JP2890461B2 - 自動変速機用歯車変速装置 - Google Patents

自動変速機用歯車変速装置

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JP2890461B2 JP1116797A JP11679789A JP2890461B2 JP 2890461 B2 JP2890461 B2 JP 2890461B2 JP 1116797 A JP1116797 A JP 1116797A JP 11679789 A JP11679789 A JP 11679789A JP 2890461 B2 JP2890461 B2 JP 2890461B2
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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 この発明は複数組の遊星歯車機構を使用して複数段の
変速段を設定する自動変速機用の歯車変速装置に関する
ものである。
従来の技術 周知のように車両用の自動変速機の歯車変速装置は、
シングルピニオン型やダブルピニオン型あるいはラビニ
ョオ型の複数組の遊星歯車機構を使用して構成されてお
り、使用する遊星歯車機構の数が多ければ、設定可能な
変速段数が多くなって車両の動力性能や発進加速性など
が向上し、その反面、構成が複雑になって重量やコスト
が増大する。これに対して使用する遊星歯車機構の数が
少なければ、設定可能な変速段の数が少なくなるもの
の、構成が簡単であるから、低コスト化や軽量化を図る
ことができる。そのため従来から、変速段数の増大と構
成の簡素化との相反する要請を満すべく種々の努力がな
されており、最近では三組の遊星歯車機構を使用して前
進5段以上の変速段を設定することのできる歯車変速装
置が提案されるようになってきている。その一例が例え
ば特開昭60−65942号公報に記載されており、これは三
組の遊星歯車機構を同一軸線上に配列し、入力軸側のフ
ロント遊星歯車機構のサンギヤと中央部のセンタ遊星歯
車機構のサンギヤとをクラッチを介して選択的に連結す
る一方、フロント遊星歯車機構のサンギヤとセンタ遊星
歯車機構のキャリヤとをクラッチを介して選択的に連結
し、またフロント遊星歯車機構のキャリヤをセンタ遊星
歯車機構のリングギヤおよびリヤ遊星歯車機構のサンギ
ヤにそれぞれ連結し、さらにセンタ遊星歯車機構のキャ
リヤとリヤ遊星歯車機構のリングギヤとをクラッチを介
して選択的に連結し、そしてフロント遊星歯車機構のリ
ングギヤとサンギヤとのそれぞれを入力軸にクラッチを
介して選択的に連結するとともに、リヤ遊星歯車機構の
キャリヤに出力軸を連結し、さらにセンタ遊星歯車機構
のサンギヤおよびリヤ遊星歯車機構のサンギヤをそれぞ
れに付設したブレーキによって選択的に固定し、かつセ
ンタ遊星歯車機構のキャリヤを一方向クラッチで固定
し、これにより少なくとも前進5段以上の変速段を設定
するものである。
発明が解決しようとする課題 しかるに上述した従来の歯車変速装置では、フロント
遊星歯車機構のサンギヤをセンタ遊星歯車機構のサンギ
ヤに連結するクラッチとキャリヤに連結するクラッチと
を備えて前進5段以上の変速段を設定するものである
が、一方のクラッチすなわちフロント遊星歯車機構のサ
ンギヤとセンタ遊星歯車機構のキャリヤとを連結するク
ラッチが、センタ遊星歯車機構とリヤ遊星歯車機構との
間に配置されているために、そのクラッチはセンタ遊星
歯車機構のリングギヤとリヤ遊星歯車機構のサンギヤと
を連結する円筒部材の内周側に配置せざるを得ないの
で、その外径が大きく制約される。そのため必要とする
伝達トルク容量を確保するには、外径が制約される分、
ディスクの枚数を多くする必要が生じ、その結果、歯車
変速装置の全長が長くなる不都合を招来する。またその
クラッチを係合させるためのサーボ機構に対する油圧の
給排は、外周側が回転部材によって覆われていることに
より、内周側から行なうことになるが、中心側を通る回
