシース管64内を通してあり、場合によっては
アンボンド工法を用いることもできる。このように、ス
トレス付与部材32が、立坑10の構築等において有用
な中空部16を壁体30に形成する中空管14を用いて
固定されるため、ストレス付与部材32の固定のために
特別な取付部を設けることなくストレス付与部材32を
固定することできる。
【0054】ストレス付与部材32によって、無筋部1
2の強度が補強され、土水圧による静圧だけでなく、ケ
ーソン沈設時の傾きなどに起因する動圧、工事に関連し
た爆破などのためによる動圧にも無筋部12が耐えるこ
とが可能となる。
【0055】また、ストレス付与部材32はシールド掘
進機24が無筋部12を掘削する直前に、無筋部12の
両脇の中空管14の中空部16に作業者が入って、ある
いは、中空部16に配置したセンターホールジャッキ6
0等を遠隔操作することによって、除去することができ
る。このように、中空管14の中空部16は、シールド
掘進機24が無筋部12を掘削する直前に無筋部12か
らストレス付与部材32を除去するためにも有用であ
る。
【0056】この作業をするために、作業者は、中空管
14の上部開口から中空部16に入っても良いが、上部
の開口から、立坑10の底盤40に近い位置にある無筋
部12付近までの距離は、特に高深度の立坑10では非
常に長いため、作業性が悪く、危険も伴う。そこで、無
筋部12両脇の中空管14の中空部16に通ずる作業用
ゲート70を無筋部12付近の壁体30の立坑10内部
側に設けても良い。図4は、図2のB−Bにおける模式
的な水平端面図であり、そのような作業用ゲート70の
一例を示すものである。これによって、ストレス付与部
材32を着脱する作業者が中空部16の無筋部12付近
に到達するために、中空管14の中空部16の長い距離
を移動することなく、無筋部12付近に到達することが
できる。
【0057】また、壁体30の全周から立坑10内部に
向ってリング状に突出する突出部44を、壁体30を補
強するために設けてもよい。なお、前述の作業用ゲート
70がこの突出部44の付近の上方に位置するようにす
ると、作業者が作業用ゲート70に出入りする場合の足
場としても利用できる。これによって、無筋部12を含
む壁体30が補強されるとともに、この突出部44を作
業用ゲート70に入る足場としても利用することができ
る。
【0058】なお、ストレス付与部材32にシールド掘
進機24で切削可能な材料、例えば、FRP、炭素繊維
を用いた場合には、ストレス付与部材32を除去するこ
となく、シールド掘進機24が無筋部12を掘削し、発
進あるいは到達することができる。この場合には、シー
ス管64にもシールド掘進機24によって切削可能な材
料を用いる。
【0059】シールド掘進機24の発進用立坑10の場
合には、シールド掘進機24の発進時にシールド掘進機
24に反力を与える反力受け22が、無筋部12と反対
側の壁体30に設けられている。
【0060】次に、本実施例の立坑10からシールド掘
進機24を発進させる場合の大まかな手順は、まず、図
1および図2に示す坑口コンクリート34にエントラン
スパッキン(図示せず)を取り付け、そのエントランス
パッキンに密着して貫通するシールド掘進機24を、反
力受け22に支えられたシールドジャッキによって無筋
部12に圧接し、シールドチャンバー内の水圧を立坑1
0外部からの土水圧と平衡するように調節する。次い
で、無筋部12からストレス付与部材32を前述したよ
うにして除去し、シールド掘進機24の掘進を開始する
というものである。
【0061】このように、この立坑10を利用したシー
ルド掘進機24の発進あるいは到達においては、作業員
によって立坑10壁体30の坑口部120の鉄筋を取り
除くことなくシールド掘進機24が発進あるいは到達で
きるため、坑口から続く地盤改良のための地盤に対する
特別の処理が不要で、しかも、出水事故や地山100の