転軸にその他の遊星歯車機構に対して潤滑油を供給する
油路を形成する必要があるので、それらの各油路をシー
ルリングで液密状態に隔絶するとしても油路構成が極め
て複雑化する問題があり、またサーボ機構に回転軸の内
部を通って油圧を供給するとすれば、軸の回転に伴う遠
心力が油圧に影響し、クラッチの係合のタイミングに変
動が生じる問題もある。
上述したように三組の遊星歯車機構で前進5段以上の
変速段を設定する構成では、例えばフロント遊星歯車機
構の二要素(サンギヤ、リングギヤ、キャリヤのうちの
いずれか二つ。以下同じ)をクラッチ手段を介して個別
かつ選択的に入力軸に連結し、かつ残る一つの要素を他
の遊星歯車機構の二要素にクラッチ手段を介し個別かつ
選択的に連結することになり、その結果、フロント遊星
歯車機構に合計四つのクラッチ手段が付随することにな
るが、上述した不都合を避けるようそれら四つのクラッ
チ手段を配列する場合、いずれか三つをフロント遊星歯
車機構の一方側に配置することが考えられるが、そのよ
うな配列構造であれば、フロント遊星歯車機構のリング
ギヤの外周に二本の連結用中空軸を配置する必要が生
じ、全体としての構成が複雑化するのみならず、クラッ
チ手段を駆動する油圧サーボ機構に対する油路の構成が
複雑化する問題が生じる。
この発明は上記の事情を背景としてなされたもので、
複数組の遊星歯車機構を使用した歯車変速装置のコンパ
クト化を図ることを目的とするものである。
課題を解決するための手段 この発明は、上記の目的を達成するために、サンギヤ
とリングギヤとキャリヤとをそれぞれ回転要素とする3
組の遊星歯車機構を入力軸と同一軸線上に配列するとと
もに、それらの遊星歯車機構における回転要素によって
形成されるトルクの伝達経路を変更して少なくとも前進
5段の変速段を設定することのできる自動変速機用歯車
変速装置において、前記入力軸に隣接する第1の遊星歯
車機構におけるサンギヤとリングギヤとキャリヤとの三
要素のうちの二つの要素を入力軸に個別かつ選択的に連
結する二つの入力クラッチ手段と、第1の遊星歯車機構
に対して入力軸とは反対側に配置された第2の遊星歯車
機構におけるサンギヤとリングギヤとキャリヤとの三要
素のうちの二つの要素を前記入力軸もしくはいずれかの
入力クラッチ手段に個別かつ選択的に連結する二つのク
ラッチ手段とを有し、前記入力クラッチ手段が第1の遊
星歯車機構に対して入力軸側に配置されるとともに、他
の二つのクラッチ手段が第1の遊星歯車機構と第2の遊
星歯車機構との間に配置され、さらにこれら二つのクラ
ッチ手段と前記入力軸もしくはいずれかの入力クラッチ
手段とを連結する1本の中空軸部材が前記第1の遊星歯
車機構の外周側に配置されていることを特徴とするもの
である。
作用 この発明の歯車変速装置では、少なくとも前進5段の
変速段を設定するよう各回転要素を連結した3組の遊星
歯車機構のうち入力軸に隣接する第1の遊星歯車機構の
二要素が入力クラッチ手段によって個別かつ選択的に入
力軸に連結され、またその第1の遊星歯車機構に対して
入力軸とは反対側に位置する第2の遊星歯車機構におけ
る二要素が入力軸もしくは前記入力クラッチ手段に対し
て個別かつ選択的に他の二つのクラッチ手段を介して連
結される。そして入力クラッチ手段は第1の遊星歯車機
構に対して入力軸側に配置され、また他の二つのクラッ
チ手段は第1の遊星歯車機構と第2の遊星歯車機構との
間に配置されており、したがって第1の遊星歯車機構の
外周側に中空軸は一本に抑えることができ、同時に前記
他の二つのクラッチ手段の外周側に特に中空軸部材を配
置する必要がなくなり、その外径の制約をなくして軸長
の短縮化を図ることが可能となる。また他の二つのクラ
ッチ手段は第2の遊星歯車機構に接近して配置されるか
ら、その間の連結のための軸が短縮化される。
実 施 例 つぎにこの発明の実施例について説明する。
第1図はこの発明の一実施例を示すスケルトン図であ
って、ここに示す例はそれぞれシングルピニオン型遊星
歯車機構であるフロント、センタ、リヤの三組の遊星歯
車機構1,2,3によって前進5段・後進1段の変速段を設
定するよう構成したものである。なおここで、フロン
ト、センタ、リヤの区別は、入力軸4側を仮に前側とし
た場合の区別であって、必ずしも車両への搭載状態での
前後によるものではなく、またその配列順次もその呼称
に従うよう限定されるものではない。これらの遊星歯車
機構1,2,3はそれぞれサンギヤ1s,2S,3Sおよびこれと同
心状に配置されているリングギヤ1R,2R,3Rならびにこれ
らのギヤに噛合するピニオンギヤを保持するキャリヤ1
C,2C,3Cを有している。フロント遊星歯車機構1のキャ
リヤ1Cとリヤ遊星歯車機構3のリングギヤ3Rとが常時連
結され、またセンタ遊星歯車機構2のリングギヤ2Rとリ
ヤ遊星歯車機構3のキャリヤ3Cとが常時連結されてお
り、さらにセンタ遊星歯車機構2のキャリヤ2Cとリヤ遊
星歯車機構3のサンギヤ3Sとが常時連結されている。そ
してフロント遊星歯車機構1のサンギヤ1Sと互いに連結
されたセンタ遊星歯車機構2のキャリヤ2Cおよびリヤ遊
星歯車機構3のサンギヤ3Sとが第2クラッチ手段K2を介
して選択的に連結され、またフロント遊星歯車機構1と
センタ遊星歯車機構2とのサンギヤ1S,2S同士が第4ク
ラッチ手段K4を介して選択的に連結されている。
入力軸4はフロント遊星歯車機構1側に設けられてお
り、この入力軸4とフロント遊星歯車機構1のリングギ
ヤ1Rとが所謂入力クラッチ手段である第1クラッチ手段
K1を介して選択的に連結され、また入力軸4とフロント
遊星歯車機構1のサンギヤ1Sとが所謂入力クラッチ手段
である第3クラッチ手段K3を介して選択的に連結されて
いる。これに対して出力軸5はリヤ遊星歯車機構3側に
設けられており、この出力軸5は互いに連結されている
センタ遊星歯車機構2のリングギヤ2Rとリヤ遊星歯車機
構3のキャリヤ3Cとに連結されている。
また所定の要素の回転を阻止するブレーキ手段につい
ては、互いに連結されたセンタ遊星歯車機構2のキャリ
ヤ2Cおよびリヤ遊星歯車機構3のサンギや3Sの回転を阻
止する第1ブレーキ手段B1がそのキャリヤ2Cもしくはサ
ンギヤ3Sとトランスミッションケース(以下、単にケー
スと記す)6との間に設けられており、さらにセンタ遊
星歯車機構2のサンギヤ2Sの回転を阻止する第2ブレー
キ手段B2がそのサンギヤ2Sとケース6との間に設けられ
ている。
ここで上述した遊星歯車機構1,2,3やクラッチ手段お
よびブレーキ手段の配列について説明すると、入力クラ
ッチ手段である第1および第3のクラッチ手段K1,K3
は、フロント遊星歯車機構1に対して入力軸4側に配置
されており、またセンタ遊星歯車機構2のサンギヤ2Sと
キャリヤ2Cとをフロント遊星歯車機構1のサンギヤ1Sを
一方の入力クラッチ手段である第3クラッチ手段K3にそ
れぞれ連結する第2および第4のクラッチ手段K2,K4は
フロント遊星歯車機構1とセンタ遊星歯車機構2の間に
配置され、さらにそれら二つのクラッチ手段2,K4のうち
第4クラッチ手段K4が第2クラッチ手段K2よりもセンタ
遊星歯車機構2寄りに配置されている。なお、第1ブレ
ーキ手段B1は第4クラッチ手段K4とセンタ遊星歯車機構
2との間に配置され、また第2ブレーキ手段B2は第4ク
ラッチ手段K4の外周側もしくは第4クラッチ手段K4とセ
ンタ遊星歯車機構2との間に配置されている。その結
果、フロント遊星歯車機構1のリングギヤ1Rの外周側に
は、第3クラッチ手段3に対して第2クラッチ手段K2お
よび第4クラッチ手段K4を連結する一本のみの中空軸が
配置されている。また第2および第4のクラッチ手段K
2,K4の外周には中空軸が存在しない構成となっている。
なお、上述したクラッチ手段やブレーキ手段などの係
合手段は、従来一般の自動変速機用歯車変速装置で使用
されている油圧サーボ機構によって係合・解放させられ
る多板クラッチや多板ブレーキなどを含むものである
が、これらのみに限定されず、一方向クラッチと多板ク
ラッチもしくは多板ブレーキとを組合せて適宜に構成す
ることができる。また各遊星歯車機構の要素同士を連結
する構造もしくは各遊星歯車機構の要素と係合手段とを