崩落などの危険性なく安全にシールド掘進機24を発進
あるいは到達させることができ、コストの削減および納
期の短縮を図ることができる。
【0062】ここで、本実施例の立坑10の構築につい
て図5〜図10を参照しながら説明する。
【0063】本実施例の立坑10は、地盤に掘削形成し
た溝孔86内に複数のケーソン躯体78,80を沈設
し、上下方向に連結して、大口径の壁体30を形成し、
その後、底盤基礎部42や底盤40などを形成して構築
される。
【0064】ケーソン躯体78,80の各ブロックは、
無筋部を有するブロックの斜視図として図5に模式的に
示すように、円筒形状の鉄筋コンクリート製で、鉛直方
向に連通する中空管14が全周にわたり均一な間隔で埋
め込まれている。この中空管14の中空率は、ケーソン
躯体78,80の体積に対し20〜40%程度となるよ
うに設定され、ケーソン躯体78,80の沈下時に用い
る泥土88と比重バランスをとり得るように、ケーソン
躯体78,80全体としての比重が1.5以上になるよ
うにされている。なお、この中空管14の上下端部に
は、中空管14同士を連結するための雄雌嵌合部(図示
せず)が形成されている。
【0065】また、図5に示されている無筋部12はシ
ールド掘進機24の発進坑口あるいは到達坑口となる部
分で、シールド掘進機24の発進または到達する深度の
ケーソン躯体78にのみ設けられている。したがって、
他の深度に用いられるケーソン躯体80は、一様に鉄筋
が入った鉄筋コンクリート製となっている。
【0066】立坑10の構築はこのようなケーソン躯体
78,80を用いて、以下のように行われる。
【0067】まず、図9に示すように、ケーソン躯体7
8,80の沈設用の多数の溝孔86を掘削形成する。こ
の場合、溝孔86の掘削に先立って、その外側に鋼矢板
82を打設し、防護縁切壁を形成するようにしている。
【0068】溝孔86は、トレンチ掘削により形成され
るもので、図9に示すように、連続する3つの掘削部1
02a,102b,102cを1つのエレメントとして
形成され、各溝孔86がエレメント単位で平面的に不連
続に形成されるようになっている。したがって、一周を
不連続部なしに掘削する場合に比べ掘削回数が少なくな
り、工期の短縮が可能となる。なお、この不連続部分の
地山100は、隣接する溝孔86内の水圧差によって容
易に崩壊しない程度の厚さに設定されている。
【0069】各溝孔86の幅は、ケーソン躯体78,8
0の厚さよりやや大きめに設定され、各溝孔86の深さ
はケーソン躯体78,80の所定の設置深さまで掘削形
成される。例えば、溝孔86の掘削深さは、40〜10
0m程度に設定される。このように、予め溝孔86をケ
ーソン躯体78,80の所定の設置深さまで掘削してお
くことによって、ケーソン躯体78,80沈設時におけ
るケーソン刃口84下の掘削を行なうことなくケーソン
躯体78,80の沈設が可能となる。
【0070】溝孔86の掘削後、各溝孔86中の掘削泥
水90を泥土88に置換する。この泥土88は、比重が
少なくとも1.3以上のものとされている。このよう
に、比重1.3以上の泥土88に置換することにより、
ケーソン躯体78,80の沈設を安定して行なえるよう
にしている。また、この泥土88の比重は、沈設しよう
とするケーソン躯体78,80の比重との関係を考慮し
て適宜決定されることとなる。
【0071】また、溝孔86と鋼矢板82との間には、
所定のオープンケーソン設置深さより深い地盤にアース
アンカー50を定着させ、このアースアンカー50と連
結されたアンカー鋼棒48を油圧ジャッキ54を介して
ケーソン刃口84に接続し、ケーソン刃口84に押圧力
を作用させるようにしている。したがって、ケーソン刃
口84に十分な圧入力を付与することが可能となる。
【0072】次に、図6に示すように、溝孔86上に設
置したケーソン刃口84を油圧ジャッキ54により押圧
して、溝孔86内に圧入し、このケーソン刃口84上に
1ロット分ずつケーソン躯体78,80を連結して沈設
させる。また、ケーソン躯体78,80の圧入時には、
図10に示したように中空管14内を鉛直方向に連通す
る排泥管110下端より泥土88を排出させながら、ケ
ーソン躯体78,80が溝孔86内で水中に浮かぶよう
な状態にして沈設させて行く。この場合、必要に応じ、
排泥管110に設けた浮力調整用のバルブ112を開閉
して、ケーソン躯体78,80の中空管14内に泥土8
8を充填し、浮力調整やバランスを取りながら好適な状
態で沈下させるようにしている。また、前記中空管14
内に水荷重やコンクリートを充填しながらバランスを取
ることも可能である。
【0073】さらに、溝孔86間に残された不連続部分
の地山100は、ケーソン躯体78,80の自重により
ケーソン刃口84が切り崩していくことができ、しかも
この不連続部分の地山100が刃口支持力として有効に
作用することとなる。また、不連続部分の地山100の
間隔が大きく、ケーソン躯体78,80の自重で切り崩
しできない場合には、ケーソン躯体78,80の中空管
14内に配した噴射管114により高圧力水を噴射させ
て不連続部分の地山100を掘削しつつ沈下させること
ができる。
【0074】このように、中空管14およびその中空部
16は前述したようにストレス付与部材32の固定およ
び除去に有用であるとともに、ケーソン躯体78,80
の沈設においても重要な役割を果たしている。さらに、
鉛直方向に中空部16を持つ中空管14がケーソン躯体
78,80内で周方向に一定間隔を置いて配置されてい
るため、立坑10を形成するケーソン躯体78,80の
沈設を容易に、しかも、バランスの取れた状態で行うこ
とができる。
【0075】次に、ケーソン躯体78,80に囲まれた
地山100上に泥水90を供給して、ケーソン躯体7
8,80に囲まれた地山100を水中掘削する。この場
合、ケーソン刃口84の沈設が、ケーソン躯体78,8
0で囲まれた空間の地山100の掘削に先行するため、
水中掘削時に、ケーソン刃口84の下部の余堀をする必
要がなく、掘削が容易となり、工期の短縮に寄与し得る
こととなる。そして、ケーソン躯体78,80の構築
と、1ロット分のケーソン躯体78,80の沈設と、ケ
ーソン躯体78,80で囲まれた空間の地山100の水
中掘削とを繰り返して、図7で示すケーソン躯体78,
80の所定の設置深さまでケーソン躯体78,80を沈
設し、かつその空間の地山100を水中掘削する。
【0076】ついで、図7に示すように、泥水90を張
った状態で、底部の床ならしを行い、かつ底部に鉄筋を
組み立てて、水中コンクリートを打設し、底盤基礎部4
2を形成する。この場合、ケーソン刃口84には予めジ
ベル筋116が取付けてあるため、底盤基礎部42とケ
ーソン刃口84とは確実に一体化されることとなる。さ
らに、ケーソン躯体78,80の周りには裏込め材96
を充填してシール処理をしておく。
【0077】そして、図8に示すように、泥水90の排
水処理を行った後、水中で形成した底盤基礎部42上に
地中で鉄筋を組立て、コンクリートを打設して底盤40
を形成する。その後、油圧ジャッキ54その他の機材を
撤去し鋼矢板82を引き抜き、さらにはケーソン躯体7
8,80の無筋部12両脇に通ずる中空管14以外の中
空管14内にコンクリートを充填して固化させれば立坑
10が完成することとなる。なお、立坑10底盤40下
からの揚圧力が大きい場合には、底盤基礎部42、底盤
40等を重量コンクリートで形成して、全体重量を増加
させて揚圧力に対抗させることも可能である。
【0078】なお、本実施例においては、ケーソン躯体
78,80で囲まれた空間の地山100を泥水掘削する
ようにしているが、この例に限らず、地下水等の影響の
おそれがない場合には気中掘削にすることも可能である
し、地下水等の影響を避けるために、十分な根入れを行
って気中掘削を行うことも可能である。