連結する構造としては、従来一般の自動変速機で採用さ
れているコネクティングドラムや中空軸などの連結手段
を用いることができる。
上述した第1図に示す歯車変速装置では、前進5段・
後進1段の変速段の設定が可能であって、各変速段は各
クラッチ手段およびブレーキ手段を第1表に示すように
係合・解放させることにより設定することができる。な
お、第1表において○印は係合させることを、また×印
は解放させることをそれぞれ示す。
第1図にスケルトンで示した歯車変速装置をより具体
化した構成を第2図に示す。なお第2図に示す構成で
は、多板クラッチと一方向クラッチとからなる更に他の
クラッチ手段を、第2クラッチ手段K2と並列に配置して
ある。以下、順を追って説明する。入力軸4はトルクコ
ンバータなどの継手部材の出力軸(それぞれ図示せず)
に連結されており、その入力軸4の先端部は第1クラッ
チ手段K1のクラッチドラム10に連結されている。この第
1クラッチ手段K1は、クラッチドラム10とフロント遊星
歯車機構1のリングギヤ1Rに一体化させたクラッチハブ
11とを、それぞれにスプライン嵌合させたディスクおよ
びプレートを互いに摩擦接触させてトルクを伝達し、す
なわち係合し、またその摩擦接触を解くことによりトル
ク伝達しないよう解放するものであり、その係合・解放
を行なわせる油圧ピストン12がクラッチドラム10の内部
に軸線方向に前後動するよう配置されている。この油圧
ピストン12はリターンスプリング13によって後退移動さ
せられる。入力軸4とフロント遊星歯車機構1のサンギ
ヤ1Sとを連結する第3クラッチ手段K3も、第1クラッチ
手段K1と同様に、クラッチドラム30とクラッチハブ31と
を、それぞれにスプライン嵌合させたディスクおよびプ
レートを互いに摩擦接触させることによりトルク伝達可
能に連結し、すなわち係合させ、またその摩擦接触を解
除して解放するものであって、そのクラッチハブ31が第
1クラッチ手段K1のクラッチドラム10に一体化され、ま
たクラッチドラム30は第1クラッチ手段K1およびフロン
ト遊星歯車機構1の外周側を覆いかつ一端部がフロント
遊星歯車機構1のサンギヤ1Sに連結された円筒状のコネ
クティングドラム(この発明の中空軸部材に相当する)
34に連結一体化されている。この第3クラッチ手段K3を
係合・解放させる油圧ピストン32はクラッチドラム30に
内蔵され、またこの油圧ピストン32を後退移動させるリ
ターンスプリング33が設けられている。
フロント遊星歯車機構1を挟んで第1クラッチ手段K1
とは反対側に第2クラッチ手段K2が配置されており、こ
の第2クラッチ手段K2は、第1センタサポート70の内周
側に回転自在に配置した中空軸71に支持されている。す
なわち第1センタサポート70はケース6の内周面に固定
されており、第2クラッチ手段K2のクラッチドラム20は
その第1センタサポート70のボス部に液密状態を維持し
て回転するよう嵌合される一方、先端部が前記コネクテ
ィングドラム34に回転不能に係合しており、さらにこの
クラッチドラム20は第1センタサポート70の内周側に回
転自在に支持した中空軸71にスプライン嵌合して連結さ
れている。クラッチドラム20に対してディスクおよびプ
レートの摩擦接触によって連結されるクラッチハブ21は
前記中空軸71の内周側に回転自在に支持した第1サンギ
ヤ軸72に連結されている。そして第2クラッチ手段K2を
係合・解放させる油圧ピストン22はクラッチドラム20の
内周側に前後動自在に収容されており、この油圧ピスト
ン22に対する油圧の供給・排出は、第1センタサポート
70をその外周側から貫通して形成した油路73を介して行
なうよう構成されている。さらに油圧ピストン22の前面
側にとリターンスプリング23が設けられている。
前記第1サンギヤ軸72の内周側には、前記入力軸4と
同一軸線上に中間軸74が設けられており、この中間軸74
はフロント遊星歯車機構1側から入力軸4とは反対側の
後端部にまで延びており、フロント側の端部に前記フロ
ント遊星歯車機構1のキャリヤ1Cが連結されるととも
に、リヤ側の端部にリヤ遊星歯車機構3のリングギヤ3R
が連結されている。
前記第1センタサポート70を挟んで第2クラッチ手段
K2とは反対側に第5クラッチ手段K5が配置されており、
そのクラッチドラム50は第1センタサポート70のボス部
に液密状態を維持して回転するよう嵌合されるととも
に、前記中空軸71に連結され、したがって第2クラッチ
手段K2と第5クラッチ手段K5とのクラッチドラム20,50
同士が互いに連結されている。第5クラッチ手段K5はそ
のクラッチドラム50の内部に前後動自在に収容した油圧
ピストン52によってディスクおよびプレートを押圧して
これらを摩擦接触させることによりクラッチドラム50と
クラッチハブ51との間でトルクの伝達を行なうものであ
り、そのクラッチハブ51は一方向クラッチF3のアウタレ
ースと一体化されており、その一方向クラッチF3のイン
ナーレースは前記第1サンギヤ軸72に連結されている。
すなわち第5クラッチ手段K5と一方向クラッチF3とは直
列に配列されている。なお、第5クラッチ手段K5の解放
もリターンスプリング53によって油圧ピストン52を後退
移動させることにより行なう。また第5クラッチ手段K5
を動作させる油圧ピストン52に対する油圧の供給・排出
は、前記第1センタサポート70を貫通して形成した他の
油路75を介して行なうよう構成されている。
第5クラッチ手段K5に対向するよう第4クラッチ手段
K4が配置されている。この第4クラッチ手段K4も他のク
ラッチ手段と同様に、クラッチドラム40、ディスクおよ
びプレートを介してクラッチドラム40にトルク伝達可能
に連結されまた解放されるクラッチハブ41、油圧ピスト
ン42、リターンスプリング43を主体とするものであり、
そのクラッチドラム40はケース6の内周面に固定した第
2センタサポート76のボス部に液密状態を維持して回転
するよう嵌合させられ、かつ前記第1サンギヤ軸72の外
周に回転自在に配置した第2サンギヤ軸77の一端部に連
結されている。またクラッチハブ41は他の一方向クラッ
チF2のアウターレースと一体化されており、その一方向
クラッチF2のインナーレースは第2サンギヤ軸77にスプ
ライン嵌合されている。そして油圧ピストン42を動作さ
せる油圧は第2センタサポート76を貫通して形成した油
路78を介して供給・排出するよう構成されている。な
お、第2サンギヤ軸77の他端部はセンタ遊星歯車機構2
のサンギヤ2Sに連結されている。
さらに第4クラッチ手段K4のクラッチドラム40はブレ
ーキドラムを兼ねており、このクラッチドラム40の外周
側にはバンドブレーキからなる第2ブレーキ手段B2が設
けられている。
第2センタサポート76を挟んで第4クラッチ手段K4と
は反対側に第1ブレーキ手段B1および一方向クラッチF1
が配置されている。第1ブレーキ手段B1は多板ブレーキ
であってそのディスクは第2センタサポート76の先端部
にスプライン嵌合され、またプレートは一方向クラッチ
F1のアウタレースの外周面にスプライン嵌合されてお
り、更に一方向クラッチF1のインナーレースは第2セン
タサポート76に一体化させたスリーブ79にスプライン嵌
合されている。そして一方向クラッチF1のアウターレー
スにセンタ遊星歯車機構2のキャリヤ2Cが連結さてい
る。したがって第1ブレーキ手段B1と一方向クラッチF1
とは互いに並列関係にあって、センタ遊星歯車機構2の
キャリヤ2Cの回転をそれぞれが選択的に阻止するように
なっている。なお、第1ブレーキ手段B1を係合解放させ
る油圧ピストン60は第2センタサポート76に内蔵され、
第2センタサポート76をその外周側から貫通して形成し
た他の油路(図示せず)を介して油圧ピストン60に対し
て油圧を供給・排出するようになっている。その油圧ピ
ストン60の後退移動はリターンスプリング63によって行
なう。
そしてセンタ遊星歯車機構2およびリヤ遊星歯車機構
3は第1ブレーキ手段B1および一方向クラッチF1に続け
て順に配置されており、センタ遊星歯車機構2のキャリ
ヤ2Cが第1サンギヤ軸72に連結スプライン嵌合されると