【0079】また、本実施例では、溝孔86を平面的に
不連続に形成したが、地盤その他の状況によっては、連
続的に形成してもよい。
【0080】ところで、上述のような立坑10の構築に
おいて、壁体30の構成ブロックであるケーソン躯体7
8,80は、深度によって直線的に増加する静圧に加え
て、沈設時のケーソン躯体78,80の沈設に抗する摩
擦や抵抗に起因する動圧、工事に関連した爆破などのた
めによる動圧などが上乗せされた圧力に耐える必要があ
る。このような圧力に耐えるために、例えば、ケーソン
躯体78を沈設する場合、土水圧による静圧には無筋部
12のみで耐えられる強度とし、予想される動圧には無
筋部12に配設したストレス付与部材32が無筋部に加
えるストレスによって増加する強度によって耐え得るよ
うにすることによって、無筋部12が動圧と静圧の和に
耐えるようにすることもできる。これによって、主に静
圧のみが作用する状態となるケーソン躯体78,80の
設置後に、万一他の補強無しで、ストレス付与部材32
のストレスが無筋部12に付与されない状態となった場
合でも、無筋部12は土水圧による静圧にはそれ自体の
強度によって耐えることができる。
【0081】以下に、本実施例の立坑10の壁体30
を、下記および図11(A),(B)に示すような一般
的な条件で構築した場合に、壁体30に加わる静圧によ
り発生する応力の計算例を示す。この計算例では、両端
固定円盤モデルと周辺単純支持モデルのそれぞれのモデ
ルで、作用モーメントを算出し、大きな値となるいずれ
かのモデルから得られた作用モーメントに基づいて、最
大応力を算出し、無筋部12コンクリートの許容応力と
の比較を行った。
【0082】(1) シールド掘進機24の中心位置の
作用土水圧P0は、 P0 = Pw + Pa ただし、 Pw: 水圧 Pa: 主働土圧 水圧Pwは、水位が地表レベル(GL)より1m低いた
め、 Pw = (14 − 1) tf/m2 主働土圧Paは、シールド掘進機24のの中心位置が地
表から14mであるので、 Pa = (q + γH0 + γww) × tan2(45゜ − φ/2) ただし、 q: 上載荷重 1.0 tf/m2 γ: 土の単位体積重量 1.9 tf/m3 γw:土の水中単位体積重量 0.9 tf/m30:地表面から地下水面までの深さ 1.0 m Hw:地下水面からの深さ 13.0 m φ: 土の内部摩擦角 35° したがって、シールド掘進機24の中心位置における作
用土水圧P0は、 P0 = Pw + Pa = 13.0 + (1 + 1.9×1.0 + 0.9×13.0) tan2(45°− 35°/2) = 16.96 tf/m2 (2) 無筋部12に作用する軸力は単位深さあたり、 N = P0D/2 = 16.96 × 19/2 = 161.12 tf/単位深さ ただし、 D: 立坑直径 19m (3) 次に、両端固定条件における作用モーメント
は、 Mr = P02[(1 + ν) − (3 + ν)(r/a)2]/16 ただし、 ν: コンクリートのポアソン比 0.2 r: 坑口の中心からの距離 a: 坑口半径 8.5/2 = 4.25 m したがって、端部におけるモーメントMraは、 Mra = 16.96×4.252[(1 + 0.2) − (3 + 0.2)(3.4/3.4)2]/16 = 38.292 tf・m 中央部におけるモーメントMr0は、 Mr0 = 16.96×4.252[(1 + 0.2) − (3 + 0.2)(0/3.4)2]/16 = 22.976 tf・m (4) また、周辺単純支持条件における中央部のモー
メントは、 Mr = (3 + ν)P02[(1 − (r/a)2]/16 = 3.2×16.96×4.252[(1 − (0/4.25)2]/16 = 61.268 tf・m となり、モーメントとしては、この値が最大値となるこ
とがわかる。
【0083】(5) したがって、無筋部12における