ともに、そのリングギヤ2Rがリヤ遊星歯車機構3のキャ
リヤ3Cに連結され、これらのリングギヤ2Rとキャリヤ3C
とが、前記中間軸74の延長上に配置した出力軸5に連結
されている。
第2図に具体的に示す歯車変速装置でも前進5段・後
進1段の変速段の設定が可能であり、その作動表を第2
表に示す。なお、第2表中、◎印はエンジンブレーキ時
に係合状態、△印は係合させてもよいことをそれぞれ示
し、その他は第1表と同様である。
したがって第2図から明らかなように、入力クラッチ
手段である第1および第3のクラッチ手段K1,K3をフロ
ント遊星歯車機構1に対して入力軸4側に配置し、また
その第3クラッチ手段K3に連結される第2および第4の
クラッチ手段K2,K4をフロント遊星歯車機構1に対して
入力軸4とは反対側に設けたので、フロント遊星歯車機
構1のリングギヤ1Rの外周側を通る中空軸は前記のコネ
クティングドラム34の一体のみとなる。また第2クラッ
チ手段K2と第4クラッチ手段K4とは、センタ遊星歯車機
構2に対して第1ブレーキ手段B1と同じ側に設け、かつ
第4クラッチ手段K4を第2クラッチ手段K2よりセンタ遊
星歯車機構2側に設けたから、これらのクラッチ手段K
2,K4の外周側に回転部材が存在しないことになり、その
結果、それらのクラッチ手段K2,K4の外径が特に制約さ
れないために必要な外径を確保して幅寸法を短くでき、
またそれらのクラッチ手段K2,K4を動作させる油圧サー
ボ機構に対する油圧の供給・排出を外周側から行なうこ
とができ、それに伴って油路構成を簡素化することがで
きる。さらに各クラッチ手段K2,K4の外径が制約されな
いことにより、それぞれの外径を同一にすることも可能
であるから、クラッチドラムやディスクなどのクラッチ
手段およびそれに付随する油圧サーボ機構の部品の共通
化を図ることができる。
なお、この発明は上記の各実施例に限定されるもので
はなく、複数組の遊星歯車機構を使用して構成した他の
歯車列を備えた歯車変速装置にも適用できる。以下にそ
の数例を示す。
第3図に示す例は、第1図に示す構成のうちセンタ遊
星歯車機構2のキャリヤ2Cを選択的に固定するブレーキ
手段を第3ブレーキ手段B3とするとともに、第1ブレー
キ手段B1はリヤ遊星歯車機構3のサンギヤ3Sを単独で固
定する構成とし、さらにセンタ遊星歯車機構2のキャリ
ヤ2Cとリヤ遊星歯車機構3のサンギヤ3Sとの間に第6ク
ラッチ手段K6を設けたものである。そしてこの構成にお
いても、入力クラッチ手段である第1および第3のクラ
ッチ手段K1,K3をフロント遊星歯車機構1に対して入力
軸4に設け、かつ第2および第4のクラッチ手段K2,K4
をフロント遊星歯車機構1に対して入力軸4とは反対側
に設けたから、フロント遊星歯車機構1の外周側を通る
中空軸を一本にすることができる。また第2クラッチ手
段K2と第4クラッチ手段K4とはセンタ遊星歯車機構2の
キャリヤ2Cを選択的に固定する第3ブレーキ手段B3と同
じ側に配置され、かつ第4クラッチ手段K4が第2クラッ
チ手段K2に対してセンタ遊星歯車機構2側に配置されて
いるから、前述した例と同様な効果を得ることができ
る。またこのような構成であれば、センタ遊星歯車機構
2のキャリヤ2Cが不必要に回転することを防止すること
ができる。第3表は第3図に示す構成の歯車変速装置の
作動表である。
第4図は第1図に示す構成におけるフロント遊星歯車
機構1をダブルピニオン型遊星歯車機構に替え、それに
伴ってフロント遊星歯車機構1のリングギヤ1Rをリヤ遊
星歯車機構3のリングギヤ3Rに常時連結し、かつフロン
ト遊星歯車機構1のサンギヤ1Sを第3クラッチ手段K3に
よって入力軸4に選択的に連結するよう構成したもので
ある。その他の構成は第1図に示す例と同様である。こ
の第4図に示す歯車変速装置の作動表を第4表に示す。
また第5図は第3図に示す構成におけるフロント遊星
歯車機構1をダブルピニオン型遊星歯車機構に替え、そ
れに伴ってフロント遊星歯車機構1のリングギヤ1Rをリ
ヤ遊星歯車機構3のリングギヤ3Rに常時連結し、かつフ