最大圧縮応力σcは、 σc = N/A ± M/Zc = 161.12/1.5 ± 61.268/0.375 = 270.8 または 56.0 tf/m2 = 27.1 または 5.60 kgf/cm2 ただし A: 円板断面積 1 × 1.5 = 1.5 m2 (円板厚さ: 1.5 m) Zc:円板断面係数 1.0×1.52/6 = 0.375 m3 すなわち、無筋部12における最大圧縮応力σcは、 σc = 27.1 kgf/cm2 であり、これは無筋コンクリートの許容圧縮応力である 70 kgf/cm2 の範囲内である。
【0084】また、無筋部12における最大引張応力σ
tは、 σt = 5.60 kgf/cm2 であり、これは無筋コンクリートの許容引張応力である 7.5 kgf/cm2 の範囲内である。
【0085】図12は、いくつかの土水圧において、同
様にして求めたシールド外径と応力との関係を示したも
のである。また、図13は、図12の算出に用いた立坑
のデータを各シールド外径に対応させて示したものであ
る。
【0086】本実施例では、無筋部12コンクリートに
ストレス付与部材32によって圧力を加えて、無筋部1
2に加わる応力を、引張応力から圧縮応力側にシフトさ
せている。これは、図12および上記の計算例からも明
らかなように、一般的にコンクリートの圧縮許容応力が
引張許容応力に比べて数倍大きいことを考えると、コン
クリートの、特に無筋部12の強度の増加に有効である
ことがわかる。
【0087】〔実施例2〕本発明の実施例2の立坑10
の、シールド掘進機24が発進あるいは到達する部分付
近の、模式的な水平端面図および縦断面図を図14
(A)および図14(B)に示す。実施例2は立坑10
の水平断面の形状が矩形であることが実施例1とは異な
る。それ以外の点については実施例1と同様であるの
で、説明を省略する。また、図14(A)および図14
(B)において、実施例1と対応する部分については同
一の番号を付してある。
【0088】立坑10の水平断面が矩形形状である場合
は、土水圧等に偏圧が存在しない場合でも壁体30に曲
げモーメントが発生するため、壁体30の曲げ応力に対
する強度は深度等が同一条件であれば実施例1の場合よ
り大きな強度が必要となる。しかし、都市部などにおけ
る掘削のように立坑10の地表面積が制限される場合
は、シールド掘進機24の水平断面が矩形形状であるこ
ともあって、立坑10の水平断面が矩形である方が有利
な場合がある。
【0089】また、ストレス付与部材32は、中空管1
5を避けるように、立坑10内側方向に向けて凸となる
ように無筋部12内に張架されている。これによって、
ストレス付与部材32に与えられた張力が土水圧などの
外力に対抗する方向の分力を持つため、効果的に無筋部
12の補強を行うことができる。さらに、コンクリート
材料は、圧縮モーメントよりも引張モーメントに対して
弱い性質を持つが、その引張モーメントが土水圧によっ
て発生する無筋部12端部の立坑10内方側に近い位置
にストレス付与部材32が位置して圧縮モーメントを加
えるため、効果的に無筋部12の強度を高めることがで
きる。
【0090】なお、本発明は前述した各実施例に限定さ
れるものではなく、本発明の要旨の範囲内または特許請
求の範囲の均等範囲内で各種の変形実施が可能である。
【0091】例えば、上述した各実施例では、中空管1
4が立坑10の水平断面の周上に均等間隔をおいて配置
される例を示したが、中空管14は無筋部12の両脇に
一対あるのみでもよい。
【0092】また、上述した各実施例においては壁体3
0の全周から立坑10内部に向ってリング状に突出する
突出部44を設けたが、壁体30が突出部44なしで十
分な強度を持つのであれば、突出部44はなくてもよ
い。
【0093】
【発明の効果】請求項1の発明にあっては、立坑の壁体
を構成するケーソン躯体の沈設等において有用な中空部
をケーソン躯体に形成する中空管を用いてストレス付与
部材が固定され、ストレス付与部材の固定のために壁体
の形状を変更する必要がないという効果がある。
【0094】また、中空管はストレス付与部材に緊張を
与えるための固定部材としても機能するため、固定部材
を省略することができるという効果もある。
【0095】さらに、シールド掘進機が無筋部を掘削す
る直前に無筋部からストレス付与部材を除去する場合に
も中空管の中空部が利用できるという効果もある。
【0096】請求項2の発明にあっては、土水圧などの
外力による無筋部に対する曲げモーメントによる歪みが
無筋部の立坑外部側より大きい立坑内部側にストレス付
与部材が配設されているため、無筋部が土水圧などの外
力による無筋部に対する曲げモーメントに対してさらに
効果的に対抗することができるという効果がある。
【0097】請求項3の発明にあっては、立坑の水平断
面は円状、楕円状等の形状を持っており、ストレス付与
部材が主に無筋部の立坑内部側にほぼ直線的に挿通され
ているため、無筋部が土水圧などの外力による無筋部に
対する曲げモーメントに対して、効果的に対抗すること
ができるという効果がある。
【0098】請求項4の発明にあっては、立坑の水平断
面は円状、楕円状等の形状を持っており、シールド掘進
機が発進する無筋部の立坑内部側の表面は平面となるよ
うに内側に近いほど肉厚となり、主にこの肉厚部にスト
レス付与部材がほぼ直線的に挿通されているため、無筋
部が土水圧などの外力による無筋部に対する曲げモーメ
ントに対して、効果的に対抗することができ、また、シ
ールド掘進機の掘削開始時の掘削面が平面となるため、
シールド掘進機が進行方向のぶれ等を起こすことなく確
実に発進することができるという効果がある。
【0099】請求項5の発明にあっては、ストレス付与
部材に与えている張力の分力として、無筋部に対する外
力と対抗する成分が生ずるため、無筋部は土水圧などの
外力に対してさらに効果的に対抗することができるとい
う効果がある。また、コンクリート材料は、圧縮モーメ
ントよりも引張モーメントに対して弱い性質を持つが、
その引張モーメントが土水圧によって発生する無筋部端
部の立坑内方側に近い位置にストレス付与部材が位置し
て圧縮モーメントを加えるため、効果的に無筋部の強度
を高めることができる。
【0100】請求項6の発明にあっては、無筋部の中空
部に通ずる作業用ゲートを立坑壁体の立坑内部側に設け
てあるため、ストレス付与部材を着脱する作業者が中空
部の無筋部付近に到達するために、中空管の中空部の長
い距離を移動する必要がないという効果がある。
【0101】請求項7の発明にあっては、無筋部付近で
立坑壁体の内面から立坑内部側に突出する突出部が設け
られているため、無筋部付近の壁体が補強されるととも
に、この突出部を作業用ゲートに入る足場としても利用
することができるという効果がある。
【0102】請求項8の発明にあっては、無筋部に配置
された中空管がシールド掘進機によって切削可能である
ため、シールド掘進機が無筋部を掘削するのに先立って
無筋部の中空管を除去する必要がないという効果があ
る。
【0103】請求項9の発明にあっては、鉛直方向に中
空部を持つ中空管が壁体内で周方向に一定間隔を置いて
配置されているため、立坑を形成するための壁体を構成
するケーソン躯体の沈設を容易に、しかも、バランスの
取れた状態で行うことができるという効果がある。
【0104】請求項10の発明にあっては、無筋部に挿
通されたストレス付与部材がシールド掘進機によって切
削可能であるため、シールド掘進機が無筋部を掘削する
のに先立ってストレス付与部材を除去することなくシー
ルド掘進機を発進させることができるという効果があ
る。
【0105】請求項11の発明にあっては、壁体を構成
するケーソン躯体の沈設等において有用な中空部を壁体
に形成する中空管を用いてストレス付与部材が固定され