ロント遊星歯車機構1のサンギヤ1Sを第3クラッチ手段
K3によって入力軸4に選択的に連結するよう構成したも
のである。その他の構成は第3図に示す例と同様であ
る。この第5図に示す歯車変速装置の作動表を第5表に
示す。
第6図に示す例は、前述した第3図に示す構成におけ
るセンタ遊星歯車機構2の要素とリヤ遊星歯車機構3の
要素との連結を替えたものである。すなわちセンタ遊星
歯車機構2のリングギヤ2Rとリヤ遊星歯車機構3のリン
グギヤ3Rとが常時連結され、それに伴いフロント遊星歯
車機構1のキャリヤ1Cがこれら二つのリングギヤ2R,3R
に常時連結されている。その他の構成は第3図に示す構
成と同様である。その作動表を第6表に示す。
そしてまた第7図に示す例は、第3図に示す構成を変
更して第6図に示す構成とした場合と同様な変更を第5
図に示す構成に対して施したものである。すなわち第7
図に示す構成は、第5図に示す構成のうちセンタ遊星歯
車機構2とリヤ遊星歯車機構3とのリングギヤ2R,3R同
士を互いに連結し、それに伴ってフロント遊星歯車機構
1のリングギヤ1Rをこれら二つのリングギヤ2R,3Rに常
時連結したものである。その作動表を第7表に示す。
第8図に示す例は、前述した第1図に示す構成のうち
リヤ遊星歯車機構3のシングルピニオン型のものからダ
ブルピニオン型のものに変更し、それに伴ってフロント
遊星歯車機構1のキャリヤ1Cをリヤ遊星歯車機構3のキ
ャリヤ3Cに連結し、かつセンタ遊星歯車機構2のリング
ギヤ2Rとリヤ遊星歯車機構3のリングギヤ3Rとを互いに
連結するとともにこれらを出力軸5に連結し、その他の
構成は第1図に示す構成と同様としたものである。この
構成であっても前進5段・後進1段の変速段の設定が可
能であり、その作動表は第1表と同じである。
さらに第9図に示す例は、前述した第3図に示す構成
のうちリヤ遊星歯車機構3をシングルピニオン型のもの
からダブルピニオン型のものに変更し、それに伴ってフ
ロント遊星歯車機構1のキャリヤ1Cを、互いに連結され
たセンタ遊星歯車機構2のリング2Rとリヤ遊星歯車機構
3のキャリヤ3Cとに対して常時連結し、かつ出力軸5を
リヤ遊星歯車機構3のリングギヤ3Rに連結し、その他の
構成は第3図に示す例と同様にしたものである。その作
動表は第6表と同じである。
以上第3図ないし第9図に示した例においても、入力
クラッチ手段である第1および第3のクラッチ手段K1,K
3をフロント遊星歯車機構1に対して入力軸4側に配置
し、またその第3クラッチ手段K3に連結される第2およ
び第4のクラッチ手段K2,K4をフロント遊星歯車機構1
に対して入力軸4とは反対側に設けたので、フロント遊
星歯車機構1のリングギヤ1Rの外周側を通る中空軸は前
記のコネクティングドラム34の一本のみとなる。またセ
ンタ遊星歯車機構2のキャリヤ2Cを連結してあるブレー
キ手段B1もしくはB3、および第2クラッチ手段K2ならび
に第4クラッチ手段K4をセンタ遊星歯車機構2に対して
一方側に配置し、かつサンギヤ2Sを連結してある第4ク
ラッチ手段K4をキャリヤ2Cを連結してある第2クラッチ
手段K2よりもセンタ遊星歯車機構2側に配置したから、
それらのクラッチ手段K2,K4の外径が特には制約され
ず、したがって第1図および第2図に示す構成の歯車変
速装置と同様の効果を得ることができる。
なお第1図および第3図ないし第9図に示す各実施例
では、各係合手段を多板クラッチや多板ブレーキのシン
ボルで示したが、第1図の具体例として第2図で示した
ように、各係合手段は一方向クラッチと多板クラッチや
多板ブレーキ、バンドブレーキを組合せた構成とするこ
とができ、より具体的には本出願人が既に出願した特願
昭63−176270号や特願昭63−221670号の願書に添付した
明細書および図面に記載したものを採用することができ
る。
またこの発明は、入力軸4と出力軸5とを同一軸線上
に配置することによりFR車(前置きエンジン後輪駆動
車)に適する構成の歯車変速装置のみならず、出力軸を
入力軸に対して平行な位置関係となるよう設けたFF車