るため、壁体の形状の変更や特別な取付部材の設置なし
でストレス付与部材を固定することができるという効果
がある。
【0106】請求項12の発明にあっては、ストレス付
与部材を、シールド掘進機が無筋部を掘削する直前に中
空管の中空部を利用して抜き去り、シールド掘進機によ
る掘削を容易に行うことができるという効果がある。
【0107】請求項13の発明にあっては、ストレス付
与部材の除去は、例えば、作業者が中空管の中空部に通
ずる作業用ゲートから中空部に入り行えるため、ストレ
ス付与部材を除去する作業者が中空部の無筋部付近に到
達するために、中空管の中空部の長い距離を移動する必
要がないという効果がある。
【0108】請求項14の発明にあっては、ストレス付
与部材はシールド掘進機によって切削可能な材料によっ
て形成されているため、ストレス付与部材を除去するこ
となくシールド掘進機が無筋部を掘削できるという効果
がある。
【0109】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1の立坑を示す水平端面図であ
る。
【図2】本発明の実施例1の立坑を示す縦断面図であ
る。
【図3】(a)は、本発明の実施例1の立坑壁体の無筋
部付近を示す模式図であり、(b)はその部分拡大図で
ある。
【図4】本発明の実施例1の立坑における作業用ゲート
を示す模式的な水平端面図である。
【図5】本発明の実施例1の立坑を構築するケーソン躯
体の無筋部を有するブロックを示す模式的な斜視図であ
る。
【図6】ケーソン躯体の沈設および水中掘削を繰り返す
状態を示す縦断面図である。
【図7】図6の状態からケーソン躯体の沈設および水中
掘削を完了し、水中で底盤基礎部を形成する状態を示す
縦断面図である。
【図8】図7の状態から泥水を排水して、地中で底盤を
形成する状態を示す縦断面図である。
【図9】溝孔の掘削状態を示す水平端面図である。
【図10】ケーソン刃口付近を示す断面図である。
【図11】(A)および(B)は、壁体に加わる静圧に
より発生する応力の演算を行った立坑の模式的な水平端
面図および縦断面図である。
【図12】いくつかの土水圧において算出した、シール
ド外径と応力との関係を示すグラフである。
【図13】図12の算出に用いた立坑のデータを各シー
ルド外径に対応させて示したものでグラフある。
【図14】(A)および(B)は、本発明の実施例2の
立坑を示す模式的な水平端面図および縦断面図である。
【図15】(A)および(B)は、従来の立坑からのシ
ールド掘進機の発進を説明する図である。
【符号の説明】
10 立坑 12 無筋部 14,15 中空管 16 中空部 24 シールド掘進機 30 壁体 32 ストレス付与部材 44 突出部 70 作業用ゲート 78,80 ケーソン躯体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 浅井 康彦 東京都中央区京橋1丁目7番1号 戸田 建設株式会社内 (56)参考文献 特開 平6−193380(JP,A) 特開 平6−42289(JP,A) 特開 平7−76845(JP,A) 特公 平6−84713(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) E21D 9/06 301

Claims (14)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 シールド掘進機の発進地点用あるいは到
    達地点用の立坑において、 前記立坑の壁体の一部として設けられ、前記シールド掘
    進機が発進時あるいは到達時に掘削する無筋部と、 前記無筋部の両側の前記壁体内に配置され、外部と連通
    する少なくとも一対の中空管と、 前記一対の中空管の相互間の前記無筋部に配設され、前
    記中空管で各端部が固定されることによって張架され
    た、複数のストレス付与部材とを含んで構成されること
    を特徴とする立坑。
  2. 【請求項2】 請求項1において、 前記ストレス付与部材は、前記無筋部の厚さ方向にて前
    記立坑の内方に変位した位置に張架されていることを特
    徴とする立坑。
  3. 【請求項3】 請求項2において、 前記一対の中空管の相互間の前記無筋部を含む前記壁体
    が、立坑外方に向けて凸となる曲率を有する横断面形状
    であり、 前記ストレス付与部材は、前記一対の中空管の相互間に
    てほぼ直線的に張架されていることを特徴とする立坑。
  4. 【請求項4】 請求項3において、 前記無筋部の立坑内部側は、前記シールド掘進機が掘削
    を開始する面が平面となるように、他の領域の壁体より
    も厚肉であることを特徴とする立坑。
  5. 【請求項5】 請求項2において、 前記ストレス付与部材は、立坑内方に向かって凸となる
    曲率を有するように湾曲して張架されていることを特徴
    とする立坑。
  6. 【請求項6】 請求項1ないし5のいずれかにおいて、 前記一対の中空管の中空部に通ずる作業用ゲートを前記
    壁体の立坑内部側に設けたことを特徴とする立坑。
  7. 【請求項7】 請求項6において、 前記壁体の内面から立坑内部側に突出する補強用の突出
    部を前記無筋部付近に設け、 この突出部上部の壁体に前記作業用ゲートを設けたこと
    を特徴とする立坑。
  8. 【請求項8】 請求項1ないし7のいずれにおいて、 前記中空管が、前記無筋部にも配置され、少なくともこ
    の部分は前記シールド掘進機によって切削可能な材料に
    より形成され、その内部には低強度の充填材が充填され
    ていることを特徴とする立坑。
  9. 【請求項9】 請求項1ないし8のいずれかにおいて、 前記中空管が前記壁体内に周方向に一定間隔を置いて配
    置され、鉛直方向に連通していることを特徴とする立
    坑。
  10. 【請求項10】 請求項1ないし9のいずれかにおい
    て、 前記ストレス付与部材が、前記シールド掘進機によって
    切削可能な材料により形成されていることを特徴とする
    立坑。
  11. 【請求項11】 シールド掘進機の発進地点あるいは到
    達地点を立坑の内部とするシールド掘進機の発進あるい
    は到達方法において、 前記立坑の壁体の一部として設けられた無筋部と、前記
    無筋部の両側の前記壁体内に配置され外部と連通する少
    なくとも一対の中空管と、前記一対の中空管の相互間の
    前記無筋部に配設され前記中空管で各端部が固定される
    ことによって張架された複数のストレス付与部材とを有
    する立坑壁体を構築する工程と、 前記ストレス付与部材によって補強された前記無筋部を
    有する前記立坑壁体を沈設する工程とを、含むことを特
    徴とするシールド掘進機の発進あるいは到達方法。
  12. 【請求項12】 請求項11において、 前記中空管内の中空部を利用して、前記ストレス付与部
    材を除去するストレス付与部材除去工程を、更に含むこ
    とを特徴とするシールド掘進機の発進あるいは到達方
    法。
  13. 【請求項13】 請求項12において、 前記ストレス付与部材除去工程は、前記壁体の立坑内部
    側に設けられ、前記無筋部付近の前記中空管の中空部に
    通ずる作業用ゲートを利用することを特徴とするシール
    ド掘進機の発進あるいは到達方法。
  14. 【請求項14】 請求項11において、 シールド掘進機によって切削可能な材料によって形成さ
    れた前記ストレス付与部材が挿通された前記無筋部をシ
    ールド掘進機が掘削する工程を更に含むことを特徴とす
    るシールド掘進機の発進あるいは到達方法。
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