(前置きエンジン前輪駆動車)に適するよう構成した歯
車変速装置にも適用することができる。
そしてこの発明は三組の遊星歯車機構を使用して前段
5段・後進1段以上の複数の変速段を設定するようそれ
ぞれの要素を連結した複数組の遊星歯車機構を有する歯
車変速装置に適用することができる。
発明の効果 以上の説明から明らかなようにこの発明の自動変速機
用の歯車変速装置によれば、入力軸と同一軸線上に配列
された3組の遊星歯車機構によって前進5段以上の変速
段を設定可能であって、入力軸に隣接する遊星歯車機構
の外周側を通る連結中の中空軸は一本でよいことにな
り、そのため外径寸法を小さくすることができるのみな
らず、各構成部材の配置に関する構成および油路の構成
を簡素化することができる。また遊星歯車機構の構成部
材とそれを他の部材に連結するためのクラッチ手段が互
いに接近して配置されることになるため、その間をつな
ぐ軸が短縮化され、この点でも構成の簡素化および軽量
化を図ることができる。総じてこの発明によれば、複数
組の遊星歯車機構を使用して複数段の変速段を設定する
歯車変速装置をコンパクトなものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図はこの発明の一実施例を原理的に示すスケルトン
図、第2図は第1図に示す構成をより具体化した例の部
分断面図、第3図ないし第9図はこの発明の更に他の実
施例をそれぞれ原理的に示すスケルトン図である。 1,2,3……遊星歯車機構、1S,2S,3S……サンギヤ、1C,2
C,3C……キャリヤ、1R,2R,3R……リングギヤ、34……コ
ネクティングドラム、K1,K2,K3,K4,K5,K6……クラッチ
手段、B1,B2,B3……ブレーキ手段。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (31)優先権主張番号 特願平1−25322 (32)優先日 平1(1989)2月3日 (33)優先権主張国 日本(JP) (31)優先権主張番号 特願平1−58406 (32)優先日 平1(1989)3月10日 (33)優先権主張国 日本(JP) (31)優先権主張番号 特願平1−63385 (32)優先日 平1(1989)3月15日 (33)優先権主張国 日本(JP) (31)優先権主張番号 特願平1−108183 (32)優先日 平1(1989)4月27日 (33)優先権主張国 日本(JP)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】サンギヤとリングギヤとキャリヤとをそれ
    ぞれ回転要素とする3組の遊星歯車機構を入力軸と同一
    軸線上に配列するとともに、それらの遊星歯車機構にお
    ける回転要素によって形成されるトルクの伝達経路を変
    更して少なくとも前進5段の変速段を設定することので
    きる自動変速機用歯車変速装置において、 前記入力軸に隣接する第1の遊星歯車機構におけるサン
    ギヤとリングギヤとキャリヤとの三要素のうちの二つの
    要素を入力軸に個別かつ選択的に連結する二つの入力ク
    ラッチ手段と、第1の遊星歯車機構に対して入力軸とは
    反対側に配置された第2の遊星歯車機構におけるサンギ
    ヤとリングギヤとキャリヤとの三要素のうちの二つの要
    素を前記入力軸もしくはいずれかの入力クラッチ手段に
    個別かつ選択的に連結する二つのクラッチ手段とを有
    し、前記入力クラッチ手段が第1の遊星歯車機構に対し
    て入力軸側に配置されるとともに、他の二つのクラッチ
    手段が第1の遊星歯車機構と第2の遊星歯車機構との間
    に配置され、さらにこれら二つのクラッチ手段と前記入
    力軸もしくはいずれかの入力クラッチ手段とを連結する
    1本の中空軸部材が前記第1の遊星歯車機構の外周側に
    配置されていることを特徴とする自動変速機用歯車変速
    装置。
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